説明

液体浄化装置及び濾過手段の洗浄方法

【課題】装着されている濾過手段の性能が長期間維持される液体浄化装置及び濾過手段の洗浄方法を提供する。
【解決手段】被処理液(a)を濾過手段(70)の一次側(81)に供給し多孔質膜(80)に固形成分を付着させて二次側(82)に向かって浄化液(b)を送出させる供給手段(20)と、浄化液(b)を貯留するとともに濾過手段(70)へ逆流させて付着している前記固形成分を多孔質膜(80)から脱離させる流動操作手段(30)と、多孔質膜(80)から脱離して濾過手段(70)から排出された固形成分を一次側(81)に帰還させて多孔質膜(80)に衝突させる帰還手段(60)とを、備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被処理液を濾過して浄化液にする液体浄化装置に関し、特に濾過手段の性能を維持させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場等では、凝集沈殿砂濾過法で除去できず懸濁している固形成分を除去するために、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)等の多孔質膜を用いた濾過手段による浄水が行われている。このような濾過手段においては、使用時間の経過に伴って、原水(被処理液)が供給される多孔質膜の一次側の表面に固形成分の付着層が形成されると共にこの多孔質膜の細孔が閉塞する。すると、膜圧力が上昇し、多孔質膜を透過する水量が低下することとなり濾過手段の性能が低下することになる。
このように低下した性能を回復させるために、濾過手段は、所定時間または膜圧力が所定値に達した時点で、物理的洗浄がなされることになる。そのような物理的洗浄法としては、多孔質膜の二次側に透過させた浄水を一次側に逆流させて前記した付着層を多孔質膜表面から脱離させて除去する逆流洗浄法が挙げられる。さらに、この逆流洗浄と同時に濾過手段の一次側に加圧エアを導入しエアースクラビングによって前記した付着層を効果的に脱離除去することが行われる(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2003-251157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した逆流洗浄法は、多孔質膜表面の付着層を脱離除去するのに有効である。しかし、多孔質膜の表面に形成される付着層は、膜全域に亘って均一な厚みになっておらず、一般に、濾過手段の原水入口から浄水出口に向かうに従って薄くなるように形成される。
このために、原水入口に近い多孔質膜の部分は、表面に付着層が厚く堆積して膜厚方向の通水抵抗が大きくなっている。よって、逆流洗浄を実施してもそのような肉厚の付着層を有する多孔質膜の部分は、水を充分に通過させることができないために付着層を脱離させることができない。
すると、付着層の堆積が相対的に薄い多孔質膜の部分に濾過処理の負担が集中し、当該部分への固形成分の付着・蓄積が急速に進行することとなり濾過手段の性能低下が著しくなる。
このようにして濾過手段の性能が低下すると、逆流洗浄のみで性能を回復させることは困難で、濾過手段を薬品で洗浄することが必要になるが、このような薬品洗浄をするとなると浄水装置(液体浄化装置)の運転稼働率が低下する問題が生じる。さらに、薬品使用に伴い浄水装置の運転コスト等が増加する問題が生じる。
また、このような問題以外にも、多孔質膜に付着する固形成分の付着層が局所的に偏って肉厚を成長させていくことは、短期に膜間差圧が上昇し、透過水量を減少させる等、浄水装置の円滑な運転を持続させることの障害になる問題がある。
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、多孔質膜表面の固形成分の付着層のうち局所的に厚く形成される部分を解消し、逆流洗浄による膜全域に亘る付着層の脱離を実現し、濾過手段の性能が長期間維持される液体浄化装置及び濾過手段の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため本発明は、液体浄化装置において、被処理液を濾過手段の一次側に供給し多孔質膜に固形成分を付着させて二次側に向かって浄化液を送出させる供給手段と、前記浄化液を貯留するとともに前記濾過手段へ逆流させて付着している前記固形成分を前記多孔質膜から脱離させる流動操作手段と、前記多孔質膜から脱離して前記濾過手段から排出された前記固形成分を前記一次側に帰還させて前記多孔質膜に衝突させる帰還手段とを、備えることを特徴とする。
【0005】
このように発明が構成されることにより、多孔質膜の表面に形成された固形成分の付着層は、流動操作手段の動作により逆流洗浄が開始されると、一部が脱離して濾過手段から外部に排出されることになる。この脱離した固形成分(脱離体)は、一定の大きさを有する塊状となっているために、再び一次側に帰還して多孔質膜に衝突するとその運動エネルギーにより、付着層の新たな脱離を促進する。これにより、多孔質膜の表面に形成された固形成分の付着層のうち局所的に偏って厚い部分が、選択的に除去されることになる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、多孔質膜の膜厚方向の通水抵抗を膜全域に亘って一様にし、逆流洗浄により多孔質膜の全域に亘り付着層を脱離させることが容易になり、濾過手段の性能が長期間維持される液体浄化装置及び濾過手段の洗浄方法が提供されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る浄水装置(液体浄化装置11)の基本構成を示すブロック図である。図示されるように液体浄化装置11は、原水(被処理液a)を濾過手段70に供給する供給手段20と、この濾過手段70から送出された浄化液bを操作する流動操作手段30と、この濾過手段70を逆流洗浄して排出された排出液cを処理する沈降濃縮手段40と、エア導入手段50と、帰還手段60とから構成されている。
このように構成されることにより液体浄化装置11は、原水(被処理液a)に浮遊している微細な固形成分を除去して浄水(浄化液b)を生成する。
【0008】
供給手段20は、被処理液槽21と、供給路22と、凝集剤槽23と、混合器24とから構成されている。このように構成されることにより供給手段20は、被処理液aを濾過手段70の一次側81に供給し多孔質膜80に固形成分を付着させて二次側82から浄化液bを送出し流動操作手段30に向かわせるものである。
【0009】
被処理液槽21は、河川や湖沼などから取水した被処理液a(原水)が導入される水槽である。
【0010】
供給路22は、経路に配置されているポンプP1の作用に基づいて、両端に連結している被処理液槽21から濾過手段70へ向けて被処理液aを供給する。この供給路22に設けられている開閉弁S1の設定が「開状態」であると、ポンプP1が付与する圧力により被処理液aは、濾過手段70で濾過されて浄化液bになる。この開閉弁S1の設定が「閉状態」になると、被処理液aの濾過手段70への供給は停止され、濾過手段70の洗浄(逆流洗浄)が可能になる。
【0011】
凝集剤槽23は、凝集剤を貯留する容器である。この凝集剤は、ポリ塩化アルミニウム等からなり、ポンプP2及び開閉弁S2により原水(被処理液a)に混入されることにより、原水中の濁質分及びフミン質等を凝集させてフロック化する。
【0012】
混合器24は、供給路22の中に配設されるものであって、被処理液aと供給される凝集剤とを撹拌混合することによって、濁質分等の凝集を促進させてフロック粒子を成長させ、後段の濾過手段70において捕捉されやすいようにするものである。
【0013】
流動操作手段30は、浄化液槽31と、順流路32と、逆流路33とから構成されている。このように構成されることにより流動操作手段30は、濾過手段70を通過して生成された浄化液bを貯留する。さらに流動操作手段30は、貯留されている浄化液bを濾過手段70へ逆流させて、多孔質膜80に付着している固形成分を脱離させる。
【0014】
浄化液槽31は、「濾過工程」において、濾過手段70を通過して生成された浄化液b(浄水)の一部を貯留する容器であり、この浄水は、必要な他の工程を得て最終的に一般需要者へ供給されることになる。
【0015】
順流路32は、濾過手段70の二次側82と浄化液槽31とを連結しその経路に開閉弁S3を有し、濾過手段70で生成した浄化液bを浄化液槽31に向けて流動させるものである。
この開閉弁S3の設定を「開状態」にすると、浄化液bは、濾過手段70よりも上流に位置するポンプP1の圧力により、二次側82を出発して流動し浄化液槽31に貯留されることになる。またこの開閉弁S3は、後記する濾過手段70の「洗浄工程」において「閉状態」になり、浄化液bが浄化液槽31に戻らないようにする。
【0016】
逆流路33は、浄化液槽31と濾過手段70の二次側82とを連結しその経路にポンプP3と開閉弁S4とを有し、浄化液槽31に貯留されている浄化液bを濾過手段70に向けて流動させるものである。
濾過手段70の「洗浄工程」において、この開閉弁S4の設定を「開状態」、開閉弁S3の設定を「閉状態」にし、ポンプP3を起動すると、浄化液bは、浄化液槽31を出発して濾過手段70の二次側82に供給されることになる。
【0017】
沈降濃縮手段40は、沈殿槽41と、排液路42と、排出路43と、返送路44とから構成されている。このように構成されることにより沈降濃縮手段40は、「洗浄工程」において濾過手段70から排出される固形成分を含む排出液cを重力沈降操作してこの排出液cを固形成分の濃縮成分d1と希釈成分e1とに分離させるものである。
【0018】
沈殿槽41は、濾過手段70から排出される排出液cを一時的に収容する容器であって、収容された排出液cはそのまましばらく静置させ、含まれる固形成分を重力の作用により底部に沈殿させ濃縮成分d1を形成するものである。このように固形成分が重力沈降した後、沈殿槽41の上層部には、固形成分の含有濃度の低い希釈成分e1が上澄み液として形成される。
【0019】
排液路42は、濾過手段70の一次側81と沈殿槽41とを連結しその経路に開閉弁S5を有し、濾過手段70の「洗浄工程」において排出された排出液cを沈殿槽41に向けて供給するものである。
濾過手段70の「洗浄工程」においてこの開閉弁S5は「開状態」に設定され排出液cが沈殿槽41に導かれるようになり、「濾過工程」において開閉弁S5は「閉状態」に設定され、排液路42を流動しようとする被処理液aを封止する。
【0020】
そして、「洗浄工程」において「開状態」に設定される排液路42の開閉弁S5の開度は、後記する分岐路61の開閉弁S7の開度よりも小さく設定される。これにより、多孔質膜80から脱離した固形成分の一次側81への帰還率を向上させることができ、濾過手段70の洗浄効果が向上する。
【0021】
排出路43は、その経路に開閉弁S8を有し、沈殿槽41の内部で分離され堆積した固形成分の濃縮成分d1を底部から外部に排出するものである。この開閉弁S8の設定を「閉状態」から「開状態」に切り替えると、固形成分の濃縮成分d1が排出される。この排出された固形成分の濃縮成分d1は、さらに脱水機(図示せず)にて脱水されて固形分が回収され、水分は被処理液槽21に返送される。
【0022】
返送路44は、排出液cのうち沈降濃縮手段40で沈殿した濃縮成分d1の余りの希釈成分e1を供給手段20に返送させるものである。これにより、濾過手段70の「洗浄工程」で用いた浄化液bを被処理液aとして再利用することができる。
【0023】
エア導入手段50は、コンプレッサ51と、エア導入路52とから構成されている。このように構成されることによりエア導入手段50は、濾過手段70の「洗浄工程」において、一次側81に圧縮空気を導入するものである。
【0024】
エア導入路52は、経路に開閉弁S6を有し、コンプレッサ51で発生させた圧縮エアを供給路22に導くものである。
この開閉弁S6の設定を「開状態」にすると、圧縮エアは、供給路22を介して濾過手段70の一次側81に導入され多孔質膜80を振動させて付着している固形成分の脱離を促進させる。さらにこの圧縮エアは、脱離した固形成分を含む排出液cが、帰還手段60を介して一次側81に帰還する循環流の原動力にもなる。
なお「濾過工程」において開閉弁S6は「閉状態」に設定され、濾過手段70における被処理液aの浄化を圧縮エアが妨げないようにする。
【0025】
帰還手段60は、分岐路61と、逆止弁62とから構成されている。このように構成されることにより帰還手段60は、多孔質膜80から脱離して濾過手段70から排出された固形成分を一次側81に帰還させて多孔質膜80に衝突させ、付着している固形成分の脱離をさらに促進させる。
【0026】
分岐路61は、その経路に開閉弁S7と逆止弁62とを有し、濾過手段70の一次側81から伸びる排液路42の途中から分岐して被処理液aの供給路22に接続している。そして、開閉弁S7は、「洗浄工程」において開閉弁S7と同様に「開状態」に設定され、さらにこの開閉弁S7の開度よりも大きく設定される。
また「濾過工程」において開閉弁S7は、開閉弁S5とともに「閉状態」に設定され、供給手段20から供給される被処理液aが排液路42に導かれないようになっている。
【0027】
逆止弁62は、「洗浄工程」において、分岐路61を流動する液体が、濾過手段70の一次側81を経由せず供給路22から排液路42へバイパスしようとする流れを遮断するものである。
これにより、「洗浄工程」において濾過手段70の一次側81と帰還手段60との間を排出液cが循環する循環流が形成され、高速で数多く固形成分を、多孔質膜80に衝突させ濾過手段70の洗浄効果を向上させることができる。
【0028】
次に図2を参照して濾過手段70の説明をする。
濾過手段70は、中空糸膜(多孔質膜80)の束をその両端において拘束する端板75a、75bと、この中空糸膜(多孔質膜80)の束を収納する筐体71と、この筐体71の内部と外部とを連通させる開口である導入口72,導出口73,排出口74とから構成されている。
【0029】
このように構成されることにより濾過手段70は、「濾過工程」において、供給手段20から供給される被処理液aを導入口72から取り込み、多孔質膜80にて濾過する。そして、この濾過された浄化液bは、導出口73から流動操作手段30に導かれる。
また、「洗浄工程」において、流動操作手段30から浄化液bを導出口73に導入し、導入口72から圧縮エアを供給することにより、多孔質膜80に付着した固形成分を脱離させて排出口74から排出液cとして排出する。この排出された排出液cは、沈降濃縮手段40で処理される。そして、脱離して排出口74を出た固形成分の一部は、帰還手段60を経由して、導入口72から濾過手段70の内部に戻って多孔質膜80に衝突する。
また、多孔質膜80が中空糸膜として形成されていることにより、一次側81と二次側82との界面の面積を広くとることができ、膜厚方向の通水抵抗が小さく、被処理液aに含まれる固形成分を高効率で捕集することが可能になる。
【0030】
次に図1、図2及び図3を参照して多孔質膜80(中空糸膜)の部分の作用に着目して液体浄化装置の動作説明をする。
図3は、図2の接続関係を反映させた外圧式の濾過方式を例示しており、図4は、図2の導入口72及び導出口73の接続関係を交換した内圧式の濾過方式を示したものである。以下、図3の実施例を参照して説明を行い、図4の実施例については記載を省略するが共通の説明があてはまる。
【0031】
<濾過工程>
図1に示される開閉弁S1,S2,S3を「開状態」にして、少なくとも他の開閉弁S4,S5,S6,S7を「閉状態」にしポンプP1,P2を動作させると、供給手段20から被処理液aが濾過手段70の一次側81に供給される。
すると、図3(a)に示されるように被処理液aは、多孔質膜80に固形成分を付着させ、二次側82に通過して浄化液bになる。この浄化液bは、順流路32を流動して浄化液槽31に貯留される。
そして、固形成分の付着が進行すると多孔質膜80の一次側81の表面に付着層Q1を形成する。この形成される付着層Q1は、被処理液aが導入される導入口72の近傍にて肉厚に形成される傾向がある。すると、付着層Q1が肉厚に形成されている部分の多孔質膜80は閉塞して膜厚方向の通水抵抗が大きくなり膜圧力が上昇する。
【0032】
<第1洗浄工程>
次に、図1に示される開閉弁S1,S2,S3を「閉状態」にして、他の開閉弁S4,S5,S6,S7を「開状態」にしポンプP3を動作させると、浄化液槽31に貯留された浄化液bが濾過手段70の二次側82に逆流する。さらに、エア導入手段50から供給される圧縮エアによる衝撃により、図3(b)に示されるように、多孔質膜80に付着層Q1として付着している固形成分が脱離体Q2となって脱離し始める。
【0033】
<第2洗浄工程>
前記した第1洗浄工程の状態を継続させておくと、図3(c)に示されるように、多孔質膜80から脱離した固形成分の脱離体Q2を含む排出液cは、帰還手段60を経由して一次側81に帰還する。そして、この帰還した固形成分の脱離体Q2は、多孔質膜80の付着層Q1に衝突して脱離体Q2を新たに脱離させる。
また固形成分の脱離体Q2は、一定の大きさを有する塊状となっているために、多孔質膜80に衝突するときの運動エネルギーは、付着層Q1の新たな脱離を促進させるのに充分に大きいといえる。
この付着層Q1は、前記したとおり、導入口72(図2参照)に近い程、厚く堆積しているので、脱離体Q2は、付着層Q1の局所的に偏って肉厚な部分に集中して衝突しこれを破壊することになる。すると、多孔質膜80の部分的な閉塞状態は解消されて、膜圧方向の通水抵抗が減少し、濾過性能は大きく回復することになる。
このように、第2洗浄工程の状態を継続させておくと、多孔質膜80から脱離した固形成分の脱離体Q2は、短時間で級数的に増加して濾過手段70の性能を効率よく回復させことができる。これにより、濾過手段70を取り外して薬品洗浄等をすることなく、長期間にわたって濾過性能を維持することができ、浄化液bの生産性を低下させることもない。
【0034】
<濃縮工程>
なお、排出口74(図2参照)からの排出液cを、後記する第2実施形態(の)ように遠心濃縮手段90(図5(b)参照)を用いて処理し、固形成分の脱離体Q2を濃縮させた濃縮成分d2を導入口72に帰還させる方法も取り得る。このようにすると、固形成分の付着層Q1に脱離体Q2が衝突する回数が増加し、より効率的に濾過性能を回復させることができる。
【0035】
<返送工程>
多孔質膜80を洗浄して排出口74(図2参照)から排出される排出液cは、最終的に沈降濃縮手段40において、図1に示されるように濃縮成分d1と余りの希釈成分e1とに分離され、後者の希釈成分は供給手段20に返送されて被処理液aとして再利用される。
【0036】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して本発明の第2実施形態に係る液体浄化装置の説明を行う。
なお、図5(a)に示す通り、第2実施形態に係る液体浄化装置12は、遠心濃縮手段90を具備している点において、第1実施形態と相異している。よって、液体浄化装置12の構成要素のうち既に第1実施形態で説明した部材に対応するものについては、同一の符号を付して該当する説明を援用して、記載を省略する。
【0037】
遠心濃縮手段90は、濾過手段70と沈降濃縮手段40とを接続する排液路42の途中経路に設けられ、図5(b)に示されるような液体サイクロンを採用することができる。これにより、排液路42を流動する排出液cに渦流回転を付与して遠心分離操作を実施し、含まれる固形成分の脱離体Q2の濃縮成分d2と希釈成分e2とに分離する。なおこのような遠心濃縮手段90を採用することは、脱離体Q2が細かく粉砕されることなく短時間に濃縮が達成される点において有効である。
【0038】
そして、この遠心濃縮手段90で分離されたは濃縮成分d2は、接続している帰還手段60の分岐路61に送られる。
これにより、濾過手段70の「洗浄工程」において、固形成分の付着層Q1(図3参照)にその脱離体Q2を衝突させる回数が増加させるができ、より効率的に濾過性能を回復させることができる。
さらに、遠心濃縮手段90で分離されたは希釈成分e2は、沈降濃縮手段40に送られて、前記した処理が行われる。
【0039】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して本発明の第3実施形態に係る液体浄化装置の説明を行う。
なお、第3実施形態に係る液体浄化装置13は、移送路63と、返送路64とを具備している点において、第2実施形態と相異している。
よって、液体浄化装置13の構成要素のうち既に第1,第2実施形態で説明した部材に対応するものについては、同一の符号を付して該当する説明を援用して、記載を省略する。
【0040】
移送路63は、遠心濃縮手段90が分離した濃縮成分d2を沈降濃縮手段40に移送するものである。
返送路64は、遠心濃縮手段90が分離した希釈成分e2を供給手段20に返送するものである。
【0041】
このように、液体浄化装置13が構成されることにより、濾過手段70の「洗浄工程」において、遠心濃縮手段90で排出液cから分離された希釈成分e2は、短期間で被処理液aとして再利用されることになる。
さらに遠心濃縮手段90で排出液cから分離された濃縮成分d2は、濾過手段70の洗浄に利用されるとともに、この「洗浄工程」が終了した後は、沈降濃縮手段40に速やかに移送されて濃縮成分d1と希釈成分e1とにさらに分離される。この場合、濃縮成分d2は、固形成分の濃度が極めて高い状態であるために、重力沈降による濃縮成分d1と希釈成分e1との分離が容易になる。さらに、回収した濃縮成分d1をさらに脱水処理器45で処理して固体にする場合の負担が大幅に軽減される。
【0042】
以上の説明において液体浄化装置11,12,13は、浄水装置であることを前提にして説明を行ったが,浄化の対象となる被処理液aが,特に限定されるものではない。
また本実施形態において、採用した凝集剤や、エア導入手段50は、本発明の課題を解決するための必須の構成要素ではない。つまり、濾過手段70で採用される多孔質膜80の細孔サイズと、除去対象となる被処理液a中の固形成分の粒子サイズとの関係においては、そのような凝集剤が不要である場合がある。さらに、帰還手段60が経路中にポンプ等の強制流動手段を具備していれば、循環流の原動力としてエア導入手段50を利用する必要もない。
【0043】
また濾過手段70は、中空糸膜が束状に構成されているものを例示して説明を行ったが、これに限定されることはなく、平板形状を有するものであってもよい。
また濾過手段70の一次側81に帰還させる濃縮成分d2は、遠心濃縮手段90で分離させたものを例示したが、沈降濃縮手段40で分離された濃縮成分d1、又はその他の濃縮手段で分離させたものを採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る液体浄化装置の第1実施形態の基本構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に適用されている濾過手段の(a)縦断面図、(b)横断面図である。
【図3】本実施形態に適用されている濾過手段を構成する多孔質膜の部分拡大断面図であって、液体浄化装置の動作に基づいて(a)〜(c)に示される多孔質膜の作用が導かれる。
【図4】(a)〜(c)は、図3に示される場合に対し、濾過手段の接続方法を変更させた場合の多孔質膜における作用を示す図である。、
【図5】(a)は本発明に係る液体浄化装置の第2実施形態の基本構成を示すブロック図であり(b)はこの第2実施形態に適用されている遠心濃縮手段の斜視概念図である。
【図6】本発明に係る液体浄化装置の第3実施形態の基本構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0045】
11,12,13 液体浄化装置
20 供給手段
30 流動操作手段
31 浄化液槽
32 順流路
33 逆流路
40 沈降濃縮手段
42 排液路
43 排出路
44,64 返送路
45 脱水処理器
50 エア導入手段
60 帰還手段
61 分岐路
62 逆止弁
63 移送路
70 濾過手段
80 多孔質膜
81 一次側
82 二次側
90 遠心濃縮手段
P1,P2,P3 ポンプ
Q1 付着層(固形成分)
Q2 脱離体(固形成分)
S1、S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8 開閉弁
a 被処理液(原水)
b 浄化液(浄水)
c 排出液
d1,d2 濃縮成分
e1,e2 希釈成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液を濾過手段の一次側に供給し多孔質膜に固形成分を付着させて二次側に向かって浄化液として送出させる供給手段と、
前記浄化液を貯留するとともに前記濾過手段へ逆流させて付着している前記固形成分を前記多孔質膜から脱離させる流動操作手段と、
前記多孔質膜から脱離して前記濾過手段から排出された前記固形成分を前記一次側に帰還させて前記多孔質膜に衝突させる帰還手段とを、備えることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体浄化装置において、
前記固形成分を含む排出液を遠心分離操作して前記固形成分を濃縮させる遠心濃縮手段を有することを特徴とする液体浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液体浄化装置において、
前記固形成分を含む排出液を重力沈降操作して前記固形成分を濃縮させる沈降濃縮手段を有することを特徴とする液体浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体浄化装置において、
前記遠心濃縮手段による前記固形成分の濃縮成分を前記沈降濃縮手段に移送する移送路を有することを特徴とする液体浄化装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の液体浄化装置において、
前記固形成分の濃縮成分を前記帰還手段に送ることを特徴とする液体浄化装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の液体浄化装置において、
前記排出液のうち前記濃縮成分の余りの希釈成分を前記供給手段に返送させる返送路を有することを特徴とする液体浄化装置。
【請求項7】
被処理液を濾過手段の一次側に供給し多孔質膜に固形成分を付着させて二次側から浄化液を生成する濾過工程と、
生成した前記浄化液を濾過手段へ逆流させて付着している前記固形成分を前記多孔質膜から脱離させる第1洗浄工程と、
前記多孔質膜から脱離した前記固形成分を前記一次側に帰還させて前記多孔質膜に衝突させ付着している前記固形成分を脱離させる第2洗浄工程と、を含むことを特徴とする濾過手段の洗浄方法。
【請求項8】
請求項7に記載の濾過手段の洗浄方法において、
前記第2洗浄工程の前に、前記固形成分を含む排出液を濃縮させる濃縮工程を含むことを特徴とする濾過手段の洗浄方法。
【請求項9】
請求項8に記載の濾過手段の洗浄方法において、
前記排出液のうち濃縮成分の余りの希釈成分を前記被処理液として再利用する返送工程を含むことを特徴とする濾過手段の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−125719(P2009−125719A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306564(P2007−306564)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】