説明

液体浄化装置

【課題】液面の高さに関わらず、液面に浮遊した不要物を効率良く除去する。
【解決手段】無端ベルト3(回転部材)及び一対のプーリ1、2を一体化して可動側10とし、下側のプーリ1を中空とすることで可動側10を液面に浮遊させることにより、可動側10を液面の変動に伴って上下動可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に浮遊した不要物を除去する液体浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削等の機械加工を行う加工装置では、工具を冷却するクーラントを循環させて再利用することがある。この場合、加工装置の潤滑油や加工屑等の不要物がクーラントに混入するため、クーラントを再利用するためには不要物を除去する必要がある。
【0003】
液面に浮遊した油等の不要物を除去する液体浄化装置として、オイルスキマーが広く知られている(例えば、特許文献1)。オイルスキマーは、例えば図3に示すように、上下に離隔して配置された一対のプーリ101、102と、これらの間に捲回された無端ベルト103と、スクレーパ104とを有する。上側のプーリ101は、液面の上方に設けられ、液体の容器の蓋部に固定された駆動モータ(図示省略)に取り付けられる。下側のプーリ102は、錘として容器の内部のクーラントC中に浸漬され、これにより無端ベルト103に一定の張力が付与される。上側のプーリ101を回転駆動して無端ベルト103を回転させると、クーラントCの液面の油が無端ベルト103に付着する。詳しくは、無端ベルト103がクーラントCに浸入するとき(矢印A参照)、及び無端ベルト103がクーラントCから排出されるとき(矢印B参照)に、クーラントCの液面に浮遊した油等の不要物Dが無端ベルト103に付着する。こうして無端ベルト103に付着した不要物Dをスクレーパ104で掻き取ることにより、クーラントCの液面から不要物Dが除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−246006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のオイルスキマーにおいて、クーラントCの液面が低すぎると、無端ベルト103と油とが接触せず、油を除去できない恐れがある。かかる不具合を回避すべく、下側のプーリ102を容器105の底面付近に配置した場合、液面が高くなると、図4に示すように、下側のプーリ102と液面との距離が大きくなる。この場合、無端ベルト103がクーラントC中を通過する距離が長くなるため、無端ベルト103がクーラントCに浸入するとき(矢印A’参照)に無端ベルト103に付着した油が、クーラントC中を通過する間に無端ベルト103から剥がれてしまい(矢印A’’参照)、油の回収効率が低下する恐れがある。
【0006】
本発明の解決すべき課題は、液面の高さに関わらず、液面に浮遊した不要物を効率良く除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためになされた本発明は、液面に浮遊している不要物を除去する液体浄化装置であって、下端を液体に浸漬させ、上端を液面から露出させた回転部材と、回転部材を回転させる駆動部と、回転部材に付着した不要物を回転部材から分離する分離手段とを備え、回転部材を液面に浮遊させる浮力発生手段を設け、液面の変動に伴って回転部材を上下動可能としたものである。
【0008】
このように、浮力発生手段により回転部材を液面に浮遊させ、液面の変動に伴って上下動可能とすることで、液面の高さに関わらず、回転部材の下端を一定の深さで液体に浸漬することができる。これにより、液面の高さが変動した場合でも不要物の除去効率が低下する事態を防止できる。
【0009】
駆動部を回転部材と共に液面に浮遊させると、浮力発生手段の負荷が大きくなる。従って、駆動部は、接地された設備側(例えば液体を収容する容器)に固定することが好ましい。
【0010】
ところで、液体浄化装置では、容器内に充填された液体の液面高さを検知するために、液面にフロートを浮遊させ、このフロートの高さを検知する液面検知手段を設けることがある。しかしこの場合、回転部材(無端ベルト)とは別に、フロートを設けるスペースを確保する必要が生じるため、設備スペースが拡大する。そこで、上記の液体浄化装置によれば、液面に回転部材を浮遊させているため、回転部材の高さを検知することにより、液面高さを検知することができる。これにより、フロートを省略できるため、部品点数を削減できると共に、設備スペースを縮小することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、液面の高さに関わらず、液面に浮遊した不要物を効率良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体浄化装置の断面図である。
【図2】上記液体浄化装置の側面図である。
【図3】従来のオイルスキマーの断面図である。
【図4】従来のオイルスキマーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1及び図2に、本発明の一実施形態に係る液体浄化装置100を示す。この液体浄化装置100は、加工装置のクーラントを循環使用するために、容器内に充填されたクーラントCの液面に浮遊した油や加工屑等の不要物Dを除去するものである。液体浄化装置100は、一対のプーリ1、2と、プーリ1、2に捲回された回転部材としての無端ベルト3と、分離手段としてのスクレーパ4と、無端ベルト3を回転させる駆動部5とを主に備える。一対のプーリ1、2及び無端ベルト3は、液面の変動に伴って上下動する可動側10とされ、スクレーパ4及び駆動部5は、接地された設備側に固定され、本実施形態では液体が充填された容器の蓋部(図示省略)に固定される。
【0015】
下側のプーリ1は、少なくとも一部が液体に浸漬され、上側のプーリ2は、液面より上方で液体と接触しない位置に配される。これにより、一対のプーリ1、2に捲回された無端ベルト3の下端は液体に浸漬され、上端は液面から露出した状態となる。無端ベルト3は、不要物を吸着可能な素材で形成され、例えば金属で形成される。
【0016】
スクレーパ4は、平板状を無し、その先端が無端ベルト3と摺動することにより、無端ベルト3に付着した油等の不要物を無端ベルト3から掻き取って分離し、図示しない分離容器に収容する。尚、図示例では、無端ベルト3の外周面と摺動するスクレーパ4を設けているが、これに加えて、あるいはこれに換えて、無端ベルト3の内周面と摺動するスクレーパを設けてもよい。
【0017】
駆動部5は、摩擦力を介して無端ベルト3を回転駆動するものである。本実施形態では、駆動部5が、円柱状のマグネットプーリ5aと、これを回転駆動する駆動モータ5bとからなる。マグネットプーリ5aの外周面を無端ベルト3に磁力で吸着させ、この状態で駆動モータ5bを回転させることにより、無端ベルト3が回転する。図示例では、無端ベルト3のうち、スクレーパ4よりも回転方向先行側(図中では下方)に駆動部5を配置している。これにより、スクレーパ4で油等の不要物が除去された無端ベルト3の外周面にマグネットプーリ5aを吸着させて無端ベルト3が駆動されるため、無端ベルト3とマグネットプーリ5aとの間に油等の不要物が介在することによる摩擦力の低下を抑え、マグネットプーリ5aの空回りを防止できる。
【0018】
一対のプーリ1、2は、連結シャフト6で連結される。具体的には、図2に示すように、下側のプーリ1の回転軸方向両側に設けられた軸受7と、上側のプーリ2の回転軸方向両側に設けられた軸受8とが、連結シャフト6でそれぞれ連結される。連結シャフト6の中間部は、ガイドブッシュ9で上下方向にガイドされる。ガイドブッシュ9は、設備側に固定され、具体的には液体が充填された容器の蓋部(図示省略)に固定される。以上により、一対のプーリ1、2及び無端ベルト3が連結シャフト6により一体化されて、昇降可能な可動側10を構成する。
【0019】
液体浄化装置100には、無端ベルト3を液面に浮遊させる浮力発生手段が設けられる。本実施形態では、下側のプーリ1を中空とし、これを液体に浸漬させることで、浮力発生手段が構成される。具体的には、下側のプーリ1は、図1に示すように、中空の円筒部1aと、円筒部1aの両端開口を閉塞する一対の円盤部1bとからなる。本実施形態では、上側のプーリ2も同様に中空とされ、円筒部2a及び一対の円盤部2bとからなる。
【0020】
上記の液体浄化装置100において、駆動部5により無端ベルト3を回転させ、クーラントC中に無端ベルト3を通過させることにより、液面の不要物Dを無端ベルト3に付着させる。そして、この不要物Dをスクレーパ4で無端ベルト3から掻き取ることにより、クーラントCの液面から不要物Dが除去される。このとき、下側のプーリ1を液体に浸漬することで発生する浮力により、可動側10が上向きに支持される。すなわち、可動側10の重量と下側のプーリ1による浮力とが釣り合う位置で、可動側10が液面に浮遊し、液面の変動に伴って昇降可能とされる。これにより、液面に対する下側のプーリ1の浸漬深さ、すなわち、無端ベルト3の浸漬深さを常に一定に維持することができるため、クーラントCの液面高さに関わらず、液面に浮遊した油等の不要物Dを常に効率よく除去することができる。
【0021】
液体浄化装置100には、無端ベルト3の高さを検知することにより、液面高さを検知する液面検知手段20が設けられる。具体的には、図2に示すように、設備側の部材に上下方向に延びる支柱21が固定され、支柱21の異なる高さに複数のセンサが設けられる。図示例では、駆動部5の駆動モータ5bに固定された支柱21に、上限検知センサ22、下限予報センサ23、及び下限検知センサ24が設けられる。可動側10には被検知部が設けられ、図示例では上側のプーリ2の側面に反射板25が取り付けられる。各センサ22〜24は、支柱21のうち、反射板25と対向した側面に取り付けられる。尚、液面検知手段20は、図2にのみ示し、図1では省略している。
【0022】
液面の上昇に伴って可動側10が上昇し、上限検知センサ22が反射板25の存在を検知すると、その検知信号が図示しない制御部に伝達される。この信号が伝達された制御部は、液面が上限位置であると判別し、図示しない表示部に液面が上限位置であることを表示する。一方、液面の下降に伴って可動側が下降し、下限予報センサ23が反射板25の存在を検知すると、その検知信号が図示しない制御部に伝達され、制御部は、液面が下限位置付近であると判別し、表示部に液面が下限位置付近であることを表示する。さらに液面が下降し、下限検知センサ24が反射板25の存在を検知すると、制御部は液面が下限位置であると判別し、表示部にその旨を表示する。このように、可動側10の高さにより液面高さを検知することで、液面高さを検知するためにフロート等を別途設ける必要がなくなるため、設備スペースを縮小することができる。
【0023】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、回転部材が無端ベルト3であるベルト式のオイルスキマーを示したが、これに限らず、例えば回転部材が水平方向の回転軸を有する円盤からなるディスク式のオイルスキマーであってもよい。また、本発明は、オイルスキマーに限らず、液面に浮遊した異物を除去する異物除去装置に適用することもできる。
【0024】
また、上記の実施形態では、駆動部5をマグネットプーリ5a及び駆動モータ5bで構成した場合を示したが、これに限らず、例えば駆動モータの駆動力を、ギアやチェーンを介して回転部材に伝達する駆動部を用いてもよい。ただし、駆動部を設備側に固定する場合には、液面の変動に伴って可動側10が上下動した場合でも動力を伝達可能であることが必要であるため、上記の実施形態のように摩擦力を介して回転部材を駆動する駆動部が好ましい。
【0025】
また、上記の実施形態では、浮力発生手段として、下側のプーリ1自体を中空とした場合を示したが、これに限らず、例えば下側のプーリ1に、浮力発生手段としての中空のフロートを取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 プーリ
2 プーリ
3 無端ベルト(回転部材)
4 スクレーパ(分離手段)
5 駆動部
6 連結シャフト
9 ガイドブッシュ
10 可動側
20 液面検知手段
21 支柱
22 上限検知センサ
23 下限予報センサ
24 下限検知センサ
25 反射板
C クーラント
D 不要物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮遊している不要物を除去する液体浄化装置であって、
下端を液体に浸漬させ、上端を液面から露出させた状態で回転可能な回転部材と、前記回転部材を回転させる駆動部と、前記回転部材に付着した不要物を前記回転部材から分離する分離手段とを備え、
前記回転部材を液面に浮遊させる浮力発生手段を設け、液面の変動に伴って前記回転部材を上下動可能とした液体浄化装置。
【請求項2】
前記駆動部が、接地された設備側に固定された請求項1記載の液体浄化装置。
【請求項3】
前記回転部材の高さを検知することにより、液面高さを検知する液面検知手段を設けた請求項1又は2記載の液体浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−111539(P2013−111539A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260645(P2011−260645)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】