説明

液体微粒子発生用ノズル

【課題】 噴射方向の周辺領域への液体微粒子の飛散を防止し、所定領域に均一な液体微粒子の噴霧を可能とする液体微粒子発生用ノズルを提供する。
【解決手段】 ノズル本体部2に高圧気体と液体とを導入し、高速流の気体によって破砕された液体微粒子及び気体の混合気体を噴出する混合気体噴出口55を先端部に備えた液体微粒子発生用ノズルにおいて、上記ノズル本体部2の先端部に混合気体噴出方向に突出させて筒状の飛散液体捕捉カバー3を設け、該飛散液体捕捉カバー3は、内部が中空31とされた2重壁構造をなし、その内周壁面32には前記中空部(31)に連通した液体捕捉孔33を形成したものである。これにより、周辺領域への液体の飛散が防止しでき、所定領域に均一な液体噴霧が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微粒子の液体を噴射する液体微粒子発生用ノズルに関し、詳しくは、噴射方向の周辺領域への液体微粒子の飛散を防止し、所定領域に均一な液体微粒子の噴霧を可能とする液体微粒子発生用ノズルに係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来の液体微粒子発生用ノズルは、例えば、特開平4−322731号公報に開示のものがある。このノズルは図6にその構成を示すように、ノズル基体60と旋回流発生部70とからなる。ノズル基体60は、液体送入口61と加圧気体吸入口62とを備え、それぞれ対応する液体吸入口63と気体噴出口64とによってノズル基体60の中心部に備えられた第1次液体破砕室65に連通されている。さらに、ノズル基体60は、上記第1次液体破砕室65に並行して気体挿通孔66を備え、当該気体挿通孔66の一端が上記加圧気体吸入口62に連通され、他端が旋回流発生部70が備える円環気体室71に連通されている。
【0003】上記旋回流発生部70とは、中央部に旋回流噴出口72を形成したキャップ形のケーシング73を、ナット80でノズル基体60に締結一体化して形成したケーシング内部をいう。当該旋回流発生部70は、その中心部に上記ノズル基体60の第1次液体破砕室65から延長して形成された両端開放の円筒状の混合気体通路74を備え、その先端部を上記ケーシング73の旋回流噴出口72に位置させて混合気体噴出口75を形成している。
【0004】上記円筒状の混合気体通路74の外周面には中央部が膨らんだ略円筒状の固定中子76を嵌合して装着し、さらに当該固定中子76の混合気体噴出口75側には旋回導孔形成部材77を装着し、またノズル基体60側には圧縮コイルスプリング78を装着して、当該圧縮コイルスプリング78によって旋回導孔形成部材77をケーシング73の内壁に付勢圧接させている。この場合、上記固定中子76とケーシング73とによって形成された空間部が円環気体室71となる。
【0005】上記旋回導孔形成部材77は、中央貫通口を形成した略円錐台形状をなし、その中央部には旋回流室79を形成する円形凹部を備えている。さらに、旋回導孔形成部材77は、円環気体室71と旋回流室79とを連通させる図示省略の渦巻状に配設された旋回導孔を備えている。
【0006】このように、従来の液体微粒子発生用ノズルは、ノズル基体60の加圧気体吸入口62より導入した高圧気体を気体噴出口64より第1次液体破砕室65に噴出させて高速気流を形成するとともに、液体吸入口63に負圧を発生させて液体を吸入し、当該液体を第1次破砕して霧状の液体と気体との混合気体を形成する。該形成された混合気体は、混合気体通路74を通って混合気体噴出口75より噴出される。このとき混合気体は、気体挿通孔66及び円環気体室71を経て導入され旋回導孔形成部材77に備えた旋回導孔によって生成された高速の旋回流気体によって第2次破砕されて超微粒子の液体となり放射状に噴射される(図6の矢印参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従来の液体微粒子発生用ノズルにおいては、微粒子化された液体が放射状に噴出されるため、所定の領域外に飛散する液体微粒子が発生することがあった。この傾向は、上記旋回流気体によって液体粒子を第2次破砕して超微粒子の液体を生成させる液体微粒子発生用ノズルにおいて顕著である。即ち、第2次破砕段階で十分に破砕されなかった粒子径の比較的大きい液体粒子は、旋回流気体によって遠心力を受けて遠くまで飛散するからである。その後、飛散した液体粒子が凝集し、大きな粒となって垂れ落ちて均一な塗布膜の形成を困難にするおそれがあった。
【0008】そこで、本発明は、このような問題点に対処すべく、噴射方向の周辺領域への液体微粒子の飛散を防止し、所定領域に均一な液体微粒子の噴霧を可能とする液体微粒子発生用ノズルを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による液体微粒子発生用ノズルは、ノズル本体部に高圧気体と液体とを導入し、高速流の気体によって破砕された液体微粒子及び気体の混合気体を噴出する混合気体噴出口を先端部に備えた液体微粒子発生用ノズルにおいて、上記ノズル本体部の先端部に混合気体噴出方向に突出させて筒状の飛散液体捕捉カバーを設け、該飛散液体捕捉カバーは、内部が中空とされた2重壁構造をなし、その内周壁面には前記中空部に連通した液体捕捉孔を形成したものである。
【0010】このような構成により、大きな放射角度で放射された液体微粒子は、飛散液体捕捉カバーの内周壁面に設けられた液体捕捉孔によって捕捉され、2重壁構造の内部の中空部に貯留される。これにより、所定領域外への液体微粒子の噴霧が防止できる。
【0011】また、前記飛散液体捕捉カバーの外周壁面に、捕捉した液体を吸引排出する排出口を前記中空部に連通させて設けたものである。これにより、上記中空部に貯留した液体を外部に吸引排出させる。
【0012】さらに、前記飛散液体捕捉カバーまたは前記ノズル本体部の少なくとも一方に、前記飛散液体捕捉カバーの前記ノズル本体部からの突出量を調節する突出量調節手段を備えたものである。これにより、飛散液体捕捉カバーのノズル本体部からの突出量を調整して液体噴霧範囲の調整を行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による液体微粒子発生用ノズルの実施の形態を示す側断面図である。この液体微粒子発生用ノズル1は、ノズル本体部2と飛散液体捕捉カバー3とで構成されている。そして、上記ノズル本体部2は、ノズル基体4と、旋回流発生部5とから成る。ノズル基体4は、液体送入口41と加圧気体吸入口42とを備え、それぞれ対応する液体吸入口43と気体噴出口44とによって該ノズル基体4の中心部に備えた第1次液体破砕室45に連通している。さらに、ノズル基体4は、上記第1次液体破砕室45に並行して気体挿通孔46を備え、当該気体挿通孔46の一端が上記加圧気体吸入口42に連通され、他端が旋回流発生部5が備える円環気体室51に連通されている。
【0014】上記旋回流発生部5とは、中央部に旋回流噴出口52を形成したキャップ形のケーシング53を、ナットでノズル基体4に締結一体化して形成したケーシング内部をいう。この実施の形態においては、ナットは飛散液体捕捉カバー3のノズル本体部2側の後部開放部に備えたナット部36であるが、飛散液体補足カバー3とナットとは別部品として構成してもよい。当該旋回流発生部5は、その中心部に上記ノズル基体4の第1次液体破砕室45から延長して形成された両端開放の円筒状の混合気体通路54を備え、その先端部を上記ケーシング53の旋回流噴出口52に位置させて混合気体噴出口55を形成している。
【0015】上記円筒状の混合気体通路54の外周面には中央部が膨らんだ略円筒状の固定中子56を嵌合して装着し、さらに当該固定中子56の混合気体噴出口55側には旋回導孔形成部材57を装着し、またノズル基体4側には圧縮コイルスプリング58を装着して、当該圧縮コイルスプリング58によって旋回導孔形成部材57をケーシング53の内壁に付勢圧接させている。この場合、上記固定中子56とケーシング53とによって形成された空間部が円環気体室51となる。
【0016】上記旋回導孔形成部材57は、図2に示すように、中央貫通口571を形成した略円錐台形状をなし、その中央部には中央貫通口571よりも大きい形状の円形凹部572を備え、上記したケーシング53の内壁に付勢圧接されたときに当該円形凹部572が旋回流室59を形成するようになっている。さらに、円形凹部572から外部に向かって渦巻状に旋回導孔573が形成され、円環気体室51と旋回流室59とを連通させている。
【0017】また、前記飛散液体捕捉カバー3は、内部が中空31とされた2重壁構造の略円筒状のカバーであり、内周壁面32には上記中空31に連通した液体捕捉孔33を設けている。この実施の形態においては、図3に示すように、当該液体捕捉孔33は、飛散液体捕捉カバー3の液体噴射側3aの内周壁面32(図1参照)に形成された円環状の孔である。なお、液体捕捉孔33は、上記の形状に限定されるものでなく、例えば図4に示すように円形状の孔33aを複数備えたものでもよく、また、図5に示すようにスリット状の孔33bを複数備えたものでもよい。さらに、液体捕捉孔33の形状及び大きさ並びにその形成位置は、液体の捕捉効率または吸引時の騒音等との関係から適宜決定される。
【0018】さらに、飛散液体捕捉カバー3の外周壁面34には、捕捉した液体を吸引排出する排出口35が上記中空31に連通して設けられている。そして、上記飛散液体捕捉カバー3は、ノズル本体部2側の後部開放端に前述したナット部36を形成し、ノズル基体4に備えたボルト部47と締結一体化できるようになっている。また、その際、同時にケーシング53をもノズル基体4と締結一体化させる作用も為している。
【0019】上記飛散液体捕捉カバー3のナット部36とノズル基体4のボルト部47は、その締結深度を調節することにより、飛散液体捕捉カバー3のノズル本体部2からの突出量を調節する突出量調節手段としての機能も果たしている。
【0020】次に、このように構成された液体微粒子発生用ノズルの動作について説明する。図1において、ノズル基体4が備える加圧気体吸入口42に空気、アルゴンまたは窒素等の高圧気体が導入され、同時に液体送入口41に所定の液体が供給される。液体は、半導体基板、ディスプレイ基板、ガラス基板あるいはこれに類した工業用薄膜形成対象物の表面を処理する表面処理剤や薄膜形成用薬剤等の用途に応じて適宜選択された薬剤である。
【0021】高圧気体は、気体噴出口44より第1次液体破砕室45に噴出する。第1次液体破砕室45を気体が高速で流出するため液体吸入口43には負圧が発生し、液体が液体吸入口43から第1次液体破砕室45に吸入される。このとき、吸入された液体は、高速気流によって第1次破砕され微粒子化されて気体と混合し、混合気体を形成する。そして、当該混合気体は、混合気体通路54を通って混合気体噴出口55より前方側に噴出する。
【0022】他方、加圧気体吸入口42に導入された高圧気体の一部は、気体挿通孔46を通して旋回流発生部5の円環気体室51に流れ、さらに旋回導孔形成部材57の旋回導孔573(図2参照)より旋回流室59に流入する。そして、当該旋回流室59において高速の旋回流気体を発生させ、混合気体噴出口55より噴出した混合気体に旋回流を生じさせる。このとき、混合気体中の微粒子の液体はさらに第2次破砕され超微粒子化されて放射状に放出する(図1の矢印参照)。
【0023】ここで、第2次破砕が不十分で超微粒子化され得なかった液体粒子は重いため、高速の旋回流気体によって遠心力を受けて大きな放射角で放出する(図1の破線矢印参照)。このような液体微粒子は、飛散液体捕捉カバー3の内周壁面32に形成された液体捕捉孔33によって捕捉され、中空31に一時貯留されまたは排出口35を経て図示外の外部に備えたポンプにより吸引排出される。
【0024】こうして、液体微粒子発生用ノズル1からは所定の放射角度で放出された液体微粒子のみが放射され(図1の実線矢印参照)、所定の領域に均一な液体微粒子の噴霧を行う。なお、飛散液体捕捉カバー3に備えたナット部36によってノズル本体部2と締結一体化するとき、その締結深度を調節することによりノズル本体部2からの飛散液体捕捉カバー3の突出量を調節して、液体微粒子の放射角度に制限を与えることができる。この場合、液体微粒子発生用ノズル1と液体微粒子の噴霧対象物との距離を調節することなく、飛散液体捕捉カバー3の突出量を調節するだけで液体微粒子の噴霧範囲を調整することが可能となる。なお、飛散液体捕捉カバー3またはノズル本体部2の少なくとも一方に個別の突出量調節手段を設けてもよい。
【0025】以上のような動作により、大きな角度で放射された液体微粒子は、飛散液体捕捉カバー3によって捕捉され、当該飛散液体捕捉カバー3の内周壁面32に形成された液体捕捉孔33により吸引されて外部に排出されるため、液体微粒子発生用ノズル1より放射される液体微粒子は所定の放射角度を有するもののみとなり、液体微粒子の噴霧対象物の所定の領域のみに均一な液体噴霧が可能となる。
【0026】また、飛散液体捕捉カバー3の内周壁面32に付着した液体微粒子は、上記液体捕捉孔33により吸引して排出されるため、当該液体微粒子が凝集して垂れ落ちて塗布膜厚にむらを生じさせるおそれがない。
【0027】なお、本発明は、高圧気体と液体とを導入し、高速流の気体によって破砕された液体微粒子と気体の混合気体を噴出する混合気体噴出口55を先端部に備えるとともに、さらに上記混合気体噴出口55を中央部に配設した円形凹状の旋回流室59と、当該旋回流室59から外部に向かって渦巻き状に形成した旋回導孔573とを備え、分岐して導入した高圧気体を当該旋回導孔573より上記旋回流室59に導入して高速の旋回気流を発生させ、超微粒子の液体噴射を行わせるようにした液体微粒子発生用ノズル1に対して適用した場合により効果的である。ただし、これに限定されるものではなく、通常の直線流形式の液体微粒子発生用ノズルに対しても適用できることは言うまでもない。
【0028】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、請求項1に係る発明によれば、大きな放射角度で放射された液体微粒子は、飛散液体捕捉カバーの内周壁面に設けられた液体捕捉孔によって捕捉され、2重壁構造の内部の中空部に貯留させることができる。従って、所定領域外への液体微粒子の噴霧が防止できる。
【0029】また、請求項2に係る発明によれば、飛散液体捕捉カバーの内周壁面に形成された排出口により、中空に貯留した液体を外部に吸引排出することができる。従って、不要な液体微粒子をより効果的に捕捉して排出することができる。
【0030】さらに、請求項3に係る発明によれば、突出量調節手段により、飛散液体捕捉カバーのノズル本体部からの突出量の調節を行うことができる。従って、液体微粒子の放射角度を制限して液体噴霧範囲を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による液体微粒子発生用ノズルの実施の形態を示す側断面図である。
【図2】 旋回導孔形成部材の構成を示す斜視図である。
【図3】 本発明による液体微粒子発生用ノズルの外観を示す斜視図である。
【図4】 飛散液体捕捉カバーに形成される液体捕捉孔の他の例を示す平面図である。
【図5】 飛散液体捕捉カバーに形成される液体捕捉孔の更に他の例を示す平面図である。
【図6】 従来の液体微粒子発生用ノズルを示す側断面図である。
【符号の説明】
1…液体微粒子発生用ノズル
2…ノズル本体部
3…飛散液体捕捉カバー
31…中空
32…内周壁面
33,33a,33b…液体捕捉孔
34…外周壁面
35…排出口
36…ナット部(突出量調節手段)
47…ボルト部(突出量調節手段)
55…混合気体噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】ノズル本体部に高圧気体と液体とを導入し、高速流の気体によって破砕された液体微粒子及び気体の混合気体を噴出する混合気体噴出口を先端部に備えた液体微粒子発生用ノズルにおいて、上記ノズル本体部の先端部に混合気体噴出方向に突出させて筒状の飛散液体捕捉カバーを設け、該飛散液体捕捉カバーは、内部が中空とされた2重壁構造をなし、その内周壁面には前記中空部に連通した液体捕捉孔を形成したことを特徴とする液体微粒子発生用ノズル。
【請求項2】前記飛散液体捕捉カバーの外周壁面に、捕捉した液体を吸引排出する排出口を前記中空部に連通させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の液体微粒子発生用ノズル。
【請求項3】前記飛散液体捕捉カバーまたは前記ノズル本体部の少なくとも一方に、前記飛散液体捕捉カバーの前記ノズル本体部からの突出量を調節する突出量調節手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の液体微粒子発生用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2003−181330(P2003−181330A)
【公開日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−380589(P2001−380589)
【出願日】平成13年12月13日(2001.12.13)
【出願人】(391061510)株式会社藤森技術研究所 (20)
【出願人】(501423816)株式会社エヌシーエス (7)
【Fターム(参考)】