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液体材料中のハロゲン濃度の測定方法および測定装置
説明

液体材料中のハロゲン濃度の測定方法および測定装置

【課題】反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することができる測定方法および測定装置を提供する。
【解決手段】自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物からなる液体材料を対象とし、所定の容量を有する処理槽10と、処理槽10内部がパージされるパージ処理部と、純水が導入される水導入部1と、液体材料が溶解可能な非水溶性溶媒が導入される溶媒導入部2と、液体材料が導入される試料導入部3と、非水溶性溶媒と純水と液体材料からなる混合液から蒸散する気相成分が供出されるガス供出部5と、該混合液から液相成分が供出される液供出部6と、該液相成分中のハロゲン成分が測定される分析部20と、測定されたハロゲン成分から液体材料中のハロゲン濃度を算出する演算部40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体材料中のハロゲン濃度の測定方法および測定装置に関し、例えば、半導体や太陽電池等の生産装置や研究設備等において使用される有機金属化合物やケイ素化合物のような「自然発火性または禁水性物質」中に含まれる微量のハロゲンあるいはハロゲン化合物の測定方法および測定装置に関するものである。
【0002】
なお、「自然発火性または禁水性物質」とは、空気または、水と反応して発火する物質であるとして、固体と液体を対象については消防法によって、気体については高圧ガス取締法によって規制され、消防法上の危険物第3類に分類されています。本願では、液体材料として、ジメチル亜鉛(DMZn)やジエチル亜鉛(DEZn)などの有機亜鉛化合物,トリメチルアルミニウム(TMA)などの有機アルミニウム化合物あるいはノルマルブチルリチウム(n−BuLi)などの有機リチウム化合物などの有機金属化合物,トリクロロシランなどの塩素化ケイ素化合物などのケイ素化合物が挙げられる。
【背景技術】
【0003】
半導体や太陽電池等を生産する製造装置や新たな素材を開発する研究設備、あるいは各種の有機物質の原料等として、多くの有機系材料が使用されている。こうした用途に使用される有機系材料は、製造・研究あるいは製品の特性に大きな影響を与えることがあることから、非常に高純度の材料が要求される。一方、こうした有機系材料は、その製造過程において原料あるいは中間材料として使用されるハロゲン成分が少量含まれることが多く、上記のような用途においては、所定のハロゲン除去処理を行い、ハロゲン量が確認された後に使用されている。例えば、近年半導体プロセスにおいて多用されているDMZn等不純物を含んだ有機亜鉛化合物の粗製物を、容易に効果的に高純度に精製出来る有機亜鉛化合物の精製方法などが提案され、実施されている。このとき、ハロゲン除去処理された有機系材料中のハロゲン濃度を正確に把握することは、非常に重要である。
【0004】
具体的には、有機亜鉛化合物を合成した反応液を単蒸留して反応溶媒を除去し、得られた有機亜鉛化合物の粗製物を活性炭と接触させ、混入している不純物を吸着除去させる方法が挙げられる(例えば特許文献1参照)。有機亜鉛化合物としてはそれがジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、あるいはエチルメチル亜鉛の場合を含む。活性炭は乾燥状態の活性炭であると特に好ましい。ここでは、ジエチル亜鉛中の不純物として、ヨウ化メチル(MeI)および塩化メチル(MeCl)が挙げられ、その測定には、ガスクロマトグラフィースペクトル及び発光分光分析計を用いた方法が提案されている(特許文献1段落0026,0027)。
【0005】
また、一般的に、水あるいは空気に対して不活性な液体材料中の塩素等のハロゲンは、空気中で水と混合して激しく攪拌することにより水相にハロゲンを抽出したのち、イオンクロマトグラフィーで測定している。つまり、空気中あるいは不活性気体中で取り扱える液体材料中のハロゲンは、水と加水分解反応を起こすが、加水分解した後の水溶液中のハロゲンをイオンクロマトグラフィーで測定している。
【0006】
このように、半導体製造プロセス等においては、特定の製造プロセスにおいて自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物等の液体材料が原料等として使用される一方、こうした液体材料中には、特定のハロゲンあるいはハロゲン化合物が不純物として存在し、プロセスに対する影響力が大きいことから高純度の液体材料の要求に対応した高精度の連続測定が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−41151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような液体材料中のハロゲン測定方法あるいは測定装置では、以下のような種々の課題が生じることがあった。
【0009】
(i)液体材料が自然発火性あるいは禁水性等の高反応性物質の場合には、大気中で取り扱えず、不活性気体中であっても直接水を加えると発煙を伴って激しく反応して高温となり危険である上、激しい蒸発により加水分解に使用する純水の重量誤差が大きくなり、高精度のハロゲン濃度の測定は困難であった。
(ii)また、こうした水分の共存を嫌い取扱いの難しい液体材料中のハロゲン濃度の測定においては、常に水分の外部からの混入や流路内部からの湧き出しあるいは流路内壁への吸着の影響を考慮しつつ、操作性のよい測定系を構成する必要がある。
(iii)さらに、ガスクロマトグラフィーによる方法では、上記例のようにMeIやMeClを定量分析することはできるが、それ以外の形態で存在するヨウ素や塩素を分析することはできない上、感度が不十分である。
【0010】
本発明の目的は、塩素やヨウ素等のハロゲンが規定の濃度以下であることを保証し、高純度が要求される半導体プロセス向け液体材料を供給することができるように、反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することができる測定方法および測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す液体材料中のハロゲン濃度の測定方法および測定装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
本発明は、液体材料中のハロゲン濃度測定方法であって、不純物としてハロゲンあるいはハロゲン化合物を含む液体材料であって、自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物を対象とし、
以下のプロセスからなる1次処理プロセスと、
(1)所定の容量を有する処理槽内部が、予めドライな不活性ガスによってパージされるプロセス
(2)所定時間パージされた処理槽に、所定量の純水と、前記液体材料が溶解可能な所定量の非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が導入されるプロセス
以下のプロセスからなる2次処理プロセスと、
(3)所定量の前記液体材料が、該処理槽内の非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相に導入され、混合液が作製されるプロセス
(4)該混合液において、液体材料が、非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相および純水の相に拡散・混合されるプロセス
(5)予め設定された圧力条件において、該混合液から蒸散する気相成分が前記処理槽から供出されるプロセス
(6)所定時間気相成分を供出した後、前記純水の相の液相成分が供出されるプロセス
以下のプロセスからなる3次処理プロセスと、
(7)供出された液相成分が前記分析部に導入され、液相成分中のハロゲン成分が測定されるプロセス
(8)前記ハロゲン成分から前記液体材料中のハロゲン濃度を算出するプロセス
を有することを特徴とする。
【0013】
自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物等の液体材料が原料等として使用される半導体製造プロセス等においては、液体材料中の不純物を操作性よく測定することができる測定方法が要求される。本発明は、従前困難であった液体材料中のハロゲンの物理的な選択的な抽出を、該ハロゲンのイオン化特性および水溶性を利用して行なうことによって、抽出されたハロゲン量(濃度)の測定を可能としたものである。具体的には、ハロゲンあるいはハロゲン化合物(以下「ハロゲン等」という)が抽出される純水の相(以下「純水相」という)と液体材料が溶解される非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒(以下「非水溶媒」という)の相(以下「溶媒相」という)からなる混合溶媒が形成され、不活性ガス雰囲気で溶媒相に処理対象となる液体材料が導入される。このとき、溶媒相において液体材料の安定化を図ることができる一方、静置すれば液体材料が溶媒相に徐々に拡散・混合され、両相の境界付近において、非水溶媒に溶解した液体材料の一部が純水と接触して液体材料中のハロゲン等が純水に溶解する。あるいは、液体材料の一部が加水分解して発生したハロゲン等が純水に溶解、またはハロゲン化合物が加水分解等して溶解する。また、拡散速度が遅い混合液においては、攪拌手段による純水相と溶媒相の攪拌・混合処理を行うことによって、迅速な拡散・混合を行なうことが可能である。その後、液体材料中の不純物たるハロゲン等の水への溶解あるいは液体材料の加水分解に伴う純水相への移動やハロゲン化物の加水分解による水溶性ハロゲン化物の純水相への移動によって、溶媒相には不純物の殆どない液体材料が、純水と接触せずに安定した状態で混合・溶解されている。あるいは、加水分解する液体材料であれば、穏やかな反応を経由して不純物の殆どない反応生成物を形成し、溶媒相に溶解あるいは非溶解物質として析出する。
【0014】
さらに、処理槽が加熱されることによって、純水相へのハロゲン等の移動が促進されるとともに、非水溶媒が純水相の上層にある場合(水よりも密度が小さい場合)には、非水溶媒が徐々に蒸散することから一層ハロゲン等の移動が促進される。そこで、該純水相の液相成分の一部を所定量供出し、その液相成分中のハロゲン成分をイオンクロマトグラフィー等の分析部に用いて測定することによって該液相成分中のハロゲン濃度を得ることができる。また、該ハロゲン濃度や測定された液相成分の量、および処理槽に導入された純水量から測定対象となった液体材料中のハロゲン濃度を算出することができる。こうしたプロセスによって、反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することができ、ハロゲンが規定の濃度以下であることを保証して高純度が要求される半導体プロセス向け液体材料を供給することが可能となった。
【0015】
また、本発明は、上記液体材料中のハロゲン濃度測定方法であって、
前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が、前記液体材料が溶解可能で、かつ水よりも低密度の溶媒であり、
前記1次処理プロセスにおいて、
(2a)前記処理槽の下層の純水の相と、上層の前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相による2相に分離された状態が形成されるとともに、
前記2次処理プロセスにおいて、
(5a)前記処理槽内の気相成分が減圧手段によって吸引され、前記混合液の上層を形成する前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が蒸散され、前記純水の相を主とする液相成分が残留し、
前記3次処理プロセスにおいて、
(7a)残留した液相成分が前記分析部に導入される
ことを特徴とする。
上記のような方法は、インライン用あるいは所定規模の液体材料を取扱うプロセスにおけるハロゲン濃度測定方法において有用であるが、小規模なプロセスあるいはラボレベルでのハロゲン濃度測定においては、こうした処理プロセスが適さないことがある。つまり、高価な液体材料を取扱う場合や少量の液体材料しか取扱うことができない場合には、本発明のように、液体材料を確実に溶媒相に溶解させるとともに、該非水溶媒のみを蒸散させてハロゲン等の純水相への移動を促進させる処理を行うことによって、少量の試料に対応した反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することができる測定方法を提供することが可能となった。また、水よりも低密度の非水溶媒を用いることによって、下層を純水相とする2相を形成して蒸散を容易にすることができるとともに、気相成分を減圧吸引することによって、蒸散処理および蒸散成分の供出の迅速化を図ることが可能となる。
【0016】
本発明は、上記液体材料中のハロゲン濃度測定方法であって、2次処理プロセスにおいて、
(5b)ドライな不活性ガスがキャリアガスとして処理槽に導入され、前記混合液からの蒸散および気相成分の供出処理を行われる
ことを特徴とする。
上記のように、非水溶媒が徐々に蒸散すると純水相へのハロゲン等の移動が促進され、溶媒相の蒸散によって溶媒相中の液体材料成分も濃縮されることから、さらにハロゲン等の移動が促進される。また、処理槽が加熱されることによって、混合液の対流等による拡散・混合により、さらにハロゲン等の移動が促進される。本発明においては、加えて、不活性ガスにより強制的に気相成分の供出処理を行うことによって、一層のハロゲン等の移動の促進を図ることができる。これによって、反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定するとともに、測定の迅速化を図ることが可能となった。
【0017】
本発明は、上記液体材料中のハロゲン濃度測定方法であって、前記液体材料として、不純物として塩素あるいは塩素化合物を含む有機亜鉛化合物を対象とし、前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒として、水よりも低密度の脂肪族炭化水素とするとともに、
前記2次処理プロセスにおいて、
(5c)前記蒸散処理された非水溶性有機溶媒の多くが気相成分として供出され、
(5d)蒸散処理後の混合液に対して超音波が照射される超音波処理が行われ、
(6a)超音波処理され、前記処理槽から供出された前記液相成分が濾過処理された後、
前記3次処理プロセスにおいて、
(7a)分析部としてイオンクロマトグラフィーを用いて測定される
ことを特徴とする。
反応性の高い液体材料中の微量のハロゲン濃度の測定は、半導体製造プロセス等において重要な役割を果し、特に不純物として塩素あるいは塩素化合物(以下「塩素等」という)を含む有機亜鉛化合物を液体材料とする場合において、従前その測定方法が確立できなかったことは既述の通りである。本発明は、非水溶媒として水よりも低密度の脂肪族炭化水素,分析部としてイオンクロマトグラフィーを用い、蒸散処理後の混合液に対して超音波を照射するとともに、有機亜鉛化合物と水との加水分解によって生じる酸化亜鉛を濾過した後の液相成分を、イオンクロマトグラフィーを用いて測定することによって、こうした課題に対応することが可能となったものである。特に純水よりも低密度の脂肪族炭化水素が非水溶媒として純水相の上層にあることから、拡散・混合処理によって非水溶媒が徐々に蒸散し、一層ハロゲン等の純水相への移動が促進され、測定の迅速化を図ることが可能となった。また、超音波処理は、混合液中の水分の活性化を図るとともに、加水分解によって生じる酸化亜鉛に吸蔵される塩素等の液相成分への溶解を促すことができる。特に、物理的吸着のみならず化学的な結合を形成する可能性のある塩素イオンとして取り込まれること(ここでは「吸蔵」という)を防止する機能が高いことから、純水相への移動の促進を図るとともに、塩素等のロスを減少させ、高精度の測定が可能となった。
【0018】
本発明は、不純物としてハロゲンあるいはハロゲン化合物を含む液体材料であって、自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物を対象とする該液体材料中のハロゲン濃度測定装置であって、所定の容量を有する処理槽と、該処理槽内部がドライな不活性ガスによってパージされるパージ処理部と、該処理槽に純水が導入される水導入部と、前記液体材料が溶解可能な非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が導入される溶媒導入部と、不活性ガス雰囲気で導入された該非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相に前記液体材料が導入される試料導入部と、液体材料が非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相および純水の相に拡散・混合された混合液から蒸散する気相成分が供出されるガス供出部と、気相成分が供出された混合液中の純水の相を含む液相成分が供出される液供出部と、該液供出部から供出された該液相成分中のハロゲン成分が測定される分析部と、測定されたハロゲン成分から前記液体材料中のハロゲン濃度を算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
こうした構成を有するハロゲン濃度測定装置を用いることによって、液体材料中のハロゲンを液相成分に溶解させて液体材料から効率的に分離することができ、反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することが可能となった。従って、本発明に係る半導体プロセス測定装置を半導体プロセスに適用することによって、高純度が要求される半導体プロセス向け液体材料を供給することが可能となった。
【0019】
本発明は、上記液体材料中のハロゲン濃度測定装置であって、前記混合液に対して純水の相と非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相を攪拌・混合する攪拌手段、前記処理槽に設けられ処理槽内あるいは混合液を加熱する加熱手段、前記処理槽に設けられ混合液に超音波を照射する超音波処理手段、のいずれかあるいはそのいくつかを組合せた処理手段を有することを特徴とする。
上記のように、本発明に係る半導体プロセス測定装置においては、液体材料を溶媒相において安定的に溶解させ徐々に拡散・混合させる一方、両相の境界付近において液体材料中のハロゲン等を純水に溶解させる。あるいは、液体材料の一部が加水分解して発生したハロゲン等が純水に溶解、またはハロゲン化合物が加水分解等して溶解する。このとき、溶媒相への拡散速度あるいはハロゲン等の純水相への拡散速度が遅い混合液においては、攪拌手段による純水相と溶媒相の攪拌・混合処理を行うことによって、迅速な拡散・混合を行なうことが可能である。また、処理槽が加熱されることによって、純水相へのハロゲン等の移動が促進され、迅速な拡散・混合を行なうことが可能となることは上記の通りである。さらに、純水相と溶媒相との境界付近における混合処理は、ハロゲン等の純水相への移動効率に大きな影響を与えるとともに、水と液体材料との反応により生成した酸化物で懸濁液となっている場合には、境界付近における懸濁物質が不均一となり、拡散・混合機能の不安定要因ともなる可能性がある。こうした場合、本発明者の検証において混合液に超音波を照射することによって、ハロゲン等の純水相への移動機能の活性化を図ることが可能であることが判った。特に、反応によって生成した酸化物には、上記のようにハロゲン等を吸蔵する場合があり、超音波処理によって、混合液中の水分の活性化を図るとともに、ハロゲン等の純水相への移動の促進を図るとともに、高精度の測定が可能となった。
こうした機能は、個々に優れた効果を得ることができるとともに、これらを組み合わせることによって、さらに反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することが可能となり、測定の迅速化および後段の処理の安定化を図ることができる。つまり、両相の境界付近における穏やかな機械的攪拌処理を行うとともに、攪拌・混合処理時に混合液に超音波を照射することによって、一層均一な懸濁状態を形成して安定な拡散・混合機能を確保し、ハロゲン等の純水相への移動機能の活性化を図るとともに、高精度の測定が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る液体材料中のハロゲン濃度測定装置の1の構成例を示す概略図
【図2】本発明に係る液体材料中のハロゲン濃度測定装置の他の構成例を示す概略図
【図3】本発明に係るハロゲン濃度測定装置に備えられた処理槽の構成例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、液体材料中のハロゲン濃度測定装置(以下「本装置」という)であって、所定の容量を有する処理槽と、該処理槽内部がドライな不活性ガスによってパージされるパージ処理部と、該処理槽に純水が導入される水導入部と、前記液体材料が溶解可能な非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が導入される溶媒導入部と、不活性ガス雰囲気で導入された該非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相に前記液体材料が導入される試料導入部と、液体材料が非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相および純水の相に拡散・混合された混合液から蒸散する気相成分が供出されるガス供出部と、気相成分が供出された混合液中の純水の相を含む液相成分が供出される液供出部と、該液供出部から供出された該液相成分中のハロゲン成分が測定される分析部と、測定されたハロゲン成分から前記液体材料中のハロゲン濃度を算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
ここでいう「液体材料」は、不純物としてハロゲン等を含む液体材料であって、「自然発火性または禁水性物質」のうち有機金属化合物あるいはケイ素化合物を対象とする。一般に常温(20〜30℃)常圧(約0.1MPa)で液体であるが、ここでは、広く加圧条件下あるいは所定の温度条件下において液化された溶媒をも含む。具体的には、既述のように、DMZnやDEZnなどの有機亜鉛化合物等を挙げることができる。本装置は、従前困難であった低濃度のハロゲン等を含む液体材料を測定対象とする場合に有用である。
【0023】
<本装置の基本構成例>
図1は、本装置の1の構成例(第1構成例)を示す概略図であり、処理される液体材料が導入される処理槽10と、処理槽10で抽出された液体材料中のハロゲン等が測定される分析部20が設けられる。本装置では、槽内が加熱される加熱手段7と、純水相Wと溶媒相Sが攪拌される攪拌手段8と、さらに処理槽10からの液相成分が分析部20に導入されるまでの流路(供出路L6)に濾過手段30が設けられた例を示すが、液体材料あるいはハロゲン等の溶媒相や純水相における拡散速度が高く混合が容易な場合あるいは非水溶媒の蒸散が容易な場合には、加熱手段7あるいは攪拌手段8が設けられない構成も可能であり、液相成分中に固体成分や懸濁物質が存在しない場合には、濾過手段30が設けられない構成も可能である。処理槽10には、導入路L1と開閉弁V1を備え純水が導入される水導入部1と、導入路L2と開閉弁V2を備え非水溶媒が導入される溶媒導入部2と、導入路L3と開閉弁V3を備え液体材料が導入される試料導入部3と、導入路L4と開閉弁V4を備え不活性ガスが導入される不活性ガス導入部4と、供出路L5と開閉弁V5を備え気相成分が供出されるガス供出部5と、供出路L6と開閉弁V6を備えた液相成分が供出される液供出部6が設けられる。なお、本装置では、パージ処理部として、処理槽10内部のパージを行なう不活性ガスを不活性ガス導入部4から導入される構成を例示するが、処理槽10を含めた密閉可能な空間部(図示せず)を設け、その内部をパージして不活性ガス雰囲気を形成する構成とすることも可能である。こうした本装置を構成する各要素は、制御部40によって導入処理や供出・加熱・攪拌等の各操作が制御される。具体的には、開閉弁V1〜V6,加熱手段7や攪拌手段8の作動等が制御対象となる。なお、これら構成要素の配列や設置の要否については、図1の構成に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0024】
以下の説明においては、まず非水溶媒としてオクタン等水よりも低密度の物質を用いた場合を中心に述べ、水よりも高密度の物質を用いた場合については後述する。予め不活性ガス導入部4から導入された不活性ガスによってパージされた処理槽10内において、水導入部1から導入された純水と溶媒導入部2から導入された非水溶媒が、純水相Wを下層とし溶媒相Sを上層とする2相に分離された状態を形成する。処理槽10内溶媒相Sの上部空間Aには、不活性ガスが充填される。このとき、開閉弁V4,V5を開とし、導入路L4を介して不活性ガスを連続的に供給するとともに、供出路L5を介して供出することによって、非水溶媒の一部を蒸散させながら、常に清浄化されたパージ状態を確保することができる。こうした状態の処理槽10の上部から、試料導入部3を介して液体材料が上層の溶媒相Sに添加され、非水溶媒に溶解し、下層の純水相Wと共に混合液を形成する。このとき、液体材料は、直接純水相Wと接することなく溶媒相Sに取り込まれることから、発火や突沸等不測の事態を招く恐れはなく安定した状態を確保することができる。
【0025】
このとき、処理槽10に導入された純水,非水溶媒および液体材料の導入量は、正確に把握しておくことが必要である。後述するように、分析部20により測定されたハロゲン等の濃度から液体材料中のハロゲン濃度を算出する基準値となるためである。導入量は、各導入路L1〜L3に積算流量計および制御弁が設けて(図示せず)制御することが可能である。また、処理槽10に液面計を設けて(図示せず)順次導入量を測定することも可能である。
【0026】
処理槽10内に形成された混合液において、液体材料の溶媒相Sへの拡散・混合処理および液体材料やハロゲン等と純水との接触あるいは加水分解反応によるハロゲンの純水相Wへの拡散・混合処理が行われる。このとき、混合液は、必要に応じて攪拌手段8により攪拌・混合処理される。上記のように、静置状態でも液体材料あるいはハロゲン等の溶媒相Sや純水相Wにおける拡散速度が高く、混合が容易な場合には、攪拌手段8が設けられない構成も可能である。攪拌・混合処理は、純水相Wと溶媒相Sの境界付近において行なわれることが好ましい。非水溶媒に溶解した液体材料の一部が純水と接触することによって、以下のようにハロゲン等が純水に溶解する。
(i)液体材料中のハロゲン等が、純水に移動し溶解する。
(ii)純水と接触した液体材料の一部が加水分解し、そのときハロゲン等が純水に溶解する。
(iii)液体材料中のハロゲン化合物の加水分解等の反応よって生じたハロゲン等が、純水に溶解する。
また、純水相Wと溶媒相Sの接触は、両相の境界付近における攪拌を緩やかに行なうことが好ましい。溶媒相Sに溶解した液体材料が禁水性物質の場合においては、純水との激しい攪拌による接触の増大に伴い、急激な加水分解等による高温状態や局部的な反応による突沸等が発生するおそれがある。こうした穏やかな攪拌処理によって、液体材料の安定化を図りながら突発的な反応や反応の暴走を生じることなく、効率的にハロゲン等の純水への溶解処理を行なうことができる。また、境界付近での攪拌によって非水溶媒と純水の両方が微細化して懸濁状に混合し合うとともに、この状態が両相に拡散することによって、最も効率よく両相の混合処理を図ることができる。
【0027】
また、混合液は、必要に応じて処理槽10の外周に備えられた加熱手段7により加熱処理される。液温上昇に伴い、純水相Wへのハロゲン等の移動が促進されるとともに、例えばDMZnのような有機金属化合物を対象とし非水溶媒としてオクタンを用いた場合には、オクタンにより形成される溶媒相Sが混合液の上層に位置することとなり、非水溶媒が徐々に蒸散することから一層ハロゲン等の移動が促進される。このとき、蒸散した気相成分は、供出路L5を介して処理槽10から供出される。気相成分の移送は、加熱処理による処理槽10内における非水溶媒(液体材料を含む場合がある)の気化に伴う蒸気圧の上昇によるほか、不活性ガス導入部4から導入される不活性ガスをキャリアとすることが可能であり、また供出路L5の下流側に真空ポンプ(図示せず)を設けて吸引操作により行うことも可能である。
【0028】
拡散・混合処理あるいは必要に応じて所定時間攪拌処理及び加熱処理を行った後の処理槽10に残留した純水相Wの一部は、液相成分として制御弁V2を介して液供出部6から供出され、分析部20によって効率よく測定することができる。このとき、分析部20に導入されるまでの供出路L6に濾過手段30が設けられることが好ましい。液相成分中に固体成分や懸濁物質が存在しない場合には濾過手段30を設ける必要はないが、本装置は反応性の高い液体材料を対象とすることから、連続的に本装置を使用する場合には、分析部20での測定誤差要因を未然に除去するために濾過手段30を設けることが好ましい。また、濾過手段30の汚染状態を確認することで、処理槽10を含む処理系全体の汚染状況を確認することが可能となる。
【0029】
ここで、本装置に用いる「純水」としては、ハロゲン等がハロゲンイオンを形成し、イオンクロマトグラフィー等の測定において誤差要因となる不純物を含まない水をいい、一般にイオン交換水を用いることが好ましく、さらに本装置を半導体製造プロセスにおいて使用する場合には、超純水を用いることが好ましい。また、「非水溶媒」は、疎水性かつ反応性の乏しい溶媒が好ましく、液体材料によって任意に選択される。例えば、有機金属化合物に対しては、飽和炭化水素または芳香族炭化水素が好ましく、液体材料に対応した下表1に例示するような非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0030】
【表1】

【0031】
また、処理槽10およびこれに接続される流路および部材は、予めパージ処理部によって、ドライな不活性ガスによるパージ処理が行われる。不活性ガスとしては、例えば窒素やアルゴンのように水分等の不純物が少なく、入手が容易なガスが好ましい。不活性ガスは、予め設定した所定の供給流量となるように、圧力調整弁(図示せず)によって制御され、不活性ガス導入部4を介して処理槽10に導入される。導入された不活性ガスは、順次、分析部20等液体材料等(液相成分等を含む)の移送と同様の流路に給送されることによって、液体材料等が接する流路や部材をパージすることができる。このとき、流路や部材を加熱することによって、流路内壁に吸着している不純物を効果的にパージすることができる。
【0032】
〔処理槽の構成〕
処理槽10には、図1に例示するように、加熱手段7が設けられ、温度センサあるいは制御部とともに(図示せず)、ジャケットヒータやシーズヒータ等が処理槽10の内部あるいは外周部に配設される。また、処理槽10に導入される純水や非水溶媒および液体材料の量を正確に測定する方法として、各供給路L1〜L3に流量計を設ける構成や、液面計(図示せず)を設ける構成が挙げられる。特に反応性の高い液体材料や溶解性の強い溶媒等あるいは高い清浄性が要求される純水を供給路に液面計としては、例えば超音波式やフロート式等のセンサが用いられ、処理槽10の内部あるいは外周部に配設される。
【0033】
処理槽10の制御温度は、対象となる液体材料の特性および処理内容によって任意に設定される。例えば、液体材料の加水分解反応等に必要な温度条件、非水溶媒の蒸散必要な温度条件、あるいはハロゲン等の純水への溶解の促進が可能な温度条件を確保できる温度が好ましい。具体的には、非水溶媒が所定の蒸気圧を有するとともに純水相Wでの沸騰などの変化が生じない温度条件によって非水溶媒を蒸散させ、真空ポンプを用いて気相成分を構成する非水溶媒全量および液体材料の一部を移送することによって、純水相Wのみを処理槽10に残留させることができる。ただし、純水相Wからその一部を液相成分として供出する場合には、非水溶媒を蒸散させる必要はなく、液体材料の反応性あるいはハロゲン等の純水への溶解の促進が可能な温度条件に設定される。下表2に、本装置において使用される非水溶媒を例示し、合せてその沸点および密度を示す。
【0034】
【表2】

【0035】
また、処理槽10に設けられる攪拌手段8としては、特に制限はなく、市販の攪拌機の使用が可能であるが、本装置では、液体材料や非水溶媒の種類や導入量の変化がありうることから、それに対応可能な構成が好ましい。具体的には、図1に例示するような攪拌翼を先端部に有し、回転速度が制御可能なモータを有する攪拌機が好ましい。また、攪拌翼の位置は上下方向に任意に設定できる構造が好ましい。例えば、純水相Wと溶媒相Sの境界付近を中心に攪拌する場合であっても、水よりも密度の小さい非水溶媒と密度の大きな非水溶媒とではその境界の位置が異なるように、処理条件に合った構成が望まれる。
【0036】
〔分析部の構成〕
分析部20は、供出された液相成分中のハロゲン濃度の測定を行い、液体材料の適正な品質を確保するものである。具体的には、非常に低濃度のハロゲン濃度を精度よく測定することが要求されることから、イオンクロマトグラフィーを用いた分析部20が、制御部(図示せず)とともに配設される。イオンクロマトグラフィーは、イオン交換樹脂カラムにより連続的に分配された試料中のイオン成分を、検出器として電気伝導度検出器や吸光度検出器等を用い、測定対象の定性や定量を行うことができる。液相成分中に存在するハロゲンイオンを、半連続あるいは連続的に精度よく測定することができる。従前その測定方法が確立できなかった反応性の高い液体材料中の微量のハロゲン濃度の測定を、本装置では、上記のような構成を用い、分析部20としてイオンクロマトグラフィーを用いて測定することによって、半連続あるいは連続的に精度よく測定することが可能となった。
【0037】
〔本装置の他の構成例〕
また、本装置は、小規模なプロセスあるいはラボレベルでのハロゲン濃度測定においては、図2に例示するように、加熱手段7や攪拌手段30を備えず、上部に導入出部10aを備えた処理槽10を用いることができる。該導入出部10aから非水溶媒および純水を導入して上層に溶媒相Sおよび下層に純水相Wを形成した状態で、さらに少量の液体材料を上層の溶媒相Sに導入し液体材料を溶媒相Sに溶解させるとともに、該非水溶媒のみを蒸散させてハロゲン等の純水相への移動を促進させる処理を行うことによって、少量の試料に対応した反応性の高い液体材料中の微量のハロゲンを高感度かつ安全に測定することができる。各操作は、マニュアルあるいは自動を問わず、簡便な手法によって、液体材料を確実に溶媒相Sに溶解させ、ハロゲン等の純水相への移動処理を行うことができる。上層の非水溶媒の蒸散は、導入出部10aからの減圧による吸引方法,不活性ガスを導入した移送方法,あるいは処理槽10の加熱による供出方法等を用いることができる。詳細な手順は、後述する<ハロゲン濃度測定方法>において述べる。
【0038】
さらに、液体材料あるいはこれに含まれるハロゲン等の加水分解によって酸化物等の懸濁物質が発生する可能性のある場合には、混合液に超音波を照射することが好ましい。混合液中の水分の活性化を図るとともに、懸濁物質に吸蔵されるハロゲン等の純水相Wへの移動の促進を図ることができる。具体的に本装置においては、図3に例示するように、処理槽10に超音波処理手段9が設けられ混合液に超音波が照射される。例えばDMZnを対象とした場合、水との反応により酸化亜鉛が生成する。こうした酸化物の微粒子は、水と攪拌・混合されることによって懸濁液となるとともに、一般に攪拌処理される両相の境界付近において懸濁物質が不均一となり、拡散・混合機能の不安定要因ともなる可能性がある。また、加水分解によって発生した塩素等が酸化亜鉛に吸蔵されることによって、純水相W中に溶出されるべき塩素等の総量が減少し、分析部20での測定値が、正確に測定対象となる液体材料中の塩素等と一致しなくなる。本装置は、攪拌・混合処理し蒸散処理された後の混合液に超音波を照射することによって、純水相Wの水分子の活性を図り均一な懸濁状態を形成して安定な拡散・混合機能を確保し、ハロゲン等の純水相Wへの移動機能の活性化を図ることが可能となる。従って、分析部20において高い信頼性のある測定値をえることができる。
【0039】
超音波処理手段9は、超音波発生手段と制御手段からなり(図示せず)、一般に超音波発生手段としては、圧電セラミックの振動を利用する圧電方式、2電極間の放電現象を利用する放電方式あるいは電磁誘導による斥力を利用する電磁誘導方式等がある。特に限定されないが、本装置では、比較的少量の液体材料を迅速に処理する必要があることから、小型の圧電セラミック振動子を備えた圧電方式を用いた超音波発生手段が好ましい。また、図2のような構成においても、例えば超音波処理手段9の上部に処理槽10を設置することによって同様の子かを得ることができる。
【0040】
<本装置における液体材料中のハロゲン濃度測定方法>
上記のような構成を有する本装置においては、以下の1次〜3次の処理プロセスに沿って、液体材料中のハロゲン濃度測定が行われる。各プロセスについて、主に、図1に示す構成(第1構成例)に基づき制御部40によって制御される場合を、例として説明する。ここで、〔1〕1次処理プロセスは、予備的処理操作であり、〔2〕2次処理プロセスは、処理槽10において処理操作が行われ、〔3〕3次処理プロセスは、分析部20において測定操作が行われる。各プロセスの処理時間は、処理槽10その他流路の内容積および液体材料や非水溶媒の種類および使用条件によって異なるが、反応性の高い物質を扱う本装置においては、処理内容の確定とともに予め設定し制御部40によって自動的に処理を行うことが好ましい。
【0041】
〔1〕1次処理プロセス
1次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(1)予め処理槽10内部が、ドライな不活性ガスによってパージされる。
具体的には、開閉弁V4を開とし、所定の供給圧力に調整された不活性ガスが、導入路L4を介して処理槽10に導入される。排出路については、特に限定されないが、処理後の供出路L5からの供出以外に、開閉弁6を開とし供出路L6から不活性ガスが供出するように制御して液供出部6を介して分析部20までパージすることが好ましい。同様に必要に応じて、各導入部あるいは供出部のパージを行なうことができる。ただし、予めドライな不活性ガスによってパージされた空間(図示せず)に、処理槽10が設けられ、以下の操作を不活性ガス雰囲気で行なうことも可能である。
【0042】
(2)所定時間パージされた処理槽10に、所定量の純水と、所定量の非水溶媒が導入される。
具体的には、開閉弁V1,V2を開とし、所定量の純水,非水溶媒が、導入路L1,L2を介して処理槽10に導入される。このとき、所定時間静置されることによって、2相に分離された状態が形成され、水よりも低密度の非水溶媒が用いられた場合には、溶媒相Sが上層に形成される。導入量は、既述のように積算流量計あるいは液面計等によりモニタされ、予め設定された量に制御されることが好ましい。ここで、水よりも高密度の非水溶媒、例えば二硫化炭素を用いた場合には、導入部1,2の位置関係は上下逆とすることで同様に導入される。
【0043】
〔2〕2次処理プロセス
2次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(3)所定量の液体材料が、処理槽10内の溶媒相Sに導入され、処理槽10内に混合液が作製される。
具体的には、開閉弁V3を開とし、所定量の液体材料が、導入路L3を介して処理槽10に導入される。このとき、水よりも低密度の非水溶媒が用いられた場合には、図1のように処理槽10の内上部から滴下あるいは導入路L3の先端を溶媒相S内まで到達されて導入されることによって、2相に分離された状態が維持される。導入量は、既述のように積算流量計あるいは液面計等によりモニタされ、予め設定された量に制御されることが好ましい。ここで、水よりも高密度の非水溶媒を用いた場合には、導入路L3をさらに処理槽10の内底部まで伸ばし、その先端が純水相Wの下層にある溶媒相S内まで到達することで同様に導入される。
【0044】
(4)作製された混合液において、液体材料が、非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相および純水の相に拡散・混合される。
具体的には、上記(3)の状態で所定時間静置することによって、液体材料の安定化を図ることができる一方、徐々に拡散・混合され、両相の境界付近において、非水溶媒に溶解した液体材料の一部が純水と接触して液体材料中のハロゲン等が純水に溶解する。また、拡散速度が遅い混合液(溶媒相Sへの拡散速度あるいはハロゲン等の純水相Wへの拡散速度が遅い混合液)においては、開閉弁V1〜V3を閉とし、攪拌手段8を稼動させることによって、純水相Wと溶媒相Sの境界付近での攪拌・混合処理が行うことが好ましい。比較的低速で穏やかな攪拌操作を行うことによって、境界付近において非水溶媒に溶解した液体材料の一部が純水と接触し、既述のようにハロゲン等が純水に溶解して液相成分を形成することができる。また、非水溶媒と純水の両方が微細化して懸濁状に混合し合う状態が両相に拡散することによって、最も効率よく両相の混合処理を図ることができる。つまり、液体材料の安定化を図りながら突発的な反応や反応の暴走を抑制できるとともに、同時に、溶媒相Sにおいては非水溶媒と液体材料との混合および溶媒相S内での物質移動が促進され、溶媒相S内での液体材料の混合の均一化が進むとともに、純水相Wとの境界におけるハロゲン等の減少を補充する物質移動が促進される。一方、純水相Wにおいても、境界付近で生成されイオン化したハロゲンイオンが、攪拌によって純水相W内で移動し、ハロゲンイオンが少ない純水と液体材料との接触が促進され、純水相W内でのハロゲンイオンの均一化が進むとともに、純水相Wとの境界におけるハロゲン等の増加を抑制する物質移動が促進される。こうした現象は、両相が渾然として混合された場合には得ることができない本処理操作固有の機能である。またこうした効果は、純水相Wと溶媒相Sの上下の位置関係に影響を受けるものではない。また、液体材料の加水分解によって酸化物等の微細粒子の発生がある場合であっても、穏やかな攪拌によって、非水溶媒と純水の両方が懸濁状に混合し合う状態と同様の状態を形成し、比重の大きな微細粒子の下降を伴う拡散が進行し、粒子同士の凝縮による粒子の拡大を抑制することができる。
【0045】
(5)予め設定された圧力条件において、該混合液から蒸散する気相成分が処理槽10から供出される。
具体的には、開閉弁V5を開とすることによって、処理槽10の内部圧力を所定の値にすることができ、気相成分の供出路L5を確保するとともに、非水溶媒の蒸散の促進を図ることができる。これによって、さらにハロゲンの純水相Wへの移動の促進を図ることができる。また、減圧手段(図示せず)を用いて処理槽10の上部空間Aを減圧し、第2構成例のように導入出路10aから、あるいは第1構成例にあってはガス供出部5から、蒸散した気相成分を吸引排出することも可能である。ここで、水よりも密度の小さな非水溶媒を用いた場合、蒸散した気相成分を吸引排出することによって一層非水溶媒の蒸散を促すことができ、液相成分として殆ど純水相Wからなる液相成分を形成することができる。これによって分析部20でのハロゲン等の精度の高い測定が可能となる。
【0046】
さらに、水よりも密度の小さな非水溶媒を用いた場合、気相成分の蒸散を促進するために、加熱手段7によって処理槽10が加熱され、予め設定された温度に制御されることが好ましい。加熱処理によって、液温上昇に伴う純水相Wへのハロゲン等の移動の促進と非水溶媒の蒸散による一層ハロゲン等の移動の促進を図ることができる。また、水よりも密度の大きな非水溶媒を用いた場合には、上層の純水相Wからの水の蒸散を抑え、純水相Wへのハロゲン等の移動の促進を図る範囲での加熱温度に制御することが好ましい。水の蒸散の抑制により、分析部20での測定精度を維持することができる。なお、ここでは、攪拌処理後に加熱処理を行うプロセスを例示したが、攪拌・混合処理中に加熱処理を行うことが好ましい。ただし、水よりも低密度で低沸点の非水溶媒を用いた場合や混合液内での拡散速度が速い場合には、こうした加熱手段7を用いる(設ける)必要はない。
【0047】
また、水よりも密度の小さな非水溶媒を用いた場合、攪拌・混合処理と同時に、あるいは加熱処理と同時に、あるいはこれらの同時処理と同時に、ドライな不活性ガスがキャリアガスとして処理槽10に導入され、気相成分の供出処理を行うことが可能せある。具体的には、開閉弁V4,V5を開とし、導入路L4から不活性ガスを処理槽10に導入することによって、キャリガスとして蒸散する非水溶媒を同伴し、連続的に供出路L5から供出させることによって、一層純水相Wへのハロゲン等の移動が促進される。
【0048】
(6)所定時間気相成分を供出した後、純水相Wの液相成分が供出される。
上記(4),(5)の処理プロセスによって、水よりも密度の小さな非水溶媒を用いた場合にあっては、非水溶媒の蒸散により純水を主成分とし安定化された液相成分が形成される。つまり、こうした液相成分を測定することによって含有するハロゲン濃度の測定精度の向上を図ることができる。具体的には、開閉弁V6を開とすることによって、液相成分が供出路L5を介して分析部20に給送することができる。このとき、液体材料が、DMZnのように加水分解によって水に不溶な酸化物が発生する物質である場合には、分析部20までの供出路Lに設けられた濾過手段30によって、こうした測定の誤差要因となる物質を除去することが好ましい。
【0049】
このとき、液体材料あるいはこれに含まれるハロゲン等の加水分解によって酸化物等の懸濁物質が発生する可能性のある場合には、上記攪拌等の処理後の混合液あるいは蒸散処理された後の液相成分に対して超音波が照射されることが好ましい。混合液あるいは液相成分中の水分の活性化を図るとともに、懸濁物質に吸蔵されるハロゲン等の純水相Wへの移動の促進を図ることができる。つまり、懸濁物質による拡散・混合機能の不安定化を防止するとともに、液体材料中あるいは加水分解によって発生した塩素等の懸濁物質への吸蔵を防止することによって、純水相Wへ溶出されるべき塩素等の総量を確保し、正確に測定を可能とすることができる。
【0050】
〔3〕3次処理プロセス
3次処理プロセスは、以下のプロセスからなる。
(7)供出された液相成分が、分析部20に導入され、液相成分中のハロゲン成分が測定される。
具体的には、開閉弁V6,供出路L6を介して、供出された液相成分が、イオンクロマトグラフィーを用いた分析部20に導入される。純水を溶媒として使用することができることから、測定基準(純水のみ)が安定でかつ明確となるとともに、カラムの選定や前処理を非常に簡便なものとすることが可能となった。ただし、第2構成例のように、蒸散した非水溶媒の大半を導入出路10aから排出した場合には、残留した液相成分をそのまま測定することも可能である。
【0051】
(8)測定されたハロゲン成分から液体材料中のハロゲン濃度を算出する。
上記(7)において分析部20によって測定されたハロゲン成分Ciは、分析部20に導入された液相成分の導入量Qaに対応する値であり、所定の演算処理を行い液体材料中のハロゲン濃度Coを算出する必要がある。具体的には、演算に必要なパラメータを、イオンクロマトグラフィーにより検出されたハロゲンイオンのイオン量Ci,イオンクロマトグラフィーに導入された液相成分の導入量Qa,該液相成分中のハロゲン濃度Ca,処理槽10に導入された液体材料の導入量Qsおよび処理槽10に導入された純水の導入量Qwとし、液体材料中のハロゲンが略全量液相成分中に移動したと仮定すれば、下式1,2の通りとなる。
Ca=Ci/Qa … 式1
Co≒k*(Ca*Qw)/Qs … 式2
ここで、kは、ハロゲンの移動係数(≦1)を示す。
実際の装置においては、予めハロゲン濃度が既知の液体材料を準備し、本処理プロセスに従い操作した結果を基に、その処理プロセスにおけるハロゲンの移動係数kを求めることができる。こうして演算されたハロゲン濃度を基に、液体材料の品質が検定され、規定の濃度以下であることを保証して高純度が要求される半導体プロセス向け液体材料を供給することが可能となった。
【0052】
〔本装置における測定精度の検証〕
本装置における測定精度の検証として、第2構成例の装置を用い、液体材料DEZnを対象とし、純水および非水溶媒としてn−オクタン,分析部にイオンクロマトグラフィーを用いた場合の測定精度を以下の通り検証した。
【0053】
(a)本装置を用いた検証
(a−1)処理槽における測定条件
超純水10mlと高純度(塩素濃度10ppb以下)のn−オクタン15mlを清浄なポリプロピレン製容器に入れる。水分濃度10ppm以下、酸素濃度5ppm以下のNガス雰囲気下でDEZnを0.5ml採取し、上記の超純水とn−オクタン混合液(下層の純水相と上層のn−オクタン相に分離している)中のn−オクタン相に滴下する。ゆっくりと攪拌することによりn−オクタンに溶解したDEZnを超純水と徐々に接触させ、加水分解する。加水分解反応が終了すると、上層にn−オクタン相、下層に塩素の溶解した純水相、固体となった酸化亜鉛からなる混合液が形成される。この混合液をN雰囲気下で減圧することにより、蒸気圧の高いオクタンのみを蒸発させる。残った酸化亜鉛と水の懸濁液は30分間超音波処理をして均一化した後、ディスクフィルターつきシリンジを用いてろ過する。ろ液中の塩素イオン濃度を、イオンクロマトグラフィーを用いて測定することにより、DEZn中の塩素濃度を求める。
【0054】
(a−2)実験結果
下表3に、2つの異なる試料ジエチル亜鉛中の塩素濃度を測定した結果を示す。いずれも、検出下限値1ppmとする高精度の測定が可能となり、著しく改善することができた。
【0055】
【表3】

【0056】
(b)従来装置を用いた検証
(b−1)処理槽における測定条件
不活性気体中で純水に直接ジエチル亜鉛を滴下することにより加水分解し、得られた水溶液中の塩素イオン濃度をイオンクロマトグラフィーにより分析する方法を用いて分析した。
【0057】
(b−2)実験結果
下表4に、2つの異なる試料ジエチル亜鉛中の塩素イオン濃度を測定した結果を示す。加水分解反応では多量の発煙・発熱が見られたことから、上記(a)の方法に比べてジエチル亜鉛採取量を少なくせざるを得ず、これが検出下限値の上昇を招いた。また、発熱に伴い、加水分解反応に用いた純水が急激に蒸発したことから一部のサンプルでは塩素濃度が濃縮する現象がおき、検出濃度のばらつきが大きい結果となった。
【0058】
【表4】

【符号の説明】
【0059】
1 水導入部
2 溶媒導入部
3 試料導入部
4 不活性ガス導入部
5 ガス供出部
6 液供出部
7 加熱手段
8 攪拌手段
9 超音波処理手段
10 処理槽
10a 導入出路
20 分析部
30 濾過手段
40 制御部
A 上部空間
L1〜L4 導入路
L5,L6 供出路
S 溶媒相
V1〜V6 開閉弁
W 純水相


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物としてハロゲンあるいはハロゲン化合物を含む液体材料であって、自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物を対象とする該液体材料中のハロゲン濃度測定方法であって、
以下のプロセスからなる1次処理プロセスと、
(1)所定の容量を有する処理槽内部が、予めドライな不活性ガスによってパージされるプロセス
(2)所定時間パージされた処理槽に、所定量の純水と、前記液体材料が溶解可能な所定量の非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が導入されるプロセス
以下のプロセスからなる2次処理プロセスと、
(3)所定量の前記液体材料が、該処理槽内の非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相に導入され、混合液が作製されるプロセス
(4)該混合液において、液体材料が、非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相および純水の相に拡散・混合されるプロセス
(5)予め設定された圧力条件において、該混合液から蒸散する気相成分が前記処理槽から供出されるプロセス
(6)所定時間気相成分を供出した後、前記純水の相の液相成分が供出されるプロセス
以下のプロセスからなる3次処理プロセスと、
(7)供出された液相成分が前記分析部に導入され、液相成分中のハロゲン成分が測定されるプロセス
(8)前記ハロゲン成分から前記液体材料中のハロゲン濃度を算出するプロセス
を有することを特徴とする液体材料中のハロゲン濃度測定方法。
【請求項2】
前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が、前記液体材料が溶解可能で、かつ水よりも低密度の溶媒であり、
前記1次処理プロセスにおいて、
(2a)前記処理槽の下層の純水の相と、上層の前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相による2相に分離された状態が形成されるとともに、
前記2次処理プロセスにおいて、
(5a)前記処理槽内の気相成分が減圧手段によって吸引され、前記混合液の上層を形成する前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が蒸散され、前記純水の相を主とする液相成分が残留し、
前記3次処理プロセスにおいて、
(7a)残留した液相成分が前記分析部に導入される
ことを特徴とする請求項1記載の液体材料中のハロゲン濃度測定方法。
【請求項3】
前記2次処理プロセスにおいて、
(5b)ドライな不活性ガスがキャリアガスとして処理槽に導入され、前記混合液からの蒸散および気相成分の供出処理を行われる
ことを特徴とする請求項1または2記載の液体材料中のハロゲン濃度測定方法。
【請求項4】
前記液体材料として、不純物として塩素あるいは塩素化合物を含む有機亜鉛化合物を対象とし、前記非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒として、水よりも低密度の脂肪族炭化水素とするとともに、
前記2次処理プロセスにおいて、
(5c)前記蒸散処理された非水溶性有機溶媒の多くが気相成分として供出され、
(5d)蒸散処理後の混合液に対して超音波が照射される超音波処理が行われ、
(6a)超音波処理され、前記処理槽から供出された前記液相成分が濾過処理された後、
前記3次処理プロセスにおいて、
(7a)分析部としてイオンクロマトグラフィーを用いて測定される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体材料中のハロゲン濃度測定方法。
【請求項5】
不純物としてハロゲンあるいはハロゲン化合物を含む液体材料であって、自然発火性または禁水性物質である有機金属化合物あるいはケイ素化合物を対象とする該液体材料中のハロゲン濃度測定装置であって、所定の容量を有する処理槽と、該処理槽内部がドライな不活性ガスによってパージされるパージ処理部と、該処理槽に純水が導入される水導入部と、前記液体材料が溶解可能な非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒が導入される溶媒導入部と、不活性ガス雰囲気で導入された該非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相に前記液体材料が導入される試料導入部と、液体材料が非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相および純水の相に拡散・混合された混合液から蒸散する気相成分が供出されるガス供出部と、気相成分が供出された混合液中の純水の相を含む液相成分が供出される液供出部と、該液供出部から供出された該液相成分中のハロゲン成分が測定される分析部と、測定されたハロゲン成分から前記液体材料中のハロゲン濃度を算出する演算部と、を備えることを特徴とする液体材料中のハロゲン濃度測定装置。
【請求項6】
前記混合液に対して純水の相と非水溶性の有機溶媒あるいは無機溶媒の相を攪拌・混合する攪拌手段、前記処理槽に設けられ処理槽内あるいは混合液を加熱する加熱手段、前記処理槽に設けられ混合液に超音波を照射する超音波処理手段、のいずれかあるいはそのいくつかの組合せた処理手段を有することを特徴とする請求項5記載の液体材料中のハロゲン濃度測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−2591(P2012−2591A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136271(P2010−136271)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】