説明

液体浄化器用糸条および液体浄化器

【課題】優れた液体浄化機能を有し、かつ高寿命な液体浄化器を得ることが可能な液体浄化器用糸条、および該糸条を用いてなる液体浄化器を提供する。
【解決手段】単繊維径(D)が50〜1000nmの極細繊維を用い、好ましくは該極細繊維の重量比率が糸条重量対比30〜70重量%となるよう用いて液体浄化器用糸条を構成し、必要に応じて該糸条を用いて液体浄化器を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた液体浄化機能を有し、かつ高寿命な液体浄化器を得ることが可能な液体浄化器用糸条、および該糸条を用いてなる液体浄化器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸条を用いてなる液体浄化器としては種々のものが提案されている。例えば、特許文献1では、支持部材に糸条を巻きつけた円筒状の液体浄化器が提案されている。また、特許文献2では、多数の糸条を密に並列させた平面状の液体浄化器が提案されている。
しかしながら、これらの液体浄化器では、液体浄化機能の点でまだ満足とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−25010号公報
【特許文献2】特開平10−15319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた液体浄化機能を有し、かつ高寿命な液体浄化器を得ることが可能な液体浄化器用糸条、および該糸条を用いてなる液体浄化器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、極めて単繊維径が小さい極細繊維を含み、かつ特定の総繊度を有する糸条を用いて液体浄化器を構成すると、優れた液体浄化機能を有し、かつ高寿命な液体浄化器が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0006】
かくして、本発明によれば「液体浄化器用糸条であって、単繊維径(D)が50〜1000nmの極細繊維を含み、かつ糸条の総繊度が500〜2000dtexであることを特徴とする液体浄化器用糸条。」が提供される。
その際、前記極細繊維がポリエステル成分を含むことが好ましい。また、前記極細繊維が、ポリエステルからなりかつ島径(D)が50〜1000nmである島成分と前記のポリエステルよりもアルカリ水溶液易溶解性ポリマーからなる海成分とを有する複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。また、液体浄化器用糸条に、前記極細繊維が糸条重量に対して30〜70重量%含まれることが好ましい。
【0007】
本発明の液体浄化器用糸条において、空隙率が30〜80%の範囲内であることが好ましい。また、糸条が撚糸糸条であることが好ましい。
また、本発明によれば、前記の液体浄化器用糸条を用いてなる液体浄化器が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた液体浄化機能を有し、かつ高寿命な液体浄化器を得ることが可能な液体浄化器用糸条、および該糸条を用いてなる液体浄化器が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の液体浄化器用糸条に含まれる極細繊維において、単繊維径(D)が50〜1000nm(より好ましくは500〜1000nm、さらに好ましくは550〜800nm)の範囲内であることが肝要である。該単繊維径が50nm未満の場合、極細繊維同士が擬似膠着しやいため、優れた液体浄化機能が得られないおそれがある。逆に、該単繊維径が1000nmより大きい場合も、極細繊維としての効果が低くなり、優れた液体浄化機能が得られないおそれがある。なお、極細繊維の単繊維断面形状が丸断面以外の異型断面である場合には外接円の直径を単繊維径とする。また、単繊維径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。
前記極細繊維において、繊維形状としては、短繊維でもよいが、優れた液体浄化機能を得る上で長繊維であることが好ましい。
【0010】
前記極細繊維を形成する繊維の種類としては、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステルなどのポリエステル成分を含むポリエステル繊維や、ナイロン繊維、アクリル繊維、アラミド繊維などが例示されるが、耐薬品性や製造工程性の点でポリエステル繊維が好ましい。なお、かかるポリエステル繊維に含まれるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルや、特開2009−091694号公報に記載された、バイオマスすなわち生物由来の物質を原材料として得られたモノマー成分を使用してなるポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。
【0011】
本発明の液体浄化器用糸条において、前記極細繊維の含有量としては30〜70重量%の範囲内であることが好ましい。極細繊維の含有量が30重量%よりも小さい場合は、液体浄化機能が低下するおそれがある。逆に極細繊維の含有量が70重量%よりも大きい場合は、該糸条を用いた液体浄化器の圧力損失(圧損)が大きくなり、液体浄化器の寿命が低下するおそれがある。
【0012】
その際、前記極細繊維以外の液体浄化器用糸条に含まれる繊維(以下、「他の繊維」ということもある。)としては、単繊維繊度が0.1dtex以上(より好ましくは0.1〜5dtex、さらに好ましくは0.5〜4.0dtex)の、前記のようなポリエステル成分を含むポリエステル繊維が好ましい。該単繊維繊度が0.1dtexよりも小さいと、該糸条を用いた液体浄化器の圧力損失(圧損)が大きくなり、液体浄化器の寿命が低下するおそれがある。なお、該単繊維繊度が0.1dtex以上であれば、通常、単繊維径は1000nmよりも大きくなる。
【0013】
前記のような極細繊維の製造方法としては、海成分に島成分をブレンドしたブレンド型複合繊維の海成分を溶解除去したものでもよいが、国際公開第2005/095686号パンフレットに開示された方法が、単繊維径の均一性の点で好ましい。
【0014】
すなわち、ポリエステルポリマーからなりかつその島径(D)が50〜1000nmである島成分と、前記のポリエステルポリマーよりもアルカリ水溶液易溶解性ポリマー(以下、「易溶解性ポリマー」ということもある。)からなる海成分とを有する複合繊維を、海島型複合繊維用口金を用いて紡糸、延伸した後にアルカリ減量加工を施し、前記海成分を溶解除去したものであることが好ましい。なお、前記島径は、透過型電子顕微鏡で繊維の横断面を撮影することにより測定が可能である。なお、島の形状が丸断面以外の異型断面である場合には、前記の島径(D)はその外接円の直径を用いる。
【0015】
ここで、海成分を形成するアルカリ水溶液易溶解性ポリマーの、島成分を形成するポリエステルポリマーに対する溶解速度比が200以上(好ましくは300〜3000)であると、島分離性が良好となり好ましい。溶解速度が200倍未満の場合には、繊維断面中央部の海成分を溶解する間に、分離した繊維断面表層部の島成分が溶解されてしまい、海相当分が減量されているにもかかわらず、繊維断面中央部の海成分を完全に溶解除去できず、島成分の太さ斑や島成分自体の溶剤侵食につながり、均一な繊維径を有する極細繊維を得ることができないおそれがある。
【0016】
海成分を形成する易溶解性ポリマーとしては、特に繊維形成性の良いポリエステル類、脂肪族ポリアミド類、ポリエチレンやポリスチレン等のポリオレフィン類を好ましい例としてあげることができる。さらに具体例をあげれば、アルカリ水溶液易溶解性ポリマーとして、ポリ乳酸、超高分子量ポリアルキレンオキサイド縮合系ポリマー、ポリアルキレングリコール系化合物と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合ポリエステルが最適である。ここでアルカリ水溶液とは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム水溶液などを含む。これ以外にも、ナイロン6やナイロン66等の脂肪族ポリアミドに対するギ酸、ポリスチレンに対するトリクロロエチレン等やポリエチレン(特に高圧法低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン)に対する熱トルエンやキシレン等の炭化水素系溶剤、ポリビニルアルコールやエチレン変性ビニルアルコール系ポリマーに対する熱水を例としてあげることができる。
【0017】
ポリエステル系ポリマーの中でも、5−ナトリウムスルホイソフタル酸6〜12モル%と分子量4000〜12000のポリエチレングリコールを3〜10重量%共重合させた固有粘度が0.4〜0.6のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステルが好ましい。ここで、5−ナトリウムスルホイソフタル酸は親水性と溶融粘度向上に寄与し、ポリエチレングリコール(PEG)は親水性を向上させる。また、PEGは分子量が大きいほど、その高次構造に起因すると考えられる親水性増加作用があるが、反応性が悪くなってブレンド系になるため、耐熱性や紡糸安定性の面で問題が生じる可能性がある。また、共重合量が10重量%以上になると、溶融粘度が低下するおそれがある。
【0018】
一方、島成分を形成するポリエステルポリマーとしては、前述のものが好ましい。なお、海成分を形成するポリマーおよび島成分を形成するポリマーについて、製糸性および抽出後の極細繊維の物性に影響を及ぼさない範囲で、必要に応じて、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂等の離型改良剤、等の各種添加剤を含んでいてもさしつかえない。
【0019】
前記海島型複合繊維において、溶融紡糸時における海成分の溶融粘度が島成分ポリマーの溶融粘度よりも大きいことが好ましい。かかる関係にある場合には、海成分の複合重量比率が40%未満と小さくなっても、島同士が接合しにくくなることにより海島型複合繊維が得られやすい。
【0020】
好ましい溶融粘度比(海/島)は、1.1〜2.0、特に1.3〜1.5の範囲である。この比が1.1倍未満の場合には溶融紡糸時に島成分が接合しやすくなるおそれがある。一方、2.0倍を越える場合には、粘度差が大きすぎるために紡糸調子が低下しやすくなるおそれがある。
【0021】
次に島数は、100以上(より好ましくは300〜1000)であることが好ましい。また、その海島複合重量比率(海:島)は、20:80〜80:20の範囲が好ましい。かかる範囲であれば、島間の海成分の厚みを薄くすることができ、海成分の溶解除去が容易となり、島成分の極細繊維への転換が容易になるので好ましい。ここで海成分の割合が80%を越える場合には海成分の厚みが厚くなりすぎ、一方20%未満の場合には海成分の量が少なくなりすぎて、島間に接合が発生しやすくなる。
【0022】
溶融紡糸に用いられる海島型複合繊維用口金としては、島成分を形成するための中空ピン群や微細孔群を有するものなど任意のものを用いることができる。例えば、中空ピンや微細孔より押し出された島成分とその間を埋める形で流路を設計されている海成分流とを合流し、これを圧縮することにより海島断面が形成されるといった紡糸口金でもよい。吐出された海島型複合繊維は冷却風により固化され、所定の引き取り速度に設定した回転ローラーあるいはエジェクターにより引き取られ、未延伸糸を得る。この引き取り速度は特に限定されないが、200〜5000m/分であることが望ましい。200m/分以下では生産性が悪くなるおそれがある。また、5000m/分以上では紡糸安定性が悪くなるおそれがある。
得られた未延伸糸は、延伸工程や熱処理工程を経由して、抽出工程あるいは必要に応じてカット工程に供することができる。延伸工程は紡糸と延伸を別ステップで行う別延方式でもよいし、一工程内で紡糸後直ちに延伸を行う直延方式を用いてもかまわない。
【0023】
かかるアルカリ減量加工において、繊維とアルカリ液の比率(浴比)は0.1〜5%であることが好ましく、さらには0.4〜3%であることが好ましい。0.1%未満では繊維とアルカリ液の接触は多いものの、排水等の工程性が困難となるおそれがある。一方、5%以上では繊維量が多過ぎるため、アルカリ減量加工時に繊維同士の絡み合いが発生するおそれがある。なお、浴比は下記式にて定義する。
浴比(%)=(繊維質量(gr)/アルカリ水溶液質量(gr)×100)
【0024】
また、アルカリ減量加工の処理時間は5〜60分であることが好ましく、さらには10〜30分である事が好ましい。5分未満ではアルカリ減量が不十分となるおそれがある。一方、60分以上では島成分までも減量されるおそれがある。
また、アルカリ減量加工において、アルカリ濃度は2%〜10%であることが好ましい。2%未満では、アルカリ不足となり、減量速度が極めて遅くなるおそれがある。一方、10%を越えるとアルカリ減量が進みすぎ、島部分まで減量されるおそれがある。
【0025】
かかる極細繊維だけで液体浄化器用糸条を構成してもよいが、合撚機、空気混繊機、複合仮撚機などの合糸機を用いて、複数の極細繊維糸条、または極細繊維糸条と他の繊維糸条とを用いて合糸することにより、液体浄化器用糸条を製造してもよい。なお、前記のアルカリ減量加工は合糸工程の前の工程で行ってもよいし、合糸工程の後の工程で行ってもよい。
その際、合撚機を用いて撚数50〜150T/mで合撚すると、適度な集束性が得られることにより、液体浄化機能を損なうことなく浄化器の寿命が向上し好ましい。
【0026】
かくして得られた液体浄化器用糸条において、総繊度が500〜2000dtexの範囲内であることが肝要である。該総繊度が500dtexより小さいと、液体浄化機能が低下するおそれがあり好ましくない。逆に、該総繊度が2000dtexより大きいと、該糸条を用いた液体浄化器の圧力損失(圧損)が大きくなり、液体浄化器の寿命が低下するおそれがあり好ましくない。
【0027】
また、かかる糸条において、空隙率が30〜80%の範囲内であることが好ましい。該空隙率が30%よりも小さいと、該糸条を用いた液体浄化器の圧力損失(圧損)が大きくなり、液体浄化器の寿命が低下するおそれがある。逆に、該空隙率が80%よりも大きいと、液体浄化機能が低下するおそれがある。
【0028】
ただし、該空隙率は以下の方法により測定するものとする。すなわち、糸条を長さ10cmに切り取った試料の横断面を写真機付きの光学顕微鏡200倍で撮影し、それを拡大して、見掛け断面積(断面の最外周面積)を測定する。次に試料重量を測定し、試料重量から実体積を計算する。その時、使用する比重は繊維便覧に記載のものを使用する。次いで、下記式から空隙率(%)を算出する。
空隙率(%)=((見掛け体積)−(実体積))/(見掛け体積)×100
【0029】
次に、本発明の液体浄化器は前記の糸条を用いてなる液体浄化器である。かかる液体浄化器は、前記の糸条を含んでおれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン(PP)などからなるコア材や枠体に前記の糸条を巻きつけたものや、前記の糸条を所定の長さに切断し配列させたもの、織物状にしたもの、カートリッジなどの密閉体に前記の糸条を詰め込んだものなどが例示されるが、これらに限定されないことはいうまでもない。
【0030】
かかる液体浄化器は、水道水等の上水を浄化するための浄水器に限らず、汚水、汚染水、廃水、下水などを浄化するための浄化器、各種化学物質、放射性物質、不純物などを含む液体をろ過するための浄化器を含む。
かかる液体浄化器は前記の糸条を用いているので、優れた液体浄化機能を有し、かつ圧損が小さく高寿命である。
【実施例】
【0031】
次に本発明の実施例及び比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0032】
(1)溶融粘度
乾燥処理後のポリマーを紡糸時のルーダー溶融温度に設定したオリフィスにセットして5分間溶融保持したのち、数水準の荷重をかけて押し出し、そのときのせん断速度と溶融粘度をプロットする。そのプロットをなだらかにつないで、せん断速度−溶融粘度曲線を作成し、せん断速度が1000秒−1の時の溶融粘度を見た。
【0033】
(2)溶解速度測定
海成分および島成分のポリマーを、各々、径0.3mm、長さ0.6mmのキャピラリーを24孔もつ口金から吐出し、1000〜2000m/分の紡糸速度で引き取って得た未延伸糸を残留伸度が30〜60%の範囲になるように延伸して、83dtex/24フィラメントのマルチフィラメントを作成した。これを所定の溶剤および溶解温度で浴比100として、溶解時間と溶解量から減量速度を算出した。
【0034】
(3)島径の測定
透過型電子顕微鏡TEMで、倍率30000倍で繊維断面写真を撮影し、測定した。ただし、繊維径は、繊維断面におけるその外接円の直径を用いた(n数5の平均値)。
【0035】
(4)空隙率
糸条を長さ10cmに切り取った試料の横断面を写真機付きの光学顕微鏡200倍で撮影し、それを拡大して、見掛け断面積(断面の最外周面積)を測定した。次に試料重量を測定し、試料重量から実体積を計算した。その時、使用する比重は繊維便覧に記載のものを使用した。次いで、下記式から空隙率(%)を算出した。
空隙率(%)=((見掛け体積)−(実体積))/(見掛け体積)×100
【0036】
(5)濾過効率
測定粉体としてJIS Z8901関東ローム焼成品 11種を用いた。該関東ローム焼成品を10g/L含む水を0.5kPa、流量3mL/cm/minにて浄化器に通し出口の粉体量を計測し下記式から濾過効率を算出した。
濾過効率は
濾過効率(%)=((入口粉体重量)−(出口粉体重量))/(入口粉体重量)×100
【0037】
(6)圧損
前記濾過効率の測定方法と同じ方法で、浄化器の入口側と出口側の圧力差を測定し圧損とした。
【0038】
(7)総合評価
下記により総合評価を行った。○以上を合格とする。
◎:濾過効率が優れており、圧損が極めて小さい。
○:濾過効率が優れており、圧損が小さい。
△:濾過効率がやや低いか、圧損がやや大きい。
×:濾過効率が低いか、圧損が大きい。
【0039】
[実施例1]
島成分に285℃での溶融粘度が120Pa・secのポリエチレンテレフタレート、海成分に285℃での溶融粘度が135Pa・secである平均分子量4000のポリエチレングリコールを4重量%、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を9mol%共重合した改質ポリエチレンテレフタレートを使用し、海:島=10:90の重量比率で島数400の口金を用いて紡糸し、紡糸速度1500m/minで引き取った。海成分と島成分とのアルカリ減量速度比は1000倍であった。これを3.9倍に延伸することにより、海島型複合繊維糸条を得た。
一方、単繊維繊度が2.2dtex、総繊度が352dtexのポリエチレンテレフタレート糸条を用意した。
次いで、前記海島型複合繊維糸条4本(総繊度の合計が154dtex)と総繊度が352dtexのポリエチレンテレフタレート糸条1本とを公知の合撚機を用いて合撚することにより合撚糸条(撚数100T/m)を得た。
次いで、該合撚糸条をNaOH 25g/L 55℃で80分減量することにより、単繊維径(D)が700nmの極細繊維を33.3重量%含む液体浄化器用糸条を得た。
次いで、直径27mm、長さ250mmの穴あき円筒状コア材(ポリプロピレン製)の周囲に前記液体浄化器用糸条をまき付けて液体浄化器を得た。そして、該液体浄化器の評価を行った。なお、水は、穴あき円筒状コア材の内部から外部の方向に流した。評価結果を表1に示す。
【0040】
[実施例2〜4、比較例1、2]
実施例1において、最終的に得られる液体浄化器用糸条の総繊度および極細繊維の混入比率を、表1に記載のとおり変更すること以外が実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
【0041】
[比較例3]
単繊維繊度が2.2dtex、総繊度が500dtexのポリエチレンテレフタレート糸条のみを用いて液体浄化器を得ること以外は実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
【0042】
[比較例4]
単繊維繊度が500dtexのポリエチレンテレフタレートモノフィラメントのみを用いて液体浄化器を得ること以外は実施例1と同様にした。評価結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、優れた液体浄化機能を有し、かつ高寿命な液体浄化器を得ることが可能な液体浄化器用糸条、および該糸条を用いてなる液体浄化器が提供され、その工業的価値は極めて大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体浄化器用糸条であって、単繊維径(D)が50〜1000nmの極細繊維を含み、かつ糸条の総繊度が500〜2000dtexであることを特徴とする液体浄化器用糸条。
【請求項2】
前記極細繊維がポリエステル成分を含む、請求項1に記載の液体浄化器用糸条。
【請求項3】
前記極細繊維が、ポリエステルからなりかつ島径(D)が50〜1000nmである島成分と前記のポリエステルよりもアルカリ水溶液易溶解性ポリマーからなる海成分とを有する複合繊維にアルカリ減量加工を施すことにより、前記海成分を溶解除去したものである、請求項2に記載の液体浄化器用糸条。
【請求項4】
液体浄化器用糸条に、前記極細繊維が糸条重量に対して30〜70重量%含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の液体浄化器用糸条。
【請求項5】
空隙率が30〜80%の範囲内である、請求項1〜4のいずれかに記載の液体浄化器用糸条。
【請求項6】
糸条が撚糸糸条である、請求項1〜5のいずれかに記載の液体浄化器用糸条。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の液体浄化器用糸条を用いてなる液体浄化器。

【公開番号】特開2012−236158(P2012−236158A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107285(P2011−107285)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】