説明

液体洗濯洗剤組成物用の外部構造化系

アルカノールアミンで中和したアニオン性界面活性剤で乳化させた結晶性グリセリドを含む構造化系によって、液体又はゲル状洗剤を外部構造化することができる。用いる結晶性グリセリドとしては、硬化ヒマシ油が挙げられる。液体又はゲル状洗剤は、1回量の形態でパッケージ化されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化トリグリセリド(結晶化した硬化ヒマシ油(HCO)が挙げられるが、これに限定されない)を含む外部構造化系(ESS)に関する。本発明は、ESSを作製する方法、ESSを含む液体又はゲル状の洗濯洗剤組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
かなりの量の界面活性剤を含む液体組成物、特に水性洗剤組成物は、界面活性剤に富む1つ以上の相及び水分に富む1つの相のように、2相以上に分かれるその傾向を考えると、配合しにくい場合がある。界面活性剤を含有する液体組成物中に微粒子物質を懸濁させなければならないときには、その微粒子は時間の経過と共に、その液体組成物の最上部に浮かび上がるか、又はその液体組成物の最下部に沈殿する傾向を有し得るので、更なる技術的な難点が生じる場合がある。その上、消費者は、洗浄性能、布地ケア効果、外観効果、及び/又は、視覚的若しくは審美的刺激をもたらすことのできる安定化微粒子物質を提供する流体洗剤を好む。高濃縮界面活性剤の固有の構造化特性に依存することによる完全な内部構造化は、分散した微粒子物質を安定化させる目的で使用できる1つのアプローチである。しかしながら、このアプローチは、界面活性剤を無駄にする可能性があると共に、配合の柔軟性を限定する場合がある。これら及び他の関連する技術的難点は、外部構造化剤及び外部構造化剤を含む系の使用を通じて、消費者の好む点を保ったまま克服することができる。
【0003】
ヒドロキシル含有安定剤を含む外部構造化系(ESS)の使用を通じて安定化されている水性洗濯洗剤組成物について説明されてきた。硬化ヒマシ油(HCO)は有用なヒドロキシル含有安定剤の非限定例である。HCOは、一般的な洗濯洗剤用アニオン性界面活性剤である、ナトリウムで中和した直鎖アルキルベンゼンスルホネート(NaLAS)を用いて、洗濯洗剤組成物中に配合することができる。NaLASは、HCO構造化系の乳化剤として作用すると考えられている。上記の系中で用いるための酸性型LAS(HLAS)を例えば水酸化ナトリウムで中和して、NaLASを形成させてよい。構造化剤系は、洗剤組成物の残部とは別に、水性Naで中和したLASにHCOを溶解させた物を形成させることによって調製することができ、次いでこの溶解物を攪拌して溶融HCOのエマルションを形成させてもよい。次に、このエマルションを冷却してHCOを結晶化させてよい。結晶化すると、プレミックスの形態の外部構造化剤を生じさせることができる。続いて、構造化させる目的で、このプレミックスを液体洗濯洗剤組成物の残部に加えてもよい。あるいは、溶融乳化HCOプレミックスを洗剤組成物の残部と混合してから冷却することによって、構造化剤をインサイチューで結晶化させてもよい。
【0004】
液体洗剤、特に含水量の少ない液体洗剤、及びゲル形態の洗剤は、より希釈された同等の洗剤よりも継続維持できるので、望ましい場合がある。今では、界面活性剤に富む液体又はゲル形態の洗剤で、水分及び/又は溶媒含有量が比較的少ない洗剤を調製するのに用いる外部構造化系に、アルカリ金属イオン、更に具体的にはNaイオンのような無機イオンを導入するのは望ましくない場合があることが明らかにされている。
【0005】
更に、かなり驚くべきことに、ESSを介して液体又はゲル形態の洗濯洗剤に導入されるナトリウムの総量が多くないとしても、例えば最大で約4重量%だとしても、HCO乳化剤を、ナトリウムで中和したアニオン性界面活性剤の形態から、アルカノールアミンで中和したアニオン性界面活性剤の形態、特にモノエタノールアミン(MEA)で中和したLASの形態に変えると、従来のレオロジー技法によって測定した場合に、外部構造化剤混合物及び完成した液体又はゲル形態の洗濯洗剤の双方の視覚的外観、及び/又は相安定性、及び/又は微粒子物質運搬能力が向上することが明らかにされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態では、ESSをプレミックスとして提供する。このプレミックスは、水性の少なくとも部分的に低級アルカノールアミンで中和したLAS、好ましくはモノエタノールアミンで中和したLAS中に、結晶性グリセリド(HCOが挙げられるが、これに限定されない)を溶解させた物を形成させた生成物である。この結晶性グリセリドの溶解物は、エマルション又はマイクロエマルションの形態であり、LASは、結晶性グリセリドの乳化剤として作用する。明瞭化のために、「アルカノールアミンで中和した」とは、アニオン性界面活性剤LASの対イオンが、アルカノールアミンのカチオン性型又はカチオン型であることを意味するものと理解されたい。このアルカノールアミンは、溶媒又は緩衝剤として作用していない。上記のエマルションを冷却してグリセリドを結晶化させる。これによって、アルカノールアミンを含みナトリウムを含まない結晶性グリセリドのプレミックスの形態の外部構造化剤が生じ、これは、商品として輸送することができるか、又は液体洗濯洗剤組成物の残部に直接加えることができる。得られた洗剤組成物は、驚くべきことに、ナトリウムで中和した同等のLASで乳化させた結晶性グリセリドを用いたときに可能であるよりも、物理的安定性が高く、及び/又は全体としての洗浄性界面活性剤を高濃度で含むことができ、並びに/あるいは任意の有益剤、例えばカプセル化漂白剤、香料マイクロカプセル、雲母等の粒子を構造化又は懸濁させることが更に可能である。本明細書におけるESS組成物は、要するに、ナトリウムで中和したLASで乳化させた結晶性グリセリドを用いて作製した他の類似のESSよりも高い増粘力を有する。
【0007】
驚くべきことに、かつ意外なことに、アニオン性界面活性剤の対イオンをNaLASからMEA−LASにわずかに変えると、プレミックス中及び得られる洗剤組成物中に形成されるグリセリド結晶のレオロジー、物理的構造、及び産業上の有用性がかなり大幅に向上することが分かった。
【0008】
本発明の更に別の態様では、本発明のESSプレミックスの使用によって、最終的な洗剤の望ましい製剤特性と、洗剤の使用時における特性との兼備をもたらす。これは、ESSを用いて洗剤を構造化することによって実現し、配合者が、高溶解性の界面活性剤をエンドユーザに提供することに集中できるようにする。要するに、本発明は、配合上の考慮事項(増粘、及び安定した製品の実現等)を使用上の考慮事項、例えば高溶解性の製品、冷水での優れた洗浄性から切り離す。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明のESSは、以下の成分:
a.40℃〜100℃の融解温度を有する約2〜約10重量%のグリセリドの結晶と、
b.約2〜約10重量%のアルカノールアミンと、
c.約5〜約50重量%のアニオンのアニオン性界面活性剤と、を含み得る。
【0010】
アルカノールアミンは、少なくとも前記アニオン性界面活性剤のアニオン型の電荷の平衡を保つ量で存在し、かつ構造化系は、いかなる無機カチオンも添加されていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】粘度と0〜30s−1の範囲の剪断速度とのプロット比較。
【図2】粘度と0〜5s−1の範囲の剪断速度とのプロット比較。
【図3】注入粘度(20s−1で測定)と剪断速度とのプロット比較。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用するとき、「外部構造化系」又はESSという用語は、洗剤組成物の洗浄性界面活性剤のいずれの構造化作用からも独立して又は付帯的に、洗剤組成物に構造を提供する特定の化合物又は化合物の混合物を指す。構造化効果としては、寸法及び密度が広範である粒子の懸濁に適した降伏応力の付与が挙げられる。使用するESSは、以下に詳述されている化学的同一性を有してよい。
【0013】
留意すべきことに、本発明のESSには、現時点で既知の個別の原材料を使用する。新たな化学物質、即ち新たな化学化合物は生成されない。本発明は、硬化ヒマシ油のような既知の化学物質の寸法及び/又は晶癖という物理的形状の修正、並びにこれに関連するプロセスに関する。更に言えば、新たな化学物質の回避は、本発明の更なる利点の1つである。
【0014】
理論に束縛されるものではないが、多くの外部構造化剤は、洗剤組成物中で特定の形態を有する固体構造体を形成させることによって作用すると考えられている。これらの固体構造体は、1つ以上の物理的形状を取ってもよい。典型的な物理的又は形態的形状の非限定例としては、糸、針、リボン、円花、及びこれらの組み合わせが挙げられる。理論に束縛されるものではないが、糸様、リボン様、スピンドル様、又は微細繊維様構造化系、即ち、非球状の細長い粒子を有する構造化系は、液体において最も効率的な構造をもたらすと考えられている。したがって、いくつかの実施形態では、糸様、リボン様、スピンドル様、又は微細繊維様構造化系が好ましい。更には、アルカノールアミンで中和した、特にモノエタノールアミンで中和したアニオン性界面活性剤を含む外部構造化系は、他の類似の組成物に存在する構造化系で、ナトリウムで中和した界面活性剤が使われている構造化系よりも、完全な繊維網状組織を含み、かつ、洗剤組成物において完全な繊維網状組織をもたらす可能性があり、比較的構造化に劣る球状又は円花状の形態の濃度を驚くほど低下させるという点で、より効率的である可能性があると考えられている。
【0015】
更には、根底をなす理論の観点では(ただし、根底をなす理論に制限されるものではない)、本発明のESS系は、ナトリウムで中和したアニオン性界面活性剤を用いた系よりも高い増粘力を有する。Na−アニオン性界面活性剤の場合と比べて長い棒様構造体をESS中で生成させるからである。これは、懸濁液中の相互作用していない硬質棒状体のゼロ剪断粘度が、それらの棒状体の長さの3乗と対応すると予想する理論と一致する。M.Doi、S.F.Edwards、Dynamics of rod−like macromolecules in concentrated solution,Part 1,Journal of Colloid Science 74(1978)p.560〜570を参照されたい。
【0016】
更に、根底をなす理論の観点では(ただし、根底をなす理論に制限されるものではない)、本発明のESS系は、低い濃度において、Na−アニオン性界面活性剤を伴う系がもたらす降伏応力又はゲル稠度よりも、高い降伏応力又はゲル稠度をもたらす。これは、最低ゲル濃度が長さの逆数と対応すると予想する理論と一致する。Bug,A.L.R.;Safran,S.A.Phys.Rev.1986,883,4716を参照されたい。より簡単に言うと、溶液中に物体を分散させたものには臨界濃度が存在し、臨界濃度を超えると、その系は、溶液中に分散している分離集合体を多く有する状態から、集合体の連続的な網状組織を形成させる状態に転じる。この遷移によって、系は粘弾性液体から、より「固体様」のゲルに変化する。この閾値を超えると、系は、巨視的な相分離に対する物理的安定性をもたらすのに関わる降伏応力を示し始める。
【0017】
本明細書で使用するとき、「液体」には、液体、ゲル、泡、ムース、及び実質的に気相を持たないその他の任意の流動性組成物を挙げることができる。本発明の範囲内の流体の非限定例としては、軽質及び重質液体洗剤組成物、硬質表面洗浄組成物、洗濯用として一般的に使われている洗剤ゲル、並びに漂白剤及び洗濯用添加剤が挙げられる。気体、例えば懸濁泡を液体に含めてもよい。
【0018】
本明細書で使用するとき、「系」とは、常にではないが多くの場合、共通の計画に従うか又は共通の目的を果たす多様な部分(即ち、物質、組成物、装置、器具、手順、方法、条件等)から形成される複合体を意味する。
【0019】
「内部構造化」とは、構造化作用に関して、洗濯成分の大半の部類を形成する洗剤界面活性剤に依存することを意味する。これと反対の意味で、本発明は、所望のレオロジー及び粒子懸濁力を得るために非界面活性剤、例えば結晶化グリセリド(硬化ヒマシ油が挙げられるが、これに限定されない)に依存する構造化を意味する「外部構造化」を目的とするものである。
【0020】
「限界溶解性」とは、本明細書で使用するとき、配合された薬剤の9割以下が液体組成物に実際に溶解することを意味する。外部構造化剤としての硬化ヒマシ油のような結晶性グリセリドの利点は、非常に限定的な水溶性である。
【0021】
「可溶性」とは、本明細書で使用するとき、配合された薬剤の9割超が、20℃の温度にて液体組成物に実際に溶解することを意味する。
【0022】
「プレミックス」とは、本明細書で使用するとき、購入前に、液体又はゲル状の洗濯洗剤の残部のような他の成分と混ぜるように設計された成分の混合物を意味する。「プレミックス」は、それ自体を商品にすることができると共に、遠く離れた場所で後で洗濯洗剤の残部と混ぜるように、例えばバルクコンテナで販売することができる。その一方で、単一の設備で作られる完全な洗剤組成物をもたらすために、直接用いてもよいプレミックスもある。
【0023】
本明細書で使用するとき、「エマルション」とは、特に別段の指示のない限り、構造化剤プレミックス(ESS)中の硬化ヒマシ油、及び/又はその他のトリグリセリドの液滴であって、従来の光学顕微鏡を用いて見えるほど十分に大きい巨視的な液滴を指す。エマルションは、温度に応じて、液体液滴を伴うこともあれば、凝固液滴を伴うこともある。硬化ヒマシ油は、アルカノールアミンで中和したプレミックスを含有するアニオン性界面活性剤中に、約0.8重量%という非常に限られた程度で溶解可能であり、その結果、マイクロエマルションが存在する場合もある。しかしながら、マイクロエマルションの条件下では、ESS中の硬化ヒマシ油のような結晶性グリセリドの最大充填量が低下する。したがって、本発明においては、光学顕微鏡により簡単に見ることができる液滴を含む硬化ヒマシ油のような結晶性グリセリドのエマルションの方が、その優れた最大充填効率から、マイクロエマルションよりも好ましい。これは、硬化ヒマシ油の液滴が大きいほど、構造化における効率性の喪失につながる可能性があるという見解を考えると、反直感的なものであると思われる場合がある。
【0024】
「アスペクト比」とは、本明細書で定義するとき、粒子の最大寸法(l)と粒子の最小寸法(w)との比を意味し、「l:w」と表される。アスペクト比は、例えば、硬化ヒマシ油のような結晶性グリセリドの構造化剤結晶粒子を特徴付けることができる。分散体のアスペクト比は、TEM(透過電子顕微鏡法)又は類似の技法、例えばcryo−ESEMによって十分に特徴付けることができる。本発明でこのような技法を用いる場合、その意図は、硬化ヒマシ油、更に一般的には同程度に結晶性のいずれかのグリセリドの結晶を調べることであり、したがって、アーチファクトの出現を最小限に抑えて測定を行うのが好ましい。アーチファクトは、例えば、ESSから溶媒を蒸発させて、界面活性剤の結晶が沈殿するようにすることによって出現することがある。これらは、例えば硬化ヒマシ油のようなグリセリドの結晶ではない。本発明で用いるための外部構造化剤中の硬化ヒマシ油では、大きいアスペクト比が望ましい。ESS及び/又はESSを含む洗剤中の硬化ヒマシ油の結晶のアスペクト比は、1:1よりも大きいのが好ましく、換言すれば、構造化剤の結晶は細長いのが好ましい。1つの好ましい実施形態では、アスペクト比は少なくとも5:1である。1つの好ましい実施形態では、アスペクト比は5:1〜約200:1であり、好ましくは約10:1〜約100:1である。典型的なケースでは、アスペクト比は10:1〜50:1であることができる。
【0025】
「針状粒子半径」とは、本明細書で定義するとき、細長い粒子、例えば結晶性グリセリド(例えば硬化ヒマシ油等)の構造化剤の結晶粒子の短い方の寸法(w)を意味するESS中及び最終的な洗剤組成物中の結晶化グリセリドの典型的な針状粒子半径は、少なくとも約20ナノメートル(nm)である。いくつかの実施形態では、針状粒子半径は約20〜約500nmであり、より好ましくは約20〜約150nmである。典型的なケースでは、針状粒子半径は約50〜約100nmであることができる。
【0026】
「円花状粒子」とは、本明細書で定義するとき、例えばグリセリド(例えば硬化ヒマシ油等)の結晶化構造化剤の粒子で、例えば円花様の外観を持つ粒子を意味する。このような粒子は、微分干渉顕微鏡、又はその他の目視顕微鏡技法を用いることによって、簡単に見ることができる。円花状粒子のおよその直径は、1〜50マイクロメートル、より典型的には2〜20マイクロメートル、例えば約5マイクロメートルであることができる。本明細書における好ましいESSは、円花状粒子を含まなくてもよい。本明細書における他の好ましいESSは、針様結晶に対して低い比率の円花状粒子を有してもよい。理論に制限されるものではないが、針状粒子に対する円花状粒子の比率を下げると、ESSの質量効率が向上する。
【0027】
本明細書におけるアニオン性界面活性剤の「親水性指数」(「HI」)は、国際公開第00/27958A1号(Reddyら)で定義されている。HIの低い合成アニオン性界面活性剤が本明細書では好ましい。
【0028】
「含む」とは、本明細書で使用するとき、本発明を実施する際に、各種の構成要素、成分、又は工程を併せて採用できることを意味する。したがって、「含む」という用語は、「〜から本質的になる」及び「〜からなる」という更に限定的な用語を包含する。本発明の組成物は、本明細書に開示されている必須の要素及び任意の要素のいずれかを含むか、本明細書に開示されている必須の要素及び任意の要素のいずれかから本質的になるか、又は本明細書に開示されている必須の要素及び任意の要素のいずれかからなることができる。
【0029】
本明細書で使用するとき、ある構成成分を「本質的に含まない」又は「実質的に含まない」とは、その構成成分のいかなる量も組成物中に意図的に導入されないことを意味する。
【0030】
マーカッシュ言語は、本明細書で使用するとき、別段の指示がない限り、マーカッシュ群の個々の要素の組み合わせを包含する。
【0031】
本明細書で用いられる全ての百分率、比率、及び割合は、特に指定しない限り、組成物の重量百分率による。全ての平均値は、特に明確に指示がない限り、組成物又はその構成成分の「重量により」計算される。
【0032】
本明細書にて開示された全ての数値域は、範囲内の各個々の数を包含し、開示された範囲の上限及び下限の任意の組合せを包含することが意図される。
【0033】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味することを意図している。
【0034】
I.外部構造化系
本発明のESSは、(a)結晶性グリセリド、(b)アルカノールアミン、(c)アニオン性界面活性剤、(d)追加の構成成分、及び(e)任意の構成成分を含む。これらの構成成分のそれぞれについては、以下に詳細に論じる。
【0035】
a.結晶性グリセリド
本発明で用いる結晶性グリセリドとしては、「硬化ヒマシ油」、即ち「HCO」が挙げられる。本発明で最も広く使われるHCOは、ESSプレミックス中で結晶化できるものであれば、任意の硬化ヒマシ油であることができる。ヒマシ油としては、ヒドロキシル基を組み込んだC10〜C22アルキル又はアルケニル部分を含むグリセリド、とりわけトリグリセリドを挙げてよい。HCOを作製するためにヒマシ油に水素添加すると、出発油中にリシノレイル部分として存在し得る二重結合が変換されて、リシノレイル部分が飽和ヒドロキシアルキル部分、例えばヒドロキシステアリルに変換される。本明細書におけるHCOは、いくつかの実施形態では、トリヒドロキシステアリン、ジヒドロキシステアリン、及びこれらの混合物から選択され得る。HCOは、任意の好適な出発形態(固体、溶解物、及びこれらの混合物から選択される形態が挙げられるが、これらに限定されない)で加工してよい。HCOは典型的には、本発明のESS中に、構造化系の約2重量%〜約10重量%、約3重量%〜約8重量%、又は約4重量%〜約6重量%の濃度で存在する。いくつかの実施形態では、完成した洗濯洗剤製品に送達される硬化ヒマシ油の上記に対応する割合は、約1.0%未満、典型的には0.1%〜0.8%である。
【0036】
有用なHCOは、約40℃〜約100℃、若しくは約65℃〜約95℃の融点、及び/又は0〜約5、0〜約4、若しくは0〜約2.6のヨウ素価範囲という特徴を有し得る。HCOの融点は、ASTM D3418又はISO 11357のいずれかを用いて測定することができ、いずれの試験もDSC、即ち示差走査熱量測定計を用いるものである。
【0037】
本発明で用いるHCOとしては、市販されているものが挙げられる。本発明で用いる市販のHCOの非限定例としては、Rheox、Inc.製のTHIXCIN(登録商標)が挙げられる。有用なHCOの更なる例は、米国特許第5,340,390号に見ることができる。水素添加してHCOを形成するためのヒマシ油源は、ブラジル又はインドのようないずれかの好適な原産国のものであることができる。1つの好適な実施形態では、貴金属、例えばパラジウム触媒を用いてヒマシ油を水素化すると共に、水素添加温度及び水素添加圧力を制御して、許容できないレベルの脱ヒドロキシル化を回避しつつ、天然ヒマシ油の二重結合の水素添加を最適化する。
【0038】
本発明は、硬化ヒマシ油の使用のみを対象とすることは意図していない。他のいずれかの好適な結晶性グリセリドを用いてもよい。1つの例では、構造化剤は、実質的に純粋な12−ヒドロキシステアリン酸のトリグリセリドである。この分子は、完全に水素化した12−ヒドロキシ−9−シス−オクタデセン酸のトリグリセリドの純粋形態に当たる。実際には、ヒマシ油の組成物はかなり一定であるが、若干変化する場合がある。同様に、水素添加手順も変化する場合がある。少なくとも80重量%がヒマシ油由来であるトリグリセリドの混合物のような他のいずれかの好適な同等の物質も用いてもよい。代表的な同等物質は、トリグリセリドを主に含むか、若しくはトリグリセリドから本質的になるか、又は、ジグリセリドとトリグリセリドとの混合物を主に含むか、若しくはジグリセリドとトリグリセリドとの混合物から本質的になるか、又は、トリグリセリドとジグリセリドとの混合物と、限られた量、例えばグリセリド混合物の約20重量%未満のモノグリセリドとを主に含むか、若しくはトリグリセリドとジグリセリドとの混合物と、限られた量、例えばグリセリド混合物の約20重量%未満のモノグリセリドとから本質的になるか、又は、上記グリセリドのいずれかと、限られた量、例えば約20重量%未満の上記グリセリドのいずれかの対応する酸加水分解生成物のいずれかを主に含むか、若しくは、上記グリセリドのいずれかと、限られた量、例えば約20重量%未満の上記グリセリドのいずれかの対応する酸加水分解生成物から本質的になる。上記における条件は、いずれかの前記グリセリドの大部分、典型的には少なくとも80重量%が、完全水素化リシノール酸のグリセリド、即ち12−ヒドロキシステアリン酸のグリセリドと化学的に同一であることである。例えば、硬化ヒマシ油を修飾して、所定のトリグリセリド中に、2つの12−ヒドロキシステアリン部分及び1つのステアリン部分が存在するようにすることは、当該技術分野において周知である。同様に、硬化ヒマシ油を完全に水素化しなくてもよいことが想定される。これに対して、本発明は、溶融基準を満たさないときには、ポリ(オキシアルキル化)ヒマシ油を除外する。
【0039】
本発明で用いる結晶性グリセリドは、約40℃〜約100℃の融点を有し得る。
【0040】
b.アルカノールアミン
アルカノールアミンは、本発明のESSの必須成分である。理論に束縛されるものではないが、アルカノールアミンは、酸性型アニオン性界面活性剤の化学種と反応して、アルカノールアミンで中和したアニオン性界面活性剤を形成すると考えられる。したがって、アルカノールアミンは、アルカノールアミンと酸性型アニオン性界面活性剤、例えばHLASとをインサイチューでプレミックス中で化合することによるか、又はHLASをアルカノールアミンで別個に中和し、中性のアルカノールアミン−LASをプレミックスに加えることによるなどのいずれかの他の好適な手段によって、プレミックス中に導入できる。しかしながら、いくつかの実施形態では、本発明のESS中に、アルカノールアミンが、酸性型アニオン性界面活性剤を中和するのに必要な量よりも化学量論的に過剰に存在するのが望ましい場合がある。このような実施形態では、アルカノールアミンは、乳化界面活性剤の一部としての作用と、緩衝剤としての作用という、二重の目的を果たし得る。いくつかの実施形態では、アルカノールアミンは、構造化系の約2重量%〜約10重量%、約3重量%〜約8重量%、又は約3重量%〜約6重量%の濃度で存在してもよい。いくつかの実施形態では、アルカノールアミンは、構造化系の約5重量%で存在してもよい。
【0041】
一般的に、いずれかの好適なアルカノールアミン、又はアルカノールアミンの混合物が本発明において有用であり得る。好適なアルカノールアミンは、低級アルカノールモノアルカノールアミン、低級アルカノールジアルカノールアミン、及び低級アルカノールトリアルカノールアミン、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエタノールアミンから選択してよい。高級なアルカノールアミンほど、分子量が大きく、本発明の目的には質量効率が低い可能性がある。質量効率の理由から、モノアルカノールアミン及びジアルカノールアミンが好ましい。モノエタノールアミンが特に好ましいが、特定の実施形態では、トリエタノールアミンのような追加のアルカノールアミンが緩衝剤として有益であることもある。更には、本発明のいくつかの実施形態では、例えば、溶解性、緩衝、洗浄液中の塩素の管理のような既知の目的で、及び/又は、洗濯洗剤製品における酵素の安定化のために、ESSで用いられているアリコート以外のアニオン性界面活性剤のアルカノールアミン塩を最終的な洗剤配合物に別個に加えることができると想定される。
【0042】
c.アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤は、本発明のESS中に、系全体の重量に対して好適な任意の割合で存在してよい。理論に束縛されるものではないが、アニオン性界面活性剤は、HCO及び同様に結晶性グリセリドの溶解物の乳化剤として作用すると考えられる。外部構造化系の場合のみに関していえば(界面活性剤系を含む液体洗剤組成物の場合とは対照的に)、以下の事項が当てはまる。本明細書で使用するとき、好ましい実施形態における「アニオン性界面活性剤」には石鹸及び脂肪酸は含まれない。それらは、最終的な洗濯洗剤組成物中に存在してもよいが、一般的には、硬化ヒマシ油のグリセリドの限定加水分解から生じる場合のある限られた量の12−ヒドロキシステアリン酸以外のものは、ESS中に意図的には含まれていない。全体的処方を記述する目的上、「石鹸」及び「脂肪酸」はビルダーとして記述する。他の点では、いずれの好適なアニオン性界面活性剤も、本発明のESSで有用である。
【0043】
本発明における、とりわけESS用の好ましいアニオン性界面活性剤は、いわゆる「低いクラフト温度」を有する。「クラフト温度」という用語は、本明細書で使用するとき、界面活性剤学の分野の従事者に周知の専門用語である。クラフト温度は、K.Shinoda著作「Principles of Solution and Solubility」(共訳Paul Becher、出版Marcel Dekker,Inc.1978年、160〜161ページ)に記載されている。本発明の目的における「クラフト温度」は、単一鎖長を有するアニオン性界面活性剤のナトリウム塩を取り、そのアニオン性界面活性剤の1重量%溶液の透明化温度を測定することによって測定する。代替的な周知の技法としては、示差走査熱量測定法(DSC)が挙げられる。W.KunzらのGreen Chem.,2008,Vol 10,pages 433〜435を参照されたい。本発明の外部構造化系の好ましい実施形態では、対応するナトリウム塩のクラフト温度が約50℃未満、より好ましくは約40℃未満、更に好ましくは約30℃未満、又は20℃未満、又は0℃未満であるアニオン性界面活性剤を用いる。
【0044】
簡潔に言えば、表面活性剤の水中での溶解度は、上記の点、即ちクラフト温度までの温度ではかなりゆっくり向上し、その温度で溶解度は極めて急激に上昇する。クラフト温度を約4℃上回る温度では、ほぼいずれの可溶性アニオン性界面活性剤の界面活性剤溶液も、単一の均質相になる。一般的に、いずれかの所定のタイプのアニオン性界面活性剤のクラフト温度は、ヒドロカルビル基の鎖長によって変化する。これは、界面活性剤分子の疎水性部分の変化によって水溶性が変化することによるものである。
【0045】
本明細書のアニオン性界面活性剤がアルキル鎖長の組み合わせを含む場合には、クラフト温度は単一の点ではなく、「クラフト境界線」という名称で示される。このような状況は、界面活性剤/溶液の測定分野における熟練者に周知である。いずれにしても、上記のようなアニオン性界面活性剤混合物においては、その混合物中に少なくとも10重量%の濃度で存在する少なくとも最も長い鎖長の界面活性剤のクラフト温度が測定される。
【0046】
単一の界面活性剤種のクラフト温度は、融解温度と相関している。アニオン性界面活性剤混合物を用いて、硬化ヒマシ油、又は同様に結晶性グリセリドを乳化させるときの本明細書における一般的な意図は、アニオン性界面活性剤混合体中のアニオン性界面活性剤分子の集合体の低い溶解温度を得ることである。
【0047】
ESSに含めるためのアニオン性界面活性剤の好ましい群は、特定のHI指数(本明細書に別掲の定義を参照されたい)を有する合成アニオン性界面活性剤である。より詳細には、本明細書におけるESSでは、合成のアニオン性非石鹸界面活性剤のアルカノールアミン中和型であって、そのアニオン性界面活性剤の対応するNa塩が、8未満、好ましくは6未満、より好ましくは5未満のHIを有するものを用いるのが好ましい。
【0048】
理論に制限されるものではないが、アニオン性界面活性剤の融解は主にその疎水基の影響を受ける一方で、HIは、疎水基と親水基とのバランス比に左右される。
【0049】
例えば、AE3Sは、HIによれば、ESS中で用いるには望ましくない親水性を有し、クラフト点又は融解温度が低い(低いクラフト点又は融解温度は、ESSプレミックス中で用いるのに望ましい)一方で、LAS、特に、限られた量を超えた2−フェニル異性体を有さないLASはいずれも、HI値によれば、ESS中で用いるのに望ましい疎水性を有し、低い融解温度を有するように選択して(低いクラフト点を有する分子を含む)、ESSプレミックス中で使うのに好ましいものにすることができる。ただし、洗濯洗剤組成物の残部を配合するとき、いくつかの実施形態では、ESSプレミックスとは別に、AESタイプの界面活性剤の既知の対水硬度耐性と優れた白色化効果から、AESタイプの界面活性剤を大量に導入するのが望ましい場合があることに留意されたい。
【0050】
1つの実施形態では、ESS中で用いるアニオン性界面活性剤は、7未満のpKa値を有することができるが、他のpKa値のアニオン性界面活性剤も有用であり得る。
【0051】
本明細書で用いる好適なアニオン性界面活性剤の非限定例としては、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、アルキルサルフェート(AS)、アルキルエトキシル化スルホネート(AES)、ラウレスサルフェート、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、外部構造化系中に約5%〜約50%の濃度で存在してよい。ただし、ESSの約25重量%を超えるアニオン性界面活性剤を用いるときには、典型的には、水に加えて有機溶媒を用いて、その界面活性剤を希薄にする必要があることに留意されたい。好適な溶媒が以下に列挙されている。
【0052】
更に、本発明のESS用のアニオン性界面活性剤を選択し、この目的で、アルキルベンゼンスルホネートの界面活性剤を選択するときには、(1)HF処理で得られる直鎖アルキルベンゼンから選択されるアルキルベンゼンスルホネート、及び/又は(2)中分枝状LAS(様々な量のメチル側鎖を有する)のいずれかを用いるのが好ましい。例えば、米国特許第6306817号、米国特許第6589927号、米国特許第6583096号、米国特許第6602840号、米国特許第6514926号、米国特許第6593285号を参照されたい。他の好ましいLAS源としては、(3)Cepsa LABから入手可能なもの(国際公開第09/071709A1号参照)、及び(4)UOP LABから入手可能なもの(国際公開第08/055121A2号参照)が挙げられる。これに対して、DETAL(商標)処理(UOP,LLC、Des Plaines、IL)から得られるLAS、及び/又はHuntsmanによって教示されているような2−フェニル含有量の多いLAS(例えば、米国特許第6849588号、又は米国特許出願公開第2003/0096726A1号を参照。例えば、2−フェニル異性体含有量が70%超、又は80%超であるもの)は、ESS中で用いるのを避けるのが好ましいが、これらは、最終的な洗濯洗剤組成物に導入してもよい。理論に制限されるものではないが、望ましくないことに、過剰な2−フェニル異性体含有量によって、LASの融解温度が高くなる。
【0053】
上で述べたとおり、アニオン性界面活性剤は、酸性型アニオン性界面活性剤としてESSに導入したり、及び/又は、アルカノールアミンで事前に中和したりすることができる。いかなる場合でも、アニオン性界面活性剤は、ナトリウム中和型では用いない。より一般的には、アニオン性界面活性剤は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩のような任意の一価又は二価の無機カチオン性塩の形態では用いない。本明細書におけるESS及び洗濯洗剤は、ナトリウム又はカリウムのような一価の無機カチオンを約5%未満、2%未満、又は1%未満含むのが好ましい。1つの好ましい実施形態では、一価及び/又は二価の無機金属イオンはいかなるものもESSに全く加えず(即ち0%)、ESSの作製の際に、意図的には石鹸を全く加えない。換言すれば、ESSは、一価及び/又は二価の無機金属イオンを実質的に含まない。
【0054】
d.追加の成分
1)追加のアニオン性界面活性剤
本発明のESSは、アニオン性界面活性剤に加えて、それ以外の界面活性剤を任意で含有してもよい。いくつかの実施形態では、本発明の系は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双極性界面活性剤、及びこれらの混合物から選択される界面活性剤を更に含んでもよい。
【0055】
2)緩衝剤
本発明のESSは、pH緩衝剤を任意で含有してもよい。いくつかの実施形態では、pHは、約5〜約11、又は約6〜約9.5、又は約7〜約9のpH範囲内に維持される。理論に束縛されるものではないが、緩衝剤は、外部構造化系のpHを安定させて、それによって、HCO構造化剤の潜在的な加水分解を制限すると考えられる。しかしながら、緩衝剤を含まない実施形態も考えることができ、HCOが加水分解したときには、多少の12−ヒドロキシステアレートが形成される場合があるが、当該技術分野では、構造化できるものとして説明されてきている。緩衝剤を含有する特定の好ましい実施形態では、pH緩衝剤は、構造化系中にナトリウムのような一価の無機カチオンを導入しない。いくつかの実施形態では、好ましい緩衝剤は、ホウ酸のモノエタノールアミン塩である。しかしながら、緩衝剤がナトリウム及びホウ素を含まないか、又は意図的に加えたナトリウム、ホウ素、又はリンをいずれも含まない実施形態も考えられる。いくつかの実施形態では、MEAで中和したホウ酸が、構造化系の約0重量%〜約5重量%、約0.5重量%〜約3重量%、又は約0.75重量%〜約1重量%の濃度で存在してもよい。
【0056】
既に述べたとおり、トリエタノールアミンのようなアルカノールアミン、及び/又はその他のアミンを緩衝剤として用いることができるが、酸性型のアニオン性界面活性剤を中和するという、第一である構造化剤を乳化させる目的に十分な量でまずアルカノールアミンを提供することを条件とする。
【0057】
3)水
本発明のESSは水を含有してもよい。水は、他の全ての成分の重量パーセントを計算に入れた後の本発明の構造化系の残部を形成し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、水は、外部構造化系の約5重量%〜約90重量%、約10重量%〜約40重量%、又は約15重量%〜約35重量%の濃度で存在してよい。
【0059】
e.任意成分
1)防腐剤
微生物による汚染を抑えるために、可溶性防腐剤のような防腐剤をESS又は最終的な洗剤製品に加えてもよい。そのような汚染は、相分離、不快な、例えば腐ったような臭い等をもたらし得るバクテリア及び菌類のコロニーを生じさせる可能性がある。バクテリア及び菌類の増殖を制御する広域スペクトルの防腐剤の使用が好ましい。単一の群の微生物のみに効果的な限られたスペクトルの防腐剤も、広域スペクトルの物質と組み合わせるか、又は、付加的活性を有する限られたスペクトルの防腐剤の「パッケージ」として用いてよい。製造及び消費者による使用の状況に応じて、広域スペクトルの防腐剤を2種以上用いて、潜在的ないかなる汚染の作用をも最小限に抑えるのが望ましい場合もある。
【0060】
2つの殺菌物質、即ち、バクテリア及び菌類を殺すか又は破壊する物質、並びに静菌防腐剤、即ち、微生物の増殖を調節又は遅延する物質の使用が、本発明に示され得る。
【0061】
環境廃棄物を最小限に抑え、配合剤の安定性の最大限の機会を可能にするために、低濃度で効果的な防腐剤を用いるのが好ましい。典型的には、防腐剤は、有効量でのみ用いられる。本開示の目的上、「有効量」という用語は、製品の安定性及び物理的特性が悪影響を受けないように、特定の期間、即ち2週間にわたって、製品中の微生物の増殖を制御するのに十分な濃度を意味する。大半の防腐剤では、有効量は、配合物全体の約0.00001重量%〜約0.5重量%になる。しかしながら、言うまでもなく、有効濃度は、用いられる材料によって変化することになり、当業者であれば、適切な防腐剤及び使用濃度を選定できるはずである。
【0062】
本発明の組成物に好ましい防腐剤としては、有機硫黄化合物、ハロゲン化物質、環状有機窒素化合物、低分子量アルデヒド、四級アンモニウム物質、デヒドロ酢酸、フェニル及びフェノキシ化合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
本発明の組成物中で用いるのに好ましい防腐剤の例としては、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン約77%と、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン約23%との混合物(1.5%水溶液としてRohm & Haas(Philadelphia、PA)からKathonという商品名で市販されているもの)、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、20%ジプロピレングリコール溶液(Proxel(商標)GXLという商品名でArch Chemicals(Atlanta、GA)から市販されているもの)として、Avecia(Wilmington、DE)から市販されているもの)、及び1,3ビス(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチル−2,4イミダゾリジンジオンと3−ブチル−2−ヨードプロピニルカルバメートとの95:5混合物(例えば、Glydant PlusとしてLonza(Fair Lawn、NJ)から入手できるもの)が挙げられる。上記の防腐剤は一般に、製品の安定性を付与するのに有効な量でのみ使用される。しかしながら、防腐剤を本発明の組成物中で、もっと高い濃度で使用して、処理済み物品に静菌作用又は抗菌作用をもたらすこともできると考えられる。非常に好ましい防腐剤系は、Acticide(商標)MBSとして市販されており、活性物質のメチル−4−イソチアゾリン(MIT)及び1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)をほぼ均等な重量比で、かつ、Acticide(商標)MBSにおける総濃度約5%で含む。Acticideは、ESSプレミックス中100%活性ベースで約0.001〜0.1重量%、より典型的には0.01〜0.1重量%の濃度で配合される。
【0064】
2)粘度を低下させるための溶媒
一般に、本明細書のESSは、典型的には5%〜90%、好ましくは10%〜80%、更に好ましくは30%〜70%の濃度で水を含む。しかしながら、粘度を特に処理中に制御又は低下させるのを助けるために、有機のアミノ官能基を持たない有機溶媒で、典型的にはC、H、及びOから本質的になる溶媒(即ちシリコーン及びヘテロ原子を含まない溶媒)が、ESS中に溶媒として存在してもよい。水と、アミノ官能基を持たない有機溶媒との組み合わせは、「液体担体」と呼ばれることがある。
【0065】
したがって、ESSプレミックスを調製するときに、又は最終的な洗剤組成物中に、有機の、アミノ官能基を持たない有機溶媒が存在してもよい。有機の、アミノ官能基を持たない好ましい溶媒としては、一価アルコール、二価アルコール、多価アルコール、グリセロール、グリコール、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられる。非常に好ましいのは、溶媒の混合物、特に、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、及び/又は1,2−プロパンジオール若しくは1,3−プロパンジオールのようなジオールといった低級脂肪族アルコールの混合物、あるいはこれらとグリセロールとの混合物である。好適なアルコールとしては、特にC1〜C4アルコールが挙げられる。好ましいのは、1,2−プロパンジオール又はエタノール、及びこれらの混合物である。本発明は、プロパンジオールは用いるがメタノール及びエタノールは用いない実施形態を含む。本明細書における最終的な洗剤組成物には、液体担体が典型的には、組成物の約0.1重量%〜約98重量%、好ましくは少なくとも約10重量%〜約95重量%、より好ましくは約25重量%〜約75重量%の範囲の濃度で存在する。ESSプレミックス中には、有機の、アミノ官能基を持たない溶媒が、ESSの0〜約30重量%、より典型的には0〜約20重量%、いくつかの実施形態では約1〜約5重量%の濃度で存在してもよい。
【0066】
3)その他の増粘剤
当該技術分野において既知の高分子増粘剤、例えばLubrizol(Wickliffe、OH)製のCarbopol(商標)、会合増粘剤として既知であるようなアクリレートコポリマー等を用いて、ESSを補ってもよい。これらの物質は、ESS中に加えても、最終的な洗剤組成物に別個に加えてもよい。これに加えて、又はこの代わりに、ジベンジリデンソルビトールのような既知のLMOG(低分子量有機ゲル化剤)を、ESSプレミックス中、又は最終的な洗剤組成物中のいずれかで組成物に加えてもよい。好適な使用濃度は、最終的な洗剤組成物の約0.01重量%〜約5重量%、又は約0.1〜約1重量%である。
【0067】
4)微粒子物質
ESS又は最終的な洗剤組成物のいずれかに、泡抑制剤、カプセル化された反応しやすい成分、例えばカプセル化形態の香料、漂白剤、若しくは酵素、又は真珠光沢剤、顔料粒子、若しくは雲母等のような審美的な添加剤といった微粒子物質が更に含まれていてもよい。好適な使用濃度は、最終的な洗剤組成物の約0.0001重量%〜約5重量%、又は約0.1重量%〜約1重量%である。本発明の実施形態では、特定の微粒子物質、例えば外観上の効果のための雲母を直接ESSに導入するのが有用である一方で、もっと後の時点に、より反応しやすい微粒子物質、例えばカプセル化酵素及び/又は漂白剤を最終的な洗剤組成物に配合するのが有用であることが分かっている。
【0068】
II.外部構造化系を作製する方法
本発明のESSは、(a)一般的にアニオン性界面活性剤と、担体流体、例えば、水及び/又はポリオールとを含有する第1のプレミックスを調製する工程と、(b)結晶性グリセリドをプレミックス中に約50℃〜約150℃の温度で含めることによって、ホットプレミックスを形成させる工程と、(c)工程(a)及び(b)の生成物を少なくとも部分的に冷却するか、又は冷まして、本発明の外部構造化系(ESS)をもたらす工程と、(d)任意で、外部構造系に防腐剤を加える工程とを含む方法を用いて作製することができる。これらの工程は、「a」から「d」という順で完了させることができる。ただし、糸様ESSをもたらす変形形態も、本発明に包含されるよう意図されていることに留意されたい。例えば、防腐剤は、別個の工程(d)においてではなく、工程(a)で含めてもよい。各工程については後述する。ESSを調製したら、それを洗剤組成物の残部に、典型的にはESSと洗剤組成物の残部との温度差が20℃〜30℃以下で加えてもよく、好ましくは、ESS及び洗剤の残部は冷所で化合させる。
【0069】
a.プレミックスの調製
この工程では、プレミックスを作製する。いくつかの実施形態では、プレミックスは、外部構造化系中に存在する構成成分の全てを含む。したがって、プレミックスは、結晶性グリセリド、アルカノールアミン、アニオン性界面活性剤、水、低級アルコール、グリコール、及びいずれかの任意成分を化合させることによって作製することができる。任意成分の非限定例としては、防腐剤、上記のアニオン性界面活性剤以外の緩衝界面活性剤、香料又は着色剤等のような審美的な添加剤等が挙げられる。
【0070】
b.HCの乳化
この工程では、プレミックス中の結晶性グリセリドを乳化して、エマルション、エマルションとマイクロエマルションとの混合物、又はマイクロエマルションを形成する。上に示した理由から、エマルションを形成するのが好ましい。
【0071】
これは、プレミックスの温度を上昇させること、及び/又はプレミックス全体にエネルギーを散逸させることによって実現させることができる。
【0072】
この温度は、アルカノールアミンとの混合時における酸性型アニオン性界面活性剤の中和の熱を用いること、及び/又は外部の供給源から熱を加えることによって上昇させてよい。
【0073】
プレミックスは、室温を超える温度まで加熱する。いくつかの実施形態では、プレミックスは、例えばHCOのような結晶性グリセリドの構造化剤の融点を超える温度まで加熱する。いくつかの実施形態では、プレミックスは、約50℃〜約150℃、約75℃〜約125℃、又は約80℃〜約95℃の温度まで加熱する。
【0074】
エネルギー散逸の場合には、プレミックスへのエネルギー入力をもたらすいずれかの種類の装置を適用して、エマルションを形成できることが理解される。このような装置の非限定例は、静的ミキサー及び動的ミキサー(あらゆる種類の低剪断及び高剪断ミキサーが挙げられる)から選択され得る。いくつかの実施形態では、エマルションは、バッチ作製システム、半連続作製システム、又は連続作製システムで形成させることができる。
【0075】
c.プレミックスの冷却
この工程では、続いてプレミックスを冷却する。理論に束縛されるものではないが、冷却中、界面活性剤の吸着によって、液体油エマルション液滴が脱湿し、それによって結晶化が促進されると考えられる。冷却中、エマルション液滴の周りから小結晶が核となる場合がある。更に、結晶化は、界面活性剤の吸着又は冷却速度の影響を受ける場合があると考えられる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、外部構造化系は、約0.1℃/分〜約10℃/分、約0.5℃/分〜約1.5℃/分、又は約0.8℃/分〜約1.2℃/分の冷却速度で冷却される。
【0077】
d.防腐剤の添加
任意の工程として、プロセス手順の任意の時点で、上記のような防腐剤を実施形態に加えることができる。これは、例えば、プレミックスを保存又は輸送し、長期にわたり、微生物による汚染のない状態に保つ必要がある場合に有用であり得る。
【0078】
一般的な剪断条件
すでに指摘したとおり、本明細書のESSは、様々な設備タイプ及び剪断状況を用いて製造することができる。1つの好ましい実施形態では、製造プロセスでは、剪断速度が最大100〜500s−1に達する比較的小さい剪断状況を採用し、ESSは、滞留時間中、60〜100秒(s)以下の最高の剪断条件下で、この剪断最大値を経る。実際的な言い方をすれば、1つのプロセスでは、バッチ、パイプ、ポンプ、及びプレート式の熱交換器装置を採用し、最大剪断力は、ESSを冷却するのに用いるプレート式熱交換器の段階で生じるが、ESSがこの高い剪断力区域を経ることは非常に少なく、例えば、プロダクションラン1回につき約3〜約5回のみである。
【0079】
III.洗剤組成物
本発明のESSは、以下に説明されるような洗剤組成物又は洗濯組成物の成分に組み込むことができる。洗剤組成物は、任意の好適な形態を取ることができ、液体洗濯洗剤、1回量洗剤、及び/又は硬質表面洗浄組成物から選択され得る。
【0080】
a.外部構造化系を組み込む方法
本発明のESSを洗剤組成物又はその構成成分に導入する任意の好適な手段を用いてよい。当業者であれば、洗剤製造プロセスのどの時点でESSを組み込むべきかを判断することができる。本発明のESSは、剪断力の影響を受けやすい場合があるので、いくつかの実施形態では、製造プロセスにおいて可能な限り遅い時点で、ESSを洗剤組成物又はその構成成分に加えるのが望ましい場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態では、製造プロセスの早い時点でESSを加えて、後の製品差別化プロセスで洗剤を仕上げる前に、非均質性を安定化させるのが望ましい場合がある。したがって、いくつかの実施形態では、系を連続液体プロセスを介して加えてもよく、他の実施形態では、後の製品差別化プロセスを介して系を加えてもよい。
【0081】
剪断力の影響を受けやすいESSを他の構成成分に導入して、洗剤組成物を形成するときには、特定の作業パラメーターを設定するのが有益であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、ESSを導入するのに用いる平均剪断速度は、約300s−1〜約500s−1、約100s−1〜約5000s−1、又は約0.01s−1〜約10000s−1であってよい。瞬間剪断力は、短時間、約3000s−1〜約5000s−1ほど大きくてもよい。レオロジープロファイルを定義するために、TA Instrumentsから入手可能なレオメーターTA550を用いて、組成物の流動曲線を割り出す。この割り出しは、20℃で、500マイクロメートルのギャップを設けた4cmの平板測定システムを用いて行う。上記の割り出しは、ある期間(3分間)にわたって、剪断速度を連続的に上昇させる(典型的には0.05s−1から30s−1まで)プログラム済みのアプリケーションによって行う。これらのデータを用いて、粘度対剪断速度の流動曲線を作成する。
【0082】
ESSを他の構成成分に導入して洗剤組成物を形成するのに要する時間は、約1秒〜約120秒、約0.5秒〜約1200秒、又は約0.001秒〜約12000秒であってよい。
【0083】
b.液体洗濯洗剤組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のESSを含む液体洗濯洗剤組成物を目的とする。この液体洗濯洗剤組成物は、任意の好適な形態であってよく、任意の好適な構成成分を含んでよい。好適な構成成分の非限定例は、以下で順に説明する。
【0084】
1)界面活性剤成分
本明細書の洗剤組成物は、アニオン性、非イオン性、カチオン性、双極性、及び/又は両性の表面活性剤から選択される界面活性剤成分を約1重量%〜70重量%含む。より好ましくは、界面活性剤成分は、組成物の約5重量%〜45重量%含み、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせを含む。有用な界面活性剤物質の非限定例は、以下で説明する。
【0085】
i)アニオン性界面活性剤
本明細書で有用な好適なアニオン性界面活性剤は、液体洗剤製品で典型的に使用される従来の種類のいかなるアニオン性界面活性剤をも含むことができる。これらには、アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、並びにアルコキシル化又は非アルコキシル化アルキルサルフェート物質が挙げられる。
【0086】
好ましいアニオン性界面活性剤は、C10〜16アルキルベンゼンスルホン酸、好ましくはC11〜14アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩である。好ましくは、アルキル基は直鎖であり、このような直鎖アルキルベンゼンスルホネートは「LAS」として知られている。アルキルベンゼンスルホネート、特にLASは、当該技術分野において周知である。そのような界面活性剤及びそれらの調製は、例えば、米国特許第2,220,099号及び同第2,477,383号に記載されている。特に好ましいものは、アルキル基の炭素原子の平均数が約11〜14である、直鎖線状のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びカリウムである。C11〜C14、例えばC12のLASのナトリウムが特に好ましい。
【0087】
別の好ましいタイプのアニオン性界面活性剤は、エトキシル化アルキルサルフェート界面活性剤を含む。アルキルエーテルサルフェート又はアルキルポリエトキシレートサルフェートとしても既知のこうした物質は、次式に相当するものである。
【0088】
R’−O−(C2H4O)n−SO3M
式中、R’はC8〜C20アルキル基であり、nは約1〜20であり、Mは塩形成カチオンである。好ましくは、R’はC10〜C18アルキルであり、nは約1〜15であり、Mはナトリウム、カリウム、アンモニウム、アルキルアンモニウム、又はアルカノールアンモニウムである。最も好ましくは、R’はC12〜C16であり、nは約1〜6であり、Mはナトリウムである。
【0089】
アルキルエーテルサルフェートは、一般に、様々なR’鎖長及び様々なエトキシル化度を含む混合物の形態で使用される。そのような混合物はまた、必然的にいくらかの非エトキシル化アルキルサルフェート物質、即ち、上記エトキシル化アルキルサルフェートの式で、式中、n=0である界面活性剤も含有することが多い。非エトキシル化アルキルサルフェートもまた本発明の組成物に別個に加え、存在し得るいずれかのアニオン性界面活性剤成分として又はその成分中で使用してよい。
【0090】
好ましい非アルコキシル化、例えば非エトキシル化アルキルエーテルサルフェート界面活性剤は、C8〜C20脂肪族高級アルコールの硫酸化によって製造される界面活性剤である。従来の一級アルキルサルフェート界面活性剤は、以下の一般式を有する。
【0091】
ROSO3−M+
式中、Rは典型的には、C8〜C20直鎖ヒドロカルビル基(直鎖であっても分枝鎖であってもよい)であり、Mは水溶性化カチオンである。好ましくは、RはC10〜C15アルキルであり、Mはアルカリ金属である。最も好ましくは、RはC12〜C14であり、Mはナトリウムである。
【0092】
ii)非イオン性界面活性剤
本明細書で有用な好適な非イオン性界面活性剤は、液体洗剤製品で典型的に使用される従来の種類のいかなる非イオン性界面活性剤をも含むことができる。これらには、アルコキシル化脂肪族アルコール及びアミンオキシド界面活性剤が挙げられる。本明細書の液体洗剤製品での使用に好適なものは、通常液体である非イオン性界面活性剤である。
【0093】
本明細書で使用される好ましい非イオン性界面活性剤には、アルコールアルコシキレート非イオン性界面活性剤が挙げられる。アルコールアルコキシレートは、次の一般式に相当する物質である。
【0094】
R1(CmH2mO)nOH
式中、R1はC8〜C16アルキル基であり、mは2〜4であり、nは約2〜12の範囲である。好ましくは、R1はアルキル基であり、これは一級であっても二級であってもよく、約9〜15個の炭素原子、より好ましくは約10〜14個の炭素原子を含有する。好ましくは、アルコキシル化脂肪族アルコールも、1分子当たり約2〜12個のエチレンオキシド部分、より好ましくは1分子当たり約3〜10個のエチレンオキシド部分を含有するエトキシル化物質である。
【0095】
本明細書の液体洗剤組成物に有用なアルコキシル化脂肪族アルコール物質は、約3〜17の範囲の親水性−親油性バランス(HLB)を有することが多い。より好ましくは、この物質のHLBは、約6〜15、最も好ましくは約8〜15の範囲である。アルコキシル化脂肪族アルコールの非イオン性界面活性剤は、Neodol(商標)及びDobanol(商標)という商品名で、Shell Chemical Company(Houston、TX)により市販されている。
【0096】
本明細書で有用な非イオン性界面活性剤の別の好適な種類は、アミンオキシド界面活性剤を含む。アミンオキシドは、当該技術分野において「半極性」非イオン性物質と呼ばれることが多い物質である。アミンオキシドは、式R(EO)x(PO)y(BO)zN(O)(CH2R’)2.qH2Oを有する。式中、Rは、飽和又は不飽和、直鎖又は分枝鎖であることができる比較的長鎖のヒドロカルビル部分であり、8〜20個、好ましくは10〜16個の炭素原子を含有することができ、より好ましくはC12〜C16第一級アルキルである。R’は、好ましくは水素、メチル、及び−CH2OHから選択される短鎖部分である。x+y+zが0と異なる場合、EOはエチレンオキシ、POはプロピレンオキシ、BOはブチレンオキシである。アミンオキシド界面活性剤は、C12〜14アルキルジメチルアミンオキシドで示される。
【0097】
iii)アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせ
本明細書の液体洗剤組成物において、洗浄性界面活性剤成分は、アニオン性及び非イオン性界面活性剤物質の組み合わせを含んでよい。
【0098】
2)水性液体担体
一般に、本明細書の組成物で使用される水性の非表面活性液体担体の量は比較的多い。例えば、非水性の非表面活性液体担体成分は、本明細書の組成物の約0重量%〜40重量%を構成することができる。より好ましくは、この液体担体成分は、本明細書の組成物の約1重量%〜30重量%、更に好ましくは2重量%〜25重量%を構成する。
【0099】
最も価格的に効果的な種類の水性の非表面活性液体担体は、言うまでもなく水そのものである。それ故に、水性の非表面活性液体担体成分は、一般に、完全にではないとしてもほとんど水から成る。従来からそのようなアルカノール、ジオール、他のポリオール、エーテル及びアミン等の他の種類の水相溶性液体が共溶媒又は安定剤として液体洗剤組成物に添加されているが、本発明の目的のためには、そのような水相溶性液体の利用は、組成物コストを抑えるため最小限にされるべきである。したがって、本明細書の液体洗剤製品の水溶性液体担体成分は、一般的に、組成物の約0重量%〜90重量%、より好ましくは約5重量%〜70重量%の範囲の濃度で存在する水を含む。
【0100】
3)任意の洗剤組成物成分
本発明の洗剤組成物は、任意の数の追加の任意成分を含んでよい。これらには洗浄性ビルダー、酵素、酵素安定剤(プロピレングリコール、ホウ酸及び/又はホウ砂など)、泡抑泡剤、汚れ懸濁剤、汚れ放出剤、他の布地ケア有益剤、pH調整剤、キレート化剤、スメクタイト粘土、溶媒、ヒドロトロープ及び相安定剤、構造化剤、移染抑止剤、蛍光増白剤、香料、及び着色剤等の従来の洗濯洗剤組成物の構成成分が挙げられる。種々の任意の洗剤組成物成分は、本明細書の組成物中に存在する場合、それらの望まれる貢献を組成物又は洗濯作業にもたらすよう慣習的に使用されている濃度で利用されるべきである。このような任意の洗剤組成物成分の総量は、組成物の2重量%〜50重量%、より好ましくは5重量%〜30重量%の範囲であり得る場合が多い。使用できる任意成分のいくつかを以下に更に詳細に記載する。
【0101】
i)有機洗剤ビルダー
本明細書の洗剤組成物はまた任意で、本明細書の組成物の洗濯/漂白での使用中に遭遇する、カルシウム又は他のイオン、水の硬度の影響に対抗するように作用する、低濃度の有機洗剤ビルダー物質を含有してもよい。こうした物質の例には、アルカリ金属、シトレート、スクシネート、マロネート、カルボキシメチルスクシネート、カルボキシレート、ポリカルボキシレート、及びポリアセチルカルボキシレートが挙げられる。具体的な例としては、オキシジコハク酸、メリト酸、ベンゼンポリカルボン酸、C10〜C22脂肪酸、及びクエン酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びリチウム塩が挙げられる。その他の例は、MonsantoによりDequestの商標名で販売されてきたもの及びアルカンヒドロキシホスホネートのような、有機ホスホネートタイプの金属イオン封鎖剤である。クエン酸塩及びC12〜C18脂肪酸石鹸が極めて好ましい。
【0102】
他の好適な有機ビルダーには、ビルダーの特性を有することが知られている、より高い分子量のポリマー及びコポリマーが挙げられる。例えば、こうした物質には、適切なポリアクリル酸、ポリマレイン酸、及びBASFによってSokalanの商標名で販売されているもののようなポリアクリル酸/ポリマレイン酸コポリマー及びそれらの塩が挙げられる。
【0103】
有機ビルダー物質を使用する場合、有機ビルダー物質は一般的に、組成物の約1重量%〜50重量%、より好ましくは約2重量%〜30重量%、最も好ましくは約5重量%〜20重量%を構成する。
【0104】
ii)洗浄性酵素
本明細書の液体洗剤組成物は、洗浄性能及び/又は布地ケア効果をもたらす1つ以上の洗浄性酵素を含んでもよい。好適な酵素の例としては、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、ケラタナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β−グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、ラッカーゼ、及び既知のアミラーゼ、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい酵素の組み合わせは、アミラーゼとの、プロテアーゼ、リパーゼ、クチナーゼ及び/又はセルラーゼのような従来の洗浄性酵素の反応混液(cocktail)を含む。洗浄性酵素は、米国特許第6,579,839号でより詳細に記載されている。
【0105】
酵素を採用する場合、酵素は通常、組成物1g当たり重量最大3mg、より典型的には約0.0001mg〜約2.5mgの活性酵素をもたらすのに十分な濃度で、本明細書の液体洗剤組成物に導入される。言い換えれば、本明細書の水性液体洗剤組成物は、典型的には、市販の酵素製剤を0.001重量%〜5重量%、好ましくは0.005重量%〜3重量%含むことができる。市販の酵素製剤の活性は、典型的には、原材料1g当たり10〜50mgの活性酵素タンパク質の範囲である。
【0106】
iii)溶媒、ヒドロトロープ、及び相安定剤
本明細書の洗剤組成物はまた任意で、本明細書の液体組成物のための相安定剤及び/又は共溶媒として作用する低濃度の物質を含有してもよい。この種類の物質としては、メタノール、エタノール、及び/又はプロパノールなどのC1〜C3低級アルカノールが挙げられる。モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンのような低級C1〜C3アルカノールアミンもまた、それ自体で又は低級アルカノールとの組合せで使用することができる。使用される場合、相安定剤/共溶媒は、本明細書の組成物の約0.1重量%〜5.0重量%を構成することができる。
【0107】
iv)pH制御剤
本明細書の洗剤組成物はまた任意で、本明細書の水性洗剤組成物のpHを最適な濃度で調整又は維持するように作用する低濃度の物質を任意に含有してもよい。本発明の組成物のpHは、約6.0〜約10.5、約7.0〜約10.0、又は約8.0〜約8.5の範囲でなければならない。必要に応じてNaOHなどの物質を添加して、組成物のpHを変えてもよい。
【0108】
c.1回量洗剤
本発明のいくつかの実施形態では、液体洗剤組成物は、1回量のパウチに包装されており、この場合、そのパウチは、ポリビニルアルコールのような水溶性フィルム物質で作られている。いくつかの実施形態では、1回量のパウチは、単一又は複数の区画を有するパウチを成し、この場合、本発明の液体洗剤組成物は、いずれかの他の従来の粉末又は液体洗剤組成物と併せて用いることができる。好適なパウチ及び水溶性フィルム物質の例は、米国特許第6,881,713号、同第6,815,410号、及び同第7,125,828号に示されている。このパウチは、水溶性又は水分散性であるフィルム物質で作られるのが好ましく、最大孔径が20マイクロメートルのガラスフィルターを用いて、以下に示されている方法で測定した場合、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、又は更には少なくとも95%の水溶度を有する。
【0109】
予め秤量した400mLのビーカーに、50グラム±0.1グラムのパウチ材料を加え、245mL±1mLの蒸留水を加える。これを、600rpmに設定された磁性攪拌器上で、30分間激しく攪拌する。続いて、この混合物を、上で定義した孔径(最大20マイクロメートル)の折り畳んだ定性焼結ガラスフィルターに通して濾過する。回収した濾液から任意の従来法によって水を乾燥させ、残った材料の重量を測定する(これが溶解又は分散画分である)。次いで、溶解度又は分散度の割合を計算することができる。
【0110】
好ましいパウチ材料は、ポリマー材料、好ましくはフィルム又はシートに形成されるポリマーである。パウチ材料は、当該技術分野において既知であるように、例えば、ポリマー材料のキャスティング、吹込成形、押出成形、又は吹き押出により得ることができる。
【0111】
パウチ材料として用いるのに適した好ましいポリマー、コポリマー、又はこれらの誘導体は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、アクリルアミド、アクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリビニルアセテート、ポリカルボン酸及び塩、ポリアミノ酸又はペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、多糖類(デンプン及びゼラチンを含む)、キサンタン(xanthum)及びカラゴム(carragum)のような天然ガムから選択される。より好ましいポリマーは、ポリアクリレート及び水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレートから選択され、最も好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、並びにこれらの組み合わせから選択される。好ましくは、パウチ材料中のポリマー、例えばPVAポリマーの濃度は、少なくとも60%である。ポリマーは、任意の重量平均分子量を有することができるが、好ましくは約1000〜1,000,000、より好ましくは約10,000〜300,000、更により好ましくは約20,000〜150,000である。
【0112】
ポリマーの混合物もまた、パウチ材料として使用することができる。これは、その用途及び必要とされるニーズに応じて、区画又はパウチの機械的特性及び/又は溶解特性を制御するのに有益であり得る。好適な混合物には、例えば、1つのポリマーが別のポリマーよりも高い水溶性を有し、及び/又は1つのポリマーが別のポリマーよりも高い機械的強度を有する混合物が挙げられる。同様に好適なものは、異なる重量平均分子量を有するポリマーの混合物、例えば、重量平均分子量が約10,000〜40,000、好ましくは20,000前後のPVA又はそのコポリマーと、重量平均分子量が約100,000〜300,000、好ましくは150,000前後のPVA又はそのコポリマーとの混合物である。同様に本明細書で好適なものは、例えば、ポリラクチドとポリビニルアルコールとを混合することによって得られ、典型的には約1〜35重量%のポリラクチドと約65重%〜99重量%のポリビニルアルコールとを含む、ポリラクチド及びポリビニルアルコールのような、加水分解によって分解可能な及び水溶性のポリマーブレンドを含むポリマーブレンド組成物である。本明細書での使用に好ましいものは、材料の溶解特性を改善するために約60%〜約98%加水分解された、好ましくは約80%〜約90%加水分解されたポリマーである。
【0113】
当然のことながら、異なるフィルム材料及び/又は異なる厚さのフィルムもまた、本発明の区画を作製するために使用できる。異なるフィルムを選択することの利益は、得られる区画が、異なる溶解度特性、即ち放出特性を呈することができるということである。
【0114】
最も好ましいパウチ材料は、Chris−Craft Industrial Products(Gary、IN)から販売されているMonoSol M8630という商品名で知られているPVAフィルム、並びにそれに相当する溶解度及び変形性特性のPVAフィルムである。本明細書で用いるのに適した他のフィルムとしては、Aicello(Koshikawa、Japan)から供給されているPTフィルム若しくはKシリーズフィルム、又はKuraray(Tokyo、Japan)から供給されているVF−HPフィルムという商品名で知られているフィルムが挙げられる。
【0115】
また、本明細書のパウチ材料は、1つ以上の添加剤成分を含むことができる。例えば、可塑剤、例えばグリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、及びこれらの混合物を添加することが有益であり得る。他の添加剤としては、洗浄水に送達される機能的洗剤添加剤、例えば有機ポリマー分散剤などが挙げられる。
【0116】
変形性の理由から、液体である構成成分を含むパウチ又はパウチ区画は、好ましくは区画の容積空間の約50%まで、好ましくは約40%まで、より好ましくは約30%まで、より好ましくは約20%まで、より好ましくは約10%までの体積を有する気泡を含有する。
【0117】
本発明による液体洗剤組成物を含む1回量のパウチは、いずれかの好適な手段を用いて作製することができる。このような手段の非限定例については、上に列挙した特許に説明されている。
【0118】
このパウチは、水溶性又は水分散性であるフィルム物質で作られるのが好ましく、最大孔径が20マイクロメートルのガラスフィルターを用いて、以下に示されている方法で測定した場合、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、又は更には少なくとも95%の水溶度を有する。
【0119】
予め秤量した400mLのビーカーに、50グラム±0.1グラムのパウチ材料を加え、245mL±1mLの蒸留水を加える。これを、600rpmに設定された磁性攪拌器上で、30分間激しく攪拌する。続いて、その混合物を、上で定義した孔径(最大20マイクロメートル)の折り畳んだ定性焼結ガラスフィルターに通して濾過する。回収した濾液から任意の従来法によって水を乾燥させ、残った材料の重量を測定する(これが溶解又は分散画分である)。次いで、溶解度又は分散度の割合を計算することができる。
【0120】
d.硬質表面洗浄組成物
いくつかの実施形態では、ESSを液体硬質表面洗浄組成物中で用いてよい。このような組成物としては、ゲル、ペースト、増粘液体組成物、並びに水様の粘度を有する組成物から選択される形態が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において好ましい液体硬質表面洗浄組成物は、水性の液体硬質表面洗浄組成物であり、したがって、好ましくは水を、より好ましくは全組成物の50重量%〜98重量%、更に好ましくは75重量%〜97重量%、最も好ましくは80重量%〜97重量%の量で含む。
【実施例】
【0121】
以下の表I〜IIIを参照すると、本明細書に開示されている非限定例として、本発明の複数の実施形態の実例となるものが、比較のためのものと共に挙げられる。
【0122】
表Iを参照すると、実施例1は液体洗剤組成物の比較例であり、HCOを4%と、1.9%のNaOHによって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、100部になるまでの水とを含むプレミックスを作製してから、残りの成分を含むHDLマトリックスにプレミックスを18.75%の濃度で加えて、表Iの洗剤組成物1を得たものである。
【0123】
表Iを参照すると、実施例2は、本発明による液体洗剤組成物の一例であり、HCOを4%と、3.1%のモノエタノールアミン(MEA)によって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、100部になるまでの水とを含むプレミックスを作製してから、残りの成分を含むHDLにプレミックスを18.75%で加えて、表Iの洗剤組成物2を得たものである。
【0124】
表Iを参照すると、実施例3及び4は、本発明による液体洗剤組成物の例であり、実施例2と同様に、MEAで中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を有する同じHCOプレミックスを実施例2と同じ濃度(18.75%)で残りの成分に加えたものを用いたものである。
【0125】
【表1】

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の重量パーセントには、プレミックスを介して組成物に加えられたものの重量パーセントが含まれる。
−NH当たり20個のエトキシレート基を有する、分子量600g/molのポリエチレンイミンコア。
PEG−PVAグラフトコポリマーは、ポリエチレンオキシド主鎖と複数のポリビニルアセテート側鎖とを有する、ポリビニルアセテートグラフト化ポリエチレンオキシドコポリマーである。ポリエチレンオキシド主鎖の分子量は約6000であり、ポリエチレンオキシドとポリ酢酸ビニルの重量比は約40:60であり、50エチレンオキシド単位当たり1グラフト点を超えない。
【0126】
室温で3カ月保存した後の外観の均質性は、比較例1よりも実施例2の方が優れている。
【0127】
実施例2、3、及び4に従って作製した液体洗剤組成物は、逆さにしたスリットバルブ付きスクイーズボトルに入れてもよい。
【0128】
表IIを参照すると、実施例5、6、及び7も、本発明の液体洗剤組成物の実例となるものである。HCOを4%と、3.7%のMEAによって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、100部になるまでの水とを含む同じプレミックスを用いて、液体洗剤組成物を調製する。
【0129】
残りの配合物にプレミックスを13.07%(実施例5)、9.25%(実施例6)、及び3.50%(実施例7)の濃度で加えて、以下の表IIに示されている液体洗剤組成物をもたらす。
【0130】
【表2】

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の重量パーセントには、プレミックスを介して組成物に加えられたものの重量パーセントが含まれる。
−NH当たり20個のエトキシレート基を有する、分子量600g/molのポリエチレンイミンコア。
PEG−PVAグラフトコポリマーは、ポリエチレンオキシド主鎖と複数のポリビニルアセテート側鎖とを有する、ポリビニルアセテートグラフト化ポリエチレンオキシドコポリマーである。ポリエチレンオキシド主鎖の分子量は約6000であり、ポリエチレンオキシドとポリ酢酸ビニルの重量比は約40:60であり、50エチレンオキシド単位当たり1グラフト点を超えない。
【0131】
実施例5、6、及び7に従って作製した液体洗剤組成物は、逆さにしたスリットバルブ付きスクイーズボトルに入れてもよい。
【0132】
表IIIを参照すると、実施例8は、1回量の可溶性パウチ入り洗剤組成物の比較例であり、HCOを4%と、1.9%のNaOHによって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、pH=7.5に緩衝するリン酸塩と、100部になるまでの水とを含むプレミックスを作製してから、残りの成分を含む洗剤マトリックスにプレミックスを2.5%の濃度で加えて、表IIIの洗剤組成物1を得たものである。
【0133】
表IIIを参照すると、実施例9は、1回量の可溶性パウチ入り洗剤組成物の別の比較例であり、HCOを4%と、1.9%のNaOHによって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、pH=7.5に緩衝するTEAと、100部になるまでの水とを含むプレミックスを作製してから、残りの成分を含む洗剤マトリックスにプレミックスを2.5%で加えて、表IIIの洗剤組成物2を得たものである。
【0134】
表IIIを参照すると、実施例10は、本発明による1回量の可溶性パウチ入り洗剤組成物の実施例であり、HCOを4%と、モノエタノールアミン(MEA)によって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、pH=7.5に緩衝するTEAと、100部になるまでの水とを含むプレミックスを作製してから、残りの成分を含む洗剤マトリックスにプレミックスを2.5%で加えて、表IIIの洗剤組成物3を得たものである。
【0135】
表IIIを参照すると、実施例11は、本発明による1回量の可溶性パウチ入り洗剤組成物の実施例であり、HCOを4%と、緩衝剤を加えずにモノエタノールアミン(MEA)によって中和した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を16%と、100部になるまでの水とを含むプレミックスを作製してから、残りの成分を含むHDLにプレミックスを2.5%で加えて、表IIIの洗剤組成物3を得たものである。
【0136】
【表3】

直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の重量パーセントには、プレミックスを介して組成物に加えられたものの重量パーセントが含まれる。
−NH当たり20個のエトキシレート基を有する、分子量600g/molのポリエチレンイミンコア。
【0137】
VI.比較データ
本明細書の図は、従来の(Na−LASで乳化させた)硬化ヒマシ油外部構造化剤と比較した、本発明の外部構造化系のレオロジー特性に関する。
【0138】
各図において、9.25重量部%の外部構造化剤(ESS)プレミックスという同一濃度に関して、レオロジーの比較を行い、実施例6の濃縮液体洗濯洗剤中に、合わせて0.37重量%の硬化ヒマシ油構造化剤を送達する。Naで中和したLASを用いて、プレミックス中で乳化させた硬化ヒマシ油、換言すれば、当該技術分野の外部構造化系を代わりに使うこと以外は同じ方式で比較を行う。レオロジーデータは、本発明の外部構造化剤によって増粘性が実質的に向上することを示している。
【0139】
本発明の外部構造化剤は、液体洗剤中に導入した場合、低い剪断力においては比較的高い粘度を、高い剪断力においては比較的低い粘度を示し、剪断減粘性が高い。
【0140】
レオロジープロファイルを定義するために、TA Instrumentsから入手可能なレオメーターTA550を用いて、組成物の流動曲線を割り出す。この割り出しは、20℃で、500マイクロメートルのギャップを設けた4cmの平板測定システムを用いて行う。上記の割り出しは、ある期間(3分間)にわたって、剪断速度を連続的に上昇させる(典型的には0.05s−1〜30s−1)プログラム済みのアプリケーションによって行う。
【0141】
これらのデータを用いて、粘度対剪断速度の流動曲線を作成する。
図1は、0〜30s−1の範囲のプロット比較の結果であり、対数目盛で縦軸に粘度(Pa・s)を示しているのに対して、横軸に剪断速度(s−1)を示している。
図2は、0〜5s−1の範囲のプロット比較の結果であり、線形目盛で縦軸に粘度(Pa・s)を示しているのに対して、横軸に剪断速度(s−1)を示している。
図3は、20s−1で測定した注入粘度のプロット比較の結果であり、線形目盛で縦軸に粘度(Pa・s)を示しているのに対して、横軸に剪断速度(s−1)を示している。
【0142】
3つの全てのプロットにおいて、本発明の系の優越性は明らかである。更に、これらの結果は、ESS及びESSを含有する洗剤の顕微鏡検査結果と一致しており、Na−LASで乳化させた類似体よりも、結晶化硬化ヒマシ油の糸様又は棒様構造体の均一分散性が優れていることを示している。
【0143】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は出願書類を含め、本明細書において引用される全ての文献は、明示的に除外ないしは制限されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本明細書において開示され請求されるいずれかの発明に関する先行技術であること、又はそれが単独で若しくは他のいかなる参照とのいかなる組み合わせにおいても、このような発明を教示する、提案する、又は開示することを認めるものではない。更に、本書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれる文献における同一の用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本書においてその用語に与えられた定義又は意味が適用されるものとする。
【0144】
本発明の特定の実施形態が例示され、記載されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を、添付の「特許請求の範囲」で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体及びゲル状洗濯洗剤用外部構造化系であって、
d.40℃〜100℃の融解温度を有する約2〜約10重量%のグリセリドの結晶、好ましくは硬化ヒマシ油と、
b.約2〜約10重量%のアルカノールアミン、好ましくはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びこれらの混合物から選択されるアルカノールアミンと、
c.約5〜約50重量%のアニオンのアニオン性界面活性剤と、を含み、
前記アルカノールアミンが、少なくとも前記アニオン性界面活性剤のアニオン型の電荷の平衡を保つ量で存在し、かつ前記構造化系が、添加された無機カチオンを含まない、外部構造化系。
【請求項2】
前記結晶が、アスペクト比が少なくとも5:1であり、針状粒子半径が少なくとも約20ナノメートルである非球状の細長い晶癖を有する、請求項1に記載の外部構造化系。
【請求項3】
前記アニオン性界面活性剤が、合成アニオン性界面活性剤であり、そのナトリウム塩が50℃未満のクラフト温度を有する、請求項2に記載の外部構造化系。
【請求項4】
前記アニオン性界面活性剤が8未満のHI値を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の外部構造化系。
【請求項5】
前記アニオン性界面活性剤が、70%以下の2−フェニル異性体含有量を含むアルキルベンゼンスルホネートである、請求項4に記載の外部構造化系。
【請求項6】
前記組成物が、石鹸及び/又は二価金属カチオンを実質的に含まない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の外部構造化系。
【請求項7】
前記アルカノールアミンが、前記構造化系中に前記アニオン性界面活性剤よりも化学量論的に過剰に存在し、前記外部構造化系を水で5重量%で希釈した場合のpHが約7.5〜約9.0である、請求項6に記載の外部構造化系。
【請求項8】
前記アルカノールアミンがモノエタノールアミンであり、前記系がホウ素を含まない、請求項1に記載の外部構造化系。
【請求項9】
ナトリウムで中和した直鎖アルキルベンゼンスルホネートを前記外部構造化組成物の約1重量%未満含む、請求項8に記載の外部構造化系。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の外部構造化組成物を含み、好ましくは、液体及びゲルの群から選択される形態である、洗剤組成物。
【請求項11】
前記洗剤が、前記液体洗濯洗剤組成物の外部構造化系を約1重量%〜約20重量%含む液体洗濯洗剤であり、前記外部構造化系が、完成した洗剤製品の約0.1〜約10重量%の硬化ヒマシ油という完成した洗剤製品レベルを実現するのに十分な硬化ヒマシ油を提供する、請求項10に記載の洗剤組成物。
【請求項12】
前記洗剤組成物が、一価無機カチオンを前記洗濯洗剤組成物の2重量%未満含む液体洗濯洗剤組成物である、請求項11に記載の洗剤組成物。
【請求項13】
前記洗剤組成物が、水溶性フィルム内に封入された液体である、請求項10〜12のいずれか一項に記載の洗濯洗剤組成物。
【請求項14】
前記洗剤が、硬質表面洗浄組成物及び液体洗濯洗剤組成物から選択される洗剤である、請求項13に記載の洗剤組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の外部構造化系を含む液体洗剤組成物であって、
a.約15〜約30重量%のアニオン性界面活性剤と、
b.約5〜約15重量%の非イオン性界面活性剤と、
c.約5〜約15重量%の脂肪酸と、
d.約0.1〜約5重量%のクエン酸、キレート剤、又はこれらの混合物と、
e.約2〜約15重量%の有機溶媒と、
f.約0.05〜約1.5重量%の硬化ヒマシ油と、
g.約5〜約15重量%のアルカノールアミンと、
h.約0.1〜約5重量%の洗浄ポリマーと、
を含むことを更に特徴とする、液体洗剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−503949(P2013−503949A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528128(P2012−528128)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/048387
【国際公開番号】WO2011/031940
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】