説明

液体洗浄剤組成物

【課題】油汚れなど汚れ負荷の高い洗浄において、優れた洗浄性と抗菌性を有し、且つ、低温下の保存安定性に優れた液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)非イオン界面活性剤10〜50質量%、(b)陰イオン界面活性剤0.25〜5質量%、(c)ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩、ポリリジン、及びポリリジンの酸塩から選ばれる1種以上を0.01〜2質量%(但し、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩又はポリリジンの酸塩の量は、それぞれ、ポリヘキサメチレンビグアニド換算又はポリリジン換算の量である)、(d)陽イオン界面活性剤、並びに、(e)両性界面活性剤を含有し、モル比(b)/(d)が0.1〜1.0、モル比(d)/(e)が0.20〜5である、液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物に関する。特に、業務用施設の厨房における調理器具や洗浄道具の除菌性に優れる液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
業務用施設の厨房周りは非常に高い衛生管理が求められているが、現場調査の結果、まな板などの調理器具や特にスポンジなどの洗浄道具に菌が残りやすいことがわかっている。また、洗浄道具は菌が繁殖しやすい場所となっており、洗浄道具で増殖した菌が調理器具や食器類、さらには食物に交差汚染することが懸念される。そこで、洗浄道具の抗菌が要望される。従来、食器や調理器具の洗浄に用いられる液体洗浄剤組成物に、抗菌性を付与することが提案されており、そのような液体洗浄剤組成物を用いることは、洗浄に用いるスポンジなどの洗浄道具の抗菌にもつながる。
【0003】
特許文献1には、アニオン系界面活性剤とビグアニド系殺菌剤を併用する殺菌洗浄剤の技術が記載されている。また、特許文献2には、カチオン殺菌剤、アニオン及びハイドロトロープを含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。また、特許文献3には、アルキル基及び糖残基を有する界面活性剤と両性界面活性剤を含有し、殺生剤としてビグアニドや第四級アンモニウム化合物を含有する殺生洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−26894号公報
【特許文献2】特開2002−53899号公報
【特許文献3】特表2004−526833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した通り、業務用施設の厨房周りにおける洗浄道具では多数の菌が検出されることが判っている。しかし、洗浄道具に菌汚染があったとしても、その洗浄道具の菌数を低減することにより、食器、調理器具や、食物の交差汚染も低減出来ると考えられる。
【0006】
業務用施設の厨房などにて使用される洗浄道具は、一般家庭で使用されるものに比べ非常に汚れ負荷が高く、さらにはスポンジなどの多孔性材料からなる洗浄道具中ではバイオフィルムも多く存在するものと考えられ、洗浄剤により洗浄道具の除菌を十分に行うためには、より高い水準の抗菌力が要求される。
【0007】
また、従来の殺菌剤配合洗浄剤は、スポンジ等の洗浄道具による手洗いでは泡立ちや洗浄持続性が非常に悪い。これを解決するために陰イオン界面活性剤を配合することが一般的であるが、カチオン系殺菌剤の殺菌効果を阻害するだけでなく、液体組成物中で複合体を形成し濁りや沈殿といった安定性、特に低温での保存安定性に影響を及ぼすことが多い。
【0008】
非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤においても、陰イオン界面活性剤を用いて洗浄力を向上することは一般的である。また、そのような洗浄剤に抗菌効果を持たせることも通常行われている。しかしながら、抗菌剤としてカチオン系抗菌剤を陰イオン界面活性剤と併用すると抗菌効果を阻害するだけでなく、陰イオン界面活性剤の洗浄力も著しく低下させる。特に、ビグアニド系抗菌剤はその抗菌効果の低下が著しい。
【0009】
特許文献1のアニオン系界面活性剤とビグアニド系殺菌剤を併用した殺菌洗浄剤は、上記の理由により、十分に満足できる殺菌効果が得られないばかりか、洗浄力も満足できない。特に、食器洗浄用洗浄剤のように油汚れなど汚れ負荷の高い洗浄においては、上記傾向が顕著である。同様に、特許文献2のポリリジンを用いた液体洗浄剤組成物も、アニオンとのコンプレックスを生成することにより、高い抗菌効果と高い洗浄効果の両立が課題である。同様に、特許文献3のアルキルポリグリコシドと両性界面活性剤とビグアニド系殺菌剤を併用した殺生洗浄組成物も、アニオン活性剤配合量が少ないことにより、汚れ負荷が高い場面での洗浄効果に課題が残る。
【0010】
また、非イオン界面活性剤を含有する洗浄剤において、陰イオン界面活性剤とカチオン系抗菌剤を併用すると、液体組成物中で複合体を形成し濁りや沈殿といった安定性、特に低温での保存安定性に影響を及ぼすことが多い。
【0011】
本発明の課題は、油汚れなど汚れ負荷の高い洗浄において、優れた洗浄性と抗菌性を有し、且つ、低温下の保存安定性に優れた液体洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
(a)非イオン界面活性剤〔以下、(a)成分という〕を10〜50質量%、
(b)陰イオン界面活性剤〔以下、(b)成分という〕を0.25〜5質量%、
(c)ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩、ポリリジン、及びポリリジンの酸塩から選ばれる1種以上を0.01〜2質量%(但し、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩又はポリリジンの酸塩の量は、それぞれ、ポリヘキサメチレンビグアニド換算又はポリリジン換算の量である)、
(d)陽イオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕、並びに、
(e)両性界面活性剤〔以下、(e)成分という〕
を含有し、
(b)の含有量と(d)の含有量のモル比(b)/(d)が0.1〜1.0であり、
(d)の含有量と(e)の含有量のモル比(d)/(e)が0.20〜5である、
液体洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、油汚れなど汚れ負荷の高い洗浄において、優れた洗浄性と抗菌性を有し、且つ、低温下の保存安定性に優れた液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<(a)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物の(a)成分は非イオン界面活性剤である。(a)成分としては、洗浄性の観点から、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、アルキルグリセリルエーテルが好ましい。
【0015】
アルキルポリグリコシドとしては、一般式(a1)の化合物が挙げられる。
1a−(OR2ast (a1)
〔式中、R1aは炭素数8〜16の直鎖アルキル基であり、R2aは、炭素数2〜4のアルキレン基である。Gは還元糖に由来する基を示す。sは平均付加モル数であり0〜5の数を示し、tは平均縮合度であり1〜3の数を示す。〕
【0016】
洗浄性の観点から、一般式(a1)においてR1aは炭素数10〜16の直鎖アルキル基が好適であり、特に、炭素数12〜14の直鎖アルキル基を含有することが好適である。また、sは好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2、特に好ましくは0である。R2aはエチレン基が好ましい。
【0017】
一般式(a1)において、Gは還元糖に由来する基であり、より具体的にはグリコシド基が挙げられる。原料の還元糖としては、アルドースとケトースの何れであっても良く、また、炭素数が3〜6個のトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースを挙げることができる。アルドースとして具体的にはアピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができ、ケトースとしてはフラクトースを挙げることができる。本発明ではこれらの中でも、洗浄性の観点から、特に炭素数5又は6のアルドペントースあるいはアルドヘキソースが好ましく、中でもグルコースが最も好ましい。
【0018】
一般式(a1)中、tは糖の平均縮合度を示し、好ましくは1〜2の数、特に1〜1.5の数が良好である。
【0019】
一般式(a1)の化合物は、上記糖とR1a−(OR2as−OHとを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。また、アセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0020】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルを包含する非イオン界面活性剤として、下記一般式(a2)で表される化合物が挙げられる。
3a−O−(AO)q−H (a2)
〔式中、R3aは、炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基、AOは炭素数2〜3のアルキレンオキシ基、qは平均付加モル数であり、1〜30の数である〕
【0021】
洗浄性の観点から、一般式(a2)中、R3aの炭素数は10〜14が好ましく、また、アルキル基が好ましい。AOはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。qは1〜25、更に1.5〜25、更に5〜25、更に10〜24、更に15〜23、更に20〜22が好ましい。
【0022】
アルキルグリセリルエーテルとしては、モノアルキルグリセリルエーテル、好ましくは炭素数6〜10のアルキル基を有するモノアルキルグリセリルエーテル、更に下記一般式(a3)で表される化合物が挙げられる。
4a−O−(CH2CH(OH)CH2O)r−H (a3)
〔式中、R4aは炭素数6〜10のアルキル基であり、rは平均付加モル数であり、1〜4の数を示す。〕
【0023】
洗浄性の観点から、一般式(a3)においてR4aは炭素数6〜10の分岐鎖アルキル基が好ましく、2−エチルヘキシル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2−エチルヘキシル基またはイソデシル基が更に好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。rは1〜3が好ましく、1〜2がより好ましく、r=1の化合物が最も好ましい。特に好ましい化合物はR4aが2−エチルヘキシル基で、かつ、r=1の化合物である。
【0024】
一般式(a3)の化合物を得るには、例えば2−エチルヘキサノール、イソノナノール又はイソデカノールから選ばれる分岐型アルキルアルコールとエピハロヒドリンやグリシドール等のエポキシ化合物とを、BF3等の酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。2−エチルヘキサノールを用いる場合、得られる2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、特開2001−49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物であり、具体的には、2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルとして、エポキシ化合物の1位に2−エチルヘキサノールが付加した化合物(3−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、以下(a3−1)という)やエポキシ化合物の2位に付加した化合物(2−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,3−プロパンジオール、以下(a3−2)という)、副生成物として、(a3−1)又は(a3−2)にさらにエポキシ化合物が付加した多付加化合物(以下(a3−3)という)をも含み得る混合物である。本発明の(a)成分である2−エチルヘキシルモノグリセリルエーテルを含む該混合物は、そのまま用いてもよく、さらに精製して用いてもよい。
【0025】
本発明では、(a)成分である(a3−1)以外の化合物を多く含有すると本発明の効果を損なう場合があるため注意が必要であり、特に多付加化合物(a3−3)の含有量を(a3−3)/(a3−1)の質量比で1/99以下、好ましくは0.5/99.5以下、特に好ましくは0.1/99.9以下とすることが好適である。
【0026】
(a3−3)を低減化させる方法としては、特開2001−49291号公報に記載の方法を例示することができる他、蒸留精製により(a3−3)を除去する方法を採用することができる。
【0027】
本発明では、洗浄性の観点から、(a)成分として、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及び、アルキルグリセリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を含有することが好ましい。更には、洗浄性の観点から、(a)成分として、アルキルポリグリコシド及びアルキルグリセリルエーテルを含有することが好ましい。
【0028】
<(b)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分として陰イオン界面活性剤を含有する。(b)成分としては、炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤などが挙げられる。(b)成分としては、洗浄性の観点から、炭素数6〜22の炭化水素基を有する陰イオン性化合物、更に炭素数6〜22の炭化水素基を有する陰イオン界面活性剤、更に、炭素数10〜16の炭化水素基と、スルホン酸基又は硫酸エステル基とを有する陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0029】
(b)成分としては、洗浄性の観点から、炭素数10〜16のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、炭素数10〜16のモノアルキル硫酸エステル塩、炭素数10〜16のアルキル基を有し炭素数2又は3のオキシアルキレン基が平均1〜4モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8〜16のα−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(炭素数8〜16)低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩、トルエンスルホン酸又はその塩、炭素数8〜12のアルケニルコハク酸又はその塩等を挙げることができる。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。これらのうち、安定性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、更に、洗浄性の観点から、ナトリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0030】
<(c)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は除菌性の観点から、(c)成分として、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩、ポリリジン、及びポリリジンの酸塩から選ばれる1種以上を含有する。
【0031】
ポリヘキサメチレンビグアニドとしては、下記一般式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化1】

【0033】
〔式中R1cはヘキサメチレン基、nは2〜14の数であり、好ましくは10〜14、より好ましくは11〜13、より更に好ましくは12である。〕
【0034】
ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩は、部分酸塩もしくは全部酸塩である。ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩としては、下記一般式(c2)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化2】

【0036】
〔式中R1cはヘキサメチレン基、mは2〜14の数であり、好ましくは10〜14、より好ましくは11〜13、更に好ましくは12である。nは1〜5mの数であり、好ましくは、nは2〜3mの数であり、より好ましくは、nはm〜2mの数であり、さらに好ましくは、nはmである。HYは有機酸又は無機酸を示し、好ましくは塩酸、グルコン酸、酢酸であり、より好ましくは塩酸である。〕
【0037】
ポリリジンとしては、α−ポリ−L−リジン、ε−ポリ−L−リジン、ε−ポリ−D−リジン等が挙げられる。前記ポリリジンはいずれも使用できる。本発明では安全性の面から、α−ポリ−L−リジンおよびε−ポリ−Lリジンを好ましく使用することができる。特に、下記の式で表される、ε−ポリ−Lリジンが、安全性の観点から好ましい。
【0038】
【化3】

【0039】
〔式中、pは5〜100の数であり、10〜50が好ましく、さらに13〜27が好ましい。〕
【0040】
ε−ポリ−Lリジンはストレプトマイセス(Streptomyces)属の微生物を培養することによって得られ、人体にとって必須アミノ酸であるリジンが縮合してできたポリペプチドである。このポリリジンは体内の酵素等で加水分解されると元の構成成分であるL−リジンになるため安全性が非常に高い。
【0041】
ポリリジンとしては遊離状のもの及び無機酸もしくは有機酸の塩の形態のもののいずれも使用することができる。塩の形態の場合、好ましくは塩酸、グルコン酸、酢酸であり、より好ましくは塩酸である。
【0042】
ポリリジンとしては、取り扱いを容易にするために賦形剤や増量剤で加工されたものを使用することができる。
<(d)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は(d)成分として、陽イオン界面活性剤を含有する。具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリエタノールアミン・ジ脂肪酸エステル四級塩、N−ヒドロキシエチル−N−メチル−プロパンジアミンの脂肪酸モノエステルモノアミド塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、ポリエチレンポリアミン、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。(d)成分としては、安定性の観点から、窒素原子に結合する4つの基として、炭素数8〜20の炭化水素基(好ましくはアルキル基又はアルケニル基)を1個又は2個有し、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又はベンジル基である4級アンモニウム型界面活性剤が好ましい。
【0043】
中でも、殺菌性を有する陽イオン界面活性剤が好ましく、殺菌性を有する陽イオン界面活性剤として、下記一般式(d1)で表される陽イオン界面活性剤、及び一般式(d2)で表される陽イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の陽イオン界面活性剤が挙げられる。
【0044】
【化4】

【0045】
〔式中、R1d〜R4dのいずれか1つ又は2つが、炭素数8〜16の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、又は次式
【0046】
【化5】

【0047】
で表される基を示し、残りは同一もしくは異なって、炭素数1〜3のアルキル基、ベンジル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、又は式−(CH2CH2O)mH(mはエチレンオキシド平均付加モル数で、2〜20を示す)で表される基を示し、R5dは炭素数12〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、X-はハロゲンイオン、好ましくは塩素イオン、又は有機アニオンとなる基を示す。〕
【0048】
(d)成分として、洗浄性および殺菌性の観点から、ジアルキル(炭素数8〜16)ジメチルアンモニウムハライド、塩化ベンザルコニウム(炭素数8〜16のアルキル基を有するもの)、塩化ベンゼトニウム又はこれらの対イオンが他のアニオンに変換された陽イオン界面活性剤が好ましい。
【0049】
(d)成分としては、洗浄性および殺菌性の観点から、一般式(d1)で表される陽イオン界面活性剤が好ましく、一般式(d1)中のR1d〜R4dとして炭素数8〜10の直鎖アルキル基を2つ有し、残りがメチル基のものがより好ましい。
【0050】
<(e)成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は(e)成分として、両性界面活性剤を含有する。両性界面活性剤としては、アルキルアミンオキシド等のアミンオキシド、アルキルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン、及びアミドアミノ酸(イミダゾリン系ベタイン)などが挙げられる。(e)成分はこれらから選ばれる1種以上を含有することができる。(e)成分は、洗浄性,安定性の観点から、アミンオキシド及び/又はベタインが好ましい。
【0051】
アミンオキシドとしては、炭素数8〜18の炭化水素基を有するアミンオキシドが好ましい。具体的には、下記一般式(e1)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
【化6】

【0053】
〔式中、R1eは炭素数8〜18の炭化水素基、好ましくは炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基であり、R2eは炭素数1〜6のアルキレン基であり、Dは−(CO)O−、−(CO)(NH)−、−O(CO)−、−(NH)(CO)−から選ばれる基である。kは0又は1の数であり、R3e、R4eは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。〕
【0054】
一般式(e1)において、R1eは、好ましくは炭素数10〜14のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくはラウリル基(又はラウリン酸残基)及び/又はミリスチル基(又はミリスチン酸残基)である。Dは、好ましくは−(CO)O−又は−(CO)(NH)−であり、より好ましくは−(CO)(NH)−である。R2eの炭素数は、好ましくは2又は3であり、R3e、R4eは、好ましくはメチル基である。
【0055】
ベタインとしては、炭素数8〜18の炭化水素基を有するベタインが好ましい。具体的には、下記一般式(e2)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
【化7】

【0057】
〔式中、R5eは炭素数8〜18の炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基であり、R6eは炭素数1〜6のアルキレン基である。Eは−(CO)O−、−(CO)(NH)−、−O(CO)−、−(NH)(CO)−、−O−から選ばれる基であり、jは0又は1の数である。R7e、R8eは、それぞれ炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基であり、R9eはヒドロキシ基で置換していてもよい炭素数1〜5のアルキレン基である。Tは−SO3-、−OSO3-、−COO-から選ばれる基である。〕
【0058】
一般式(e2)において、R5eは、好ましくは炭素数9〜17であり、より好ましくは10〜16のアルキル基またはアルケニル基である。R6eは、好ましくは炭素数1〜4であり、より好ましくは2又は3のアルキレン基、jは好ましくは0である。R7e、R8eは、好ましくはメチル基、エチル基又はヒドロキシエチル基である。R9eはヒドロキシ基で置換してもよい炭素数1〜3のアルキレン基が好ましい。Tは洗浄効果の点から−SO3-が好ましい。
【0059】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、−10℃〜60℃の温度範囲において何れの温度でも液体であるものが好ましい。詳細には、−10℃〜60℃の温度範囲において何れの温度でも粘度3000mPa・s以下の流動性のあるものが好ましく、1000mPa・s以下であることがより好ましく、さらに、500mPa・s以下であることが好ましく、さらに、200mPa・s以下であることが好ましい。また、洗浄作業性の観点から1mPa・s以上であることが好ましい。上記粘度は、B型粘度計により測定することができる。
【0060】
本発明の液体洗浄剤組成物は、詰め替え等の作業性、および品質保持の観点から、低温、例えば−5℃の環境下においても、凍結または分離することなく透明性を維持していることが好ましい。さらに本発明の液体洗浄剤組成物は、−5℃の環境下において20日保存しても安定であることが好ましい。
【0061】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分を10〜50質量%含有する。(a)成分の含有量は洗浄性の観点から、15〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることがより好ましい。
【0062】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分を0.25〜5質量%含有する。(b)成分の含有量は、安定性の観点から、0.5〜5質量%であることが好ましく、2〜4.5質量%であることがより好ましい。
【0063】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(c)成分を0.01〜2質量%(但し、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩又はポリリジンの酸塩の量は、それぞれ、ポリヘキサメチレンビグアニド換算又はポリリジン換算の量である)含有する。(c)成分の含有量は、除菌性の観点から、0.05〜1質量%であることが好ましく、0.1〜1質量%であることがより好ましい。
【0064】
本発明の液体洗浄剤組成物における(d)成分の含有量は、除菌性,安定性の観点から、0.5〜10質量%であることが好ましい。更に1〜7質量%であることが好ましく、2〜5質量%であることがより好ましい。
【0065】
本発明の液体洗浄剤組成物における(e)成分の含有量は、洗浄性,安定性の観点から、1〜10質量%であることが好ましい。更に1.5〜8.5質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましい。
【0066】
本発明の液体洗浄剤組成物における、(b)成分の含有量と(d)成分の含有量のモル比(b)/(d)は、0.1〜1.0である。このモル比(b)/(d)は除菌性および安定性の観点から、0.5〜1.0であることが好ましく、0.75〜0.95であることがより好ましい。なお、(b)成分及び/又は(d)成分として複数の成分を用いる場合のモル数は、各成分のモル数の総和から求めることとする。
【0067】
本発明の液体洗浄剤組成物における、(d)成分の含有量と(e)成分の含有量のモル比(d)/(e)は、0.20〜5である。このモル比(d)/(e)は、洗浄性および除菌性の観点から、0.4〜2であることが好ましく、0.5〜1であることがより好ましい。なお、(d)成分及び/又は(e)成分として複数の成分を用いる場合のモル数は、各成分のモル数の総和から求めることとする。
【0068】
本発明では貯蔵安定性の改善剤、または粘度調整剤として溶剤〔以下、(f)成分という〕を含有することができる。溶剤の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルから選ばれる水溶性有機溶媒が挙げられ、エタノールが好ましい。(f)成分の含有量は、組成物中、1〜10質量%、更に3〜7質量%が好ましい。
【0069】
その他の成分としては、粘度特性に影響のない限り、通常液体洗浄剤に配合されている成分を配合することができる。例えば、亜硫酸ナトリウムなどの防錆剤、香料や色素も本組成物の効果に影響しない範囲で配合される。
【0070】
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記成分を水に溶解又は分散させた液状の形態、水の含有量は組成物の残部であってよい。また、本発明の液体洗浄剤組成物の25℃におけるpHは6.0〜8.0、更に6.0〜7.0が好ましい。
【0071】
本発明では、業務用施設の厨房などの、より高い衛生管理が望まれる場所での食器や調理器具の洗浄において、優れた効果を得ることができる。通常、業務用施設の厨房などで用いられる洗浄道具は、使用頻度や汚れの種類などの相違から、一般家庭で用いられるものよりも菌が繁殖しやすい傾向があるが、本発明の液体洗浄剤組成物を用いることで、業務用施設の厨房などで用いられる洗浄道具においても、菌の繁殖を効果的に抑制することができる。また、本発明の液体洗浄剤組成物では、洗浄性や低温安定性にも優れたものとなる。これは、本発明の(a)〜(e)成分を特定の量比で含む組成物がバイオフィルムを溶解、崩壊させて、菌そのものを十分に殺菌できるためであると考えられる。また、(a)〜(e)成分の特定量比の組み合わせが、除菌性や洗浄力の向上のみならず、低温安定性の向上にも寄与しているものと推察される。
【実施例】
【0072】
表1〜3に記載の割合で、液体洗浄剤組成物を調製した。pHメーター(HORIBA製 pH/イオンメーター F−52)にpH測定用複合電極(HORIBA製 ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続し、組成物のpH(25℃)を「JIS K 3362 8.3」のpH測定法により測定した。また、B型粘度計(TOKIMEC INC.製B型粘度計 モデルBM)に、ローターNo.2のローターを備え付けたものを準備し、表の液体洗浄剤組成物を粘度測定用ビーカーに充填し、20℃の恒温水槽中で十分に温度調節した後、その温度調整をした組成物の入ったビーカーを粘度計にセットし、ローター回転数を60r/minにて60秒後の粘度を測定した。
【0073】
調製した液体洗浄剤組成物を用いて、下記に示す要領にて(1)洗浄性試験、(2)除菌性試験、及び(3)低温安定性評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0074】
(1)洗浄性試験
市販の新品スポンジ(115mm×75mm×35mmの可撓性吸収体、商品名:キクロン、販売元:キクロン株式会社)を水道水でもみ洗いし、水道水の含有量が約10gになるまで絞った後、組成物1gと水道水約20gを染み込ませた(絞った後の水道水の含有量と染み込ませる水道水の含有量の合計が30gとなる様にする)。予め用意したモデル汚れ付き食器(牛脂/なたね油=1/1(質量比)の1gを陶器皿に均一に塗布したもの)上で上記スポンジを2〜3回手でもみ泡立たせた後、モデル汚れ付き食器を擦り洗いし、30℃に調整した水道水にて4L/minで30秒流水すすぎを行い、洗浄できた枚数を求めた(すすぎ後の皿のヌルつきが無い場合、洗浄できたと判断する)。
【0075】
(2)除菌性試験
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)をLB培地(日本ベクトン・ディッキンソン(株)製)を用いて、37℃/18時間で前培養して増殖させて生理食塩水10mLで懸濁させた後、菌液1mL中の菌数を測定し、初期接種菌数とした。
【0076】
市販鶏肉ミンチ10gと滅菌水100mLをジューサーで混合したモデル汚れに、菌液1mLと組成物1mLとを加え、市販の新品スポンジ(115mm×75mm×35mmの可撓性吸収体、商品名:キクロン、販売元:キクロン株式会社)に1分間揉み込み、軽く絞った後5時間放置する。その後、水道水流水にて10秒間すすぎ、組成物2gをスポンジに揉み込み一昼夜放置した後、LP希釈液(品名 LP希釈液「ダイゴ」日本製薬株式会社製)100mLにてスポンジを揉んで搾り出し、その絞り液1mL中の菌数を測定し(操作後菌数)、(初期接種菌数)/(操作後菌数)の商を求め、その10を底とする対数を除菌活性値とした。即ち、除菌活性値は、以下の式で算出される。表中の値が大きいものほど除菌活性が高いことを意味する。
除菌活性値=Log10[(初期接種菌数)/(操作後菌数)]
【0077】
(3)低温安定性評価
No.11規格瓶(PS−No.11、石田容器製)に組成物を100mL充填し、−5℃に調温した恒温室に20日保存した後、組成物の外観の変化について以下の基準で評価した。
3:変化なし
2:濁りが生じた
1:沈殿が生じた
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【表3】

【0081】
(注)表中の成分は以下のものである。(b)成分は酸型化合物換算の量を示した。
・アルキルポリグリコシド:直鎖アルキル(炭素数10〜16)ポリグリコシド(平均縮合度1.40)
・ポリオキシエチレン(EOp21)ドデシルエーテル:エチレンオキシド平均付加モル数21
・LAS−S:直鎖アルキル(炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸
・PHMB:ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩(式(c2)においてm=12、n=m)
・ポリリジン:ε−ポリ−L−リジン(重量平均分子量約2000)
・塩素系殺菌剤:トリクロサン
・塩化ベンザルコニウム(1):ベンジルオクチルジメチルアンモニウムクロライド
・塩化ベンザルコニウム(2):直鎖アルキル(炭素数12〜16)ベンジルジメチルアンモニウムクロライド
・アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(1):(ココナツオイルアルキル)トリメチルアンモニウムクロライド
・アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(2):ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド
・アルキルトリメチルアンモニウムクロライド(3):オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド
・ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド(1):ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド
・ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド(2):ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド
・ドデシルジメチルアミンオキシド:ドデシルジメチルアミンオキサイド
・ドデシルジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン:1−ドデカナミニウム,N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−N,N−ジメチル,インナーソルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非イオン界面活性剤を10〜50質量%、
(b)陰イオン界面活性剤を0.25〜5質量%、
(c)ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩、ポリリジン、及びポリリジンの酸塩から選ばれる1種以上を0.01〜2質量%(但し、ポリヘキサメチレンビグアニドの酸塩又はポリリジンの酸塩の量は、それぞれ、ポリヘキサメチレンビグアニド換算又はポリリジン換算の量である)、
(d)陽イオン界面活性剤、並びに、
(e)両性界面活性剤
を含有し、
(b)の含有量と(d)の含有量のモル比(b)/(d)が0.1〜1.0であり、
(d)の含有量と(e)の含有量のモル比(d)/(e)が0.20〜5である、
液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(d)が、窒素原子に結合する4つの基として、炭素数8〜20の炭化水素基を1個又は2個有し、残りが炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基又はベンジル基である4級アンモニウム型界面活性剤である請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(a)として、アルキルポリグリコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、及び、アルキルグリセリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)が、炭素数10〜16の炭化水素基と、スルホン酸基又は硫酸エステル基とを有する陰イオン界面活性剤である請求項1〜3の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(e)が、アミンオキシド及び/又はベタインである請求項1〜4の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
業務用施設の厨房において用いる請求項1〜5の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2013−57026(P2013−57026A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196965(P2011−196965)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】