説明

液体消費装置

【課題】プリズムの底面や空洞部で生じるノイズ光を抑制し、液体の残存状態をより正確に検出する。
【解決手段】液体消費装置は、発光部と受光部とが並んで配置された検出部と、液体を収容し、プリズムが配置された液体容器と、液体容器を着脱可能であり、プリズムに対向する位置に開口部が設けられたキャリッジと、キャリッジの開口部に配置された遮光部を備えている。駆動部がキャリッジを発光部と受光部とが並ぶ方向に沿って移動させた際に、遮光部が照射光の一部を遮ることにより、プリズム底面や空洞部で生じるノイズ光を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体消費装置の一例であるインクジェット方式の印刷装置には、一般的に、取り外し可能な液体容器であるインクカートリッジが装着される。インクカートリッジには、インクカートリッジ内のインクの量が所定量を下回ったことを検出するための、プリズムを備えたものがある。プリズムを用いたインクの残存状態の検出は、発光素子から照射された光がプリズムに入射してプリズムの頂角を形成する斜面で反射する際に、斜面がインクと接しているか否かで反射状態が異なることを利用して、受光素子に入射する光の強度のレベルなどに基づいて行うことができる。
【0003】
特許文献1には、プリズムを透過してインクカートリッジ内のインクに進入した光が、インクカートリッジ内のインク上面と空気との界面で反射して、プリズム内に再度入射し、受光素子で受光されてしまうことを防ぐために、インクカートリッジ内部にインク上面と空気の界面での反射を抑制するための構造物を設置する技術が開示されている。しかし、反射は、インクカートリッジ内のインク上面と空気との界面だけでなく、プリズムの光が入射する面でも生じる場合がある。特許文献1に記載の技術では、このような反射を抑制することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−232157号公報
【特許文献2】特開2002−264355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の問題を考慮し、本発明が解決しようとする課題は、プリズムの光が入射する面で生じる反射を抑制し、液体の残存状態のより正確な検知を行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]発光部と受光部とが並んで配置された検出部と、液体を収容し、前記発光部から照射された光を前記液体容器内の液体の量に応じて前記受光部に向けて反射するプリズムが配置された液体容器と、前記液体容器を着脱可能であり、前記液体容器が装着されたときに前記プリズムに対向する位置に開口部が設けられたキャリッジと、前記キャリッジを前記発光部と前記受光部とが並ぶ方向に沿って移動させる駆動部と、前記キャリッジの前記開口部に配置される遮光部と、を備える、液体消費装置。
【0008】
このような液体消費装置であれば、キャリッジのプリズムに対向する位置には開口部が設けられ、開口部には遮光部が配置されているので、キャリッジが発光部と受光部とが並ぶ方向に沿って移動した際に、発光部から照射された照射光の一部を遮光部が遮ることができる。そのため、プリズムの底面で反射する光を抑制して、液体容器内の液体の残存状態の判断精度を向上することができる。
【0009】
[適用例2]適用例1に記載の液体消費装置であって、前記遮光部は、前記キャリッジの移動する方向と交差する方向に前記開口部を分断して設けられている、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、キャリッジの開口部を分断して遮光部が設けられているので、キャリッジが移動しても遮光部の位置がキャリッジに対してずれることがない。また、キャリッジの移動する方向と交差する方向に、プリズムと検出部との位置関係がずれたとしても、発光部から照射された照射光の一部を遮光部が遮ることができる。そのため液体容器内の液体の残存状態の判断精度を、より向上することができる。
【0010】
[適用例3]適用例1または適用例2に記載の液体消費装置であって、前記プリズムは、前記検出部と対向する面の中央部に空洞部を備え、前記キャリッジの移動する方向における前記遮光部の幅は、前記キャリッジの移動する方向における前記空洞部の幅よりも広い、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、プリズム成形時の変形を抑制するための空洞部がプリズムの検出部と対向する面の中央部に設けられていても、キャリッジの移動する方向に対する遮光部の幅が空洞部の幅よりも広いので、空洞部で反射する光を抑制することができる。
【0011】
[適用例4]適用例1から適用例3までのいずれか一の適用例に記載の液体消費装置であって、前記遮光部の前記検出部と対向する面は、前記液体容器の底面に対して傾斜した傾斜面である、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、遮光部の傾斜面により、遮光部に入射する光を受光部と異なる方向へ反射させることができる。したがって、遮光部によって反射する光が受光部に入射してしまうことを抑制することができる。
【0012】
[適用例5]適用例4記載の液体消費装置であって、前記遮光部の備える前記傾斜面は、前記遮光部と前記検出部とが対向したときに、前記発光部側に傾斜している、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、遮光部の備える傾斜面で反射した光が発光部側へ反射するので、遮光部によって反射する光が受光部へ入射してしまうことをより効果的に抑制することができる。
【0013】
[適用例6]適用例1から適用例5までのいずれか一の適用例に記載の液体消費装置であって、前記遮光部の前記検出部と対向する面は、前記キャリッジの前記検出部と対向する面よりも前記検出部に向けて突出している、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、遮光部の検出部と対向する面が、検出部の発光部および受光部に対して近いため、プリズムの底面や空洞部で反射する光を抑制できる範囲を広げることができる。
【0014】
[適用例7]適用例1から適用例6までのいずれか一の適用例に記載の液体消費装置であって、前記遮光部の前記検出部と対向する面は、少なくとも2つの傾斜面を有し、前記少なくとも2つの傾斜面は前記キャリッジの移動する方向と交差する方向を中心として対称である、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、遮光部の検出部と対向する面が対称形状であるため、遮光部がプリズムの底面や空洞部で反射する光を抑制できる範囲も、プリズムの中心に対して対称とすることができる。したがって、液体の残存状態の検出可能な範囲の設定が容易になる。
【0015】
[適用例8]適用例1から適用例7までのいずれか一の適用例に記載の液体消費装置であって、前記キャリッジは反射板を備え、前記検出部は前記発光部を用いて前記反射板に対して光を照射し、前記反射板から反射した反射光を前記受光部によって受光し、該受光した反射光に基づいて前記検出部の故障の有無を検出する、液体消費装置。このような液体消費装置であれば、プリズムを用いた残量検出時に、プリズムの底面や空洞部で反射する光であるノイズ光となる光を利用して、検出部の故障を検知することができる。
【0016】
本発明は、上述した液体消費装置としての構成のほか、液体消費装置の制御方法、液体消費装置を用いた印刷方法や、これら制御や印刷を行うためのコンピュータプログラムとしても構成することができる。かかるコンピュータプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスクやCD−ROM、DVD−ROM、光磁気ディスク、メモリーカード、ハードディスク等の種々の媒体を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例としての印刷装置の要部を示す斜視図である。
【図2】印刷装置の概略構成図である。
【図3】検出部の電気的構成を示す説明図である。
【図4】インクカートリッジの斜視図である。
【図5】インク室内にインクが無い場合に、プリズムが光を反射する様子について説明するための模式図である。
【図6】インク室内にインクが十分に存在する場合に、プリズムが光を反射する様子について説明するための模式図である。
【図7】プリズムと検出部との位置関係の変化によって生じるノイズ光について説明するための図である。
【図8】ノイズ光の量の変化をシミュレーションした結果を示した図である。
【図9】遮光マスクを備えるキャリッジについて示した模式図である。
【図10】キャリッジの開口部の付近を、検出部側から見た様子を示した模式図である。
【図11】キャリッジが遮光マスクを備える場合のノイズ光について示した図である。
【図12】キャリッジが傾斜付き遮光マスクを備える場合のノイズ光について示した図である。
【図13】キャリッジがM字形遮光マスクを備える場合のノイズ光について示した図である。
【図14】キャリッジの下面に開口部を一体的に設け、検出部側から開口部を見た様子を示した模式図である。
【図15】傾斜付き遮光マスクの別の例を示した図である。
【図16】キャリッジの底面よりも検出部に向けて突出した遮光マスクを示した図である。
【図17】内側に向けてそれぞれ傾斜した傾斜面の境界部に凹状のくぼみを設けた遮光マスクの一例を示した図である。
【図18】底面部が対称に外側へ向けて傾斜した遮光マスクの一例を示した図である。
【図19】インクカートリッジの別の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
A.第1実施例:
A−1.印刷装置の構成:
図1は本発明の一実施例としての印刷装置10の要部を示す斜視図である。図2は、印刷装置10の概略構成図である。図1には、互いに直交するXYZ軸が描かれている。これ以降に示す図についても必要に応じてXYZ軸を付している。本実施例において、印刷装置10の使用姿勢では、Z軸方向が鉛直方向であり、印刷装置のX軸方向の面が正面である。印刷装置10の主走査方向はY軸方向であり、副走査方向はX軸方向である。液体消費装置としての印刷装置10は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等のインクIKが一色ずつ収容されたインクカートリッジ100が装着され、故障検知板81を備えるキャリッジ20と、キャリッジ20を主走査方向HDに駆動するキャリッジモーター33と、キャリッジ20の主走査方向HDと平行して配置されたインクの残存状態を検出するための検出部90と、印刷媒体PAを副走査方VDに搬送する紙送りモーター30と、キャリッジ20に搭載され、インクカートリッジ100から供給されたインクIKを吐出する印刷ヘッド35と、所定のインターフェース72を介して接続されたコンピュータ60等から受信した印刷データに基づいて、キャリッジモーター33や紙送りモーター30、印刷ヘッド35を制御して印刷を行わせる制御ユニット40とを備えている。制御ユニット40には、印刷装置10の動作状態等が表示される表示パネル70が接続されている。また、制御ユニット40には、キャリッジ20がケーブルFFC1で、検出部90がケーブルFFC2で接続されている。
【0019】
図3は、検出部90の電気的構成を示す説明図である。検出部90は発光素子92および受光素子94を備える。発光素子92は光を照射し、受光素子94は光を受光する。検出部90は、反射型のフォトインタラプタによって構成されている。検出部90は、発光素子92として例えばLED(Light Emitting Diode、ライトエミッションダイオード)を備え、受光素子94として例えばフォトトランジスターを備える。検出部90は、PWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティ比(オン時間とオフ時間の割合)を調整してLEDを発光させる。LEDから発光された光は、後述するインクカートリッジ100内のプリズムで反射してフォトトランジスターに入射した後、電流値に変換される。
【0020】
検出部90が備える発光素子92および受光素子94は、キャリッジ20の主走査方向HDと平行して、並んで配置されている(図2)。また、発光素子92および受光素子94は、キャリッジ20がキャリッジモーター33により駆動させられ、検出部90の備える発光素子92および受光素子94の上に位置したときに、キャリッジ20の備える開口部21を介してインクカートリッジ100内のプリズム170と対向するように配置されている。開口部21およびプリズム170については後述する。
【0021】
制御ユニット40は、残量判定部42とセンサー故障検知部44とを備える。制御ユニット40はCPUを備え、ROMに予め記憶された制御プログラムをRAMに展開して実行することで、残量判定部42、センサー故障検知部44として機能する。また、制御ユニット40は、キャリッジ20の往復動や紙送りを制御すると共に、駆動制御部として機能することにより印刷ヘッド35を駆動を制御して、印刷媒体PAへのインクIKの吐出を制御する。
【0022】
残量判定部42は、インクカートリッジ100内のインクIKの残量が所定量より多いか所定量以下であるかを判断する機能部である。残量判定部42は、ケーブルFFC2を通じてフォトトランジスターに入射した光に基づく電流値を取得し、取得した電流値に基づいてインクカートリッジ100内のインクIKの残量が所定量以下となったか否かを判断する。インクIKの残量がインク無しではない所定量以下となったことを、以降「インクニアエンド」ともいう。具体的には、残量判定部42はケーブルFFC2を通じて取得した電流値が、あらかじめ定められたインクの残量に対応する電流値を上回ったときに、インクニアエンドであると判断する。
【0023】
残量判定部42は、例えば印刷装置10の起動時や、印刷媒体PAへの印刷の1ジョブが終了したタイミングや、印刷の実行中など所定のタイミングで、キャリッジ20が検出部90の上を移動している際に、それぞれのインクカートリッジ100についてインクIKの残量がインクニアエンドになったか否かを判断する。残量判定部42がインクニアエンドであると判断すると、制御ユニット40は、制御ユニット40に接続された表示パネル70や、インターフェース72に、インクカートリッジの残量がのこりわずかであることを表示、もしくは、インクカートリッジ100の交換を促す表示をするための情報や指示を出力する。
【0024】
センサー故障検知部44は、検出部90が正常に動作しているか否かを判断する機能部である。センサー故障検知部44は、例えば、残量判定部42がインクIKの残量が所定量より多いか所定量以下かを判断するタイミングに先立ち、キャリッジ20の備える故障検知板81を検出部90の上に移動させて検出部90の故障を検知する。センサー故障検知部44および故障検知板81の詳細については後述する。
【0025】
A−2.カートリッジの構成:
図4は、インクカートリッジ100の斜視図である。インクカートリッジ100は、液体としてのインクIKを収容する略直方体形状のインク収容部130と、インクカートリッジ100に関する情報を記憶するメモリーが搭載された基板150と、キャリッジ20にインクカートリッジ100を着脱するためのレバー120とを備えている。インクカートリッジ100の底面101(インクカートリッジ100が印刷装置10の備えるキャリッジ20に装着されたときの、インクカートリッジ100の−Z方向に対応する面)には、インクカートリッジ100がキャリッジ20に装着されたときに、キャリッジ20に設けられたインク供給針(図示せず)が挿入されるインク供給口110が形成されている。使用前の状態では、インク供給口110の開口はフィルムによって封止されている。
【0026】
インク収容部130は、内部にインクIKを収容するインク室180を備えている。図5に示すように、インク室180の内部の−Z方向にある底部には、2つの傾斜面170a、170bで頂角を形成した、直角二等辺三角柱状のプリズム170が配置されている。プリズム170は、インクカートリッジ100の底面101に設けられている。キャリッジ20にこれらのインクカートリッジ100を上方から装着すると、インクカートリッジ100から印刷ヘッド35へのインクIKの供給が可能となる。
【0027】
A−3.プリズムによるインク残量検知:
図5はインク室180内にインクが無い場合に、インクカートリッジ100のインク室180内に備えられたプリズム170が光を反射する様子について説明するための模式図である。プリズム170は、ポリプロピレンによって透明状に形成されている。また、プリズム170には、プリズム170を成形する際に生じる変形(ヒケ、Sink Marks)を抑制するために、空洞部171(凹部)が底面の中心部に設けられている。なお、プリズム170の「底面」とは、プリズムの頂角に対向する面をいう。プリズム170は、傾斜面170a、170bと接する流体の屈折率によって、光の反射状態が異なる。具体的には、図5に示すように、傾斜面170a、170bが空気に接触している場合、つまり、インクIKの量が少なくなった場合には、プリズム170と空気との屈折率の違いにより、検出部90の備える発光素子92からプリズム170の傾斜面170aに向けて照射された光(光路201)はプリズム170の傾斜面170aで反射する。そして、その反射光はさらにもう一つの傾斜面170bで反射して受光素子94に入射(光路203)する。つまり、プリズム170内で光が2回全反射することで、発光素子92から入射した光の進行方向が180度反転して、受光素子94に射出される。
【0028】
図6はインク室180内にインクIKが十分に存在する場合に、インクカートリッジ100のインク室180内に備えられたプリズム170が光を反射する様子について説明するための模式図である。図6に示すように、傾斜面170aおよび170bがインクIKと接触する程度にインクIKがインク室180内に存在する場合には、プリズム170とインクIKとの屈折率が同程度であるため、発光素子92から照射された光(光路201)の大部分は、図6に示すように傾斜面170aで屈折して、インクIK内で吸収される。したがって、傾斜面170bで反射して受光素子94に入射(光路203)する光の量は図5に示したインクの量が少なくなった場合と比べるとわずかである。
【0029】
ところで、受光素子94に入射する光は、上述したプリズム170の傾斜面170bでの反射光(光路203)以外の光を含む場合もある。検出部90の備える発光素子92が照射する光が図5および図6に示すプリズム170の底面に対して垂直に入射する光(光路201)のみでなく広い指向性をもつ場合には、発光素子92は、例えば、図5および図6に示す光路211のような光も照射する。このような場合においては、空洞部171やプリズム170の底面にも光が照射される(光路211)ため、照射光の一部が空洞部171やプリズム170の底面で反射して受光素子94に入射する(光路212)。このように、プリズム170の傾斜面170bで反射されて受光素子94に入射した光(光路203)とは異なる光(以下、ノイズ光ともいう。)は、インク室180内のインクIKの量に起因する光ではない。したがって、インクニアエンドの判定に影響を与える場合がある。
【0030】
しかも、キャリッジ20の往復動によって、キャリッジ20に装着されたインクカートリッジ100の備えるプリズム170と検出部90との位置関係が相対的に変化するため、ノイズ光の量は必ずしも一定ではない。そのため、この点でもインクニアエンドの判定に影響を与えるおそれがある。
【0031】
図7は、プリズム170と検出部90との位置関係の変化によって生じるノイズ光について説明するための図である。図7において、Y軸とは、キャリッジ20の主走査方向HDと平行して配置された検出部90の発光素子92と受光素子94とを通る軸である。また、図7において「Y=0」とは、プリズム170と、検出部90の備える発光素子92および受光素子94とが、以下の位置関係にあることを表す。まず、傾斜面170aと傾斜面170bで形成される交線であるプリズムの稜線(ridge line)からY軸に対して引いた垂線を「プリズム中心線M」とする。次に、検出部90の備える発光素子92および受光素子94の中心から、Y軸に引いた垂線(検出部90の備える発光素子92の発光部中心と受光素子94の受光部中心との間の中央を通る垂線)を「センサー中心線L」とする。「Y=0」とは、このプリズム中心線Mと、センサー中心線Lとが一致した位置を表している。図7においては、Y=0のときに発光素子92が存在する側をY軸のプラス側、受光素子94が存在する側をY軸のマイナス側とした。なお、印刷装置10においては、キャリッジ20がモーター30によって移動させられるが、以降の説明では、説明の便宜上プリズム中心線Mの位置を「Y=0」に固定して、センサー中心線Lを相対的に移動させることとする。そしてその際に、プリズム170と、検出部90の備える発光素子92および受光素子94との相対的な位置関係の変化によって生じるノイズ光の変化を説明する。
【0032】
図7(A)に示すように、空洞部171よりもセンサー中心線Lがマイナス側に位置する場合、プリズム170の底面からの反射光(光路214)がノイズ光として受光素子94に入射する。図7(B)に示すように、センサー中心線Lが空洞部171の内側にある場合、空洞部171からの反射光(光路212)が受光素子94に入射する。そして、図7(C)に示すよう空洞部171よりもセンサー中心線Lがプラス側に位置するようになると、再びプリズム170の底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射するようになる。このようにプリズム中心線Mとセンサー中心線Lとの位置関係によって、ノイズ光の発生状況が変化する。インクニアエンドを判定するための光(例えば、図7に示した光路203の光)にこうしたノイズ光が多く重畳すると、残量判定部42はインクIKのインクニアエンドを正確に判断することが困難となる。
【0033】
図8は、プリズム170と検出部90との相対的な位置が変化した場合のノイズ光の量の変化をシミュレーションした結果を示した図である。図8において「Y=0」とは、プリズム中心線Mと、センサー中心線Lとが一致した位置を表している。つまり「Y=0」の状態とは、プリズム170と、検出部90の備える発光素子92および受光素子94とが図7(B)の位置にある状態である。
【0034】
図8に示した閾値とは、印刷装置10において、残量判定部42がインクIKの有無を判定するために基準とする電流値である。閾値は、印刷装置10において適宜設定可能である。閾値より電流値が高い場合には、例えば、残量判定部42はインクニアエンド判定をし、閾値より電流値が低い場合にはインク有り(所定値より多い)と判定する。図8に示した有効検出幅とは、電流値が閾値以下となるセンサー中心線Lの移動幅を示している。残量判定部42は、プリズム170と検出部90とがその有効検出幅内に相対的に位置する場合に、インクニアエンドを正確に判定することができる。したがって、有効検出幅が広いと、キャリッジ20を移動させながらインクニアエンドを判定する場合に、主走査方向(Y軸方向)における検出部90とプリズム170の相対的な位置ずれに対して、検出範囲の許容値が大きくなる。
【0035】
図8に示す曲線aは、プリズム170と検出部90との位置関係が図7(A)、(B)および(C)に示したように変化する場合の、電流値を示している。この場合の有効検出幅Aは、後述する実施例に対応する曲線b、c、およびdの有効検出幅B、CおよびDよりも狭い。この原因の一つは、プリズム170の底面や空洞部171から広い範囲にわたってノイズ光を受光するからである。そこで、本実施例ではこのようなノイズ光を抑制するため、キャリッジ20に遮光マスク50を設けた。以降、遮光マスク50について説明する。
【0036】
A−4.遮光マスクを備えるキャリッジの構成:
図9は、遮光マスク50を備えるキャリッジ20について示した模式図である。図9は、インクカートリッジ100のインク室180内のプリズム170が配置されている場所において、YZ平面で切断した場合の断面図を模式的に示している。
【0037】
キャリッジ20には、キャリッジ20の底面部を開口した開口部21が設けられている。図10は、キャリッジ20の開口部21の付近を、検出部90側から見た様子を示した模式図である。開口部21は、キャリッジ20の往復動によってプリズム170が検出部90の直上に位置したときに、検出部90の備える発光素子92および受光素子94と対向する場所(Y軸の直上)に設けられている。
【0038】
キャリッジ20には、開口部21をプリズム170の稜線と平行する方向に分断して、遮光マスク50が設けられている。遮光マスク50は、インクカートリッジ100ごとに、開口部21の一部を塞いでおり、遮光マスク50の底面はXY平面と平行な面である。また、遮光マスク50は、プリズムの底面の一部を覆っており、インクカートリッジ100のキャリッジ20への装着位置に対応した開口部21の各々に対して略中央に設けられている。本実施例においては、遮光マスク50は、キャリッジ20と一体成形されている。遮光マスク50のY方向の幅は、空洞部171のY方向の幅よりも広い。遮光マスク50は、プリズム170の材質と異なり光を吸収する材質であり、本実施例では黒色で着色したポリスチレンで構成されている。したがって、プリズム170の底面や空洞部171での反射に起因するノイズ光と比べると、遮光マスク50での反射に起因するノイズ光の量は僅かである。なお、遮光マスク50は本願の「遮光部」に相当する。
【0039】
キャリッジ20は、さらに、検出部90が正常に動作しているか否かを検知するための、故障検知板81を備えている。故障検知板81は、本実施例では入射光を反射するミラーで形成されている。故障検知板81が検出部90の真上に位置するとき、発光素子92から故障検知板81に垂直に入射する光(光路201)は、入射した箇所で全反射するため、受光素子94に入射しない。一方、発光素子92から照射される光路211をもつ一部の照射光は、故障検知板81で反射して受光素子94に入射(光路219)する。なお、故障検知板81は本願の「反射板」に相当する。
【0040】
センサー故障検知部44は、キャリッジ20の備える故障検知板81を検出部90の上に移動させると、受光素子94に入射した光に基づいて、検出部90の異常を検知する。具体的には、センサー故障検知部44は、故障検知板81が検出部90の真上に位置するようにキャリッジ20を所定のタイミングで移動させ、発光素子92から故障検知板81に光を照射させる。センサー故障検知部44は、検出部90の備える受光素子94に入射した光量に基づく電流値が、あらかじめ定められた電流値よりも低下した場合(例えば受光素子94がインクミストで汚れたため十分に受光できていない場合や故障検知板がインクミスとで汚れたために入射光を反射できない場合)、検出部90に異常が生じていると判断する。また、受光素子94に入射した光量に基づく電流値が、あらかじめ定められた電流値よりも増加した場合(例えば、検出部90の電気回路に異常が生じている場合)、検出部に異常が生じていると判断する。このような場合、センサー故障検知部44は制御ユニット40に接続された表示パネル70や、印刷装置10にインターフェース72を介して接続されたコンピュータ60の表示画面に、検出部90の修理や、故障検知板81のクリーニングなどを促す情報を表示する、もしくは、表示するための指示や情報を出力する。このように、インクIKの残量が所定量より多いか所定量以下かを判定する際には不要な光(光路211)を、検出部90の異常の有無の判定に使用することができる。
【0041】
図11は、キャリッジ20が遮光マスク50を備える場合のノイズ光について示した図である。図11(B)に示すように、センサー中心線Lが遮光マスク50の内側にある場合、発光素子92から射出された光211は遮光マスク50に遮られるため、ノイズ光は受光素子94にはほとんど入射しない。発光素子92から射出された光211は、遮光マスク50で反射して受光素子94に入射するが(光路213)、プリズム170の底面や空洞部171での反射光(例えば、光路214)と比べると、その量はわずかである。また、発光素子92から射出される光の一部(光路211)や、プリズム底面170や空洞部171で反射した光(光路214)が、遮光マスク50の側壁で遮られる場合も、光路214をもつノイズ光は受光素子94に入射しない。図11(A)に示すように、遮光マスク50よりもセンサー中心線Lがマイナス側で発光素子92から射出された光211が遮光マスク50に遮られない場所に位置すると、プリズム170の底面からの反射光(光路214)がノイズ光として受光素子94に入射する。そして、図11(C)に示すように、遮光マスク50よりもセンサー中心線Lがプラス側で、プリズム底面170や空洞部171で反射した光(光路214)が、遮光マスク50の側壁で遮られなくなる位置にあると、プリズム170の底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射するようになる。
【0042】
このような遮光マスク50を備える場合の有効検出幅のシミュレーション結果を、図8に曲線bで示した。遮光マスク50を備える場合の有効検出幅Bは、遮光マスク50を備えない場合の有効検出幅Aと比較すると広い。これは、プリズム170底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射しない範囲(センサー中心線Lが、図11(A)よりプラス側で図11(C)よりもマイナス側)が、遮光マスク50を使用することによって広くなるからである。また、有効検出幅Bにおける電流値は、有効検出幅Aにおける電流値と比較して低い。これは、センサー中心線Lが、図11(A)よりプラス側で図11(C)よりもマイナス側に位置する場合は、遮光マスク50による比較的弱い反射光(光路213)のみが受光素子94に入射することになるためである。したがって、遮光マスク50を備える印刷装置10であれば、ノイズ光を低減して、遮光マスク50がない場合よりもインクの残存状態をより正確に検知することができる。これにより、インクカートリッジ100内に、印刷のために使用可能なインクIKがまだ十分に残っているにもかかわらずインクカートリッジ100の交換を要求されたり、インクIKが無いのにインク吐出動作を続けてインクヘッドにダメージを与えたりするといった問題を回避することができる。また、キャリッジ20と遮光マスク50が一体成形されているため、キャリッジ20が移動しても遮光マスク50の位置がキャリッジ20に対してずれることがない。したがって、キャリッジ20と遮光マスク50との位置あわせをしなくとも、インクの残存状態のより正確な検知が可能となる。さらに、比較的高価で鋭い指向角をもった発光素子を使わずとも、遮光マスク50を設けることでインクの残存状態を判定することができるので、印刷装置10の製造にかかるコストが低減する。
【0043】
B.第2実施例:
第1実施例では、遮光マスク50の底面(遮光マスク50の検出部90と対向する面)が平面(−Z方向と垂直な面)であることとした。これに対して第2実施例においては、遮光マスクの底面が傾斜している場合について説明する。図12は、キャリッジ20が傾斜付き遮光マスク51を備える場合のノイズ光について示した図である。傾斜付き遮光マスク51は、図12に示すように、センサー中心線Lとプリズム中心線Mとを揃えた場合に、発光素子92側に底面を向けて傾いている。傾斜付き遮光マスク51のY軸に対する横幅およびプリズム中心線Mに対する縦幅は、第1実施例の遮光マスク50と同じ幅である。傾斜付き遮光マスク51の底面の傾斜角度は、本実施例では45度である。具体的には、傾斜付き遮光マスク51の検出部90と対向する面と、Y軸とのなす角度は、45度の傾斜となっている。傾斜付き遮光マスク51の底面は、本願の「傾斜面」に相当する。
【0044】
第1実施例の遮光マスク50を備える場合と同様に、図12(B)に示すように、センサー中心線Lが傾斜付き遮光マスク51の内側にある場合、発光素子92から射出された光211は傾斜付き遮光マスク51に遮られるため、ノイズ光は受光素子94にはほとんど入射しない。発光素子92から射出された光211は、傾斜付き遮光マスク51の傾斜面で受光素子94へ入射する方向と異なる方向(光路215)へ反射する。また、発光素子92から射出される光(光路211)が傾斜付き遮光マスク51の側壁で遮られる場合も、光路214をもつノイズ光は受光素子94に入射しない。図12(A)に示すように、傾斜付き遮光マスク51よりもセンサー中心線Lがマイナス側で発光素子92から射出された光211が傾斜付き遮光マスク51に遮られない場所に位置すると、プリズム170の底面からの反射光(光路214)がノイズ光として受光素子94に入射する。そして、図12(C)に示すように、傾斜付き遮光マスク51よりもセンサー中心線Lがプラス側に位置すると、プリズム170の底面からの反射光(光路214)が傾斜付き遮光マスク51に遮られなくなるので、受光素子94に入射するようになる。
【0045】
傾斜付き遮光マスク51を備える場合の有効検出幅のシミュレーション結果を、図8に曲線cで示した。傾斜付き遮光マスク51を備える場合の有効検出幅Cは、傾斜付き遮光マスク51を備えない場合の有効検出幅Aと比較すると広い。これは、プリズム170底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射しない範囲(センサー中心線Lが、図12(A)よりプラス側で図12(C)よりもマイナス側)が、傾斜付き遮光マスク51を使用することによって広くなるからである。また、有効検出幅Cにおける電流値は、第1実施例の有効検出幅Bにおける電流値と比較して低い。これは、センサー中心線Lが、図12(A)よりプラス側で図12(C)よりもマイナス側に位置する場合、発光素子92から照射された光(光路211)は、傾斜付き遮光マスク51の傾斜面で受光素子94へ入射する方向と異なる方向(光路215)へ反射するためである。そのため、このような傾斜付き遮光マスク51を備える印刷装置10においては、閾値との比較がより容易になり、精度よくインクニアエンドを判断することができる。したがって、遮光マスクの底面に傾斜を設けるだけで、ノイズ光をより低減することができるので、簡単な設計の変更でより高い効果を得ることができる。
【0046】
なお、有効検出幅Cは、「Y=0」に対して非対称であり、プラス側の有効検出幅の方がマイナス側の有効検出幅よりも狭くなっている。これは、傾斜付き遮光マスク51が、図12に示すように発光素子92側へ傾斜面を向けており、プリズム170底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射するようになる位置(図12(C))が、遮光マスク50(図11(C))に比べて、プリズム170の空洞部171に近くなるためである。
【0047】
C.第3実施例:
第2実施例では、遮光マスクの底面が、センサー中心線Lとプリズム中心線Mとを揃えた場合に、発光素子92側に底面を向けて傾いている傾斜面であることとした。これに対して第3実施例においては、キャリッジの移動する方向と交差する方向を中心として対称な、2つの傾斜面をもつ遮光マスクについて説明する。
【0048】
図13は、キャリッジ20がM字形遮光マスク52を備える場合のノイズ光について示した図である。M字形遮光マスク52は、図13に示すように検出部90の備える発光素子92および受光素子94と対向する側にそれぞれ内側に傾斜する2つの傾斜面521、522をもつ。2つの傾斜面の角度は本実施例ではそれぞれ45度である。また、M字形遮光マスク52は、その底面がプリズム170の稜線とプリズム中心線Mとで形成される面に対して、対称の形状を有している。M字形遮光マスク52のY軸に対する横幅およびプリズム中心線Mに対する縦幅は、第1実施例の遮光マスク50および第2実施例の傾斜付き遮光マスク51と同じ幅である。
【0049】
上述した第1実施例の遮光マスク50および第2実施例の傾斜付き遮光マスク51を備える場合と同様に、図13(B)に示すように、センサー中心線LがM字形遮光マスク52の内側にある場合、発光素子92から射出された光211はM字形遮光マスク52に遮られるため、ノイズ光は受光素子94にはほとんど入射しない。また、第2実施例の傾斜付き遮光マスク51を備える場合と同様に、発光素子92から射出された光211は、M字形遮光マスク52のそれぞれの傾斜面521、522で反射して、受光素子94へ入射する方向と異なる方向へも反射する。したがって、受光素子94に入射するM字形遮光マスク52からの反射光(光路217)はわずかである。また、発光素子92から射出される光(光路211)がM字型遮光マスク52の側壁で遮られる場合も、光路214をもつノイズ光は受光素子94に入射しない。
【0050】
図13(A)に示すように、M字形遮光マスク52よりもセンサー中心線Lがマイナス側で発光素子92から射出された光211がM字形遮光マスク52に遮られない場所に位置すると、プリズム170の底面からの反射光(光路214)がノイズ光として受光素子94に入射する。そして、図13(C)に示すように、M字形遮光マスク52よりもセンサー中心線Lがプラス側で、プリズム底面170や空洞部171で反射した光(光路214)が、M字形遮光マスク52で遮られなくなる位置にあると、プリズム170の底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射するようになる。
【0051】
M字形遮光マスク52を備える場合の有効検出幅のシミュレーション結果を、図8に曲線dで示した。M字形遮光マスク52を備える場合の有効検出幅Dは、遮光マスクなしの際の有効検出幅Aと比較すると広い。これは、プリズム170底面からの反射光(光路214)が受光素子94に入射しない範囲(センサー中心線Lが、図13(A)よりプラス側で図13(C)よりもマイナス側)が、M字形遮光マスク52を使用することによって広くなるからである。したがって、このようなM字形遮光マスク52を備える印刷装置10においては、ノイズ光を低減して、M字型遮光マスク52がない場合よりもインクの残存状態をより正確に検知することができる。また、有効検出幅Dにおける電流値は、第1実施例の有効検出幅Bにおける電流値と比較して低い。これは、センサー中心線Lが、図13(A)よりプラス側で図13(C)よりもマイナス側に位置する場合、発光素子92から照射された光(光路211)は、M字形遮光マスク52の2つの傾斜面で受光素子94へ入射する方向と異なる方向へも反射するためである。したがって、第1実施例の遮光マスク50を備える印刷装置10よりも、M字形遮光マスク52を備える印刷装置10においては、閾値との比較がより容易になり、精度よくインクニアエンドを判断することができる。さらに、有効検出幅Dは、第2実施例の有効検出幅Cと異なりY軸の数値が0(Y=0)を基準として対称の幅を有している。これは、M字形遮光マスク52が傾斜付き遮光マスク51と異なり、プリズム170の稜線とプリズム中心線Mとで形成される面に対して、対称の形状を有しているからである。したがって、傾斜付き遮光マスク51を備える印刷装置10と比較して、インクカートリッジ100内のプリズム中心線Mと検出部90の備える発光素子92および受光素子94とのセンサー中心線Lとを正確に位置合わせしなくても、十分な精度でインクニアエンド判定ができる。そのため、残存状態の検出可能な範囲の設定が容易になり、印刷装置10の設計の自由度を高めることができる。
【0052】
D.変形例:
以上、本発明の種々の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取ることができる。例えば、以下のような変形が可能である。
【0053】
上述の実施例では、遮光マスク50はキャリッジ20と一体成形されているが、必ずしも一体で成型されていなくてもよい。例えば、キャリッジ20の開口部21と検出部90の間に遮光マスクが位置するように、光を遮光する部材をキャリッジ20や印刷装置10に取り付けてもよい。また、開口部21は、それぞれのインクカートリッジ100ごとに設けられていなくてもよい。図14は、キャリッジ20の下面に開口部22を一体的に設け、検出部90側から開口部22を見た様子を示した模式図である。遮光マスク58は、開口部22と検出部90との間に配置されている。このような開口部22であっても、遮光マスク58を配置することでプリズム170や空洞部171からのノイズ光を抑制することができる。遮光マスク58の配置方法は、図14に示した配置方法に限られず、プリズム170や空洞部171からのノイズ光を抑制するための場所に適宜設定可能である。
【0054】
上述の実施例では、故障検知板81は入射光211を反射するミラーで形成されているが、キャリッジ20の一部に反射材をコーティングすることによって形成してもよい。
【0055】
上述の実施例では、プリズム170には空洞部171が設けられているが、空洞部171は設けられていなくてもよい。
【0056】
傾斜付き遮光マスク51の傾斜面の傾斜角度は、上述の実施例で示した角度に限らない。図15は、傾斜付き遮光マスクの別の例を示した図である。図15に示した傾斜付き遮光マスク53は、発光素子92に向けて約20度傾斜している。このように、傾斜面の傾斜の角度は、遮光マスク50の底面の反射を抑制可能であれば、任意の角度に設定することができる。
【0057】
遮光マスク50は、キャリッジ20の往復動を干渉しない範囲で、検出部90に向けて、キャリッジ20の底面よりも突出していてもよい。図16は、キャリッジ20の底面よりも検出部90に向けて突出した遮光マスク54を示した図である。このような遮光マスク54であれば、キャリッジ20から突出していない遮光マスク50と比較して、プリズム170の底面からの反射光(例えば、図16に示す光路214)を遮光マスク54の側壁で遮断できる範囲が広くなるので、有効検出幅をより広くすることができる。
【0058】
遮光マスクの底面部は、M字形遮光マスク52とは異なる対称形状を採用することもできる。図17は、内側に向けてそれぞれ傾斜した傾斜面551、552の境界部に、凹状のくぼみを設けた遮光マスク55の一例を示した図である。また、図18は、底面部が対称に外側へ向けて傾斜した傾斜面561、562を備える遮光マスク56の一例を示した図である。このような遮光マスク55、56であっても、第3実施例と同様に、Y軸の数値が0(Y=0)を基準として対称の有効検出幅を得ることができる。
【0059】
上述の実施例では、検出部90の上をキャリッジ20が往復動することによりインク残存状態を測定しているが、検出部90が往復動するようにしてもよい。つまり、検出部90とキャリッジ20とが、相対的に往復動すればよい。
【0060】
上述した実施例で示したインクカートリッジ100以外の、他の任意の構成を有するインクカートリッジを採用することも可能である。図19は、インクカートリッジ100の別の構成を示す斜視図である。インクカートリッジ100cのインク収容部130cには、基板150cが傾斜して取り付けられていてもよい。また、プリズム170cは、レバー120c側に設けられていてもよい。また、インク供給口110cは、キャップやフィルム(図示せず)などによって封止されていてもよい。
【0061】
上述した実施例では、本発明を印刷装置とインクカートリッジとに適用した例を説明したが、本発明は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体消費装置に用いても良く、また、そのような液体を収容した液体容器にも適用可能である。また、本発明の液体容器は、微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体消費装置に流用可能である。「液滴」とは、上記液体消費装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう「液体」とは、液体消費装置が噴射させることができるような材料であれよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施例で説明したようなインクや、液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体消費装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する液体消費装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体消費装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体消費装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体消費装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体消費装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体消費装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…印刷装置
20…キャリッジ
21、22…開口部
27…傾斜付き遮光マスク
30…モーター
33…キャリッジモーター
35…印刷ヘッド
40…制御ユニット
42…判定部
44…センサー故障検知部
50、54、55、56、58…遮光マスク
51、53…傾斜付き遮光マスク
52…M字形遮光マスク
521、522、551、552、561、562…傾斜面
60…コンピュータ
70…表示パネル
72…インターフェース
81…故障検知板
90…検出部
92…発光素子
94…受光素子
100、100c…インクカートリッジ
101…底面
110、110c…インク供給口
120、120c…レバー
130、130c…インク収容部
150、150c…基板
170、170c…プリズム
170a、170b…傾斜面
171…空洞部
180…インク室
201、203、211、212、213、214、215、217、219…光路
A、B、C、D…有効検出幅
PA…印刷媒体
IK…インク
HD…主走査方向
VD…副走査方
FFC1、FFC2…ケーブル
L…センサー中心線
M…プリズム中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部と受光部とが並んで配置された検出部と、
液体を収容し、前記発光部から照射された光を前記液体容器内の液体の量に応じて前記受光部に向けて反射するプリズムが配置された液体容器と、
前記液体容器を着脱可能であり、前記液体容器が装着されたときに前記プリズムに対向する位置に開口部が設けられたキャリッジと、
前記キャリッジを前記発光部と前記受光部とが並ぶ方向に沿って移動させる駆動部と、
前記キャリッジの前記開口部に配置される遮光部と、を備える、液体消費装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体消費装置であって、
前記遮光部は、前記キャリッジの移動する方向と交差する方向に前記開口部を分断して設けられている、液体消費装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体消費装置であって、
前記プリズムは、前記検出部と対向する面の中央部に空洞部を備え、
前記キャリッジの移動する方向における前記遮光部の幅は、前記キャリッジの移動する方向における前記空洞部の幅よりも広い、液体消費装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一の請求項に記載の液体消費装置であって、
前記遮光部の前記検出部と対向する面は、前記液体容器の底面に対して傾斜した傾斜面である、液体消費装置。
【請求項5】
請求項4記載の液体消費装置であって、
前記遮光部の備える前記傾斜面は、前記遮光部と前記検出部とが対向したときに、前記発光部側に傾斜している、液体消費装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一の請求項に記載の液体消費装置であって、
前記遮光部の前記検出部と対向する面は、前記キャリッジの前記検出部と対向する面よりも前記検出部に向けて突出している、液体消費装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一の請求項に記載の液体消費装置であって、
前記遮光部の前記検出部と対向する面は、少なくとも2つの傾斜面を有し、前記少なくとも2つの傾斜面は前記キャリッジの移動する方向と交差する方向を中心として対称である、液体消費装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一の請求項に記載の液体消費装置であって、
前記キャリッジは反射板を備え、
前記検出部は前記発光部を用いて前記反射板に対して光を照射し、前記反射板から反射した反射光を前記受光部によって受光し、該受光した反射光に基づいて前記検出部の故障の有無を検出する、液体消費装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−99890(P2013−99890A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245115(P2011−245115)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】