説明

液体投与方法及び該方法の実行装置

【課題】投与された液体の容積の正確な動的検出を可能にする液体投与方法を提供する。
【解決手段】ピックアップ容積を有する試料ピックアップ部分が液体通路を液体に浸漬され、ガス置換システムによる負圧が急激にガス通路へ付与され、ガス置換システムの駆動装置が試料ピックアップ部分が定作動負圧となるよう再調節され、試料採取容積が駆動装置の駆動経路を用いて検出され、検出された採取容積が所望値と比較され、採取容積が所望値に達すると、試料ピックアップ部分の負圧が急激に減じられ、液体通路が液体から引き出され、液体通路が放出位置へ向けられ、採取容積、作動負力及び容積採取に要する時間の各値からパラメータが決定され、ガス通路へ過圧が付与され、パラメータと過圧にて放出されるべき容積の放出瞬間が決定され、瞬間に達すると試料ピックアップ部分の過圧が急激に減じられる液体投与方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体投与方法及び該方法の実行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のプランジャ・ストローク装置においては、液体試料をピペット・ポイントまたは他の試料ピックアップ部分へと吸引する、または液体試料をそこから排出するために、シリンダ内でプランジャを移動させてガス・クッションを移動させる。容積は、ガス・クッションの容積置換を用いて決定され、容積置換はプランジャの調節された経路に比例する。シリンダ内でプランジャを移動させる調節部材またはアクタ・ユニットとしては、それぞれ例えばステッピング・モータが使用され、液体を吸い上げかつ放出する作用点に作動荷重とは無関係に正確に命中させる。作用点に達した後は、液体の吸い上げ、または放出が完了するまで待機する。投与は、静止バランスに到達するまでピペット・ポイントにおけるガス・クッション、液体及び周囲の間で圧力補償が行われることが基礎となる。
【0003】
EP−A−1 150 105から、マイクロリットル及びサブマイクロリットル領域で液体を投与するガス・クッション式微少量投与システムが知られる。このシステムは、投与されるべき液体のための貯蔵スペースを備えた液体リザーバを有し、その境界は外部へ導く液体通路及びガス通路によって穴が開けられている。ガスをポンピングするマイクロポンプを有するガス置換システムは、ガス通路への接続部を有する。マイクロポンプを作動させることによって負圧または過圧を発生させ、液体リザーバを負圧または過圧とするための投与制御ユニットは、液体通路を介して液体を貯蔵スペースへ吸い上げる、または液体を貯蔵スペースから放出するためにマイクロポンプと相互作用するよう接続されている。本システムはガス置換システム内の圧力を検出する圧力センサを有し、これと投与制御ユニットとは、採取または放出された液体の容積を求める、またはこれを予め決められた値へと調整するために相互作用するよう接続されている。投与制御ユニットは、液体を採取または放出する際のガス置換システム内の負圧または過圧を、そこに存する圧力を圧力センサで検出しかつマイクロポンプのポンプ流量または容積置換を予め決められた値またはその値の過程へと調整することによって制御し、かつ採取または放出された液体の容積を求める、またはマイクロポンプのポンプ流量または容積置換を介してこれを予め決められた値へと調整する。
【0004】
ポンプ流量を知ることによる放出容積の決定は、より少ない容積の液体が自由流れにおいて比較的高い過圧で放出されようとしていてポンプ流量が圧力に依存する場合は、特に、時間が重要となり不正確である。ガスの状態方程式を用いることですらも、知らなければならない過圧を発生させる高速容積置換に起因して、やはり不正確であり、それゆえ放出されるべき液体の容積を決定するには不適である。
【特許文献1】欧州特許EP−A−1 150 105号公報
【0005】
これに反して本発明は、投与された液体の容積の正確な動的検出を可能にする液体投与方法を提供するという目的に基づいている。さらに本発明は、当該方法の実行に適した、液体投与装置を提供するという目的に基づいている。
【発明の開示】
【0006】
この目的は、特許請求項1に記載されている特徴を有する方法によって解明される。
【0007】
本発明による液体投与方法においては、
1.1 ピックアップ容積(PICKUP VOLUME)を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分(SAMPLE PICKUP PORTION)が液体通路を液体内に浸漬され、
1.2 ガス置換システム(GAS DISPLACEMEMT SYSTEM)により発生される負圧が急激にガス通路へ付与され、
1.3 ガス置換システムの駆動装置(DRIVE)が、試料ピックアップ部分に一定の作動負圧が存在するように再調節され、
1.4 採取された試料容積が駆動装置の再調節された駆動経路(DRIVING PATH)を用いて検出され、
1.5 採取され検出された容積が予め決められた採取されるべき値の容積と比較され、
1.6 採取された容積が予め決められた値に達すると、試料ピックアップ部分に付与される負圧が急激に減じられ、
1.7 試料ピックアップ部分は液体通路が液体から引き出され、
1.8 試料ピックアップ部分は液体通路が放出位置へ方向づけられ、
1.9 採取された容積、作動負力及びその容積を採取するために要する時間の各値から1つまたは複数のフロー・パラメータが決定され、
1.10 試料ピックアップ部分のガス通路へ過圧が付与され、
1.11 1つまたは複数のフロー・パラメータ及び過圧を用いて放出されるべき容積が放出される瞬間が決定され、
1.12 前記瞬間に達すると、試料ピックアップ部分に付与される過圧が急激に減じられる。
【0008】
この方法においては、液体の採取時に、採取された液体の容積の動的検出が実質的に一定の圧力下でポンプ動作が異なった3段階で行われる。第1の段階では、所定の作動圧力に可能な限り迅速に達するよう、試料ピックアップ部分(例えばピペット・ポイント)へ負圧が急激に付与される。この間に流れ込む容積を求めることは困難であり、無視する。この段階は、作動負圧に達した時点で終了する。次の第2の段階では、作動負圧が維持されるよう、ガス置換システムの駆動装置が再調節される。採取された容積は、駆動装置の再調節された駆動経路の長さに正比例する。第2の段階は、試料ピックアップ部分において採取されるべき容積が採取されると直ちに終了する。次の第3の段階では、試料ピックアップ部分へ付与される負圧が急激に減じられ、液体採取が可能な限り迅速に停止される。この間に流れ込む容積を求めることは困難であり、やはり無視する。原則として、採取された液体は毛管力によって試料ピックアップ部分に保持され得る。任意的に、負圧の急激な減衰が一定の負圧に達するまで発生し、これにより採取された液体は試料ピックアップ部分内に保持される。
【0009】
液体の採取時に付与される作動負圧のブロック・プロファイルにより、採取された容積を求める際に圧力変動が与える影響を大幅に抑えられる。さらに、比較的低い作動圧力を付与することにより、負圧の形成及び減衰の段階と比較して長い採取時間を達成することができる。これにより、これらの段階における圧力変化に起因する誤差は、無視できる程小さく維持される。さらに、作動負圧のブロック・プロファイルによって採取された液体の容積は各瞬間で正確に知られており、静圧バランスに達するまで待機する必要がない。これのみによって、再調節された駆動経路を用いて採取された容積を検出することが可能となる。採取された容積は、例えば繰返しまたは連続して検出される。同時に負圧及び採取継続時間から1つまたは複数のフロー・パラメータが決定される。
【0010】
液体の放出に当たっては、液体通路を介して流れる単位時間及び圧力当たりの液体の容積をそれぞれ記述する1つまたは複数のフロー・パラメータの知識が使用される。液体を放出する時、放出された容積が、一方で1つまたは複数のフロー・パラメータ及び既知の過圧を用いて、他方でその作動の持続時間を用いて計算される。好適には、液体を放出する時の過圧が一定であれば、放出されるべき容積を放出するために要する放出継続時間は容易に計算することが可能であり、放出は放出継続時間に達する時点で停止されることが可能である。実現の一形式によれば、フロー条件が例えばピペット・ポイントにおける通常の作動圧力で非線形である場合、放出された容積は、参照圧力−容積フロー曲線に従って求められる。この圧力の非依存性により、放出時に過圧を意図的に進行することが可能となり、また圧力変動が補償され得るため比較的狭い範囲でのみ調節を必要とする。実現の一形式によれば、これを行うために、継続時間内に異なる過圧で放出された容積は積算され、放出されるべき容積に達すると放出が停止される。従って、圧力変動は、全体的な放出継続時間を変更することによって調節される。
【0011】
フロー・パラメータを用いて放出された容積を決定することは、圧力調節に関して時間が重要視される容積の液体放出に有利に働く。これは、マイクロリットル及びサブマイクロリットル領域の極めて小さな容積の液体投与に関して、及び自由流れにおける投与に関して特に優位である。但し、本発明に係る方法は、原則として、マイクロリットル及びミリリットル領域の容積の液体投与にも適している。
【0012】
放出に当たっては、圧力が既知であるとき容積流量速度及び放出継続時間から放出容積が求められるピペット・ポイントにおける(少なくとも1つのパラメータによる)フロー条件の特性を手元に有することが有利である。フロー条件の特性は、本質的に液体の粘度及びピペット・ポイントのノズル開口の断面と関連しており、通常は実質的により小さい負圧で発生し、採取を介して機能される。これにより、かなり長い時間間隔がもたらされ、ピックアップ容積を正確に求める際に有利に働く。
【0013】
特徴1.2による負圧の急激な付与、及び選択的に、場合により特徴1.10による過圧の急激な付与は、ガス置換システムの駆動装置を急激に作動させることによって行われる。但し、これは、例えば圧力保存エレメントを備えたガス置換システムがバルブを介してガス通路に接続されることによって行われることも可能である。従って、特徴1.6による負圧の急激な減少または特徴1.12による過圧のそれは、駆動装置が急激に作動を停止することによって、またはガス通路とガス置換システムとの間のバルブの閉めることによって行われる。
【0014】
特徴1.3によるガス置換システムにおける負圧の再調節は、試料ピックアップ部分またはガス置換システムにおける負圧の繰返しまたは連続した測定、及び多少なりとも一定の負圧が保たれるようにする駆動装置の制御において行われる。
【0015】
特徴1.4による採取された容積の検出及び特徴1.5による予め決められた値との比較も、また繰返しまたは連続して実行されることが可能である。
【0016】
特徴1.9による1つまたは複数のフロー・パラメータは任意の意図的な瞬間において決定することが可能であり、この瞬間に採取された容積は特徴1.5によって求められる。好適には、1つまたは複数のフロー・パラメータは、特徴1.6により、採取された容積が予め決められた採取されるべき容積の値に達する時に決定される。
【0017】
さらに、前述の目的は、請求項2に記載されている特徴を有する方法によって解明される。
【0018】
本発明による液体投与方法においては、
2.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分が液体通路を浸漬され、
2.2 ガス置換システムにより発生され単調増加する負圧がガス通路へ付与され、
2.3 試料ピックアップ部分における負圧の推移が測定され、
2.4 試料ピックアップ部分へ液体が流入する瞬間が、圧力測定の2つの期間における圧力増加の偏差によって検出され、
2.5 試料ピックアップ部分における負圧、及び試料ピックアップ部分及びガス置換システムにおけるガス容積が、液体の試料ピックアップ部分への流入の瞬間に検出され、
2.6 採取された液体の容積が、流入の瞬間における負圧及びガス容積、及び(a)ガス置換システムの駆動装置が連続単調作動する際、液体流入以降の実際のポンプ流量及び経過時間から計算される負圧と実際に測定された負圧との差、または(b)液体流入の瞬間に駆動装置が停止される場合、流入の瞬間における負圧と実際に測定された負圧との差、の何れかによって検出され、
2.7 採取され検出された容積が予め決められた採取されるべき容積の値と比較され、
2.8 採取された容積が予め決められた値に達すると、試料ピックアップ部分に付与される負圧が急激に減じられ、
2.9 試料ピックアップ部分は液体通路が液体から引き出される。
【0019】
この方法においては、液体の採取時に、採取された液体の容積の動的検出がポンプ動作の異なった3段階の可変圧力過程にて行われる。第1の段階では、試料ピックアップ部分(例えばピペット・ポイント)をガス置換システムの駆動装置の初期位置から離して液体内へ浸した後に、単調増加する負圧が発生される。ガス置換システムの駆動装置、ひいてポンプ流量は、原則として任意の意図的な時間過程を辿ることができる。負圧がまだ試料ピックアップ部分において液体の毛管負圧に達していない限り、液体は試料ピックアップ部分へ流れ込むことはできない。第2の段階は、液体が試料ピックアップ部分へ流れ込む時に開始する。この瞬間は、試料ピックアップ部分における圧力が時間に対して押し潰された軌跡となることによって特徴づけられる。これは、異った時間間隔において圧力−時間曲線の勾配を比較することにより求められる。その後流入した容積は、その次の負圧低下によるものである。ガス置換システムがさらに作動される場合、負圧の低下は、液体流入のないガス置換システムのさらなる作動による負圧の摩擦増加に関係している。ガス置換システムが停止される場合、負圧の低下は、流入の瞬間におけるシステム内の負圧に関係している。第2の段階は、採取された容積が予め決められた値に一致した瞬間に終了する。その結果、ガス置換システムにより付与される負圧は、第3の段階の始めに急激に減少して、場合によっては試料ピックアップ部分における液体を保持する維持圧力まで減じられる。
【0020】
実現の一形式によれば、採取された容積は、
Δv=p・装置パラメータ
によって求められ、装置パラメータは、下記のような異なる方法によって適切に求められる。
i)理想気体の法則により、流入の瞬間には、
Δv=−V・Δp/(p+p
が成立し、
装置パラメータ=−V/(p+p
となる。
ii)それぞれ流入の瞬間前の、ガス置換システムの駆動速度または容積置換速度Δv、及び流入の瞬間前の圧力変化速度p’を知ることにより、
装置パラメータ=Δv/p’
が成立する。これは、駆動装置の連続単調作動時、即ち、
(a) Δp=p’Δt+p−p
または、駆動装置の停止時、即ち、
(b) Δp=p−p
の何れかで有効である。ここで、
Δv=採取された容積、
p=測定された圧力、
=流入の瞬間におけるガス置換システム及び試料ピックアップ部分の容積、
=流入の瞬間における測定された圧力、
p’=流入の瞬間における圧力変化速度、
Δt=流入の瞬間後の期間、
=絶対圧力、
である。
【0021】
放出された液体の容積は、異なる方法を行うことにて求めることが可能である。採取された全容積が単一の放出ステップで放出される場合、放出された液体の容積は既知の採取された液体の容積に一致する。放出時に放出された液体の容積の追加的な検出は、除外してもよい。フロー・パラメータの決定は、流入の瞬間と採取終了時との間における平均負圧にて、流入の瞬間からの継続時間で採取された容積を介して行われる。さらに、放出された液体の容積を、試料ピックアップ部分に負圧ではなく過圧が付与される前述のステップ1.2乃至1.6を有する方法によっても決定することが可能である。好適には、放出時の容積の決定は、請求項1に記載されている特徴1.8乃至1.12を有する方法によって行われる。請求項2による方法のこのような実現に当たっては、特徴1.8及び1.12及びこの方法の効果的な実現についての上述の説明が有効である。
【0022】
請求項1及び2に記載されている方法のさらなる実現については、従属請求項に示されている。
【0023】
本発明による方法には、ガス置換システムの幾つかの実現が組み込まれている。ここでは、特にミリリットル及びマイクロリットル領域より大きな容積を投与するための、シリンダ内で移動可能なプランジャが扱われる。さらに、ミリリットル乃至サブマイクロリットル領域の容積を投与するために実現され得るポンプ装置も組み込まれる。特には、置換容積を制限するメンブランと、それに割り当てられるアクタ(例えば圧電曲げコンバータ)とを有するメンブラン置換装置が組み込まれる。
【0024】
さらに、前述の目的は請求項12に記載されている特徴を有する装置によって解明される。
【0025】
本発明による液体投与装置は、
12.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分と、
12.2 ガス通路に接続されることが可能な、駆動装置を有するガス置換システムと、
12.3 ガス置換システムまたは試料ピックアップ部分における負圧を測定するためのセンサと、
12.4 負圧が急激にガス通路に付与されかつ一定の作動負圧に制御され、採取された容積が再調節された駆動経路を用いて検出され、決定された採取された容積が予め決められた採取されるべき容積の値と比較され、採取された容積が予め決められた値に達すると駆動装置が急激に作動を中止するよう設定され、採取された容積、作動負圧及び容積を採取するために要する時間の各値から1つまたは幾つかのフロー・パラメータが決定され、駆動装置が試料ピックアップ部分へ過圧を付与するように作動され、放出されるべき容積が放出されるべき瞬間は1つまたは複数のフロー・パラメータ及び過圧を用いて決定されかつその瞬間に達すると駆動装置が急激にオフに切換るように駆動装置を作動させるための、駆動装置及びセンサに接続される電気制御ユニットと、を備える。
【0026】
さらに、前述の目的は、請求項13に記載されている特徴を有する装置によって解明される。
【0027】
本発明による液体投与装置は、
13.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分と、
13.2 ガス通路に接続されることが可能な、駆動装置を有するガス置換システムと、
13.3 ガス置換システムまたは試料ピックアップ部分に適切に接続され、負圧を測定するためのセンサと、
13.4 単調増加する負圧がガス通路に付与されるように駆動装置をオンに切換るためと、負圧の推移から液体が試料ピックアップ部分へ流入する瞬間を決定するためと、液体流入の瞬間に装置パラメータを決定するためと、採取された液体の容積を(a)駆動装置の連続単調作動時、液体流入以降の実際のポンプ流量及び経過時間から計算される負圧と実際に測定された負圧との差、または(b)液体流入の瞬間に駆動装置が停止される時、流入の瞬間における負圧と実際に測定された負圧との差、の何れかにより、装置パラメータに基づいて決定するためと、検出された採取された容積を予め決められた値と比較するためと、採取された容積が予め決められた値に達すると駆動装置を急激に停止するための、駆動装置及びセンサに接続される電気制御ユニットと、を備える。
【0028】
本発明による装置のさらなる実現については、従属請求項に示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明をその実現の一例に関する添付の図面によってより詳細に説明する。
【0030】
図1によれば、投与装置は、ピペット・ポイントとして実現されている試料ピックアップ部分1を有する。管状の試料ピックアップ部分1は、その内側にピックアップ容積2を、その円錐形の底端にピックアップ容積2と周囲とを接続する液体通路3を、少し円錐状に伸びる上端にピックアップ容積2を外部に導くガス通路4を、有する。
【0031】
さらに、双方向ポンプ5を有するガス置換システムがあり、接続チャネル6を介して試料ピックアップ部分1の円錐状に伸びる端を納めるためのネック7と接続される。
【0032】
ポンプ・エレメント5は、例えば(マイクロ)メンブラン・ポンプ、プランジャ・ストローク装置または圧電アクタ等を有するメンブラン装置である。
【0033】
圧力センサ7.1が、接続チャネル6に取り付けられる。
【0034】
さらに、電気制御ユニット8が接続され、それ自体ポンプ装置5及び圧力センサ7.1に電気的に接続される。
【0035】
第1の動作モードにおいて、ポンプ5は、液体通路3を液体へ浸漬した後、接続チャネル6及び作動容積2が可能な限り迅速に所定の作動負圧に達するように、電気制御ユニット8により急激に、すなわち負の最大ポンプ流量でそれぞれ作動させられる。これを行なう際に液体通路3を介して流れ込む液体の容積は、無視することができる。
【0036】
さらに、制御ユニット8は、圧力センサ7.1により測定された負圧が予め決められた作動負圧に可能な限り正確に一致するようにポンプ・デバイス5を制御する。この段階で液体通路3を介して流れる液体の容積は、ポンプ・デバイス5の駆動装置の駆動経路の長さに比例する。例えば、圧電アクタが使用される場合、駆動経路は制御ユニット8によって付与される制御電圧Δuに比例する。
【0037】
この制御電圧Δuを用いて、制御ユニット8は、採取された容積を個々に求め、これを予め決められた採取されるべき容積の値と比較する。十分に一致した時点で、制御ユニット8は、例えば圧電アクタにかかる電圧を不変に維持することによりポンプ・デバイスを急激に停止する。停止されたポンプ・デバイス5では、液体通路3を介してそれ以上液体は流れ込まない。ポンプ・デバイス5を停止させる段階で依然として流れ込む液体の容積は、無視することができる。
【0038】
さらに、液体の採取時、制御ユニット8は、採取される液体Δv及び液体採取の継続時間Δtにより、対応する作動負圧pのフロー・パラメータSを決定する。これは、次のように定義される。
圧力pにおいて、S=Δv/Δt
【0039】
放出に当たって、試料ピックアップ部分1は液体通路3が(実験容器またはマイクロタイタ・プレート等における)放出位置へ方向づけられる。制御ユニット8は、接続チャネル6及びピックアップ容積2内に液体通路チャネル3を介して採取された液体を押し出す過圧が発生されるように、ポンプ・デバイス5を制御する。好適には、液体の放出は自由流れにて行われ、過圧が相応する高圧に選択される。
【0040】
放出時、制御ユニット8は、フロー・パラメータS及び予め決められた、または測定された過圧pにより、放出されるべき容積Δvが放出される瞬間Δtを決定する。一定の過圧では、瞬間Δtは上述の定義を用いて容易に決定することが可能である。放出の過程で圧力が変化する場合、時間間隔を置いて測定された圧力条件で放出された容積が積算される。積算された容積が放出されるべき容積に一致する時、放出されるべき容積が放出される瞬間が達する。
【0041】
前記瞬間に到達する時、制御ユニット8はポンプ・デバイス5を急激に停止させる。依然とした流れ出る液体の容積は、無視することができる。制御ユニット8によるポンプ・デバイス5の早期停止は、ポンプ・デバイス5を停止させる段階における液体の流出を補償するために採用される。
【0042】
別の動作モードによれば、制御ユニット8は、液体通路3の浸漬後にポンプ・デバイス5を作動させ、これによりピックアップ容積2内に単調増加する負圧が発生させられる。ピックアップ部分2における負圧の単調増加段階は、図2における点1と点2との間に示される。この段階では、湿潤力及び毛管力により、液体はまだ液体通路3へ侵入しない。
【0043】
液体の侵入は、図2において圧力曲線の点2と点3との間の範囲に示されるような圧力曲線の押し潰されにて特徴づけられる。制御ユニット8は、連続する曲線部分における圧力曲線の勾配を繰返し比較することにより、液体の流入の瞬間2を求める。
【0044】
流入の瞬間後、ポンプ・デバイス5はさらに制御ユニット8により以前と同じポンプ流量で作動されることが可能である。流入の瞬間後にポンプ・デバイス5が制御ユニット8により一定のポンプ流量pで作動されると、点2と点3との間の各瞬間で、外挿された圧力曲線と測定された圧力pとの間に圧力差Δpが生じる。
【0045】
流入の瞬間2に制御ユニット8によりポンプ・デバイス5がオフに切換えられる時、その後の各瞬間について、流入の瞬間に測定される圧力pと後に測定された圧力pとの間の圧力差Δpを求めることができる。
【0046】
圧力差Δp、接続チャネル6及びピックアップ容積2内のガス容積及び流入の瞬間において測定された圧力pを用いて、液体の採取された容積ΔVは制御ユニットによって次のように計算されることが可能である。
Δv=Δp・装置パラメータ
【0047】
液体の放出は、最初に記述した動作モードに関して説明した通り、フロー・パラメータSを用いて行われる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】液体投与装置を示す略模式図である。
【図2】液体の採取時における圧力−時間線図を示す圧力曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体投与方法であって、
1.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分が前記液体通路を液体内に浸漬され、
1.2 ガス置換システムにより発生される負圧が急激に前記ガス通路へ付与され、
1.3 前記ガス置換システムの駆動装置が、前記試料ピックアップ部分に一定の作動負圧が存在するように再調節され、
1.4 採取された試料容積が前記駆動装置の再調節された駆動経路を用いて検出され、
1.5 前記採取され検出された容積が予め決められた採取されるべき容積の値と比較され、
1.6 前記採取された容積が前記予め決められた値に達すると、前記試料ピックアップ部分に付与される負圧が急激に減じられ、
1.7 前記試料ピックアップ部分は前記液体通路が前記液体から引き出され、
1.8 前記試料ピックアップ部分は前記液体通路が放出位置へ方向づけられ、
1.9 前記採取された容積、前記作動負力及び前記容積を採取するために要する時間の各値から1つまたは複数のフロー・パラメータが決定され、
1.10 前記試料ピックアップ部分の前記ガス通路へ過圧が付与され、
1.11 前記1つまたは複数のフロー・パラメータ及び前記過圧を用いて放出されるべき容積が放出される瞬間が決定され、
1.12 前記瞬間に達すると、前記試料ピックアップ部分に付与される過圧が急激に減じられる
液体投与方法。
【請求項2】
液体投与方法であって、
2.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分が前記液体通路を浸漬され、
2.2 ガス置換システムにより発生され単調増加する負圧が前記ガス通路へ付与され、
2.3 前記試料ピックアップ部分における負圧の推移が測定され、
2.4 前記試料ピックアップ部分へ液体が流入する瞬間が、圧力測定の2つの期間における圧力増加の偏差によって検出され、
2.5 前記試料ピックアップ部分における負圧、及び前記試料ピックアップ部分及び前記ガス置換システムにおけるガス容積が、前記液体の前記試料ピックアップ部分への流入の瞬間に検出され、
2.6 採取された液体の容積が、流入の瞬間における前記負圧及び前記ガス容積、及び(a)前記ガス置換システムの前記駆動装置が連続単調作動する際、液体流入以降の実際のポンプ流量及び経過時間から計算される負圧と実際に測定された負圧との差、または(b)液体流入の瞬間に前記駆動装置が停止される場合、流入の瞬間における負圧と実際に測定された負圧との差、の何れかによって検出され、
2.7 前記採取され検出された容積が予め決められた採取されるべき容積の値と比較され、
2.8 前記採取された容積が前記予め決められた値に達すると、前記試料ピックアップ部分に付与される負圧が急激に減じられ、
2.9 前記試料ピックアップ部分は前記液体通路が前記液体から引き出される
液体投与方法。
【請求項3】
前記採取された容積は、
Δv=p・装置パラメータ
によって求められ、前記装置パラメータは、下記のような異なる方法、即ち、
i)理想気体の法則により、流入の瞬間には、
Δv=−V・Δp/(p+p
が成立し、
装置パラメータ=−V/(p+p
となる方法と、
ii)それぞれ前記流入の瞬間前の、前記ガス置換システムの駆動速度または容積置換速度Δv、及び前記流入の瞬間前の圧力変化速度p’を知ることにより、
装置パラメータ=Δv/p’
が成立し、これは、前記駆動装置の連続単調作動時、即ち、
(a) Δp=p’Δt+p−p
または、前記駆動装置の停止時、即ち、
(b) Δp=p−p
の何れかで有効であり、ここで、
Δv=採取された容積、
p=測定された圧力、
=流入の瞬間におけるガス置換システム及び試料ピックアップ部分の容積、
=流入の瞬間における測定された圧力、
p’=流入の瞬間における圧力変化速度、
Δt=流入の瞬間後の期間、
=絶対圧力、
である方法とによって適切に求められる請求項2記載の液体投与方法。
【請求項4】
4.1 前記試料ピックアップ部分は前記液体通路が放出位置へ方向づけられ、
4.2 前記採取された容積、前記作動負圧及び採取するために要する時間の各値から1つまたは複数のフロー・パラメータが決定され、
4.3 前記試料ピックアップ部分の前記ガス通路へ過圧が付与され、
4.4 放出されるべき容積が放出される瞬間が、前記1つまたは複数のフロー・パラメータ及び前記過圧を用いて決定され、
4.5 前記瞬間に達すると、前記試料ピックアップ部分に付与される過圧が急激に減じられる請求項2または3記載の液体投与方法。
【請求項5】
前記放出されるべき容積が放出される瞬間は、前記1つまたは複数のフロー・パラメータと、一定の過圧と、前記放出されるべき容積とによって決定される請求項1または4記載の液体投与方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数のフロー・パラメー、個々の過圧、及び前記個々の過圧の作用持続時間により、前記採取された全容積が求められ、前記求められた容積が前記放出された容積に一致する時に、前記放出されるべき容積が放出される瞬間に達する請求項1または4記載の液体投与方法。
【請求項7】
前記放出されるべき容積が放出される瞬間を求める際に、参照圧力−容積曲線によって前記試料ピックアップ部分の流出特性に依存することが考慮される請求項1または4乃至6の何れか1項記載の液体投与方法。
【請求項8】
液体採取時の前記負圧が、液体放出時の前記過圧を超える請求項1乃至7の何れかの1項請求項記載の液体投与方法。
【請求項9】
液体採取時の前記負圧及び/または液体放出時の前記過圧は、前記試料ピックアップ部分/からの採取及び/またはへの放出時に界面及び/または摩擦効果に打ち勝つように選択される請求項1乃至8の何れか1項記載の液体投与方法。
【請求項10】
放出時の前記過圧は、前記液体が前記試料ピックアップ部分から自由流れとして放出されるように選択される請求項1乃至9の何れか1項記載の液体投与方法。
【請求項11】
前記採取された液体は前記試料ピックアップ部分から幾つかの部分段階で放出される請求項1乃至9の何れか1項記載の液体投与方法。
【請求項12】
液体投与装置であって、
12.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分と、
12.2 前記ガス通路に接続されることが可能な、駆動装置を有するガス置換システムと、
12.3 前記ガス置換システムまたは前記試料ピックアップ部分における負圧を測定するためのセンサと、
12.4 負圧が急激に前記ガス通路に付与されかつ一定の作動負圧に制御され、採取された容積が再調節された駆動経路を用いて検出され、前記決定された採取された容積が予め決められた採取されるべき容積の値と比較され、前記採取された容積が前記予め決められた値に達すると前記駆動装置が急激に作動を中止するよう設定され、前記採取された容積、前記作動負圧及び前記容積を採取するために要する時間の各値から1つまたは幾つかのフロー・パラメータが決定され、前記駆動装置が前記試料ピックアップ部分へ過圧を付与するように作動され、放出されるべき容積が放出されるべき瞬間は前記1つまたは複数のフロー・パラメータ及び前記過圧を用いて決定されかつその瞬間に達すると前記駆動装置が急激にオフに切換るように前記駆動装置を作動させるための、前記駆動装置及び前記センサに接続される電気制御ユニットと、
を備える液体投与装置。
【請求項13】
液体投与装置であって、
13.1 ピックアップ容積を有し、外部に導く液体通路とガス通路とで境界に穴が開けられている試料ピックアップ部分と、
13.2 前記ガス通路に接続されることが可能な、駆動装置を有するガス置換システムと、
13.3 前記ガス置換システムまたは前記試料ピックアップ部分に適切に接続され、前記負圧を測定するためのセンサと、
13.4 単調増加する負圧が前記ガス通路に付与されるように前記駆動装置をオンに切換るためと、前記負圧の推移から液体が前記試料ピックアップ部分へ流入する瞬間を決定するためと、前記液体流入の瞬間に装置パラメータを決定するためと、採取された液体の容積を(a)前記駆動装置の連続単調作動時、液体流入以降の実際のポンプ流量及び経過時間から計算される負圧と実際に測定された負圧との差、または(b)液体流入の瞬間に駆動装置が停止される時、流入の瞬間における負圧と実際に測定された負圧との差、の何れかにより、装置パラメータに基づいて決定するためと、前記検出された採取された容積を予め決められた値と比較するためと、前記採取された容積が前記予め決められた値に達すると前記駆動装置を急激に停止するための、前記駆動装置及び前記センサに接続される電気制御ユニットと、
を備える液体投与装置。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記採取された容積を
Δv=p・装置パラメータ
によって求め、前記装置パラメータは、下記のような異なる方法、即ち、
i)理想気体の法則により、流入の瞬間には、
Δv=−V・Δp/(p+p
が成立し、
装置パラメータ=−V/(p+p
となる方法と、
ii)それぞれ前記流入の瞬間前の、前記ガス置換システムの駆動速度または容積置換速度Δv、及び前記流入の瞬間前の圧力変化速度p’を知ることにより、
装置パラメータ=Δv/p’
が成立し、これは、前記駆動装置の連続単調作動時、即ち、
(a) Δp=p’Δt+p−p
または、前記駆動装置の停止時、即ち、
(b) Δp=p−p
の何れかで有効であり、ここで、
Δv=採取された容積、
p=測定された圧力、
=流入の瞬間におけるガス置換システム及び試料ピックアップ部分の容積、
=流入の瞬間における測定された圧力、
p’=流入の瞬間における圧力変化速度、
Δt=流入の瞬間後の期間、
=絶対圧力、
である方法とによって適切に求められる請求項13記載の液体投与装置。
【請求項15】
前記電気制御ユニットは、前記採取された容積、前記作動負圧及び前記容積を採取するために要する時間の各値から1つまたは複数のフロー・パラメータを決定し、前記ガス通路へ過圧が付与されるように前記駆動装置を作動させ、前記1つまたは複数のフロー・パラメータを用いて放出されるべき容積が放出される瞬間を決定しかつ前記瞬間に達すると前記駆動装置を急激に停止する請求項13または14記載の液体投与装置。
【請求項16】
前記電気制御ユニットは、前記1つまたは複数のフロー・パラメータ、一定の過圧及び前記放出されるべき容積を用いて前記放出すべき容積が放出される瞬間を決定する請求項12または15記載の液体投与装置。
【請求項17】
前記電気制御ユニットは、前記1つまたは複数のフロー・パラメータ、前記圧力センサによって検出される前記過圧及び前記過圧の個々の作用持続時間によって全体として放出された容積を求め、前記求めた容積が前記放出されるべき容積に一致すると前記駆動装置の作動を中止させる請求項12または15記載の液体投与装置。
【請求項18】
前記電気制御ユニットは、前記放出されるべき容積が放出される瞬間の決定において、参照圧力−容積曲線に従って前記試料ピックアップ部分が流出特性に依存することを考慮する請求項12または15乃至18の何れか1項記載の液体投与装置。
【請求項19】
前記電気制御ユニットは、液体採取時の前記負圧が液体放出時の前記過圧を超えるように前記駆動装置を制御する請求項12乃至18の何れか1項記載の液体投与装置。
【請求項20】
前記電気制御ユニットは、採取時の前記負圧及び/または放出時の前記過圧が、前記試料ピックアップ部分/からの採取及び/またはへの放出時に界面及び/または摩擦効果に打ち勝つように前記駆動装置を制御する請求項12乃至19の何れか1項記載の液体投与装置。
【請求項21】
前記電気制御ユニットは、放出時の前記過圧が前記液体を前記試料ピックアップ部分から自由流れに駆動するように前記駆動装置を制御する請求項12乃至20の何れか1項記載の液体投与装置。
【請求項22】
前記電気制御ユニットは、前記採取された液体が前記試料ピックアップ部分から部分段階で放出されるように前記駆動装置を制御する請求項12乃至21の何れか1項記載の液体投与装置。
【請求項23】
前記電気制御ユニットは音響音声出力を装備する請求項12乃至22の何れか1項記載の液体投与装置。
【請求項24】
前記音響音声出力は異なった作動手順に適合するメッセージを発する請求項23記載の液体投与装置。
【請求項25】
前記音響音声出力は圧電アクタまたはメンブランアクタによって実現される請求項23または24記載の液体投与装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−177929(P2006−177929A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−314134(P2005−314134)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(505404725)エッペンドルフ アーゲー (16)
【Fターム(参考)】