説明

液体洗浄剤組成物

【課題】 低刺激性であり、かつ低温安定性、経時安定性にすぐれ、泡立ちと泡沫安定性がよく、泡のクリーミイ感に優れ、すすぎ時のぬめり感がなく、すすぎ後の皮膚にぬめり感やつっぱり感を与えず、さっぱりした感触を与える液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】 (a)サルフェート型アニオン界面活性剤、(b)ポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤および(c)脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤を必須成分として含有する液体洗浄剤組成物であって、成分(a)、(b)および(c)の界面活性剤濃度が液体洗浄剤組成物当たり20〜30重量%であり、成分(a)と成分(b)の重量比が5.1/1〜2.4/1であり、かつ成分(a)と成分(c)の重量比が12.75/1〜4.01/1であることを特徴とする液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、サルフェート型アニオン界面活性剤、エタノールアマイド型非イオン界面活性剤および脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤を含有する液体洗浄剤において、低温安定性、経時安定性にすぐれ、泡立ちと泡沫安定性がよく、泡のクリーミイ感に優れ、すすぎ時のぬめり感がなく、すすぎ後の皮膚にぬめり感やつっぱり感を与えず、さっぱりした感触を与える液体洗浄剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、シャンプーやボディーソープ等の身体を洗浄する洗浄剤として、低刺激性であることが求められるようになっている。低刺激性が求められる洗浄剤組成物には、界面活性剤として、例えば脂肪酸アミドアミン型両性界面活性剤、脂肪酸アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤等が広く使用されている。
【0003】脂肪酸アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤を配合した洗浄剤組成物として、特公平5−53840号がある。同号公報には、サルフェート型アニオン界面活性剤と一般式(5)
【0004】
【化5】


【0005】[式中R5は平均炭素数7ないし19のアルキル基又はアルケニル基を表し、p及びqは整数でp+qは1ないし5である]で示される脂肪酸アルカノールアマイドと脂肪酸アミドプロピルベタイン型両性活性剤を特定の比率で組み合わせた低刺激性の洗浄剤組成物が開示されている。
【0006】しかしながら、本発明者らの追試によれば前記一般式(5)で示される脂肪酸アルカノールアマイドの種類によっては、低温安定性の悪い処方となることが判明した。すなわち、一般式(5)において、p=0,p+q<2ないしは、q=0,p+q<2で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノアルカノールアマイドに関しては、物質自体の凝固点が60℃以上と高いため、このようなポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアマイドを使用して特公平5−53840号に準じて製造した洗浄剤組成物の一部は、室温以下では白濁あるいは固化してしまい、実用上使用できない。さらに同号公報に示された配合組成では、洗いあがり後にヌルつきが残り、さっぱり感にかけるという問題があり、使用感を充分に満足させるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようする課題は、低刺激性であり、かつ低温安定性、経時安定性にすぐれ、泡立ちと泡沫安定性がよく、泡のクリーミイ感に優れ、すすぎ時のぬめり感がなく、すすぎ後の皮膚にぬめり感やつっぱり感を与えず、さっぱりした感触を与える液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、特定のポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤とサルフェート型アニオン界面活性剤と脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤をそれぞれ特定比率で配合することにより、上記課題が解決できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち本発明は、(a)一般式(1)
【0010】
【化6】


【0011】[式中R1は炭素数10〜16の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基またはアルケニル基、nは0〜5の平均付加モル数、Mは水素カチオンまたはアルカリ金属カチオンを示す。]で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤、(b)一般式(2)
【0012】
【化7】


【0013】[式中R2COは炭素数6〜18の直鎖もしくは分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸残基を示し、mは2〜4の平均付加モル数を示す。]で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤および(c)一般式(3)
【0014】
【化8】


【0015】[式中R3COは炭素数6〜18の直鎖もしくは分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸残基を示し、pは2または3、R4およびR5は各々独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。]で示される脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤を必須成分として含有する液体洗浄剤組成物において、成分(a)、(b)および(c)の界面活性剤濃度が液体洗浄剤組成物当たり20〜30重量%であって、成分(a)と成分(b)の重量比が5.1/1〜2.4/1であり、かつ成分(a)と成分(c)の重量比が12.75/1〜4.01/1であることを特徴とする液体洗浄剤組成物に関するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明における成分(a)であるサルフェート型アニオン界面活性剤は、前記一般式(1)で示される化合物である。
【0017】具体的には、ラウリルサルフェート、ミリストイルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート等が挙げられるが、入手のし易さ、刺激性の点から直鎖アルキル疎水基の炭素数が12〜14であって、オキシエチレンの平均付加モル数nが2〜4で示されるラウリルエーテルサルフェート類が好ましい。サルフェート型アニオンの対イオンとしては1価またはは2価のアルカリ金属イオンと水素イオンが好ましい。
【0018】本発明における成分(b)であるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤は、前記一般式(2)で示される化合物である。
【0019】一般式(2)において、R2COは炭素数6〜18の不飽和結合を含んでいてもよい直鎖もしくは分枝鎖の脂肪酸残基であり、例えばラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ脂肪酸残基、パーム核油脂肪酸残基等が挙げられる。低温下での安定性が良好でかつ入手の容易さよりラウロイル基、ヤシ油脂肪酸残基、パーム核油脂肪酸残基が好ましい。
【0020】一般式(2)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤の親水基部分は、さまざまなオキシエチレン基の付加モル数をもつポリオキシエチレンで構成され、mはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。本発明に適する平均付加モル数mは2〜4であり、特にm=2のときに、起泡力および増粘性において優れている。m=5を超えると起泡力が顕著に低下するので好ましくない。なお、前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイドに不純物として脂肪酸アルカノールアマイドが含まれてしまう。不純物としての脂肪酸アルカノールアマイドは、一般式(4)
【0021】
【化9】


【0022】[式中R4COは炭素数6〜18の直鎖もしくは分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸残基を示す。]で示される脂肪酸アルカノールアマイドであるが、このものは低温安定性が悪い。従って、一般式(2)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤においては、一般式(4)で示される脂肪酸アルカノールアマイドの含有量が低い程良いが、不純物としての脂肪酸アルカノールアマイドが10重量%以下であることが低温安定性の点で望ましい。
【0023】一般式(2)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤を具体的に例示すれば、例えばポリオキシエチレン(2)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアマイド、ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアマイド、ポリオキシエチレン(3)ミリスチン酸モノエタノールアマイド等であるが、コスト、入手の容易さの点で、ポリオキシエチレン(2)ラウリン酸モノエタノールアマイドが特に好ましい。
【0024】本発明の成分(c)である脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤は、一般式(3)で示され化合物である。一般式(3)において、親油基のR3COは炭素数が6から18の脂肪酸残基であり、例えば、ラウロイル基、ミリストイル基、ヤシ脂肪酸残基、またはパーム核油脂肪酸残基等が挙げられる。
【0025】一般式(3)で示される脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤を具体的に例示すれば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタインやそれらの脱塩品が挙げられるが、コスト及び入手の容易さの点でラウリン酸アミドプロピルベタインが特に好ましい。
【0026】本発明に適用される成分(a),(b),(c)の組成は、界面活性剤濃度20〜30重量%の液体洗浄剤おいて、本発明の効果を発揮する。界面活性剤総量が20%を下回ると、泡立ちが不十分であり、30%を超えるとゲル化を引き起こす場合があり好ましくない。
【0027】また、本発明の液体洗浄剤組成物においては、上記成分(a)、(b)および(c)を必須成分とし、成分(a)と成分(b)の重量比が5.1/1〜2.4/1であり、かつ成分(a)と成分(c)の比率が12.75/1〜4.01/1の特定範囲にあることを必須の要件とするものである。本発明における、成分(a)、(b)、(c)の配合比率の範囲を図1に三角図として図示する。図1中、実線で示した領域が上記範囲である。
【0028】成分(a)と成分(b)の比率において、成分(b)が所定の範囲より多く配合されると、低温安定性が維持できず、所定の範囲より少なく配合されると、配合物の泡質が悪くなり、起泡安定性が低下するため好ましくない。
【0029】また、成分(a)と成分(c)の比率において、成分(c)の比率が所定の範囲より多く配合されると、すすぎ時のぬめり感が増大し、サッパリとした感触が得られず、所定の範囲より少なく配合されると、充分な初期起泡を得ることができず、好ましくない。
【0030】さらに本発明の範囲内において、以下の範囲が優れた性能と使用感を有する。すなわち、成分(a)、(b)、(c)が以下の特定の範囲((a)+(b)+(c))/(b)の重量比が4/1〜6.5/1、かつ、(b)/(c)の重量比が1.67/1〜2.5/1であることがさらに好ましい。この好ましい範囲を、図1において斜線で示した。
【0031】本発明の液体洗浄剤組成物は透明均一系であり、さらに必要に応じて高級アルコール、シリコン油、流動パラフィン、エステル油等の油分、プロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール等の保湿成分、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、動植物の天然エキスおよびその誘導体、クエン酸、乳酸等の有機酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩、香料、染料等の色剤、防腐剤、キレート剤、紫外線吸収剤などの一般に液体洗浄剤組成物に配合される成分を配合することができる。
【0032】本発明の液体洗浄剤組成物は、頭髪用シャンプー、ボディー用洗浄剤、洗顔料、メイク落し用洗浄剤、台所用液体洗剤、医療用洗剤、その他各種の用途に利用できる。
【0033】
【実施例】製造例1(ポリオキシエチレン(1)ラウリン酸ジグリコールアミドの調製)
ラウリン酸メチル214gにジグリコールアミン106gおよびナトリウムメトキサイド1gを加え、副生成するメタノールを減圧下留去しながら加熱攪拌(20mmHg、140℃、1時間)して、ラウリン酸ジグリコールアミド(288g)を調製した。これをオートクレーブに入れて90℃に加熱し、攪拌しながら、これにエチレンオキサイド44g(1倍モル当量)をガス状で吹き込み、120℃で2時間反応させ、ポリオキシエチレン(1)ラウリン酸ジグリコールアミドを得た。上記のように、このポリオキシエチレン(1)ラウリン酸ジグリコールアミドは、ラウリン酸ジグリコールアミドにエチレンオキサイドを付加させた混合物であり、一般式(4)で表される化合物である脂肪酸アルカノールアミドは含有しないものであった。
【0034】実施例1〜11、比較例1〜11表1に示す界面活性剤を用いて、表2及び表3に示す量の有効成分を含有する液体洗浄剤組成物を調製し、その性能を評価した。配合量は重量%である。なお、各実施例および各比較例の配合組成を図2に示す。
【0035】調製した液体洗浄剤について、起泡力試験、粘度、低温安定性、経時安定性、使用感評価を測定、評価した。それぞれの測定方法と評価方法を以下に示す。
【0036】[起泡力試験]ロス・マイルス試験法に基づき、試料濃度0.25%、pH=7の水溶液を200ml調製し、40℃にて起泡力を測定した。
◎・・・非常に良好(泡の高さが190mm以上である)
○・・・良好(泡の高さが180mm以上190mm未満である)
△・・・ふつう(泡の高さが175mm以上180mm未満である)
×・・・不良(泡の高さが175mm未満である)
【0037】[粘度測定]B型粘度計(イワキガラス社製)を使用して、25℃における各試料の粘度(mPa・S)を測定した。
【0038】[低温安定性]洗浄剤組成物を低温(−5℃)の恒温槽に3日間保存したのち、その外観を目視により観察して評価した。評価基準は下記の通りである。
○・・・透明均一であり、濁りや分離・分層が認められない△・・・不透明あるいは不均一となるが、室温で保存すると透明均一にもどる×・・・不透明あるいは不均一であり、室温で保存しても透明均一にもどらない
【0039】[経時安定性]洗浄剤組成物を50℃の恒温槽に1ヶ月保存して、色相の変化を目視により観察して評価した。色相はAPHAを基準にして測定をした。
◎・・・非常に良好(APHAの変化が60未満である)
○・・・良好(APHAの変化が60以上80未満である)
△・・・ふつう(APHAの変化が80以上100未満である)
×・・・不良(APHAの変化が100以上である)
【0040】[使用感評価]各洗浄剤組成物につき、男女5名、計10名のパネルを用いて、官能で使用感(さっぱり感)を評価した。なお、評価基準は下記の通りである。
◎・・・非常に良好(10人中8〜10名が良いと答えた)
○・・・良好(10人中6〜7名が良いと答えた)
△・・・ふつう(10人中3〜5名が良いと答えた)
×・・・不良(10人中0〜2名が良いと答えた)
【0041】
【表1】


【0042】
【表2】


【0043】
【表3】


【0044】表2および表3に示した結果から明らかなように、本発明の液体洗浄剤組成物は、いずれも起泡力、低温安定性、経時安定性に優れ、つっぱり感がなかった。また、実施例1〜11の本発明の液体洗浄剤組成物は、いずれもクリーミイな泡立ちで、すすぎ時のぬめり感がなく、手を荒らすことがなかった。
【0045】
【発明の効果】本発明により、低刺激性であり、かつ低温安定性、経時安定性にすぐれ、泡立ちと泡沫安定性がよく、泡のクリーミイ感に優れ、すすぎ時のぬめり感がなく、すすぎ後の皮膚にぬめり感やつっぱり感を与えず、さっぱりした感触の液体洗浄剤組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1および請求項2の成分(a)、(b)および(c)の配合範囲を示す三角図。
【図2】 実施例および比較例の配合組成を示す三角図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (a)一般式(1)
【化1】


[式中R1は炭素数10〜16の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基またはアルケニル基、nは0〜5の平均付加モル数、Mは水素カチオンまたはアルカリ金属カチオンを示す。]で示されるサルフェート型アニオン界面活性剤、(b)一般式(2)
【化2】


[式中R2COは炭素数6〜18の直鎖もしくは分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸残基を示し、mは2〜4の平均付加モル数を示す。]で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイド型非イオン界面活性剤および(c)一般式(3)
【化3】


[式中R3COは炭素数6〜18の直鎖もしくは分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸残基を示し、pは2または3、R4およびR5は各々独立に水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示す。]で示される脂肪酸アミドベタイン型両性界面活性剤を必須成分として含有する液体洗浄剤組成物であって、成分(a)、(b)および(c)の界面活性剤濃度が液体洗浄剤組成物当たり20〜30重量%であり、成分(a)と成分(b)の重量比が5.1/1〜2.4/1であり、かつ成分(a)と成分(c)の重量比が12.75/1〜4.01/1であることを特徴とする液体洗浄剤組成物。
【請求項2】 前記成分(a)、(b)、(c)において、((a)+(b)+(c))/(b)の重量比が4/1〜6.5/1であり、かつ(b)/(c)の重量比が1.67/1〜2.5/1であることを特徴とする請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】 不純物としての一般式(4)
【化4】


[式中R4COは炭素数6〜18の直鎖もしくは分枝鎖の飽和または不飽和脂肪酸残基を示す。]で示される脂肪酸アルカノールアマイドの含有率が10重量%未満である前記一般式(2)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸モノエタノールアマイドを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の液体洗浄剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2001−131600(P2001−131600A)
【公開日】平成13年5月15日(2001.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−317672
【出願日】平成11年11月9日(1999.11.9)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】