液体容器
【課題】沈降成分が含まれる液体を収容する液体容器において、構造を複雑にすることなく、内部の液体を循環流路で循環させて効果的に撹拌する。
【解決手段】ポンプ室の容積を増大させることで導入流路を介して液体収容部の下部からポンプ室に液体を吸入した後、ポンプ室の容積を減少させることで出口流路を介して液体収容部の上部に向けて液体を圧送する動作を繰り返すことにより、液体収容部の下部から上部へと液体を循環させる。そして、導入流路には、液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を設けて、液体の取込口を導入流路の先端だけでなく、底面延設部の延設方向に並べて複数設けておく。こうすれば、液体収容部の底部の広い範囲から沈降成分濃度の濃い液体を導入流路に取り込むことができるので、液体収容部の底部における沈降成分濃度の偏りを少なくすることができる。
【解決手段】ポンプ室の容積を増大させることで導入流路を介して液体収容部の下部からポンプ室に液体を吸入した後、ポンプ室の容積を減少させることで出口流路を介して液体収容部の上部に向けて液体を圧送する動作を繰り返すことにより、液体収容部の下部から上部へと液体を循環させる。そして、導入流路には、液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を設けて、液体の取込口を導入流路の先端だけでなく、底面延設部の延設方向に並べて複数設けておく。こうすれば、液体収容部の底部の広い範囲から沈降成分濃度の濃い液体を導入流路に取り込むことができるので、液体収容部の底部における沈降成分濃度の偏りを少なくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に装着される液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として、インクなどの液体を噴射ヘッドから噴射することで画像等を印刷する、いわゆるインクジェットプリンターが知られている。噴射ヘッドから噴射される液体は、インクカートリッジなどの専用の液体容器の内部に収容されており、この液体容器から噴射ヘッドに液体が供給される。また、液体容器は、内部の液体が無くなると新しい液体容器と交換できるように、液体消費装置に対して着脱可能に構成されているのが一般的である。
【0003】
こうした液体容器では、内部に収容する液体中に沈降性の成分が含まれることがある。例えば上述のインクの場合であれば、耐候性を高めるなどの目的で顔料が用いられることがあり、顔料は、インクの溶媒には溶けずに分散した状態で存在しているので、時間の経過とともに、インク中で顔料が沈降する。その結果、液体容器から噴射ヘッドに供給されるインクの顔料濃度が濃い場合と薄い場合とが生じて、画像等を均一な濃さで適切に印刷することができなくなってしまう。
【0004】
そこで、顔料などの沈降性の成分(以下、沈降成分)が含まれる液体を収容する液体容器では、内部の液体を撹拌することを意図して、沈降成分の濃度が濃い液体を液体容器の下部から吸い込んで、液体容器の上部に戻すための循環流路を液体容器内に搭載したものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−79187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に提案されている技術では、液体容器を大型化したりすると、液体容器内の液体を十分に撹拌することが困難となるという問題があった。すなわち、液体中の含有成分の沈降は、液体容器内で一様に起こる現象であり、液体容器の大型化により液体容器の底面が広くなると、循環流路の吸込口の近傍では液体が吸い込まれて循環(撹拌)されるものの、吸込口から離れた箇所では液体が撹拌されず、含有成分が沈降したままとなる。もちろん、液体容器内に循環流路を複数設ければ、液体の撹拌効果を高めることが可能であるものの、これでは、液体容器の構造が複雑化して大掛かりなものとなってしまう。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、沈降成分が含まれる液体を収容する液体容器において、構造を複雑にすることなく、内部の液体を循環流路で循環させて効果的に撹拌することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体容器は次の構成を採用した。すなわち、
沈降性の成分が含まれる液体を消費する液体消費装置に装着される液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を前記液体消費装置に供給するための液体供給口と、
容積が変動可能なポンプ室と、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着された装着状態における前記液体収容部の下部から液体を前記ポンプ室へと導く導入流路と、
前記ポンプ室内の液体を、前記装着状態における前記液体収容部の上部へと導く導出流路と
を備え、
前記導入流路は、前記装着状態における前記液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を有し、
前記底面延設部には、液体を取り込むための複数の取込口が該底面延設部の延設方向に並べて設けられていることを要旨とする。
【0009】
このような本発明の液体容器では、液体消費装置に装着された装着状態において、ポンプ室の容積を増大させて導入流路側からポンプ室に液体を吸入した後、ポンプ室の容積を減少させて出口流路側に向けて液体を圧送する動作を繰り返すことで、液体収容部の下部から上部へと液体を循環させることができる。そして、本発明の液体容器の導入流路には、液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部が設けられているとともに、液体の取込口が導入流路の先端だけでなく、底面延設部の延設方向に並べて複数設けられている。
【0010】
液体に含有される沈降性の成分(沈降成分)の沈降は、液体収容部内で一様に起こる現象であり、液体収容部の底部全体で沈降成分の濃度が液体収容部の上部よりも濃くなる。そこで、液体収容部の底面に沿って延設された導入流路の底面延設部の延設方向に並べて複数の取込口を設けておけば、導入流路の先端にしか取込口が設けられていない場合に比べて、液体収容部の底部の広い範囲から沈降成分濃度の濃い液体を取り込むことができる。これにより、液体収容部の底部における液体の沈降成分濃度の偏りを少なくすることができる。結果として、液体容器から液体消費装置に供給される液体の沈降成分濃度が変化する(沈降成分濃度が濃くなったり薄くなったりする)ことを抑制することができる。
【0011】
また、導入流路の底面延設部に複数の取込口を設ける構成であれば、液体容器内に複数の循環流路を備える場合のように液体容器の構造を複雑にすることなく、液体収容部内の液体の撹拌効果を高めることができる。
【0012】
上述した液体容器では、ポンプ室から遠いほど取込口の内径を大きく設定しておいてもよい。
【0013】
ポンプ室の容積を増加させるとポンプ室内が負圧になり、ポンプ室に近い取込口であるほど大きな負圧が作用するので液体が流入し易い傾向にある。そこで、ポンプ室から遠くなるに連れて取込口の内径を大きく(ポンプ室に近い取込口であるほど内径を小さく)設定しておくことにより、ポンプ室に近い側の取込口での液体の取り込みを抑制して、ポンプ室から遠い側の取込口でも近い側の取込口と同様に液体を取り込むことが可能となる。
【0014】
また、こうした液体容器では、ポンプ室から遠いほど、隣り合う取込口同士の間隔を小さく設定しておいてもよい。
【0015】
このように複数の取込口の隣り合う取込口同士の間隔をポンプ室から遠くなるに連れて小さくなる(ポンプ室に近い取込口同士であるほど間隔が大きくなる)ように適切に設定しておけば、ポンプ室から近い側よりも遠い側に多くの取込箇所が配置されるので、ポンプ室から遠い側でも近い側と同様に液体を取り込むことが可能となる。
【0016】
また、こうした液体容器では、導入流路の底面延設部を所定の分岐点で分岐させることとして、この分岐点からの長さが異なる複数の支流路の各々の先端に取込口を設けてもよい。
【0017】
このような分岐構造を有する導入流路であれば、所定の分岐点において各支流路にポンプ室の負圧を同様に作用させることができるので、ポンプ室から遠い側の取込口(長い支流管の先端の取込口)と、ポンプ室から近い側の取込口(短い支流管の先端の取込口)とで同様に液体を取り込むことが可能となる。
【0018】
また、こうした液体容器の液体収容部は、液体を通さないフィルムを袋状に封止して形成されるフィルムパックで構成してもよい。
【0019】
こうしたフィルムパックは、内部の液体の流出に伴って萎む(容積が減少する)ことから、容積が一定の箱状の容器とは異なり、大気開放部を設ける必要がなく、密閉状態を維持することが可能である。そのため、空気との反応による液体の劣化や、液体中の溶媒の蒸発を抑えることができる。
【0020】
また、フィルムパックは、内部の液体の消費に伴って萎んでいく過程で、フィルム同士が密着した部分と、未だ間に液体が残っておりフィルム同士が密着していない部分とが存在することがある。仮に、導入流路の先端にしか取込口が設けられていない場合には、フィルム同士が導入流路の先端を挟んだ状態で密着した時点で取込口が塞がれてしまい、フィルムパック内の残りの液体が導入流路に取り込まれなくなってしまう。しかし、取込口が導入流路の先端だけでなく、導入流路の底面延設部の延設方向に並べて複数設けられていれば、フィルム同士が底面延設部の一部を挟んだ状態で密着しても、未だ密着していない部分にある取込口から液体を導入流路に取り込むことが可能である。その結果、フィルムパック内の液体の消費に伴ってフィルムパックが萎んでいく過程でも、フィルムパックの下部から上部へと液体を循環させて撹拌機能を維持することができる。
【0021】
また、こうした液体容器の導出流路には、液体収容部の上面に沿って延設された上面延設部を設けることとして、液体を放出する吐出口を、導出流路の先端だけでなく、上面延設部の延設方向に並べて複数設けてもよい。
【0022】
液体中の沈降成分濃度の薄い液体収容部の上部に、液体収容部の下部から吸い上げられた沈降成分濃度の濃い液体が放出されると、沈降成分が液体中に拡散することになる。そして、液体収容部の上面に沿って延設された導出流路の延設方向に並べて複数の吐出口を設けておけば、導出流路の先端部にしか吐出口が設けられていない場合に比べて、液体収容部の上部の広い範囲に沈降成分濃度の濃い液体を放出することができるので、液体中の沈降成分の拡散を促進することができる。
【0023】
また、導入流路の底面延設部には、複数の取込口を設けるのではなく、液体を取り込むためのスリット状の切り込みを底面延設部の延設方向に沿って設けてもよい。
【0024】
このようなスリット状の切り込みは、小さな取込口が連続して多数設けられているものと同様と捉えることができる。このため、底面延設部に切り込みを設ける場合でも、切り込みの細長い隙間を適切に設定しておくことによって、複数の取込口を設ける場合と同様に、液体収容部の底部の広い範囲から沈降成分濃度の濃い液体を取り込むことができる。その結果、液体収容部の底部における液体の沈降成分濃度の偏りを少なくし、液体容器から液体消費装置に供給される液体の沈降成分濃度が変化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】本実施例のインクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する様子を示した説明図である。
【図3】本実施例のインクカートリッジの構成を示した分解斜視図である。
【図4】インクパックの断面を取ることによってインク供給ユニットの内部構造を示した説明図である。
【図5】カートリッジホルダーに内蔵のカムの回転により、インクカートリッジ内のインクが循環する様子を示した説明図である。
【図6】インクパック内のインクが消費されるのに伴ってインクパックが萎んでいく過程を示した説明図である。
【図7】第1変形例のインクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する様子を示した説明図である。
【図8】第1変形例のインクカートリッジの断面を取ることによって内部構造を示した説明図である。
【図9】第1変形例のインクカートリッジ内のインクが循環する様子を示した説明図である。
【図10】第2変形例のインクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する様子を示した説明図である。
【図11】平置きタイプのインクカートリッジでインク中の顔料濃度の偏りが水平方向に生じる様子を示した説明図である。
【図12】第2変形例のインクカートリッジ内に設けられている循環流路によって、インク収容部内のインクが循環する様子を示した説明図である。
【図13】隣り合う取込口同士の間隔がポンプ室から遠いほど小さく設定された流入管を示した説明図である。
【図14】分岐構造を有する流入管を示した説明図である。
【図15】スリットが設けられた流入管を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.インクジェットプリンターの構成:
B.インクカートリッジの構成:
C.インクの循環動作:
D.変形例:
D−1.第1変形例:
D−2.第2変形例:
【0027】
A.インクジェットプリンターの構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例として本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷媒体としての印刷用紙2が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙2をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから供給された印刷用紙2が副走査方向に所定量ずつ紙送りされて、内部で印刷用紙2の表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙2が排出されるようになっている。
【0028】
また、インクジェットプリンター10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、インクジェットプリンター10の内部の状態を確認したり、あるいはインクジェットプリンター10の修理などを行ったりすることが可能となっている。
【0029】
インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙2上にインクドットを形成するキャリッジ20や、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30などが設けられている。キャリッジ20の底面側(印刷用紙2に向いた側)には、複数の噴射ノズルが形成された噴射ヘッド22が搭載されており、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して画像等の印刷を行う。本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、このことと対応して、キャリッジ20に搭載された噴射ヘッド22には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。
【0030】
噴射ヘッド22に形成された噴射ノズルから噴射するインクは、インクカートリッジ40と呼ばれる専用の容器に収容されている。このインクカートリッジ40は、キャリッジ20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー42に対して着脱可能に構成されている。インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、インクカートリッジ40内のインクが、カートリッジホルダー42およびインクチューブ24を介してキャリッジ20の噴射ヘッド22に供給される。本実施例のインクジェットプリンター10では、前面カバー11の右隣に、前面カバー11と同様に下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられており、カートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すと、カートリッジホルダー42が現れて、インクカートリッジ40を着脱することが可能となる。
【0031】
前述したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを使用することから、インクカートリッジ40もインクの種類毎に設けられている。ぞれぞれのインクカートリッジ40内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して、噴射ヘッド22の対応する色の噴射ノズルに供給される。また、本実施例のインクカートリッジ40に収容されているインクには、色材として顔料が含まれている。顔料は、インクの溶媒に溶けずに分散した状態で存在しているため、時間が経過すると、インク中の顔料が沈降して、上層の顔料濃度が薄い部分と、下層の顔料濃度が濃い部分とができてしまう。そこで、インクカートリッジ40には、内部のインクを循環させて撹拌するための循環流路などが内蔵されている。尚、インクカートリッジ40の詳細な構成については、後ほど別図を用いて説明する。
【0032】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジ20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、キャリッジ20を主走査方向に往復動させることができる。
【0033】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド22の底面側(印刷用紙2に向いた側)に押し当てられて、噴射ノズルを覆うように閉空間を形成するキャップ部材50や、噴射ヘッド22の底面側に押し当てるためにキャップ部材50を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ部材50が噴射ヘッド22の底面側に押し当てられた状態でキャップ部材50内に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
【0034】
更に、インクジェットプリンター10の内部には、印刷用紙2を副走査方向に紙送りするための図示しない紙送機構や、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60なども搭載されている。キャリッジ20を往復動させる動作や、印刷用紙2を紙送りする動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0035】
図2は、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44が、横方向に並べてインクカートリッジ40毎に設けられている。この挿入孔44の奥側の面には、インクカートリッジ40からインクを取り入れるためのインク取入針46が手前側に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の背面(挿入孔44の奥側に向いた面)には、インク供給口78(図3参照)が設けられている。カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインク供給口78に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0036】
カートリッジホルダー42には、図示しないインク通路や供給ポンプが内蔵されている。インク取入針46から取り入れられたインクは、インク通路によって、カートリッジホルダー42の背面側に接続されたインクチューブ24(図1参照)に導かれる。また、インク通路の途中に設けられた供給ポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ)は、インクカートリッジ40内のインクを吸入して、キャリッジ20内に設けられた図示しないサブタンクに向けてインクを圧送するようになっている。尚、前述したように本実施例のインクジェットプリンター10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4色分のインクカートリッジ40を搭載しており、各インクカートリッジ40内のインクは、独立して噴射ヘッド22に供給される。このため、カートリッジホルダー42の内部には、インク通路や供給ポンプがインクカートリッジ40毎に設けられている。
【0037】
また、カートリッジホルダー42の挿入孔44には、奥側の面から手前側に向けて突出する機構のカム48が設けられている。詳しくは後述するが、インクカートリッジ40には、顔料などの沈降性の成分(沈降成分)を含有するインクを循環させるための循環流路や、容積が変更可能なポンプ室などが設けられており、カム48は、図示しないモーターの駆動で回転することにより、ポンプ室の容積を変動させて圧力の作用で循環流路内のインクを送る役割を果たしている。
【0038】
B.インクカートリッジの構成 :
図3は、本実施例のインクカートリッジ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、本実施例のインクカートリッジ40は、インクを収容するインクパック70と、インクパック70を収納するカートリッジケース72などから構成されている。インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルム71を溶着などで袋状に貼り合わせて、プラスチック材料で形成されたインク供給ユニット74を袋の開口部に嵌め込んだ状態でフィルム71をインク供給ユニット74に溶着することで形成されている。図3では、インクパック70のフィルム71を溶着した部分がハッチングを付して表されている。尚、本実施例のインクカートリッジ40は、本発明の「液体容器」に相当しており、本実施例のインクパック70は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0039】
液体を通さないフィルム71の素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエチレンなどを挙げることができる。また、多層構造のフィルムとしてもよく、例えば、外層を耐衝撃性に優れたPETやナイロンとし、内層を耐インク性に優れたポリエチレンとしてもよい。さらには、アルミなどから成る中層を設けてもよく、これにより、ガスバリア性を高めることができる。
【0040】
インク供給ユニット74には、前述したカートリッジホルダー42側のインク取入針46が挿入されるインク供給口78や、インクパック70内のインクを循環させる循環流路や、容積が変更可能なポンプ室80などが形成されている。尚、インク供給ユニット74の内部構造については後述する。
【0041】
インクパック70を収納するカートリッジケース72は、プラスチック材料で形成された前ケース82および後ケース84から構成されている。後ケース84は、箱形状に形成されており、内部にインクパック70を収納可能となっている。一方、前ケース82は、インク供給ユニット74を覆い、且つ、後ケース84と嵌合して蓋をする部材である。また、前ケース82には、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着された際に、カートリッジホルダー42側のインク取入針46を受け入れる取入針用通孔86や、カム48を受け入れるカム用通孔88が設けられている。
【0042】
図4は、インクパック70の断面を取ることによってインク供給ユニット74の内部構造を示した説明図である。尚、図4には、インクパック70を内蔵するインクカートリッジ40をインクジェットプリンター10のカートリッジホルダー42に装着した状態において、側面から見た(インク供給ユニット74のインク供給口78が左方に向いた)様子が示されている。インク供給ユニット74には、略円筒形状のポンプ室80が設けられており、このポンプ室80の一端面(図中の左端面)は、可撓性の材料で形成された膜状のダイヤフラム100で構成されている。また、ポンプ室80の内部には、ダイヤフラム100をポンプ室80の外側に向けて付勢する圧縮バネ102が設けられている。
【0043】
また、インク供給ユニット74には、インクパック70の下部からインクをポンプ室80へと導く入口流路104や、ポンプ室80からインクをインクパック70の上部へと導く出口流路112や、ポンプ室80から入口流路104へのインクの逆流を阻止する入口側逆止弁110や、出口流路112からポンプ室80へのインクの逆流を阻止する出口側逆止弁118などが設けられている。
【0044】
入口流路104には、円管形状の流入管106が接続されており、この流入管106は、インク供給ユニット74を挟んでいるインクパック70の一端側(図中の左側)からインク供給ユニット74を挟んでいない他端側(図中の右側)に向けてインクパック70の底部に沿って延設されている。また、図示されているように、流入管106には、インクの取込口108が流入管106の先端だけでなく、流入管106の延設方向に並べて複数設けられており、しかも取込口108の内径は、ポンプ室80から離れるに連れて大きく設定されている。尚、本実施例の入口流路104および流入管106は、本発明の「導入流路」に相当しており、本実施例の流入管106は、本発明の「底面延設部」に相当している。
【0045】
一方、出口流路112には、流入管106と同様の円管形状の流出管114が接続されており、流出管114は、インクパック70の上端部に沿って延設されているが、長さは流入管106に比べて短くなっている。また、流出管114には、インクの吐出口116が流出管114の先端にだけ設けられている。
【0046】
以上のように構成されたインクカートリッジ40は、カートリッジホルダー42に装着された状態において、カートリッジホルダー42に内蔵のカム48を駆動することによって、顔料などの沈降成分を含有する内部のインクを、次のようにして循環させて撹拌するようになっている。
【0047】
C.インクの循環動作 :
図5は、カートリッジホルダー42に内蔵のカム48の回転により、インクカートリッジ40内のインクが循環する様子を示した説明図である。尚、図5には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態が示されているが、図示が煩雑になるのを避けるため、カートリッジケース72やカートリッジホルダー42などの図示が省略されている。前述したようにインクカートリッジ40は、カートリッジホルダー42に装着されると、カム48をカム用通孔88(図3参照)から受け入れるようになっている。また、本実施例のカム48は、いわゆる板カムであり、回転軸からの半径が他よりも大きい部分(以下、凸部)が設けられている。
【0048】
カム48が回転することにより、図5(a)に示すように、カム48の凸部がポンプ室80のダイヤフラム100を押した状態となる。前述したように、ポンプ室80の一端面を構成するダイヤフラム100は、ポンプ室80内の圧縮バネ102によってポンプ室80の外側に向けて付勢されているが、カム48の凸部は、圧縮バネ102の付勢力に抗してダイヤフラム100をポンプ室80の内側に向けて押すようになっている。そのため、ポンプ室80の容積が減少し、ポンプ室80内のインクが加圧される。このとき、入口側逆止弁110は閉鎖状態となり、ポンプ室80から入口流路104側へのインクの逆流を阻止するので、ポンプ室80内のインクは、出口流路112側に圧送され、流出管114の先端の吐出口116からインクパック70の上部に放出される。
【0049】
さらにカム48が回転すると、続いて、図5(b)に示すように、カム48の凸部がポンプ室80のダイヤフラム100から離れた状態となる。すると、ポンプ室80内の圧縮バネ102がダイヤフラム100をポンプ室80の外側に押し出して、ポンプ室80の容積が増加する(元の容積に復元する)ことにより、ポンプ室80内が負圧になる。このとき、出口側逆止弁118は閉鎖状態となり、出口流路112側からポンプ室80へのインクの逆流を阻止するので、入口流路104側からポンプ室80にインクが吸い込まれることになる。前述したように、入口流路104には、流入管106が接続されており、この流入管106は、インクパック70のインク供給口78を挟んでいない側の端部に向けてインクパック70の底部に沿って延設されている。また、流入管106には、複数の取込口108が流入管106の延設方向に沿って設けられおり、これら複数の取込口108から取り込まれたインクが流入管106および入口流路104を通ってポンプ室80に供給される。
【0050】
こうして容積が回復したポンプ室80にインクが満たされた後、回転するカム48の凸部が再びダイヤフラム100をポンプ室80の内側に向けて押すと、図5(a)のようにポンプ室80で加圧されたインクが出口流路112側に圧送され、流出管114を通って先端の吐出口116から放出される。以上のような動作を繰り返すことによって、インクパック70の下部から上部へとインクを吸い上げて循環させることができる。
【0051】
特に、本実施例のインクカートリッジ40では、入口流路104に接続される流入管106が、インク供給ユニット74を挟んだインクパック70の一端側からインク供給ユニット74を挟んでいない他端側に向けてインクパック70の底部に沿って延設されているとともに、インクの取込口108が流入管106の先端だけでなく、流入管106の延設方向に並べて複数設けられている。顔料などのインク中の含有成分の沈降は、インクパック70内で一様に起こる現象であるところ、このようにインクパック70の底部に沿って延設された流入管106の延設方向に並べて複数の取込口108を設けておけば、流入管106の先端にしか取込口108が設けられていない場合に比べて、インクパック70の底部の広い範囲から顔料濃度の濃いインクを取り込んでインクパック70の上部へと吸い上げることができる。これにより、インクパック70の底部における顔料濃度の偏りを少なくすることができる。また、流入管106に複数の取込口108を設ける構成であれば、インクカートリッジ40内に複数の循環経路を設ける場合のようにインクカートリッジ40の構造を複雑にすることなく、内部のインクの撹拌効果を高めることができる。結果として、インクジェットプリンター10の噴射ヘッド22から噴射するインクの顔料濃度が変化すること(印刷の色目が変わってしまうこと)を抑制することができる。
【0052】
また、流入管106の延設方向に並べて複数の取込口108を設ける場合には、ポンプ室80に近い取込口108であるほど大きな負圧が作用するのでインクが流入し易い傾向にある。そこで、本実施例のインクカートリッジ40では、ポンプ室80から遠くなるに連れて取込口108の内径が大きく(ポンプ室80に近い取込口108であるほど内径が小さく)設定されている。このようにポンプ室80からの距離に応じて取込口108の内径を適切に設定しておくことにより、ポンプ室80から遠い側の取込口108でもインクが流入し易くして近い側の取込口108と同様にインクを取り込むことが可能となる。
【0053】
さらに、本実施例のインクカートリッジ40では、インクを収容するインクパック70を備えており、複数の取込口108が設けられた流入管106がインクパック70の底部に沿って延設されている。これにより、インクパック70内のインクが消費されるのに伴ってインクパック70が萎む(容積が減少する)過程でインクパック70の下部から上部へのインクの循環が妨げられる不具合を防止する効果を得られる。以下、この点について補足して説明する。
【0054】
図6は、インクパック70内のインクが消費されるのに伴ってインクパック70が萎んでいく過程を示した説明図である。前述したように、インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルム71を溶着などで袋状に貼り合わせて形成されており(図3参照)、内部に充填されるインクは、フィルム71とフィルム71の間に収容されている。そして、インクパック70内のインクがインク供給口78を通って流出すると、向かい合うフィルム71同士が互いに接近してインクパック70が萎む(容積が減少する)ことになり、最終的にはフィルム71同士が密着した状態となる。このように、インクパック70は、内部のインクの流出に伴って容積が減少することから、容積が一定の箱状の容器とは異なり、大気開放部を設ける必要がなく、密閉状態を維持することができる。このため、空気との反応によるインクの劣化や、インク中の溶媒の蒸発を抑えることができる。
【0055】
このようなインクパック70では、内部のインクの消費に伴って萎んでいく過程で、既にフィルム71同士が密着した部分と、未だ間にインクが残っておりフィルム71同士が密着していない部分とが存在することがあり、インクパック70内に残っているインクをインク供給口78へと供給するには、図6に示すように、インク供給口78から遠い側(インク供給ユニット74を挟んでいない側)の端部からフィルム71同士が密着した状態となるのが理想的である。このとき、仮に流入管106の先端にしか取込口108が設けられていないとすると、フィルム71同士が流入管106の先端部分を挟んだ状態で密着した時点で取込口108が塞がれてしまい、インクパック70内の残りのインクが流入管106に取り込まれなくなってしまう。その結果、インクパック70の下部から上部へとインクを吸い上げて循環させることができなくなる。
【0056】
これに対して、本実施例のインクカートリッジ40では、取込口108が流入管106の先端だけでなく、流入管106の延設方向に並べて複数設けられていることから、フィルム71同士が流入管106の一部を挟んだ状態で密着しても、未だフィルム71同士が密着していない部分にある取込口108から残りのインクを流入管106に取り込むことが可能である。その結果、インクパック70内のインクの消費に伴ってインクパック70が萎んでいく過程においても、インクパック70の下部から上部へとインクを循環させて撹拌機能を維持することができる。
【0057】
また、本実施例のインクカートリッジ40では、出口流路112に接続する流出管114の長さが流入管106よりも短く設定されている。これは次のような理由によるものである。すなわち、前述したように、インクパック70内のインクの消費に伴ってインク供給口78から遠い側(インク供給ユニット74を挟んでいない側)の端部からフィルム71同士が密着した状態となるのが好ましく、流出管114の長さを流入管106よりも短く設定しておけば、インク供給口78から遠い側で取り込んだインクをインク供給口78に近い側で放出することができるので、インク供給口78から遠い側の端部からフィルム71同士が密着した状態となることを助長することができる。
【0058】
尚、本実施例では、ポンプ室80の容積を変動させる機構としてカム48を採用しているが、ポンプ室80の内側に向けてのダイヤフラム100を押した状態と、ダイヤフラム100を離した状態とを切換可能であれば、カム48に限られるわけではなく、例えば、伸縮可能なソレノイドを用いて、ダイヤフラム100を押したり離したりすることとしてもよい。
【0059】
D.変形例 :
以下では、上述した本実施例のインクカートリッジ40の変形例について説明する。尚、変形例の説明にあたっては、上述の実施例と同様の構成部分については、先に説明した実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
D−1.第1変形例 :
図7は、第1変形例のインクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着する様子を示した説明図である。図示されているように、第1変形例では、前述した実施例とは異なり、カートリッジホルダー42の底部にインク取入針46が鉛直上方に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の底面には、インク供給口78(図8参照)が設けられている。インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着する際には、インクカートリッジ40のインク供給口78を、カートリッジホルダー42のインク取入針46に押し当てた状態で、インクカートリッジ40を下方に押し下げるようにして装着する。すると、インク取入針46がインク供給口78に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0061】
また、カートリッジホルダー42の底部には、ゴムなどの弾性材料で形成された環状のパッキン120が設けられている。後述するように、このパッキン120は、インクカートリッジ40の底面側に設けられたポンプ室80の容積を変動させるための機構の一部を構成している。
【0062】
図8は、第1変形例のインクカートリッジ40の断面を取ることによって内部構造を示した説明図である。図8には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で側面から見た配置が示されている。前述した実施例のインクカートリッジ40では、インクパック70を内蔵していたが、第1変形例のインクカートリッジ40では、インクパック70を内蔵しておらず、硬質の樹脂材料で形成された本体ケース130内に、インクを収容するインク収容室132が形成されている。前述したように、第1変形例のインクカートリッジ40の底面にはインク供給口78が設けられており、インク供給口78は、インク収容室132と連通している。尚、第1変形例のインクカートリッジ40の本体ケース130には、図示しない大気開放孔が設けられており、インク収容室132内のインクがインク供給口78から流出するのに伴って、大気開放孔からインク収容室132に空気が導入されるため、インク収容室132が負圧になることはない。また、第1変形例のインク収容室132は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0063】
また、第1変形例のインクカートリッジ40の底面には、略円筒形状のポンプ室80が設けられている。このポンプ室80の一端面(図中の下端面)は、可撓性の材料で形成された膜状のダイヤフラム100で構成されており、ポンプ室80の残りの部分は、本体ケース130に作り込まれている。第1変形例のポンプ室80の内部には、引張バネ103が設けられており、ダイヤフラム100をポンプ室80の内側に引き込むようになっている。
【0064】
また、本体ケース130内には、インク収容室132の下部からインクをポンプ室80に導く入口流路104や、ポンプ室80からインクをインク収容室132の上部へと導く出口流路112や、ポンプ室80から入口流路104へのインクの逆流を阻止する入口側逆止弁110や、出口流路112からポンプ室80へのインクの逆流を阻止する出口側逆止弁118などが作り込まれている。尚、第1変形例の入口流路104は、本発明の「導入流路」に相当しており、第1変形例の出口流路112は、本発明の「導出流路」に相当している。
【0065】
図示されているように、入口流路104は、インク収容室132の底面の長手方向に沿って延設されている。この入口流路104には、複数の取込口108が入口流路104の延設方向に並べて設けられており、取込口108の内径は、ポンプ室80から遠いほど大きく設定されている。
【0066】
また、出口流路112は、本体ケース130の側面内に鉛直上方に向けて設けられた部分と、インク収容室132の上面の長手方向に沿って延設された部分とで構成されている。そして、インク収容室132の上面に沿って延設された部分には、複数の吐出口116が出口流路112の延設方向に並べて設けられており、吐出口116の内径は、ポンプ室80から遠いほど大きく設定されている。
【0067】
図9は、第1変形例のインクカートリッジ40内のインクが循環する様子を示した説明図である。尚、図9には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態が示されている。前述したように、カートリッジホルダー42の底部にはパッキン120が設けられており、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、パッキン120がポンプ室80のダイヤフラム100側に押し当てられて、ダイヤフラム100を覆うように閉空間が形成される。また、カートリッジホルダー42には、負圧を発生させる減圧ポンプ124が設けられており、この減圧ポンプ124は、圧力流路122を介してパッキン120の内部に連通している。
【0068】
そして、減圧ポンプ124を駆動すると、図9(a)に示すように、減圧ポンプ124の負圧が圧力流路122によってパッキン120に導かれ、パッキン120の内部が負圧になる。前述したように、第1変形例のポンプ室80の内部には、引張バネ103が設けられており、ダイヤフラム100をポンプ室80の内側に引き込んでいるが、パッキン120の内部が負圧になると、引張バネ103の収縮力に抗してダイヤフラム100をパッキン120側(ポンプ室80の外側)に引き出そうとする。そのため、ポンプ室80の容積が増加し、ポンプ室80内が負圧になる。このとき、出口側逆止弁118は閉鎖状態となるので、入口流路104側からポンプ室80にインクが吸い込まれる。前述したように、第1変形例の入口流路104は、インク収容室132の底面の長手方向に沿って延設されている。また、入口流路104には、延設方向に並べて複数の取込口108が設けられていることから、これら複数の取込口108から取り込まれたインクが入口流路104を通ってポンプ室80に供給される。
【0069】
続いて、減圧ポンプ124の負圧を開放すると、図9(b)に示すように、圧力流路122を介して空気がパッキン120内に導入され、パッキン120の内部の圧力が大気圧に戻る。すると、ポンプ室80内の引張バネ103がダイヤフラム100をポンプ室80の内側に引き込んで、ポンプ室80の容積が減少する(元の容積に復元する)ことにより、ポンプ室80内のインクが加圧される。このとき、入口側逆止弁110は閉鎖状態となるので、ポンプ室80内のインクは、出口流路112側に圧送される。前述したように、第1変形例の出口流路112には、インク収容室132の上面の長手方向に沿って延設された部分が設けられており、このインク収容室132の上面に沿って延設された部分には、延設方向に並べて複数の吐出口116が設けられていることから、これら複数の吐出口116からインク収容室132の上部にインクが放出される。
【0070】
こうしてポンプ室80内のインクが出口流路112側に圧送された後、減圧ポンプ124の駆動により再びパッキン120の内部が負圧になると、図9(a)のようにダイヤフラム100がパッキン120側に引き出され、容積が増加したポンプ室80にインクを供給するために、入口流路104の複数の取込口108からインクが取り込まれる。以上のような動作を繰り返すことによって、インク収容室132の下部から上部へとインクを吸い上げて循環させることができる。
【0071】
以上に説明したように、第1変形例のインクカートリッジ40では、前述した実施例のインクパック70に代えて、本体ケース130内にインク収容室132が形成されているとともに、インク収容室132の底面に沿って延設された入口流路104の延設方向に並べて複数の取込口108が設けられている。このような構成の第1変形例のインクカートリッジ40においても、前述した実施例と同様に、入口流路104の先端部にだけ取込口108が設けられている場合に比べて、インク収容室132の底部の広い範囲からインク(顔料などの沈降成分の濃度が濃いインク)を取り込んでインク収容室132の上部に向かって送ることができる。これにより、インク収容室132の底部における顔料濃度の偏りを少なくすることができる。結果として、インクジェットプリンター10による印刷の色目が変わってしまうこと(インクカートリッジ40から噴射ヘッド22に供給されるインクの顔料濃度が変化すること)を抑制することができる。
【0072】
また、第1変形例のインクカートリッジ40では、出口流路112がインク収容室132の上面の長手方向に沿って延設されているとともに、インクの吐出口116が出口流路112の先端部だけでなく、出口流路112の延設方向に並べて複数設けられている。インク中の顔料濃度が薄いインク収容室132の上部に、下部から吸い上げられた顔料濃度の濃いインクが放出されると、顔料がインク中に拡散することになるが、このようにインク収容室132の上面に沿って延設された出口流路112の延設方向に並べて複数の吐出口116を設けておけば、出口流路112の先端部にしか吐出口116が設けられていない場合に比べて、インク収容室132の上部の広い範囲に顔料濃度の濃いインクを放出することができるので、拡散によるインク中の顔料濃度の均一化を促進することができる。
【0073】
尚、出口流路112の延設方向に並べて設けられた複数の吐出口116では、ポンプ室80に近い吐出口116であるほどインクの圧力が高いのでインクが放出され易い傾向にある。そこで、ポンプ室80から遠くなるに連れて吐出口116の内径を大きく(ポンプ室80に近い吐出口116であるほど内径を小さく)設定しておけば、ポンプ室80に近い側の吐出口116からのインクの放出を抑えて、ポンプ室80から遠い側の吐出口116でもインクを放出することが可能となる。
【0074】
D−2.第2変形例 :
図10は、第2変形例のインクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着する様子を示した説明図である。図示されているように、第2変形例では、前述した実施例と同様に、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44がカートリッジホルダー42に設けられている。また、挿入孔44の奥側の面には、インク取入針46およびカム48が設けられており、カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインクカートリッジ40の背面のインク供給口78(図11参照)に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。但し、第2変形例はで、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、インクカートリッジ40の高さよりも幅が大きく設定されている点で、前述した実施例と異なっている。尚、以下では、カートリッジホルダー42に装着した状態で高さよりも幅が大きいタイプのインクカートリッジ40を、「平置きタイプ」と呼ぶことがあるものとする。
【0075】
このような平置きタイプのインクカートリッジ40では、インク供給口78が設けられる位置によって、インク中の顔料などの沈降成分の濃度の偏りが、インクカートリッジ40の上下方向だけでなく、水平方向にも生じることがある。
【0076】
図11は、平置きタイプのインクカートリッジ40でインク中の顔料濃度の偏りが水平方向に生じる様子を示した説明図である。尚、図11では、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、上方から見た様子が示されている。図示した例では、インク供給口78がインクカートリッジ40の背面の中央ではなく、一方の側面(右側面)に寄せて設けられている。このような構成のインクカートリッジ40では、内部のインク収容部140に収容されているインクがインク供給口78から流出するのに伴って、インク供給口78から近い側よりも遠い側でインク中の顔料濃度が濃くなる傾向にある。すなわち、インク中の顔料が沈降することにより、顔料濃度の濃い下層のインクよりも顔料濃度の薄い上層のインクの流動性が高くなり、上層のインクが優先してインク供給口78に供給される。その結果、インク供給口78から遠い側の側面(左側面)や、インク供給口78が設けられた背面に向き合う前面に沿って顔料濃度の濃いインクが残ったままとなる。そこで、第2実施例のインクカートリッジ40では、インク収容部140内のインクを循環させるための循環流路が次のように設けられている。
【0077】
図12は、第2変形例のインクカートリッジ40内に設けられている循環流路によって、インク収容部140内のインクが循環する様子を示した説明図である。尚、図12では、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、上方から見た配置が示されている。第2変形例のインクカートリッジ40には、前述した実施例と同様に、インク供給口78や、ポンプ室80や、入口流路104や、出口流路112などが設けられたインク供給ユニット74が内蔵されている。
【0078】
入口流路104には、ストロー状の流入管106が接続されており、第2変形例の流入管106は、インク収容部140の左側面(インク供給口78から遠い側の側面)に沿って延設された部分と、前面(インク供給口78が設けられた背面に向き合う面)に沿って延設された部分とで構成されている。この流入管106には、延設方向に並べて複数の取込口108が設けられており、取込口108の内径は、ポンプ室80から遠いほど大きく設定されている。
【0079】
一方、出口流路112には、ストロー状の流出管114が接続されており、第2変形例の流出管114は、インク収容部140の右側面(インク供給口78に近い側の側面)に沿って設けられている。この流出管114は、長さがインク供給口78からインク収容部140の左側面までの距離よりも短く設定されており、先端に吐出口116が設けられている。
【0080】
このような構成の第2変形例のインクカートリッジ40では、前述した実施例と同様に、カム48の駆動によりポンプ室80の容積を変動させることによって、流入管106の取込口108からインクを取り込んで、流出管114の吐出口116から放出することができる。そして、取込口108は、インク収容部140の左側面および前面に沿って延設された流入管106の延設方向に並べて複数設けられていることから、上述したように顔料濃度の濃いインクが残り易い部分(図11参照)からインクを取り込むことができる。また、こうして取込口108から取り込まれた顔料濃度の濃いインクは、顔料濃度の薄いインクが集まり易いインク供給口78に近い側に設けられた流出管114の吐出口116から放出されるので、平置きタイプのインクカートリッジ40において水平方向に生じるインク中の顔料濃度の偏りを少なくすることができる。
【0081】
尚、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、流入管106はインク収容部140の底面に沿って設けられていることが望ましく、流出管114はインク収容部140の上面に沿って設けられていることが望ましい。このようにすれば、上述のようにインク収容部140の水平方向にインクを撹拌するだけでなく、上下方向にインクを撹拌する効果も期待できる。
【0082】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0083】
例えば、前述した実施例では、流入管106に設けられた複数の取込口108の内径をポンプ室80から遠いほど大きく設定することによって、ポンプ室80から近い側と遠い側とでインクの取り込み易さを調整していた。しかし、ポンプ室80からの距離に応じてインクの取り込み易さを調整する構成は、これに限られるわけではなく、例えば、図13に示すように、流入管106に設けられた複数の取込口108の隣り合う取込口108同士の間隔を、ポンプ室80から遠いほど小さく設定してもよい。前述したように、内径が同じ複数の取込口108では、ポンプ室80に近い取込口108であるほど大きな負圧が作用するのでインクが流入し易い傾向にあるところ、ポンプ室80から遠くなるに連れて隣り合う取込口108同士の間隔を小さく(ポンプ室80に近い取込口108同士であるほど間隔を大きく)設定しておけば、ポンプ室80から近い側よりも遠い側に多くの取込箇所が配置されるので、ポンプ室80から遠い側でも近い側と同様にインクを取り込むことが可能となる。もちろん、ポンプ室80から遠いほど、取込口108の内径を大きく設定し、且つ、隣り合う取込口108同士の間隔を小さく設定することによって、ポンプ室80から近い側と遠い側とでインクの取り込み易さを調整してもよい。
【0084】
また、図14に示すように、分岐構造を有する流入管106としてもよい。すなわち、流入管106を分岐部材106bによって複数の流路に分岐させ、この分岐部材106bに長さがそれぞれ異なる複数の支流管106aを接続しておくこととして、各支流管106aの先端の取込口108からインクを取り込むようにしてもよい。このように流入管106を分岐部材106bで分岐させるようにすれば、各支流管106aに対してポンプ室80の負圧を同様に作用させることができるので、ポンプ室80から遠い側の取込口108(長い支流管106aの先端の取込口108)でも、ポンプ室80から近い側の取込口108(短い支流管106aの先端の取込口108)と同様にインクを取り込むことが可能となる。
【0085】
また、前述した実施例では、流入管106の延設方向に並べて複数の取込口108を設けることとしていたが、複数の取込口108に代えて、図15に示すように、流入管106の延設方向に沿って細長い切り込みであるスリット109を設けておいてもよい。このようなスリット109は、小さな取込口108が連続して多数設けられているものと捉えることができる。このため、インクパック70の底部に沿って延設された流入管106にスリット109を設ける場合でも、スリット109の細長い隙間を適切に設定しておくことによって、前述した実施例と同様に、インクパック70の底部の広い範囲から顔料濃度の濃いインクを流入管106に取り込むことができる。その結果、インクパック70の底部におけるインク中の顔料濃度の偏りを少なくすることが可能となる。また、インクパック70内のインクの消費に伴ってインクパック70が萎んでいく過程で、フィルム71同士が流入管106の一部を挟んだ状態で密着しても、未だフィルム71同士が密着していない部分ではスリット109から残りのインクを流入管106に取り込むことが可能である。従って、インクパック70が萎んでいく過程においても、インクパック70の下部から上部へとインクを循環させて撹拌機能を維持することができる。
【符号の説明】
【0086】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、 22…噴射ヘッド、
40…インクカートリッジ、 42…カートリッジホルダー、 44…挿入孔、
46…インク取入針、 48…カム、 70…インクパック、
72…カートリッジケース、 74…インク供給ユニット、
78…インク供給口、 80…ポンプ室、 100…ダイヤフラム、
102…圧縮バネ、 104…入口流路、 106…流入管、
108…取込口、 110…入口側逆止弁、 112…出口流路、
114…流出管、 116…吐出口、 118…出口側逆止弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に装着される液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例として、インクなどの液体を噴射ヘッドから噴射することで画像等を印刷する、いわゆるインクジェットプリンターが知られている。噴射ヘッドから噴射される液体は、インクカートリッジなどの専用の液体容器の内部に収容されており、この液体容器から噴射ヘッドに液体が供給される。また、液体容器は、内部の液体が無くなると新しい液体容器と交換できるように、液体消費装置に対して着脱可能に構成されているのが一般的である。
【0003】
こうした液体容器では、内部に収容する液体中に沈降性の成分が含まれることがある。例えば上述のインクの場合であれば、耐候性を高めるなどの目的で顔料が用いられることがあり、顔料は、インクの溶媒には溶けずに分散した状態で存在しているので、時間の経過とともに、インク中で顔料が沈降する。その結果、液体容器から噴射ヘッドに供給されるインクの顔料濃度が濃い場合と薄い場合とが生じて、画像等を均一な濃さで適切に印刷することができなくなってしまう。
【0004】
そこで、顔料などの沈降性の成分(以下、沈降成分)が含まれる液体を収容する液体容器では、内部の液体を撹拌することを意図して、沈降成分の濃度が濃い液体を液体容器の下部から吸い込んで、液体容器の上部に戻すための循環流路を液体容器内に搭載したものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−79187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に提案されている技術では、液体容器を大型化したりすると、液体容器内の液体を十分に撹拌することが困難となるという問題があった。すなわち、液体中の含有成分の沈降は、液体容器内で一様に起こる現象であり、液体容器の大型化により液体容器の底面が広くなると、循環流路の吸込口の近傍では液体が吸い込まれて循環(撹拌)されるものの、吸込口から離れた箇所では液体が撹拌されず、含有成分が沈降したままとなる。もちろん、液体容器内に循環流路を複数設ければ、液体の撹拌効果を高めることが可能であるものの、これでは、液体容器の構造が複雑化して大掛かりなものとなってしまう。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、沈降成分が含まれる液体を収容する液体容器において、構造を複雑にすることなく、内部の液体を循環流路で循環させて効果的に撹拌することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体容器は次の構成を採用した。すなわち、
沈降性の成分が含まれる液体を消費する液体消費装置に装着される液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を前記液体消費装置に供給するための液体供給口と、
容積が変動可能なポンプ室と、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着された装着状態における前記液体収容部の下部から液体を前記ポンプ室へと導く導入流路と、
前記ポンプ室内の液体を、前記装着状態における前記液体収容部の上部へと導く導出流路と
を備え、
前記導入流路は、前記装着状態における前記液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を有し、
前記底面延設部には、液体を取り込むための複数の取込口が該底面延設部の延設方向に並べて設けられていることを要旨とする。
【0009】
このような本発明の液体容器では、液体消費装置に装着された装着状態において、ポンプ室の容積を増大させて導入流路側からポンプ室に液体を吸入した後、ポンプ室の容積を減少させて出口流路側に向けて液体を圧送する動作を繰り返すことで、液体収容部の下部から上部へと液体を循環させることができる。そして、本発明の液体容器の導入流路には、液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部が設けられているとともに、液体の取込口が導入流路の先端だけでなく、底面延設部の延設方向に並べて複数設けられている。
【0010】
液体に含有される沈降性の成分(沈降成分)の沈降は、液体収容部内で一様に起こる現象であり、液体収容部の底部全体で沈降成分の濃度が液体収容部の上部よりも濃くなる。そこで、液体収容部の底面に沿って延設された導入流路の底面延設部の延設方向に並べて複数の取込口を設けておけば、導入流路の先端にしか取込口が設けられていない場合に比べて、液体収容部の底部の広い範囲から沈降成分濃度の濃い液体を取り込むことができる。これにより、液体収容部の底部における液体の沈降成分濃度の偏りを少なくすることができる。結果として、液体容器から液体消費装置に供給される液体の沈降成分濃度が変化する(沈降成分濃度が濃くなったり薄くなったりする)ことを抑制することができる。
【0011】
また、導入流路の底面延設部に複数の取込口を設ける構成であれば、液体容器内に複数の循環流路を備える場合のように液体容器の構造を複雑にすることなく、液体収容部内の液体の撹拌効果を高めることができる。
【0012】
上述した液体容器では、ポンプ室から遠いほど取込口の内径を大きく設定しておいてもよい。
【0013】
ポンプ室の容積を増加させるとポンプ室内が負圧になり、ポンプ室に近い取込口であるほど大きな負圧が作用するので液体が流入し易い傾向にある。そこで、ポンプ室から遠くなるに連れて取込口の内径を大きく(ポンプ室に近い取込口であるほど内径を小さく)設定しておくことにより、ポンプ室に近い側の取込口での液体の取り込みを抑制して、ポンプ室から遠い側の取込口でも近い側の取込口と同様に液体を取り込むことが可能となる。
【0014】
また、こうした液体容器では、ポンプ室から遠いほど、隣り合う取込口同士の間隔を小さく設定しておいてもよい。
【0015】
このように複数の取込口の隣り合う取込口同士の間隔をポンプ室から遠くなるに連れて小さくなる(ポンプ室に近い取込口同士であるほど間隔が大きくなる)ように適切に設定しておけば、ポンプ室から近い側よりも遠い側に多くの取込箇所が配置されるので、ポンプ室から遠い側でも近い側と同様に液体を取り込むことが可能となる。
【0016】
また、こうした液体容器では、導入流路の底面延設部を所定の分岐点で分岐させることとして、この分岐点からの長さが異なる複数の支流路の各々の先端に取込口を設けてもよい。
【0017】
このような分岐構造を有する導入流路であれば、所定の分岐点において各支流路にポンプ室の負圧を同様に作用させることができるので、ポンプ室から遠い側の取込口(長い支流管の先端の取込口)と、ポンプ室から近い側の取込口(短い支流管の先端の取込口)とで同様に液体を取り込むことが可能となる。
【0018】
また、こうした液体容器の液体収容部は、液体を通さないフィルムを袋状に封止して形成されるフィルムパックで構成してもよい。
【0019】
こうしたフィルムパックは、内部の液体の流出に伴って萎む(容積が減少する)ことから、容積が一定の箱状の容器とは異なり、大気開放部を設ける必要がなく、密閉状態を維持することが可能である。そのため、空気との反応による液体の劣化や、液体中の溶媒の蒸発を抑えることができる。
【0020】
また、フィルムパックは、内部の液体の消費に伴って萎んでいく過程で、フィルム同士が密着した部分と、未だ間に液体が残っておりフィルム同士が密着していない部分とが存在することがある。仮に、導入流路の先端にしか取込口が設けられていない場合には、フィルム同士が導入流路の先端を挟んだ状態で密着した時点で取込口が塞がれてしまい、フィルムパック内の残りの液体が導入流路に取り込まれなくなってしまう。しかし、取込口が導入流路の先端だけでなく、導入流路の底面延設部の延設方向に並べて複数設けられていれば、フィルム同士が底面延設部の一部を挟んだ状態で密着しても、未だ密着していない部分にある取込口から液体を導入流路に取り込むことが可能である。その結果、フィルムパック内の液体の消費に伴ってフィルムパックが萎んでいく過程でも、フィルムパックの下部から上部へと液体を循環させて撹拌機能を維持することができる。
【0021】
また、こうした液体容器の導出流路には、液体収容部の上面に沿って延設された上面延設部を設けることとして、液体を放出する吐出口を、導出流路の先端だけでなく、上面延設部の延設方向に並べて複数設けてもよい。
【0022】
液体中の沈降成分濃度の薄い液体収容部の上部に、液体収容部の下部から吸い上げられた沈降成分濃度の濃い液体が放出されると、沈降成分が液体中に拡散することになる。そして、液体収容部の上面に沿って延設された導出流路の延設方向に並べて複数の吐出口を設けておけば、導出流路の先端部にしか吐出口が設けられていない場合に比べて、液体収容部の上部の広い範囲に沈降成分濃度の濃い液体を放出することができるので、液体中の沈降成分の拡散を促進することができる。
【0023】
また、導入流路の底面延設部には、複数の取込口を設けるのではなく、液体を取り込むためのスリット状の切り込みを底面延設部の延設方向に沿って設けてもよい。
【0024】
このようなスリット状の切り込みは、小さな取込口が連続して多数設けられているものと同様と捉えることができる。このため、底面延設部に切り込みを設ける場合でも、切り込みの細長い隙間を適切に設定しておくことによって、複数の取込口を設ける場合と同様に、液体収容部の底部の広い範囲から沈降成分濃度の濃い液体を取り込むことができる。その結果、液体収容部の底部における液体の沈降成分濃度の偏りを少なくし、液体容器から液体消費装置に供給される液体の沈降成分濃度が変化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】本実施例のインクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する様子を示した説明図である。
【図3】本実施例のインクカートリッジの構成を示した分解斜視図である。
【図4】インクパックの断面を取ることによってインク供給ユニットの内部構造を示した説明図である。
【図5】カートリッジホルダーに内蔵のカムの回転により、インクカートリッジ内のインクが循環する様子を示した説明図である。
【図6】インクパック内のインクが消費されるのに伴ってインクパックが萎んでいく過程を示した説明図である。
【図7】第1変形例のインクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する様子を示した説明図である。
【図8】第1変形例のインクカートリッジの断面を取ることによって内部構造を示した説明図である。
【図9】第1変形例のインクカートリッジ内のインクが循環する様子を示した説明図である。
【図10】第2変形例のインクカートリッジをカートリッジホルダーに装着する様子を示した説明図である。
【図11】平置きタイプのインクカートリッジでインク中の顔料濃度の偏りが水平方向に生じる様子を示した説明図である。
【図12】第2変形例のインクカートリッジ内に設けられている循環流路によって、インク収容部内のインクが循環する様子を示した説明図である。
【図13】隣り合う取込口同士の間隔がポンプ室から遠いほど小さく設定された流入管を示した説明図である。
【図14】分岐構造を有する流入管を示した説明図である。
【図15】スリットが設けられた流入管を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.インクジェットプリンターの構成:
B.インクカートリッジの構成:
C.インクの循環動作:
D.変形例:
D−1.第1変形例:
D−2.第2変形例:
【0027】
A.インクジェットプリンターの構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例として本実施例の液体消費装置の大まかな構成を示した説明図である。図示したインクジェットプリンター10は、略箱形の外観形状をしており、前面のほぼ中央には前面カバー11が設けられ、その左隣には複数の操作ボタン15が設けられている。前面カバー11は下端側で軸支されており、上端側を手前に倒すと、印刷媒体としての印刷用紙2が排出される細長い排紙口12が現れる。また、インクジェットプリンター10の背面側には、図示しない給紙トレイが設けられており、給紙トレイに印刷用紙2をセットして操作ボタン15を操作すると、給紙トレイから供給された印刷用紙2が副走査方向に所定量ずつ紙送りされて、内部で印刷用紙2の表面に画像等が印刷された後、排紙口12から印刷用紙2が排出されるようになっている。
【0028】
また、インクジェットプリンター10の上面側には上面カバー14が設けられている。上面カバー14は、奥側で軸支されており、手前側を持ち上げて上面カバー14を開くと、インクジェットプリンター10の内部の状態を確認したり、あるいはインクジェットプリンター10の修理などを行ったりすることが可能となっている。
【0029】
インクジェットプリンター10の内部には、主走査方向に往復動しながら印刷用紙2上にインクドットを形成するキャリッジ20や、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30などが設けられている。キャリッジ20の底面側(印刷用紙2に向いた側)には、複数の噴射ノズルが形成された噴射ヘッド22が搭載されており、噴射ノズルから印刷用紙2に向かってインクを噴射して画像等の印刷を行う。本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを用いてカラー画像を印刷することが可能であり、このことと対応して、キャリッジ20に搭載された噴射ヘッド22には、インクの種類毎に噴射ノズルが設けられている。
【0030】
噴射ヘッド22に形成された噴射ノズルから噴射するインクは、インクカートリッジ40と呼ばれる専用の容器に収容されている。このインクカートリッジ40は、キャリッジ20とは別の位置に設けられたカートリッジホルダー42に対して着脱可能に構成されている。インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、インクカートリッジ40内のインクが、カートリッジホルダー42およびインクチューブ24を介してキャリッジ20の噴射ヘッド22に供給される。本実施例のインクジェットプリンター10では、前面カバー11の右隣に、前面カバー11と同様に下端側で軸支されたカートリッジ交換用カバー13が設けられており、カートリッジ交換用カバー13の上端側を手前に倒すと、カートリッジホルダー42が現れて、インクカートリッジ40を着脱することが可能となる。
【0031】
前述したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4種類のインクを使用することから、インクカートリッジ40もインクの種類毎に設けられている。ぞれぞれのインクカートリッジ40内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチューブ24を介して、噴射ヘッド22の対応する色の噴射ノズルに供給される。また、本実施例のインクカートリッジ40に収容されているインクには、色材として顔料が含まれている。顔料は、インクの溶媒に溶けずに分散した状態で存在しているため、時間が経過すると、インク中の顔料が沈降して、上層の顔料濃度が薄い部分と、下層の顔料濃度が濃い部分とができてしまう。そこで、インクカートリッジ40には、内部のインクを循環させて撹拌するための循環流路などが内蔵されている。尚、インクカートリッジ40の詳細な構成については、後ほど別図を用いて説明する。
【0032】
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32を駆動するための駆動モーター34などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジ20に固定されており、タイミングベルト32を駆動すると、主走査方向に延設された図示しないガイドレールによってガイドしながら、キャリッジ20を主走査方向に往復動させることができる。
【0033】
また、キャリッジ20を主走査方向に移動させた印刷領域外の位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、ホームポジションには、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメンテナンス機構が搭載されている。メンテナンス機構は、噴射ヘッド22の底面側(印刷用紙2に向いた側)に押し当てられて、噴射ノズルを覆うように閉空間を形成するキャップ部材50や、噴射ヘッド22の底面側に押し当てるためにキャップ部材50を昇降させる昇降機構(図示せず)や、キャップ部材50が噴射ヘッド22の底面側に押し当てられた状態でキャップ部材50内に負圧を導入する吸引ポンプ(図示せず)などから構成されている。
【0034】
更に、インクジェットプリンター10の内部には、印刷用紙2を副走査方向に紙送りするための図示しない紙送機構や、インクジェットプリンター10の全体の動作を制御する制御部60なども搭載されている。キャリッジ20を往復動させる動作や、印刷用紙2を紙送りする動作や、噴射ノズルからインクを噴射する動作や、正常に印刷可能なようにメンテナンスを実行する動作などは、全て制御部60によって制御されている。
【0035】
図2は、カートリッジホルダー42にインクカートリッジ40を装着する様子を示した説明図である。図示されているように、カートリッジホルダー42には、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44が、横方向に並べてインクカートリッジ40毎に設けられている。この挿入孔44の奥側の面には、インクカートリッジ40からインクを取り入れるためのインク取入針46が手前側に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の背面(挿入孔44の奥側に向いた面)には、インク供給口78(図3参照)が設けられている。カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインク供給口78に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0036】
カートリッジホルダー42には、図示しないインク通路や供給ポンプが内蔵されている。インク取入針46から取り入れられたインクは、インク通路によって、カートリッジホルダー42の背面側に接続されたインクチューブ24(図1参照)に導かれる。また、インク通路の途中に設けられた供給ポンプ(例えば、ダイアフラムポンプ)は、インクカートリッジ40内のインクを吸入して、キャリッジ20内に設けられた図示しないサブタンクに向けてインクを圧送するようになっている。尚、前述したように本実施例のインクジェットプリンター10は、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、黒色の4色分のインクカートリッジ40を搭載しており、各インクカートリッジ40内のインクは、独立して噴射ヘッド22に供給される。このため、カートリッジホルダー42の内部には、インク通路や供給ポンプがインクカートリッジ40毎に設けられている。
【0037】
また、カートリッジホルダー42の挿入孔44には、奥側の面から手前側に向けて突出する機構のカム48が設けられている。詳しくは後述するが、インクカートリッジ40には、顔料などの沈降性の成分(沈降成分)を含有するインクを循環させるための循環流路や、容積が変更可能なポンプ室などが設けられており、カム48は、図示しないモーターの駆動で回転することにより、ポンプ室の容積を変動させて圧力の作用で循環流路内のインクを送る役割を果たしている。
【0038】
B.インクカートリッジの構成 :
図3は、本実施例のインクカートリッジ40の構成を示した分解斜視図である。図示されているように、本実施例のインクカートリッジ40は、インクを収容するインクパック70と、インクパック70を収納するカートリッジケース72などから構成されている。インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルム71を溶着などで袋状に貼り合わせて、プラスチック材料で形成されたインク供給ユニット74を袋の開口部に嵌め込んだ状態でフィルム71をインク供給ユニット74に溶着することで形成されている。図3では、インクパック70のフィルム71を溶着した部分がハッチングを付して表されている。尚、本実施例のインクカートリッジ40は、本発明の「液体容器」に相当しており、本実施例のインクパック70は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0039】
液体を通さないフィルム71の素材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリエチレンなどを挙げることができる。また、多層構造のフィルムとしてもよく、例えば、外層を耐衝撃性に優れたPETやナイロンとし、内層を耐インク性に優れたポリエチレンとしてもよい。さらには、アルミなどから成る中層を設けてもよく、これにより、ガスバリア性を高めることができる。
【0040】
インク供給ユニット74には、前述したカートリッジホルダー42側のインク取入針46が挿入されるインク供給口78や、インクパック70内のインクを循環させる循環流路や、容積が変更可能なポンプ室80などが形成されている。尚、インク供給ユニット74の内部構造については後述する。
【0041】
インクパック70を収納するカートリッジケース72は、プラスチック材料で形成された前ケース82および後ケース84から構成されている。後ケース84は、箱形状に形成されており、内部にインクパック70を収納可能となっている。一方、前ケース82は、インク供給ユニット74を覆い、且つ、後ケース84と嵌合して蓋をする部材である。また、前ケース82には、インクカートリッジ40がカートリッジホルダー42に装着された際に、カートリッジホルダー42側のインク取入針46を受け入れる取入針用通孔86や、カム48を受け入れるカム用通孔88が設けられている。
【0042】
図4は、インクパック70の断面を取ることによってインク供給ユニット74の内部構造を示した説明図である。尚、図4には、インクパック70を内蔵するインクカートリッジ40をインクジェットプリンター10のカートリッジホルダー42に装着した状態において、側面から見た(インク供給ユニット74のインク供給口78が左方に向いた)様子が示されている。インク供給ユニット74には、略円筒形状のポンプ室80が設けられており、このポンプ室80の一端面(図中の左端面)は、可撓性の材料で形成された膜状のダイヤフラム100で構成されている。また、ポンプ室80の内部には、ダイヤフラム100をポンプ室80の外側に向けて付勢する圧縮バネ102が設けられている。
【0043】
また、インク供給ユニット74には、インクパック70の下部からインクをポンプ室80へと導く入口流路104や、ポンプ室80からインクをインクパック70の上部へと導く出口流路112や、ポンプ室80から入口流路104へのインクの逆流を阻止する入口側逆止弁110や、出口流路112からポンプ室80へのインクの逆流を阻止する出口側逆止弁118などが設けられている。
【0044】
入口流路104には、円管形状の流入管106が接続されており、この流入管106は、インク供給ユニット74を挟んでいるインクパック70の一端側(図中の左側)からインク供給ユニット74を挟んでいない他端側(図中の右側)に向けてインクパック70の底部に沿って延設されている。また、図示されているように、流入管106には、インクの取込口108が流入管106の先端だけでなく、流入管106の延設方向に並べて複数設けられており、しかも取込口108の内径は、ポンプ室80から離れるに連れて大きく設定されている。尚、本実施例の入口流路104および流入管106は、本発明の「導入流路」に相当しており、本実施例の流入管106は、本発明の「底面延設部」に相当している。
【0045】
一方、出口流路112には、流入管106と同様の円管形状の流出管114が接続されており、流出管114は、インクパック70の上端部に沿って延設されているが、長さは流入管106に比べて短くなっている。また、流出管114には、インクの吐出口116が流出管114の先端にだけ設けられている。
【0046】
以上のように構成されたインクカートリッジ40は、カートリッジホルダー42に装着された状態において、カートリッジホルダー42に内蔵のカム48を駆動することによって、顔料などの沈降成分を含有する内部のインクを、次のようにして循環させて撹拌するようになっている。
【0047】
C.インクの循環動作 :
図5は、カートリッジホルダー42に内蔵のカム48の回転により、インクカートリッジ40内のインクが循環する様子を示した説明図である。尚、図5には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態が示されているが、図示が煩雑になるのを避けるため、カートリッジケース72やカートリッジホルダー42などの図示が省略されている。前述したようにインクカートリッジ40は、カートリッジホルダー42に装着されると、カム48をカム用通孔88(図3参照)から受け入れるようになっている。また、本実施例のカム48は、いわゆる板カムであり、回転軸からの半径が他よりも大きい部分(以下、凸部)が設けられている。
【0048】
カム48が回転することにより、図5(a)に示すように、カム48の凸部がポンプ室80のダイヤフラム100を押した状態となる。前述したように、ポンプ室80の一端面を構成するダイヤフラム100は、ポンプ室80内の圧縮バネ102によってポンプ室80の外側に向けて付勢されているが、カム48の凸部は、圧縮バネ102の付勢力に抗してダイヤフラム100をポンプ室80の内側に向けて押すようになっている。そのため、ポンプ室80の容積が減少し、ポンプ室80内のインクが加圧される。このとき、入口側逆止弁110は閉鎖状態となり、ポンプ室80から入口流路104側へのインクの逆流を阻止するので、ポンプ室80内のインクは、出口流路112側に圧送され、流出管114の先端の吐出口116からインクパック70の上部に放出される。
【0049】
さらにカム48が回転すると、続いて、図5(b)に示すように、カム48の凸部がポンプ室80のダイヤフラム100から離れた状態となる。すると、ポンプ室80内の圧縮バネ102がダイヤフラム100をポンプ室80の外側に押し出して、ポンプ室80の容積が増加する(元の容積に復元する)ことにより、ポンプ室80内が負圧になる。このとき、出口側逆止弁118は閉鎖状態となり、出口流路112側からポンプ室80へのインクの逆流を阻止するので、入口流路104側からポンプ室80にインクが吸い込まれることになる。前述したように、入口流路104には、流入管106が接続されており、この流入管106は、インクパック70のインク供給口78を挟んでいない側の端部に向けてインクパック70の底部に沿って延設されている。また、流入管106には、複数の取込口108が流入管106の延設方向に沿って設けられおり、これら複数の取込口108から取り込まれたインクが流入管106および入口流路104を通ってポンプ室80に供給される。
【0050】
こうして容積が回復したポンプ室80にインクが満たされた後、回転するカム48の凸部が再びダイヤフラム100をポンプ室80の内側に向けて押すと、図5(a)のようにポンプ室80で加圧されたインクが出口流路112側に圧送され、流出管114を通って先端の吐出口116から放出される。以上のような動作を繰り返すことによって、インクパック70の下部から上部へとインクを吸い上げて循環させることができる。
【0051】
特に、本実施例のインクカートリッジ40では、入口流路104に接続される流入管106が、インク供給ユニット74を挟んだインクパック70の一端側からインク供給ユニット74を挟んでいない他端側に向けてインクパック70の底部に沿って延設されているとともに、インクの取込口108が流入管106の先端だけでなく、流入管106の延設方向に並べて複数設けられている。顔料などのインク中の含有成分の沈降は、インクパック70内で一様に起こる現象であるところ、このようにインクパック70の底部に沿って延設された流入管106の延設方向に並べて複数の取込口108を設けておけば、流入管106の先端にしか取込口108が設けられていない場合に比べて、インクパック70の底部の広い範囲から顔料濃度の濃いインクを取り込んでインクパック70の上部へと吸い上げることができる。これにより、インクパック70の底部における顔料濃度の偏りを少なくすることができる。また、流入管106に複数の取込口108を設ける構成であれば、インクカートリッジ40内に複数の循環経路を設ける場合のようにインクカートリッジ40の構造を複雑にすることなく、内部のインクの撹拌効果を高めることができる。結果として、インクジェットプリンター10の噴射ヘッド22から噴射するインクの顔料濃度が変化すること(印刷の色目が変わってしまうこと)を抑制することができる。
【0052】
また、流入管106の延設方向に並べて複数の取込口108を設ける場合には、ポンプ室80に近い取込口108であるほど大きな負圧が作用するのでインクが流入し易い傾向にある。そこで、本実施例のインクカートリッジ40では、ポンプ室80から遠くなるに連れて取込口108の内径が大きく(ポンプ室80に近い取込口108であるほど内径が小さく)設定されている。このようにポンプ室80からの距離に応じて取込口108の内径を適切に設定しておくことにより、ポンプ室80から遠い側の取込口108でもインクが流入し易くして近い側の取込口108と同様にインクを取り込むことが可能となる。
【0053】
さらに、本実施例のインクカートリッジ40では、インクを収容するインクパック70を備えており、複数の取込口108が設けられた流入管106がインクパック70の底部に沿って延設されている。これにより、インクパック70内のインクが消費されるのに伴ってインクパック70が萎む(容積が減少する)過程でインクパック70の下部から上部へのインクの循環が妨げられる不具合を防止する効果を得られる。以下、この点について補足して説明する。
【0054】
図6は、インクパック70内のインクが消費されるのに伴ってインクパック70が萎んでいく過程を示した説明図である。前述したように、インクパック70は、インクなどの液体を通さないフィルム71を溶着などで袋状に貼り合わせて形成されており(図3参照)、内部に充填されるインクは、フィルム71とフィルム71の間に収容されている。そして、インクパック70内のインクがインク供給口78を通って流出すると、向かい合うフィルム71同士が互いに接近してインクパック70が萎む(容積が減少する)ことになり、最終的にはフィルム71同士が密着した状態となる。このように、インクパック70は、内部のインクの流出に伴って容積が減少することから、容積が一定の箱状の容器とは異なり、大気開放部を設ける必要がなく、密閉状態を維持することができる。このため、空気との反応によるインクの劣化や、インク中の溶媒の蒸発を抑えることができる。
【0055】
このようなインクパック70では、内部のインクの消費に伴って萎んでいく過程で、既にフィルム71同士が密着した部分と、未だ間にインクが残っておりフィルム71同士が密着していない部分とが存在することがあり、インクパック70内に残っているインクをインク供給口78へと供給するには、図6に示すように、インク供給口78から遠い側(インク供給ユニット74を挟んでいない側)の端部からフィルム71同士が密着した状態となるのが理想的である。このとき、仮に流入管106の先端にしか取込口108が設けられていないとすると、フィルム71同士が流入管106の先端部分を挟んだ状態で密着した時点で取込口108が塞がれてしまい、インクパック70内の残りのインクが流入管106に取り込まれなくなってしまう。その結果、インクパック70の下部から上部へとインクを吸い上げて循環させることができなくなる。
【0056】
これに対して、本実施例のインクカートリッジ40では、取込口108が流入管106の先端だけでなく、流入管106の延設方向に並べて複数設けられていることから、フィルム71同士が流入管106の一部を挟んだ状態で密着しても、未だフィルム71同士が密着していない部分にある取込口108から残りのインクを流入管106に取り込むことが可能である。その結果、インクパック70内のインクの消費に伴ってインクパック70が萎んでいく過程においても、インクパック70の下部から上部へとインクを循環させて撹拌機能を維持することができる。
【0057】
また、本実施例のインクカートリッジ40では、出口流路112に接続する流出管114の長さが流入管106よりも短く設定されている。これは次のような理由によるものである。すなわち、前述したように、インクパック70内のインクの消費に伴ってインク供給口78から遠い側(インク供給ユニット74を挟んでいない側)の端部からフィルム71同士が密着した状態となるのが好ましく、流出管114の長さを流入管106よりも短く設定しておけば、インク供給口78から遠い側で取り込んだインクをインク供給口78に近い側で放出することができるので、インク供給口78から遠い側の端部からフィルム71同士が密着した状態となることを助長することができる。
【0058】
尚、本実施例では、ポンプ室80の容積を変動させる機構としてカム48を採用しているが、ポンプ室80の内側に向けてのダイヤフラム100を押した状態と、ダイヤフラム100を離した状態とを切換可能であれば、カム48に限られるわけではなく、例えば、伸縮可能なソレノイドを用いて、ダイヤフラム100を押したり離したりすることとしてもよい。
【0059】
D.変形例 :
以下では、上述した本実施例のインクカートリッジ40の変形例について説明する。尚、変形例の説明にあたっては、上述の実施例と同様の構成部分については、先に説明した実施例と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
D−1.第1変形例 :
図7は、第1変形例のインクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着する様子を示した説明図である。図示されているように、第1変形例では、前述した実施例とは異なり、カートリッジホルダー42の底部にインク取入針46が鉛直上方に向けて立設されている。また、インクカートリッジ40の底面には、インク供給口78(図8参照)が設けられている。インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着する際には、インクカートリッジ40のインク供給口78を、カートリッジホルダー42のインク取入針46に押し当てた状態で、インクカートリッジ40を下方に押し下げるようにして装着する。すると、インク取入針46がインク供給口78に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。
【0061】
また、カートリッジホルダー42の底部には、ゴムなどの弾性材料で形成された環状のパッキン120が設けられている。後述するように、このパッキン120は、インクカートリッジ40の底面側に設けられたポンプ室80の容積を変動させるための機構の一部を構成している。
【0062】
図8は、第1変形例のインクカートリッジ40の断面を取ることによって内部構造を示した説明図である。図8には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で側面から見た配置が示されている。前述した実施例のインクカートリッジ40では、インクパック70を内蔵していたが、第1変形例のインクカートリッジ40では、インクパック70を内蔵しておらず、硬質の樹脂材料で形成された本体ケース130内に、インクを収容するインク収容室132が形成されている。前述したように、第1変形例のインクカートリッジ40の底面にはインク供給口78が設けられており、インク供給口78は、インク収容室132と連通している。尚、第1変形例のインクカートリッジ40の本体ケース130には、図示しない大気開放孔が設けられており、インク収容室132内のインクがインク供給口78から流出するのに伴って、大気開放孔からインク収容室132に空気が導入されるため、インク収容室132が負圧になることはない。また、第1変形例のインク収容室132は、本発明の「液体収容部」に相当している。
【0063】
また、第1変形例のインクカートリッジ40の底面には、略円筒形状のポンプ室80が設けられている。このポンプ室80の一端面(図中の下端面)は、可撓性の材料で形成された膜状のダイヤフラム100で構成されており、ポンプ室80の残りの部分は、本体ケース130に作り込まれている。第1変形例のポンプ室80の内部には、引張バネ103が設けられており、ダイヤフラム100をポンプ室80の内側に引き込むようになっている。
【0064】
また、本体ケース130内には、インク収容室132の下部からインクをポンプ室80に導く入口流路104や、ポンプ室80からインクをインク収容室132の上部へと導く出口流路112や、ポンプ室80から入口流路104へのインクの逆流を阻止する入口側逆止弁110や、出口流路112からポンプ室80へのインクの逆流を阻止する出口側逆止弁118などが作り込まれている。尚、第1変形例の入口流路104は、本発明の「導入流路」に相当しており、第1変形例の出口流路112は、本発明の「導出流路」に相当している。
【0065】
図示されているように、入口流路104は、インク収容室132の底面の長手方向に沿って延設されている。この入口流路104には、複数の取込口108が入口流路104の延設方向に並べて設けられており、取込口108の内径は、ポンプ室80から遠いほど大きく設定されている。
【0066】
また、出口流路112は、本体ケース130の側面内に鉛直上方に向けて設けられた部分と、インク収容室132の上面の長手方向に沿って延設された部分とで構成されている。そして、インク収容室132の上面に沿って延設された部分には、複数の吐出口116が出口流路112の延設方向に並べて設けられており、吐出口116の内径は、ポンプ室80から遠いほど大きく設定されている。
【0067】
図9は、第1変形例のインクカートリッジ40内のインクが循環する様子を示した説明図である。尚、図9には、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態が示されている。前述したように、カートリッジホルダー42の底部にはパッキン120が設けられており、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着すると、パッキン120がポンプ室80のダイヤフラム100側に押し当てられて、ダイヤフラム100を覆うように閉空間が形成される。また、カートリッジホルダー42には、負圧を発生させる減圧ポンプ124が設けられており、この減圧ポンプ124は、圧力流路122を介してパッキン120の内部に連通している。
【0068】
そして、減圧ポンプ124を駆動すると、図9(a)に示すように、減圧ポンプ124の負圧が圧力流路122によってパッキン120に導かれ、パッキン120の内部が負圧になる。前述したように、第1変形例のポンプ室80の内部には、引張バネ103が設けられており、ダイヤフラム100をポンプ室80の内側に引き込んでいるが、パッキン120の内部が負圧になると、引張バネ103の収縮力に抗してダイヤフラム100をパッキン120側(ポンプ室80の外側)に引き出そうとする。そのため、ポンプ室80の容積が増加し、ポンプ室80内が負圧になる。このとき、出口側逆止弁118は閉鎖状態となるので、入口流路104側からポンプ室80にインクが吸い込まれる。前述したように、第1変形例の入口流路104は、インク収容室132の底面の長手方向に沿って延設されている。また、入口流路104には、延設方向に並べて複数の取込口108が設けられていることから、これら複数の取込口108から取り込まれたインクが入口流路104を通ってポンプ室80に供給される。
【0069】
続いて、減圧ポンプ124の負圧を開放すると、図9(b)に示すように、圧力流路122を介して空気がパッキン120内に導入され、パッキン120の内部の圧力が大気圧に戻る。すると、ポンプ室80内の引張バネ103がダイヤフラム100をポンプ室80の内側に引き込んで、ポンプ室80の容積が減少する(元の容積に復元する)ことにより、ポンプ室80内のインクが加圧される。このとき、入口側逆止弁110は閉鎖状態となるので、ポンプ室80内のインクは、出口流路112側に圧送される。前述したように、第1変形例の出口流路112には、インク収容室132の上面の長手方向に沿って延設された部分が設けられており、このインク収容室132の上面に沿って延設された部分には、延設方向に並べて複数の吐出口116が設けられていることから、これら複数の吐出口116からインク収容室132の上部にインクが放出される。
【0070】
こうしてポンプ室80内のインクが出口流路112側に圧送された後、減圧ポンプ124の駆動により再びパッキン120の内部が負圧になると、図9(a)のようにダイヤフラム100がパッキン120側に引き出され、容積が増加したポンプ室80にインクを供給するために、入口流路104の複数の取込口108からインクが取り込まれる。以上のような動作を繰り返すことによって、インク収容室132の下部から上部へとインクを吸い上げて循環させることができる。
【0071】
以上に説明したように、第1変形例のインクカートリッジ40では、前述した実施例のインクパック70に代えて、本体ケース130内にインク収容室132が形成されているとともに、インク収容室132の底面に沿って延設された入口流路104の延設方向に並べて複数の取込口108が設けられている。このような構成の第1変形例のインクカートリッジ40においても、前述した実施例と同様に、入口流路104の先端部にだけ取込口108が設けられている場合に比べて、インク収容室132の底部の広い範囲からインク(顔料などの沈降成分の濃度が濃いインク)を取り込んでインク収容室132の上部に向かって送ることができる。これにより、インク収容室132の底部における顔料濃度の偏りを少なくすることができる。結果として、インクジェットプリンター10による印刷の色目が変わってしまうこと(インクカートリッジ40から噴射ヘッド22に供給されるインクの顔料濃度が変化すること)を抑制することができる。
【0072】
また、第1変形例のインクカートリッジ40では、出口流路112がインク収容室132の上面の長手方向に沿って延設されているとともに、インクの吐出口116が出口流路112の先端部だけでなく、出口流路112の延設方向に並べて複数設けられている。インク中の顔料濃度が薄いインク収容室132の上部に、下部から吸い上げられた顔料濃度の濃いインクが放出されると、顔料がインク中に拡散することになるが、このようにインク収容室132の上面に沿って延設された出口流路112の延設方向に並べて複数の吐出口116を設けておけば、出口流路112の先端部にしか吐出口116が設けられていない場合に比べて、インク収容室132の上部の広い範囲に顔料濃度の濃いインクを放出することができるので、拡散によるインク中の顔料濃度の均一化を促進することができる。
【0073】
尚、出口流路112の延設方向に並べて設けられた複数の吐出口116では、ポンプ室80に近い吐出口116であるほどインクの圧力が高いのでインクが放出され易い傾向にある。そこで、ポンプ室80から遠くなるに連れて吐出口116の内径を大きく(ポンプ室80に近い吐出口116であるほど内径を小さく)設定しておけば、ポンプ室80に近い側の吐出口116からのインクの放出を抑えて、ポンプ室80から遠い側の吐出口116でもインクを放出することが可能となる。
【0074】
D−2.第2変形例 :
図10は、第2変形例のインクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着する様子を示した説明図である。図示されているように、第2変形例では、前述した実施例と同様に、手前側から奥側に向けてインクカートリッジ40を挿入する挿入孔44がカートリッジホルダー42に設けられている。また、挿入孔44の奥側の面には、インク取入針46およびカム48が設けられており、カートリッジホルダー42の挿入孔44にインクカートリッジ40を奥側まで挿入して装着すると、インク取入針46がインクカートリッジ40の背面のインク供給口78(図11参照)に挿入されて、インクカートリッジ40内のインクをカートリッジホルダー42に取り入れることが可能となる。但し、第2変形例はで、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、インクカートリッジ40の高さよりも幅が大きく設定されている点で、前述した実施例と異なっている。尚、以下では、カートリッジホルダー42に装着した状態で高さよりも幅が大きいタイプのインクカートリッジ40を、「平置きタイプ」と呼ぶことがあるものとする。
【0075】
このような平置きタイプのインクカートリッジ40では、インク供給口78が設けられる位置によって、インク中の顔料などの沈降成分の濃度の偏りが、インクカートリッジ40の上下方向だけでなく、水平方向にも生じることがある。
【0076】
図11は、平置きタイプのインクカートリッジ40でインク中の顔料濃度の偏りが水平方向に生じる様子を示した説明図である。尚、図11では、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、上方から見た様子が示されている。図示した例では、インク供給口78がインクカートリッジ40の背面の中央ではなく、一方の側面(右側面)に寄せて設けられている。このような構成のインクカートリッジ40では、内部のインク収容部140に収容されているインクがインク供給口78から流出するのに伴って、インク供給口78から近い側よりも遠い側でインク中の顔料濃度が濃くなる傾向にある。すなわち、インク中の顔料が沈降することにより、顔料濃度の濃い下層のインクよりも顔料濃度の薄い上層のインクの流動性が高くなり、上層のインクが優先してインク供給口78に供給される。その結果、インク供給口78から遠い側の側面(左側面)や、インク供給口78が設けられた背面に向き合う前面に沿って顔料濃度の濃いインクが残ったままとなる。そこで、第2実施例のインクカートリッジ40では、インク収容部140内のインクを循環させるための循環流路が次のように設けられている。
【0077】
図12は、第2変形例のインクカートリッジ40内に設けられている循環流路によって、インク収容部140内のインクが循環する様子を示した説明図である。尚、図12では、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、上方から見た配置が示されている。第2変形例のインクカートリッジ40には、前述した実施例と同様に、インク供給口78や、ポンプ室80や、入口流路104や、出口流路112などが設けられたインク供給ユニット74が内蔵されている。
【0078】
入口流路104には、ストロー状の流入管106が接続されており、第2変形例の流入管106は、インク収容部140の左側面(インク供給口78から遠い側の側面)に沿って延設された部分と、前面(インク供給口78が設けられた背面に向き合う面)に沿って延設された部分とで構成されている。この流入管106には、延設方向に並べて複数の取込口108が設けられており、取込口108の内径は、ポンプ室80から遠いほど大きく設定されている。
【0079】
一方、出口流路112には、ストロー状の流出管114が接続されており、第2変形例の流出管114は、インク収容部140の右側面(インク供給口78に近い側の側面)に沿って設けられている。この流出管114は、長さがインク供給口78からインク収容部140の左側面までの距離よりも短く設定されており、先端に吐出口116が設けられている。
【0080】
このような構成の第2変形例のインクカートリッジ40では、前述した実施例と同様に、カム48の駆動によりポンプ室80の容積を変動させることによって、流入管106の取込口108からインクを取り込んで、流出管114の吐出口116から放出することができる。そして、取込口108は、インク収容部140の左側面および前面に沿って延設された流入管106の延設方向に並べて複数設けられていることから、上述したように顔料濃度の濃いインクが残り易い部分(図11参照)からインクを取り込むことができる。また、こうして取込口108から取り込まれた顔料濃度の濃いインクは、顔料濃度の薄いインクが集まり易いインク供給口78に近い側に設けられた流出管114の吐出口116から放出されるので、平置きタイプのインクカートリッジ40において水平方向に生じるインク中の顔料濃度の偏りを少なくすることができる。
【0081】
尚、インクカートリッジ40をカートリッジホルダー42に装着した状態で、流入管106はインク収容部140の底面に沿って設けられていることが望ましく、流出管114はインク収容部140の上面に沿って設けられていることが望ましい。このようにすれば、上述のようにインク収容部140の水平方向にインクを撹拌するだけでなく、上下方向にインクを撹拌する効果も期待できる。
【0082】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0083】
例えば、前述した実施例では、流入管106に設けられた複数の取込口108の内径をポンプ室80から遠いほど大きく設定することによって、ポンプ室80から近い側と遠い側とでインクの取り込み易さを調整していた。しかし、ポンプ室80からの距離に応じてインクの取り込み易さを調整する構成は、これに限られるわけではなく、例えば、図13に示すように、流入管106に設けられた複数の取込口108の隣り合う取込口108同士の間隔を、ポンプ室80から遠いほど小さく設定してもよい。前述したように、内径が同じ複数の取込口108では、ポンプ室80に近い取込口108であるほど大きな負圧が作用するのでインクが流入し易い傾向にあるところ、ポンプ室80から遠くなるに連れて隣り合う取込口108同士の間隔を小さく(ポンプ室80に近い取込口108同士であるほど間隔を大きく)設定しておけば、ポンプ室80から近い側よりも遠い側に多くの取込箇所が配置されるので、ポンプ室80から遠い側でも近い側と同様にインクを取り込むことが可能となる。もちろん、ポンプ室80から遠いほど、取込口108の内径を大きく設定し、且つ、隣り合う取込口108同士の間隔を小さく設定することによって、ポンプ室80から近い側と遠い側とでインクの取り込み易さを調整してもよい。
【0084】
また、図14に示すように、分岐構造を有する流入管106としてもよい。すなわち、流入管106を分岐部材106bによって複数の流路に分岐させ、この分岐部材106bに長さがそれぞれ異なる複数の支流管106aを接続しておくこととして、各支流管106aの先端の取込口108からインクを取り込むようにしてもよい。このように流入管106を分岐部材106bで分岐させるようにすれば、各支流管106aに対してポンプ室80の負圧を同様に作用させることができるので、ポンプ室80から遠い側の取込口108(長い支流管106aの先端の取込口108)でも、ポンプ室80から近い側の取込口108(短い支流管106aの先端の取込口108)と同様にインクを取り込むことが可能となる。
【0085】
また、前述した実施例では、流入管106の延設方向に並べて複数の取込口108を設けることとしていたが、複数の取込口108に代えて、図15に示すように、流入管106の延設方向に沿って細長い切り込みであるスリット109を設けておいてもよい。このようなスリット109は、小さな取込口108が連続して多数設けられているものと捉えることができる。このため、インクパック70の底部に沿って延設された流入管106にスリット109を設ける場合でも、スリット109の細長い隙間を適切に設定しておくことによって、前述した実施例と同様に、インクパック70の底部の広い範囲から顔料濃度の濃いインクを流入管106に取り込むことができる。その結果、インクパック70の底部におけるインク中の顔料濃度の偏りを少なくすることが可能となる。また、インクパック70内のインクの消費に伴ってインクパック70が萎んでいく過程で、フィルム71同士が流入管106の一部を挟んだ状態で密着しても、未だフィルム71同士が密着していない部分ではスリット109から残りのインクを流入管106に取り込むことが可能である。従って、インクパック70が萎んでいく過程においても、インクパック70の下部から上部へとインクを循環させて撹拌機能を維持することができる。
【符号の説明】
【0086】
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、 22…噴射ヘッド、
40…インクカートリッジ、 42…カートリッジホルダー、 44…挿入孔、
46…インク取入針、 48…カム、 70…インクパック、
72…カートリッジケース、 74…インク供給ユニット、
78…インク供給口、 80…ポンプ室、 100…ダイヤフラム、
102…圧縮バネ、 104…入口流路、 106…流入管、
108…取込口、 110…入口側逆止弁、 112…出口流路、
114…流出管、 116…吐出口、 118…出口側逆止弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降性の成分が含まれる液体を消費する液体消費装置に装着される液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を前記液体消費装置に供給するための液体供給口と、
容積が変動可能なポンプ室と、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着された装着状態における前記液体収容部の下部から液体を前記ポンプ室へと導く導入流路と、
前記ポンプ室内の液体を、前記装着状態における前記液体収容部の上部へと導く導出流路と
を備え、
前記導入流路は、前記装着状態における前記液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を有し、
前記底面延設部には、液体を取り込むための複数の取込口が該底面延設部の延設方向に並べて設けられている液体容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体容器であって、
前記複数の取込口は、前記ポンプ室から遠いほど、内径が大きい液体容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体容器であって、
前記複数の取込口は、前記ポンプ室から遠いほど、隣り合う取込口同士の間隔が小さい液体容器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記底面延設部は、所定の分岐点で分岐し、且つ、該分岐点から長さが互いに異なる複数の支流路を備えており、
前記複数の取込口は、前記複数の支流路の各々の先端に設けられている液体容器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記液体収容部は、液体を通さないフィルムを袋状に封止して形成されるフィルムパックで構成されている液体容器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記導出流路は、前記装着状態における前記液体収容部の上面に沿って延設された上面延設部を有し、
前記上面延設部には、液体を放出するための複数の吐出口が該上面延設部の延設方向に並べて設けられている液体容器。
【請求項7】
沈降性の成分が含まれる液体を消費する液体消費装置に装着される液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を前記液体消費装置に供給するための液体供給口と、
容積が変動可能なポンプ室と、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着された装着状態における前記液体収容部の下部から液体を前記ポンプ室へと導く導入流路と、
前記ポンプ室内の液体を、前記装着状態における前記液体収容部の上部へと導く導出流路と
を備え、
前記導入流路は、前記装着状態における前記液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を有し、
前記底面延設部には、液体を取り込むためのスリット状の切り込みが該底面延設部の延設方向に沿って設けられている液体容器。
【請求項1】
沈降性の成分が含まれる液体を消費する液体消費装置に装着される液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を前記液体消費装置に供給するための液体供給口と、
容積が変動可能なポンプ室と、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着された装着状態における前記液体収容部の下部から液体を前記ポンプ室へと導く導入流路と、
前記ポンプ室内の液体を、前記装着状態における前記液体収容部の上部へと導く導出流路と
を備え、
前記導入流路は、前記装着状態における前記液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を有し、
前記底面延設部には、液体を取り込むための複数の取込口が該底面延設部の延設方向に並べて設けられている液体容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体容器であって、
前記複数の取込口は、前記ポンプ室から遠いほど、内径が大きい液体容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体容器であって、
前記複数の取込口は、前記ポンプ室から遠いほど、隣り合う取込口同士の間隔が小さい液体容器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記底面延設部は、所定の分岐点で分岐し、且つ、該分岐点から長さが互いに異なる複数の支流路を備えており、
前記複数の取込口は、前記複数の支流路の各々の先端に設けられている液体容器。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記液体収容部は、液体を通さないフィルムを袋状に封止して形成されるフィルムパックで構成されている液体容器。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の液体容器であって、
前記導出流路は、前記装着状態における前記液体収容部の上面に沿って延設された上面延設部を有し、
前記上面延設部には、液体を放出するための複数の吐出口が該上面延設部の延設方向に並べて設けられている液体容器。
【請求項7】
沈降性の成分が含まれる液体を消費する液体消費装置に装着される液体容器であって、
前記液体消費装置で消費される液体を収容可能な液体収容部と、
前記液体収容部内の液体を前記液体消費装置に供給するための液体供給口と、
容積が変動可能なポンプ室と、
前記液体容器が前記液体消費装置に装着された装着状態における前記液体収容部の下部から液体を前記ポンプ室へと導く導入流路と、
前記ポンプ室内の液体を、前記装着状態における前記液体収容部の上部へと導く導出流路と
を備え、
前記導入流路は、前記装着状態における前記液体収容部の底面に沿って延設された底面延設部を有し、
前記底面延設部には、液体を取り込むためのスリット状の切り込みが該底面延設部の延設方向に沿って設けられている液体容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−111845(P2013−111845A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259921(P2011−259921)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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