説明

液体柔軟剤組成物

【課題】綿に対して優れた再汚染防止効果を発揮する液体柔軟剤組成物を提供すること。
【解決手段】(A)アミド基、エステル基及び/又はエーテル基で分断された炭素数12〜24の炭化水素基を分子内に1つ以上有する3級アミン化合物もしくはその酸塩又は4級アンモニウム化合物と、(B)特定構造のアニオン性を有する水溶性高分子化合物とを含有する液体柔軟剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類等の繊維製品に好適に用いることができる液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生活者の環境への意識が高まる中、節水して洗濯する傾向にある。これにより、綿素材への再汚染が顕在化しつつある。洗濯を繰り返すことにより黒ずみの度合いが増す。既存の市販されている再汚染防止剤は化繊に対する再汚染の防止には効果があるが、綿への再汚染防止効果は充分でないのが現状である。
特許文献1に防汚重合体を含有する柔軟剤に関する特許が開示されているが、この防汚重合体では化繊に対する効果がみられるが綿に対する効果が充分ではない。他方、特許文献2にカルボン酸型アニオン性高分子を配合した柔軟剤組成物が開示されているが、生分解性柔軟基材と共存させた場合に不安定であった。
【0003】
【特許文献1】特開2003-253561号公報
【特許文献2】特開平1-250473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、綿に対して優れた再汚染防止効果を発揮する液体柔軟剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、洗濯を繰り返すことにより綿が黒ずむ原因の一つが、洗濯行程後に柔軟剤を使用することにあることにあり、柔軟基材に特定構造のアニオン性水溶性高分子を組み合わせることで黒ずみを防止できることがわかった。
すなわち、本発明は、下記(A)成分と(B)成分とを含有することを特徴とする液体柔軟剤組成物を提供する。
(A) アミド基、エステル基及び/又はエーテル基で分断された炭素数12〜24の炭化水素基を分子内に1つ以上有する3級アミン化合物もしくはその酸塩又は4級アンモニウム化合物;
(B) 下記式(a)で示される単量体(a)と、式(b)で示される単量体(b)とから構成されるアニオン性を有する水溶性高分子;
【0006】
【化1】

【0007】
(式(a)中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜3のアルキレン基又はカルボニル基を表し、R3は炭素数2〜3のアルキレン基を表し、R4は水素又は炭素数1〜2のアルキル基を表し、nは1〜100の整数を表す。
式(b)中、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基又は−COOM2を表し(ただし、R5及びR6の双方が−COOM2である場合を除く)、R7は、水素原子、メチル基又は−CH2COOM3を表し(ただし、R7が−CH2COOM3である場合、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す)、M1、M2及びM3は、それぞれ独立して水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟剤として期待される所望の柔軟効果を奏しつつ、柔軟剤を使用せずに洗濯をした場合と同程度に綿の黒ずみを防止することができる。本発明の組成物はまた、保存安定性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A)成分
本発明において使用できる(A)成分は、繊維製品に柔軟性を付与することができる。具体的には、以下に示すアミン化合物又はそれらの有機または無機酸による中和物、およびそれらの4級化物を例示することができる。これらは、いずれも1種または2種以上の混合物として用いることができる。2種以上の混合物として使用する際、仕上げ処理した繊維製品の柔軟性を良好にするために、長鎖炭化水素基を2つ又は3つ有する化合物の質量比率が混合物の全量を基準として50%以上とするのが好ましい。また、使用後自然環境中へ廃棄された後の生分解性を付与するために、該長鎖炭化水素基の途中にエステル基を含有するカチオン性界面活性剤であることが好ましい。


























【0010】
【化2】

【0011】
カチオン性界面活性剤を構成するRは炭素数12〜24の炭化水素基である。不飽和基を有する場合、シス体とトランス体が存在するが、その質量比率はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。また、飽和と不飽和炭化水素基の比率は95/5〜50/50(wt/wt)であることが好ましい。
カチオン性界面活性剤を構成するR1は高級脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基であり、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、直鎖脂肪酸、分岐脂肪酸のいずれから誘導される長鎖炭化水素基である。不飽和脂肪酸の場合、シス体とトランス体が存在するが、その質量比率はシス/トランス=25/75〜100/0が好ましく、40/60〜80/20が特に好ましい。R及びR1のもととなる脂肪酸としては以下のものが例示できる。ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、部分水添パーム油脂肪酸(ヨウ素化10〜60)、部分水添牛脂脂肪酸(ヨウ素化10〜60)などが挙げられる。中でも好ましいのは、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、エライジン酸を所定量組み合わせ、飽和/不飽和比率が95/5〜50/50(wt/wt)、シス/トランス体質量比が40/60〜80/20、ヨウ素価が10〜50、炭素数18の比率が80質量%以上であり、炭素数20の脂肪酸を2質量%以下、炭素数22の脂肪酸を1質量%以下となるように調整した脂肪酸組成を用いることが好ましい。ここで、式中に存在するRはすべて同一であっても、またはそれぞれ異なっていても構わない。
【0012】
上記3級アミンの中和に用いる酸としては、塩酸、硫酸、メチル硫酸が挙げられる。本発明で用いる3級アミンは塩酸、硫酸、メチル硫酸によって中和されたアミン塩の形で用いることが好ましい。その中和工程は3級アミンを予め中和したものを水に分散してもよいし、酸水溶液中に3級アミン を液状又は固体状で投入してもよい。もちろん3級アミンと酸成分を同時に投入してもよい。また、上記3級アミンの4級化に用いる4級化剤としては塩化メチルやジメチル硫酸が挙げられる。
一般式(II)、(III)の化合物は上記脂肪酸組成物、または脂肪酸メチルエステル組成物とメチルジエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、分散安定性を良好にする観点から、(II)と(III)の化合物の存在比率は質量比で99/1〜50/50となる様に合成することが好ましい。更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸などを用いるが、低分子量であり4級化に所要する4級化剤重量が少ない点で塩化メチルがより好ましい。その際、(II)と(III)で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率も、分散安定性の観点から質量比で99/1〜50/50となる様に合成することが好ましい。また、(II)、(III)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、4級化物/4級化されていないエステルアミンの比率は、エステル基の加水分解安定性の観点から、質量比で99/1〜70/30の質量比率であることが好ましい。
【0013】
一般式(IV)、(V)、(VI)の化合物は上記脂肪酸組成物、または脂肪酸メチルエステル組成物とトリエタノールアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、分散安定性を良好にする観点から、[(IV)+(V)]と(VI)の化合物の存在比率は質量比で99/1〜50/50となる様に合成することが好ましい。更に、その4級化物を用いる場合には、4級化剤として塩化メチルやジメチル硫酸などを用いるが、反応性の観点からジメチル硫酸がより好ましい。その際、[(IV)+(V)]と(VI)で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率も、分散安定性の観点から質量比で99/1〜50/50となる様に合成することが好ましい。また、(IV)、(V)、(VI)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、4級化物/4級化されていないエステルアミンの比率は、エステル基の加水分解安定性の観点から、質量比で99/1〜70/30の質量比率であることが好ましい。
【0014】
一般式(VII)、(VIII)の化合物は上記脂肪酸組成物とN−メチルエタノールアミンとアクリロニトリルの付加物より、「J.Org.Chem.,26,3409(1960)」に記載の公知の方法で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンとの縮合反応により合成することができる。その際、(VII)と(VIII)の化合物の存在比率は質量比で99/1〜50/50となる様に合成することが好ましい。更にその4級化物を用いる場合には塩化メチルで4級化するが、(VII)と(VIII)で示されるエステルアミンの4級化物の存在比率も質量比で99/1〜50/50となる様に合成することが好ましい。また、(VII)、(VIII)を4級化する場合、一般的に4級化反応後も4級化されていないエステルアミンが残留する。その際、4級化物/4級化されていないエステルアミンの比率は、エステル基の加水分解安定性の観点から、質量比で99/1〜70/30の質量比率であることが好ましい。
このうち、一般式(IV)、(V)、(VI)で表される化合物、その塩及びその4級化物が好ましい。これらの4級化物であるのがより好ましく、4級化物の混合物であるのがさらに好ましい。
【0015】
一方、下記にて示される、高級脂肪酸由来の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩を用いることも可能であり、該脂肪酸は飽和でも不飽和であってもよい。
該脂肪酸アミドアルキル3級アミンの具体例としては、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド等の脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩などが挙げられる。中でも、それ自体の臭気が低く良好なことから、カプリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミドが好ましく、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドがより好ましい。パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミドとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドとの混合物が最も好ましい。
【0016】
長鎖アミンの具体的な商品としては、例えば、東邦化学(株)製のカチナールMPAS−R(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミドとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドの質量比3/7混合物)、ライオンアクゾ(株)製のアーミンAPA168−65E(商品名、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミドとステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドの質量比30/70混合物の65質量%のエタノール溶液)等が好ましく用いられる。
なお、上記の「脂肪酸アミドアルキル3級アミン又はその塩」は、例えば、脂肪酸あるいは脂肪酸低級アルキルエステル、動・植物性油脂等の脂肪酸誘導体と、ジアルキルアミノアルキルアミンとを縮合反応させ、その後、未反応のジアルキルアミノアルキルアミンを、減圧または窒素ブローにて留去することにより得られる。
ここで、脂肪酸又は脂肪酸誘導体としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、とうもろこし油脂肪酸、牛脂脂肪酸、パーム核油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸等、またはこれらのメチルエステル、エチルエステル、グリセライド等が具体的に挙げられる。中でも、洗濯すすぎ行程における繊維製品への吸着性能に優れることから、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸が好ましい。これら脂肪酸又は脂肪酸誘導体は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中、上記のカチオン性界面活性剤の配合量は好ましくは0.1〜50質量%であり、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。カチオン界面活性剤の配合量をこのような範囲とすることにより、充分な柔軟性を付与でき、且つ粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
【0017】
(B)成分
本発明で用いることができる(B)成分は、上記式(a)で示される単量体(a)と、上記式(b)で示される単量体(b)とから構成されるアニオン性を有する水溶性高分子である。
本発明で用いる(B)成分は、1gを25℃の水100gに溶解させたとき、透明である。
(B)成分としては、式(a)中、nが1〜50の整数である単量体(a)と、式(b)中、R5及びR6が、それぞれ独立して水素原子又は−COOM2を表し(ただし、R5及びR6の双方が−COOM2である場合を除く)、R7が、水素原子又はメチル基を表し、M1、M2及びM3が、それぞれ独立して金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す単量体(b)とから構成されるのが好ましい。
式(a)中、R4が炭素数1〜2のアルキル基を表し、nが5〜35の整数である単量体(a)と、式(b)中、R5及びR6が、それぞれ独立して水素原子又は−COOM2を表し(ただし、R5及びR6の双方が−COOM2である場合を除く)、R7が、水素原子又はメチル基を表し、M1、M2及びM3が、それぞれ独立して金属原子を表す単量体(b)とから構成されるのがより好ましい。
【0018】
本発明で用いられる単量体(a)としては、(メタ)アクリレートが好ましい。具体例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このうち、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。
本発明で用いられる単量体(a)は、公知の方法で得ることもできるし、商業的に入手可能なものを使用することもできる。
【0019】
単量体(b)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸並びにそれらの一価金属塩、例えばナトリウム塩、二価金属塩、例えばカルシウム塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩、例えばトリエタノールアミン塩を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。このうち、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びそれらの一価又は二価金属塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸及びそれらの一価又は二価金属塩がより好ましい。
【0020】
本発明で用いる(B)成分は、更に、単量体(a)及び単量体(b)と共重合可能な単量体(c)を含むこともできる。単量体(c)の例としては、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;(メタ)アクリルアミド;マレイン酸、フマル酸と炭素数1〜20個の脂肪族アルコール又は炭素数2〜4個のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのモノエステルあるいはジエステル;酢酸ビニル、酢酸プロペニル等の酢酸アルケニルエステル;スチレン、p−メチルスチレン、スチレンスルホン酸等の芳香族ビニル;塩化ビニル;炭素数1〜20個の不飽和炭化水素等を挙げることができる。このうち、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル、炭素数1〜20個の不飽和炭化水素が好ましく、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールとメタクリル酸とのエステル、炭素数4〜18個の不飽和炭化水素がより好ましく、炭素数1〜6個の脂肪族アルコールとメタクリル酸とのエステルがさらに好ましい。単量体(c)としてはこれらの1種又は2種以上を用いることができる。単量体(c)は得られる共重合体(B)が水溶性となる範囲の量で、単量体(a)、単量体(b)及び単量体(c)の合計に対して50%以下の範囲で用いるのが好ましい。
【0021】
共重合体(B)は単量体(a)10〜95重量%、単量体(b)5〜90重量%、単量体(c)0〜50重量%(ただし(a)、(b)、(c)の合計は100重量%である)の比率で用いて導かれたものが好ましい。この範囲にあるものは汚れの分散性がよく、黒ずみ抑制能が良好である。
かような共重合体を得るには、上述した各単量体を所望の含有量比で混合し、重合開始剤を用いて重合させればよい。重合は、溶媒中での重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶媒中での重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物などが挙げられる。原料単量体および得られるポリカルボン酸系共重合体の溶解性、並びに当該ポリカルボン酸系共重合体の使用時の便を考慮すると、水、メチルアルコール、エチルアルコール、2−プロパノール等を溶媒として用いると特に有効である。
【0022】
水媒体中で重合を行なう際には、重合開始剤としてアンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩、あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用される。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物またはケトン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキサイドやラウロイルパーオキサイド等のパーオキサイド;クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶剤を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いる溶媒や重合開始剤により適宜定められうるが、通常0〜120℃の範囲内で行なわれる。
【0023】
塊状重合は、例えば、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドやラウロイルパーオキサイド等のパーオキサイド;クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用い、50〜200℃の温度範囲内で行なわれる。
【0024】
また、得られるポリカルボン酸系共重合体の分子量を調節する目的で、次亜リン酸(塩)やチオール系連鎖移動剤を併用することもできる。この際に用いられるチオール系連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。さらに、ポリカルボン酸系共重合体の分子量を調節するためには、単量体として(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0025】
(B)成分の重量平均分子量は、500〜100,000であるのが好ましく、 1,000〜50,000であるのがより好ましい。重量平均分子量がこのような範囲にあると、粘度の上昇を抑えられるので好ましい。
(B)成分の好ましい市販品例として日本触媒(株)製のアクアロックFC-600、FC-600C、FC-900、ライオン(株)製のポリティXY-300等をあげることができる。
本発明の組成物中、上記のアニオン性を有する水溶性高分子化合物の配合量は好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.3〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。アニオン性を有する水溶性高分子化合物の配合量をこのような範囲とすることにより、充分な黒ずみ抑制性能を付与でき、保存安定性が良好で、且つ粘度の上昇を抑えて使用性の面で良好なものとすることができる。
【0026】
[荷電モル比]
(A)成分と(B)成分との配合比は、(A)成分のカチオン荷電モル数αと(B)成分のアニオン荷電モル数βの荷電モル比としてα:β=1.5/1〜100/1が好ましく、2.0/1〜50/1の範囲が特に好ましい。このような範囲とすることにより、製品保存時の経時変化を抑えることができ保存安定性が良好なものとすることができる。
(A)成分のカチオン荷電モル数αは、以下の式(1)で求められる。

α=Wc/Xc (1)

(Wc:組成物中の(A)成分の配合量(質量%)、Xc:(A)成分の分子量)
【0027】
(B)成分は、ノニオン性の単量体(a)とアニオン性の単量体(b)との共重合体であるので、そのアニオン荷電モル比はアニオン性単量体に着目し、以下の式(2)に基づき、単量体1、単量体2、・・・単量体iに対応する荷電モル数の和を算出する。

β=Wa×(Ma1×Pa1/Y1+Ma2×Pa2/Y2+・・・+Mai×Pai/Yi)・・・・(2)

(Wa:組成物中の(B)成分の配合量(質量%)
Ma1:(B)成分中の単量体1の重合比率(質量%)、Ma2:(B)成分中の単量体2の重合比率(質量%)、・・・Mai:(B)成分中の単量体iの重合比率(質量%)
Pa1:単量体1中のアニオン性基数、Pa2:単量体2中のアニオン性基数、・・・Pai:単量体i中のアニオン性基数、
1:単量体1の分子量、Y2:単量体1の分子量、・・・Yi:単量体iの分子量)
ここで、「アニオン性基数」とは、1単量体中のアニオン性基の個数を意味する。
(B)成分が単量体(c)を含む場合であって単量体(c)がアニオン性である場合も上記(2)を用いてβを算出することができる。
【0028】
[任意成分:ノニオン性界面活性剤]
さらに、本発明には液体柔軟剤組成物を、保存経日によっても安定なエマルジョンとして保持するため、上記成分に加えて、ノニオン性界面活性剤を併用することがより望ましい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、オキシアルキレン基が平均2〜100モル付加されたものがより好ましい。特に、下記一般式で表されるノニオン性界面活性剤が好ましい。
R11−T−[(R21O)p−H]q
(式中、R11は、炭素数10〜18、好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R21は炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。pは平均付加モル数であり、2〜100、好ましくは5〜70の数を示す。Tは−O−、−N−、−NH−、−N(C2H4OH)−、−CON−、−CONH−又はCON(C2H4OH)−であり、Tが−O−、−NH−、−N(C2H4OH)−、−CONH−、又は−CON(C2H4OH)−の場合は、qは1であり、Tが−N−又は−CON−の場合は、qは2である。)
【0029】
上記一般式で表されるノニオン性界面活性剤の具体例として、下記一般式で表される化合物を挙げることができる。
R11−O−(C2H4O)r−H
(式中、R11は前記と同じ意味であり、rは平均付加モル数であり、2〜100、好ましくは5〜70の数である。)
R11−O−(C2H4O)s(C3H6O)t−H
(式中、R11は前記と同じ意味であり、s及びtは平均付加モル数であり、sは2〜100、好ましくは5〜70の数であり、tは1〜20、好ましくは1〜10の数である。(C2H4O)と(C3H6O)はランダム又はブロック付加体であってもよい。)
ノニオン性界面活性剤を含有することにより、液体柔軟剤組成物の保存安定性が一層向上するので好ましい。その配合量は、組成物の全質量に対して、0.1〜15質量%とするのがよく、特に0.5〜10質量%、更に1〜5質量%が好ましい。このような配合量とすることにより、保存安定性の向上効果を充分なものとすることができ、かつ、効果が飽和に達した際の余分な添加を抑えて経済性を図ることが可能となり、さらに柔軟処理時の余分な泡立ちを抑制する点からも、好ましいものとすることができる。
本発明組成物はさらに、通常液体柔軟剤組成物に含まれるその他の成分を含有することができる。具体的には、水、水溶性溶剤、無機又は有機の水溶性塩類、香料、酸化防止剤、抗菌剤、染料、消泡剤、消臭剤、スキンケア成分などを含有することができる。
【0030】
[任意成分:水]
本発明組成物は、好ましくは水性組成物であり、使用水としては、水道水、イオン交換水、純水、蒸留水など、いずれも用いることができるが、水中に微量に存在するカルシウム、マグネシウムなどの硬度成分や鉄などの重金属を除去した水が好ましく、コストも考慮してイオン交換水が最も好ましい。
[任意成分:水溶性溶剤]
水溶性溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、及び下記一般式で表わされる化合物から選ばれる水溶性溶剤が好ましい。
R31−O−(C2H4O)y−(C3H6O)z−H
(式中、R31は、炭素数1〜8、好ましくは2〜6のアルキル基又はアルケニル基である。y及びzは平均付加モル数であり、yは2〜50、好ましくは2〜30、zは0〜50、好ましくは0〜20の数を示す。)
中でも好ましい例としては、エタノール、エチレングリコール、ブチルカルビトール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノプロピレングリコールモノブチルエーテル[C4H9(C3H6O)(C2H4O)2H]等が挙げられる。
これらの成分の配合量は、組成物の全質量を基準として、0.1〜30質量%とするのがよく、好ましくは2〜20質量%とすることができる。
【0031】
[任意成分:香料組成物]
香料としては特に限定されないが、使用できる香料原料のリストは、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」,Vol.Iand II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994 )および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に記載されている。
【0032】
[任意成分:シリコーン化合物]
本発明で用いるシリコーン化合物としては、変性、未変性いずれのシリコーンも用いることができるが、未変性ジメチルシリコーン、アミノ変性シリコーン、アミノ・ポリエーテル変性シリコーン、アミド変性シリコーン、アミド・ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキル・ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、から選ばれるシリコーンが好ましく、ポリエーテル変性シリコーン及びジメチルシリコーンがより好ましい。特に好ましくはポリエーテル変性シリコーンである。
変性シリコーンの場合、シロキサン骨格に対する各種変性基の変性部位は、側鎖の部分でも、主鎖を部分的に分断しているものなどいずれでも良いが、側鎖に変性基を有するものがより好ましい。また、いずれの場合も主鎖の最末端はメチル基、ヒドロキシル基、水素原子であることが好ましい。
中でも下記一般式(I)で示されるポリエーテル変性シリコーンが最も好ましい。
【0033】
【化3】

【0034】
式(I)中、−Zは、それぞれ独立に−R、−O−R、−OH、−O−X−R、−O−X−Hであり、Rは同一でも異なっていてもよく、いずれも飽和あるいは不飽和の直鎖又は分岐の炭素数1〜4の炭化水素基である。−Zとしては、−R、−OHが好ましく、Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの飽和炭化水素基(アルキル基)が好ましく、中でもメチル基が好ましい。
Xはポリオキシアルキレン基である。具体的には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン基等があげられ、これらのうちの1種が付加したものであってもよく、あるいはオキシエチレン単位、オキシプロピレン単位、またはオキシブチレン単位などの異なった種類のオキシアルキレン基がブロック状あるいはランダムに配列したものであってもよい。但し、いずれの場合であっても、X中のポリオキシエチレン鎖部分の質量割合は、分子全体の質量を基準として10〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは15〜45質量%であり、さらに好ましくは20〜35質量%である。
【0035】
−Yは、−R1−O−X−R2または−O−X−R2であり、R1は、炭素数1〜4の飽和あるいは不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素基であり、これらの中でもメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの飽和炭化水素基(アルキレン基)が好ましく、中でもプロピレン基が特に好ましい。R2は、水素原子又は炭素数1〜4の飽和あるいは不飽和の直鎖又は分岐の炭化水素基であり、これらの中でも水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの飽和炭化水素基(アルキル基)が好ましい。特に好ましいR2は、水素原子又はメチル基である。
L、M、Nはいずれも各繰返し単位の数の平均値を表す。Lは0〜50、好ましくは0〜10、さらに好ましくは0〜3であり、Mは1〜1000、好ましくは1〜300、さらに好ましくは1〜50であり、Nは10〜10000、好ましくは20〜3000、更に好ましくは20〜500である。上記一般式(I)で表される変性シリコーンは、各繰返し単位がブロック状に配列しているブロックコポリマーの構造を有するものであってもよく、あるいは、各繰返し単位がランダムに配列しているランダムコポリマーの構造を有するものであってもよい。
【0036】
上記一般式(I)で表される変性シリコーンの製造方法は、特に限定されるものではない。ポリオキシアルキレン基を有するシリコーンは、Si−H基を有するシリコーンとポリオキシアルキレンまたは炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレンとの付加反応により製造することができる。製造の際、ポリオキシアルキレンまたは炭素−炭素二重結合を末端に有するポリオキシアルキレン、環状シリコーンなどの未反応原料、エタノール、イソプロピルアルコールなどの製造時に用いる溶剤、白金系などの触媒が微量残存するが、本発明の効果に影響を与えない。
本発明の任意成分として使用するシリコーン化合物は、その分子量が特に制限されるものではないが、重量平均分子量は500〜1,000,000が好ましく、より好ましくは1,000〜100,000の範囲である。本発明組成物を製造する際のハンドリング性が良好であるので好ましい。
なお、シリコーン化合物の重量平均分子量はGPC法(ポリスチレン換算)により測定することができる。
【0037】
本発明で用いることができるポリエーテル変性シリコーンとして商業的に入手可能な具体例としては、東レ・ダウコーニング(株)製のSH3772M、SH3775M、SH3748、SH3749、SF8410、SH8700、BY22−008、SF8421、SILWET L−7001、SILWET L−7002、SILWET L−7602、SILWET L−7604、SILWET FZ−2104、SILWET FZ−2120、SILWET FZ−2161、SILWET FZ−2162、SILWET FZ−2164、SILWET FZ−2171、ABN SILWET FZ−F1−009−01、ABN SILWET FZ−F1−009−02、ABN SILWET FZ−F1−009−03、ABN SILWET FZ−F1−009−05、ABN SILWET FZ−F1−009−09、ABN SILWET FZ−F1−009−11、ABN SILWET FZ−F1−009−13、ABN SILWET FZ−F1−009−54、ABN SILWET FZ−2222、信越化学工業(株)製のKF352A、KF6008、KF615A、KF6016、KF6017、GE東芝シリコーン(株)製のTSF4450、TSF4452等が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0038】
本発明の組成物における上記成分の配合量は、特に制限されるものではなく、通常、組成物全量に対して、好ましくは0.05〜20質量%、更に好ましくは0.2〜10質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%配合することができる。
[任意成分:酸化防止剤]
本発明では、組成物の香気安定性や色調安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、一般に知られている天然系酸化防止剤、合成系酸化防止剤ともに使用できる。具体的には、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、没食子酸プロピルの混合物、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、BHA(ブチル化ヒド
ロキシアニソール)、没食子酸プロピル、及びクエン酸の混合物、ハイドロキノン、三級ブチルハイドロキノン、天然のトコフェロール系化合物、没食子酸の長鎖エステル(C8〜C22)、例えば没食子酸ドデシル、チバスペシャルティケミカル(株)から入手可能なイルガノックス系化合物、クエン酸及び/またはクエン酸イソプロピル、4,5−ジヒドロキシ−m−ベンゼンスルホン酸/ナトリウム塩、ジメトキシフェノール、カテコール、メトキシフェノール、カロチノイド、フラン類、アミノ酸類等が挙げられる。
この中で、液体柔軟剤組成物の保存安定性の観点から、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、メトキシフェノール、トコフェロール系化合物等が好ましい。
酸化防止剤の配合量は、0.01〜1質量%の範囲で使用されることが好ましい。
【0039】
[任意成分:防腐剤]
防腐剤は、主に長期保存中の防腐性を保つために使用し、具体的には、イソチアゾロン系の有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系の有機硫黄化合物、安息香酸類、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールなどが挙げられる。イソチアゾロン系の有機硫黄化合物の例としては、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−ブチル−3−イソチアゾロン、2−ベンジル−3−イソチアゾロン、2−フェニル−3−イソチアゾロン、2−メチル−4,5−ジクロロイソチアゾロン、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、およびそれらの混合物があげられる。より好ましい防腐・殺菌剤は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとの水溶性混合物であり、さらに好ましくは約77%の5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと約23%の2−メチル-4−イソチアゾリン−3−オンとの水溶性混合物である。また、ベンズイソチアゾリン系の有機硫黄化合物の例としては、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オンなどがあげられ、類縁化合物としてジチオ−2,2−ビス(ベンズメチルアミド)なども使用できそれらを任意の混合比で使用することができる。このうち1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが特に好ましい。安息香酸類の例としては、安息香酸又はその塩、パラヒドロキシ安息香酸又はその塩、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香
酸ベンジル等を挙げることができ、防腐剤の配合量は、組成物全体に対して、0.0001〜1質量%である。
【0040】
[任意成分:染料]
染料の添加は任意であり、添加するとしても特に限定されない。染料を添加する場合は、添加の容易さから水溶性染料が好ましく、中でも酸性染料、直接染料から選ばれる水溶性染料の1種又は2種以上であることが好ましい。添加できる染料の具体例は、例えば染料便覧(有機合成化学協会編,昭和45年7月20日発行,丸善(株))、染料ノート第2
2版((株)色染社)、法定色素ハンドブック(日本化粧品工業連合会編、1988年11月28日発行、(株)薬事日報社)等に記載されている。染料の配合量は、組成物の全質量を基準として、好ましくは0.01〜50ppm、より好ましくは0.1〜30ppmとすることができる。このような配合量とすることにより、液体柔軟剤組成物に着色された色が非常に薄くなるのを防止でき、着色効果を充分なものとすることができる一方で、液体柔軟剤組成物に着色された色が濃くなりすぎるのを防止できる。
[任意成分:消泡剤、その他添加成分]
その他の添加剤として、食塩、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、クエン酸ナトリウム等の水溶性塩、流動パラフィン、高級アルコールなどの油剤、尿素、炭化水素、非イオン性セルロース誘導体、紫外線吸収剤、後述するpH調整剤等が挙げられる。
【0041】
[pH、粘度]
本発明の液体柔軟剤組成物のpHは特に限定されないが、保存経日に伴う(B)分の分子中に含まれ得るエステル基の加水分解を抑制する目的で、pHを1〜6の範囲に調整することが好ましく、2〜4の範囲であることがより好ましい。pH調整には、塩酸、硫酸、リン酸、アルキル硫酸、安息香酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、グリコール酸、フィチン酸、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等の短鎖アミン化合物、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属珪酸塩などのpH調整剤を用いることができる。
本発明の液体柔軟剤組成物の粘度は特に限定されないが、容器からの排出性、洗濯機への投入の際のハンドリング性等の点から、1000mPa・s(B型粘度計、TOKIMEC社製、25℃、以下同様)以下であることが好ましく、保存経日による粘度上昇を考慮すると、配合直後の粘度は5〜50mPa・sであるのがより好ましい。このような範囲にあると、前記の使用性が良好であるので好ましい。本発明の液体柔軟剤組成物の粘度をコントロールする目的で、無機又は有機の水溶性塩類を用いることができる。具体的には、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム等を用いることができるが、中でも塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。これらの水溶性塩類は液体柔軟剤組成物中に0〜1%程度配合でき、液体柔軟剤組成物製造のどの工程で配合しても構わない。
【0042】
[本発明の組成物の製造方法]
本発明の組成物は、(A)成分と(B)成分とを混合することにより製造することができる。(B)成分は、複数回に分けて添加してもよい。
【0043】
[繊維製品への使用方法]
本発明の液体柔軟剤組成物の使用方法は特に限定されないが、例えば洗濯のすすぎの段階ですすぎ水に本発明の組成物を溶解させて処理を行ったり、たらいのような容器を用い本発明の組成物を水に溶解させ、更に衣料を入れて浸漬処理する方法があるが、その場合は適度な濃度に希釈して使用される。その場合、浴比(繊維製品に対する処理液の重量比)は3〜100倍、特に5〜50倍であることが好ましい。具体的には、柔軟処理を行う際は、全使用水量に対し、(A)成分の濃度が5ppm〜1000ppmとなるような量で使用するのが好ましく、さらに好ましくは10ppm〜300ppmとなるような量で使用される。
【実施例】
【0044】
実施例及び比較例の液体柔軟剤組成物を調製するのに用いた成分を以下に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
〔(B)成分〕
(B)成分としては、合成品B-1〜B-5と市販品B-6及びB-7とを使用した。纏めて以下に示す。










【0047】
【表2】

【0048】
B-1〜B-5の合成方法を以下に示す。単量体(a)及び(b)として以下の表3に示すものを用いた。
【0049】
【表3】

【0050】
[製造例1:カルボン酸系共重合体(1)の合成]
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却器を備えたガラス製反応器を準備した。ここに、水100.00gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。内温が80℃で安定したところで、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数=9)39.72g、メタクリル酸 22.84g、水 106.20g、3−メルカプトプロピオン酸1.24gを混合したモノマー水溶液170.00gを4時間で、並びに過硫酸アンモニウム1.55gを溶かした水溶液30gを5時間で反応器に滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。
反応終了後、水酸化ナトリウムを用いて中和処理を施し(カルボン酸に対する中和度=70%)、固形分(カルボン酸系共重合体(1))を10質量%に調整した水溶液を得た。
【0051】
[製造例2:カルボン酸系共重合体(2)の合成]
水酸化ナトリウムに代えて、水酸化カルシウムを用いて中和処理を施したこと以外は、上記製造例1と同様の手法により、固形分(カルボン酸系共重合体(2))を10質量%に調整した水溶液を得た。
【0052】
[製造例3:カルボン酸系共重合体(3)の合成]
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却器を備えたガラス製反応器を準備した。ここに、水100.00gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。内温が80℃で安定したところで、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数=23)92.22g、メタクリル酸 22.84g、水 53.70g、3−メルカプトプロピオン酸1.24gを混合したモノマー水溶液170.00gを4時間で、並びに過硫酸アンモニウム1.55gを溶かした水溶液30gを5時間で反応器に滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。
反応終了後、水酸化ナトリウムを用いて中和処理を施し(カルボン酸に対する中和度=70%)、固形分(カルボン酸系共重合体(3))を30質量%に調整した水溶液を得た。
【0053】
[製造例4:カルボン酸系共重合体(4)の合成]
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却器を備えたガラス製反応器を準備した。ここに、水100.00gを仕込み、攪拌下に反応容器内を窒素置換して窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。内温が80℃で安定したところで、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数=23)92.23g、アクリル酸 18.90g、水 57.11g、3−メルカプトプロピオン酸1.24gを混合したモノマー水溶液170.00gを4時間で、並びに過硫酸アンモニウム1.55gを溶かした水溶液30gを5時間で反応器に滴下した。その後、1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。
反応終了後、水酸化ナトリウムを用いて中和処理を施し(カルボン酸に対する中和度=70%)、固形分(カルボン酸系共重合体(4))を30質量%に調整した水溶液を得た。
【0054】
[製造例5:カルボン酸系共重合体(5)の製造]
下記の成分を、冷却管、窒素ガス吹き込み管、温度計及び撹拌器を備えた4つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で80〜90℃に昇温して7時間撹拌することにより共重合反応を行った。反応終了後、約10mmHgの減圧下に110℃でトルエンを留去して常温で褐色の固体である共重合体を得た。
アルケニルエーテル:CH2=CHCH2O(C2H4O)33CH3 1524.0g
無水マレイン酸 102.9g
tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート 9.1g
トルエン 508.0g
【0055】
得られた共重合体の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーを用い以下の条件で測定した。
[共重合体の重量平均分子量測定条件]
機 種:Waters LCM1
検出器:示差屈折計(RI)検出器(Waters410)
溶離液:種類 アセトニトリル/0.05M酢酸ナトリウムイオン交換水溶液
=40/60(vol%)、酢酸でpH6.0に調整
流量 0.6ml/分
カラム:種類 東ソー(株)製、「TSK−GEL G4000SWXL」+
「G3000SWXL」+「G2000SWXL」+「GUARD COLUMN」
各 7.8×300mm、6.0×40mm
温度 40℃
検量線:ポリエチレングリコール基準
【0056】
任意成分として、以下の表4に示すC-1〜C-3を使用した。なお、表4中配合量は、液体柔軟剤組成物中の各成分の配合量を示す。
【0057】
【表4】

【0058】
C-1に含まれる香料組成物I-1、C-2及びC-3に含まれる香料組成物I-2の組成を表5に示す。











【0059】
【表5】

【0060】
C-3に含まれるポリエーテル変性シリコーンは次のようにして製造した。すなわち、攪拌装置、凝縮機、温度計および窒素挿入口を備えた1Lの4つ口フラスコに、下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを100g、イソプロピルアルコールを50g、ポリオキシアルキレン化合物としてCH2=CHCH2O−(C24O)10−CH3を11g、付加反応用触媒を0.2g、2%酢酸ナトリウムのイソプロピルアルコール溶液を0.3g投入して、これらを窒素雰囲気下、90℃で3時間反応させた。反応終了後、溶媒を減圧留去することにより目的のポリエーテル変性シリコーンを得た。
【0061】
【化4】

【0062】
上に示した(A)成分、(B)成分及び任意成分を用い、表6に示す組成に従って液体柔軟剤組成物を調製した。
液体柔軟剤組成物は、内径100mm、高さ150mmのガラス容器と、攪拌機(アジターSJ型、(株)島津製作所製)を用い、次の手順により調製した。まず、(A)成分、エタノール、ポリエーテル変性シリコーン及び香料を混合攪拌して、油相混合物を得た。一方、ノニオン界面活性剤、塩化カルシウム又は塩化マグネシウム6水塩、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、イソチアゾロン液、色素をバランス用精製水に溶解させて水相混合物を得た。ここで、バランス用イオン交換水の質量は、990gから油相混合物と(B)成分、ノニオン界面活性剤、塩化カルシウム又は塩化マグネシウム6水塩、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール、イソチアゾロン液、色素の合計質量を差し引いた残部に相当する。次に、(A)成分の融点以上に加温した油相混合物をガラス容器に収納して攪拌しながら、(A)成分の融点以上に加温した水相混合物を2度に分割して添加し、攪拌した。ここで、水相混合物の分割比率は35:65(質量比)とし、攪拌は回転速度1,000rpmで、1回目の水相混合物添加後に3分間、2回目の水相混合物添加後に2分間行った。その後(B)成分を添加し均一になるよう攪拌した。必要に応じて、塩酸(試薬1mol/L、関東化学(株)製)、または水酸化ナトリウム(試薬1mol/L、関東化学(株)製)を適量添加してpH2.5に調整し(25℃)、更に全体質量が1000gになるようにイオン交換水を添加して、実施例及び比較例の液体柔軟剤組成物を調製した。
【0063】
このようにして得られた液体柔軟剤組成物の黒ずみ抑制性能及び保存安定性を以下のようにして評価した。
[黒ずみ抑制性能評価方法]
<泥複合汚垢布の作成方法>
三方が原より採取した泥を無機汚垢として使用した。850mLのイオン交換水に無機汚垢30gを加えてホモジナイザー(KINEMATICA社製、商品名ポリトロン)で分散させながらトリオレイン20gを加えて安定な汚垢浴を作成した。この汚垢浴中に10cm×20cmの所定の清浄布(日本油化学協会指定綿布60番)を浸漬した後、ゴム製2本ロールで水を絞り、汚垢の付着量を均一化した。これを105℃で30分乾燥した後、その両面を左右に25回づつラビングした。そして5cm×5cmに裁断して反射率45±2%の範囲のものを泥複合汚垢布とした。
<前処理条件>
綿メリヤス白布(谷頭商店(株)製)を、電気洗濯機(三菱電機(株)製CW-C30A1-H)の標準コースにて洗浄(「トップ浸透ジェル」標準使用量、水温50℃、15分、浴比30倍)を2回行った後、流水すすぎを15分間×5回行った。(各洗浄、すすぎ間には全て5分間脱水した。)
【0064】
<柔軟剤処理>
U.S. Testing社のTerg-0-tometerを使用し、上で作成した泥複合汚垢布1枚と前処理した綿メリヤス白布(5cm×5cm、谷頭商店(株)製)5枚を入れ、3cm×3cm程度に切り出した任意の綿布をあわせて30gを市販洗剤「トップ浸透ジェル」(ライオン(株)製)0.60mLを用いて、25℃の水道水900mL(浴比30倍)で120rpm、10分間洗浄した。すすぎ3分を経て、すすぎ2回目に水道水900mL(浴比30倍)に、柔軟剤組成物を0.30mL添加して、Terg-0-tometerを使用して3分間柔軟仕上げ処理を行った。洗浄、すすぎの各工程間で脱水を1分間行った。その後、20℃、45%RHの恒温調湿室で乾燥させた。この工程を2度繰り返した。
柔軟剤組成物として、市販柔軟剤「ふんわりソフラン」(ライオン(株)製)を使用して上と同様に処理した綿メリヤス白布を標準品として作成した。標準品を対象にして、パネラー5人の官能による一対比較評価を行い、供試柔軟剤組成物の黒ずみ抑制効果を評価した。
下記評価基準に従って評価したパネラー5人の評価点数を平均し、1未満を×、1以上1.5未満を○、1.5以上を◎とした。結果を表6に示す。商品価値上、○以上が合格である。
[評価基準]
標準品と同等である……0(点)
標準品よりやや白い……1(点)
標準品より白い……2(点)
標準品よりかなり白い……3(点)
【0065】
[保存安定性の評価方法]
組成物を軽量PSガラスビン(PS No11、田沼硝子工業所製)に100ml入れて密閉し、50℃の恒温室に入れ、8週間貯蔵した。貯蔵後に25℃に冷却し、容器を左右に振ったり倒立させることにより、組成物の液性(粘度、相分離)を以下の基準に従って目視で評価した。結果を表6に示す。商品価値上、○以上を合格とした。
[評価基準]
◎:保存前と比較して粘度の変化が認められない。
○:保存前と比較して粘度の上昇が認められるが、容器を倒立させて内容物を排出させた際に3秒以内に内容物の95%以上が排出される。
×:容器を倒立させて内容物を排出させた際に3秒以内に内容物の95%以上が排出されない、又は組成物に相分離が認められる。















【0066】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と(B)成分とを含有することを特徴とする液体柔軟剤組成物:
(A) アミド基、エステル基及び/又はエーテル基で分断された炭素数12〜24の炭化水素基を分子内に1つ以上有する3級アミン化合物もしくはその酸塩又は4級アンモニウム化合物;
(B) 下記式(a)で示される単量体(a)と、式(b)で示される単量体(b)とから構成されるアニオン性を有する水溶性高分子;
【化1】

(式(a)中、R1は水素又はメチル基を表し、R2は炭素数1〜3のアルキレン基又はカルボニル基を表し、R3は炭素数2〜3のアルキレン基を表し、R4は水素又は炭素数1〜2のアルキル基を表し、nは1〜100の整数を表す。
式(b)中、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、メチル基又は−COOM2を表し(ただし、R5及びR6の双方が−COOM2である場合を除く)、R7は、水素原子、メチル基又は−CH2COOM3を表し(ただし、R7が−CH2COOM3である場合、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表す)、M1、M2及びM3は、それぞれ独立して水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)。
【請求項2】
(B)成分が、
式(a)中、nが1〜50の整数である単量体(a)と、
式(b)中、R5及びR6が、それぞれ独立して水素原子又は−COOM2を表し(ただし、R5及びR6の双方が−COOM2である場合を除く)、R7が、水素原子又はメチル基を表し、M1、M2及びM3が、それぞれ独立して金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す単量体(b)
とから構成されることを特徴とする請求項1記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が、500〜50,000の重量平均分子量を有する請求項1又は2記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(B)成分が更に、単量体(a)及び単量体(b)と共重合可能な単量体(c)を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
前記単量体(c)が、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;(メタ)アクリルアミド;マレイン酸又はフマル酸と炭素数1〜20個の脂肪族アルコール又は炭素数2〜4個のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜100のポリアルキレングリコールとのモノエステルあるいはジエステル;酢酸アルケニルエステル;芳香族ビニル;塩化ビニル;及び炭素数1〜20個の不飽和炭化水素からなる群から選ばれる液体柔軟剤組成物。
【請求項6】
(A)成分のカチオン荷電モル数αと(B)成分のアニオン荷電モル数βとの比α/βが、1.5/1〜100/1の範囲内である請求項1〜5のいずれか1項記載の液体柔軟剤組成物。

【公開番号】特開2009−155777(P2009−155777A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337927(P2007−337927)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】