説明

液体塗布装置

【課題】 被塗布材料の表面にムラ無く均一に液体を塗布することができる液体塗布装置を提供すること。
【解決手段】 送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間4を規定する塗布ハウジング6と、塗布空間4内に液体を噴霧するための液体噴霧手段42と、液体噴霧手段42に液体を供給するための液体供給手段44と、を備える。塗布ハウジング6には、被塗布材料40が移動される移動経路38の上下方向中央部の片側に液体噴霧手段42が配設されている。被塗布材料40は、塗布ハウジング6の送込み口を通して塗布空間4に送り込まれ、塗布ハウジング6の送出し口を通して外部に送り出され、液体噴霧手段42は、塗布空間4を通して移動される被塗布材料40の両面に付着するように液体を噴霧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば加工液などの液体を被塗布材料の表面に塗布するための液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体を被塗布材料の表面に塗布するための液体塗布装置が知られており、例えばプレス装置を用いて被塗布材料にプレス加工を施す際には、この液体塗布装置を用いて液体としての加工液を被塗布材料の表面に塗布している(例えば、特許文献1参照)。この液体塗布装置は、送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、塗布ハウジングの外側に外側空間を規定し、送込み口に対応する外送込み口及び送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、塗布空間内に加工液を噴霧するための噴霧ノズルと、噴霧ノズルに加工液を供給するための液体供給手段と、塗布空間から送込み口及び送出し口を通して外側空間に漏出した霧状加工液を吸引して回収するための吸引回収手段と、を備えている。
【0003】
液体供給手段は、加工液を溜めるための液体タンクと、液体タンクに溜められた加工液を塗布空間及び外側空間を通して循環させるための液体循環手段と、圧縮空気を供給するためのコンプレッサと、コンプレッサからの圧縮空気を噴霧ノズルに送給するための圧縮空気送給ラインと、を備えている。また、吸引回収手段は、外側空間に漏出した霧状加工液を回収するための回収空間と、コンプレッサからの圧縮空気を回収空間に送給するための圧縮空気分岐ラインと、回収空間に回収された霧状加工液を空気と加工液とに分離するための気液分離フィルタと、気液分離フィルタにより分離された加工液を液体タンクに戻すための液体回収ラインと、を備えている。
【0004】
噴霧ノズルは、被塗布材料が移動される移動経路の両側にそれぞれ配設されている。移動経路の片側の噴霧ノズルは移動経路より上側に配置され、また移動経路の他側の噴霧ノズルは移動経路より下側に配置されている。コンプレッサからの圧縮空気を利用して液体タンクに溜められた加工液が吸引送給され、圧縮空気と加工液とが混合されて噴霧ノズルから噴霧される。
【0005】
上述した液体塗布装置による加工液の塗布について説明すると、次の通りである。被塗布材料は、外側ハウジングの外送込み口及び塗布ハウジングの送込み口を通して塗布空間に送り込まれ、塗布ハウジングの送出し口及び外側ハウジングの外送出し口を通して外部に送り出される。被塗布材料が塗布空間を通して移動する間に、塗布空間内に充満された霧状加工液が被塗布材料の表面に付着し、これにより被塗布材料の表面に液体が塗布される。また、コンプレッサからの圧縮空気の流れを利用して外側空間に漏出した霧状加工液が回収空間に回収され、この回収された霧状加工液は、気液分離フィルタによって空気と加工液とに分離される。分離された空気は外部に排出され、また分離された加工液は液体回収ラインを通して液体タンクに戻される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−265987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の液体塗布装置では、次のような問題がある。第1に、加工液の塗布は、塗布空間内に充満された霧状加工液が被塗布材料の表面に付着することにより行われるので、被塗布材料の表面粗度がきめ細かい場合には、被塗布材料の表面に加工液がムラ無く均一に付着され難いという問題がある。第2に、加工液の粘度が大きい場合には、液体タンクに溜められた加工液が吸引送給され難く、それ故に、噴霧ノズルにて圧縮空気と混合される加工液の量が減少し、加工液を効率良く噴霧することができないという問題がある。第3に、気液分離フィルタにより分離された空気には霧状加工液が含まれている場合があり、かかる場合にこの空気が外部に排出されると、加工液の回収効率が低下するという問題がある。
【0008】
本発明の第1の目的は、被塗布材料の表面にムラ無く均一に液体を塗布することができる液体塗布装置を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、液体を効率良く噴霧することができる液体塗布装置を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の第3の目的は、液体の回収効率を高めることができる液体塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の液体塗布装置では、送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、前記塗布空間内に液体を噴霧するための液体噴霧手段と、前記液体噴霧手段に液体を供給するための液体供給手段と、を備えた液体噴霧装置において、
前記塗布ハウジングには、被塗布材料が移動される移動経路の上下方向中央部の片側に前記液体噴霧手段が配設され、
被塗布材料は、前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口を通して外部に送り出され、前記液体噴霧手段は、前記塗布空間を通して移動される被塗布材料の両面に付着するように液体を噴霧することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の液体塗布装置では、前記塗布ハウジングの少なくとも前記送込み口及び前記送出し口を覆うための外側空間を規定し、前記送込み口に対応する外送込み口及び前記送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、前記塗布空間から前記送込み口及び前記送出し口を通して前記外側空間に漏出した霧状液体を吸引して回収するための吸引回収手段と、を更に備え、
被塗布材料は、前記外側ハウジングの前記外送込み口及び前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口及び前記外側ハウジングの前記外送出し口を通して外部に送り出されることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の請求項3に記載の液体塗布装置では、送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、前記塗布ハウジングの少なくとも前記送込み口及び前記送出し口を覆うための外側空間を規定し、前記送込み口に対応する外送込み口及び前記送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、前記塗布空間内に液体を噴霧するための液体噴霧手段と、前記液体噴霧手段に液体を供給するための液体供給手段と、前記塗布空間から前記送込み口及び前記送出し口を通して前記外側空間に漏出した霧状液体を吸引して回収するための吸引回収手段と、を備え、被塗布材料は、前記外側ハウジングの前記外送込み口及び前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口及び前記外側ハウジングの前記外送出し口を通して外部に送り出され、前記塗布空間を通して移動される間に、前記液体噴霧手段から噴霧された液体が被塗布材料の表面に付着する液体噴霧装置において、
前記液体供給手段は、液体を溜めるための液体供給源と、前記液体供給源に溜められた液体を前記塗布空間及び前記外側空間を通して循環させるための液体循環手段と、圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源からの圧縮空気を前記液体噴霧手段に送給するための圧縮空気送給ラインと、を備え、前記液体循環手段は、前記液体供給源からの液体を前記液体噴霧手段に送給するための液体送給ラインと、前記塗布空間及び前記外側空間から回収された液体を溜めるための液体溜め手段と、前記液体溜め手段に溜められた液体を前記液体供給源に戻すための液体戻しラインと、を有し、前記液体供給源は前記液体噴霧手段より上側に配設され、
前記圧縮空気供給源からの圧縮空気の流れと、前記液体供給源及び前記液体噴霧手段の高低差とを利用して、前記液体供給源に溜められた液体が前記液体送給ラインを通して吸引送給され、圧縮空気と液体とが混合されて前記液体噴霧手段から噴霧されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の液体塗布装置では、送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、前記塗布ハウジングの少なくとも前記送込み口及び前記送出し口を覆うための外側空間を規定し、前記送込み口に対応する外送込み口及び前記送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、前記塗布空間内に液体を噴霧するための液体噴霧手段と、前記液体噴霧手段に液体を供給するための液体供給手段と、前記塗布空間から前記送込み口及び前記送出し口を通して前記外側空間に漏出した霧状液体を吸引して回収するための吸引回収手段と、を備え、被塗布材料は、前記外側ハウジングの前記外送込み口及び前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口及び前記外側ハウジングの前記外送出し口を通して外部に送り出され、前記塗布空間を通して移動される間に、前記液体噴霧手段から噴霧された液体が被塗布材料の表面に付着する液体噴霧装置において、
前記吸引回収手段は、前記外側空間に漏出した霧状液体を回収するための回収空間と、圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源からの圧縮空気を前記回収空間に送給するための圧縮空気送給ラインと、前記回収空間に回収された霧状液体を空気と液体とに分離するための第1気液分離手段と、前記第1気液分離手段により分離された液体を前記液体供給手段に戻すための第1液体回収ラインと、前記第1気液分離手段により分離された空気を更に空気と液体とに分離するための第2気液分離手段と、前記第2気液分離手段により分離された液体を前記液体供給手段に戻すための第2液体回収ラインと、を備え、前記第1気液分離手段は気液分離フィルタから構成され、また前記第2気液分離手段は気液分離ボックスから構成されており、
前記圧縮空気供給源からの圧縮空気の流れを利用して前記外側空間に漏出した霧状液体が前記回収空間に吸引回収され、また前記気液分離フィルタにより分離された空気が前記気液分離ボックスの壁面に吹き付けられ、この空気に含まれる液体が前記気液分離ボックスの壁面に付着されることにより空気と液体とが分離されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の液体塗布装置によれば、被塗布材料が移動される移動経路の上下方向中央部の片側に液体噴霧手段が配設されているので、液体噴霧手段は、塗布空間を通して移動される被塗布材料の真横方向から液体を噴霧するようになる。液体噴霧手段から噴霧された液体は、塗布空間内に霧状に拡散されるとともに、被塗布材料の両面に向けて直接的に吹き付けられ、これにより塗布空間内に充満された霧状液体が被塗布材料の両面に付着されるとともに、液体噴霧手段から噴霧された液体が直接的に被塗布材料の両面に付着されるようになる。従って、被塗布材料の表面粗度がきめ細かい場合であっても、被塗布材料の両面にムラ無く均一に液体を塗布することができる。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載の液体塗布装置によれば、塗布ハウジングの送込み口及び送出し口を覆うための外側空間を規定する外側ハウジングが設けられているとともに、漏出した霧状液体を回収するための吸引回収手段が設けられているので、塗布空間から送込み口及び送出し口を通して漏出した霧状液体は外側空間に流れ、外側空間を通して吸引回収手段により吸引回収される。従って、塗布空間内の霧状液体が外部へ漏出するのを防止することができ、周囲環境をきれいな状態に保つことができる。
【0016】
さらに、本発明の請求項3に記載の液体塗布装置によれば、液体供給源は液体噴霧手段より上側に配設されているので、圧縮空気供給源からの圧縮空気の流れに加えて、液体供給源及び液体噴霧手段の高低差を利用することにより、液体供給源に溜められた液体が液体送給ラインを通して効率良く吸引送給される。従って、粘度の大きい液体であっても、液体噴霧手段により液体を効率良く噴霧することができる。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の液体塗布装置によれば、吸引回収手段は、気液分離フィルタにより分離された空気を更に空気と液体とに分離するための気液分離ボックスを備えているので、気液分離フィルタによって分離された空気に含まれる霧状液体を回収することができ、液体の回収効率を高めることができる。また、気液分離フィルタにより分離された空気が気液分離ボックスの壁面に吹き付けられ、この空気に含まれる霧状液体が気液分離ボックスの壁面に付着されることにより空気と液体とが分離されるので、気液分離フィルタにより分離された空気に含まれる霧状液体が微量である場合であっても、この霧状液体を確実に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う液体塗布装置の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による液体塗布装置を示す概略断面図であり、図2は、図1中のA−A線による液体塗布装置の概略断面図であり、図3は、図1中のB−B線による液体塗布装置の概略断面図である。
【0019】
図1〜図3を参照して、図示の液体塗布装置2は、塗布空間4を規定する塗布ハウジング6を備えている。塗布ハウジング6は、略矩形状の底壁8と、この底壁8の外周部からそれぞれ上方に延びる側壁10,12,14,16と、これら側壁10〜16により囲まれた空間の上部を覆う天壁18と、を有しており、これら底壁8、側壁10〜16及び天壁18によって上記塗布空間4が規定される。塗布ハウジングの一側壁10には横長の送込み口20が設けられ、また一側壁10と対向される他側壁14には横長の送出し口22が設けられている。
【0020】
この塗布ハウジング6の外側には外側ハウジング24が設けられている。外側ハウジング24は、塗布ハウジング6の一側壁10の外側に配設された外側壁26と、塗布ハウジング6の他側壁14の外側に配設された外側壁28と、塗布ハウジング6の底壁8の下側に配設された外底壁30と、を有している。塗布ハウジング6の側壁12,16及び天壁18がその側壁10,14を越えて外側に突出し、これら側壁12,16及び天壁18が外側ハウジング24の外側壁26,28に接続されている。従って、この外側ハウジング24は、塗布ハウジング6の外側に外側空間32を規定し、この外側空間32は、塗布ハウジング6の一側壁10の外側から底壁8の下側を通ってその他側壁14の外側まで延びており、塗布ハウジング6の送込み口20及び送出し口22を覆うように設けられている(図2及び図3参照)。
【0021】
外側ハウジング24の外側壁26には、塗布ハウジング6の一側壁10に設けられた送込み口20に対応して、横長の外送込み口34が設けられ、またその外側壁28には、塗布ハウジング6の他側壁14に設けられた送出し口22に対応して、横長の外送出し口36が設けられている。外側ハウジング24の外送込み口34及び外送出し口36並びに塗布ハウジング6の送込み口20及び送出し口22は、所定方向に延びる移動経路38を規定する。プレート状乃至シート状の被塗布材料40は、この移動経路38を通して図3中の矢印Pで示す方向に移動され、外側ハウジング24の外送込み口34及び塗布ハウジング6の送込み口20を通して塗布空間4内に送り込まれ、この塗布空間4を通過した後に塗布ハウジング6の送出し口22及び外側ハウジング24の外送出し口36を通して外部に送り出される。
【0022】
例えば加工液などの液体を噴霧するための噴霧ノズル42(液体噴霧手段を構成する)が塗布ハウジング6の側壁12に取り付けられている。この噴霧ノズル42は、被塗布材料40の移動経路38の上下方向中央部の片側に配設され、この噴霧ノズル42には、液体供給手段44からの液体が供給される。この液体供給手段44は、液体を溜めるための液体供給タンク46(液体供給源を構成する)と、液体供給タンク46に溜められた液体を塗布空間4及び外側空間32を通して循環させるための液体循環手段48と、圧縮空気を供給するためのコンプレッサ50(圧縮空気供給源を構成する)と、コンプレッサ50からの圧縮空気を噴霧ノズル42に送給するための第1圧縮空気送給ライン52と、を備えている。この液体供給タンク46は、噴霧ノズル42より上側に配設されている。
【0023】
また、液体循環手段48は、液体供給タンク46からの液体を噴霧ノズル42に送給するための液体送給ライン54と、塗布空間4及び外側空間32から回収された液体を溜めるための液体回収タンク56(液体溜め手段を構成する)と、液体回収タンク56に溜められた液体を液体供給タンク46に戻すための液体戻しライン58と、液体戻しライン58に配設された循環ポンプ60と、を有している。液体送給ライン54の一端部は液体供給タンク46の底部に接続され、またその他端部は噴霧ノズル42に接続され、本実施形態では、この液体送給ライン54は、液体供給タンク46の底部より下方に延びた後に水平方向に屈曲されて延び、更に上方に屈曲されて噴霧ノズル42まで延びている。
【0024】
このように構成されているので、コンプレッサ50が作動すると、コンプレッサ50からの圧縮空気が第1圧縮空気送給ライン52を通して噴霧ノズル42に送給され、この圧縮空気を利用して噴霧ノズル42内には吸引作用が働くようになる。また、液体供給タンク46内の液体は、その重力によって液体送給ライン54を通して流下し、この流下する際の勢いでもって噴霧ノズル42に流入される。従って、噴霧ノズル42内を流れる圧縮空気の吸引力と、液体供給タンク46及び噴霧ノズル42の高低差とを利用して液体が吸引され、これによって、液体供給タンク46に溜められた液体が液体送給ライン54を通して噴霧ノズル42に効率良く吸引送給され、液体の粘度が大きい場合であっても、噴霧ノズル42により液体を効率良く噴霧することができる。噴霧ノズル42に送給された圧縮空気及び液体は、噴霧ノズル42の内部にて混合され、噴霧ノズル42から霧状となって塗布空間4内に噴出される。
【0025】
このような液体塗布装置2では、塗布空間4内の霧状液体は、塗布ハウジング6の送込み口20及び送出し口22を通して外側空間32に漏出するが、外側空間32に漏出した霧状液体は、吸引回収手段62によって吸引回収される。この吸引回収手段62は、回収空間64を規定する筒状部材66と、コンプレッサ50からの圧縮空気を筒状部材66内に送給するための第2圧縮空気送給ライン67と、筒状部材66内に回収された霧状液体を空気と液体とに分離するための第1気液分離手段68と、第1気液分離手段68により分離された液体を液体回収タンク56に戻すための第1液体回収ライン70と、第1気液分離手段68により分離された空気を更に空気と液体とに分離するための第2気液分離手段72と、第2気液分離手段72により分離された液体を液体回収タンク56に戻すための第2液体回収ライン74と、を備えている。
【0026】
第1気液分離手段68は気液分離フィルタ76から構成され、この気液分離フィルタ76は、筒状部材66の一端部に設けられている。この気液分離フィルタ76の一側部には外部に延びる排気管78が設けられ、またその底部には第1液体回収ライン70の一端部が接続されている。第2気液分離手段72は気液分離ボックス80から構成され、この気液分離ボックス80の一側壁には開口部82が設けられており、気液分離フィルタ76の排気管78は、この開口部82を通して気液分離ボックス80の内部に延びている。また気液分離ボックス80の底壁83には排液孔84が設けられ、この排液孔84には第2液体回収ライン74の一端部が接続されている。これら第1及び第2液体回収ライン70,74の各他端部は液体回収タンク56に接続されている。
【0027】
また、筒状部材66の他端部には接続管86が接続されており、この接続管86とコンプレッサ50とが第2圧縮空気送給ライン67を介して相互に接続され、コンプレッサ50からの圧縮空気は、第2圧縮空気送給ライン67及び接続管86を介して筒状部材66内に送給される。接続管86及び筒状部材66の大部分は、外側空間32の底部(具体的には、塗布ハウジング6の底壁8と外側ハウジング24の外底壁30との間の空間)に配設され、側壁12から外部に突出される接続管86の一端部に第2圧縮空気送給ライン67が接続され、側壁16から外部に突出される筒状部材66の一端部に気液分離フィルタ76が取り付けられる。また、筒状部材66には吸引口88が設けられており、コンプレッサ50からの圧縮空気が第2圧縮空気送給ライン67及び接続管86を通して筒状部材66内を流れる際に、圧縮空気の流れを利用して吸引口88を通して外側空間32に吸引作用が働くように構成されている。
【0028】
また、塗布ハウジング6の底壁8には排液孔90が設けられ、この排液孔90には第3液体回収ライン92の一端部が接続されている。また、外側ハウジング24の外底壁30には排液孔94が設けられ、この排液孔94には第4液体回収ライン96の一端部が接続されている。これら第3及び第4液体回収ライン92,96の各他端部は液体回収タンク56に接続されている。
【0029】
本実施形態では、塗布ハウジング6の天壁18は両側に傾斜して設けられている。この天壁18は、移動経路38に沿って移動される被塗布材料40の幅方向(図1において左右方向)中央部が最も高く、この幅方向中央部から両側に向かって下方に直線状に傾斜して延びている。このように天壁18を傾斜させることによって、天壁18に付着した液体は天壁18の傾斜面に沿って側壁12,16に向けて流れ、この側壁12,16に沿って流下し、底壁8の排液孔90及び第3液体回収ライン92を通して液体回収タンク56に回収される。従って、天壁18に付着した液体は、移動経路38を移動する被塗布材料40の表面に滴下することがなく、これにより後述するように液体を実質上均一に塗布することができる。なお、このような構成に代えて、天壁18の幅方向一側端から他側端に向けて下方に傾斜させるように構成してもよい。
【0030】
上述した液体塗布装置2を用いて被塗布材料40の表面に液体を塗布する方法について説明すると、次の通りである。コンプレッサ50が作動すると、コンプレッサ50からの圧縮空気が第1圧縮空気送給ライン52を通して噴霧ノズル42に送給されるとともに、第2圧縮空気送給ライン67及び接続管86を通して筒状部材66内に送給される。
【0031】
圧縮空気が噴霧ノズル42に送給されると、この圧縮空気の流れによる吸引作用と、噴霧ノズル42及び液体供給タンク46の高低差とによって、液体供給タンク46内の液体が液体送給ライン54を通して噴霧ノズル42に吸引送給され、噴霧ノズル42において圧縮空気及び液体が混合されて噴霧ノズル42から噴霧される。従って、外側ハウジング24の外送込み口34及び塗布ハウジング6の送込み口20を通して被塗布材料40が塗布空間4内に送り込まれ、この塗布空間4を通して移動すると、噴霧ノズル42は移動経路38の真横方向から被塗布材料40の両面に向けて液体を噴霧する。噴霧ノズル42から噴霧された液体は、塗布空間4内に噴霧されて霧状に拡散されて流れ、これにより塗布空間4内は霧状液体によって実質上均一に満たされるとともに、被塗布材料40の両面に向けて直接的に吹き付けられる。従って、塗布空間4内に充満された霧状液体が被塗布材料40の両面に付着されるとともに、噴霧ノズル42から噴霧された液体が直接的に被塗布材料40の両面に付着されるようになり、これにより被塗布材料40の表面粗度がきめ細かい場合であっても、被塗布材料40の両面にムラ無く均一に液体を塗布することができる。
【0032】
なお、塗布空間4内に充満された霧状液体の一部が側壁10〜16に付着すると、この付着した液体はこれら側壁10〜16に沿って流下し、底壁8の排液孔90及び第3液体回収ライン92を通して液体回収タンク56に回収される。このように回収された液体は、循環ポンプ60の作用によって液体戻しライン58を通して液体供給タンク46に戻され、上述と同様に噴霧ノズル42に送給されて再利用される。この循環ポンプ60は、液体回収タンク56内の液体の水位が第1設定水位よりも上昇する(又は、液体供給タンク46内の液体の水位が第2設定水位よりも低下する)と作動が開始され、また、液体回収タンク56内の液体の水位が上記第1設定水位よりも低下する(又は、液体供給タンク46内の液体の水位が上記第2設定水位よりも上昇する)と作動が停止される。
【0033】
また、塗布空間4内に充満された霧状液体の一部は、送込み口20及び送出し口22を通して外側空間32に漏出されるが、この漏出された霧状液体は次のようにして回収される。コンプレッサ50からの圧縮空気が筒状部材66内に送給されると、この圧縮空気の流れによって吸引口88を介して外側空間32に吸引力が作用し、外側空間32内の霧状液体を含む空気が吸引口88を通して筒状部材66内に吸引される。このように吸引された空気は気液分離フィルタ76に流れ、この気液分離フィルタ76にて空気と液体とに分離され、分離された液体は第1液体回収ライン70を通して液体回収タンク56に回収される。また、分離された空気は排気管78から気液分離ボックス80の内壁面に向けて吹き付けられ、これによりこの空気に含まれる霧状液体が気液分離ボックス80の内壁面に付着され、このようにして液体と気体とに分離される。分離された液体は、気液分離ボックス80の内壁面に沿って流下し、その底壁83の排液孔84及び第2液体回収ライン74を通して液体回収タンク56に回収される。また、分離された空気は開口部82を通して外部に排出される。従って、気液分離フィルタ76により分離された空気に含まれる霧状液体が微量である場合であっても、この霧状液体を確実に回収することができる。
【0034】
なお、外側空間32に漏出した霧状液体の一部が外側壁26,28に付着すると、この付着した液体は外側壁26,28に沿って流下し、外底壁30の排液孔94及び第4液体回収ライン96を通して液体回収タンク56に回収される。このように回収された液体は、上述したのと同様に、循環ポンプ60の作用によって液体戻しライン58を通して液体供給タンク46に戻され、噴霧ノズル42に送給されて再利用される。
【0035】
このように外側空間32に漏出した霧状液体を回収する際には、外側空間32が負圧に保たれるので、外部の空気が外側ハウジング24の外送込み口34及び外送出し口36を通して外側空間32内に流入される。この空気流によって外側空間32内の空気が外部へ漏出するのが防止され、それ故に、塗布空間4内の霧状液体が外部へ漏出するのを確実に防止することができる。
【0036】
以上、本発明に従う液体塗布装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0037】
例えば、上述した液体塗布装置2をプレス装置によりプレス加工を施す被塗布材料40の表面に加工液を塗布するための加工液塗布装置として用いる場合には、液体塗布装置2に高さ調節機構を設け、この高さ調節機構によって、被塗布材料40の移動経路38の高さが調節されると、これと連動して液体塗布装置2の高さが調節されるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態による液体塗布装置を示す概略断面図である。
【図2】図1中のA−A線による液体塗布装置の概略断面図である。
【図3】図1中のB−B線による液体塗布装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0039】
2 液体塗布装置
4 塗布空間
6 塗布ハウジング
32 外側空間
38 移動経路
40 被塗布材料
42 噴霧ノズル
44 液体供給手段
46 液体供給タンク
48 液体循環手段
50 コンプレッサ
52 第1圧縮空気送給ライン
54 液体送給ライン
56 液体回収タンク
58 液体戻しライン
62 吸引回収手段
64 回収空間
67 第2圧縮空気送給ライン
68 第1気液分離手段
72 第2気液分離手段
76 気液分離フィルタ
80 気液分離ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、前記塗布空間内に液体を噴霧するための液体噴霧手段と、前記液体噴霧手段に液体を供給するための液体供給手段と、を備えた液体噴霧装置において、
前記塗布ハウジングには、被塗布材料が移動される移動経路の上下方向中央部の片側に前記液体噴霧手段が配設され、
被塗布材料は、前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口を通して外部に送り出され、前記液体噴霧手段は、前記塗布空間を通して移動される被塗布材料の両面に付着するように液体を噴霧することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ハウジングの少なくとも前記送込み口及び前記送出し口を覆うための外側空間を規定し、前記送込み口に対応する外送込み口及び前記送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、前記塗布空間から前記送込み口及び前記送出し口を通して前記外側空間に漏出した霧状液体を吸引して回収するための吸引回収手段と、を更に備え、
被塗布材料は、前記外側ハウジングの前記外送込み口及び前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口及び前記外側ハウジングの前記外送出し口を通して外部に送り出されることを特徴とする請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、前記塗布ハウジングの少なくとも前記送込み口及び前記送出し口を覆うための外側空間を規定し、前記送込み口に対応する外送込み口及び前記送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、前記塗布空間内に液体を噴霧するための液体噴霧手段と、前記液体噴霧手段に液体を供給するための液体供給手段と、前記塗布空間から前記送込み口及び前記送出し口を通して前記外側空間に漏出した霧状液体を吸引して回収するための吸引回収手段と、を備え、被塗布材料は、前記外側ハウジングの前記外送込み口及び前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口及び前記外側ハウジングの前記外送出し口を通して外部に送り出され、前記塗布空間を通して移動される間に、前記液体噴霧手段から噴霧された液体が被塗布材料の表面に付着する液体噴霧装置において、
前記液体供給手段は、液体を溜めるための液体供給源と、前記液体供給源に溜められた液体を前記塗布空間及び前記外側空間を通して循環させるための液体循環手段と、圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源からの圧縮空気を前記液体噴霧手段に送給するための圧縮空気送給ラインと、を備え、前記液体循環手段は、前記液体供給源からの液体を前記液体噴霧手段に送給するための液体送給ラインと、前記塗布空間及び前記外側空間から回収された液体を溜めるための液体溜め手段と、前記液体溜め手段に溜められた液体を前記液体供給源に戻すための液体戻しラインと、を有し、前記液体供給源は前記液体噴霧手段より上側に配設され、
前記圧縮空気供給源からの圧縮空気の流れと、前記液体供給源及び前記液体噴霧手段の高低差とを利用して、前記液体供給源に溜められた液体が前記液体送給ラインを通して吸引送給され、圧縮空気と液体とが混合されて前記液体噴霧手段から噴霧されることを特徴とする液体噴霧装置。
【請求項4】
送込み口及び送出し口を有し、内部に塗布空間を規定する塗布ハウジングと、前記塗布ハウジングの少なくとも前記送込み口及び前記送出し口を覆うための外側空間を規定し、前記送込み口に対応する外送込み口及び前記送出し口に対応する外送出し口を有する外側ハウジングと、前記塗布空間内に液体を噴霧するための液体噴霧手段と、前記液体噴霧手段に液体を供給するための液体供給手段と、前記塗布空間から前記送込み口及び前記送出し口を通して前記外側空間に漏出した霧状液体を吸引して回収するための吸引回収手段と、を備え、被塗布材料は、前記外側ハウジングの前記外送込み口及び前記塗布ハウジングの前記送込み口を通して前記塗布空間に送り込まれ、前記塗布ハウジングの前記送出し口及び前記外側ハウジングの前記外送出し口を通して外部に送り出され、前記塗布空間を通して移動される間に、前記液体噴霧手段から噴霧された液体が被塗布材料の表面に付着する液体噴霧装置において、
前記吸引回収手段は、前記外側空間に漏出した霧状液体を回収するための回収空間と、圧縮空気を供給するための圧縮空気供給源と、前記圧縮空気供給源からの圧縮空気を前記回収空間に送給するための圧縮空気送給ラインと、前記回収空間に回収された霧状液体を空気と液体とに分離するための第1気液分離手段と、前記第1気液分離手段により分離された液体を前記液体供給手段に戻すための第1液体回収ラインと、前記第1気液分離手段により分離された空気を更に空気と液体とに分離するための第2気液分離手段と、前記第2気液分離手段により分離された液体を前記液体供給手段に戻すための第2液体回収ラインと、を備え、前記第1気液分離手段は気液分離フィルタから構成され、また前記第2気液分離手段は気液分離ボックスから構成されており、
前記圧縮空気供給源からの圧縮空気の流れを利用して前記外側空間に漏出した霧状液体が前記回収空間に吸引回収され、また前記気液分離フィルタにより分離された空気が前記気液分離ボックスの壁面に吹き付けられ、この空気に含まれる液体が前記気液分離ボックスの壁面に付着されることにより空気と液体とが分離されることを特徴とする液体塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−101285(P2009−101285A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274841(P2007−274841)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(591041749)日本電産キョーリ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】