説明

液体容器および自動分析装置

【課題】洗浄の際に液体があふれるのを確実に防止することができる液体容器および当該液体容器を反応容器として備えた自動分析装置を提供する。
【解決手段】側壁および底壁を有する筒状をなし、液体を収容する本体部と、この本体部の筒状内部を2つの領域に分割する分割壁と、を備え、本体部の底壁は、分割壁が分割する2つの領域のうち一方の領域を外部と連通する一または複数の孔部を有することとする。2つの領域のうち孔部を介して外部と連通する領域が、他方の領域よりも容積が小さければより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容する液体容器、および当該液体容器を反応容器として備え、検体の成分を分析する自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを反応させ、この反応を光学的に測定することによって検体の成分を分析する自動分析装置においては、反応容器を洗浄するための様々な技術が知られている。そのような技術の一つとして、反応容器内の液体を吸引する液体吸引ノズルと、反応容器へ洗浄液を吐出する洗浄液吐出ノズルと、先端が液体吸引ノズルの先端よりも上方に位置し、反応容器の洗浄時に洗浄液を含む液体を吸引することによってその液体が反応容器からあふれるのを防止するオーバーフロー吸引ノズルと、を備えた洗浄装置に関する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術では、近年、反応容器の小型化に対応するため、各種ノズルが細径化されている。
【0003】
【特許文献1】特開平6−265558号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、細径化された液体吸引ノズルやオーバーフロー吸引ノズルが詰まりを生じやすいという問題があった。特に、反応容器洗浄時にオーバーフロー吸引ノズルが詰まりを生じると、反応容器には洗浄液吐出ノズルが吐出する洗浄液が徐々に溜まっていき、いずれは洗浄液を含む液体が反応容器からあふれてしまうという問題があった。反応容器から液体があふれると、あふれた液体が自動分析装置の本体に浸入して故障の原因となるおそれもある。このため、洗浄時に反応容器から液体があふれるのを確実に防止することができる技術が待望されていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、洗浄の際に液体があふれるのを確実に防止することができる液体容器および当該液体容器を反応容器として備えた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る液体容器は、側壁および底壁を有する筒状をなし、液体を収容する本体部と、前記本体部の筒状内部を2つの領域に分割する分割壁と、を備え、前記本体部の底壁は、前記分割壁が分割する2つの領域のうち一方の領域を外部と連通する一または複数の孔部を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る液体容器は、上記発明において、前記2つの領域のうち前記孔部を介して外部と連通する領域は、他方の領域よりも容積が小さいことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る液体容器は、上記発明において、前記底壁の外側面のうち前記孔部の開口を含む部分は、当該外側面の他の部分と段差を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る液体容器は、上記発明において、前記分割壁の上端面は、前記2つの領域のうち前記孔部を介して外部と連通する領域の側へ低く傾斜する平面または曲面であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る液体容器は、上記発明において、前記本体部および前記分割壁は一体であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る自動分析装置は、検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、検体と試薬とを反応させる反応容器として上記いずれかの発明に係る液体容器を複数備えるとともに、複数の前記液体容器を保持し、各液体容器の前記孔部を介して排出される液体を外部へ排出する流路を有する反応容器ホルダを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、前記流路が排出する液体を貯留する貯留タンクをさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、前記液体容器へ洗浄液を吐出する洗浄液吐出ノズルと、先端が前記洗浄液吐出ノズルの先端よりも上方に位置し、前記液体容器から前記洗浄液を含む液体を吸引する液体吸引ノズルと、を有する洗浄部をさらに備え、前記洗浄部が前記液体容器を洗浄する際の前記液体吸引ノズルの先端は、前記分割壁の上端よりも下方に位置することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る自動分析装置は、上記発明において、先端が前記液体吸引ノズルの先端よりも上方に位置し、前記液体容器から前記洗浄液を含む液体を吸引するオーバーフロー吸引ノズルをさらに備え、前記洗浄部が前記液体容器を洗浄する際の前記液体吸引ノズルの先端は、前記分割壁の上端よりも下方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、側壁および底壁を有する筒状をなし、液体を収容する本体部と、この本体部の筒状内部を2つの領域に分割する分割壁と、を備え、本体部の底壁は、分割壁が分割する2つの領域のうち一方の領域を外部と連通する一または複数の孔部を有することとしたため、液体の液面が上昇しても液体をあふれさせることなく、底壁の孔部を介して外部へ排出させることができる。したがって、洗浄の際に液体があふれるのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の構成を示す図である。同図に示す自動分析装置1は、検体(試料)および試薬を反応容器にそれぞれ分注し、その反応容器内で生じる反応を光学的に測定する測定ユニット101と、測定ユニット101を含む自動分析装置1の制御を行うとともに測定ユニット101における測定結果の分析を行うデータ処理ユニット201とを有し、これら2つのユニットが連携することによって複数の検体の成分の生化学的な分析を自動的かつ連続的に行う装置である。
【0018】
測定ユニット101は、検体を収容する検体容器2が搭載された複数のラック3を収納する検体容器ホルダ4と、試薬容器5を保持する試薬容器ホルダ6と、検体と試薬とを反応させる反応容器7を保持する反応容器ホルダ8と、検体容器ホルダ4が保持する検体容器2が収容する検体を反応容器7に分注する検体分注部9と、試薬容器ホルダ6が保持する試薬容器5が収容する試薬を反応容器7に分注する試薬分注部10と、反応容器7内部の液体を攪拌する攪拌部11と、光源から照射されて反応容器7を通過した分析光を受光して所定の波長成分の強度等を測定する測光部12と、反応容器7の洗浄を行う洗浄部13と、を備える。
【0019】
データ処理ユニット201は、キーボードやマウスなどを有し、検体の分析に必要な情報や自動分析装置1の操作情報が入力される入力部14と、ディスプレイやプリンタを有し、検体の分析に関する情報等を出力する出力部15と、測定ユニット101における測定結果に基づいて反応容器7内部の液体の吸光度を算出したり、吸光度の算出結果と検量線や分析パラメータ等の各種情報とを用いて反応容器7内部の液体の成分を算出したりするデータ生成部16と、自動分析装置1の制御を行う制御部17と、検体の分析に関する情報を含む各種情報を記憶する記憶部18と、を備える。データ処理ユニットは201は、CPU,ROM,RAM等を具備したコンピュータによって実現される。
【0020】
図2は、本実施の形態1に係る液体容器である反応容器7の構成を示す斜視図である。図3は、図2の矢視A方向の平面図である。図4は、図3のB−B線断面図である。図2〜図4に示す反応容器7は、有底の略四角筒状をなし、液体を収容する本体部71と、本体部71の筒状内部に設けられ、本体部71の開口近傍を除く筒状内部を2つの領域に分割する板状の分割壁72と、を備える。
【0021】
本体部71は、互いに平行に対向する一組の側壁71aと、互いに平行に対向し、分割壁72と連結している一組の側壁71bと、底壁71cとを有する。一組の側壁71bは、測光部12の光源から出射される分析光を透過する窓部としての機能を有する。
【0022】
本体部71の筒状内部で分割壁72が分割する2つの領域のうち体積が大きい方の領域は、液体を収容する液体収容部74である。この液体収容部74には、検体分注部9、試薬分注部10、洗浄部13によって検体、試薬、洗浄液がそれぞれ分注される。一方、2つの領域のうち体積が小さい方の領域は、液体収容部74からあふれた液体をガイドする液体ガイド部75である。なお、ここでいう「液体」には、微量の固体成分(不純物、洗剤等)も含まれているものとする。
【0023】
本体部71の底壁71cは、液体収容部74の下方に位置する薄肉部711cと、液体ガイド部75の下方に位置し、薄肉部711cよりも肉厚であり、外側面が薄肉部711cよりも突起した厚肉部712cとを有する。厚肉部712cには、反応容器7の外部と液体ガイド部75とを連通する孔部76が複数(図3の場合には5つ)設けられている。
【0024】
本体部71および分割壁72は、同じ材料を用いて一体成形されている。この材料としては、測光部12の光源から出射された分析光を透過可能な素材、例えば耐熱ガラスを含むガラス環状オレフィンまたはポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0025】
図5は、反応容器7の反応容器ホルダ8への取付態様を示すとともに反応容器ホルダ8の内部構成を示す断面図である。図5の切断面は、反応容器7を通過し、反応容器ホルダ8の外周と同心の円周に沿った曲面である。反応容器ホルダ8には、反応容器7を保持する保持孔部81が円周に沿って複数設けられている。保持孔部81は、反応容器7の本体部71のうち底壁71cの厚肉部712c以外の部分を嵌合可能な大径部81aと、大径部81aよりも下方に位置し、底壁71cの厚肉部712cを嵌合可能な小径部81bとを有する。小径部81bは、孔部76の下端よりも下方まで延びている。
【0026】
反応容器ホルダ8は、保持孔部81が保持する反応容器7の孔部76から排出される液体を外部へ排出する流路を有している。具体的には、反応容器ホルダ8は、前述した流路として、小径部81bと連通し、環状をなす主流路82と、主流路82に連通し、主流路82の下方へ延びている排出用流路83とを有する。排出用流路83の下端は、液体を外部へ排出する液体排出部19と接続している。
【0027】
反応容器7は、孔部76の下端が底壁71cの薄肉部711cの外底面よりも低い位置に位置しているため、液体収容部74から液体があふれて液体ガイド部75および孔部76を介して外部へ排出されるとき、反応容器7と反応容器ホルダ8(の保持孔部81)との境界に液体が漏れ出すおそれがない。
【0028】
図6は、洗浄部13の構成を示す図である。同図に示す洗浄部13は、洗浄対象の反応容器7に対する洗浄液の吐出および反応容器7が収容する液体の吸引を行うノズル群21を複数備えるとともに、複数のノズル群21によって繰り返し洗浄を行った後の反応容器7に残留する洗浄液を吸引する洗浄液吸引ノズル22と、洗浄液吸引ノズル22が洗浄液を吸引した後の反応容器7を乾燥させる乾燥ノズル23と、複数のノズル群21、洗浄液吸引ノズル22および乾燥ノズル23を保持する板状の保持部材24と、保持部材24を上下に駆動する保持部材駆動部25と、を備える。複数のノズル群21、洗浄液吸引ノズル22および乾燥ノズル23は、反応容器ホルダ8が保持する反応容器7の配置に対応した円周に沿って配置されている。
【0029】
ノズル群21は、互いに異なる機能を有する3本の金属製のノズルを一組として構成される。具体的には、ノズル群21は、洗浄液を反応容器7へ吐出する洗浄液吐出ノズル211と、先端が洗浄液吐出ノズル211の先端よりも下方に位置し、反応容器7が収容する液体を吸引する液体吸引ノズル212と、先端が洗浄液吐出ノズル211の先端よりも上方に位置し、反応容器7が吸引する液体を吸引可能なオーバーフロー吸引ノズル213と、を有する。3本のノズルは、基端部付近でカバー214によって一括して保持されており、少なくともカバー214によって保持されている部分から先端部にかけて互いに平行に延在している。また、3本のノズルの径は互いに等しい。液体吸引ノズル212の先端は、洗浄液吸引ノズル22および乾燥ノズル23の先端と同じ高さに位置している。
【0030】
洗浄液吐出ノズル211は、洗浄液の流路をなすチューブ26を介してターミナル27と接続している。ターミナル27は、チューブ28を介して洗浄液を供給する洗浄液供給ポンプ29と接続している。洗浄液供給ポンプ29は、チューブ30を介して洗浄液を貯留する洗浄液タンク31と接続している。洗浄液は、洗浄液供給ポンプ29によって洗浄液タンク31から吸引されてターミナル27へ送られる。ターミナル27は、洗浄液供給ポンプ29から送られてくる洗浄液を分岐して複数の洗浄液吐出ノズル211へそれぞれ供給する機能を有する。
【0031】
液体吸引ノズル212は、チューブ32を介してターミナル33と接続している。ターミナル33は、チューブ34および35をそれぞれ介して洗浄液吸引ノズル22および乾燥ノズル23とも接続している。また、ターミナル33は、反応容器7から吸引した液体を貯留する廃液タンク36にチューブ37を介して接続している。廃液タンク36は、チューブ38を介して排気ポンプ39と接続している。排気ポンプ39は、液体吸引ノズル212、洗浄液吸引ノズル22および乾燥ノズル23が液体を吸引するための吸引圧(負圧)を発生する。このため、複数の液体吸引ノズル212、洗浄液吸引ノズル22および乾燥ノズル23がそれぞれ吸引する液体は、ターミナル33で一括されて廃液タンク36へ送られる。
【0032】
オーバーフロー吸引ノズル213は、チューブ40を介してターミナル41と接続している。ターミナル41は、反応容器7から吸引した液体を貯留する廃液タンク42にチューブ43を介して接続している。廃液タンク42は、オーバーフロー吸引ノズル213が液体を吸引するための吸引圧を発生する排気ポンプ44にチューブ45を介して接続している。複数のオーバーフロー吸引ノズル213がそれぞれ吸引した液体は、ターミナル41で一括されて廃液タンク42へ送られる。
【0033】
洗浄液供給ポンプ29、排気ポンプ39、44は、洗浄部13の駆動制御を行う洗浄制御部46の制御に基づいて駆動する。洗浄制御部46は、データ処理ユニット201の制御部17と連携して洗浄部13の動作制御を行う。
【0034】
図7は、洗浄部13が反応容器7を洗浄する際、保持部材24が下降することによってノズル群21をなす3本のノズルの先端部が反応容器7の液体収容部74に進入して停止した状態を示す図である。図7において、液体吸引ノズル212の先端(下端)が薄肉部711cの内側面よりもh1だけ上方に位置するとともに、オーバーフロー吸引ノズル213の先端が分割壁72の上端よりもh2だけ下方に位置している。なお、反応容器7の洗浄を行う際のオーバーフロー吸引ノズル213の先端は、少なくとも分割壁72の上端以下の高さに位置していればよい。
【0035】
ノズル群21による反応容器7の洗浄効率を向上させるためには、洗浄液が反応容器7の上方まで達することが望ましい。この意味では、図7に示す状態におけるオーバーフロー吸引ノズル213の先端位置が、反応容器7の開口に近い方がより好ましい。
【0036】
洗浄部13が洗浄を行う際、洗浄液吐出ノズル211が洗浄液を吐出する動作を行うとともに、オーバーフロー吸引ノズル213が洗浄液を含む液体の吸引動作を行う。洗浄液吐出ノズル211が吐出する洗浄液と液体収容部74の残留液とを含む液体の液面がオーバーフロー吸引ノズル213の先端より下方に位置する場合、その液体がオーバーフロー吸引ノズル213によって吸引されることはないため、液面は徐々に上昇していく。この際、液体収容部74の内部の液体は、洗浄液吐出ノズル211の吐出圧によって反応容器7の内部で攪拌され、液体収容部74の側面や底面に付着している液体の成分等を洗い落とす。
【0037】
その後、液体Lの液面がオーバーフロー吸引ノズル213の先端位置に達すると、図8に示すように、オーバーフロー吸引ノズル213が液体Lの吸引を行うようになり、液面がさらに上昇することはない。したがって、オーバーフロー吸引ノズル213が正常に吸引動作を行っている間は、液体Lが液体収容部74からあふれることはない。
【0038】
これに対して、オーバーフロー吸引ノズル213に詰まりが生じた場合には、液体Lの液面がオーバーフロー吸引ノズル213の先端よりも上昇する。図9は、オーバーフロー吸引ノズル213に詰まりが生じた場合の状況を示す図である。図9に示す場合、液体Lの液面はオーバーフロー吸引ノズル213の先端よりも上昇していくが、やがて液面が分割壁72の上端に達する。洗浄液がさらに液体収容部74へ注入されると、液体Lは液体収容部74からあふれて液体ガイド部75へ流入し、孔部76を介して反応容器7の外部へ排出される。したがって、洗浄部13が反応容器7を洗浄する際にオーバーフロー吸引ノズル213が詰まりを生じても、反応容器7から液体があふれることはない。
【0039】
反応容器7は、反応容器ホルダ8の間欠的な回動に伴ってポジションを移動する。反応容器ホルダ8が静止した状態で、ノズル群21は、保持部材24の下降によってその直下に位置する反応容器7へ進入し、洗浄液の吐出および洗浄液を含む液体の吸引を行う(図8等を参照)。洗浄部13は複数のノズル群21を有しているため、反応容器ホルダ8の回動に伴う反応容器7のポジション移動および保持部材24の上下動により、一つの反応容器7に対して複数のノズル群21による洗浄液の吐出および液体の吸引が繰り返し行われる。この繰り返しの結果、測光部12で測定した検体と試薬との反応液が、反応容器7の液体収容部74から徐々に吸引、除去されていき、残留する液体はほぼ洗浄液のみとなる。
【0040】
複数のノズル群21による洗浄液の吐出および液体の吸引が終了した反応容器7は、洗浄液吸引ノズル22の直下のポジションへ移動し、洗浄液吸引ノズル22によって残留した洗浄液の吸引が行われる。その後、反応容器7は、乾燥ノズル23の直下のポジションへ移動する。乾燥ノズル23は、樹脂製の角柱チップによって反応容器7の内壁に付着している洗浄液を吸収し、反応容器7を乾燥させる。
【0041】
なお、反応容器7は、検体分注部9または試薬分注部10が検体または試薬を所定量よりも多く分注してしまった場合にも、検体や試薬があふれ出すのを上記と同様に防止することができる。
【0042】
ここまで、洗浄部13のノズル群21が3本のノズルを有する場合を説明してきたが、図10に示すように、2本のノズルを有するノズル群210を用いて洗浄部を構成してもよい。ノズル群210は、洗浄液吐出ノズル211と、液体吸引ノズル212と、これら2本のノズルを一括して保持するカバー215とを備え、洗浄部13のノズル群21からオーバーフロー吸引ノズル213を取り除いた構成を有している。ノズル群210を用いて洗浄部を構成する場合、反応容器7の液体ガイド部75は、オーバーフロー吸引ノズルの機能を果たすこととなる。
【0043】
以上説明した本発明の実施の形態1によれば、側壁および底壁を有する筒状をなし、液体を収容する本体部と、この本体部の筒状内部を2つの領域に分割する分割壁と、を備え、本体部の底壁は、分割壁が分割する2つの領域のうち一方の領域を外部と連通する一または複数の孔部を有することとしたため、液体の液面が上昇しても液体をあふれさせることなく、底壁の孔部を介して外部へ排出させることができる。したがって、洗浄の際に液体があふれるのを確実に防止することができる。
【0044】
また、本実施の形態1によれば、反応容器自身が液体のあふれ防止機能を有しているため、洗浄部において容器内の液体を吸引するノズルに詰まりを検知するための部品(センサ等)を設ける必要がない。したがって、部品点数を減らすことができ、コストを削減することができる。
【0045】
本実施の形態1においては、反応容器が備える分割壁の上端面の形状を変更することも可能である。図11は、本実施の形態1の第1変形例に係る反応容器の要部の構成を示す図であり、分割壁の上端面付近の構成を示す図である。同図に示す反応容器50は、分割壁51の上端面が、液体ガイド部52の側へ低く傾斜する平面(斜面)をなしている。この点を除いた反応容器50の構成は、上述した反応容器7の構成と同じである。
【0046】
図12は、本実施の形態1の第2変形例に係る反応容器の要部の構成を示す図であり、図11と同様、分割壁の上端面付近の構成を示す図である。同図に示す反応容器53は、本体部54の側壁54aの内側面のうち分割壁51の上端面と対向する部分が、液体ガイド部55を介して分割壁51と対称な斜面形状をなしている。
【0047】
図13は、本実施の形態1の第3変形例に係る反応容器の要部の構成を示す図であり、分割壁の上端面付近の構成を示す図である。同図に示す反応容器56は、分割壁58と本体部59の側壁59aの互いに対向する部分が液体ガイド部57の側へ低く傾斜する曲面である。なお、分割壁の上端面がなす曲面の形状は、図13に示す形状に限られるわけではない。
【0048】
以上説明した本実施の形態1の第1〜第3変形例に係る反応容器によれば、液体収容部からあふれた液体をより確実に液体ガイド部へ流入させることができる。
【0049】
(実施の形態2)
図14は、本発明の実施の形態2に係る自動分析装置の要部の構成を示す断面図である。同図に示す自動分析装置は、複数の反応容器7を保持する反応容器ホルダを備える。反応容器ホルダ61は、反応容器7を保持する保持孔部611が円周に沿って複数設けられている。保持孔部611は、反応容器7の本体部71のうち底壁71cの厚肉部712c以外の部分を嵌合可能な大径部611aと、大径部611aよりも下方に位置し、底壁71cの厚肉部712cを嵌合可能な小径部611bとを有する。小径部611bは孔部76の下端よりも下方まで延びている。
【0050】
反応容器ホルダ61は、保持孔部611が保持する反応容器7の孔部76から排出される液体を外部へ排出する流路を有している。具体的には、反応容器ホルダ61は、前述した流路として、小径部611bと連通し、環状をなす主流路612と、主流路612に連通し、主流路612の下方へ延びている排出用流路613とを有する。
【0051】
排出用流路613の下端には、液体を一時的に貯留する貯留タンク62を保持するタンク保持部614が設けられている。タンク保持部614に取り付けられる貯留タンク62は、排出用流路613と接続する接続口621を有する。
【0052】
本実施の形態2に係る自動分析装置は、以上説明した点を除いて、上記実施の形態1に係る自動分析装置1と同様の構成を有している。
【0053】
以上説明した本発明の実施の形態2によれば、洗浄の際に液体があふれるのを確実に防止することが可能であることに加え、洗浄の際に排出された液体を外部へ排出せずに貯留タンクで貯留しておくため、例えば検体の免疫学的な分析を行う場合のように、廃液の処理が問題となるような分析を行う場合にも適切な廃液処理を実現することができる。
【0054】
なお、本実施の形態2では、貯留タンクを暖めるヒータを設けてもよい。この場合には、ヒータで暖めることによって貯留タンク内で蒸発した液体成分を外部へ排気する排気機構を貯留タンクおよび反応容器ホルダに設けるのが好ましい。このような構成を付加することにより、貯留タンク内の廃棄物の量を削減することができ、廃棄処理が容易となる。
【0055】
(実施の形態3)
図15は、本発明の実施の形態3に係る液体容器である反応容器の構成を示す斜視図である。図16は、本実施の形態3に係る反応容器および自動分析装置の要部の構成を示す断面図である。これらの図に示す反応容器91は、有底の略四角筒状をなし、液体を収容する本体部911と、本体部911の筒状内部に設けられ、本体部911の開口近傍を除く筒状内部を2つの領域に分割する板状の分割壁912と、を有する。
【0056】
本体部911は、互いに平行に対向する一組の側壁911aと、互いに平行に対向し、分割壁912と連結している一組の側壁911bと、底壁911cとを有する。
【0057】
本体部911の筒状内部で分割壁912が分割する2つの領域のうち体積が大きい方の領域は、液体を収容する液体収容部913である。一方、2つの領域のうち体積が小さい方の領域は、液体収容部913からあふれた液体をガイドする液体ガイド部914である。
【0058】
本体部911の底壁911cは鉤型形状をなしており、液体収容部913と面する部分が、液体ガイド部914と面する部分よりも反応容器91の開口から遠くに位置している。このため、反応容器91では、液体収容部913の深さが液体ガイド部914の深さよりも深い。底壁911cのうち液体ガイド部914と面する部分には、反応容器91の外部と液体ガイド部914とを連通する孔部915が一または複数設けられている。
【0059】
反応容器ホルダ92は、反応容器91を保持する保持孔部921を有する。また、反応容器ホルダ92は、保持孔部921が保持する反応容器91の孔部915から排出される液体を外部へ排出する流路として、孔部915の径よりも大きい径を有し、孔部915と連通する排出用流路922と、排出用流路922と連通して環状をなす主流路923と、主流路923の途上で主流路923と連通し、下方へ向かって延びている排出用流路924とを有する。排出用流路924の下端は、液体を外部へ排出する液体排出部19と接続している。
【0060】
本実施の形態3においては、反応容器91の孔部915の下端が底壁71cのうち液体収容部913に面した部分の外側面よりも上方に位置していることに加え、その孔部915の径が反応容器ホルダ92の排出用流路922の径よりも小さい。このため、液体収容部913から液体があふれて液体ガイド部914および孔部915を介して外部へ排出されるとき、反応容器91と反応容器ホルダ92(の保持孔部921)との境界に液体が漏れ出すおそれがない。
【0061】
以上説明した本発明の実施の形態3によれば、上記実施の形態1および2と同様、洗浄の際に液体があふれるのを確実に防止することができる。
【0062】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態として、実施の形態1〜3を詳述してきたが、本発明はそれらの実施の形態によって限定されるべきものではない。図17は、本発明の別な実施の形態に係る液体容器である反応容器の構成を示す平面図である。同図に示す反応容器93は、上述した反応容器と同様に、本体部931と、分割壁932とを備える。分割壁932は、本体部931において互いに直交する2つの側壁931a、931bを連結することにより、本体部931の筒状内部を液体収容部933と液体ガイド部934の2つの領域に分割している。この2つの領域のうち、領域の体積が小さく、三角形をなす液体ガイド部934の底面には、外部へ貫通する複数の孔部935(図17では2つ)が設けられている。反応容器93の底壁の外側面のうち孔部935の開口を含む部分は、上述した実施の形態1〜3のように、当該外側面の他の部分と段差を有する。
【0063】
図18は、本発明のさらに別な実施の形態に係る液体容器である反応容器の構成を示す平面図である。同図に示す反応容器94は、上述した反応容器と同様、本体部941と、分割壁942とを備える。分割壁942は鉤型形状をなしており、本体部941において互いに直交する2つの側壁941a、941bを連結することにより、本体部941の筒状内部を液体収容部943と液体ガイド部944の2つの領域に分割している。この2つの領域のうち、体積が小さく、長方形をなす液体ガイド部944の底面には、外部へ貫通する複数の孔部945(図18では2つ)が設けられている。反応容器94の底壁の外側面のうち孔部945の開口を含む部分は、反応容器93の場合と同様に、その外側面の他の部分と段差を有する。
【0064】
なお、本発明に係る液体容器は、本体部と分割壁が別部材でもかまわない。この場合には、本体部と分割部との間に漏液防止用の加工を施しておけばよい。
【0065】
また、本発明に係る液体容器の底壁の外側面は、平面であってもよい。
【0066】
さらに、本発明に係る液体容器は、自動分析装置の反応容器以外の用途にも適用することが可能である。
【0067】
以上の説明からも明らかなように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の要部の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る反応容器の構成を示す斜視図である。
【図3】図2の矢視A方向の平面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る反応容器の自動分析装置の反応容器ホルダへの取付態様を示すとともに反応容器ホルダの内部構成を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置の洗浄部の構成を示す図である。
【図7】ノズル群が反応容器の液体収容部に進入して停止した状態を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置において、洗浄液吐出ノズルが反応容器へ洗浄液を吐出する一方、オーバーフロー吸引ノズルが液体を吸引している状態を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置において、洗浄液吐出ノズルが反応容器へ洗浄液を吐出する一方、オーバーフロー吸引ノズルに詰まりが生じ、液体ガイド部に液体が流入している状態を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る自動分析装置において、液体ガイド部が液体収容部内の液体を吸引する機能を有する場合を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態1の第1変形例に係る反応容器の要部の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態1の第2変形例に係る反応容器の要部の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態1の第3変形例に係る反応容器の要部の構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る自動分析装置の要部の構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る反応容器の構成を示す斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る反応容器および自動分析装置の要部の構成を示す図である。
【図17】本発明の別な実施の形態に係る反応容器の構成を示す平面図である。
【図18】本発明のさらに別な実施の形態に係る反応容器の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 自動分析装置
2 検体容器
3 ラック
4 検体容器ホルダ
5 試薬容器
6 試薬容器ホルダ
7、50、53、56、91、93、94 反応容器
8、61、92 反応容器ホルダ
9 検体分注部
10 試薬分注部
11 攪拌部
12 測光部
13 洗浄部
14 入力部
15 出力部
16 データ生成部
17 制御部
18 記憶部
19 液体排出部
21、210 ノズル群
22 洗浄液吸引ノズル
23 乾燥ノズル
24 保持部材
25 保持部材駆動部
26、28、30、32、34、35、37、38、40、43、45 チューブ
27、33、41、48 ターミナル
29 洗浄液供給ポンプ
31 洗浄液タンク
36、42 廃液タンク
39、44 排気ポンプ
46 洗浄制御部
51、58、72、912、932、942 分割壁
52、55、57、75、914、934、944 液体ガイド部
54、59、71、911、931、941 本体部
54a、59a、71a、71b、911a、911b、931a、941a 側壁
62 貯留タンク
71c、911c 底壁
73 突起部
74、913、933、943 液体収容部
76、915、921、935、945 孔部
81、611 保持孔部
81a、611a 大径部
81b、611b 小径部
82、612、923 主流路
83、613、922、924 排出用流路
101 測定ユニット
201 データ処理ユニット
211 洗浄液吐出ノズル
212 液体吸引ノズル
213 オーバーフロー吸引ノズル
214、215 カバー
614 タンク保持部
621 接続口
711c 薄肉部
712c 厚肉部
L 液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁および底壁を有する筒状をなし、液体を収容する本体部と、
前記本体部の筒状内部を2つの領域に分割する分割壁と、
を備え、
前記本体部の底壁は、前記分割壁が分割する2つの領域のうち一方の領域を外部と連通する一または複数の孔部を有することを特徴とする液体容器。
【請求項2】
前記2つの領域のうち前記孔部を介して外部と連通する領域は、他方の領域よりも容積が小さいことを特徴とする請求項1記載の液体容器。
【請求項3】
前記底壁の外側面のうち前記孔部の開口を含む部分は、当該外側面の他の部分と段差を有することを特徴とする請求項1または2記載の液体容器。
【請求項4】
前記分割壁の上端面は、前記2つの領域のうち前記孔部を介して外部と連通する領域の側へ低く傾斜する平面または曲面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の液体容器。
【請求項5】
前記本体部および前記分割壁は一体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の液体容器。
【請求項6】
検体と試薬とを反応させ、この反応の結果を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、
検体と試薬とを反応させる反応容器として請求項1〜5のいずれか一項記載の液体容器を複数備えるとともに、
複数の前記液体容器を保持し、各液体容器の前記孔部を介して排出される液体を外部へ排出する流路を有する反応容器ホルダを備えたことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
前記流路が排出する液体を貯留する貯留タンクをさらに備えたことを特徴とする請求項6記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記液体容器へ洗浄液を吐出する洗浄液吐出ノズルと、
先端が前記洗浄液吐出ノズルの先端よりも上方に位置し、前記液体容器から前記洗浄液を含む液体を吸引する液体吸引ノズルと、
を有する洗浄部をさらに備え、
前記洗浄部が前記液体容器を洗浄する際の前記液体吸引ノズルの先端は、前記分割壁の上端よりも下方に位置することを特徴とする請求項6または7記載の自動分析装置。
【請求項9】
先端が前記液体吸引ノズルの先端よりも上方に位置し、前記液体容器から前記洗浄液を含む液体を吸引するオーバーフロー吸引ノズルをさらに備え、
前記洗浄部が前記液体容器を洗浄する際の前記液体吸引ノズルの先端は、前記分割壁の上端よりも下方に位置することを特徴とする請求項8記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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