説明

液体塗布部材

【課題】材料選択の幅が広く、組立工程が簡素化された液体塗布部材を得る。
【解決手段】先端部材90の大径部92と本体12の外周面との間に隙間tが設けられた状態から、先端部材90を本体12にねじ込むと、先端部材90を介して貫通部材82が本体12側へ移動し、貫通部材82の貫通部84が薄膜部72を突き破る。これにより、液体充填部20、貫通部材82の孔部82A及びパイプ86が連通され、液体充填部20内の液体が筆体76に浸潤可能となる。このため、開口にシールを貼着する場合と比較して、組立工程を減らすことができ、また、コストダウンを図ることができる。さらに、先端部材90を移動させることで薄膜部72を貫通させることができるため操作が簡単であり、便利である。また、シール部材66と貫通部84とは別部材であるため、異なる材料で形成しても良く、材料選択の幅が拡がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を塗布する液体塗布部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アイライナー等として用いられる液体塗布部材では、塗布部を有する先軸体と液体を収納した軸本体との接合部にストッパーを介在させ、互いに非連通状態とする密閉構造において、特許文献1のように、液体を入れた軸本体の開口端に、液体を密閉するための封止ボールを嵌合させるシールボール受けが設けられたものが知られている。また、特許文献2では、液体を収納した軸本体の貯留部先端と液体を封止するシール材が保持される絞り部とを連続一体化構造とすることで、絞り部に封止ボールを嵌合させ、使用開始時に先軸体の後端部を収納管の連結通路内に深く嵌合させることによって該先軸体の後端突出部がシール材を絞り部から貯留部内へ押し出され、該貯留部から先端塗布部への塗布液の供給を可能としている。
【特許文献1】実公平7−25259号公報
【特許文献2】特開2004−50561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1は、軸本体に液体を充填後にシールボール受けを軸本体の開口端に圧入し、次に、封止ボールを圧入するといった複数の行程を経なければならない。また、シールボール受けと封止ボールの嵌合強度のバラツキが大きく、気密性が低い。
【0004】
また、特許文献2は、貯留部先端と絞り部が一体化しているため、貯留部先端と絞り部の材質が同一となり、最適な密閉を保つための硬度を調整することが困難となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、材料選択の幅が広く、組立工程が簡素化された液体塗布部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、液体塗布部材において、開口が設けられた容器と、前記容器に取付けられ、前記開口を塞ぐ薄膜が一体に形成されたシール部材と、前記シール部材に取付けられ、移動して前記薄膜を貫通する中空の貫通部材と、前記貫通部材を通じて、前記容器内に充填された液体が浸潤される塗布部と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明では、容器には、開口を塞ぐ薄膜が一体に形成されたシール部材が取付けられている。このシール部材には、移動してシール部材の薄膜を貫通する中空の貫通部材が取付けられ、貫通部材によって薄膜が貫通すると、該貫通部材を通じて容器内の液体が塗布部に浸潤し、該塗布部で液体が塗布可能となる。
【0008】
容器の開口にシール部材を設けることで、容器内の液体を密閉状態とすることができ、また、容器の使用、未使用状態が目視によりすぐ分かるようになっている。また、容器の開口を塞ぐ薄膜をシール部材に一体に形成することで、開口にシールを貼着する場合と比較して組立工程を減らすことができ、また、コストダウンを図ることができる。
【0009】
さらに、貫通部材を移動させることで薄膜を貫通させることができるため操作が簡単であり、便利である。また、シール部材と貫通部材とは別部材であるため、異なる材料で形成しても良く、材料選択の幅が拡がる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体塗布部材において、前記容器が筒体であり、前記筒体に設けられ、前記液体が充填された液体充填部と、前記液体充填部の端部に設けられ、前記筒体に対して回転可能に設けられた回転部と、前記回転部の回転により、前記筒体の軸方向に沿って移動可能な棒部材と、前記液体充填部内に設けられ、該棒部材と共に移動し該液体充填部内の液体を前記開口側へ押出す押出部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明では、容器を筒体とし、該筒体に、液体が充填された液体充填部を設けている。また、液体充填部の端部には回転部を設け、筒体に対して回転可能としている。この回転部の回転により、筒体に設けられた棒部材を筒体の軸方向に沿って移動可能としている。また、液体充填部内には、棒部材と共に移動する押出部材を配置し、棒部材の移動によって該液体充填部内の液体を圧縮し、該液体を塗布部側へ押出している。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の液体塗布部材において、前記筒体に、前記回転部の回転方向を一方向に規制するラチェット機構を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、回転部の回転方向を一方向に規制するラチェット機構を設けることで、回転部の逆回転を防止することができると共に、ラチェット機構によるラチェット効果でクリック音が発生するため適切な回転角度が誰にでも分かるようになっており、定量の液体を塗布部側へ押出すことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の液体塗布部材において、前記ラチェット機構が、前記筒体の内周面に設けられた凹凸部と、前記回転部の外周面に設けられ、前記筒体の内側に配置され、回転部の一方向の回転へは前記凹凸部を滑り回転部を回転可能とし、該回転部の他方向の回転へは凹凸部に係止され回転部の回転を規制するラチェット爪と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明では、筒体の内周面には凹凸部を設けている。回転部には筒体の内側に配置されるラチェット爪を設け、回転部の一方向の回転へは、該ラチェット爪を凹凸部で滑らせ回転部を回転可能とする。そして、回転部の他方向の回転へは、ラチェット爪を凹凸部に係止させ回転部の回転を規制する。
【0016】
筒体の内周面に凹凸部を形成し、回転部にラチェット爪を形成することで、別途ラチェット機構を設けた場合と比較して、部品点数を削減することができ、組立工数が低減され、コストダウンを図ることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の液体塗布部材において、前記塗布部が複数の毛を束ねた筆体であり、前記筆体が装着されると共に、前記貫通部材を収容する収容部材と、前記筆体を覆うと共に、前記収容部材に当接するインナーキャップと、前記インナーキャップを覆うアウターキャップと、前記アウターキャップと前記インナーキャップの間に配設され、該インナーキャップを前記収容部材側へ付勢する付勢手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明では、塗布部を、複数の毛を束ねた筆体とし、該筆体が装着されると共に、貫通部材を収容する収容部材を設けている。そして、インナーキャップによって筆体を覆うと共に、該インナーキャップが収容部材に当接する。このインナーキャップを覆うアウターキャップを設け、該アウターキャップとインナーキャップの間には付勢手段を配設している。そして、この付勢手段によって、インナーキャップを収容部材側へ付勢し、該収容部材に確実に当接させるようにしている。
【0019】
これにより、筆体の乾燥を防止すると共に、インナーキャップを通じてアウターキャップから液体が漏れないようにしている。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の液体塗布部材において、前記筒体及び前記収容部材には、互いに噛み合うネジ部が設けられたことを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明では、筒体及び収容部材に、互いに噛み合うネジ部を設けることで、収容部材を回転させる方向を変えるだけで、該収容部材を筒体に対して着脱させることができるため、収容部材を筒体から取り外したりする場合は便利である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、上記構成としたので、材料選択の幅が広く、組立工程を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態に係る液体塗布部材について説明する。
【0024】
図1に示すように、アイライナー等として用いられる液体塗布部材10は、本体(容器)12とアウターキャップ14に大別される。
【0025】
図2に示すように、本体12は筒状を成しており、本体12の一端部は他端部よりも小径とされ、本体12の一端部には開口16が設けられ、本体12の他端部には開口18が設けられている。そして、開口16側には小径の雄ネジ部12Aが形成されている。
【0026】
また、本体12の一端側には、液体が充填される液体充填部20が設けられており、本体12の他端側には、本体12の軸方向に沿って移動可能な略棒状のネジ棒(棒部材)22が設けられ、液体充填部20とネジ棒22の間には、略円板状のピストン(押出部材)26が設けられている。
【0027】
そして、このピストン26は、ネジ棒22の移動と共に移動し、液体充填部20内の容積を小さくして、液体充填部20内の液体を圧縮し、該液体を開口16から押出すようにしている。
【0028】
また、ピストン26は弾性及び潤滑性を有する樹脂で形成されており、図2及び図3に示すように、ピストン26の両端側の外縁部からは、斜め上方へ向かって僅かに外側へ張り出す、断面が略円錐台状の当接片28が延出し、液体充填部20の内壁に確実に当接して、液体充填部20から液体が漏れないようにして液体充填部20の内壁面(本体12の内壁面)を摺動する。
【0029】
さらに、ピストン26のネジ棒22側には、当接片28の内側に、当接片28よりも高く突出し厚肉の環状嵌合部30が立設しており、ネジ棒22の先端部に設けられた略円柱状の嵌合突部32を嵌合可能としている。この嵌合突部32が環状嵌合部30に嵌合することで、ネジ棒22の移動と共に、ピストン26を本体12の軸方向に沿って確実に移動させることができる。
【0030】
ここで、ネジ棒22の外周面には雄ネジ部22Aが形成されており、ネジ棒22には、略円筒状の固定ネジ34がねじ込まれている。本体12内には、固定ネジ34が配置される箇所に本体12の軸方向に沿って溝部(凹部)36が形成されており、該溝部36に固定ネジ34の外周面に設けられた突起38が係合する。これにより、固定ネジ34は、本体12内に収容された状態で、該本体12に対して回り止めされる。
【0031】
一方、ネジ棒22は有底の略円筒状の尾栓体(回転部)46で覆われるようになっている。尾栓体46は外部に露出する大径の把持部48と、本体12内に収納される小径の収納部50と、を備えており、把持部48と本体12とはその外径が略同一となって、収納部50が本体12内に収納された状態で、把持部48と本体12とは面一となる。
【0032】
また、収納部50の把持部48側には、収納部50の周方向に沿って環状の突起部52が突設している。本体12の開口18側の内周面には、本体12の周方向に沿って環状の被係止部54が凹設されており、本体12内に尾栓体46の収納部50を収納するとき、被係止部54に突起部52を係止させることで、尾栓体46は本体12に対して抜け止めされると共に、回転可能に装着されることとなる。
【0033】
さらに、収納部50の中央には、本体12の溝部36と対面する位置に、ラチェット機構40が設けられている。このラチェット機構40は、図7に示すように(図7は図2で示す7−7矢視図である)、180度間隔で、収納部50の縮径方向へ向かう凹部42が形成され、該凹部42の一側壁からは、凹部42の底面との間に隙間を設けた状態で尾栓体46の回転方向(矢印A方向)と反対方向へ向かって張り出すラチェット片(ラチェット爪)44が形成されている。このラチェット片44の先端部が溝部36内に収容可能となっている。
【0034】
ここで、溝部36は周方向に沿って45度間隔毎に形成され、これにより、本体12の内周面はその周方向に沿って凹凸状態となっている。
【0035】
尾栓体46を矢印A方向へ回転させようとすると、ラチェット片44の先端部が溝部36と溝部36とで形成された突起部37の側壁によって押圧され、ラチェット片44は凹部42内へ向かって撓む。これにより、ラチェット片44の先端部が突起部37の先端面を滑り、尾栓体46が矢印A方向へ回転可能となる。そして、ラチェット片44の先端部が溝部36に到達すると、ラチェット片44の先端部は復元して溝部36内に収容される。
【0036】
このように、ラチェット片44の先端部が突起部37の先端面を滑り溝部36に到達するとき、ラチェット片44の先端部が、突起部37によって弾かれ、クリック音が発生する。このため、このクリック音の発生により、尾栓体46の回転角度が分かるようになっている(ここでは45度)。
【0037】
一方、尾栓体46を矢印A方向と逆方向へ回転させようとした場合、尾栓体46が回転停止した状態では、ラチェット片44の先端部は、溝部36内に収容されているため、ラチェット片44の先端部の端面が、溝部36の側壁に当接した状態で突っ張り、回転移動は規制され、尾栓体46を回転させることができない。このため、尾栓体46は矢印A方向しか回転させることはできない。
【0038】
ところで、尾栓体46の内面46Aは、断面が略楕円状を成しており、円の対面する円弧を互いに平行な弦でカットした形状としている。ここで、ネジ棒22は尾栓体46の内面46Aに合わせて略楕円状に形成されており、該ネジ棒22は尾栓体46に対して回り止めされるようになっている。そして、これにより、尾栓体46を回転させると、ネジ棒22が尾栓体46と一体に回転することとなる。
【0039】
このため、尾栓体46を回転させると、ネジ棒22が回転し、該ネジ棒22の雄ネジ部22Aと螺合する固定ネジ34の雌ネジ部64を介して、ネジ棒22が本体12の軸方向に沿って移動する。これにより、ネジ棒22の先端部の嵌合突部32を介して、ピストン26が押圧され、本体12の軸方向に沿って移動可能となる。
【0040】
一方、図2に示すように、本体12の開口16には、略円筒状の樹脂製のシール部材66が嵌め込まれている。このシール部材66の外周面には、図5に示すように、周方向に沿って形成された環状突部68が二箇所設けられており、本体12の内周面に確実に接触し、液体充填部20内の液体が漏れないようにしている。
【0041】
また、シール部材66の一端部には、フランジ部70が設けられており、該フランジ部70が開口16の端面に面接触している。シール部材66の他端部には、シール部材66と一体に成形された薄膜部72が設けられており、シール部材66の他端部を覆っている。このため、このシール部材66を本体12の開口16に取付けた状態では、本体12は閉塞され、本体12内の液体が外部に漏れることはない。
【0042】
ところで、図2に示すように、アウターキャップ14は有底の略円筒体を成しており、アウターキャップ14の内側には、有底の略円筒体を成すインナーキャップ74が設けられている。このインナーキャップ74で塗布部としての筆体76を覆う。
【0043】
この筆体76は、図2及び図5に示すように、複数の毛で構成されており、筆体76が略円錐状となるように、環状の基体78で複数の毛が束ねられている。この基体78には略円筒状のプラグ80の一端部に設けられたフランジ部81が当接しており、このプラグ80に略円筒状の貫通部材82の一端部が外嵌され,貫通部材82の一端面がフランジ部81に当接する。
【0044】
また、貫通部材82の他端部には、先端へ行くに従って先細となりシール部材66の薄膜部72を突き破る(貫通させる)貫通部84が設けられている。
【0045】
筆体76及びプラグ80の軸芯には、パイプ86が配設されており、該パイプ86内を液体が流動可能となっている。このパイプ86の一端部には、外縁部が外側へ向かって湾曲する湾曲部88を設けており、該湾曲部88の外縁部は、貫通部材82の孔部82Aの内径よりも大きくなっている。
【0046】
ここで、プラグ80の端面には、この湾曲部88が収容される収容部80Aが形成されており、該収容部80A内に湾曲部88が収容された状態で、該湾曲部88は孔部82Aの周縁部に当接し、孔部82Aを流動する液体をパイプ86内へ誘導するようにしている。
【0047】
さらに、筆体76は、断面が略円錐台状の先端部材(収容部材)90に装着されるようになっており、先端部材90の内周面に形成された環状の台座91に基体78が固定され、先端部材90の孔部90Aを通じて、先端部材90の先端部から筆体76の先端側が露出する。このように、筆体76の基部側を先端部材90で覆うことで、筆体76の毛が拡がらないようにしている。
【0048】
また、先端部材90の基部は、略円筒状の大径部92とされており、該大径部92の内周面には、本体12の開口16側に形成された雄ネジ部12Aにねじ込み可能な雌ネジ部92Aが形成されている。また、大径部92の外周面は、アウターキャップ14及び本体12の外周面と略同径とされ、アウターキャップ14、本体12及び先端部材90が装着された状態で各部品が面一となるようにしている(図6(B)参照)。
【0049】
さらに、先端部材90の内周面には、周方向に沿って環状の係止突起96が突設している。一方、貫通部材82の外周面には、その周方向に沿って環状突起94が形成されている。貫通部材82の一端面によって、フランジ部81を介してプラグ80を筆体76の基体78に当接させ、プラグ80を移動規制させた状態で、環状突起94が係止突起96に係止される。これにより、貫通部材82が抜け止めされ、筆体76、パイプ86及びプラグ80と共に先端部材90に取付けられる。
【0050】
そして、図6(A)、(B)に示すように、先端部材90(大径部92)の雌ネジ部92Aが、本体12の雄ネジ部12Aの奥方までねじ込まれると、貫通部材82の貫通部84がシール部材66の薄膜部72を突き破り、本体12の液体充填部20と貫通部材82の孔部82Aが連通する。この孔部82A及びパイプ86を通じて、毛管力により筆体76に液体が浸潤することとなる。
【0051】
また、図2及び図4に示すように、先端部材90の外周面には、その周方向に沿って環状の凹部98が形成されている。一方、大径部92を除く先端部材90を覆うアウターキャップ14の内周面には、該凹部98が係止される環状の突部100が形成されており、アウターキャップ14の突部100が先端部材90の凹部98に係止されることで、先端部材90にアウターキャップ14が装着されることになる。
【0052】
また、アウターキャップ14の内周面の開口側には、図1に示すように、アウターキャップ14の軸方向に沿って複数のリブ15で構成されたローレット部17が形成されている。一方、先端部材90の外周面の中央部には、先端部材90の軸方向に沿って複数のリブ93で構成され、ローレット部17と係合可能なローレット部95が形成されている。
【0053】
このため、先端部材90にアウターキャップ14が装着された状態で、アウターキャップ14は先端部材90に対して回り止めされることとなる。
【0054】
従って、図6(A)、(B)に示すように、先端部材90の雌ネジ部92Aを本体12の雄ネジ部12Aの奥方までねじ込むとき、アウターキャップ14を回転させることで、先端部材90を回転させることができる。
【0055】
つまり、アウターキャップ14を先端部材90に装着した状態のまま、アウターキャップ14の回転によって、本体12の液体充填部20と貫通部材82の孔部82Aを連通させることができる。
【0056】
ところで、アウターキャップ14の内側には、インナーキャップ74が設けられており、該インナーキャップ74の開口縁部が、先端部材90の外周面に当接するようになっている。また、インナーキャップ74とアウターキャップ14の間には、スプリング102を配設しており、インナーキャップ74をアウターキャップ14から押出す方向へ付勢している。これにより、インナーキャップ74を先端部材90の外周面に押し付け、筆体76を密閉状態にしている。
【0057】
ここで、インナーキャップ74の外周面には、その周方向に沿って突起74Aが突出しており、アウターキャップ14の内周面に形成された突起14Aに当接するようになっている。この状態で、インナーキャップ74の開口縁部は、僅かにアウターキャップ14の開口縁部よりも奥方となっている。
【0058】
アウターキャップ14を先端部材90から取り外すと、スプリング102によりインナーキャップ74はアウターキャップ14から押出される方向へ付勢されるが、突起74Aが突起14Aに当接することで、インナーキャップ74は移動規制されるため、インナーキャップ74がアウターキャップ14から突出することはない。
【0059】
次に、本実施形態に係る液体塗布部材の作用について説明する。
【0060】
図6(A)に示すように、液体塗布部材10が未使用の状態では、先端部材90の大径部92と本体12の外周面との間には、隙間tが設けられている。図示はしないが、この隙間tには、スペーサ部材等を介在させ、先端部材90が不用意にさらにねじ込まれることがないようにしている。
【0061】
このように、先端部材90の大径部92と本体12の外周面との間に隙間tが設けた状態では、貫通部材82とシール部材66の薄膜部72との間には隙間t’(<t)が設けられ、薄膜部72は閉塞された状態である。
【0062】
本実施形態では、本体12の開口16にシール部材66を設けることで、液体充填部20内の液体を密閉状態とすることができ、該隙間tの有無によって、液体塗布部材10の使用、未使用状態が目視によりすぐ分かるようになっている。
【0063】
そして、先端部材90の大径部92と本体12の外周面との間に隙間tが設けられた状態から、前述のスペーサ部材を取り外し、アウターキャップ14を回転させて先端部材90を本体12にねじ込むと、図6(B)に示すように、先端部材90を介して貫通部材82が本体12側へ移動し、貫通部材82の貫通部84が薄膜部72を突き破る。
【0064】
これにより、液体充填部20、貫通部材82の孔部82A及びパイプ86が連通され、液体充填部20内の液体が筆体76に浸潤可能となる。
【0065】
このように、本体12の開口16を塞ぐ薄膜部72をシール部材66に一体に形成することで、開口16にシールを貼着する場合と比較して、組立工程を減らすことができ、また、コストダウンを図ることができる。さらに、先端部材90を移動させることで薄膜部72を貫通させることができるため操作が簡単であり、便利である。
【0066】
ここで、本体12と先端部材90を嵌合させるとき(本体12の液体充填部20と貫通部材82の孔部82Aを連通させるとき)、ネジの回転応力を利用するため、薄膜部72を容易に破ることができる。また、従来の容器では、図示はしないが、先端部材を本体に対して圧入嵌合しているため、嵌合部に折曲げ力が作用した場合、先端部材が外れてしまうということが懸念される。しかし、本実施形態では、本体12と先端部材90の嵌合を、ネジ嵌合としたため、従来の圧入嵌合より、折曲げ力に対して強い。
【0067】
また、シール部材66と貫通部材82とは別部材であるため、異なる材料で形成しても良く、材料選択の幅が拡がる。また、先端部材90と本体12は螺合により一体化させるため、先端部材90と本体12の着脱が容易であり、消耗品である本体12をカートリッジタイプにすることもできる。
【0068】
一方、先端部材90の外周面には、アウターキャップ14の内側に設けられたインナーキャップ74の開口縁部が当接するようになっているが、インナーキャップ74とアウターキャップ14の間にスプリング102を配設し、インナーキャップ74を先端部材90の外周面に押し付け、筆体76を密閉状態にすることで、筆体76の乾燥を防止すると共に、インナーキャップ74を通じてアウターキャップ14から液体が漏れないようにすることができる。
【0069】
ところで、液体塗布部材10を使用していくと、図4に示す液体充填部20内の液体は徐々に減少していくこととなるが、液体の粘度が高い場合、粘度が低い液体と比較すると、筆体76の浸潤度が低いため、筆体76へ液体を送る必要が生じる。なお、液体の粘度が低い場合でも、使用当初には、筆体76へ液体を送る必要が生じる場合もある。
【0070】
このような場合、液体充填部20内でピストン26を移動させ、液体充填部20内の液体を筆体76側へ押出す。
【0071】
具体的には、尾栓体46を回転させる。尾栓体46を矢印A方向へ回転させると、尾栓体46と一体にネジ棒22が回転するため、該ネジ棒22の雄ネジ部22Aと螺合する固定ネジ34の雌ネジ部64を介して、ネジ棒22が本体12の軸方向に沿って移動する。これにより、ネジ棒22の先端部の嵌合突部32を介して、ピストン26が押圧され、液体充填部20内の液体が圧縮され、筆体76側へ押出される。
【0072】
ここで、尾栓体46を矢印A方向へ回転させると、ラチェット片44は凹部42内へ向かって撓み、ラチェット片44の先端部が、突起部37の先端面を滑り、溝部36に到達すると復元して溝部36内に収容される。このとき、ラチェット片44の先端部によって、突起部37が弾かれ、クリック音が発生する。ここでは、尾栓体46の1/8回転でクリック音が発生することとなるが、ラチェット片44によるラチェット効果で適切な回転角度が誰にでも分かるため、定量の液体を筆体76側へ押出すことができる。
【0073】
一方、尾栓体46を矢印A方向と逆方向へ回転させようとしても、尾栓体46は回転しないため、尾栓体46の回転方を間違えることはない。
【0074】
なお、本実施形態では、図2、図7及び図9(A)に示すように、尾栓体46の収納部50に直接ラチェット片44を形成させたが、必ずしも同じ部材である必要はない。例えば、図8及び図9(B)に示すように、尾栓体46とは別に、収納部50に装着可能なラチェット部104を設けても良い。
【0075】
この場合、収納部50に小径部106を設け、該小径部106に略円筒状に形成されたラチェット部104を嵌め込むようにする。ここで、ラチェット部104と該小径部106とを一体に回転させるため、図10に示すように、小径部106は円の対面する円弧を互いに平行な弦でカットした形状としている。
【0076】
そして、ラチェット部104の内周面側には、小径部106のカットされた端面106Aの一部に当接する突起部104Aが形成され、該突起部104Aが小径部106の端面106Aに当接した状態で、ラチェット部104と小径部106との相対回転が規制され、尾栓体46(小径部106)の回転と共に、ラチェット部104が回転することとなる。
【0077】
また、ラチェット部104には、切込み部108を形成し、尾栓体46の回転方向(矢印A方向)と反対方向へ向かって、該切込み部108へ向かって張り出すと共に、溝部36内に収容可能なラチェット片(ラチェット爪)110を形成する。
【0078】
なお、本実施形態は、シール部材66と一体に薄膜部72を成形し、本体12を最初に使用の際に貫通部材82によって該薄膜部72を突き破ることができれば良いため、液体塗布部材10の構成としてはこれに限るものではない。
【0079】
また、アウターキャップ14の内側にインナーキャップ74を設け、該インナーキャップ74をスプリング102で先端部材90側へ付勢するようにしたが、このインナーキャップも必ずしも必要なものではない。
【0080】
さらに、液体塗布部材10は液体を塗布するものであれば良く、アイライナーに限るものではなく、また、液体であれば化粧品に限るものではない。例えば、修正液などに利用することもできる。また、容器も筒体に限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の本体とキャップを示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の本体と塗布部材の構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の本体側の構成を示す分解断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の本体とキャップを示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の塗布部材側の構成を示す分解断面図である。
【図6】(A)は、本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の未使用の状態を示す断面図であり、(B)は、該液体塗布部材の使用可能な状態を示す断面図である。
【図7】図2の7−7矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の変形例を示す本体側の断面図である。
【図9】(A)は本発明の実施の形態に係る液体塗布部材の本体側の正面図であり、(B)は図8に対応する変形例を示す分解正面図である。
【図10】図8の10−10矢視図である。
【符号の説明】
【0082】
10 液体塗布部材
12 本体(筒体、容器)
12A 雄ネジ部
14 アウターキャップ
16 開口
20 液体充填部
22 ネジ棒(棒部材)
22A 雄ネジ部
26 ピストン(押圧部材)
34 固定ネジ(ラチェット機構)
36 溝部(凹凸部、ラチェット機構)
37 突起部(凹凸部、ラチェット機構)
40 ラチェット機構
42 凹部(ラチェット機構)
44 ラチェット片(ラチェット機構)
46 尾栓体(回転部)
66 シール部材
72 薄膜部(薄膜)
74 インナーキャップ
76 筆体(塗布部)
82 貫通部材
90 先端部材(収容部材)
92A 雌ネジ部
102 スプリング(付勢手段)
104 ラチェット部(ラチェット機構)
110 ラチェット片(ラチェット機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられた容器と、
前記容器に取付けられ、前記開口を塞ぐ薄膜が一体に形成されたシール部材と、
前記シール部材に取付けられ、移動して前記薄膜を貫通する中空の貫通部材と、
前記貫通部材を通じて、前記容器内に充填された液体が浸潤される塗布部と、
を有することを特徴とする液体塗布部材。
【請求項2】
前記容器が筒体であり、
前記筒体に設けられ、前記液体が充填された液体充填部と、
前記液体充填部の端部に設けられ、前記筒体に対して回転可能に設けられた回転部と、
前記回転部の回転により、前記筒体の軸方向に沿って移動可能な棒部材と、
前記液体充填部内に設けられ、該棒部材と共に移動し該液体充填部内の液体を前記開口側へ押出す押出部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の液体塗布部材。
【請求項3】
前記筒体に、前記回転部の回転方向を一方向に規制するラチェット機構を設けたことを特徴とする請求項2に記載の液体塗布部材。
【請求項4】
前記ラチェット機構が、
前記筒体の内周面に設けられた凹凸部と、
前記回転部の外周面に設けられ、前記筒体の内側に配置され、回転部の一方向の回転へは前記凹凸部を滑り回転部を回転可能とし、該回転部の他方向の回転へは凹凸部に係止され回転部の回転を規制するラチェット爪と、
を含んで構成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体塗布部材。
【請求項5】
前記塗布部が複数の毛を束ねた筆体であり、
前記筆体が装着されると共に、前記貫通部材を収容する収容部材と、
前記筆体を覆うと共に、前記収容部材に当接するインナーキャップと、
前記インナーキャップを覆うアウターキャップと、
前記アウターキャップと前記インナーキャップの間に配設され、該インナーキャップを前記収容部材側へ付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の液体塗布部材。
【請求項6】
前記筒体及び前記収容部材には、互いに噛み合うネジ部が設けられたことを特徴とする請求項5に記載の液体塗布部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−50519(P2009−50519A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220941(P2007−220941)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(500470840)アサヌマ コーポレーション株式会社 (18)
【Fターム(参考)】