説明

液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法

【課題】液体柔軟剤組成物にアルコール香料を用いるにあたって、30℃近傍での保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する方法の提供。
【解決手段】下記(a)成分、香料組成物及び水を含有する液体柔軟剤組成物において、香料組成物として下記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2〜3質量%となるように用いる、液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
(a)成分;エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14〜22の炭化水素基を有する第3級アミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる1種以上の化合物
(b)成分:(b1)総炭素数8〜10のアルコール香料、(b2)総炭素数12〜16のアルコール香料及び(b3)logPが3.0〜9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)を含有し、(b1)/(b2)質量比=0.2〜1、(b3)/〔(b1)+(b2)+(b3)〕質量比=0.6〜0.95の香料組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の液体柔軟剤組成物では、仕上がった衣類から発する香りが持続することが望まれている。高い残香性を実現する技術として、logPが3以上の持続性香料を特定量含有する香料組成物を用いることが提案されている(特許文献1)。logPが3以上の持続性香料の香調は、一般的に重厚でしっかりした香りが多い。しかしながら、消費者は爽やかでフレッシュな香りも求めている。爽やかでフレッシュな香調を実現するためには、アルコール香料の使用が不可欠である。
【0003】
一方、香料を配合することで、液体柔軟剤組成物の凍結復元時の粘度安定性や、高温保存時の粘度安定性が損なわれることが知られている(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−504994号公報
【特許文献2】特開2010−47851号公報
【特許文献3】特開2010−47853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衣類に高い香り持続性を賦与し、且つ爽やかでフレッシュな香りも賦与するために、logPが3以上の香料成分とアルコール香料とを含有する香料組成物を用いることが考えられるが、本発明者らは、アルコール香料を含有させると、液体柔軟剤組成物の粘度増加(以下、増粘と称する)の問題が生じることを見出した。かかる液体柔軟剤組成物の増粘の問題は、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14〜22の炭化水素基を有するアミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる柔軟基剤を含有する液体柔軟剤組成物にみられ、とりわけ夏季において日常的に発生し得る30℃近傍(即ち、30±3℃)の保存条件下で顕著となることを見出した。
【0006】
特許文献1には香りの持続性に関する課題は記載があるものの、爽やかでフレッシュ感のあるアルコール香料を使用する際に、30℃近傍での保存条件下において液体柔軟剤組成物の増粘が起こるという課題に関しては何ら示唆がない。特許文献2及び特許文献3をみても、アルコール香料の使用に伴う、30℃近傍での保存条件下における増粘の課題は想起されない。特許文献2の実施例に示される、液体柔軟剤組成物を凍結させる保存条件は、北海道などの一部地域で冬季の極寒時の特定環境下で想定される保存条件である。また、特許文献3の実施例に示される、40℃で6ヶ月保存するという保存条件に関しては、日常的には連続して発生していない。本発明者らは、種々検討の結果、エステル基又はアミド基で分断されている炭素数14〜22の炭化水素基を有するアミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる柔軟基剤を含有する液体柔軟剤組成物において、アルコール香料を使用すると、40℃保存下では増粘が少なくても、30℃近傍での保存下において増粘の問題が顕著となることを見出した。ここ数年、夏季においては30℃近傍の気温が日常的に長期間継続することを鑑みれば、このような保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する技術が望まれる。
【0007】
即ち、本発明の課題は、爽やかでフレッシュ感のある香りを衣類に賦与するために液体柔軟剤組成物にアルコール香料を用いるにあたって、30℃近傍での保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14〜22の炭化水素基を有するアミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる柔軟基剤を含有する、アルコール香料に感受性の高い液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法であって、アルコール香料を含有させるに際し、1)1分子の総炭素数が8〜10のアルコール香料、2)1分子の総炭素数が12〜16のアルコール香料、及び3)logPが3.0〜9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)を特定量比にて含有する香料組成物を使用することで、30℃近傍の保存条件下においても液体柔軟剤組成物の増粘を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記(a)成分、香料組成物及び水を含有する液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法であって、前記香料組成物として下記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2〜3質量%となるように用いる、液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法を提供する。
(a)成分:窒素原子に結合する基のうち1〜3個が、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14〜22の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である第3級アミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる1種以上の化合物
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2〜1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6〜0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8〜10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12〜16のアルコール香料
(b3)成分:logPが3.0〜9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、夏季において日常的に発生し得る30℃近傍の温度域で保存する場合にも増粘の問題を呈さず、爽やかでフレッシュ感のある香りを衣類に賦与できる液体柔軟剤組成物を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の構成に関し詳細に述べる前に、以下の用語の意味に留意されたい。即ち、本発明において「アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物」とは、アルコール香料を含有することで、30℃近傍(即ち、30±3℃)での保存により増粘する性質を有する液体柔軟剤組成物を表す。
【0012】
ここで、30℃近傍での保存により増粘するという課題に直面した当業者は、多様な思考を行い、増粘を引き起こした原因を解析し、解決策を探索するであろう。そのような機会において、当業者が増粘の原因の一つとして香料に疑いを抱いた場合、対象となる液体柔軟剤組成物がアルコール香料に感受性か否かを判断することは課題解決にあたっての重要な指針となる。
【0013】
本発明においては、下記評価方法において、算出式(1)で求められる値が3.0以上の場合に、液体柔軟剤組成物がアルコール香料に感受性であるとする。
【0014】
<アルコール香料に対する液体柔軟剤組成物の感受性の評価方法>
評価の対象となる液体柔軟剤組成物に使用している香料組成物の代わりに、リモネン又はテルピネオール(アルコール香料)を使用し、液体柔軟剤組成物(1)及び(2)を調製する。
次いで、液体柔軟剤組成物(1)及び(2)の温度が30±3℃の温度範囲になるようにウォーターバスで調温し、実施例記載の粘度測定方法に従って粘度を測定する(尚、「所定時間」は1時間とした)。粘度測定値を、下記の算出式(1)に代入し、求められた値が3.0以上であるとき、試験された液体柔軟剤組成物はアルコール香料に感受性であると判定した。
・液体柔軟剤組成物(1):香料としてリモネンを0.8質量%含有する液体柔軟剤組成物。初期粘度をA1、30±3℃で14日保存後の粘度をB1とする。
・液体柔軟剤組成物(2):香料としてテルピネオール(アルコール香料)を0.8質量%含有する液体柔軟剤組成物。初期粘度をA2、30±3℃で14日保存後の粘度をB2とする。
・算出式(1):(B2/A2)/(B1/A1)
【0015】
以下、本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法に用いる(a)成分及び(b)成分に関し説明する。
【0016】
<(a)成分>
(a)成分は、窒素原子に結合する基のうち1〜3個が、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14〜22の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である第3級アミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる1種以上の化合物である。
【0017】
(a)成分の好適な具体例としては、下記一般式(1a)の構造を有する第3級アミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0018】
【化1】

【0019】
〔一般式(1a)中、R1aは炭素数12〜20の炭化水素基、好ましくは炭素数15〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、Xは−O−及び−NH−から選ばれる基であり、R2aはエチレン基又はプロピレン基である。R3a、R4aは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基、H−X−R2a−又はR1a−CO−X−R2a−で示される基である。分子内に複数個存在するR1a、R2a及びXは同一でも異なっていても良い。〕
【0020】
一般式(1a)で表される化合物は、例えば下記一般式(2)で表されるアミン化合物(a1)と、炭素数12〜20の脂肪酸又は脂肪酸低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステル(a2)とのエステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応により得ることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
〔式中、Xは−O−及び−NH−から選ばれる基であり、R2aはエチレン基又はプロピレン基である。R5a、R6aは、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基又はH−X−R2a−で示される基である。分子内に複数個存在する炭素数1〜3のアルキル基、R1a、R2a及びXは同一でも異なっていても良い。〕
【0023】
一般式(2)で表されるアミン化合物(a1)の好ましい具体例としては、特に制限されるものではないが、N−メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチル−N−(3−アミノプロピル)アミン等が挙げられる。特に本願の効果をより享受できる化合物としてN−メチルジエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミンが好ましく、より好ましくはN−メチルジエタノールアミンである。
【0024】
一般式(1a)で表される化合物の製造に用いられる上記(a2)成分に関しては、種々の炭素数範囲及び飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸の質量比率を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを得るために、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸や脂肪酸低級アルキルエステルを用いることが出来る。また、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、又は蒸留操作、ボトムカット、トップカットによる炭化水素鎖長の調整、あるいは異なる炭化水素鎖長の複数の脂肪酸や脂肪酸低級アルキルエステルを混合して得ることもできる。
【0025】
(a2)成分の具体例としては、特に制限されるものではないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、又はオレイン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪酸又はその低級アルキルエステル;牛脂、豚脂、パーム油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の天然油脂を分解・精製して得られる脂肪酸又はその低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル);並びにこれらの硬化脂肪酸、部分硬化脂肪酸又はそれらの低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル)等を挙げることができる。
【0026】
(a2)成分としては、特に制限されるものではないが、炭素数12〜20、好ましくは炭素数16〜20の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜3)が好適であり、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0027】
エステル化反応、アミド化反応又はエステル交換反応において、前記アミン化合物(a1)のヒドロキシ基、1級アミノ基及び2級アミノ基の合計モル数と、脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステル(a2)とのモル比、〔(a1)のヒドロキシ基、1級アミノ基及び2級アミノ基の合計モル数〕/〔(a2)のモル数〕は、好ましくは1/0.45〜1/1であり、より好ましくは1/0.5〜1/0.98、更に好ましくは1/0.85〜1/0.95である。
【0028】
第3級アミンの酸塩としては、無機酸及び有機酸で中和された酸塩が挙げられる。好適な無機酸としては、塩酸、硫酸が挙げられる。好適な有機酸としては、炭素数1〜7の1価又は2〜3価の多価のスルホン酸が挙げられる。より好ましくはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸である。他の好適な有機酸として炭素数1〜7の1価又は2〜3価の多価のカルボン酸が挙げられる。より好ましくは、グリコール酸、クエン酸、乳酸である。
【0029】
4級化反応に用いる4級化剤としては、炭素数1〜3のアルキルハライド及びジアルキル硫酸エステル(アルキル基の炭素数は1〜3)を好適に用いることができる。炭素数1〜3のアルキルハライドとしては、特に制限はないが、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチルが挙げられる。ジアルキル硫酸エステルとしては、ジメチル硫酸エステル、ジエチル硫酸エステルが挙げられる。
【0030】
<(b)成分>
(b)成分は、下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2〜1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6〜0.95である香料組成物である。
(b1)成分:1分子の総炭素数が8〜10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12〜16のアルコール香料
(b3)成分:logPが3.0〜9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
【0031】
(b1)乃至(b3)成分としては、例えば「香料と調香の基礎知識」、(産業図書株式会社、中島基貴編著、2006年4月20日第4刷)に記載の化合物を用いることができる。
【0032】
(b1)成分
(b1)成分は、1分子の炭素数が8〜10のアルコール香料であり、下記(b2)成分と共に衣類に爽やかでフレッシュな香りを賦与することができる。とりわけ(b1)成分は、衣類により爽やかでフレッシュな香りを賦与することができる。
【0033】
衣類により爽やかでフレッシュ感のある香りを賦与する観点から、(b1)成分としては、1分子の総炭素数が10のアルコール香料が好ましい。アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物において、増粘抑制効果をより享受し得る観点からも、(b1)成分としては、1分子の総炭素数が10のアルコール香料が好ましい。衣類により爽やかでフレッシュ感のある香りを賦与する反面、アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物において、より増粘を引き起こし易い香料として、1分子の炭素数が10で、且つ脂環式アルコール香料、テルペン系/セスキテルペン系アルコール香料及び芳香族アルコールから選ばれるアルコール香料が好ましい。
【0034】
特に限定するものではないが、(b1)成分の好適な具体例を以下に示す。
・1分子の総炭素数が8のアルコール香料:Trans-2-hexenol、Cis-3-hexenol、3-Octanol、1-Octen-3-ol、2-Phenylethanol;
・1分子の総炭素数が9のアルコール香料:2,6-Dimethyl-2-heptanol、9-Decenol、Trans-2-cis-6-nonadien-1-ol;
・1分子の総炭素数が10のアルコール香料:
脂環式アルコール香料:4-Isopropylcyclohexane-methanol、p-tert-Butylcyclohexanol、o-tert-Butylcyclohexanol
テルペン系/セスキテルペン系アルコール香料:Linalool、 Geraniol、 Nerol、 Citronellol、Myrcenol、Lavandulol、Tetrahydrogeraniol、Hydroxy citronellol、Tetrahydrolinalool、Dihydro myrcenol、Allo-ocimenol、α-Terpineol、Terpinen-4-ol、l-Menthol、Borneol、Iso-pulegol
芳香族アルコール:α,α-Dimethylbenzyl carbinol、Thymol、Carvacrol、Eugenol、Isoeugenol
【0035】
(b2)成分
(b2)成分は、1分子の総炭素数が12〜16のアルコール香料であり、前記(b1)成分と共に衣類に爽やかでフレッシュな香りを賦与することができる。(b2)成分はさらに、(b1)成分と特定の質量比にて併用することで、アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物において、30℃近傍の保存条件下における増粘を抑制することができる。
【0036】
アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物において、30℃近傍の保存条件下における増粘を抑制する効果の観点から、(b2)成分としては、1分子の総炭素数が13〜16のアルコール香料が好ましく、1分子の総炭素数が13〜15のアルコール香料がより好ましい。また、30℃近傍の保存条件下における増粘を抑制する効果の観点から、1分子の炭素数13〜15で、且つ脂肪族アルコール、脂環式アルコール香料及び分子内に2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル基を有するアルコール香料から選ばれるアルコール香料が好ましい。
【0037】
特に限定するものではないが、(b2)成分の好適な具体例を以下に示す。
・1分子の総炭素数が12のアルコール香料:2,2-Dimethyl-3-(3-methylphenyl)-propanol、Phenylethylmethylethylcarbinol、3-Methyl-5-phenyl-1-pentanol、3,7-Dimethyl-7-methoxyoctan-2-ol、3,7-Dimethyl-7-methoxyoctan-2-ol;
・1分子の総炭素数が13〜15の脂肪族アルコール香料(〔 〕内の数字は炭素数を表す):Farnesol〔15〕、Bisabolol〔15〕、Cedrol〔15〕、Patchouli alcohol〔15〕、Nerolidol〔15〕、Vetiverol〔15〕;
・1分子の総炭素数が13〜15の脂環式アルコール香料(〔 〕内の数字は炭素数を表す):Ambrinol〔13〕、1-(2,2,6-Trimethylcyclohexyl)-3-hexanol〔15〕;1-(2-Tert-butylcyclohexyl)-2-butanol(Amber core) 〔14〕、α,β,2,2,6-Pentamethylcyclohexylpropanol〔14〕;
・1分子の総炭素数が13〜15で、且つ分子内に2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル基を有するアルコール香料(〔 〕内の数字は炭素数を表す):Sandalmysore core〔13〕、Brahmanol〔13〕、Ebanol〔14〕、Sandalore〔14〕、2-ethyl-4-(2,2,3-trimethyl-3-cyclo-penten-1-yl)-2-buten-1-ol(Bacdanol) 〔14〕、Polysantol〔15〕;
・1分子の総炭素数が15の合成サンダル:Santalol;
・1分子の総炭素数が16のアルコール香料:Isobonyl cyclohexanol
【0038】
(b3)成分
(b3)成分は、logPが3.0〜9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)であり、(b1)成分及び(b2)成分と特定の質量比にて併用することで、(b1)成分及び(b2)成分のアルコール香料由来の、爽やかでフレッシュ感のある香りを衣類に賦与でき、且つ液体柔軟剤組成物の30℃近傍の保存条件下における増粘を抑制することができる。
【0039】
ここで、「logP」とは、化合物の1−オクタノール/水の分配係数の対数値であり、1−オクタノールと水の2液相の溶媒系に化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡において、それぞれの溶媒中での溶質の平衡濃度の比を意味し、底10に対する対数「logP」の形で一般的に示される。すなわち、logPは親油性(疎水性)の指標であり、この値が大きいほど疎水的であり、値が小さいほど親水的である。
【0040】
logPについては、例えば、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)等から入手し得るデータベースに掲載されているlogPを実測値として参照することができる。また、実測値がない場合には、プログラム“CLOGP”(Daylight CIS)等で計算することができ、中でもプログラム“CLOGP”により計算することが、信頼性も高く好適である。
【0041】
プログラム“CLOGP”においては、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logP(ClogP)」の値が、logPの実測値がある場合にはそれと共に出力される。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(A.Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C.Hansch, P.G.Sammens, J.B.Taylor and C.A.Ramsden,Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogPは現在最も一般的で信頼できる推定値であるため、化合物の選択に際してlogPの実測値がない場合に、ClogPを代わりに用いることが好適である。本発明においては、logPの実測値、又はプログラム“CLOGP”により計算したClogPのいずれを用いてもよいが、実測値がある場合には実測値を用いることが好ましい。
【0042】
アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物において、30℃近傍の保存条件下における増粘抑制効果を更に高める観点から、(b3)成分としては、logPが3.0〜6.0の香料成分が好ましく、logPが4.0〜6.0の香料成分がより好ましく、logPが4.2〜5.5の香料成分が更に好ましい。また、香料の種類としては、エステル系香料、ラクトン系香料及びアルデヒド香料から選ばれる香料で上記logP範囲の香料成分が好ましい。
【0043】
特に限定するものではないが、(b3)成分の好適な具体例を以下に示す(カッコ内の数値はlogP値)。
・アルデヒド香料:Lilial(3.9)、Myrac aldehyde(3.9)、Citral(3.1) 、Hexyl cinnamic aldehyde(4.9)
・ケトン香料:Ionone beta(3.8)、Methyl ionone(4.0)、Damascenone(4.3)、koavone(3.3)、Allyl ionone(4.3)
・ラクトン香料:Aldehyde C-14 peach(3.8)、Lactone C-10 gamma(3.3)
・合成ムスク香料:Musk C-14(4.1)、Musk ketone(3.8)、Muscone(6.4)、Civettone(6.5)、Musk xylol(3.7)、Ethylene brassylate(4.6)
・エステル香料:o-t-B.C.H.Acetate(4.1)、Linalyl acetate(3.5)、Hexyl salicylate(5.1)、Dimethylbenzylcarbinyl acetate(2.8)、Fruitate(3.4)
・炭化水素香料:Limonene(4.4)、Myrcene(4.3)、Terpinolene(4.4)、α-pinene(4.2)、Camphene(4.2)
・エーテル香料:Herbavert(3.9)、Ambroxan(5.3)
・アセタール香料:Herboxane(3.2)、Octanal glycoacetal(3.3)、Citronellyloxyacetaldehyde(3.3)
【0044】
本発明の効果を奏するにあたり、(b)成分中の、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]、並びに(b3)成分の質量と(b1)乃至(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]を特定範囲とすることが重要である。
【0045】
詳細には、30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制するにあたり、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]は0.2〜1であることが重要である。30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を更に抑制する観点から、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]は、好ましくは0.25〜0.9、より好ましくは0.3〜0.8であることが好適である。
【0046】
30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制しつつ、衣類に爽やかでフレッシュな香りを賦与するにあたり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]は0.6〜0.95であることが重要である。30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘抑制効果を更に高める観点から、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]は0.65以上が好ましく、0.7以上がより好ましい。衣類により爽やかでフレッシュな香りを賦与する観点から、かかる質量比は0.9以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
【0047】
(b)成分には、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、(b1)成分及び(b2)成分以外のアルコール香料〔(b4)成分〕を使用することもできる。このような香料成分の好適な具体例としては、例えば、trans-2-Hexenol〔6〕、cis-3-Hexenol〔6〕、4-Methyl-3-decen-5-ol〔11〕、10-Undecenol〔11〕、Nopol〔11〕、1-(4-Isopropyl-cyclohexyl)-ethanol〔11〕、Benzyl alcohol〔7〕、4-Phenyl-3-methyl-3-pentanol〔11〕、Propenyl guaethol〔11〕等が挙げられる(〔 〕内の数字は1分子の炭素数)。(b4)成分を使用する場合には、上記(b1)成分及び(b2)成分の合計含有量と(b4)成分の含有量の質量比[(b4)成分/〔(b1)成分+(b2)成分〕]は0.5〜0.01であることが本願の効果を享受できる点で好ましく、より好ましくは0.4〜0.05である。
【0048】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、上記(b1)乃至(b3)成分以外の香料成分〔(b5)成分〕を使用することができる。このような香料成分の好適な具体例としては、例えば、cis-Jasmon(2.64)、Phenylethylacetate(2.13)、Allylamyl glycolate(2.51)、cis-Hexenyl acetate(2.34)、Styrallyl acetate(2.27)、o-t-Butyl cyclohexanon(2.27)、Cinnamyl acetate(2.35)等が挙げられる(カッコ内はlogP値)。(b5)成分を使用する場合には、上記(b1)成分〜(b4)成分の合計含有量と(b5)成分の含有量の質量比[(b5)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分+(b4)成分〕]は0.2〜0.01であることが本願の効果を享受できる点で好ましく、より好ましくは0.15〜0.02である。
【0049】
(b)成分の香料組成物中における(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計含有量は、本発明の効果をより享受できる観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であることが好適である。
【0050】
[液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法]
本発明に係る液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法は、上記(a)成分、香料組成物及び水を含有する、アルコール香料に感受性の液体柔軟剤組成物において、前記香料組成物として上記(b)成分を液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2〜3質量%となるように用いることを特徴とする。
【0051】
液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は、アルコール香料に対する液体柔軟剤組成物の感受性が高まり本発明の効果をより享受できる観点から、好ましくは15〜25質量%、より好ましくは18〜24質量%、更に好ましくは20〜24質量%であることが好適である。
【0052】
(b)成分の使用量は、衣類に爽やかでフレッシュ感のある香りを賦与する観点から、液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2質量%以上となるような量にて使用することができ、30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する観点から、液体柔軟剤組成物中の含有量が3質量%以下となるような量にて使用することができる。衣類に爽やかでフレッシュ感のある香りを賦与すると共に30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制できる観点から、(b)成分の使用量は、液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2〜3質量%となるような量にて使用することができる。衣類に爽やかでフレッシュ感のある香りを賦与する観点から、(b)成分の使用量は、液体柔軟剤組成物中の含有量が0.3質量%以上となるような量にて使用することがより好適である。また、30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘をより抑制できる観点から、(b)成分の使用量は、液体柔軟剤組成物中の含有量が好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下となるような量にて使用することが好適である。
【0053】
本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法においては、アルコール香料に対する液体柔軟剤組成物の感受性が高まり本発明の効果をより享受できる観点から、更に分子内にカチオン性基を有するポリマー〔以下、(c)成分という〕を液体柔軟剤組成物に含有させることができる。
【0054】
(c)成分としては、下記一般式(3)で示される化合物に由来するモノマー単位(c1)と下記一般式(4)で示される化合物に由来するモノマー単位(c2)を含有するポリマー又はその酸塩を好適に用いることができる。
【0055】
【化3】

【0056】
〔一般式(3)中、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Xは−COO−R−、−CONR−R−を示す。R、Rはそれぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜3の炭化水素基、又は水素原子を示す。R、Rは、それぞれ独立にヒドロキシ基を含んでいても良い炭素数1〜4のアルキレン基、Rは水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示す。〕
【0057】
【化4】

【0058】
〔一般式(4)中、R11、R12は、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、Yはアリール基、−O−CO−R13、−COO−R14、又は−CONR15−R16を示す。R13、R14は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基、又は置換基を有していても良いアリール基を示す。R15は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基を示し、R16は水素原子、炭素数1〜22の炭化水素基、又は置換基を有していても良いアリール基を示すか、あるいはR15とR16は、R15と結合するN(窒素原子)と一緒になってモルホリニル基を示す。〕
【0059】
一般式(3)で示される化合物のうち、本発明の効果をより享受できる点で、Rは水素原子、メチル基、エチル基又はプロピル基が好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。R、R基は水素原子が好ましい。R、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基又は2−ヒドロキシエチル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基であり、特に好ましくはメチル基又はエチル基である。R、Rはエチレン基、プロピレン基が好ましい。Rは水素原子が好ましい。
【0060】
一般式(3)中のXが−COO−R−である化合物としては、特に制限されるものではないが、直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート、置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0061】
また、一般式(3)中のXが−CONR−R−である化合物としては、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ここで(メタ)アクリルアミドとはアクリル酸ミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0062】
一般式(3)で示される化合物は、その酸塩を用いることができる。酸塩としては、一般式(3)で示される化合物と、例えば塩酸、硫酸などの無機酸との中和塩や、炭素数1〜8のカルボン酸、炭素数1〜8のスルホン酸等の各種有機酸との中和塩が挙げられる。
【0063】
また、モノマー単位(c2)の由来となる、一般式(4)で表される化合物としては、直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレート、置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリレート、直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリルアミド、置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられる。
【0064】
直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリレートの好適な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、又はベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリレートの好適な例としては、フェニル(メタ)アクリレート、トルイル(メタ)アクリレート、キシリル(メタ)アクリレート、又はベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
直鎖又は分岐鎖のアルキル(炭素数1〜22)(メタ)アクリルアミドの好適な例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、又はN−イソブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0067】
置換基を有していても良いアリール(メタ)アクリルアミドの好適な例としては、フェニル(メタ)アクリルアミド、トルイル(メタ)アクリルアミド、キシリル(メタ)アクリルアミド、又はベンジル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0068】
(c)成分は、上記モノマー単位(c1)とモノマー単位(c2)を、(c1)/{(c1)+(c2)}=0.52〜1.0のモル比で含有することが好ましく、柔軟性能の観点から、このモル比は、0.60〜1.0がより好ましく、0.80〜0.95が更に好ましい。
【0069】
(c)成分は、モノマー単位(c1)、(c2)以外のモノマー単位として、共重合可能な不飽和結合含有モノマーに由来するモノマー単位〔以下、モノマー単位(c3)という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。かかるモノマー単位(c3)の由来となる、共重合可能な不飽和結合含有モノマーとしては、例えば、ビニルアルコール;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(エチレングリコールの重合度が1〜100)、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート(プロピレングリコールの重合度が1〜50)、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート(ブチレングリコールの重合度が1〜50)等のポリアルキレン(アルキレン基の炭素数1〜8;直鎖もしくは分岐鎖)オキシド鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有するビニル化合物;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル化合物等を挙げることができる。これらの共重合可能な不飽和結合含有モノマーの共重合量は、本発明の効果をより享受できる点から、(c)成分を構成するモノマー全量に対し、好ましくは40モル%未満、より好ましくは30モル%未満、更に好ましくは10モル%未満とすることが好適である。従って、(c)成分中のモノマー単位(c1)及びモノマー単位(c2)の合計量は、本発明の効果をより享受できる点から、全モノマー単位中、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であることが好適であり、上限は100モル%であってよい。
【0070】
(c)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは3,000〜500,0000、更に好ましくは5,000〜200,000の範囲であることが好適である。
【0071】
尚、(c)成分のMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、水、アルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びこれらの溶媒を組み合わせた液の何れかを使用し、ポリエチレンオキシド又はポリスチレン換算の分子量とする。その際、測定対象のポリマーが、モノマー単位(c1)の割合が大きく親水性であると考えられる場合は、(1%酢酸/エタノール):水=3:7(質量比)の混合溶媒で調製したLiBrの50mmol/L溶液を溶媒として、極性溶媒用GPCカラム「α−M(東ソー(株)製)、充填基剤:メタクリレートポリマー、粒子径13μm」を2本直列して用い、ポリエチレングリコール換算の分子量により算出する(測定法A)。一方、モノマー単位(c2)の割合が大きく、ポリマーが疎水性であると考えられる場合は、ファーミンDM20(花王(株)製)の1mmol/L−CHCl溶液にて、有機溶媒用GPCカラム「K−804(昭和電工(株)製)、充填基剤:スチレンビニルベンゼン共重合体、排除限界分子量(ポリスチレン):4×105」を2本直列して用い、ポリスチレン換算の分子量により算出する(測定法B)。
【0072】
(c)成分の使用量は、本発明の効果をより享受できる観点から、液体柔軟剤組成物中の含有量が好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.2〜3質量%となるような量にて使用することが好適である。
【0073】
本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法においては、粘度調整の観点から、更に無機又は有機の電解質〔以下、(d)成分という〕を液体柔軟剤組成物に含有させることができる。
【0074】
好適な無機の電解質としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸化物が挙げられ、中でも、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウムが好ましい。好適な有機の電解質としては、炭素数1〜8のカルボン酸塩、炭素数1〜8の炭化水素基を有する硫酸エステル塩が挙げられ、ここで、塩としては、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩が好ましい。好適な有機の電解質の具体例としては、乳酸塩、グリコール酸塩、クエン酸塩、メチル硫酸塩、エチル硫酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、メタキシレンスルホン酸塩、サリチル酸塩、安息香酸塩が挙げられる。
【0075】
(d)成分の使用量は、30℃近傍の保存条件下における液体柔軟剤組成物の増粘を抑制する効果の観点から、液体柔軟剤組成物中の含有量が好ましくは0.001〜3質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%となるような量にて使用することが好適である。
【0076】
本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法においては、液体柔軟剤組成物の保存安定性を向上させる観点から、更に下記一般式(5)で表される非イオン界面活性剤〔以下、(e)成分という〕を液体柔軟剤組成物に含有させることができる。
【0077】
5a−F−[(R5bO)−R5c (5)
〔式中、R5aは、炭素数8〜18、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基であり、R5bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R5cは、炭素数1〜3のアルキル基、又は水素原子であり、mは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜60、特に好ましくは10〜50の数であり、Fは−O−、−COO−、−CON<又は−N<であり、Fが−O−又は−COO−の場合nは1であり、Fが−CON<又は−N<の場合nは2である。〕。
【0078】
本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法においては、pHを調整する観点から、更にpH調整剤〔以下、(f)成分という〕を液体柔軟剤組成物に含有させることができる。
【0079】
(f)成分の好適な具体例としては、クエン酸、酢酸、りんご酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸や、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸などの酸剤;及び水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アルカノールアミンなどのアルカリ剤が挙げられる。
【0080】
(f)成分の使用量は、液体柔軟剤組成物の25℃におけるpHが好ましくは1〜6、より好ましくは1.5〜5、更に好ましくは2.0〜4.5の範囲となるような量にて使用することが好適である。ここで、液体柔軟剤組成物の25℃におけるpHは、JIS Z8802に準拠した測定方法で液体柔軟剤組成物の原液のpHを25℃で測定した値である。
【0081】
本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法においては、匂い安定性及び色相安定性を向上させる観点から、更にキレート剤〔以下、(g)成分という〕を液体柔軟剤組成物に含有させることができる。
【0082】
(g)成分としては、アミノポリカルボン酸、ホスホン酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物を好適に用いることができる。アミノポリカルボン酸の具体例としては、エチレンジアミン4酢酸が挙げられる。ホスホン酸の具体例としては、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸およびその誘導体が挙げられる。また、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、鉄塩が好適である。
【0083】
本発明の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、消泡シリコーン、酸化防止剤、防腐剤等の、その他の任意成分〔以下、(h)成分という〕を液体柔軟剤組成物に配合することができる。
【実施例】
【0084】
本願発明の効果の例を、下記の実施例及び比較例で示す。尚、本願発明は下記の実施例及び比較例に記載された各配合成分、液体柔軟剤組成物の組成及び当該組成の調製方法等に限定されるものではない。比較例で使用した各配合成分を以下にまとめて示す。
<(a)成分>
(a−1):N−アルカノイルアミノプロピル−N−アルカノイルオキシエチル−N−メチルアミン/N−アルカノイルアミノプロピル−N−(2―ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン/脂肪酸の80/15/5(質量比)の混合物〔ここで、アルカノイル基は、ステアリン酸とパルミチン酸との混合脂肪酸(ステアリン酸/パルミチン酸=6/4(質量比))由来のアルカノイル基であり、脂肪酸は前記混合脂肪酸である〕
(a−2):N−メチルジエタノールアミン1モルと脂肪酸〔パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸=15/65/20(質量比)〕1.9モルとをエステル化反応させて得られたアミン混合物に、エタノール溶媒下、メチルクロリドで4級化した混合物〔混合物中、(a)成分85質量%、未反応脂肪酸が5質量%、エタノール10質量%〕
<(b)成分>
・表3記載の香料組成物
<(c)成分>
(c−1):下記合成例1で得られた、ジメチルアミノエチルメタクリレートとラウリルメタクリレートの共重合体(ジメチルアミノエチルメタクリレート/ラウリルメタクリレートモル比=8/2、Mw=14000)を含有するポリマー溶液
〔ポリマー溶液中、ポリマー(c−1)20質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル80質量%〕
<(d)成分>
(d−1):10質量%塩化カルシウム水溶液
<(e)成分>
(e−1):ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン基の平均付加モル数20)
<(f)成分>
(f−1):19質量%塩酸水溶液
<(g)成分>
(g−1):エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩の40質量%水溶液
<(h)成分>
(h−1):2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールの5質量%エタノール溶液
【0085】
合成例1:ポリマー(c−1)の合成
攪拌羽根半月型(テフロン(登録商標)製)を備えた攪拌機(攪拌翼の直径:6cm)、窒素導入管、ジムロート還流器、温度計を備えた1L4つ口セパラブルフラスコを窒素置換した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル73.3gを入れ、2000r/minにて撹拌しながら、内容物温度80℃に加熱し、保持した。そこに、別途作製した、ジメチルアミノエチルメタクリレート213.6g(1.36mol)、ラウリルメタクリレート86.4g(0.34mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル164.1gを均一に混合したモノマー溶液と、2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(v−65B:和光純薬工業(株)製)4.22g、プロピレングリコールモノメチルエーテル40.11gを均一に混合した開始剤溶液とを、3時間かけて滴下した。次いで、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製、v−65B)8.44gをプロピレングリコールモノメチルエーテル75.9gに溶解した溶液を4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後、80℃で2時間保持した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルを添加することにより、(a)成分であるジメチルアミノエチルメタクリレートとラウリルメタクリレートの共重合体を含有するポリマー溶液(c−1)1563gを得た。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は14000であり、H−NMRより分析したこの共重合体の組成は、ジメチルアミノエチルメタクリレート/ラウリルメタクリレート=8/2(モル比)であった。また、ポリマー溶液(c−1)の組成は、ジメチルアミノエチルメタクリレートとラウリルメタクリレートの共重合体20質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル80質量%であった。
【0086】
<液体柔軟剤組成物の調製方法>
1000mLビーカーに、液体柔軟剤組成物の出来あがり質量が900gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。T.K.ロボミックス(プライミクス(株)製(旧特殊機化工業(株)製)、攪拌部:T.K.ホモミクサーMARK II 2.5型(攪拌翼の直径:0.0285m))をビーカーの底面から1cmの高さに攪拌部の底面を位置合わせし設置した。2000r/minにて攪拌しながら、溶融した(e)成分(60℃調温)を添加し、均一な水溶液になるまで攪拌した。次いで、(g)成分及び(h)成分を添加した。1分攪拌後に、加熱して溶融した(a)成分を投入して、5分攪拌した。ビーカー内容物の温度を60±2℃の範囲に温度調整した後、攪拌の回転数を3000r/minに上げ、次いで(d)成分を添加し、次いで(f)成分を添加し所定のpHに調整した。ビーカー内容物の温度を60±2℃の範囲に温度調整しつつ、2分攪拌を続けた。
ウォーターバス中の温水を、ビニールホースを用いてサイフォンの原理で抜き取り、次いで3℃の氷水をウォーターバスに入れ冷却を開始した。冷却を開始した時点で、攪拌機の回転数を1500r/minに調整した。ビーカーの内容物温度が30℃になった時点で、ウォーターバス中から氷水を抜き取り、ウォーターバス内に30℃の水を入れた。pH調整剤〔35%塩酸水溶液及び/又は48%水酸化ナトリウム水溶液〕を用いて再度pHを調整した後、(b)成分を添加した。次いで必要に応じて(c)成分を添加した。更に2分攪拌後に攪拌部をビーカーから取り出し、攪拌機に付着した内容物を、少量のイオン交換水で洗い流し、内容物の量が出来上がり質量になるように、30℃のイオン交換水を投入し、液体柔軟剤組成物を得た。
実施例及び比較例で使用する液体柔軟剤組成物の組成を表1にまとめて示す。
【0087】
【表1】

【0088】
<液体柔軟剤組成物の粘度測定方法>
液体柔軟剤組成物90gを、No.11規格瓶に入れ、専用キャップで封をし、30℃のウォーターバスを用いて内容物温度30℃に調温した後、内容物温度を30℃に保ったまま所定時間放置した。ここで、液体柔軟剤組成物の初期粘度を測定する場合には、所定時間は3時間とし、30℃で保存した液体柔軟剤組成物の粘度を測定する場合には、所定時間は1時間とした。
所定時間放置した後、B型粘度計(TOKI SANGYO Co.,LTD製、VISCOMETER TVB−10、No.2ローター、60r/min)を用いて各液体柔軟剤組成物の粘度測定を開始し、1分後の値を読み取った(粘度の単位は「mPa・s」)。粘度が高くNo.2ローターで測定できない場合には、No.3ローターに交換し同様に測定した。
【0089】
<アルコール香料に対する液体柔軟剤組成物の感受性の評価方法>
表1に示す各組成の液体柔軟剤組成物について、香料組成物としてリモネン又はテルピネオール(アルコール香料)を使用し、前記の調製方法に従って以下の液体柔軟剤組成物(1)及び(2)を調製した。
次いで、液体柔軟剤組成物(1)及び(2)の温度が30±3℃の温度範囲になるようにウォーターバスで調温し、前記の粘度測定方法に従って粘度を測定した(尚、「所定時間」は1時間とした)。粘度測定値を、下記の算出式(1)に代入し、求められた値が3.0以上であるとき、試験された液体柔軟剤組成物はアルコール香料に感受性であると判定した。
・液体柔軟剤組成物(1):香料としてリモネンを0.8質量%含有する液体柔軟剤組成物。初期粘度をA1、30℃で14日保存後の粘度をB1とする。
・液体柔軟剤組成物(2):香料としてテルピネオール(アルコール香料)を0.8質量%含有する液体柔軟剤組成物。初期粘度をA2、30℃で14日保存後の粘度をB2とする。
・算出式(1):(B2/A2)/(B1/A1)
【0090】
評価結果を表2に示すが、表1記載の組成1乃至3の液体柔軟剤組成物は何れも算出式(1)で求められる値が3.0以上であり、アルコール香料に対し感受性の液体柔軟剤組成物であった。
【0091】
【表2】

【0092】
実施例1−9及び比較例1−5
前記の調製方法に従って、表3に示す組成の液体柔軟剤組成物を調製した。得られた液体柔軟剤組成物について、下記の方法に従って、増粘抑制効果及び香りを評価した。結果を表3に示す。
【0093】
<増粘抑制効果の評価>
得られた液体柔軟剤組成物の初期粘度並びに30℃で20日間保存後の粘度を、前記粘度測定法に従って測定した。ここで、30℃で20日間の保存は、液体柔軟剤組成物を、30±3℃に調温された恒温槽で20日間保存することにより実施した。
初期粘度及び保存後の粘度の測定値を下記式に代入し、増粘度の値を求めた。この評価方法においては、増粘度の値が2.5以下であれば合格と判定する。増粘度の値は、より好ましくは2.0未満、更に好ましくは1.5以下である。
増粘度=〔保存後の粘度(mPa・s)〕/〔初期粘度(mPa・s)〕
【0094】
<香りの評価>
(1)評価タオルの前処理
あらかじめ、非イオン界面活性剤(ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物(平均付加モル数8))を用いて、市販の木綿タオル(武井タオル製、TW−220)24枚を、日立全自動洗濯機NW−6CYで一連の洗濯工程を5回繰り返した(非イオン界面活性剤使用量4.5g、標準コース、水量45L、水温20℃、洗浄時間10分、ため濯ぎ2回)。その後、20℃、43%RHの条件下で乾燥した。
(2)液体柔軟剤組成物による評価タオルの処理
National製電気バケツ式洗濯機(MiniMini、型番:NA−35)に水道水を4.5L注水し、上記(1)の方法で前処理した木綿タオル2枚を投入して1分間攪拌した。攪拌後、表3記載の液体柔軟剤組成物を、木綿タオル1.5kg当たり7gとなる量にて投入し、攪拌しながら5分間処理した。処理後、日立全自動洗濯機NW−6CYを用いて脱水工程のみ2分間行い、20℃、43%RHの条件下で24時間乾燥させた。
(3)香りの評価
調香の業務に5年以上従事した判定者5人に、上記(2)で仕上がった木綿タオルから、(b1)成分及び(b2)成分由来の爽やかでフレッシュな香りが香るかどうかを評価した。判定者5人全てが、木綿タオルから(b1)成分及び(b2)成分由来の爽やかでフレッシュな香りが強く香ると認識した場合を合格(○)とした。
【0095】
【表3】

【0096】
(b1)乃至(b3)成分を特定量比にて含有する本願特定の(b)成分を香料組成物として用いる実施例1の液体柔軟剤組成物では、増粘度の値は「1.8」であり、増粘は僅かであった。一方、(b2)成分を含有しない香料組成物を用いた比較例1の増粘度は「6.4」であり、30℃保存下で著しく増粘した。
また、(b1)成分として1分子の炭素数が10のアルコール香料を用いた、実施例1の増粘度は「1.8」、比較例1の増粘度は「6.4」であったが、(b1)成分として1分子の炭素数が8のアルコール香料を用いた、実施例8の増粘度は「1.8」、比較例4の増粘度は「3.5」であった。よって、(b1)成分として、1分子の炭素数が10のアルコール香料を用いると、増粘の改善度合いの高いことが判る。
さらに、(b2)成分として1分子の炭素数が12のアルコール香料を用いた実施例4の増粘度は「2.3」であったが、(b2)成分として1分子の炭素数が14又は13のアルコール香料を用いた実施例1、2の増粘度は何れも「1.8」であった。実施例1、2、4及び比較例1の増粘度の対比により、(b2)成分として1分子の炭素数が14又は13のアルコール香料を用いると、増粘度の改善度合いが高いことが判る。
【0097】
実施例10、11及び比較例6
前記の調製方法に従って、表4に示す組成の液体柔軟剤組成物を調製した。得られた液体柔軟剤組成物について、実施例1と同様にして増粘抑制効果及び香りを評価した。結果を表4に示す。
尚、比較のため、実施例1の結果も併せて表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
(c)成分を含有しない実施例10の増粘度の値は「1.5」であり、同じく(c)成分を含有しない比較例6の増粘度は「4.8」であった。(c)成分を含有する実施例1の増粘度の値は「1.8」であり、同じく(c)成分を含有する比較例1の増粘度は「6.4」であることから、(c)成分を含有すると、増粘の改善度合いが高く、本発明の効果をより享受できることが判る。
また、(a)成分として(a−2)成分(4級化物)を使用した実施例11では、(a−1)成分(3級アミン)を使用した実施例1よりも初期粘度が高く、粘度が高まり易い性質を有しているにも関わらず、増粘度の値は実施例1よりも低く、粘度がより安定化されていることが判る。
【0100】
配合例1〜2
本願発明の効果が期待できる配合例を表5に示す。
【0101】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、香料組成物及び水を含有する液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法であって、前記香料組成物として下記(b)成分を前記液体柔軟剤組成物中の含有量が0.2〜3質量%となるように用いる、液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
(a)成分;窒素原子に結合する基のうち1〜3個が、エステル基又はアミド基で分断されている総炭素数14〜22の炭化水素基であり、残りが炭素数1〜3のアルキル基若しくはヒドロキシアルキル基である第3級アミン、その酸塩及びその4級化物から選ばれる1種以上の化合物
(b)成分:下記(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分を含有し、(b1)成分と(b2)成分の質量比[(b1)成分/(b2)成分]が0.2〜1であり、(b3)成分の質量と、(b1)成分、(b2)成分及び(b3)成分の合計質量の比[(b3)成分/〔(b1)成分+(b2)成分+(b3)成分〕]が0.6〜0.95である、香料組成物
(b1)成分:1分子の総炭素数が8〜10のアルコール香料
(b2)成分:1分子の総炭素数が12〜16のアルコール香料
(b3)成分:logPが3.0〜9.0の香料成分(但し、アルコール香料を除く)
【請求項2】
前記液体柔軟剤組成物がアルコール香料に感受性である、請求項1に記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
【請求項3】
前記(b2)成分が、1分子の炭素数13〜15で、且つ脂肪族アルコール、脂環式アルコール香料及び分子内に2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル基を有するアルコール香料から選ばれるアルコール香料から選ばれる1種以上のアルコール香料である、請求項1又は2に記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
【請求項4】
前記(b3)成分が、logP3.0〜6.0の香料成分である、請求項1〜3の何れかに記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
【請求項5】
更に下記(c)成分を液体柔軟剤組成物に含有させる、請求項1〜4の何れかに記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。
(c)成分:分子内にカチオン性基を含有するポリマー
【請求項6】
液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量が15〜25質量%である、請求項1〜5の何れかに記載の液体柔軟剤組成物の増粘抑制方法。

【公開番号】特開2012−197534(P2012−197534A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62338(P2011−62338)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】