説明

液体攪拌装置

【課題】可撓性材料で形成され横方向に並列して形設された複数の液収容部を有する試験管代用袋を使用し、その各液収容部に2種類の液体を分注して混合する場合に、液収容部内の液体を上端開口からこぼしたり押し出したりすることなく、混合溶液を攪拌して確実に混和させることができる装置を提供する。
【解決手段】試験管代用袋を起立姿勢で保持する袋保持部12と、袋保持部に保持された試験管代用袋の複数の液収容部に対応するように配設され振動運動により液収容部の袋外面を連打して液収容部内の液体を攪拌する複数の連打器20と、袋保持部に保持された試験管代用袋の液収容部の上部開口を開閉バー30で開閉自在に閉塞する開口閉塞器26とを備えて液体攪拌装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、試料原液や薬剤原液を段階的に順次希釈していって各種濃度の試料液や試薬液を調製する場合に、試料液体や試薬液体と滅菌蒸留水等の希釈用液体とが混合された混合溶液を攪拌して混和させるために使用される液体攪拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、混釈平板培養法により生菌数を測定する場合においては、各種濃度の試料液(菌液)を含む培地の系列を作るために、試料原液を10倍、100倍、1000倍、……というように10倍ごとに段階希釈する。また、寒天平板希釈法により化学療法剤に対する細菌類の感受性を検査する場合においては、各種濃度の試験薬剤を含む培地の系列を作るために、試験薬剤を10段階〜15段階程度に2倍ごとに段階希釈する。このように、段階希釈された試料液や試薬液を調製する際には、従来、ガラス製やプラスチック製の複数本の試験管を使用し、試料原液や薬剤原液(一定量の試験薬剤を秤取して滅菌蒸留水等に溶解させた液)を一定量、マイクロピペット等を用いて分取し、それを試験管に分注するとともに、マイクロピペット等を用いて一定量の希釈用液体、例えば滅菌蒸留水を同じ試験管に分注した後、試験管を振盪させるなどして混合溶液を混和させ、第1段階の希釈液を調製する。次に、第1段階の希釈液を一定量分取し、それを空の試験管に分注するとともに、その試験管に一定量の滅菌蒸留水を分注した後、試験管を振盪させるなどして混合溶液を混和させ、第2段階の希釈液を調製する。以下、同様の操作を繰り返すことにより、各種濃度に段階希釈された試料液や試薬液を得るようにする。
【0003】
上記したように、試料原液や薬剤原液を段階希釈して各種濃度の試料液や試薬液を調製するためには、多数本の試験管が使用されるが、一度使用された試験管の廃棄上の問題や経済上の問題などを解決するため、本出願人は、従来のガラス製やプラスチック製の試験管に代えて、安価で使い捨て可能な試験管代用袋を使用することを提案した。この試験管代用袋は、フィルム材により形成され、横方向に連接して形設されそれぞれ密封された同一内容積の複数の液収容部を有している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−267818号公報(第5−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した試験管代用袋は、従来のガラス製やプラスチック製の試験管とは異なり、フィルム材で形成されているために剛性が無く、また、液収容部も円筒形状に保持することが難しく、さらに、上面開口をキャップ等により閉塞することもできない。このため、上記試験管代用袋を使用して、例えば、試料原液や薬剤原液を段階的に順次希釈していって各種濃度の試料液や試薬液を調製する場合において、試料液体や試薬液体と滅菌蒸留水等の希釈用液体とを混合させた後に、試験管と同様に試験管代用袋を振盪させて混合溶液を混和させる方法では、試験管代用袋の上端開口から液がこぼれたりする。また、試験管代用袋の底部付近を指先で何度か軽く摘んで袋面を揉むようにして混合溶液を混和させる方法では、液収容部の容積が減少したときに試験管代用袋の上端開口から液が押し出される恐れもある。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、可撓性材料で形成され横方向に並列して形設された複数の液収容部を有する試験管代用袋を使用し、その各液収容部に2種もしくはそれ以上の種類の液体を分注して混合する場合に、液収容部内の液体を上端開口からこぼしたり押し出したりすることなく、混合溶液を攪拌して確実に混和させることができる液体攪拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、可撓性材料で形成され横方向に並列して形設された複数の液収容部を有しその各液収容部にそれぞれ液体が収容された試験管代用袋の、前記液収容部内の液体を攪拌する液体攪拌装置において、前記液収容部内の液体を攪拌する液体攪拌装置において、前記試験管代用袋を起立姿勢で保持する袋保持部と、この袋保持部に保持された前記試験管代用袋の各液収容部にそれぞれ対応するように配設され、振動運動により液収容部の袋外面を連打して液収容部内の液体を攪拌する複数の連打手段と、この連打手段を振動させる振動手段と、前記袋保持部に保持された前記試験管代用袋の液収容部の上部開口を開閉自在に閉塞する開口閉塞手段と、この開口閉塞手段を往復駆動させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の液体攪拌装置において、各連打手段にそれぞれ対応して完了ランプを複数設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の液体攪拌装置において、振動手段を連打手段ごとに設け、連打手段が振動して試験管代用袋の液収容部内の液体の攪拌動作が終わるごとに、完了ランプのうちの当該連打手段に対応する完了ランプを点灯させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の液体攪拌装置において、フットスイッチおよびリセット手段を備え、前記フットスイッチを1回操作するごとに、開口閉塞手段の閉塞動作、連打手段の連打動作および前記開口閉塞手段の開放動作の1サイクルの動作が行われて、前記フットスイッチを複数回操作することにより前記各連打手段が順番にそれぞれ動作していき、その後に前記フットスイッチを操作したときに初期状態に復帰するように、振動手段、駆動手段および前記リセット手段をそれぞれ制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の液体攪拌装置において、振動手段が複数の連打手段を同時に振動させ、連打手段が振動して試験管代用袋の液収容部内の液体の攪拌動作が終わるごとに、完了ランプが順番に点灯していくようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の液体攪拌装置において、フットスイッチおよびリセット手段を備え、前記フットスイッチを1回操作するごとに、開口閉塞手段の閉塞動作、連打手段の連打動作および前記開口閉塞手段の開放動作の1サイクルの動作が行われて、前記フットスイッチを、前記連打手段の数に相当する回数だけ操作した後に、さらにフットスイッチを操作したときに初期状態に復帰するように、振動手段、駆動手段および前記リセット手段をそれぞれ制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明の液体攪拌装置においては、袋保持部に試験管代用袋が起立姿勢で保持され、開口閉塞手段によって試験管代用袋の液収容部の上部開口が閉塞された状態で、振動手段によって連打手段が振動させられ、連打手段が振動運動することにより、可撓性材料で形成された試験管代用袋の袋外面が連打手段で連打されて、液収容部内の液体が攪拌される。
したがって、請求項1に係る発明の液体攪拌装置を使用すると、可撓性材料で形成され複数の液収容部を有する試験管代用袋を使用し、その各液収容部に2種もしくはそれ以上の種類の液体を分注して混合する場合に、液収容部内の液体を上端開口からこぼしたり押し出したりすることなく、混合溶液を攪拌して確実に混和させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明の液体攪拌装置では、完了ランプの点灯により、袋保持部に保持された試験管代用袋の複数の液収容部のうちいずれの液収容部内に収容された液体の攪拌が終了したかを確認しながら、一連の攪拌操作を行っていくことができる。
【0014】
請求項3に係る発明の液体攪拌装置では、完了ランプの点灯により、複数の連打手段のうちいずれの連打手段による試験管代用袋の液収容部内の液体の攪拌動作が終わったかを確認しながら、一連の攪拌操作を行っていくことができる。そして、振動手段が連打手段ごとに設けられているので、必要な連打手段だけを振動させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明の液体攪拌装置では、制御手段によって振動手段、駆動手段およびリセット手段がそれぞれ制御されることにより、フットスイッチを1回操作するごとに、開口閉塞手段の閉塞動作、連打手段の連打動作および開口閉塞手段の開放動作の1サイクルの動作を行わせ、フットスイッチを複数回操作して各連打手段を順番にそれぞれ動作させていき、その後にフットスイッチを操作して初期状態に復帰させることができる。
【0016】
請求項5に係る発明の液体攪拌装置では、完了ランプの点灯により、袋保持部に保持された試験管代用袋の複数の液収容部のうちいずれの液収容部内に収容された液体の攪拌動作が終わったかを確認しながら、一連の攪拌操作を行っていくことができる。そして、振動手段が複数の連打手段を同時に振動させるので、振動手段を1つだけ設置すればよい。
【0017】
請求項6に係る発明の液体攪拌装置では、制御手段によって振動手段、駆動手段およびリセット手段がそれぞれ制御されることにより、フットスイッチを1回操作するごとに、開口閉塞手段の閉塞動作、連打手段の連打動作および開口閉塞手段の開放動作の1サイクルの動作を行わせ、フットスイッチを複数回操作して各連打手段を順番にそれぞれ動作させていき、フットスイッチを、連打手段の数に相当する回数だけ操作した後にフットスイッチを操作して初期状態に復帰させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の最良の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1ないし図5は、この発明の1実施形態を示し、図1は、液体攪拌装置の全体斜視図であり、図2および図3は、その正面図および側面図であり、図4は、操作盤部分の平面図であり、図5は、液体攪拌装置の回路構成を示すブロック図である。
【0019】
この液体攪拌装置は、筐体10の前面に袋保持部12を備え、その袋保持部12から前方へ突き出るように操作盤14が設けられている。袋保持部12は、筐体10の前面側鉛直面の左右両側に一対のブラケット16、16を固着し、その一対のブラケット16、16間に保持板18を掛け渡すように、保持板18の両端部を両ブラケット16、16に一体的に固着して構成されている。そして、後述する試験管代用袋は、保持板18と筐体10の前面側鉛直面との間の空間に挿入されて起立姿勢で保持される。
【0020】
袋保持部12には、筐体10の前面側鉛直面の下部から突出した往復動ピン22に一対の揺動桿24、24の下端部を固着して構成された連打器20が配設されている。連打器20は、試験管代用袋の各液収容部にそれぞれ対応するように複数、この例では4つ設けられている。この連打器20は、連打器20ごとに設けられた振動モータ52(図5参照)で往復動ピン22を振動させて揺動桿24を揺動させることにより、袋保持部12に保持された試験管代用袋の袋外面を連打する。
【0021】
また、袋保持部12の上方には、筐体10の前面側鉛直面の上部から突出した左右一対の直動軸28、28に開閉バー30の両端部を固着して構成された開口閉塞器26が配設されている。この開口閉塞器26は、バー開閉機構54(図5参照)で一対の直動軸28、28を往復移動させて、開閉バー30を筐体10の前面側鉛直面に対し近接および離間させることにより、袋保持部12に保持された試験管代用袋の液収容部の上部開口を開閉自在に閉塞する。
【0022】
操作盤14には、電源スイッチ32、手動・フット切替スイッチ34、タイマー調節器36、開口閉塞器26のバー閉塞スイッチ38およびバー開放スイッチ40、各連打器20にそれぞれ対応して設けられた4つの手動スイッチ42および完了ランプ44、ならびにリセットスイッチ46が設けられている。また、筐体10から引き出されたコード48にフットスイッチ50が接続されている。
【0023】
図5に示すように、電源スイッチ32およびリセットスイッチ46は、それぞれリセット制御回路56に接続されており、リセット制御回路56が、メモリ制御回路60、フット制御回路62および手動制御回路64にそれぞれ接続されている。メモリ制御回路60には、フット制御回路62および手動制御回路64がそれぞれ接続されており、また、フット制御回路62および手動制御回路64は、それぞれバー開閉制御回路66に接続されている。また、フット制御回路62には、フットスイッチ50および手動・フット切替スイッチ34のフット側端子がそれぞれに接続されており、手動制御回路64に各手動スイッチ42がそれぞれ接続されていて、各手動スイッチ42にそれぞれ手動・フット切替スイッチ34の手動側端子が接続されている。そして、メモリ制御回路60が完了ランプ制御回路68に接続され、完了ランプ制御回路68が各完了ランプ44にそれぞれ接続されている。バー開閉制御回路66には、上記したフット制御回路62および手動制御回路64のほかに、バー閉塞スイッチ38およびバー開放スイッチ40(バー開閉スイッチ38、40)が接続されており、バー開閉制御回路66が、バー開閉機構54に接続されているとともに、タイマー制御回路70に接続されている。タイマー制御回路70にはタイマー調整器36が接続されており、タイマー制御回路70が、各振動モータ52にそれぞれ接続された振動モータ制御回路72に接続されている。
【0024】
次に、この液体攪拌装置において用いられる試験管代用袋の構成を、図6及び図7に基づいて説明する。図6は、試験管代用袋の1例を示す正面図であり、図7は、その試験管代用袋の液収容部を開封した状態を示す斜視図である。
【0025】
この試験管代用袋1は、可撓性材料、例えば合成樹脂フィルム材によって形成されており、横方向に並列し連接して形設された複数、この例では4つの液収容部2を有している。各液収容部2は、それぞれ互いに独立して密封されており、それぞれ同一内容積を有している。また、試験管代用袋1には、図6に示すように、側縁部にノッチ3が形設されている。そして、ノッチ3を始端として袋面を横方向(上辺に沿った方向)へ容易に引き裂くことができるように、例えば、試験管代用袋1を形成するフィルム材として、横方向に1軸延伸加工された合成樹脂フィルム材が使用されている。
【0026】
この試験管代用袋1は、片方の手の親指と人差し指およびもう一方の手の親指と人差し指とで、側縁部に形設されたノッチ3を挟んでその両側をそれぞれ摘み、ノッチ3を始端として袋を横方向に引き裂くことにより、各液収容部2がそれぞれ容易に開封される。このようにして、密封された液収容部2が開封されると、図7に示すように、液収容部2の開封部分は、手を触れなくても合成樹脂フィルム材の弾性によって復元的に自然と大きく開口する。この大きく開いた上部開口4を通し、ピペット等を使用して液収容部2内へ試料液体や試薬液体と希釈用液体、例えば滅菌蒸留水を分注することができる。
【0027】
上記した試験管代用袋1は、例えば、縦寸法が同等で横寸法が異なる2枚の矩形状フィルム材を接合して形成される。すなわち、横寸法が小さい一方のフィルム材(これを「平面部フィルム材」という)の左・右の側縁部と、横寸法が大きい他方のフィルム材(これを「曲面部フィルム材」という)の左・右の側縁部とをそれぞれ互いに揃えて接着、例えば熱接着(ヒートシール)するとともに、平面状態の平面部フィルム材に対して曲面部フィルム材を規則的な波形に折曲し、曲面部フィルム材の各谷部と平面部フィルム材とを、それぞれ側辺に沿った直線状に等間隔で熱接着することにより、平面部フィルム材と曲面部フィルム材とで互いに平行な複数の筒部が形成されるようにする。続いて、平面部フィルム材の上縁部および下縁部と曲面部フィルム材の上縁部および下縁部とをそれぞれ熱接着する。このとき、筒部の開口部分は、平面部フィルム材が平面状態であるのに対して曲面部フィルム材が湾曲しているので、曲面部フィルム材の上・下各縁部にそれぞれ襞(タック)を形成しつつ、平面部フィルム材の上・下縁部と曲面部フィルム材の上・下縁部とをそれぞれ熱接着して、各筒部の上・下の開口をそれぞれ扁平状に閉塞する。以上のような工程により、図6に示したように、それぞれ密封された同一内容積の複数の液収容部2が連接して形設された試験管代用袋1が製作される。
【0028】
試験管代用袋1は、上記したようにして製作されるが、その製作過程において、筒部内に何も液体を入れずに筒部の上部開口を閉塞して、液収容部2内に何も収容されていない試験管代用袋1を製作するようにしてもよいし、液体、例えば希釈用の滅菌蒸留水を筒部内に入れた状態で筒部の上部開口を閉塞して、各液収容部2内にそれぞれ同一量の滅菌蒸留水が収容された試験管代用袋1を製作するようにしてもよい。
【0029】
次に、図1ないし図5に示した液体攪拌装置を使用し、図6および図7に示した試験管代用袋1を用いて、例えば、試料原液を段階希釈して各種濃度の試料液を調製する操作の1例について、図8および図9に示す部分側面断面図、ならびに、図10および図11に示すフローチャートを参照しながら説明する。この操作では、各液収容部2内にそれぞれ同一量の滅菌蒸留水が収容された試験管代用袋1を使用することとする。
【0030】
まず、試験管代用袋1の上端部をノッチ3の部分で横方向に引き裂いて液収容部2を開封し、この試験管代用袋1を、図2、図3および図8の(a)に示すように、筐体10の前面と開閉バー30との間に通し袋保持部12に挿入して起立姿勢で保持し、電源スイッチ32をオン(ON)にする。このとき、手動・フット切替スイッチ34は、フット(FOOT)側としておく。この状態で、操作者がピペットを用いて一定量の試料原液を分取し、試験管代用袋1の1番目(左端)の液収容部2内へ上部開口4を通して試料原液を分注する。この試料原液の分注後に、操作者がフットスイッチ50を足で踏んでオン操作すると、図8の(b)に示すように、バー開閉機構54が作動して開閉バー30が筐体10の前面に近接し、開閉バー30により試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が閉塞される。
【0031】
試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が閉塞されると、図9の(c)に示すように、第1振動モータ52が作動して第1(左端)の連打器20の往復動ピン22が振動し、一対の揺動桿24、24が揺動して、合成樹脂フィルム材で形成された試験管代用袋1の底部付近の袋外面が揺動桿24によって連打される。これにより、試験管代用袋1の1番目の液収容部2内の液体が攪拌されて、分注された試料原液と滅菌蒸留水とが混和され、第1段階の希釈試料液が調製される。第1振動モータ52の始動時から一定時間(タイマー調節器36によって設定された時間)が経過すると、第1振動モータ52が停止するとともに、第1(左端)の完了ランプ44が点灯する。続いて、図9の(d)に示すように、バー開閉機構54が作動して開閉バー30が筐体10の前面から離間し、開閉バー30によって閉塞されていた試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が開放される。
【0032】
試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が開放されると、操作者がピペットを用いて試験管代用袋1の1番目の液収容部2内から一定量の試料液(第1段階の希釈試料液)を分取し、その試料液を試験管代用袋1の2番目(左から2つ目)の液収容部2内へ分注する。この試料液の分注後に、操作者がフットスイッチ50を足で踏んでオン操作すると、図8の(b)に示すように、再びバー開閉機構54が作動して開閉バー30が筐体10の前面に近接し、開閉バー30により試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が閉塞される。試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が閉塞されると、図9の(c)に示すように、第2振動モータ52が作動して第2(左から2つ目)の連打器20の往復動ピン22が振動し、一対の揺動桿24、24が揺動して、試験管代用袋1の底部付近の袋外面が揺動桿24によって連打される。これにより、試験管代用袋1の2番目の液収容部2内の液体が攪拌されて、分注された試料液と滅菌蒸留水とが混和され、第2段階の希釈試料液が調製される。第2振動モータ52の始動時から一定時間(タイマー設定時間)が経過すると、第2振動モータ52が停止するとともに、第2(左から2つ目)の完了ランプ44が点灯する。続いて、図9の(d)に示すように、再びバー開閉機構54が作動して開閉バー30が筐体10の前面から離間し、開閉バー30によって閉塞されていた試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が開放される。
【0033】
引き続き、試験管代用袋1の3番目(左から3つ目)および4番目(右端)の液収容部2に対して上記と同様の操作を行う。そして、4番目の液収容部2内で第4段階の希釈試料液が調製され、開閉バー30によって閉塞されていた試験管代用袋1の液収容部2の上部開口4が開放されるると、操作者がフットスイッチ50を足で踏んでオン操作する。この操作により、全ての回路が初期状態に復帰し、4つ全ての完了ランプ44が消灯する。この後、それぞれの液収容部2に4段階の希釈試料液が収容された試験管代用袋1を袋保持部12から取り出して一連の操作が終了する。
【0034】
以上の操作例は、手動・フット切替スイッチ34をフット(FOOT)側としたときのものであるが、手動・フット切替スイッチ34を手動(MANUAL)側としたときには、フットスイッチ50を操作する代わりに、バー閉塞スイッチ38およびバー開放スイッチ40、4つの手動スイッチ42ならびにリセットスイッチ46をそれぞれ操作することにより、上記と同様の一連の操作を行うことができる。なお、手動操作を行う場合は、最初に試験管代用袋1を袋保持部12に挿入して保持するときに、液収容部2を未開封のままの状態とし、バー閉塞スイッチ38を操作して、開閉バー30と筐体10の前面とで試験管代用袋1の上縁部を挟持した後に、試験管代用袋1の上端部をノッチ3の部分で引き裂いて開封するようにしてもよい。
【0035】
次に、図12および図13は、この発明の別の実施形態を示し、図12は、液体攪拌装置の全体斜視図であり、図13は、その回路構成を示すブロック図である。この液体攪拌装置は、4つの振動板(上記した連打器20に相当)が個別に駆動されるのではなくて同時に駆動される点、装置の制御がCPUによって行われる点などにおいて、図1ないし図5に示した上記液体攪拌装置と異なる。
【0036】
この液体攪拌装置には、筐体74の前面側に袋保持部76が設けられている。袋保持部76は、筐体74の前面に厚板状の受け部材78を固着し、その受け部材78の前面側を保持板80で塞ぐようにして構成されている。そして、試験管代用袋は、受け部材78と保持板80と筐体74の前面とで囲まれた空間に挿入されて起立姿勢で保持される。筐体74の前面には、袋保持部76の配設位置に対応する部分に開口窓82が形設されており、その開口窓82に臨むように4つの振動板84が配設されている。4つの振動板84は、図12には図示していないが筐体74の内部に設けられた振動板駆動モータ86(図13参照)によって同時に振動させられ、これらの振動板84により、袋保持部76に保持された試験管代用袋の袋外面が連打される。
【0037】
また、袋保持部76の上方には、筐体74の前面の上部から突出した左右一対の直動板部90および一対の直動板部90に両端部が一体に連接した開閉板部92からなる開閉フレーム88が配設されている。開閉フレーム88は、図12には図示していないが筐体74の内部に設けられた駆動モータ94(図5参照)で一対の直動板部90を往復移動させて、開閉板部92を筐体74の前面に対し近接および離間させることにより、袋保持部76に保持された試験管代用袋の液収容部の上部開口を開閉自在に閉塞する。筐体74の上面前縁部には、各振動板84にそれぞれ対応する4つの完了ランプ96が設けられている。また、筐体74から引き出されたコード98にフットスイッチ100が接続されている。
【0038】
図13に示すように、フットスイッチ100はCPU102に接続されている。また、CPU102は、振動板駆動モータ86のドライバ104、開閉フレーム駆動モータ94のドライバ106および完了ランプ96のドライバ108にそれぞれ接続されている。
【0039】
図12および図13に示した液体攪拌装置を使用して、例えば試料原液を段階希釈し各種濃度の試料液を調製する一連の操作も、図1ないし図5に示した装置と同様に、図10および図11のフローチャートに示したような手順で、フットスイッチ100を順次操作することにより行われる。但し、この液体攪拌装置では、4つの振動板84を順番に1つずつ駆動させるのではなく、1つの振動板駆動モータ86によって常に4つの振動板84を同時に駆動させるようにする。そして、振動板84が1回駆動するごとに、完了ランプ96が1つずつ順番に点灯していき、振動板84が4回駆動したときに4つ全ての完了ランプ96が点灯する。
【0040】
上記した実施形態では、図6および図7に示したように、袋上縁部を引き裂いて液収容部2を開封したときに、液収容部2の開封部分が手を触れなくても自然と大きく開口するような構成を備えた試験管代用袋1を用いるようにしているが、この発明は、そのような袋構成でなく、縦寸法と横寸法が同じである2枚の矩形状フィルム材を接合して、横方向に並列した複数の液収容部が形設された扁平状の試験管代用袋を用いる場合にも適用し得るものである。そのような扁平状の試験管代用袋は、袋上縁部を引き裂いて液収容部を開封しただけでは液収容部の開封部分が自然と大きく開口することがない。そこで、開口閉塞器26の開閉バー30や開閉フレーム88の開閉板部92の内側面、および、筐体10、74の前面の、開閉バー30や開閉板部92と対向する部分に、それぞれ吸盤を取着したり粘着剤を塗布しておいたりする。このような構成とすることにより、バー開閉機構54(開閉フレーム88)を作動させて開閉バー30(開閉板部92)で試験管代用袋の液収容部の上部開口を一旦閉塞してから、開閉バー30(開閉板部92)を筐体10(74)の前面から離間させるようにしたときに、液収容部の上部開口付近の両袋面が前後方向に引っ張られて、液収容部の開封部分が大きく開口することとなる。このように、液体攪拌装置の構成を部分的に変更することにより、可撓性材料で形成され複数の液収容部を有する各種形態の試験管代用袋に対する液体分注操作に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の1実施形態を示す液体攪拌装置の全体斜視図である。
【図2】図1に示した液体攪拌装置の正面図である。
【図3】図1に示した液体攪拌装置の側面図である。
【図4】図1に示した液体攪拌装置の操作盤部分の平面図である。
【図5】図1に示した液体攪拌装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示した液体攪拌装置において用いられる試験管代用袋の構成の1例を示す正面図である。
【図7】図6に示した試験管代用袋の液収容部を開封した状態を示す斜視図である。
【図8】図1ないし図5に示した液体攪拌装置を使用し、図6および図7に示した試験管代用袋を用いて、試料原液を段階希釈して各種濃度の試料液を調製する操作の1例について説明するための部分側面断面図である。
【図9】同じく、試料原液を段階希釈して各種濃度の試料液を調製する操作の1例について説明するための部分側面断面図である。
【図10】図1ないし図5に示した液体攪拌装置を使用し、図6および図7に示した試験管代用袋を用いて、試料原液を段階希釈して各種濃度の試料液を調製する一連の操作を示すフローチャートである。
【図11】同じく、試料原液を段階希釈して各種濃度の試料液を調製する一連の操作を示すフローチャートである。
【図12】この発明の別の実施形態を示す液体攪拌装置の全体斜視図である。
【図13】図12に示した液体攪拌装置の回路構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0042】
1 試験管代用袋
2 試験管代用袋の液収容部
3 ノッチ
4 液収容部の上部開口
10、74 筐体
12、76 袋保持部
14 操作盤
20 連打器
22 往復動ピン
24 揺動桿
26 開口閉塞器
28 直動軸
30 開閉バー
32 電源スイッチ
34 手動・フット切替スイッチ
36 タイマー調節器
38 バー閉塞スイッチ
40 バー開放スイッチ
42 手動スイッチ
44 完了ランプ
46 リセットスイッチ
50、100 フットスイッチ
52 振動モータ
54 バー開閉機構
56 リセット制御回路
60 メモリ制御回路
62 フット制御回路
64 手動制御回路
66 バー開閉制御回路
68 完了ランプ制御回路
70 タイマー制御回路
72 振動モータ制御回路
82 開口窓
84 振動板
86 振動板駆動モータ
88 開閉フレーム
90 直動板部
92 開閉板部
94 開閉フレーム駆動モータ
96 完了ランプ
102 CPU
104 振動板ドライバ
106 開閉フレームドライバ
108 ランプドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料で形成され横方向に並列して形設された複数の液収容部を有しその各液収容部にそれぞれ液体が収容された試験管代用袋の、前記液収容部内の液体を攪拌する液体攪拌装置において、
前記試験管代用袋を起立姿勢で保持する袋保持部と、
この袋保持部に保持された前記試験管代用袋の各液収容部にそれぞれ対応するように配設され、振動運動により液収容部の袋外面を連打して液収容部内の液体を攪拌する複数の連打手段と、
この連打手段を振動させる振動手段と、
前記袋保持部に保持された前記試験管代用袋の液収容部の上部開口を開閉自在に閉塞する開口閉塞手段と、
この開口閉塞手段を往復駆動させる駆動手段と、
を備えたことを特徴とする液体攪拌装置。
【請求項2】
前記各連打手段にそれぞれ対応して完了ランプが複数設けられた請求項1に記載の液体攪拌装置
【請求項3】
前記振動手段が前記連打手段ごとに設けられ、連打手段が振動して試験管代用袋の液収容部内の液体の攪拌動作が終わるごとに、前記完了ランプのうちの当該連打手段に対応する完了ランプが点灯するようにした請求項2に記載の液体攪拌装置。
【請求項4】
フットスイッチおよびリセット手段を備え、
前記フットスイッチを1回操作するごとに、前記開口閉塞手段の閉塞動作、前記連打手段の連打動作および前記開口閉塞手段の開放動作の1サイクルの動作が行われて、前記フットスイッチを複数回操作することにより前記各連打手段が順番にそれぞれ動作していき、その後に前記フットスイッチを操作したときに初期状態に復帰するように、前記振動手段、前記駆動手段および前記リセット手段をそれぞれ制御する制御手段を備えた請求項3に記載の液体攪拌装置。
【請求項5】
前記振動手段が前記複数の連打手段を同時に振動させ、連打手段が振動して試験管代用袋の液収容部内の液体の攪拌動作が終わるごとに、前記完了ランプが順番に点灯していくようにした請求項2に記載の液体攪拌装置。
【請求項6】
フットスイッチおよびリセット手段を備え、
前記フットスイッチを1回操作するごとに、前記開口閉塞手段の閉塞動作、前記連打手段の連打動作および前記開口閉塞手段の開放動作の1サイクルの動作が行われて、前記フットスイッチを、前記連打手段の数に相当する回数だけ操作した後に、さらにフットスイッチを操作したときに初期状態に復帰するように、前記振動手段、前記駆動手段および前記リセット手段をそれぞれ制御する制御手段を備えた請求項5に記載の液体攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−117861(P2007−117861A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312200(P2005−312200)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(591237641)株式会社日研生物医学研究所 (10)
【Fターム(参考)】