液体水素用液面センサ及び液体水素用液面計
【課題】信頼性や精度が高く、大型化された貯蔵容器にも使用可能な液体水素用液面センサ及び液体水素用液面計を提供する。
【解決手段】固定用樹脂9によって、MgB2のB原子の一部をC原子に置換した長尺状の超伝導体と、超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えている液体水素用液面センサ1が内部に固定されている筒8を貯蔵容器内の液化ガスに浸し、ヒーター電源3からヒーター部7に電流を流して加温し、センサ1の液面より上の部分を常温状態とし、直流電流電源2からセンサ1に電流を流し、電圧計4でセンサ1の両端に発生する電圧を測定し、演算処理装置5により電圧値データから液面位置を算出し、モニター6に液面位置を表示する。
【解決手段】固定用樹脂9によって、MgB2のB原子の一部をC原子に置換した長尺状の超伝導体と、超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えている液体水素用液面センサ1が内部に固定されている筒8を貯蔵容器内の液化ガスに浸し、ヒーター電源3からヒーター部7に電流を流して加温し、センサ1の液面より上の部分を常温状態とし、直流電流電源2からセンサ1に電流を流し、電圧計4でセンサ1の両端に発生する電圧を測定し、演算処理装置5により電圧値データから液面位置を算出し、モニター6に液面位置を表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来に比べて高精度で測定できる液体水素用液面センサ、及び、この液体水素用液面センサを用いた液体水素用液面計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体水素や液体ヘリウム、液体ネオンなどの極低温液化ガスは、広く産業界において利用されている。特に最近では、環境に優しいクリーンエネルギー導入の観点から、液体水素が脚光を浴びている。
【0003】
上述のような液体水素を貯蔵する際、液量の把握及び安全管理の面から貯蔵容器内の液面を計測できる液面センサ及び液面計が必要であるが、すでに本発明者らの一部が下記特許文献1において、液面センサ及び液面計を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−139441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などの従来の液面センサ及び液面計は、液体水素の液面をある程度高い精度で測定できるものではあるが、近年では、さらに分解能が高く高精度で測定できるものが望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来よりも分解能が高く高精度で液体水素の液面を測定できる液体水素用液面センサ、及び、この液体水素用液面センサを用いた液体水素用液面計を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の液体水素用液面センサは、MgB2のB原子の一部をC原子に置換した長尺状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えているものである。別の観点から、本発明の液体水素用液面センサは、MgB2のB原子の一部をC原子に置換したコイル状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えているものでもよい。
【0008】
本発明の液体水素用液面センサは、前記超伝導体が、Mg(B1−xCx)2で表されるものであり、0.02≦x≦0.07であることが好ましい。
【0009】
本発明の液体水素用液面センサは、前記超伝導体が、加工の際、Mg及びBの混合粉末に、C単体、SiC、Mo2C又はAl4C3を添加して、前記MgB2のB原子を所定の割合でC原子に置換したものであることが好ましい。
【0010】
本発明の液体水素用液面センサは、前記被覆金属がNi−Cu合金であることが好ましい。
【0011】
本発明の液体水素用液面センサは、前記超伝導体の層と前記被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11であることが好ましい。
【0012】
本発明の液体水素用液面センサは、全体がU字型となるように形成されたものであることが好ましい。
【0013】
上記各構成によれば、使用される超伝導体の超電導転移温度を液体水素の液面を検知するのに適した温度に制御でき、従来よりも分解能が高く高精度の液体水素用液面センサを提供できる。
【0014】
本発明の液体水素用液面計は、上述の前記液体水素用液面センサと、前記液体水素用液面センサを加熱するヒーターと、前記液体水素用液面センサに電流を流す電源と、前記液体水素用液面センサにおける電圧を測定する電圧計とを備えている。
【0015】
上記構成により、液体水素用液面センサを加熱することができ、超低温液化ガスに一部を浸漬した際、浸漬部分と浸漬されていない部分とで温度の差異による抵抗値の差異をつけることができる。したがって、このとき、電流を液体水素用液面センサに流し、その電圧を電圧計で測定することで、液体水素用液面センサの抵抗値の変化を検知できるので、超低温液化ガスの液面位置を確実に検知することができる。また、ヒーターに入力する電力量を従来に比べて低くしても、液体水素用液面センサについて従来と同等以上の性能を引き出せるので、従来の物に比べて省エネルギー化された液体水素用液面計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、液体水素用液面計10(以下、液面計10とする)は、液体水素用液面センサ1(以下、センサ1とする)と、直流電流電源2と、ヒーター電源3と、電圧計4と、演算処理装置5と、モニター6と、ヒーター部7と、筒8と、固定用樹脂9とを備えている。なお、図1では、貯蔵容器(図示せず)内の超低温液化ガスに筒8が途中まで浸かっている状態を示している。
【0018】
センサ1は、金属被覆された超伝導体からなる長さが100cm以上の長尺状単芯線であって、常温の際の抵抗値が1Ω/m〜6Ω/m、熱伝導度が5W/(m・K)〜15W/(m・K)のものである。また、センサ1は、全体の断面の径が0.3mm〜2.0mmの線材であり、超伝導体の層と被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11である。
【0019】
上記超伝導体は、MgB2のBのうち一部がCに置換されているものであり、Mg(B1−xCx)2で表される。ここで、0.02≦x≦0.07である。上記超伝導体の被覆層となるシース材(金属筒)としては、Ni−Cu合金、Cu、Fe、ステンレス、Nbなどが挙げられる。ここで、上記超伝導体の層と、上記超伝導体の被覆層となるシース材との面積比は、平均で1:3〜1:11となるように調整されている。
【0020】
なお、上述のセンサ1は、いわゆるパウダー・イン・チューブ(powder−in−tube:PIT)法で作製することができる。このPIT法でも、Mg及びBと、C単体(例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ)、SiC、Mo2C又はAl4C3との混合粉末を被覆層となるシース材(金属筒)に詰めて加工し、熱処理によってMgB2を生成する方法(in−situ法)と、MgB2の化合物粉末をシース材に直接詰めて加工する方法(ex−situ法)とがあるが、どちらの方法を用いてもよい。
【0021】
直流電流電源2は、センサ1の一端と他端とに電気的に接続されており、センサ1に電流を流すためのものである。
【0022】
ヒーター電源3は、高電気抵抗体などであるヒーター部7の両端と電気的に接続されており、ヒーター部7に電流を流すことによって抵抗熱を発生させ、センサ1の上部を加温できる。
【0023】
電圧計4は、図示しない直流アンプを備え、センサ1の一端と他端とに電気的に接続されており、センサ1の電圧を計測するものである。
【0024】
演算処理装置5は、電圧計4で計測された電圧値からセンサ1の抵抗値を演算するものである。その演算結果はモニター6に表示される。
【0025】
筒8は、センサ1を内部に収納して保護するものである。センサ1は、筒8に固定用樹脂9によって固定されている。固定用樹脂9としては、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
なお、図示しないが、貯蔵容器において、センサ1と各機器とを接続する配線の取出し口は、貯蔵容器の内部圧力を上げた状態でも使用することができるように、配線が貫設されているハーメチックシールやO−リングを用いた耐圧型のものとなっている。また、配線に水素が接触することによって引火して燃焼・爆発することを防止するために、配線には絶縁材料を被覆している。この絶縁材料の例としては、センサ1の極低温部分では繊維強化プラスチック、室温部分では塩化ビニル樹脂が挙げられる。
【0027】
次に、液面計10の動作について説明する。まず、センサ1が内部に固定されている筒8を貯蔵容器内の液化ガスに浸し、ヒーター電源3からヒーター部7に電流を流して加温し、センサ1の液面より上の部分を常温状態としておく。次に、直流電流電源2からセンサ1に電流を流し、電圧計4でセンサ1の両端に発生する電圧を測定し、電圧値データを演算処理装置5に保存する。そして、測定データに基づいて定められたアルゴリズム(例えば、予め実験データから導いておいた電圧値と液面の位置との関係式による)にしたがって、演算処理装置5により電圧値データから液面位置を算出し、モニター6に液面位置を表示する。
【0028】
上記構成の液面計10によれば、超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異が大きいので、センサ1としての反応性(精度)が非常によい液面計10となる。したがって、直流電流電源2から電流をセンサ1に流し、その電圧を電圧計4で測定することで、センサ1の抵抗値の変化を検知できるので、これから演算を行えば、超低温液化ガスの液面位置を確実に検知することができる。また、ヒーター部7に入力する電力量を従来に比べて低くしても、液体水素用液面センサについて従来と同等以上の性能を引き出せるので、従来の物に比べて省エネルギー化された液体水素用液面計を提供できる。
【0029】
また、センサ1の熱伝導度が5W/(m・K)〜15W/(m・K)であるので、実用に十分な加温・冷却性能を有することができ、さらに反応性(精度)に優れた液面計10を提供できる。
【0030】
さらに、センサ1の長さが100cm以上であるので、従来に比べ長いセンサとでき、容器が深くても複数のセンサを縦につないで距離を得る必要がない。したがって、深さがある容器に対しても用いることができる液面計10を提供できる。
【0031】
センサ1が、全体の断面の径が0.3mm〜2.0mmの線材であり、超伝導体の層と被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11であるので、必要な強度及び加温・冷却性能を達成できるとともに、さらに反応性(精度)に優れた液面計10を提供できる。
【0032】
<第1実施形態の変形例>
次に、本発明の第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計について説明する。図2は、本発明の第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。なお、上記第1実施形態と同様の部位については説明を省略する。
【0033】
第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計は、センサ1の代わりにコイル状に巻かれた液体水素用液面センサ1a(以下、センサ1aとする)を用いている点で、第1実施形態の液面計10と異なっている。
【0034】
本変形例によれば、第1実施形態の液面計10と同様の作用・効果を奏することができる。また、センサ1aの実効長さを長くできるため、MgB2とCとを含有している超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異をさらに大きくすることができる。その結果として、さらに反応性(精度)に優れたセンサ1aを有する液体水素用液面計を提供できる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る液体水素用液面計について説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。なお、上記第1実施形態と同様の部位(符合2〜6、8、9に対応する符合12〜16、18、19)については説明を省略することがある。
【0036】
図3に示すように、液体水素用液面計20(以下、液面計20とする)は、液体水素用液面センサ11(以下、センサ11とする)と、直流電流電源12と、ヒーター電源13と、電圧計14と、演算処理装置15と、モニター16と、ヒーター部17と、筒18と、固定用樹脂19とを備えている。なお、図3では、第1実施形態と同様に、貯蔵容器(図示せず)内の超低温液化ガスに筒18が途中まで浸かっている状態を示している。
【0037】
液面計20は、センサ1及びヒーター部7の代わりにセンサ11及びヒーター部17a、17bを用いている点で、第1実施形態の液面計10と異なっている。
【0038】
センサ11は、U字型に折り返された状態で筒18に固定用樹脂19によって固定されており、筒18の上部において電極が取りやすくなっている。
【0039】
ヒーター部17a、17bは、センサ11の両端をそれぞれ加温できるように配設されており、ヒーター電源13と電気的に接続されている。
【0040】
上記構成の液面計20によれば、第1実施形態の液面計10と同様の作用・効果を奏することができる。また、センサ11の実効長さを長くできるため、MgB2とCとを含有している超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異をさらに大きくすることができる。その結果として、さらに反応性(精度)に優れたセンサ1を有する液面計20とできる。
【0041】
<第2実施形態の変形例>
次に、本発明の第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計について説明する。図4は、本発明の第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。
【0042】
第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計は、センサ11の代わりにコイル状に巻かれた液体水素用液面センサ11a(以下、センサ11aとする)を用いている点で、第2実施形態の液面計20と異なっている。
【0043】
本変形例によれば、第2実施形態の液面計20と同様の作用・効果を奏することができる。また、センサ11aの実効長さをさらに長くできるため、MgB2とCとを含有している超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異をより大きくすることができる。その結果として、さらに反応性(精度)に優れたセンサ11aを有する液体水素用液面計を提供できる。
【実施例】
【0044】
(実施例1〜7、比較例1、2、参考例1)
以下では、上記第1実施形態に係る液面計10と同構成の液面計を作製し、この液面計の性能の検証を行った。なお、同時に、比較例についても同様の検証を行った。以下に、実施例1〜7、比較例1、2、及び参考例1に係る液面計の具体的な作製方法及び検証方法について説明する。
【0045】
(センサの作製方法)
実施例1〜7、比較例1、2、及び参考例1の液面センサにおいては、PIT法のうちin−situ法を用いてセンサを作製した。具体的には、実施例においては、Mg、B及びSiCの混合粉末を被覆層となるNi−Cu筒(Ni:Cu=3:7)の内部に詰めて線引き加工した後、熱処理によって軸芯部分をMgB2とSiCとを含有する超伝導体の層にした。比較例においては、MgとBとの混合粉末を被覆層となるNi−Cu筒(Ni:Cu=3:7)の内部に詰めて線引き加工した後、熱処理によって軸芯部分をMgB2にした。また、参考例1については、実施例のSiCの代わりに、Fe2O3を用いたものとした。なお、このときの各センサの長さは2cmであり、超電導体の層における添加物の添加割合、被覆金属の層と超電導体の層との割合については、下記表1、2に示したとおりである。また、上記超伝導体の層と、上記超伝導体の被覆層となるシース材との面積比は、表2の径の値から、平均で、1:3(表2(1)より算出)〜1:11(表2(2)より算出)であることが理解できる。
【0046】
【表1】
【表2】
【0047】
(液面計の性能の検証方法)
室温から極低温まで、及び、極低温から室温までについて、作製した実施例1〜7、比較例1、2、及び参考例1における液面センサの電気抵抗の温度依存性を調べ、電気抵抗がゼロとなる超伝導転移温度を測定することによって検証した。超伝導転移温度付近についての結果を図5のグラフに示す。
【0048】
(結果の検証)
図5における比較例1、2と実施例1〜7との結果を比較すると、全体的にTc(オンセット)が低下していることがわかる。特に、実施例4は比較例1、2に比べて、Tc(オンセット)が2K〜4K低下し、実施例7では比較例1、2に比べて、Tc(オンセット)が4K〜5K低下していることがわかる。
【0049】
次に、比較例1及び実施例4の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量によって、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係がどのようになるかを調べた。比較例1の結果を図6(1W)及び図7(3W)のグラフに、実施例1の結果を図8(1W)及び図9(3W)のグラフに示す。
【0050】
比較例1の液体水素用液面計では、1Wの入力で0mm〜180mm程度、3Wの入力で0mm〜190mm程度の液面位置を検知可能であった。これに対して、実施例1の液体水素用液面計では、1W、3Wの入力どちらでも、0mm〜200mm程度の液面位置を高精度で検知可能であった。
【0051】
次に、比較例1及び実施例1、4、5、7の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量を変化させて、各入力量に対する比較例1及び実施例1、4、5、7の液体水素用液面計で検知した液面高さを調べるとともに、スケールを用いた実液面高さと比較した。比較例1及び実施例1、4、5、7の結果を順に図10〜図14のグラフに示す。なお、液面計の検知液面位置は、Tc(オンセット)における抵抗値を基準に算出している。
【0052】
図10〜図14から、比較例1に対して、実施例1、4、5、7では、ヒーター部への少ない入力量(1W程度)でも、液体水素の液面位置を高精度で検知できることがわかった。
【0053】
(実施例8)
次に、液面センサの超伝導体が、Mg(B1−xCx)2で表されるものであり、0.02≦x≦0.07であることを、実施例を用いて示す。
【0054】
まず、Mg(B1−xCx)2のxと超電導転移温度Tcとの関係を図15のグラフに示す(詳細は、以下の文献を参照。Carbon-substituted MgB2 single crystals, Sergey Lee, Takahiko Masui, Ayako Yamamoto, Hiroshi Uchiyama and Setsuko Tajima, Physica C397(2003)7-13)。この図15のグラフと、実施例4の液体水素用液面計における液面センサの特性(図5の実施例4参照)とから、xを導出する。ここで、図5のグラフによると、実施例4における液面センサでは、Tc(オンセット)=33K、Tc(オフセット)=30Kであることから、Tcの差を3Kとする。また、液体水素の沸点Tbと、上記Tc(オフセット)の差は約2Kとする。
【0055】
(1)Tb=20.3K〔1atm(0.1MPa)〕のとき、Tc(オンセット)=25Kとすると、図15のグラフから、x=0.07であることがわかる。
(2)Tb=27.2K〔5atm(0.5MPa)〕のとき、Tc(オンセット)=32Kとすると、図15のグラフから、x=0.04であることがわかる。
(3)Tb=31.3K〔10atm(1.0MPa)〕のとき、Tc(オンセット)=36Kとすると、図15のグラフから、x=0.02であることがわかる。
以上より、0.02≦x≦0.07と導出できた。
【0056】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。上記各実施形態や実施例でのセンサの形状を波形状としてもよいし、単芯状の線を圧延してテープ状にしてもよい。また、単芯状の線を束ねて線引き加工し、多芯センサとしてもよいし、この多芯センサを圧延してテープ状にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。
【図5】各実施例及び各比較例の液体水素用液面計における液面センサの電気抵抗の温度依存性を示すグラフである。
【図6】比較例1の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が1Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図7】比較例1の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が3Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図8】実施例4の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が1Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図9】実施例4の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が3Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図10】比較例1の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図11】実施例1の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図12】実施例4の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図13】実施例5の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図14】実施例7の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図15】実施例8に関するグラフであり、Mg(B1−xCx)2のxと、超電導転移温度Tcとの関係を示すものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来に比べて高精度で測定できる液体水素用液面センサ、及び、この液体水素用液面センサを用いた液体水素用液面計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体水素や液体ヘリウム、液体ネオンなどの極低温液化ガスは、広く産業界において利用されている。特に最近では、環境に優しいクリーンエネルギー導入の観点から、液体水素が脚光を浴びている。
【0003】
上述のような液体水素を貯蔵する際、液量の把握及び安全管理の面から貯蔵容器内の液面を計測できる液面センサ及び液面計が必要であるが、すでに本発明者らの一部が下記特許文献1において、液面センサ及び液面計を開示している。
【0004】
【特許文献1】特開2007−139441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1などの従来の液面センサ及び液面計は、液体水素の液面をある程度高い精度で測定できるものではあるが、近年では、さらに分解能が高く高精度で測定できるものが望まれている。
【0006】
そこで、本発明の目的は、従来よりも分解能が高く高精度で液体水素の液面を測定できる液体水素用液面センサ、及び、この液体水素用液面センサを用いた液体水素用液面計を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の液体水素用液面センサは、MgB2のB原子の一部をC原子に置換した長尺状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えているものである。別の観点から、本発明の液体水素用液面センサは、MgB2のB原子の一部をC原子に置換したコイル状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えているものでもよい。
【0008】
本発明の液体水素用液面センサは、前記超伝導体が、Mg(B1−xCx)2で表されるものであり、0.02≦x≦0.07であることが好ましい。
【0009】
本発明の液体水素用液面センサは、前記超伝導体が、加工の際、Mg及びBの混合粉末に、C単体、SiC、Mo2C又はAl4C3を添加して、前記MgB2のB原子を所定の割合でC原子に置換したものであることが好ましい。
【0010】
本発明の液体水素用液面センサは、前記被覆金属がNi−Cu合金であることが好ましい。
【0011】
本発明の液体水素用液面センサは、前記超伝導体の層と前記被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11であることが好ましい。
【0012】
本発明の液体水素用液面センサは、全体がU字型となるように形成されたものであることが好ましい。
【0013】
上記各構成によれば、使用される超伝導体の超電導転移温度を液体水素の液面を検知するのに適した温度に制御でき、従来よりも分解能が高く高精度の液体水素用液面センサを提供できる。
【0014】
本発明の液体水素用液面計は、上述の前記液体水素用液面センサと、前記液体水素用液面センサを加熱するヒーターと、前記液体水素用液面センサに電流を流す電源と、前記液体水素用液面センサにおける電圧を測定する電圧計とを備えている。
【0015】
上記構成により、液体水素用液面センサを加熱することができ、超低温液化ガスに一部を浸漬した際、浸漬部分と浸漬されていない部分とで温度の差異による抵抗値の差異をつけることができる。したがって、このとき、電流を液体水素用液面センサに流し、その電圧を電圧計で測定することで、液体水素用液面センサの抵抗値の変化を検知できるので、超低温液化ガスの液面位置を確実に検知することができる。また、ヒーターに入力する電力量を従来に比べて低くしても、液体水素用液面センサについて従来と同等以上の性能を引き出せるので、従来の物に比べて省エネルギー化された液体水素用液面計を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、液体水素用液面計10(以下、液面計10とする)は、液体水素用液面センサ1(以下、センサ1とする)と、直流電流電源2と、ヒーター電源3と、電圧計4と、演算処理装置5と、モニター6と、ヒーター部7と、筒8と、固定用樹脂9とを備えている。なお、図1では、貯蔵容器(図示せず)内の超低温液化ガスに筒8が途中まで浸かっている状態を示している。
【0018】
センサ1は、金属被覆された超伝導体からなる長さが100cm以上の長尺状単芯線であって、常温の際の抵抗値が1Ω/m〜6Ω/m、熱伝導度が5W/(m・K)〜15W/(m・K)のものである。また、センサ1は、全体の断面の径が0.3mm〜2.0mmの線材であり、超伝導体の層と被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11である。
【0019】
上記超伝導体は、MgB2のBのうち一部がCに置換されているものであり、Mg(B1−xCx)2で表される。ここで、0.02≦x≦0.07である。上記超伝導体の被覆層となるシース材(金属筒)としては、Ni−Cu合金、Cu、Fe、ステンレス、Nbなどが挙げられる。ここで、上記超伝導体の層と、上記超伝導体の被覆層となるシース材との面積比は、平均で1:3〜1:11となるように調整されている。
【0020】
なお、上述のセンサ1は、いわゆるパウダー・イン・チューブ(powder−in−tube:PIT)法で作製することができる。このPIT法でも、Mg及びBと、C単体(例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ)、SiC、Mo2C又はAl4C3との混合粉末を被覆層となるシース材(金属筒)に詰めて加工し、熱処理によってMgB2を生成する方法(in−situ法)と、MgB2の化合物粉末をシース材に直接詰めて加工する方法(ex−situ法)とがあるが、どちらの方法を用いてもよい。
【0021】
直流電流電源2は、センサ1の一端と他端とに電気的に接続されており、センサ1に電流を流すためのものである。
【0022】
ヒーター電源3は、高電気抵抗体などであるヒーター部7の両端と電気的に接続されており、ヒーター部7に電流を流すことによって抵抗熱を発生させ、センサ1の上部を加温できる。
【0023】
電圧計4は、図示しない直流アンプを備え、センサ1の一端と他端とに電気的に接続されており、センサ1の電圧を計測するものである。
【0024】
演算処理装置5は、電圧計4で計測された電圧値からセンサ1の抵抗値を演算するものである。その演算結果はモニター6に表示される。
【0025】
筒8は、センサ1を内部に収納して保護するものである。センサ1は、筒8に固定用樹脂9によって固定されている。固定用樹脂9としては、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0026】
なお、図示しないが、貯蔵容器において、センサ1と各機器とを接続する配線の取出し口は、貯蔵容器の内部圧力を上げた状態でも使用することができるように、配線が貫設されているハーメチックシールやO−リングを用いた耐圧型のものとなっている。また、配線に水素が接触することによって引火して燃焼・爆発することを防止するために、配線には絶縁材料を被覆している。この絶縁材料の例としては、センサ1の極低温部分では繊維強化プラスチック、室温部分では塩化ビニル樹脂が挙げられる。
【0027】
次に、液面計10の動作について説明する。まず、センサ1が内部に固定されている筒8を貯蔵容器内の液化ガスに浸し、ヒーター電源3からヒーター部7に電流を流して加温し、センサ1の液面より上の部分を常温状態としておく。次に、直流電流電源2からセンサ1に電流を流し、電圧計4でセンサ1の両端に発生する電圧を測定し、電圧値データを演算処理装置5に保存する。そして、測定データに基づいて定められたアルゴリズム(例えば、予め実験データから導いておいた電圧値と液面の位置との関係式による)にしたがって、演算処理装置5により電圧値データから液面位置を算出し、モニター6に液面位置を表示する。
【0028】
上記構成の液面計10によれば、超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異が大きいので、センサ1としての反応性(精度)が非常によい液面計10となる。したがって、直流電流電源2から電流をセンサ1に流し、その電圧を電圧計4で測定することで、センサ1の抵抗値の変化を検知できるので、これから演算を行えば、超低温液化ガスの液面位置を確実に検知することができる。また、ヒーター部7に入力する電力量を従来に比べて低くしても、液体水素用液面センサについて従来と同等以上の性能を引き出せるので、従来の物に比べて省エネルギー化された液体水素用液面計を提供できる。
【0029】
また、センサ1の熱伝導度が5W/(m・K)〜15W/(m・K)であるので、実用に十分な加温・冷却性能を有することができ、さらに反応性(精度)に優れた液面計10を提供できる。
【0030】
さらに、センサ1の長さが100cm以上であるので、従来に比べ長いセンサとでき、容器が深くても複数のセンサを縦につないで距離を得る必要がない。したがって、深さがある容器に対しても用いることができる液面計10を提供できる。
【0031】
センサ1が、全体の断面の径が0.3mm〜2.0mmの線材であり、超伝導体の層と被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11であるので、必要な強度及び加温・冷却性能を達成できるとともに、さらに反応性(精度)に優れた液面計10を提供できる。
【0032】
<第1実施形態の変形例>
次に、本発明の第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計について説明する。図2は、本発明の第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。なお、上記第1実施形態と同様の部位については説明を省略する。
【0033】
第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計は、センサ1の代わりにコイル状に巻かれた液体水素用液面センサ1a(以下、センサ1aとする)を用いている点で、第1実施形態の液面計10と異なっている。
【0034】
本変形例によれば、第1実施形態の液面計10と同様の作用・効果を奏することができる。また、センサ1aの実効長さを長くできるため、MgB2とCとを含有している超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異をさらに大きくすることができる。その結果として、さらに反応性(精度)に優れたセンサ1aを有する液体水素用液面計を提供できる。
【0035】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る液体水素用液面計について説明する。図3は本発明の第2実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。なお、上記第1実施形態と同様の部位(符合2〜6、8、9に対応する符合12〜16、18、19)については説明を省略することがある。
【0036】
図3に示すように、液体水素用液面計20(以下、液面計20とする)は、液体水素用液面センサ11(以下、センサ11とする)と、直流電流電源12と、ヒーター電源13と、電圧計14と、演算処理装置15と、モニター16と、ヒーター部17と、筒18と、固定用樹脂19とを備えている。なお、図3では、第1実施形態と同様に、貯蔵容器(図示せず)内の超低温液化ガスに筒18が途中まで浸かっている状態を示している。
【0037】
液面計20は、センサ1及びヒーター部7の代わりにセンサ11及びヒーター部17a、17bを用いている点で、第1実施形態の液面計10と異なっている。
【0038】
センサ11は、U字型に折り返された状態で筒18に固定用樹脂19によって固定されており、筒18の上部において電極が取りやすくなっている。
【0039】
ヒーター部17a、17bは、センサ11の両端をそれぞれ加温できるように配設されており、ヒーター電源13と電気的に接続されている。
【0040】
上記構成の液面計20によれば、第1実施形態の液面計10と同様の作用・効果を奏することができる。また、センサ11の実効長さを長くできるため、MgB2とCとを含有している超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異をさらに大きくすることができる。その結果として、さらに反応性(精度)に優れたセンサ1を有する液面計20とできる。
【0041】
<第2実施形態の変形例>
次に、本発明の第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計について説明する。図4は、本発明の第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。
【0042】
第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計は、センサ11の代わりにコイル状に巻かれた液体水素用液面センサ11a(以下、センサ11aとする)を用いている点で、第2実施形態の液面計20と異なっている。
【0043】
本変形例によれば、第2実施形態の液面計20と同様の作用・効果を奏することができる。また、センサ11aの実効長さをさらに長くできるため、MgB2とCとを含有している超伝導体の層における超伝導状態部分と常電導状態部分との抵抗値の差異をより大きくすることができる。その結果として、さらに反応性(精度)に優れたセンサ11aを有する液体水素用液面計を提供できる。
【実施例】
【0044】
(実施例1〜7、比較例1、2、参考例1)
以下では、上記第1実施形態に係る液面計10と同構成の液面計を作製し、この液面計の性能の検証を行った。なお、同時に、比較例についても同様の検証を行った。以下に、実施例1〜7、比較例1、2、及び参考例1に係る液面計の具体的な作製方法及び検証方法について説明する。
【0045】
(センサの作製方法)
実施例1〜7、比較例1、2、及び参考例1の液面センサにおいては、PIT法のうちin−situ法を用いてセンサを作製した。具体的には、実施例においては、Mg、B及びSiCの混合粉末を被覆層となるNi−Cu筒(Ni:Cu=3:7)の内部に詰めて線引き加工した後、熱処理によって軸芯部分をMgB2とSiCとを含有する超伝導体の層にした。比較例においては、MgとBとの混合粉末を被覆層となるNi−Cu筒(Ni:Cu=3:7)の内部に詰めて線引き加工した後、熱処理によって軸芯部分をMgB2にした。また、参考例1については、実施例のSiCの代わりに、Fe2O3を用いたものとした。なお、このときの各センサの長さは2cmであり、超電導体の層における添加物の添加割合、被覆金属の層と超電導体の層との割合については、下記表1、2に示したとおりである。また、上記超伝導体の層と、上記超伝導体の被覆層となるシース材との面積比は、表2の径の値から、平均で、1:3(表2(1)より算出)〜1:11(表2(2)より算出)であることが理解できる。
【0046】
【表1】
【表2】
【0047】
(液面計の性能の検証方法)
室温から極低温まで、及び、極低温から室温までについて、作製した実施例1〜7、比較例1、2、及び参考例1における液面センサの電気抵抗の温度依存性を調べ、電気抵抗がゼロとなる超伝導転移温度を測定することによって検証した。超伝導転移温度付近についての結果を図5のグラフに示す。
【0048】
(結果の検証)
図5における比較例1、2と実施例1〜7との結果を比較すると、全体的にTc(オンセット)が低下していることがわかる。特に、実施例4は比較例1、2に比べて、Tc(オンセット)が2K〜4K低下し、実施例7では比較例1、2に比べて、Tc(オンセット)が4K〜5K低下していることがわかる。
【0049】
次に、比較例1及び実施例4の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量によって、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係がどのようになるかを調べた。比較例1の結果を図6(1W)及び図7(3W)のグラフに、実施例1の結果を図8(1W)及び図9(3W)のグラフに示す。
【0050】
比較例1の液体水素用液面計では、1Wの入力で0mm〜180mm程度、3Wの入力で0mm〜190mm程度の液面位置を検知可能であった。これに対して、実施例1の液体水素用液面計では、1W、3Wの入力どちらでも、0mm〜200mm程度の液面位置を高精度で検知可能であった。
【0051】
次に、比較例1及び実施例1、4、5、7の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量を変化させて、各入力量に対する比較例1及び実施例1、4、5、7の液体水素用液面計で検知した液面高さを調べるとともに、スケールを用いた実液面高さと比較した。比較例1及び実施例1、4、5、7の結果を順に図10〜図14のグラフに示す。なお、液面計の検知液面位置は、Tc(オンセット)における抵抗値を基準に算出している。
【0052】
図10〜図14から、比較例1に対して、実施例1、4、5、7では、ヒーター部への少ない入力量(1W程度)でも、液体水素の液面位置を高精度で検知できることがわかった。
【0053】
(実施例8)
次に、液面センサの超伝導体が、Mg(B1−xCx)2で表されるものであり、0.02≦x≦0.07であることを、実施例を用いて示す。
【0054】
まず、Mg(B1−xCx)2のxと超電導転移温度Tcとの関係を図15のグラフに示す(詳細は、以下の文献を参照。Carbon-substituted MgB2 single crystals, Sergey Lee, Takahiko Masui, Ayako Yamamoto, Hiroshi Uchiyama and Setsuko Tajima, Physica C397(2003)7-13)。この図15のグラフと、実施例4の液体水素用液面計における液面センサの特性(図5の実施例4参照)とから、xを導出する。ここで、図5のグラフによると、実施例4における液面センサでは、Tc(オンセット)=33K、Tc(オフセット)=30Kであることから、Tcの差を3Kとする。また、液体水素の沸点Tbと、上記Tc(オフセット)の差は約2Kとする。
【0055】
(1)Tb=20.3K〔1atm(0.1MPa)〕のとき、Tc(オンセット)=25Kとすると、図15のグラフから、x=0.07であることがわかる。
(2)Tb=27.2K〔5atm(0.5MPa)〕のとき、Tc(オンセット)=32Kとすると、図15のグラフから、x=0.04であることがわかる。
(3)Tb=31.3K〔10atm(1.0MPa)〕のとき、Tc(オンセット)=36Kとすると、図15のグラフから、x=0.02であることがわかる。
以上より、0.02≦x≦0.07と導出できた。
【0056】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。上記各実施形態や実施例でのセンサの形状を波形状としてもよいし、単芯状の線を圧延してテープ状にしてもよい。また、単芯状の線を束ねて線引き加工し、多芯センサとしてもよいし、この多芯センサを圧延してテープ状にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る液体水素用液面計の概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態の変形例に係る液体水素用液面計に用いる液体水素用液面センサを示す図である。
【図5】各実施例及び各比較例の液体水素用液面計における液面センサの電気抵抗の温度依存性を示すグラフである。
【図6】比較例1の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が1Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図7】比較例1の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が3Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図8】実施例4の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が1Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図9】実施例4の液体水素用液面計におけるヒーター部への入力量が3Wの場合の、液面センサの抵抗値とスケール上の液体水素の実測液面位置との関係を示すグラフである。
【図10】比較例1の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図11】実施例1の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図12】実施例4の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図13】実施例5の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図14】実施例7の液体水素用液面計における液面計検知液面とスケール上の実液面との関係を示すグラフである。
【図15】実施例8に関するグラフであり、Mg(B1−xCx)2のxと、超電導転移温度Tcとの関係を示すものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgB2のB原子の一部をC原子に置換した長尺状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えていることを特徴とする液体水素用液面センサ。
【請求項2】
MgB2のB原子の一部をC原子に置換したコイル状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えていることを特徴とする液体水素用液面センサ。
【請求項3】
前記超伝導体が、Mg(B1−xCx)2で表されるものであり、0.02≦x≦0.07であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項4】
前記超伝導体が、加工の際、Mg及びBの混合粉末に、C単体、SiC、Mo2C又はAl4C3を添加して、前記MgB2のB原子を所定の割合でC原子に置換したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項5】
前記被覆金属がNi−Cu合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項6】
前記超伝導体の層と前記被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項7】
全体がU字型となるように形成された請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の前記液体水素用液面センサと、前記液体水素用液面センサを加熱するヒーターと、前記液体水素用液面センサに電流を流す電源と、前記液体水素用液面センサにおける電圧を測定する電圧計とを備えていることを特徴とする液体水素用液面計。
【請求項1】
MgB2のB原子の一部をC原子に置換した長尺状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えていることを特徴とする液体水素用液面センサ。
【請求項2】
MgB2のB原子の一部をC原子に置換したコイル状の超伝導体と、前記超伝導体の表面を覆っている被覆金属とを備えていることを特徴とする液体水素用液面センサ。
【請求項3】
前記超伝導体が、Mg(B1−xCx)2で表されるものであり、0.02≦x≦0.07であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項4】
前記超伝導体が、加工の際、Mg及びBの混合粉末に、C単体、SiC、Mo2C又はAl4C3を添加して、前記MgB2のB原子を所定の割合でC原子に置換したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項5】
前記被覆金属がNi−Cu合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項6】
前記超伝導体の層と前記被覆金属の層との断面積比が、1:3〜1:11であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項7】
全体がU字型となるように形成された請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体水素用液面センサ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の前記液体水素用液面センサと、前記液体水素用液面センサを加熱するヒーターと、前記液体水素用液面センサに電流を流す電源と、前記液体水素用液面センサにおける電圧を測定する電圧計とを備えていることを特徴とする液体水素用液面計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−175034(P2009−175034A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14998(P2008−14998)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年11月20日低温工学会(特許庁長官が指定する学術団体である「社団法人 低温工学協会」の下部組織)主催、国立大学法人東北大学共催の「2007年度秋季低温工学・超電導学会」においてプレゼンテーションソフトによって発表、平成19年11月13日 http://www.csj.or.jp/jcryo/07a/07a.html、http://www.csj.or.jp/jcryo/07a/2007Aprogram−a113.pdf、http://www.csj.or.jp/jcryo/07a/abstracts2007a/pdf を通じて発表
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年11月20日低温工学会(特許庁長官が指定する学術団体である「社団法人 低温工学協会」の下部組織)主催、国立大学法人東北大学共催の「2007年度秋季低温工学・超電導学会」においてプレゼンテーションソフトによって発表、平成19年11月13日 http://www.csj.or.jp/jcryo/07a/07a.html、http://www.csj.or.jp/jcryo/07a/2007Aprogram−a113.pdf、http://www.csj.or.jp/jcryo/07a/abstracts2007a/pdf を通じて発表
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【出願人】(000158301)岩谷瓦斯株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
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