説明

液体流路装置とその製造方法

【課題】簡便に液体流路を開通状態から閉止状態にできる液体流路装置を低コストで提供する。
【解決手段】基板の少なくとも片面に、液体が流通する液体流路12と、液体が溜まる1つ以上の液槽とが形成され、基板の流路形成面には蓋板が積層した液体流路装置であって、液体流路12の一部を開通状態から閉止状態にする閉止手段を有する。閉止手段は、液体流路12の一部から分岐して形成された封止材料供給槽16と、該封止材料供給槽16に充填された封止材料17とを有する。封止材料供給槽16に対応する部分の蓋板を矢印Bのように押圧する操作、または封止材料供給槽16の底部を外側から押圧する操作により、封止材料17は液体流路12の一部に押し出され、その部分を前記閉止状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば血液中の抗原の検出、分析などに好適に使用される平板状の液体流路装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野、環境分野などでは、液体試料中の微量成分の検出、分析が頻繁に行われており、その際、例えば医療分野では、基板に流路が形成されたマイクロチップと呼ばれる液体流路装置が使用される場合が多い。
例えば特許文献1には、マイクロチップに形成された液体流路内で、抗体を含有する試薬と血液とを混合、反応させた後、該マイクロチップごと検出装置に供して、抗原抗体反応を検出する技術が記載されている。また、例えば特許文献2には、回転可能なディスクの半径方向に流路を複数形成し、この流路の一部にあらかじめ抗体を固定しておき、その後、流路に体液を流通させることによって、抗原抗体反応により体液中の抗原を抗体に捕捉させるディスク状の液体流路装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−139500号公報
【特許文献2】特開平05−005741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の液体流路装置では、液体流路の一部を開通状態から閉止状態にすることができず、目的の成分の検出、分析に不都合が生じることがあった。
【0005】
本発明の目的は、簡便に液体流路を開通状態から閉止状態にできる液体流路装置を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体流路装置は、基板の少なくとも片面に、液体が流通する液体流路と、前記液体が溜まる1つ以上の液槽とが形成され、前記基板の前記液体流路と前記液槽とが形成された流路形成面には蓋板が積層した液体流路装置であって、
前記液体流路の一部を開通状態から閉止状態にする閉止手段を有し、
前記閉止手段は、
前記液体流路の前記一部から分岐して形成された封止材料供給槽と、
該封止材料供給槽に充填され、該封止材料供給槽に対応する部分の蓋板または該封止材料供給槽の底部を外側から押圧する操作により、前記液体流路の前記一部に押し出され、前記閉止状態とする封止材料と、
を有することを特徴とする。
本発明の液体流路装置の製造方法は、前記液体流路装置の製造方法であって、
前記基板に前記液体流路と前記液槽と前記封止材料供給槽とを形成する第1工程と、前記封止材料供給槽に前記封止材料を充填する第2工程と、前記基板の前記流路形成面に前記蓋板を積層する第3工程とを有し、
前記第1工程では、前記基板の内層を構成するシートに前記液槽の上部と前記液体流路と前記封止材料供給槽とを形成し、前記基板の中間層を構成するシートに前記液槽の下部を形成した後、前記内層を構成するシートと、前記中間層を構成するシートと、前記基板の外層を構成するシートとを順次積層することを特徴とする。
前記第2工程では、前記封止材料供給槽に前記封止材料を塗布する方法により、前記封止材料を充填することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便に液体流路を開通状態から閉止状態にできる液体流路装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の液体流路装置を示す概略平面透視図である。
【図2】図1の液体流路装置の一部を拡大した平面透視図である。
【図3】図2のI−I’線に沿う断面図である。
【図4】図1の液体流路装置において、開通手段が作動する様子を説明する図であって、(a)封止栓に荷重を加えた状態を示す断面図と、(b)荷重を取り去った状態を示す断面図である。
【図5】図2のII−II’線に沿う断面図である。
【図6】図1の液体流路装置において、閉止手段が作動する様子を説明する図であって、封止材料を押し出した状態を示す(a)断面図と、(b)平面図である。
【図7】図1の液体流路装置の製造方法を模式的に説明する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
図1は本発明の液体流路装置の一実施形態例を概略的に示す平面透視図、図2は図1の液体流路装置の一部を拡大した平面透視図、図3は図2のI−I’線に沿う断面図である。
この液体流路装置10は、平板からなる四角形の基板11の片面に、試料および試薬の少なくとも一方からなる液体が流通する溝状の液体流路12と、液体流路12の端部や途中において液体が溜まる複数(この例では9)の液槽(14a〜14i)とが形成され、基板11の液体流路12が形成された側の流路形成面12aに蓋板13が積層して構成されたものである。この液体流路装置10においては、図1中の上端部側が上方に、下端部側が下方に位置するようにこれを立てた場合には、液体流路12の上流側の端部から下流側の端部に向けて矢印F方向に試料が重力により流通し、その途中で試料に対して各種の処理や試薬との混合がなされ、各種検出、分析に供される測定液が調製される。
【0010】
すなわち、液体流路12の上流側の端部には、投入された試料が溜まる試料投入槽14aが設けられ、この試料投入槽14aの下流には、試料投入槽14aから流通してきた試料に対してろ過処理が施される図示略のフィルタが内蔵されたろ過槽14bが設けられている。
ろ過槽14bの下流には、ろ過処理された試料を一定量計量する計量槽14cが設けられている。この例の計量槽14cには、オーバーフロー流路12dとその下流に設けられた廃液槽14dとからなるオーバーフロー手段が備えられている。そのため、計量槽14cで一定量を超えた試料はオーバーフローしてオーバーフロー流路12dを流れ、廃液槽14dに流入し、その結果、計量槽14cでは、一定量の試料が計量できるようになっている。
【0011】
計量槽14cの下流には、計量槽14cで計量された試料と、あらかじめ第1試薬槽14eに所定量封入されている液体の第1試薬とが混合される第1混合槽14fが設けられ、第1混合槽14fの下流には、第1混合槽14fで調製された中間調製液と、あらかじめ第2試薬槽14gに所定量封入されている液体の第2試薬とが混合される第2混合槽14hが設けられている。
そして、第2混合槽14hの下流(液体流路12の下流側の端部)には測定槽14iが設けられ、第2混合槽14hで調製された測定液がここに貯留され、図示略の検出分析手段により、各種成分の検出や分析がなされるようになっている。
なお、各液槽には、必要に応じて、大気と連通する開閉可能な図示略の連通孔が設けられる。
【0012】
この液体流路装置10の基板11は、図3に示すように、外層11aと、その内側に積層した中間層11bと、その内側に積層した内層11cの3層から構成されている。
内層11cには、液槽(図3には試料投入槽14aとろ過槽14bのみ図示)の上部(液槽の蓋板13側の部分。)と、液体流路12とが形成されている。
中間層11bには、液槽の下部(前記上部以外であって、液槽の底部側の部分。)が形成されている。また、この中間層11bは、内層11c側の面が液体流路12の底部12bを構成している。
外層11aは、基板11の最も外側に配置され、その中間層11b側の面が液槽の底部を構成している。
【0013】
そして、この液体流路装置10は、液体流路12の一部を閉止状態から開通状態にする開通手段S1〜S7と、開通状態から閉止状態にする閉止手段T1とを有している。
この例では、開通手段S1〜S7は、試料投入槽14aとろ過槽14bとの間、ろ過槽14bと計量槽14cとの間、計量槽14cと第1混合槽14fとの間、第1混合槽14fと第2混合槽14hとの間、第1試薬槽14eと第1混合槽14fとの間、第2試薬槽14gと第2混合槽14hとの間、第2混合槽14hと測定槽14iとの間の各液体流路12にそれぞれ1ずつ設けられている。
一方、閉止手段T1は、ろ過槽14bと計量槽14cとの間の液体流路12において、開通手段S2よりも下流側に設けられている。
【0014】
開通手段S1〜S7は、図3にS1およびS2を例示して説明するように、液体流路12内に、液体流路12の一部を塞ぐように配置されて液体の流れを封止し、この部分を閉止状態とする樹脂製の封止栓15により形成されている。この封止栓15は、塑性変形が可能な樹脂からなり、封止栓15が配置されている部分の蓋板13を外側から押圧する操作により塑性変形して、液体流路12を閉止状態から開通状態にする。
具体的には、図4に開通手段S1を例に挙げて示すように、開通手段S1を構成する封止栓15を蓋板13の外側から矢印Aで示すように押圧して荷重を加えた場合、図4(a)に示すように蓋板13が撓み、蓋板13に接している封止栓15が押し潰されて扁平に塑性変形する。そして、その後に荷重を取り去ると、図4(b)に示すように、蓋板13はその復元力により元の状態に復元するが、封止栓15は扁平に変形したままで復元しない。その結果、封止栓15と蓋板13との間が新たに離間し、ここを液体が流通できるようになる。
このように開通手段S1〜S7においては、封止栓15を蓋板13の外側から押圧して荷重を加えた後、この荷重を取り去る押圧操作によって、元々は密着していた封止栓15と蓋板13との間が離間し、その結果、この部分の液体流路12が閉止状態から開通状態となる。
【0015】
一方、この液体流路装置10の閉止手段T1は、図5にも示すように、液体流路12から分岐して基板11に形成された封止材料供給槽16と、この封止材料供給槽16に充填されたペースト状の封止材料17とを有して構成されている。
封止材料17は、図6(a)の断面図および(b)の平面図に示すように、封止材料供給槽16に対応する部分の蓋板13を外側から押圧する操作により、この例では封止材料供給槽16と液体流路12とを繋ぐ供給路18を経て、液体流路12に押し出され、その部分を開通状態から閉止状態にする。
具体的には、封止材料供給槽16に対応する部分の蓋板13を矢印Bで示すように外側から押圧して荷重を加えると、蓋板13が撓む。その結果、矢印Cで示すように、封止材料供給槽16に充填されている封止材料17が供給路18を経て液体流路12に押し出される。その結果、押し出された封止材料17により、液体流路12は閉塞され、液体はこの部分を流通できなくなる。
なお、この例では、封止材料供給槽16と液体流路12とは供給路18を介して連通しているが、供給路18が形成されず、直に封止材料供給槽16と液体流路12とが連通している形態でもよい。
【0016】
このような液体流路装置10を用いて、測定液を調製する具体的な方法としては、まず、この液体流路装置10を試料投入槽14a側が上方に、測定槽14i側が下方に位置するように立てて、液体が重力によって上流側から下流側に流れやすい状態とする。
ついで、試料をシリンジなどにサンプリングし、このシリンジの針を試料投入槽14aに対応する部分の蓋板13に突き刺して、試料投入槽14aに試料を注入する。その後、試料投入槽14aとろ過槽14bとの間に設けられた開通手段S1、すなわち封止栓15を蓋板13の外側から押圧して塑性変形させ、この部分の液体流路12を開通状態とし、試料を重力によりろ過槽14bまで導入する。
この際、押圧する操作は、作業者が指で押す手動により行ってもよいし、押圧位置がXY座標としてあらかじめプログラムされている押圧装置などを使用して、所定の位置を押すようにしてもよい。
【0017】
ついで、ろ過槽14bでろ過処理がなされた後、ろ過槽14bと計量槽14cとの間に設けられた開通手段S2の封止栓15についても同様に塑性変形させ、この部分の液体流路12を開通状態とし、試料を重力により計量槽14cに導入する。
ついで、計量槽14cにおいて、導入された液体がオーバーフローし始めたことを確認後、ろ過槽14bと計量槽14cとの間に設けられた閉止手段T1を作動させて、この部分の液体流路12を閉止状態とする。具体的には、封止材料供給槽16に対応する部分の蓋板13を矢印Bで示すように押圧して荷重を加え、封止材料供給槽16に充填されている封止材料17を液体流路12まで押し出し、この部分の液体流路12を閉塞する。
このようにして、計量槽14cに上流側からの液体がさらに流入するのを停止させてから、計量槽14cの下流に設けられた開通手段S3を作動させて、計量槽14cで計量された試料を第1混合槽14fに導入する。
【0018】
こうして計量後の試料を第1混合槽14fに導入する一方で、第1試薬槽14eと第1混合槽14fとの間の開通手段S4についても、封止栓を同様に塑性変形させて第1試薬を第1混合槽14fに導入し、試料と第1試薬とを第1混合槽14fにおいて混合し、中間調製液を調製する。
ついで、第1混合槽14fと第2混合槽14hとの間の開通手段S5についても、封止栓を同様に塑性変形させて第1混合槽14fで調製された中間調製液を第2混合槽14hに導入する。その一方で、第2試薬槽14gと第2混合槽14hとの間の開通手段S6についても、封止栓を同様に塑性変形させて第2試薬を第2混合槽14hに導入する。そして、中間調製液と第2試薬とを第2混合槽14hにおいて混合し、測定液を調製する。
ついで、第2混合槽14hと測定槽14iとの間の開通手段S7についても、封止栓を同様に塑性変形させて、第2混合槽14hで調製された測定液を測定槽14iに導入する。
そして、測定槽14iに測定液を導入した後、この液体流路装置10ごと検出分析手段に供し、目的成分の検出や測定を行う。
なお、このようにして測定液を調製する過程においては、各液槽に設けられている図示略の連通孔を必要に応じて適宜開閉することにより、液体を流れ易くしたり、流量の正確性を向上させたりする等、液体の流通を制御してもよい。
【0019】
このような液体流路装置10によれば、液体流路12を閉止状態から開通状態にする開通手段S1〜S7と、開通状態から閉止状態にする閉止手段T1とを有するため、液体流路12中の液体の流れを制御でき、その結果、精度の高い検出や分析を短時間で行うことができる。
例えば、この例では、計量槽14cの上流には閉止手段T1が設けられ、下流には開通手段S3が設けられている。そのため、計量槽14cで試料を短時間で正確に計量して、第1混合槽14fに導入することができる。ここで仮に、計量槽14cの下流に開通手段S3が設けられておらず、この部分の液体流路12が常に開通した状態であると、計量中であっても計量槽14cから試料が連続的に流出してしまい、試料を一定量溜めることができず、計量自体が不可能となる。また、計量槽14cの上流に閉止手段T1が設けられていない場合には、ろ過槽14bを経た試料の全量が計量槽14cに完全に流入し終わってから、計量槽14cと第1混合槽14fの間の開通手段S3を作動させて、計量された試料を第1混合槽14fに導入する必要がある。この場合、試料が特に血液などの粘性を有した液体であると、ろ過槽14bを経た試料の全量が完全に計量槽14cに流入し終わるまでに時間を要し、短時間での計量が困難となる。その点、この例のように、計量槽14cの上流側に閉止手段T1が設けられていると、ろ過槽14bを経た試料の全量が計量槽14cに完全に流入し終わらなくても、計量槽14cにおいて試料がオーバーフローし始めた時点で閉止手段T1を作動させて、計量槽14cへの試料のさらなる流入を停止することができ、短時間での正確な計量が可能となる。
【0020】
また、この例では、第1混合槽14fと第2混合槽14hとの間に開通手段S5が設けられ、第2混合槽14hと測定槽14iとの間に開通手段S7が設けられている。そのため、第1混合槽14fおよび第2混合槽14hにおいて、目的の混合や反応が十分に進行してから、これら開通手段S5、S7を開通させ、中間調製液や測定液をそれぞれ第2混合槽14hや測定槽14iに導入することができる。よって、混合や反応が不十分なことに起因する検出や分析の精度低下を防止することができる。
【0021】
さらに、この例では、第1試薬槽14eと第1混合槽14fとの間、第2試薬槽14gと第2混合槽14hとの間にも開通手段S4、S6が設けられているため、所望の時点でこれらを開通させて、あらかじめ第1試薬槽14eおよび第2試薬槽14gにそれぞれ封入されている第1試薬および第2試薬を第1混合槽14fや第2混合槽14hに流入させることができる。仮に開通手段S4、S6が設けられていない場合には、液体流路装置10の保管時などに、第1試薬および第2試薬が下流側に流れ始めてしまうおそれがある。
【0022】
また、この例の液体流路装置10の開通手段S1〜S7および閉止手段T1は、シンプルな構成であり、低コストで形成できる。そのため、この液体流路装置10は使い捨てタイプとすることができる。また、開通および閉止の操作も簡便な押圧操作のみで、操作性にも優れる。
【0023】
このような液体流路装置10は、基板11に、液体流路12と液槽と封止材料供給槽16と供給路18とを形成する第1工程と、形成された封止材料供給槽16に封止材料を充填する第2工程と、基板11において液体流路12などが形成された側の流路形成面12aに蓋板13を積層する第3工程とを備えた方法により製造できる。
【0024】
以下、液体流路装置10の製造工程を模式的に示す図7をさらに参照して、液体流路装置10の製造工程について説明する。
第1工程では、まず、基板11の内層11cを構成するシート11c’の巻回物(ロール)20と、中間層11bを構成するシート11b’の巻回物21と、外層11aを構成するシート11a’の巻回物22とを用意する。
ついで、内層11cを構成するシート11c’の巻回物20から、シート11c’を連続的に供給して、打抜機23aにより、液体流路12に対応する箇所を線状に打ち抜くとともに、計量槽14cなどの各液槽の上部に相当する部分を孔状に打ち抜く。また、この液体流路装置10は、液体流路12の一部から分岐して形成された供給路18と封止材料供給槽16とを備えているため、このシート11c’において、供給路18と封止材料供給槽16に対応する箇所も、これらに対応する形状に打ち抜く。
一方、中間層11bを構成するシート11b’の巻回物21から、シート11b’を連続的に供給して、打抜機23bにより、計量槽14cなどの各液槽の下部に対応する箇所を孔状に打ち抜く。
【0025】
ついで、外層11aを構成するシート11a’ の巻回物22からシート11a’を連続的に供給する。そして、各シート11a’、11b’、11c’を順次積層することにより、基板11を製造する。
ここで各シート11a’、11b’、11c’は、図示略の接着剤供給装置から供給される接着剤により、接着されることが好ましいが、各シート11a’、11b’、11c’の材質によっては、熱融着などにより貼り合わされてもよい。さらに、あらかじめ粘着剤や接着剤が塗布されたシートなどを用いてもよい。
【0026】
このように第1工程として、各巻回物20、21、22から各シート11a’、11b’、11c’を供給し、シート11b’、11c’についてはそれぞれ所定の形状に打ち抜き、その後、これら各シート11a’、11b’、11c’を順次積層し、接着する工程を採用すると、液体流路12および液槽などが形成された多数の基板11を連続的に生産することができる。このような方法は、一枚の平板からなる各基板に対して液槽や液体流路を例えばフォトリソグラフィ、切削加工などで形成する方法、液槽や液体流路の形成された基板を射出成形などで成形する方法などにくらべて、製造コストが低く、簡便で、大量生産も可能となり、工業的に好適である。
なお、シート11b’、11c’を所定の形状に打ち抜き、液体流路12、液槽などを形成する方法は低コストで生産性にも優れるが、それ以外の方法(レーザ加工、ナイフなどを用いた切り抜き加工、熱加工など。)で、シート11b’、11c’を所定の形状に開口させて、液体流路12、液槽などを形成してもよい。
【0027】
また、この例では、液体流路装置10の基板11として、外層11a、中間層11b、内層11cの3層から構成されたものを示しているが、外層11aと内層11cとの2層から構成されるものであってもよい。その場合には、内層11cをなすシート11c’に、液体流路12、液槽、供給路18、封止材料供給槽16を形成する。この場合、形成される液体流路12と液槽の深さは同じとなる。
また、この例では、封止材料供給槽16は内層11cをなすシート11c’に形成されているが、封止材料供給槽の上部を内層11cをなすシート11c’に形成し、下部を中間層11bをなすシート11b’に形成して、封止材料供給槽を液槽と同じ深さになるように形成してもよい。
【0028】
基板11の外層11a、中間層11b、内層11cを構成する各シート11a’、11b’、11c’の材質としては、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、PEN樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、繊維強化プラスチックなどの樹脂が挙げられる。これらのなかでも、透明であって、液体流路12を流通する液体の様子を目視することができる点では、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、PEN樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
なお、本実施形態例では、基板11として樹脂の巻回物を使用し、その際の液体流路装置10の好適な製造方法について説明しているため、シート材料としては、このように樹脂を例示している。しかしながら、製造方法には特に制限はなく、例えば、液体流路装置を安定に支持することが要求される場合などには、基板にガラスなどの樹脂以外の透明材料を使用し、これに切削加工などの方法を適用して液体流路、液槽などを形成することも可能である。
【0029】
各シート11a’、11b’、11c’の厚さは、適宜設定することができるが、図示例の液体流路装置10の場合、内層11cをなすシート11c’の厚さは、形成される液体流路12の深さに相当し、内層11cをなすシート11c’と中間層11bをなすシート11b’の厚さの和は液槽の総深さに相当する。また、この例の場合には、内層11cをなすシート11c’の厚さは、形成される封止材料供給槽16および供給路18の深さにも相当する。
よって、液槽や液体流路12などに求められる深さを考慮して、これらシート11b’およびシート11c’の厚みを決定する。
具体的には、シート11b’の厚さは25〜500μmが好ましく、シート11c’の厚さは、10〜300μmが好ましい。
また、シート11a’の厚さは、この例の場合(蓋板13が押圧される例の場合)、50μm以上が好ましく、より好ましくは100〜1000μmとすると、液体流路装置10の支持層として十分に作用する。
液体流路12の幅、各液槽および封止材料供給槽16の容積、形状などには特に制限はなく、適宜設定できる。例えば、液体流路12の幅としては、好ましくは25〜2000μm、より好ましくは500〜2000μm、液槽の容積としては、好ましくは50〜50000μl、より好ましくは100〜1000μlである。
ただし、廃液槽14dなどについては、特に好適な容積があるわけではなく、各液槽の機能に応じて自由に設計できる。
【0030】
ついで、第2工程において、第1工程で基板11に形成された液体流路12の一部、すなわち各開通手段S1〜S7を設ける各位置に、封止栓15を形成するとともに、第1工程で基板11に形成された封止材料供給槽16に、封止材料17を充填する。
封止栓15の形成は、連続的に供給される基板11の液体流路12における所定位置に、封止栓15を形成するための封止栓形成材料を印刷機、ディスペンサ、コータ(ロールコータ、ナイフコータなど)などの塗布装置24aで塗布する方法により行う。
【0031】
封止栓形成材料としては、液体流路12を流通する液体と相互作用がなく、閉止状態では確実に液体を閉止し、押圧により塑性変形するものであれば制限はないが、樹脂成分と、可塑成分と、フィラーと、溶剤とを含有する樹脂組成物を使用する。そして、塗布装置24aとしてディスペンサを使用する場合には、樹脂組成物の粘度は30〜500dPa・sが好ましく、スクリーン印刷機などを使用する場合には、樹脂組成物の粘度は50〜500dPa・sが好ましい。
樹脂成分としては、封止能力およびその安定性、不溶出性、塗布性(印刷性、ディスペンス性など。)などの点から、好ましくはガラス転移温度が−10℃以下で、質量平均分子量が30万以下の樹脂が好適に使用される。樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩素系樹脂、アクリル系樹脂、フタル酸などのエステル系樹脂、などが挙げられ、1種以上の樹脂を使用できる。
可塑成分としては、ガラス転移温度が30℃以下の可塑剤が好適に使用される。可塑剤の種類としては、例えば、ハードレジン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの低融点を持つ熱可塑性樹脂、などが挙げられ、1種以上の可塑剤を使用できる。
【0032】
フィラーは、封止栓形成材料の粘度、封止栓形成性を調整するために配合されるものであって、例えば、沈降性硫酸バリウム、タルク、針状酸化ケイ素、中空ビーズなどが挙げられ、1種以上を使用できる。
これらのうち特に中空ビーズ(ガラス製、樹脂製など。)が配合された樹脂組成物から形成された封止栓は、押圧された場合に塑性変形するだけでなく、中空ビーズが割れて破壊されることにより、その分だけ嵩が減る。そのため、このように中空ビーズを含有する封止栓によれば、押圧されて押し潰された際に、より扁平に塑性変形し、開通状態において、液体がより流れやすい状態にすることができる。
溶剤は、封止栓形成材料の粘度を調整するために配合されるものであって、適当な有機溶媒が使用される。なお、封止栓形成材料が、溶剤を含まなくても印刷などでの塗布が可能なものであれば、溶剤を含まなくてもよく、できれば溶剤を含まないものが好ましい。
【0033】
このように封止栓形成材料を印刷法、ディスペンサ法、コータ法などで塗布する方法によれば、連続的に効率よく封止栓15を所定の位置に形成できる。
【0034】
また、この第2工程では、閉止手段T1を構成する封止材料供給槽16に、ペースト状の封止材料17を塗布装置24bにより充填する。この際にも、封止材料17を上述の印刷法、ディスペンス法、コータ法などにより塗布する方法によれば、連続的に効率よく封止材料17を所定の位置に充填できる。
ペースト状の封止材料17としては、液体流路12を流通する液体と相互作用がなく、押し出されて液体流路12を閉塞できるものであればよいが、例えば、樹脂成分と、可塑成分と、フィラーとを含有し、例えばその粘度が30〜500dPa・sである樹脂組成物が好適に使用される。また、最終的には、その伸び率が500%以上となる樹脂組成物が好ましい。
樹脂成分としては、塗布性(印刷性、ディスペンス性など。)、流動性、封止能力およびその安定性などの点から、好ましくはガラス転移温度が−40℃以下で、質量平均分子量が5万以下の樹脂が好適に使用される。樹脂の種類としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩素系樹脂、アクリル系樹脂、フタル酸などのエステル系樹脂、などが挙げられ、1種以上の樹脂を使用できる。
可塑成分としては、ガラス転移温度が30℃以下の可塑剤が好適に使用される。可塑剤の種類としては、例えば、ハードレジン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの低融点を持つ熱可塑性樹脂、などが挙げられ、1種以上の可塑剤を使用できる。
フィラーは、封止材料17の粘度を調整するとともに、封止材料17が液体流路12に押し出された際に、液体流路12を閉塞しやすい形状にするために配合されるものであって、繊維片、体質顔料、チキソトロピック性付与剤などが使用でき、例えば、アエロジル(商品名、日本アエロジル社製)などのフュームドシリカ、沈降性硫酸バリウム、タルクが好適に使用される。
【0035】
このようにして、封止栓形成材料と封止材料17とをそれぞれ所定の位置に塗布した後、封止栓形成材料および封止材料17の組成などによって、必要に応じて、これらを加熱乾燥する工程、硬化する工程などの図示略の各工程を行う。
【0036】
その後、第3工程において、基板11の流路形成面12aに蓋板13を構成するシート13’を積層し、接着する。この場合、蓋板13を構成するシート13’をその巻回物25から連続的に供給することが好ましい。また、ここで基板11と、シート13’とは、図示略の接着剤供給装置から供給される接着剤により、接着されることが好ましいが、これらの材質によっては、熱融着などにより貼り合わされてもよい。これにより、複数の液体流路装置10が連続的に連なった連続体を製造することができる。
【0037】
こうして製造された液体流路装置10の連続体は、図7に示すように巻き取られて、巻回物26の状態とされてもよいし、折り畳まれた状態にされてもよい。また、1枚ずつ切り離された枚葉タイプとされてもよい。巻回物26の状態、折り畳まれた状態とされる場合には、各液体流路装置10間にミシン目、凹条などのラインを形成する工程を行ってもよい。これにより、各液体流路装置10間で屈曲されやすくなり、液体流路装置10の連続体を折り畳みやすくすることができる。また、枚葉タイプに切り離しやすくすることもできる。
【0038】
なお、蓋板13は、図4の矢印Aで示すように押圧され荷重が加えられた場合には撓み、その後に荷重が取り去られた場合には、その復元力により元の状態に復元するものである。そのようなものであれば、蓋板13の材質、厚さには特に制限はなく、材質としては、例えば、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、PEN樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、繊維強化プラスチックなどの樹脂が挙げられる。これらのなかでも、透明であって、液体流路12を流通する液体の様子を目視することができる点では、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、PEN樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。厚さとしては、30〜500μm程度であれば、蓋板13に適した可撓性と復元力とを有するため好ましい。
【0039】
また、第3工程において、蓋板13を基板11の流路形成面12aに積層、接着する前には、蓋板13において封止栓15と接する部分13aに、シリコーン成分などを含有する離型剤を塗布するなどして、あらかじめ剥離処理を施しておくことが好ましい。このように剥離処理を施しておくと、矢印Aで示す荷重を取り去った際(図4(b))に、蓋板13と封止栓15とを速やかに離間させることができ、容易に開通状態にすることができる。一方、封止栓15と接する部分の液体流路12の底部12bには、接着剤を塗布するなどして、あらかじめ接着処理をしておくことが好ましい。このようにしておくと、この部分には封止栓15が確実に接着するため、上述の剥離処理と相まってより円滑に、図4(b)で示すように封止栓15を蓋板13の側から離間させることができる。
【0040】
なお、以上の説明では、図4に示すように、開通手段S1〜S7を構成する封止栓15として、蓋板13の外側から押圧する操作により塑性変形して、液体流路12を開通状態にするものについて例示した。しかしながら、封止栓15が配置されている部分の液体流路12の底部12bを外側から押圧する操作により、塑性変形する形態としてもよい。その場合には、基板11を構成する外層11aと中間層11bは、押圧され荷重が加えられた場合には撓み、その後に荷重が取り去られた場合には、その復元力により元の状態に復元するように構成されることが必要である。この場合(底部12bを押圧する例の場合)、シート11a’の厚さを好ましくは10〜300μm、より好ましくは15〜200μmとすることが好適である。
また、その場合には、蓋板13において封止栓15と接する部分13aに接着処理をし、液体流路12の底部12bにおいて封止栓15と接する部分に剥離処理をしておくことが好ましい。
同様に、以上の説明では、図6に示すように、封止材料供給槽16に対応する部分の蓋板13を外側から押圧する操作により封止材料17が押し出されて、液体流路12を閉塞する形態について例示した。しかしながら、封止材料供給槽16の底部16aを外側から押圧する操作により、封止材料17が押し出される形態としてもよい。その場合にも、基板11を構成する外層11aと中間層11bは、押圧され荷重が加えられた場合には撓むように構成されることが必要である。
【0041】
また、例示した液体流路装置10では、基板11の片面のみに液体流路12が形成されているが、基板11の両面に液体流路12が形成されてもよい。
また、各液槽に設けられる、開閉可能な連通孔の形態には制限はなく、蓋板13に形成された連通孔に、嵌め込み式のキャップを抜き差しすることで、連通孔を開通、閉止できる形態などでもよい。また、液体流路12に設けられる開通手段S1〜S7および閉止手段T1と同様の構成の開通手段と閉止手段とを連通孔に設けてもよい。
また、各液槽には、必要に応じて、送液手段を設けてもよい。送液手段の具体的な形態としては、その液槽に対応する部分の蓋板13またはその液槽の底部を外側から押圧する操作により、その液槽の内容積が小さくなり、その液槽内の液体が吐出されて、下流側に送液されるような形態が挙げられる。このような送液手段を設けた液槽には、液体の上流側への逆流を防止する堰板などの逆流防止手段を設けることが好適である。
【0042】
以上の例においては、液体を流通させるために、重力の作用を利用した形態について示したが、遠心力の作用を利用してもよい。例えば、この液体流路装置10を試料投入槽14a側が回転中心側に位置し、測定槽14i側が回転の外周側に位置するように遠心装置にセットして液体流路装置10を回転させ、液体流路12の上流側から下流側に遠心力が働き、その結果、液体が流れるようにしてもよい。
また、このように液体流路装置10を回転させ、遠心力を利用して液体を流通させる際には、開通手段S1〜S7や閉止手段T1を作動させるための各押圧操作には、圧接ディスクを用いることもできる。圧接ディスクは、液体流路装置10の蓋板13の表面を回転中心側から回転の外周側に向かって、回転の半径方向に移動しながら、所定位置を押圧するものである。
【0043】
また、重力や遠心力を利用して液体を移動させる以外に、液体流路12、液槽の一部、またはこれらの両方を加熱して液体流路12や液槽内の空気を膨張させたり、液体流路12の一部に酸素吸収剤(酸化しやすい鉄粉など)を封入しておき、液体流路12内の酸素を吸収することで液体流路12内を減圧にしたりして、液体を移動させ、流通させる方法などを併用してもよい。
【0044】
また、以上の説明では、試料投入槽14aに試料を注入する方法として、シリンジの針を蓋板13に突き刺す方法を例示しているが、例えば、あらかじめ蓋板13に試料注入孔を形成しておき、そこから試料を注入してもよい。その場合、試料注入孔には保護テープを被せておき、シリンジを保護テープに突き刺すことで注入してもよいし、保護テープを剥がして試料注入孔にシリンジを挿入して注入してもよい。
【0045】
液体流路装置10を流通させる試料および試薬としては、特に制限はなく、医療分野、環境分野などで従来より採用されている試料と試薬とを適宜組み合わせて使用することができる。
例えば、医療分野においては、試料として、血液(全血)、血漿、血清、バフィーコート、尿、糞便、唾液、喀痰などの生体由来のもの、ウィルス、細菌、カビ、酵母、動植物の細胞などが挙げられる。また、これらから単離したDNAまたはRNAを用いてもよいし、これらに対して何らかの前処理、希釈などが施されたものを試料としてもよい。
なお、先に例示した液体流路装置10は、試料投入槽14aの下流に、試料投入槽14aから流通してきた試料に対してろ過処理を施すためのろ過槽14bを備えている。よって、このような液体流路装置10を用いると、例えば、血液から血球をろ過処理で取り除く場合など、従来はあらかじめ別のろ過装置でろ過処理を行う必要があった試料を予めろ過処理することなく、そのまま液体流路装置10の試料投入槽14aに供することができる。
【0046】
試薬としては、特に制限はなく、目的成分に応じて適宜選択できるが、試料中に存在する抗原を抗原抗体反応を利用して捕捉、分析する場合には、抗原に対する抗体を含有する試薬が好ましい。
なお、以上の例では、第1試薬槽14eや第2試薬槽14gに、例えば抗体が含まれる試薬をあらかじめ封入しておき、これらの試薬と、例えば抗原が含まれる試料とを第1混合槽14fや第2混合槽14hで混合することにより、抗原が抗体に捕捉される形態を例示した。しかしながら、抗原を抗体に捕捉させる形態はこのような形態に限定されず、例えば、抗体あるいは抗体を担持させた磁性ビーズを液体流路装置10の液槽または液体流路の途中などに固定しておき、そこを試料が流通することにより、試料中の抗原が抗体に捕捉されるようにしてもよい。ついで、適当な試薬を試料投入槽14aなどからシリンジなどで投入するとともに、必要に応じて上述した送液手段も適宜利用するなどして、このように捕捉された抗原を洗浄したり、変性させたり、増殖(濃度上昇)させたり、分離したりして、分析精度を高めることもできる。
【0047】
また、液体流路装置10で行う反応としては、抗原抗体反応に限らず、各種化学反応、DNAを増幅させるPCR(polymerase chain reaction)、DNAなどのタンパクを捕捉する反応なども実施できる。複数の反応を組み合わせることもできるし、液体流路装置10内では混合処理のみを行うなど、必ずしも何らかの反応を行わなくてもよい。このように液体流路装置10の使用方法には何ら限定はない。
【0048】
また、このような各種反応を促進したり、液体の流れを促進したりするために、液体流路12や液槽に対して、各種の処理を行うことができる。例えば、酸、アルカリなどを用いた化学的処理、ラテックス、蛍光物質などを用いた物理的処理、抗原、抗体、DNAなどを用いた生化学的処理を種々施して、例えば、親水処理、親油処理、撥水処理などの表面処理効果を得ることができる。その他にも、塗料の塗布処理、プラズマ処理、フレーム処置などを実施してもよい。さらに、液体流路12には、必要に応じて、邪魔板、攪拌板、突起を設けたり、分水形状を形成したりして、流通する液体が均一な混合状態となるようにしてもよい。また、液体流路12や液槽内を必要に応じて加圧しておいたり(加圧処理)、減圧しておいたり(真空処理)してもよい。
【0049】
さらに、着色剤、色素、蛍光剤などを適当な液槽内に投入しておき、そこに到達した試料を着色したり、試料に蛍光を付与したりすることも可能である。
また、液体流路装置10の蓋板13、液体流路12、液槽、基板11などの任意の箇所に、必要に応じて、この液体流路装置10を用いて行う操作の内容や手順、液槽の名称(例えば「計量槽」など。)などを直接印刷しておいてもよい。または、操作の内容や手順、液槽の名称などが印刷された表示シールなどを貼着したり、何らかの目印となるマーキングを設けたりしておいてもよい。さらに、例えば蓋板13の一部のみを透明化するなどして、その箇所が目立つようにしてもよい。
【0050】
液体流路装置10で調製された測定液の検出分析手段としては、従来公知の光学的手段、電気的手段などを適宜採用することができる。また、その際に、液体流路装置10を必要に応じて加熱したり冷却したりしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 液体流路装置
11 基板
11a 外層
11b 中間層
11c 内層
12 液体流路
12a 流路形成面
13 蓋板
S1〜S7 開通手段
T1 閉止手段
16 封止材料供給槽
17 封止材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも片面に、液体が流通する液体流路と、前記液体が溜まる1つ以上の液槽とが形成され、前記基板の前記液体流路と前記液槽とが形成された流路形成面には蓋板が積層した液体流路装置であって、
前記液体流路の一部を開通状態から閉止状態にする閉止手段を有し、
前記閉止手段は、
前記液体流路の前記一部から分岐して形成された封止材料供給槽と、
該封止材料供給槽に充填され、該封止材料供給槽に対応する部分の蓋板または該封止材料供給槽の底部を外側から押圧する操作により、前記液体流路の前記一部に押し出され、前記閉止状態とする封止材料と、
を有することを特徴とする液体流路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体流路装置の製造方法であって、
前記基板に前記液体流路と前記液槽と前記封止材料供給槽とを形成する第1工程と、前記封止材料供給槽に前記封止材料を充填する第2工程と、前記基板の前記流路形成面に前記蓋板を積層する第3工程とを有し、
前記第1工程では、前記基板の内層を構成するシートに前記液槽の上部と前記液体流路と前記封止材料供給槽とを形成し、前記基板の中間層を構成するシートに前記液槽の下部を形成した後、前記内層を構成するシートと、前記中間層を構成するシートと、前記基板の外層を構成するシートとを順次積層することを特徴とする液体流路装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記封止材料供給槽に前記封止材料を塗布する方法により、前記封止材料を充填することを特徴とする請求項2に記載の液体流路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−47709(P2011−47709A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194592(P2009−194592)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】