説明

液体浄化装置

【課題】液体浄化装置の回転部材に付着した不要物がスクレーパにより十分に掻き取られているか否かを正確に判定し、スクレーパや回転部材の交換時期を適切に判断する。
【解決手段】無端ベルト3(回転部材)及び駆動部5の回転数を検出する回転数検出部21、22を設け、これらの検出結果に基づいて、駆動部5の回転数に対する上側のプーリ2の回転数を監視することにより、スクレーパ4により無端ベルト3から不要物Dが十分に掻き取られているか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液面に浮遊した不要物を除去する液体浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
切削等の機械加工を行う加工装置では、工具を冷却するクーラントを循環させて再利用することがある。この場合、加工装置の潤滑油や加工屑等の不要物がクーラントに混入するため、クーラントを再利用するためには不要物を除去する必要がある。
【0003】
液面に浮遊した油等の不要物を除去する液体浄化装置として、オイルスキマーが広く知られている(例えば、特許文献1)。オイルスキマーは、例えば図4に示すように、上下に離隔して配置された一対のプーリ101、102と、これらの間に捲回された無端ベルト103と、スクレーパ104とを有する。上側のプーリ101は、液面の上方に設けられ、液体の容器の蓋部に固定された駆動モータ(図示省略)に取り付けられる。下側のプーリ102は、錘として容器の内部のクーラントC中に浸漬され、これにより無端ベルト103に一定の張力が付与される。上側のプーリ101を回転駆動して無端ベルト103を回転させると、クーラントCの液面の油が無端ベルト103に付着する。詳しくは、無端ベルト103がクーラントCに浸入するとき(矢印A参照)、及び無端ベルト103がクーラントCから排出されるとき(矢印B参照)に、クーラントCの液面に浮遊した油等の不要物Dが無端ベルト103に付着する。こうして無端ベルト103に付着した不要物Dをスクレーパ104で掻き取ることにより、クーラントCの液面から不要物Dが除去される。
【0004】
スクレーパ104は、図5(a)に示すように、鋭角を成した先端104aを有し、この先端104aを無端ベルト103に接触させることにより、無端ベルト104に付着した不要物が掻き取られる(図中点線参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−246006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなオイルスキマーを長期間使用すると、図5(b)に示すようにスクレーパ104の先端104aが摩耗するため、無端ベルト103に付着した不要物がスクレーパ104により十分に掻き取られず、不要物の回収効率が低下する恐れがある。このため、スクレーパ104の摩耗状態を定期的に確認し、摩耗が進んでいればスクレーパ104を交換する必要がある。しかし、この摩耗状態の確認は作業者の目視で行われているのが現状であるため、確認作業に手間がかかる上、目視により摩耗状態を正確に確認することは難しい。このため、スクレーパ104の交換時期を適切に判断することができず、交換時期が早すぎて無駄なコストが生じたり、交換時期が遅すぎて不要物の回収効率が悪いまま使用したりする恐れがある。
【0007】
本発明の解決すべき課題は、液体浄化装置のスクレーパの摩耗状態を簡単且つ正確に確認することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するためになされた本発明は、液面に浮遊している不要物を除去する液体浄化装置であって、下端を液体に浸漬させ、上端を液面から露出させた回転部材と、回転部材に付着した不要物を掻き取るスクレーパと、回転部材のうち、スクレーパよりも回転方向先行側に接触し、摩擦力を介して回転部材を回転させる駆動部とを備え、回転部材及び駆動部の少なくとも一方の回転状態を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて駆動部の空回りの有無を判別する判別部とを設けたことを特徴とする。
【0009】
このように、摩擦力を介して回転部材を回転させる駆動部を、スクレーパより回転方向先行側に設けた場合、回転部材に付着した不要物がスクレーパで十分掻き取られていないと、駆動部と回転部材との間に不要物が介在するため、両者の間の摩擦力が低下して駆動部が空回りし、駆動部や回転部材の回転状態(例えば回転数)が変化する。従って、駆動部及び回転部材の少なくとも一方の回転状態を検出する検出手段を設け、この検出手段の検出結果に基づいて駆動部の空回りの有無を判別することにより、回転部材に付着した不要物がスクレーパにより十分に掻き取られているか否か、すなわち、スクレーパの摩耗量が許容範囲内であるか否かを正確に判別することができる。
【0010】
ところで、上記の検出手段として、例えば回転部材の回転数を検出する回転数検出部、あるいは、駆動部の回転数を検出する回転数検出部の何れか一方のみを設けた場合、駆動部が空回りしていないときでも、何らかの原因により回転部材及び駆動部の回転数が共に低下したり、あるいは共に上昇したりすることで、駆動部に空回りが生じていると誤って判別する恐れがある。従って、駆動部の空回りを正確に検知するためには、回転部材の回転数を検出する回転数検出部、及び、駆動部の回転数を検出する回転数検出部を設け、駆動部の回転数に対する回転部材の回転数に基づいて、駆動部の空回りの有無を判別することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の液体浄化装置によれば、作業者の目視による場合と比べて、スクレーパの摩耗状態を簡単且つ正確に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る液体浄化装置の断面図である。
【図2】上記液体浄化装置の側面図である。
【図3】上記液体浄化装置のスクレーパの先端の拡大図である。
【図4】従来のオイルスキマーの断面図である。
【図5】(a)は、上記オイルスキマーのスクレーパの先端の拡大図であり、(b)はスクレーパの先端が摩耗した状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1及び図2に、本発明の一実施形態に係る液体浄化装置100を示す。この液体浄化装置100は、加工装置のクーラントを循環使用するために、容器内に充填されたクーラントCの液面に浮遊した油や加工屑等の不要物Dを除去するものである。液体浄化装置100は、一対のプーリ1、2と、プーリ1、2に捲回された回転部材としての無端ベルト3と、スクレーパ4と、無端ベルト3を回転させる駆動部5とを主に備える。一対のプーリ1、2及び無端ベルト3は、液面の変動に伴って上下動する可動側10とされ、スクレーパ4及び駆動部5は、接地された設備側に固定され、本実施形態では液体が充填された容器の蓋部(図示省略)に固定される。
【0015】
下側のプーリ1は、少なくとも一部が液体に浸漬され、上側のプーリ2は、液面より上方で液体と接触しない位置に配される。これにより、一対のプーリ1、2に捲回された無端ベルト3の下端は液体に浸漬され、上端は液面から露出した状態となる。無端ベルト3は、不要物を吸着可能な素材で形成され、例えば金属で形成される。
【0016】
スクレーパ4は、平板状を無し、図3に示すように、鋭角を成した先端4aを有する。スクレーパ4の先端4aを、無端ベルト3の外周面に押し付けて摺動させることにより、無端ベルト3に付着した油等の不要物を無端ベルト3から掻き取り、図示しない分離容器に収容する(点線参照)。尚、本実施形態では、無端ベルト3の外周面と摺動するスクレーパ4を設けているが、これに加えて、あるいはこれに換えて、無端ベルト3の内周面と摺動するスクレーパを設けてもよい。また、スクレーパの個数は限定されず、例えば無端ベルト3の外周面と摺動する複数のスクレーパを、無端ベルト3の回転方向に離隔した複数箇所に設けてもよい。
【0017】
駆動部5は、摩擦力を介して無端ベルト3を回転駆動するものであり、スクレーパ4より無端ベルト3の回転方向先行側(図中下側)に配置され、無端ベルト3の外周面に接触する(図1参照)。本実施形態では、駆動部5が、円柱状のマグネットプーリ5aと、これを回転駆動する駆動モータ5bとからなる。マグネットプーリ5aの外周面を無端ベルト3に磁力で吸着させ、この状態で駆動モータ5bを回転させることにより、無端ベルト3が回転する。尚、磁力を用いなくても駆動部5と無端ベルト3との摩擦力が十分であれば、マグネットプーリ5aに換えて、磁力を有さない通常のプーリを用いてもよい。
【0018】
液体浄化装置100には、無端ベルト3および駆動部5の少なくとも一方の回転状態を検出する検出手段が設けられる。本実施形態では、図2に示すように、無端ベルト3の回転状態を検出する検出手段として、上側のプーリ2の回転数を検出する回転数検出部21が設けられる。また、駆動部5の回転状態を検出する検出手段として、駆動部5の回転数を検出する回転数検出部22が設けられる。
【0019】
一対のプーリ1、2は、連結シャフト6で連結される。具体的には、下側のプーリ1の回転軸方向両側に設けられた軸受7と、上側のプーリ2の回転軸方向両側に設けられた軸受8とが、連結シャフト6でそれぞれ連結される。連結シャフト6の中間部は、ガイドブッシュ9で上下方向にガイドされる。ガイドブッシュ9は、設備側に固定され、具体的には液体を収容する容器の蓋部に固定される。以上により、一対のプーリ1、2及び無端ベルト3が連結シャフト6により一体化されて、昇降可能な可動側10を構成する。
【0020】
液体浄化装置100には、無端ベルト3を液面に浮遊させる浮力発生手段が設けられる。本実施形態では、下側のプーリ1を中空とし、これを液体に浸漬させることで、浮力発生手段が構成される。具体的には、図1に示すように、下側のプーリ1は、中空の円筒部1aと、円筒部1aの両端開口を閉塞する一対の円盤部1bとからなる。本実施形態では、上側のプーリ2も同様に中空とされ、円筒部2a及び一対の円盤部2bとからなる。
【0021】
下側のプーリ1を液体に浸漬することで発生する浮力により、可動側10が上向きに支持される。すなわち、可動側10の重量と下側のプーリ1による浮力とが釣り合う位置で、可動側10が液面に浮遊する。これにより、液面の変動に伴って可動側10が上下動可能とされ、液面に対する下側のプーリ1の浸漬深さ、すなわち、無端ベルト3の浸漬深さを常に一定に維持される。
【0022】
上記の液体浄化装置100において、駆動部5により無端ベルト3を回転させ、クーラントC中に無端ベルト3を通過させることにより、液面の不要物Dを無端ベルト3に付着させる。そして、この不要物Dをスクレーパ4で無端ベルト3から掻き取ることにより、クーラントCの液面から不要物Dが除去される。このとき、上側のプーリ2の回転数及び駆動部5の回転数を回転数検出部21、22によりそれぞれ検出し、検出結果が図示しない判別部に伝達される。判別部は、回転数検出部21、22による検出結果に基づいて、駆動部5の回転数に対する上側のプーリ2の回転数を監視する。スクレーパ4の摩耗により、スクレーパ4により無端ベルト3から不要物Dが十分に除去されず、駆動部5のマグネットローラ5aと無端ベルト3との間に不要物Dが介在するようになると、駆動部5が空回りし、駆動部5の回転数に対する上側のプーリ2の回転数が低下する。従って、駆動部5の回転数に対する上側のプーリ2の回転数が所定値より小さくなったら、判別部により、駆動部5に空回りが生じていると判別される。これにより、スクレーパ4の先端4aの摩耗量が許容範囲を超えていることが確認でき、駆動部5を停止してスクレーパ4を交換する。
【0023】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態では、上側のプーリ2の回転数及び駆動部5の回転数を、それぞれ回転数検出部21、22により検出する場合を示したが、これに限られない。例えば、上側のプーリ2の回転数を検出する回転数検出部21のみを設けてもよい。この場合、駆動部5が空回りすると、駆動部5の駆動力が無端ベルト3に十分に伝わらずに上側のプーリ2の回転数が低下するため、上側のプーリ2の回転数が所定値を下回ったら、スクレーパ4による掻き取りが不十分であると判別できる。あるいは、駆動部5の回転数を検出する回転数検出部32のみを設けてもよい。この場合、駆動部5が空回りすると、駆動部5に加わる負荷が小さくなり、駆動部5の回転数が上昇するため、駆動部5の回転数が所定値を超えたら、スクレーパ4による掻き取りが不十分であると判別できる。ただし、駆動部5の空回りを正確に検知するためには、上記の実施形態のように回転数検出部21、22の双方を設けて、判別部により、駆動部5の回転数に対する上側のプーリ2の回転数を監視することが好ましい。
【0024】
また、上記の実施形態では、上側のプーリ2や駆動部5の回転状態を検出する検出手段として、回転数を検出する回転数検出部21、22を設けた場合を示したが、これに限らず、例えば上側のプーリ2や駆動部5の回転トルクを検出するトルク検出部で検出手段を構成してもよい。また、上側のプーリ2の回転状態を検出する代わりに、下側のプーリ1の回転状態を検出したり、あるいは無端ベルト3の回転状態を直接検出してもよい。
【0025】
また、上記の実施形態では、回転部材が無端ベルト3であるベルト式のオイルスキマーを示したが、これに限らず、例えば回転部材が水平方向の回転軸を有する円盤からなるディスク式のオイルスキマーであってもよい。また、本発明は、オイルスキマーに限らず、液面に浮遊した異物を除去する異物除去装置に適用することもできる。
【0026】
また、上記の実施形態では、可動側10を液面に浮遊させる場合を示したが、これに限らず、例えば、上側のプーリ2を設備側に固定し、下側のプーリ1を無端ベルト3を介して吊り下げてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 プーリ
2 プーリ
3 無端ベルト(回転部材)
4 スクレーパ
5 駆動部
21 回転数検出部(検出手段)
22 回転数検出部(検出手段)
C クーラント
D 不要物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮遊している不要物を除去する液体浄化装置であって、
下端を液体に浸漬させ、上端を液面から露出させた回転部材と、前記回転部材に付着した不要物を掻き取るスクレーパと、前記回転部材のうち、前記スクレーパよりも回転方向先行側に接触し、摩擦力を介して前記回転部材を回転させる駆動部とを備え、
前記回転部材及び前記駆動部の少なくとも一方の回転状態を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記駆動部の空回りの有無を判別する判別部とを設けたことを特徴とする液体浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−111540(P2013−111540A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260648(P2011−260648)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】