説明

液体容器

【課題】液体容器が容器装着部に装着されたときに、液体収容室と大気とが確実に連通されるともに、液体が液体容器外部に漏れるのを防ぐことができる液体容器を提供する。
【解決手段】インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に未装着の時は、弁部材70がバネ73により付勢された状態で維持されるため第1弁体71は第1連通路56を閉止する。一方、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着された時は、カートリッジ装着部7への装着動作に連動して弁部材70がバネ73の付勢力に抗して移動して第2弁体72が第2連通路55を閉止し、第1弁体71が第1連通路56を開放する。これで、インク収容室31に収容されたインクが、第1連通路56を介して大気導入室53に流入したとしても、大気導入室53と第2可動室52とを連通させる第2連通路55を介して外部に漏れだすことを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給装置の容器装着部に装着される液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体容器と液体容器が装着される液体供給装置の容器装着部の一例として、インクカートリッジとインクジェット記録装置のインクカートリッジ装着部が挙げられる。例えば、特許文献1に記載のインクカートリッジは、インクカートリッジ内に設けられたインク室と大気とを連通させるための大気連通口と、この大気連通口を封止する大気連通バルブとを備えている。そして、インクカートリッジがインクカートリッジ装着部に装着方向に沿って装着されると、大気連通バルブは、カートリッジ装着部に当接して装着方向とは逆方向に移動する。大気連通バルブが装着方向とは逆方向に移動すると、大気連通口が開放され、大気連通口を介してインク室と大気とが連通されるようになっている。これによれば、インクカートリッジがインクカートリッジ装着部に装着されるまでは、大気連通バルブが大気連通口を封止することで大気連通口から外部にインクが漏れないようにすることができる。また、インクカートリッジがカートリッジ装着部に装着されるのに伴い、大気連通バルブを移動させてインク室と大気とを連通させることができる。そして、インクカートリッジがインクカートリッジ装着部に装着された後は、インクがインクカートリッジからインクジェット記録装置に供給されるのに伴い、大気をインク室内に導入することができる。
【0003】
しかしながら、例えば、上述のインクカートリッジでは、インクカートリッジをインクカートリッジ装着部に装着して一旦大気連通口が開放されるとインク室と大気とが連通した状態になるため、インクカートリッジがインクカートリッジ装着部に装着された状態で、インクジェット記録装置に振動があたえられたり、インクジェット記録装置を移動させたりした場合に、大気連通バルブとカートリッジ装着部との当接箇所近傍から外部にインクが漏れるおそれがある。このような場面としては、例えば、インクジェット式記録装置が故障し、修理のためにユーザーが製造元にインクカートリッジを装着した状態でインクジェット式記録装置を送り返す際に、その輸送過程において、インクジェット式記録装置が揺さぶられたり、上下を逆に扱われたりして、大気連通口や大気連通バルブとカートリッジ装着部との当接箇所近傍から外部にインクが漏れる場合が想定される。
【0004】
この点に関して、特許文献2に記載されているインクカートリッジ100は、インク収容室111から開口212に到る大気連通路の一部である連通孔239を開閉する大気弁254と、連通孔239及び大気弁254がインクカートリッジ100の外部に露出しないように、連通孔239及び大気弁254を覆うように配置されたフィルム132とを有している。インクカートリッジ100がインクジェット記録装置のキャリッジ42に装着されると、キャリッジ42に設けられた凸部が、フィルム132を介して大気弁254の軸部264を押し上げる。これにより、連通孔239が開放され、インク収容室111が大気連通路を介して大気と連通する。連通孔239及び大気弁254がフィルム132で覆われているため、フィルム132を介した大気弁254とキャリッジ42の凸部との当接部近傍から外部にインクが漏れないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−254220号公報
【特許文献2】特開2004−249707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
もっとも、特許文献2のインクカートリッジのようにフィルムを使用すると、インクカートリッジがインクカートリッジ装着部に装着される動作が繰り返された場合に、可動する大気弁の軸部とキャリッジの凸部とに対してフィルムが摺れて、破れるおそれがある。その場合、破れたフィルムを介してインクが外部に漏れだす可能性がある。また、インクカートリッジがインクカートリッジ装着部に装着される動作が繰り返されなくとも、フィルムがインクカートリッジの外面に配置されているため、ユーザーがインクカートリッジを扱う際に、フィルムがインクカートリッジとは別の物体に摺れて、破れるおそれがある。さらに、フィルムが撓む程度にしか大気弁を移動させることができないため、大気弁の可動距離が限定されてしまい、例えば、インクカートリッジがわずかに傾いて装着された場合に、大気弁の移動が連通孔を開放するまでに至らず、大気とインク収容部とが確実に連通されないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、インクカートリッジ等の液体容器が容器装着部に装着されたときに、大気連通バルブ・大気弁等の弁部材が容器装着部に当接して確実に移動することにより、大気連通口・連通孔等の大気連通路を介して、インク室等の液体収容室と大気とが確実に連通されるともに、弁部材と容器装着部との当接箇所近傍から液体が容器外部に漏れるのを防ぐことができる液体容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するための第1の発明に係る液体容器は、液体供給装置の容器装着部に装着方向に沿って装着される液体容器であって、容器本体と、前記容器本体内に形成された、液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室から液体を外部へ導出する液体導出部と、前記液体収容室へ大気を導入する大気導入部と、を備え、前記大気導入部は、大気導入室と、前記大気導入室を前記液体収容室と連通させる第1通路と、前記大気導入室から前記装着方向に向かって延在して前記容器本体の前記装着方向前面にて開口している第2通路と、前記大気導入室を容器外部と連通させ、大気を前記大気導入室に導入するための大気連通路と、前記第1通路及び第2通路内に配置されており、前記第1通路を閉止可能な第1弁体、及び、前記第2通路を閉止可能な第2弁体を有し、前記第1弁体と前記第2弁体の一方が通路閉止位置にあるときに他方が通路開放位置にあるように移動可能である弁部材と、前記第1弁体が前記第1通路を閉止する方向であって、前記第2弁体が前記第2通路を開放する方向に、前記弁部材を付勢する付勢手段と、を備え、当該液体容器が前記容器装着部に装着されたときに、前記弁部材は、前記容器装着部に当接することにより、前記付勢手段の付勢力に抗して前記大気導入室に対して前記装着方向とは逆方向に移動して前記第2弁体が前記第2通路を閉止するとともに、前記第1弁体が前記第1通路を開放するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
この構成によると、液体容器が容器装着部に未装着の状態では、弁部材が付勢手段により付勢された状態で維持されるため第1弁体は第1通路を閉止することができる。このため、液体収容室に収容された液体は、大気導入室に流入しないため、大気導入室を介して外部に漏れ出すことはない。一方、液体容器が容器装着部に装着されると、例えば、弁部材が第2通路の開口を介して容器本体の外部で容器装着部に当接する、もしくは、容器装着部の一部が第2通路の開口を介して第2通路内に侵入して、第2通路内で弁部材と当接する。弁部材は、容器装着部に当接することにより、付勢手段の付勢力に抗して大気導入室に対して装着方向とは逆方向に移動して第2弁体が第2通路を閉止し、第1弁体が第1通路を開放する。このため、大気連通路及び第1通路を介して液体収容室と大気とを連通させることができるとともに、液体収容室に収容された液体が、第1通路を介して大気導入室に流入したとしても、その液体が第2通路、すなわち、弁部材と容器装着部との当接部近傍から容器外部に漏れだすことを防止することができる。また、弁部材の可動範囲は適時選択することができるので、液体容器が容器装着部に装着されるのに伴い、弁部材を確実に移動させることができる。
【0010】
また、弁部材が配置されている第2通路と、大気を大気導入室に導入するための大気連通路とを分けているため、大気連通路の設置箇所を自由に設定することができる。
【0011】
また、第2の発明に係る液体容器は、第1の発明において、前記容器装着部への装着姿勢にあるときに、前記大気連通路は、前記第2通路よりも上方の位置において、容器外部に開口していることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によると、装着姿勢の状態にある液体容器において、大気連通路の開口を第2通路よりも上方の位置に配置することで、液体収容室に収容された液体が、第1通路を介して大気導入室に流入したとしても、大気連通路の開口に到達しにくくして、液体が大気連通路を介して外部に漏れだすことを防止することができる。
【0013】
また、第3の発明に係る液体容器は、第2の発明において、前記装着方向が水平方向であり、前記容器装着部への装着姿勢にあるときに、前記第2通路は前記装着方向に関して前方に開口する一方で、前記大気連通路は上方へ開口していることを特徴とするものである。
【0014】
この構成によると、弁部材が移動することによって液体が弁部材付近に付着したとしても、弁部材の移動方向と直角になる上方の位置に大気連通路の開口が配置されているため、液体が大気連通路の開口に到達しにくくなり、液体が大気連通路を介して外部に漏れだすことを防止することができる。
【0015】
また、第4の発明に係る液体容器は、第1〜第3の発明の何れかにおいて、前記大気連通路には、気体透過膜が設けられていることを特徴とするものである。
【0016】
この構成によると、大気連通路に液体が侵入してきたとしても、気体透過膜が液体を透過させないため液体が大気連通路から容器外へ漏れるのを防ぐことができる。
【0017】
また、第5の発明に係る液体容器は、第1〜第4の発明の何れかにおいて、前記液体容器の内壁に接するように前記弁体の外周に複数の凸部材が周方向に間隔をあけて設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、液体容器の内壁に接するように弁体の外周に複数の凸部材が周方向に間隔をあけて設けられていることにより、液体容器の内壁と弁体の接地面積を小さくすることができ、弁部材が移動する時の摺動抵抗を小さくすることができる。これにより、第1通路及び第2通路の弁体による開閉をスムーズにすることがでる。
【0019】
また、第6の発明に係る液体容器は、第1〜第5の発明の何れかにおいて、前記弁部材は、前記第2通路を閉止可能な第3弁体を更に備え、前記弁部材が前記付勢手段により付勢された場合に、前記第3弁体は前記第2通路を閉止し、前記弁部材が前記付勢手段の付勢力に抗して前記大気導入室に対して前記装着方向とは逆方向に移動した場合に、前記第3弁体は前記第2通路を開放することを特徴とするものである。
【0020】
この構成によれば、一旦、液体容器が容器装着部に装着された場合、弁部材が付勢手段の付勢力に抗して移動して第1弁体は第1通路を開放する。この時、液体収容室に収容された液体が、第1通路を介して大気導入室に流入する場合がある。このように大気導入室に液体が流入した状態で、液体容器が容器装着部から脱着されたとしても、弁部材が付勢手段により付勢されることによって第3弁体が第2通路を閉止することにより、大気導入室に流入した液体が第2通路を介して外部に漏れ出すことを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、液体容器が容器装着部に装着されたときに、弁部材が容器装着部に当接して確実に移動することにより、大気連通路を介して液体収容室と大気とを確実に連通させるともに、弁部材と容器装着部との当接箇所近傍から液体が容器外部に漏れるのを防ぐことができる
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るインクカートリッジが装着されるプリンタの概略構成を示す平面図である。
【図2】(a)本実施形態に係るインクカートリッジの正面図である。(b)本実施形態に係るインクカートリッジの断面図である。
【図3】本実施形態に係るインクカートリッジの上面図である。
【図4】本実施形態に係る大気導入部の拡大断面図である。
【図5】本実施形態に係る弁部材の斜視図である。
【図6】本実施形態に係るインクカートリッジがカートリッジ装着部に装着される過程を示すインクカートリッジ及びカートリッジ装着部の断面図である。
【図7】本実施形態に係るインクカートリッジのカートリッジ装着部への装着が完了した状態を示すインクカートリッジ及びカートリッジ装着部の断面図である。
【図8】(a)変形例1に係るインクカートリッジがカートリッジ装着部に装着される前の段階における大気導入部の状態を示す大気導入部の断面図である。(b)変形例1に係るインクカートリッジのカートリッジ装着部への装着が完了した段階における大気導入部の状態を示す大気導入部の断面図である。
【図9】変形例2に係る大気導入部の拡大断面図である。
【図10】変形例3に係る大気導入部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態)
まず、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、記録用紙に対してインクを噴射して画像等を記録する、インクジェットプリンタ(以下、プリンタ1)のホルダ10(液体供給装置)のカートリッジ装着部7(容器装着部)に着脱自在に装着されるインクカートリッジ5(液体容器)に本発明を適用したものである。なお、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されることを、単にインクカートリッジ5がプリンタ1に装着されると記載する場合もある。
【0024】
(プリンタ1)
図1は、本実施形態に係るインクカートリッジ5が装着されるプリンタ1の概略構成を示す平面図である。図1に示すように、プリンタ1は、図1の走査方向に沿って往復移動可能に構成されたキャリッジ2と、このキャリッジ2に搭載されたインクジェットヘッド3及びサブタンク4a〜4dと、4つのインクカートリッジ5a〜5dが装着されるホルダ10と、記録用紙Pを図1の紙送り方向に搬送する搬送機構6等を備えている。
【0025】
キャリッジ2は、図1の左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイド軸17に沿って往復移動可能に構成されている。また、キャリッジ2には、無端ベルト18が連結されており、キャリッジ駆動モータ19によって無端ベルト18が走行駆動されたときに、キャリッジ2は、無端ベルト18の走行に伴って走査方向に移動するようになっている。
【0026】
インクジェットヘッド3は、その下面(図1の紙面向こう側の面)に多数のインク噴射用ノズルを備えている。また、4つのサブタンク4a〜4dは、走査方向に沿って並べて配置されており、これら4つのサブタンク4a〜4dにはチューブジョイント20が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント20に連結された可撓性のチューブ11によって、4つのサブタンク4a〜4dとホルダ10とが接続されている。
【0027】
ホルダ10は、一方向(図1では走査方向)に配列された4つのカートリッジ装着部7(容器装着部)を備え、これら4つのカートリッジ装着部7に、4つのインクカートリッジ5a〜5dがそれぞれ装着される。4つのインクカートリッジ5a〜5dには、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの、4色のインクがそれぞれ貯留されている。なお、カートリッジ装着部7の詳細は後述する。
【0028】
4つのインクカートリッジ5a〜5dにそれぞれ貯留された4色のインクは、ホルダ10に接続された4本のチューブ11を介して4つのサブタンク4a〜4dに供給され、サブタンク4a〜4dにおいて一時的に貯留された後、インクジェットヘッド3に供給される。そして、インクジェットヘッド3は、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動しつつ、その下面に設けられた多数のインク噴射用ノズルから、搬送機構6により図1の下方(紙送り方向)に搬送される記録用紙Pにインクの液滴を噴射する。
【0029】
搬送機構6は、インクジェットヘッド3よりも紙送り方向上流側に配置された給紙ローラ25と、インクジェットヘッド3よりも紙送り方向下流側に配置された排紙ローラ26とを有する。給紙ローラ25と排紙ローラ26は、それぞれ、給紙モータ27と排紙モータ28とにより回転駆動される。そして、この搬送機構6は、給紙ローラ25により、記録用紙Pを図1の上方からインクジェットヘッド3に供給するとともに、排紙ローラ26により、インクジェットヘッド3によって画像や文字等が記録された記録用紙Pを図1の下方へ排出するように構成されている。
【0030】
(インクカートリッジ5)
次に、上記カートリッジ装着部7に装着されるインクカートリッジ5a〜5dについて説明する。尚、4色のインクをそれぞれ貯留する4つのインクカートリッジ5a〜5dは同じ構成を有するものであるため、以下では、それらのうちの1つについて説明する(以下、インクカートリッジ5)。図2(a)は、本実施形態に係るインクカートリッジ5の正面図である。図2(b)は、本実施形態に係るインクカートリッジ5の断面図である。図3は、インクカートリッジ5の上面図である。図4は、大気導入部33の拡大断面図である。図5は、弁部材70の斜視図である。尚、図2(b)において、インク導出部32はその断面でなく、その側面が示されている。また、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されるときのインクカートリッジ5の移動方向を装着方向83とし、その逆を装着方向83と逆の方向(取り外し方向)としている。
【0031】
図2(a)及び(b)に示すように、インクカートリッジ5(液体容器)は、インクカートリッジ5の本体となる筐体30(容器本体)と、筐体30内に形成されたインクを収容するインク収容室31(液体収容室)と、インク収容室31のインクをプリンタ1のインク供給系(ホルダ10及び4本のチューブ11)に導出するインク導出部32(液体導出部)と、インク収容室31に大気を導入する大気導入部33を備える。筐体30は、例えば、ポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂材料で形成されている。なお、筐体30の外面のうち、装着方向83に関して前端に位置する面(図2(b)において左側に位置する面)を前面、装着方向83に関して後端に位置する面(図2(b)において右側に位置する面)を背面と呼ぶこととする。また、筐体30の外面のうち、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着された状態において、上端に位置する面(図2(b)において上側に位置する面)を上面、下端に位置する面(図2(b)において下側に位置する面)を下面と呼ぶことにする。
【0032】
図2(a)及び(b)に示すように、筐体30の前面の下部に、すなわち、筐体30の前面における下面に近い位置に、インク導出部32が設けられている。そして、インク導出部32には、円形の開口41が形成されている。また、図示しないが、インク導出部32内には、開口41とインク収容室31とを連通する通路とこの通路を閉止するインク供給バルブがある。つまり、このインク供給バルブは、開口41とインク収容室31を連通する通路を開放又は閉止する弁機構として構成されている。
【0033】
このインク導出部32には、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7(図6及び7参照)に装着されたときに、後述する管状のインクニードル80(図6及び図7参照)が挿入される。このインクニードル80が開口41からインク導出部32内に挿入されると、インク供給バルブが開口41とインク収容室31とを連通する通路を開放するように構成されている。これにより、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されたときにインク収容室31内のインクをインクニードル80、チューブ11及びチューブジョイント20を通じてサブタンク4a〜4dへ導出することが可能となる。
【0034】
図2(a)、(b)及び図4に示すように、筐体30の上部には、大気導入部33が設けられている。図4に示すように、この大気導入部33は、主に大気導入室53と、第1連通路56(第1通路の一部)と、第2連通路55(第2通路の一部)と、第3連通路59(大気連通路の一部)と、第1可動室54(第1通路の一部)と、第2可動室52(第2通路の一部)と、ラビリンス溝36(大気連通路の一部)と、第1弁体71及び第2弁体72が形成された弁部材70と、弁部材70を付勢するバネ73(付勢手段)によって構成されている。第1連通路56、第2連通路55、第3連通路59、第1可動室54、及び、第2可動室52は全て円筒形状である。第1連通路56、第2連通路55、及び、第3連通路59の径は、第1可動室54、及び、第2可動室52の径よりも小さい。以下この大気導入部33の詳細について説明する。
【0035】
筐体30の前面上部に、すなわち、筐体30の前面における上面に近い位置に円形の開口51(第2通路の一部)が形成されている。開口51の径は、第2可動室52の径よりも小さい。そして、図4に示すように、筐体30の内部には、開口51から筐体30の背面側に向かって順に、後述する弁部材70の第2弁体72の可動空間となる第2可動室52、大気導入室53、弁部材70の第1弁体71の可動空間となる第1可動室54が形成されている。
【0036】
また、筐体30には、開口51と第2可動室52とを連通させる円筒形状の連通路58(第2通路の一部)と、第2可動室52と大気導入室53とを連通させる第2連通路55と、大気導入室53と第1可動室54とを連通させる第1連通路56と、第1可動室54とインク収容室31とを連通させる円筒形状の連通路57(第1通路の一部)が形成されている。そして、これらの各通路、即ち、連通路57、第1連通路56、第2連通路55及び連通路58は、インク収容室31から開口51に向かって直線上に配置されるように設けられている。また、連通路57、第1可動室54、第1連通路56、大気導入室53、第2連通路55、第2可動室52、連通路58、及び、開口51は、この順番に装着方向83に沿って並んでいる、言い換えれば、筐体30の奥行方向35に沿って並んでいる。なお、筐体30の奥行方向35は、筐体30の前面と背面とを結ぶ方向である。連通路58の径は開口51の径と等しい。連通路57の径は第1可動室54の径よりも小さい。
【0037】
また、第1連通路56の第1可動室54側の開口外縁部には、後述する弁部材70の第1弁体71と当接する環状の弁座部61が設けられている。また、第2連通路55の第2可動室52側の開口外縁部にも同様に、弁部材70の第2弁体72と当接する環状の弁座部62が設けられている。つまり、この環状の弁座部61及び弁座部62は、それぞれ第1連通路56及び第2連通路55の開口を取り囲むように配置されている。この弁座部61・62には、樹脂等の弾性力を有する弾性部材が使用される。
【0038】
また、大気導入室53の上部には、筐体30外部と連通させて大気を大気導入室53に導入するための第3連通路59が設けられている。そして、第3連通路59には、気体透過膜60が、第3連通路59を塞ぐように取り付けられている。
【0039】
ここで、気体透過膜60としては、常圧では、大気は通過させるがインクを通過させない膜として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリプロピエン(PP)等の多孔質膜を用いており、この多孔質膜における平均孔径は、0.2〜5μmの範囲にあるものを使用している。つまり、インクカートリッジ5が、カートリッジ装着部7への装着姿勢にあるときに、第3連通路59は上方へ開口していることになる。
【0040】
なお、気体透過膜60としては、大気は通過させるが、インクを通過させない膜であれば、その材質及び構造は特に限定されるものでないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリプロピエン(PP)の他に、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体,テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等のフッ素樹脂からなる多孔質膜などが挙げられる。また、多孔質膜における平均孔径は0.2〜5μmの範囲にあるものを使用しているが、この平均孔径が0.2μmよりも小さくなると、大気の通気性が低下して、インク収容室31内の空間に生じた圧力を速やかに解消することが困難になる傾向を示し、5μmよりも大きくなると、膜強度が低下し破断しやすい傾向となる。
【0041】
弁部材70は、図4に示すように、装着方向83(奥行方向35)に延びている軸部75と、軸部75に設けられた第1連通路56を閉止する第1弁体71及び第2連通路55を閉止する第2弁体72とを一体に有し、インク収容室31から開口51に向かって直線上に配置された連通路57、第1連通路56、第2連通路55及び連通路58に移動可能に挿通されている。第1弁体71及び第2弁体72はともに円板形状に形成されている。第1弁体71は第1可動室54内に配置されており、第2弁体72は第2可動室52内に配置されている。軸部75に設けられた第1弁体71及び第2弁体72は、一方の第1弁体71(第2弁体72)が弁座部61(弁座部62)と当接して第1連通路56(第2連通路55)を閉止する位置にあるときに他方の第2弁体72(第1弁体71)が第2連通路55(第1連通路56)を開放する位置関係になるように配設されている。また、バネ73は金属製のコイルバネであり、バネ73の一端が第1可動室54の連通路57側の端部を画定している壁63と当接し、バネ73の他端が第1弁体71の連通路57側の側面76と当接するように、軸部75がバネ73に挿通されている。バネ73は、壁63と側面76との間で、その自然長よりも縮んだ状態にある。つまり、バネ73は、第1弁体71が第1連通路56を閉止する方向であって、第2弁体72が第2連通路55を開放する方向(装着方向83)に弁部材70を付勢していることになる。これによれば、弁部材70がバネ73の付勢力に抗して移動して第2弁体72が前記第2連通路55を閉止したときに、第1弁体71が第1連通路56を開放することができる。軸部75の端部は、開口51を介して筐体30の外部に突出している。第1弁体71が弁座部61に当接すると、弁座部61が弾性変形しつつ第1弁体71に密着する。同様に、第2弁体72が弁座部62に当接すると、弁座部62が弾性変形しつつ第2弁体72に密着する。
【0042】
また、図5に示すように、第1弁体71の外周には、第1可動室54の内壁に接するように3つの凸部材74a・74b・74cが周方向に間隔をあけて設けられている。これにより、第1可動室54の内壁と第1弁体71の接地面積を小さくすることができ、弁部材70が移動する時の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0043】
また、図3に示すように、筐体30の上面には、第3連通路59から開口端38に至るまで、第3連通路59と筐体30の外部の空間とを連通するようにした細い溝状のラビリンス溝36が屈曲形状になるように形成されている。さらに、気体及び液体も非透過であるフィルム37が、第3連通路59及びラビリンス溝36の全体を覆うように、筐体30上面に接着されている。これにより、大気をインク収容室31に導入できるとともに、インク収容室31内のインクの乾燥を防止することができる。また、ラビリンス溝36は細く、屈曲形状であるため、インクがラビリンス溝36を通って筐体30の外部に到達することが難しくなっている。
【0044】
(カートリッジ装着部7)
次に、インクカートリッジ5が装着されるカートリッジ装着部7(容器装着部)について説明する。尚、4つのインクカートリッジ5a〜5dが装着されるカートリッジ装着部7はそれぞれ同じ構成を有するものであるため、以下では、それらのうちの1つについて説明する。図6は、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着される過程を示すインクカートリッジ5及びカートリッジ装着部7の断面図である。
【0045】
図6に示すように、カートリッジ装着部7は、断面視でコの字型をした箱状に形成されたフレーム81によってその筐体が形成されている。フレーム81によってコの字状に囲まれた内部空間84が、インクカートリッジ5を収容するための空間である。
【0046】
図6に示されるように、フレーム81は、その開口端とは反対側に位置しており、内部空間84に面する壁面85を備え、押圧部82が壁面85から突出して設けられている。押圧部82は、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されたときに、インクカートリッジ5の弁部材70の軸部75と対向する位置に設けられている。これによれば、この押圧部82は、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に挿入された際に、弁部材70の軸部75と当接して、装着方向83と逆の方向に弁部材70を押圧する。
【0047】
図6に示すように、フレーム81の壁面85の下部に、インク導出部32と連結されるインクニードル80が設けられている。インクニードル80は、インクカートリッジ5のインク導出部32に対向する位置に配置されている。インクニードル80は、樹脂管である。また、インクニードル80は、図6に示されるように、フレーム81の背面側で可撓性を有するチューブ11に接続されている。
【0048】
(インクカートリッジ5の装着動作)
以下、図6及び図7を参照して、カートリッジ装着部7に対するインクカートリッジ5の装着動作について説明する。図6は、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着される過程を示すインクカートリッジ5及びカートリッジ装着部7の断面図である。図7は、インクカートリッジ5のカートリッジ装着部7への装着が完了した状態を示すインクカートリッジ5及びカートリッジ装着部7の断面図である。尚、図6及び図7において、インク導出部32はその断面でなく、その側面が示されている。
【0049】
インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着される前は、図6に示すように、インクカートリッジ5の大気導入部33において、弁部材70は、第1弁体71が弁座部61と当接して第1連通路56を閉止し、第2弁体72が第2連通路55を開放する位置に来るようにバネ73によって付勢されている。この場合、第1連通路56が閉じた状態であるため、インクは大気導入室53に流入せず、インクカートリッジ5の外部に漏れ出すことはない。
【0050】
図6及び図7に示されるように、カートリッジ装着部7の内部空間84へインクカートリッジ5が挿入されると、インクカートリッジ5の筐体30の前面側とフレーム81の壁面85が対向した位置関係になる。そして、この位置関係でインクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着方向83へ挿入されると、まず、インクカートリッジ5の押圧部82が、弁部材70の軸部75と当接する。
【0051】
更に、インクカートリッジ5が内部空間84の奥部へ挿入され、押圧部82と軸部75とが当接した状態でインクカートリッジ5が装着方向83へ押し付けられると、弁部材70の軸部75が押圧部82と当接して静止したままの状態で、筐体30だけが装着方向83へ移動する。つまり、筐体30が壁面85に近づく方向へ移動する。
【0052】
この際、弁部材70は、装着方向83と逆の方向に相対移動することになる。すなわち、弁部材70は筐体30や大気導入室53に対して装着方向83と逆方向に移動する。その結果、弁部材70は、第1弁体71が弁座部61と離反して第1連通路56を開放し、第2弁体72が弁座部62と当接して第2連通路55を閉止する位置に来る。これにより、図7に示すように、インク収容室31と大気とが連通路57、第1可動室54、第1連通路56、大気導入室53、第3連通路59、気体透過膜60、ラビリンス溝36及び開口端38を介して連通されることになる。これにより、外部の大気を、気体透過膜60を介してインク収容室31に導入することができる。また、第2弁体72が弁座部62と当接して第2連通路55を閉止するため、インク収容室31に収容されたインクが、開放された第1連通路56を介して大気導入室53に流入したとしても、第2連通路55を介して開口51から外部に漏れだすことを防止することができる。
【0053】
一方、インクカートリッジ5が壁面85へ向かって移動すると、インクニードル80も開口41からインク導出部32に挿入される。このインクニードル80が開口41からインク導出部32内に挿入されると、インク供給バルブが開口41とインク収容室31とを連通する通路を開放する。これにより、インク収容室31内のインクが、インク導出部32、インクニードル80、チューブ11、チューブジョイント20及びサブタンク4(4a〜4d)を通じてインクジェットヘッド3に供給可能となる。なお、図7に示されているインクカートリッジ5のカートリッジ装着部7への装着が完了した状態では、筐体30はカートリッジ装着部7に対して装着方向83と逆の方向にバネ73から付勢力を受けるが、不図示の保持部材により、インクカートリッジ5は、カートリッジ装着部7内において、図7に示されている位置に保持される。
【0054】
以上、説明したように、上記第1の実施形態のインクカートリッジ5によれば、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に未装着の状態では、弁部材70がバネ73により付勢された状態で維持されるため第1弁体71は第1連通路56を閉止する。このため、インク収容室31に収容されたインクは、大気導入室53に流入しないため、大気導入室53を介して外部に漏れ出すことはない。一方、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されると、弁部材70が押圧部82に当接する。弁部材70は、押圧部82に当接することにより、バネ73の付勢力に抗して移動して第2弁体72が第2連通路55を閉止し、第1弁体71が第1連通路56を開放する。このため、インク収容室31に収容されたインクが、第1連通路56を介して大気導入室53に流入したとしても、第2可動室52及び第2連通路55を介して外部に漏れだすことを防止することができる。また、第1可動室54や第2可動室52等の大きさを適時選択することにより、弁部材70の可動範囲を適時選択することができる。したがって、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されるのに伴い、弁部材70を確実に移動させることができる。
【0055】
また、装着姿勢の状態にあるインクカートリッジ5において、第3連通路59の開口を第2連通路55よりも上方の位置に配置することで、インクが、大気導入室53に流入したとしても、第3連通路59の開口に到達しにくくして、インクが第3連通路59を介して外部に漏れだすことを防止することができる。
【0056】
また、カートリッジ装着部7への装着方向83が水平方向であり、カートリッジ装着部7への装着姿勢にあるときに、第2連通路55は装着方向83に関して前方に開口する一方で、第3連通路59は上方へ開口しているため、弁部材70が移動することによってインクが弁部材70付近に付着したとしても、弁部材70の移動方向と直角になる上方の位置に第3連通路59の開口が配置されているため、インクが第3連通路59の開口に到達しにくくなり、インクが第3連通路59を介して外部に漏れだすことを防止することができる。
【0057】
また、第3連通路59には、気体透過膜60が設けられていることにより、第3連通路59にインクが侵入してきたとしても、気体透過膜60がインクを透過させないため、インクが第3連通路59からインクカートリッジ5外へ漏れるのを防ぐことができる。
【0058】
また、第1弁体71の外周には、第1可動室54の内壁に接するように3つの凸部材74a・74b・74cが周方向に間隔をあけて設けられているため、第1可動室54の内壁と第1弁体71の接地面積を小さくすることができ、弁部材70が移動する時の摺動抵抗を小さくすることができる。これにより、第1連通路56及び第2連通路55の第1弁体71及び第2弁体72による開閉をスムーズにすることができる。
【0059】
このように、インクカートリッジ5がカートリッジ装着部7に装着されたときに、弁部材70がカートリッジ装着部7に当接して確実に移動することにより、第3連通路59及びラビリンス溝36を介してインク収容室31と大気とを連通させるともに、弁部材70とカートリッジ装着部7との当接箇所近傍からインクがインクカートリッジ5の外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0060】
(変形例)
以上、本発明の実施形態として、上記実施形態を例として挙げて説明したが、本発明を適用可能な形態はこのような実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、前記実施形態に様々な変更を加えることも可能である。以下に、その変形例を挙げる。なお、図8の(a)は、変形例1に係るインクカートリッジ205がカートリッジ装着部7に装着される前の段階における大気導入部の状態を示す大気導入部の断面図である。図8の(b)は、変形例1に係るインクカートリッジ205のカートリッジ装着部7への装着が完了した段階における大気導入部の状態を示す大気導入部の断面図である。
【0061】
(変形例1)
上記第1実施形態で説明した弁部材70には、第1弁体71及び第2弁体72の2つの弁体が設けられた構成としているが、図8(a)に示す弁部材270のように3つの弁体を設けた構成としてもよい。具体的には、変形例1に係る弁部材270は、図8(a)に示すように、軸部275に第1連通路56を第1可動室54側から閉止する第1弁体71と、第2連通路55を第2可動室52側から閉止する第2弁体72と、第2連通路55を大気導入室53側から閉止する第3弁体203との3つの弁体を有し、インク収容室31から開口51に向かって直線上に配置された連通路57、第1連通路56、第2連通路55及び連通路58に移動可能に挿通されている。なお、第2連通路55の大気導入室53側の開口外縁部には、上記弁部材270の第3弁体203と当接する環状の弁座部204が設けられている。第3弁体203は、第1弁体71及び第2弁体72と同様に、円板形状に形成されている。
【0062】
軸部275に設けられた第1弁体71、第2弁体72及び第3弁体203は、第1弁体71が弁座部61と当接して第1連通路56を閉止する位置にあるときに、第2弁体72が第2連通路55を開放する位置にあり、且つ、第3弁体203が弁座部204と当接して第2連通路55を閉止する位置関係になるように配設されている。
【0063】
この変形例1に係るインクカートリッジ205がカートリッジ装着部7に装着されて固定される前は、図8(a)に示すように、弁部材270は、第1弁体71が弁座部61と当接して第1連通路56を閉止し、第3弁体203が弁座部204と当接して第2連通路55を閉止し、第2弁体72が第2連通路55を開放する位置に来るようにバネ73によって付勢されている。
【0064】
そして、インクカートリッジ205のカートリッジ装着部7への装着が完了した後は、図8(b)に示すように、弁部材270は、第1弁体71が弁座部61と離反して第1連通路56を開放し、第3弁体203も弁座部204と離反して第2連通路55を開放し、第2弁体72が弁座部62と当接して第2連通路55を閉止する位置に来る。これにより、図8(b)に示すように、インク収容室31と大気とが連通路57、第1可動室54、第1連通路56、大気導入室53、第3連通路59、気体透過膜60、ラビリンス溝36及び開口端38を介して連通されることになる。
【0065】
また、インクカートリッジ205がカートリッジ装着部7から取り外された場合は、図8(a)に示すように、弁部材270は、再び第1弁体71が弁座部61と当接して第1連通路56を閉止し、第3弁体203が弁座部204と当接して第2連通路55を閉止し、第2弁体72が第2連通路55を開放する位置に来る。
【0066】
上記変形例1に係るインクカートリッジ205によれば、一旦、インクカートリッジ205がカートリッジ装着部7に装着された場合には、弁部材270がバネ73の付勢力に抗して移動して第1弁体71は第1連通路56を開放する。この時、インク収容室31に収容されたインクが、第1可動室54及び第1連通路56を介して大気導入室53に流入する場合がある。このように大気導入室53にインクが流入した状態で、インクカートリッジ205がカートリッジ装着部7から取り外されたとしても、弁部材270がバネ73により付勢されることによって第3弁体203が第2連通路55を閉止することにより、大気導入室53に流入したインクが第2連通路55及び第2可動室52を介してインクカートリッジ205の外部に漏れ出すことを防止することができる。
【0067】
(その他の変形例)
また、本実施形態では、装着姿勢の状態にあるインクカートリッジ5において、第3連通路59の開口を第2連通路55よりも上方の位置に配置する構成としているが、大気を大気導入室に導入するための第3連通路59と弁部材70が挿通される第2連通路55とを分けているため大気連通路の設置箇所及び形状を自由に設定することができる。例えば、図9に示すように気体透過膜60の代わりにスリット301を設けてもよい(変形例2)。また、図10に示すように、第3連通路59の側面に第3連通路59付近に浸入してきたインクを溜めて収容しておくためのインク貯留部302を設けてもよい(変形例3)。また、第3連通路59自体をラビリンス形状に構成してもよい。
【0068】
また、第3連通路59に気体透過膜60を設けない構成としてもよい。この場合でも第3連通路59の開口を第2連通路55よりも上方の位置に配置する構成としているため、インクが第3連通路59を通じて漏れにくい機能を果たせる。
【0069】
また、上記実施形態では、インクカートリッジ5のカートリッジ装着部7への装着方向83が水平方向のものを例で挙げているが、これに限らず、垂直方向に装着される構成としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、気体及び液体も非透過であるフィルム37が、第3連通路59及びラビリンス溝36の全体を覆うように、筐体30上面に接着されているが、このフィルム37を取り外し可能な透明のシールとしてもよい。これによれば、インクカートリッジ5上から目視した場合に、気体透過膜60へのインクの付着具合やラビリンス溝36へのインクの浸入具合を容易に把握することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、軸部75と押圧部82とが筐体30の外部で当接するように、軸部75の端部は開口51を介して筐体30の外部に突出していたが、軸部75が筐体30の外部に突出しておらず、押圧部82が開口51及び連通路58を介して第2可動室52に侵入して、第2可動室52内で軸部75と当接してもよい。
【0072】
なお、本発明を次のように定義することもできる。
液体容器であって、
容器本体と、前記容器本体内に形成された、液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室から液体を外部へ導出する液体導出部と、前記液体収容室へ大気を導入する大気導入部と、を備え、
前記大気導入部は、
大気導入室と、
前記大気導入室を前記液体収容室と連通させる第1通路と、
前記大気導入室から延びており前記容器本体の外部に開口している第2通路と、
前記大気導入室を容器外部と連通させ、大気を前記大気導入室に導入するための大気連通路と、
前記第1通路及び前記第2通路内に配置されており、前記第1通路を閉止可能な第1弁体、及び、前記第2通路を閉止可能な第2弁体を有し、前記第1弁体と前記第2弁体の一方が通路閉止位置にあるときに他方が通路開放位置にあるように移動可能である弁部材と、
前記第1弁体が前記第1通路を閉止する方向であって、前記第2弁体が前記第2通路を開放する方向に、前記弁部材を付勢する付勢手段と、
を備え、
前記弁部材は、前記付勢手段の付勢力に抗する力を受けて移動したときに、前記第2弁体が前記第2通路を閉止するとともに、前記第1弁体が前記第1通路を開放するように構成されていることを特徴とする液体容器。
【0073】
この構成によると、液体容器が容器装着部に未装着の状態では、弁部材が付勢手段により付勢された状態で維持されるため第1弁体は第1通路を閉止することができる。このため、液体収容室に収容された液体は、大気導入室に流入しないため、大気導入室を介して外部に漏れ出すことはない。一方、液体容器が容器装着部に装着されると、例えば、弁部材が、第2通路の開口を介して容器本体の外部で容器装着部に当接する、もしくは、容器装着部の一部が第2通路の開口を介して第2通路内に侵入して、第2通路内で弁部材と当接する。弁部材は、容器装着部に当接することにより、付勢手段の付勢力に抗して大気導入室に対して装着方向とは逆方向に移動して第2弁体が第2通路を閉止し、第1弁体が第1通路を開放する。このため、液体収容室に収容された液体が、第1通路を介して大気導入室に流入したとしても、その液体が第2通路、すなわち、弁部材と容器装着部との当節部近傍から容器外部に漏れだすことを防止することができる。また、弁部材の可動範囲は適時選択することができるので、液体容器が容器装着部に装着されるのに伴い、弁部材を確実に移動させることができる。
【0074】
上記で説明した実施形態及び変形例は、プリンタ1に用いられるインクカートリッジ5に本発明を適用した例であるが、本発明の適用対象はインクカートリッジに限られるものではない。つまり、用途や貯留される液体の種類に関わらず、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 プリンタ
5 インクカートリッジ
7 カートリッジ装着部
30 筐体
31 インク収容室
32 インク導出部
33 大気導入部
36 ラビリンス溝
51 開口
52 第2可動室
53 大気導入室
54 第1可動室
55 第2連通路
56 第1連通路
57 連通路
58 連通路
59 第3連通路
60 気体透過膜
70 弁部材
71 第1弁体
72 第2弁体
73 バネ
74a・74b・74c 凸部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給装置の容器装着部に装着方向に沿って装着される液体容器であって、
容器本体と、前記容器本体内に形成された、液体を収容する液体収容室と、前記液体収容室から液体を外部へ導出する液体導出部と、前記液体収容室へ大気を導入する大気導入部と、を備え、
前記大気導入部は、
大気導入室と、
前記大気導入室を前記液体収容室と連通させる第1通路と、
前記大気導入室から前記装着方向に向かって延在して前記容器本体の前記装着方向前面にて開口している第2通路と、
前記大気導入室を容器外部と連通させ、大気を前記大気導入室に導入するための大気連通路と、
前記第1通路及び前記第2通路内に配置されており、前記第1通路を閉止可能な第1弁体、及び、前記第2通路を閉止可能な第2弁体を有し、前記第1弁体と前記第2弁体の一方が通路閉止位置にあるときに他方が通路開放位置にあるように移動可能である弁部材と、
前記第1弁体が前記第1通路を閉止する方向であって、前記第2弁体が前記第2通路を開放する方向に、前記弁部材を付勢する付勢手段と、
を備え、
当該液体容器が前記容器装着部に装着されたときに、前記弁部材は、前記容器装着部に当接することにより、前記付勢手段の付勢力に抗して前記大気導入室に対して前記装着方向とは逆方向に移動して前記第2弁体が前記第2通路を閉止するとともに、前記第1弁体が前記第1通路を開放するように構成されていることを特徴とする液体容器。
【請求項2】
前記容器装着部への装着姿勢にあるときに、前記大気連通路は、前記第2通路よりも上方の位置において、容器外部に開口していることを特徴とする請求項1に記載の液体容器。
【請求項3】
前記装着方向が水平方向であり、
前記容器装着部への装着姿勢にあるときに、前記第2通路は前記装着方向に関して前方に開口する一方で、前記大気連通路は上方へ開口していることを特徴とする請求項2に記載の液体容器。
【請求項4】
前記大気連通路には、気体透過膜が設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体容器。
【請求項5】
前記液体容器の内壁に接するように前記弁体の外周に複数の凸部材が周方向に間隔をあけて設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体容器。
【請求項6】
前記弁部材は、前記第2通路を閉止可能な第3弁体を更に備え、
前記弁部材が前記付勢手段により付勢された場合に、前記第3弁体は前記第2通路を閉止し、
前記弁部材が前記付勢手段の付勢力に抗して前記大気導入室に対して前記装着方向とは逆方向に移動した場合に、前記第3弁体は前記第2通路を開放することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−221470(P2010−221470A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69916(P2009−69916)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】