説明

液体混合方法及び装置

【課題】コストを低減した制御装置により、粘性の低い液体と粘性の高い液体とを混合する場合であっても所望の比率で混合することができる。
【解決手段】複数の液体供給源T1,T2に接続する給液配管SP1,SP2を分岐させ、分岐管路を複数の混合タンクMT1,MT2に接続して第1液体と混合用液体とからなる液体を供給可能とし、混合タンクに供給された第1液体の積算流量を測定し、この測定値から混合タンクに供給することが必要な液体の積算流量を算出し混合用液体の理論上の必要量を求め、混合タンクに供給された混合用液体の積算流量を測定し、この測定値と混合用液体の理論上の必要量とから混合用液体の不足量を算出し、混合用液体の積算流量の測定値が混合用液体の理論上の必要量に対し不足する場合には、予め求めておいた混合用液体の不足量に対する流量制御弁の弁開度に基づいて流量制御弁の弁開度を制御し混合用液体を混合タンクに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の液体を所望の比率で混合するための液体混合方法及び装置に係り、特に果汁や水等の粘性の低い液体と果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性の高い液体とを所望の比率で混合するための液体混合方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、化粧品、薬品等の各種製造プラントにおいて、複数種類の液体、例えば2種類の液体原料を混合して液体製品を製造することが行われている。例えば、飲料製造プラントにおいては、2種類の液体原料をそれぞれ貯留タンクに貯留し、タンク内に貯留された液体原料をそれぞれ給液配管を介して混合タンクに供給し、混合タンクで混合した後に混合液を充填機等に供給することが行われている。2種類の液体原料を所望の比率に混合するために、各給液配管には流量計と流量制御弁とを設け、流量計の測定値に基づいて流量制御弁を制御するようにしている。2種類の液体の混合制御には、通常、PID制御を採用している。
【0003】
上述した飲料製造プラントにおいて、2種類の液体を混合する混合タンクが複数系列、例えば、2系列ある場合がある。2系列の場合を例に挙げて説明すると、2種類の液体を貯留した2つの貯留タンクと2つの混合タンクとを1対1で対応させてそれぞれ専用配管によって個別に接続する専用配管システムを採用する場合には、4本の専用配管及び4台の送液ポンプが必要になり、貯留タンクと混合タンクとが離間している場合には配管コストが上昇するという問題点がある。そこで、各貯留タンクに1本の給液配管を設け、混合タンクの直上流で分岐させ2本の分岐管路をそれぞれ混合タンクに接続する分岐配管システムの適用が考えられる。この場合には、給液配管が2本になり、送液ポンプも2台になるため、配管及びポンプのコストを低減することができるので、貯留タンクと混合タンクとが離間している場合には有効な配管システムとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−330643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、2つの貯留タンクにそれぞれ1本の給液配管を設け、各給液配管を混合タンクの直上流で分岐させ2本の分岐管路をそれぞれ混合タンクに接続する分岐配管システムを採用して混合タンクに2種類の液体を供給して混合する実験を繰り返し行った。この場合、各分岐管路に流量計と流量制御弁とを設け、分岐管路を流す目標とする流量比率にしたがってPID制御により流量制御弁を制御して2種類の液体を混合タンクに供給するようにしたものである。
【0006】
本発明者らは、種々の液体を用いて上述の実験を繰り返し行った結果、水や果汁とアルコールとを混合する場合のように、繊維質のものや固形物のものを含んでいない粘性の低い液体同士を混合する場合には、PID制御により所望の比率に混合することができるが、果汁や水等の粘性の低い液体と果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性の高い液体とを混合する場合には、果実繊維や果肉等の固形物が一方の系路で詰まったり、あるいはその逆に詰まりが突然解消される場合があり、流量制御が困難となるため、PID制御では果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性が高い液体を所望の比率で流すことができないという事態が生ずることを見出したものである。また、上述した果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性が高い液体を分岐管路で分流させる場合に、一方の管路に多量に流れ始めた場合に、多量の流れができた管路側に偏重して流れ続ける傾向があり、PID制御では調整が困難であることを見出したものである。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、複数の貯留タンク等の液体供給源にそれぞれ1本の給液配管を設け、各給液配管を複数に分岐させて複数の分岐管路を複数の混合タンクにそれぞれ接続して各混合タンクに複数種類の液体を供給可能とした配管システムにおいて、果汁や水等の粘性の低い液体と果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性の高い液体を所望の比率で混合することができる液体混合方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の液体混合方法は、第1液体を含む異なった種類の液体を供給する複数の液体供給源から複数の混合タンクの各々に複数種類の液体を供給してこれらの液体を所望の比率で混合する液体混合方法において、複数の液体供給源にそれぞれ接続された給液配管を複数に分岐させ、複数の分岐管路を複数の混合タンクにそれぞれ接続して各混合タンクに第1液体と第1液体と混合すべき1又は2以上の混合用液体とからなる複数種類の液体を供給可能とし、混合タンクに供給された第1液体の積算流量を測定し、この測定値から前記所望の比率にするために混合タンクに供給することが必要な液体の積算流量を算出して混合用液体の理論上の必要量を求め、混合タンクに供給された混合用液体の積算流量を測定し、この測定値と前記混合用液体の理論上の必要量とから混合用液体の不足量を算出し、前記混合用液体の積算流量の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量に対して不足量が生じた場合には、予め求めておいた混合用液体の不足量に対する流量制御弁の弁開度に基づいて流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体を混合タンクに供給し、前記混合用液体の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量以上であれば前記流量制御弁を全閉にすることを特徴とする。
【0009】
本発明の液体混合装置は、第1液体を含む異なった種類の液体を供給する複数の液体供給源から複数の混合タンクの各々に複数種類の液体を供給してこれらの液体を所望の比率で混合する液体混合装置において、複数の液体供給源にそれぞれ接続された給液配管を複数に分岐させ、複数の分岐管路を複数の混合タンクにそれぞれ接続して、各混合タンクに第1液体と第1液体と混合すべき1又は2以上の混合用液体とからなる複数種類の液体を供給可能とし、第1液体を流す分岐管路に設けられた流量計により測定された第1液体の流量に基づいて、混合用液体を流す分岐管路に設けられた流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体の積算流量を制御する制御装置を設け、前記制御装置は、混合タンクに供給された第1液体の積算流量の測定値から前記所望の比率にするために混合タンクに供給することが必要な液体の積算流量を算出して前記混合用液体の理論上の必要量を求め、混合タンクに供給された混合用液体の積算流量の測定値と前記混合用液体の理論上の必要量とから混合用液体の不足量を算出し、前記混合用液体の積算流量の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量に対して不足量が生じた場合には、予め求めておいた混合用液体の不足量に対する流量制御弁の弁開度に基づいて流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体を混合タンクに供給し、前記混合用液体の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量以上であれば前記流量制御弁を全閉にするようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、混合タンクに供給された第1液体の積算流量を測定し、この測定値から、第1液体と、第1液体と混合すべき1又は2以上の混合用液体とを所望の比率に混合するために混合タンクに供給することが必要な混合用液体の積算流量を算出して混合用液体の理論上の必要量を求め、この求めた混合用液体の理論上の必要量に対応した弁開度に流量制御弁を制御して混合用液体を混合タンクに供給し、次に混合タンクに供給された混合用液体の積算流量を測定し、この測定値と前記混合用液体の理論上の必要量とから混合用液体の不足量を算出し、混合用液体の測定値と混合用液体の理論上の必要量との間に不足量が生じた場合には、予め求めておいた混合用液体の不足量に対する流量制御弁の弁開度に基づいて流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体を混合タンクに供給し、前記混合用液体の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量以上であれば前記流量制御弁を全閉にするようにしたものである。
【0011】
本発明の好ましい態様は、前記第1液体は粘性の低い液体からなり、前記混合用液体は粘性の高い液体からなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の液体供給源が異なった種類の液体をそれぞれ貯留した複数の貯留タンクからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記複数の混合タンクが2又は3の混合タンクからなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記第1液体を流す分岐管路には、流量計と開閉弁が設置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記混合用液体を流す分岐管路には、前記流量制御弁と流量計が設置されていることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記給液配管が前記複数の混合タンクの直上流で複数に分岐していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記給液配管にポンプを設け、インバータ制御により該ポンプの回転数を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下に列挙する効果を奏する。
(1)第1液体の供給量により定まる混合用液体の供給量を所定時間毎に測定して不足量を求め、この混合用液体の不足量を補填することができるため、果汁や水等の粘性の低い第1液体と果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性の高い混合用液体とを混合する場合であっても、第1液体と混合用液体とを所望の比率で混合することができる。
(2)複数の液体供給源にそれぞれ接続された給液配管を複数の混合タンクの直上流で複数に分岐させ、複数の分岐管路を複数の混合タンクにそれぞれ接続して各混合タンクに第1液体と1又は2以上の混合用液体とからなる複数種類の液体を供給可能としたため、給液配管及び送液ポンプの必要数は、複数の供給液体の数と同数で足りるので、配管及びポンプに関するコストを低減することができ、液体供給源と混合タンクとが離間している場合に有効な配管システムとなる。
(3)複雑なPID制御を採用する必要がないため、制御装置が簡易になり、装置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の液体混合装置を備えた飲料製造プラントの構成例を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の液体混合装置を備えた飲料製造プラントの別の構成例であり、混合タンクを3個備えた例を示す概略図である。
【図3】図3は、本発明の液体混合装置を備えた飲料製造プラントの別の構成例であり、3つの液体供給源を備えた例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る液体混合方法及び装置の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。図1乃至図3において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の液体混合装置を備えた飲料製造プラントの構成例を示す概略図である。本実施形態においては、粘性の低い液体としての果汁や水等の第1液体と粘性の高い液体としての繊維状の成分や固形物等を含有した混合用液体(以下、第2液体と総称する)とを混合する場合を説明する。
【0015】
図1に示すように、飲料製造プラントは、液体供給源としての第1貯留タンクT1と第2貯留タンクT2とを備えている。第1貯留タンクT1には第1液体が貯留されており、第2貯留タンクT2には第2液体が貯留されている。第1貯留タンクT1には給液配管SP1が接続され、第2貯留タンクT2には給液配管SP2が接続されている。第1貯留タンクT1には第1液体供給系から粘性の低い第1液体が補充され、第2貯留タンクT2には2液体供給系から粘性の高い第2液体が補充されるようになっている。
【0016】
給液配管SP1には、第1貯留タンク側から下流側に向かって給液バルブSV1、送液ポンプP1が設置されている。給液配管SP1は下流端ですなわち混合タンクの直上流で第1分岐管BP11と第2分岐管BP21とに分岐しており、第1液体は第1分岐管BP11を介して第1混合タンクMT1に供給されるとともに第2分岐管BP21を介して第2混合タンクMT2に供給されるようになっている。第1分岐管BP11には流量計FM11と開閉弁AV1が設置されており、第2分岐管BP21には流量計FM21と開閉弁AV2が設置されている。
【0017】
一方、給液配管SP2には、第2貯留タンク側から下流側に向かって給液バルブSV2、送液ポンプP2が設置されている。給液配管SP2は下流端ですなわち混合タンクの直上流で第1分岐管BP12と第2分岐管BP22とに分岐しており、第2液体は第1分岐管BP12を介して第1混合タンクMT1に供給されるとともに第2分岐管BP22を介して第2混合タンクMT2に供給されるようになっている。第1分岐管BP12には流量計FM12と流量制御弁CV1が設置されており、第2分岐管BP22には流量計FM22と流量制御弁CV2が設置されている。各貯留タンクT1,T2からそれぞれ2つの混合タンクMT1,MT2に送液する場合、インバータ制御により送液ポンプP1,P2の回転数(回転速度)を制御することによって必要流量に対応して送液ポンプP1,P2の流量を制御している。
【0018】
第1混合タンクMT1および第2混合タンクMT2には、低液位(LL)を検出するレベル計LM1と高液位(LH)を検出するレベル計LM2とが設置されており、低液位(LL)と高液位(LH)を検出してタンク内の液位が低液位と高液位との間に制御されるようになっている。第1混合タンクMT1および第2混合タンクMT2は、供給された第1液体と第2液体とを撹拌して混合するための攪拌機5を備えている。そして、第1混合タンクMT1および第2混合タンクMT2で混合された混合液は、それぞれ充填機(図示せず)に供給されるようになっている。
【0019】
流量計FM11,FM12,FM21,FM22は、各分岐管BP11,BP12,BP21,BP22を流れる液体の流量を測定するものであり、制御装置10に接続されている。図1においては、流量計FM21および流量計FM22と制御装置10とを接続するラインは省略している。流量計FM11〜FM22には、電磁流量計、超音波流量計、差圧式流量計、質量流量計等の種々の形式の流量計を用いることができる。流量計FM11〜FM22は、流量計の形式を適宜選定することにより、体積流量(m/s,L/s等)又は質量流量(kg/s等)を測定することができる。また、流量制御弁CV1,CV2は、空気圧で作動する自動制御弁からなり、制御装置10に接続されている。図1においては、流量制御弁CV2と制御装置10とを接続するラインは省略している。
制御装置10は、流量計FM11,FM12,FM21,FM22の測定値に基づいて流量制御弁CV1,CV2の弁開度を制御するように構成されている。
【0020】
次に、図1に示す飲料製造プラントにおける液体混合装置の動作について説明する。
給液バルブSV1,SV2を開き、送液ポンプP1,P2を運転するとともに、開閉弁AV1,AV2を開き、流量制御弁CV1,CV2の弁開度を制御することにより、第1貯留タンクT1内の第1液体は給液配管SP1を経て第1分岐管BP11と第2分岐管BP21とに分流した後に第1混合タンクMT1と第2混合タンクMT2に供給され、第2貯留タンクT2内の第2液体は給液配管SP2を経て第1分岐管BP12と第2分岐管BP22とに分流した後に第1混合タンクMT1と第2混合タンクMT2に供給される。
【0021】
第1混合タンクMT1に供給される第1液体の流量は流量計FM11により測定され、第2混合タンクMT2に供給される第1液体の流量は流量計FM21により測定される。第1分岐管BP11および第2分岐管BP21に設置された開閉弁AV1,AV2は、開閉機能しかなく、流量制御機能を持たないので、第1分岐管BP11および第2分岐管BP21を流れる第1液体の流量を制御することはできない。しかしながら、第1分岐管BP12および第2分岐管BP22に設置された流量制御弁CV1,CV2は、弁開度を制御することにより第2液体の流量を制御することができる。したがって、第1混合タンクMT1側の第1混合系においては、流量計FM11により測定された第1液体の流量に基づいて流量制御弁CV1の弁開度を制御して第2液体の流量を制御することにより、第1液体と第2液体とを所望の比率で混合することができる。また、第2混合タンクMT2側の第2混合系においても、流量計FM21により測定された第1液体の流量に基づいて流量制御弁CV2の弁開度を制御して第2液体の流量を制御することにより、第1液体と第2液体とを所望の比率で混合することができる。
【0022】
次に、第1液体と第2液体とを所望の比率で混合するための制御方法について説明する。第1混合タンクMT1側の第1混合系と第2混合タンクMT2側の第2混合系とは、同一の制御方法であるため、第1混合系のみについて説明する。制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)を備え、CPUによって各種数値計算、記憶等の情報処理および機器制御を行って、流量計FM11により測定された第1液体の流量に基づいて流量制御弁CV1の弁開度を制御して第2液体の流量を制御することにより、以下に述べる方法によって第1液体と第2液体とを所望の比率で混合することができる。
第1液体を第1分岐管BP11を介して第1混合タンクMT1に供給し、流量計FM11により第1分岐管BP11から第1混合タンクMT1に所定時間(例えば3秒を1サイクルとする)内に供給された第1液体の流量を1サイクル分測定した積算流量を測定値V1(I)(流量の単位はリットル(L)とし、以下省略する)として記憶する。
【0023】
一方、第2液体の理論上必要とされる流量V2(Q)は、第1液体の積算流量の測定値V1(I)に対して所定の混合比率(ボリューム%)を乗じて算出する。例えば、第1液体に対して5%のボリューム比率を設定して第2液体を混合する場合、第2液体の理論上の必要流量V2(Q)は、第1液体の積算流量V1(I)に対して、V2(Q)=0.05×V1(I)と算出される。この第2液体の理論上の必要量は、例えばリットルを単位とした場合小数点以下4桁程度まで算出する。
【0024】
第1混合タンクMT1には、第1液体の供給と同時に第2液体が供給される。そして、第1分岐管BP12から第1混合タンクMT1に所定時間内に供給された第2液体の積算流量を流量計FM12により測定し、V2(I)として記憶する。
【0025】
次に、第2液体の理論上の必要流量V2(Q)(=0.05×V1(I))から実際に第1混合タンクMT1に投入された第2液体の積算流量V2(I)を減算した不足量V2(Q)−V2(I)(=0.05×V1(I)−V2(I))をサイクル毎に算出する。
【0026】
算出した第2液体の不足量に対する流量制御弁CV1の弁開度は、以下の表1で示すように予め求めておき、テーブルとして記憶している。表1においては、第2液体の不足量(リットル)に対する流量制御弁CV1の弁開度を百分率(%)で示している。
【表1】

このように、第2液体の理論上の必要流量に対して測定値(実測値)が少なくて不足量が生じた場合には、表1から第2液体の不足量に対応した流量制御弁CV1の弁開度に制御する。これによって、第1混合タンクMT1には、第1液体の積算流量の測定値に対応した第2液体の必要流量に前記不足量を加味して投入する。次に、制御開始からの第1液体のトータル積算流量を測定し、この測定値をV1(I)として記憶し、前述と同様に第2液体の理論上の必要流量V2(Q)を求め、かつ制御開始からの第2液体のトータル積算流量V2(I)を測定し、再びV2(Q)−V2(I)(=0.05×V1(I)−V2(I))の計算を行い、不足量を算出する。
【0027】
以下、前記不足量に対応した流量制御弁CV1の弁開度を表1から求め、先の手順と同様の手順で、不足量を加味した第2液体の液体量が供給される。その後、この手順を繰り返すことにより、第1液体と第2液体とを所望の比率で第1混合タンクMT1に供給して混合することができる。
【0028】
一方、第2液体の測定値と第2液体の理論上の必要量が等しいか、または第2液体の測定値が第2液体の理論上の必要量より大きければ、流量制御弁CV1を全閉にし、3秒の1サイクル分だけ、第1液体のみ供給し、第2液体は供給しない。そして、次の3秒のサイクル、またはその次の3秒のサイクルの測定の際に第2液体が不足して不足量が出れば、流量制御弁を開いて表1に基づいて流量制御弁CV1の弁開度を制御する。
このように、第1液体と第2液体とを第1供給タンクMT1に供給して混合している間に、混合液は第1供給タンクMT1から連続的に充填機に供給されている。
【0029】
従来にあっては、2つの貯留タンクにそれぞれ1本の給液配管を設け、各給液配管を混合タンクの直上流で分岐させ2本の分岐管路をそれぞれ混合タンクに接続する配管システムにおいて、各分岐管路に流量計と流量制御弁とを設け、分岐管路を流す目標とする流量比率にしたがってPID制御により流量制御弁を制御して2種類の液体を混合タンクに供給するようにしたが、果汁や水等の粘性の低い液体と果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性の高い液体を混合する場合には、果実繊維や果肉等の固形物が一方の系路で詰まったり、あるいはその逆に詰まりが突然解消される場合があり、流量制御が困難となるため、PID制御では粘性が高い液体を所望の比率で流すことができないという事態が生じた。また、上述した果実繊維や果肉等の固形物を含んだ液体を分岐管路で分流させる場合に、一方の管路に多量に流れ始めた場合に、他方の管路の流量制御弁を全開にしても多量の流れができた一方の管路側に偏重して流れ続ける傾向があり、PID制御では調整が困難であった。
【0030】
本発明は、所定時間内に第1液体を実際に混合タンクに供給した測定値に基づいて第2液体の理論上の必要量を求め、この理論上の必要量に対応した弁開度に流量制御弁を制御して第2液体を前記所定時間と同一の時間だけ混合タンクに供給した後に、第2液体を実際に混合タンクに供給した量を測定し、この測定値と前記理論上の必要量とから第2液体の不足量を算出して、この第2液体の不足量に対応した弁開度に流量制御弁を制御して第2液体を混合タンクに供給するようにしたものである。
【0031】
本発明によれば、第2液体の不足量を次のサイクルで補填することができるため、果汁や水等の粘性の低い第1液体と果実繊維や果肉等の固形物を含んだ粘性の高い第2液体とを混合する場合であっても所望の比率で混合することができる。
【0032】
図2は、本発明の液体混合装置を備えた飲料製造プラントの別の構成例を示す概略図である。図2に示す本実施形態においては、図1に示す実施形態と比較して混合タンクが1個増え3個存在し、給液配管も3つに分岐し3個の分岐管路が存在する。その他の構成は図1に示したものと同一である。
図2に示す実施形態においては、給液配管SP1は下流端ですなわち混合タンクの直上流で第1分岐管BP11と第2分岐管BP21と第3分岐管BP31とに分岐しており、第1液体は第1分岐管BP11を介して第1混合タンクMT1に供給されるとともに第2分岐管BP21を介して第2混合タンクMT2に供給され、第3分岐管BP31を介して第3混合タンクMT3に供給されるようになっている。第1分岐管BP11には流量計FM11と開閉弁AV1が設置されており、第2分岐管BP21には流量計FM21と開閉弁AV2が設置されており、第3分岐管BP31には流量計FM31と開閉弁AV3が設置されている。
【0033】
給液配管SP2は下流端ですなわち混合タンクの直上流で第1分岐管BP12と第2分岐管BP22と第3分岐管BP32とに分岐しており、第2液体は第1分岐管BP12を介して第1混合タンクMT1に供給されるとともに第2分岐管BP22を介して第2混合タンクMT2に供給され、第3分岐管BP32を介して第3混合タンクMT3に供給されるようになっている。第1分岐管BP12には流量計FM12と流量制御弁CV1が設置されており、第2分岐管BP22には流量計FM22と流量制御弁CV2が設置されており、第3分岐管BP32には流量計FM32と流量制御弁CV3が設置されている。
【0034】
図2に示す飲料製造プラントにおける液体混合装置の動作は、図1における動作と同様である。
図3は、本発明の液体混合装置を備えた飲料製造プラントの別の構成例を示す概略図である。図3に示す実施形態においては、図1に示す実施形態と比較して、第2液体供給系が1個増え、第2液体A供給系と第2液体B供給系が存在する。すなわち3つの液体供給源を有している。その他の構成は図1に示したものと同一である。
図3に示す実施形態においては、第1液体と2種類の第2液体(第2液体Aと第2液体B)の合計3種類の液体を、各混合タンクMT1,MT2に所望の混合比率で混合することができる。この場合、第1液体を基準として、第2液体Aを所定の比率で混合し、第2液体Bを所定の比率で混合する。例えば、第1液体に対して、第2液体Aを5%の比率で、第2液体Bを3%の比率で混合する。
図3に示す飲料製造プラントにおける液体混合装置の動作は、図1に示す装置の動作と同様である。すなわち、図1の実施形態における「第2液体」の供給方法、流量測定、理論流量値算出、不足量算出、必要量算出、液体混合等は、図3の実施形態においては「第2液体A及び第2液体B」の供給方法、流量測定、理論流量値算出、不足量算出、必要量算出、液体混合等となる。したがって、第1液体を基準として、第2液体Aが所望の必要量混合されるように制御されるとともに、第2液体Bが所望の必要量混合されるように制御されることになる。
図1及び図3には2個の混合タンクを用いる場合を示し、図2には3個の混合タンクを用いる場合を示したが、4個以上の混合タンクを用いてもよい。その場合には、各混合タンクの直上流で給液配管を混合タンクの数に合わせて複数に分岐させ、複数の分岐管路を各混合タンクに各々接続する。
【0035】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
5 攪拌機
10 制御装置
AV1,AV2,AV3 開閉弁
BP11,BP12,BP21,BP22,BP31,BP32,BP12A,BP22A,BP12B,BP22B 分岐管
CV1,CV2,CV3,CV1A,CV2A,CV1B,CV2B 流量制御弁
FM11,FM12,FM21,FM22,FM31,FM32,FM12A,FM22A,FM12B,FM22B 流量計
LM1,LM2 レベル計
MT1,MT2,MT3 混合タンク
P1,P2,P2A,P2B 送液ポンプ
SP1,SP2,SP2A,SP2B 給液配管
SV1,SV2,SV2A,SV2B 給液バルブ
T1,T2,T2A,T2B 貯留タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体を含む異なった種類の液体を供給する複数の液体供給源から複数の混合タンクの各々に複数種類の液体を供給してこれらの液体を所望の比率で混合する液体混合方法において、
複数の液体供給源にそれぞれ接続された給液配管を複数に分岐させ、複数の分岐管路を複数の混合タンクにそれぞれ接続して各混合タンクに第1液体と第1液体と混合すべき1又は2以上の混合用液体とからなる複数種類の液体を供給可能とし、
混合タンクに供給された第1液体の積算流量を測定し、この測定値から前記所望の比率にするために混合タンクに供給することが必要な液体の積算流量を算出して混合用液体の理論上の必要量を求め、
混合タンクに供給された混合用液体の積算流量を測定し、この測定値と前記混合用液体の理論上の必要量とから混合用液体の不足量を算出し、
前記混合用液体の積算流量の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量に対して不足量が生じた場合には、予め求めておいた混合用液体の不足量に対する流量制御弁の弁開度に基づいて流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体を混合タンクに供給し、前記混合用液体の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量以上であれば前記流量制御弁を全閉にすることを特徴とする液体混合方法。
【請求項2】
前記第1液体は粘性の低い液体からなり、前記混合用液体は粘性の高い液体からなることを特徴とする請求項1記載の液体混合方法。
【請求項3】
前記複数の液体供給源は、異なった種類の液体をそれぞれ貯留した複数の貯留タンクからなることを特徴とする請求項1又は2記載の液体混合方法。
【請求項4】
前記複数の混合タンクは、2又は3の混合タンクからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体混合方法。
【請求項5】
前記第1液体を流す分岐管路には、流量計と開閉弁が設置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体混合方法。
【請求項6】
前記混合用液体を流す分岐管路には、前記流量制御弁と流量計が設置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の液体混合方法。
【請求項7】
前記給液配管は、前記複数の混合タンクの直上流で複数に分岐していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の液体混合方法。
【請求項8】
前記給液配管にポンプを設け、インバータ制御により該ポンプの回転数を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の液体混合方法。
【請求項9】
第1液体を含む異なった種類の液体を供給する複数の液体供給源から複数の混合タンクの各々に複数種類の液体を供給してこれらの液体を所望の比率で混合する液体混合装置において、
複数の液体供給源にそれぞれ接続された給液配管を複数に分岐させ、複数の分岐管路を複数の混合タンクにそれぞれ接続して、各混合タンクに第1液体と第1液体と混合すべき1又は2以上の混合用液体とからなる複数種類の液体を供給可能とし、
第1液体を流す分岐管路に設けられた流量計により測定された第1液体の積算流量に基づいて、混合用液体を流す分岐管路に設けられた流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体の流量を制御する制御装置を設け、
前記制御装置は、
混合タンクに供給された第1液体の積算流量の測定値から前記所望の比率にするために混合タンクに供給することが必要な液体の積算流量を算出して前記混合用液体の理論上の必要量を求め、
混合タンクに供給された混合用液体の積算流量の測定値と前記混合用液体の理論上の必要量とから混合用液体の不足量を算出し、
前記混合用液体の積算流量の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量に対して不足する場合には、予め求めておいた混合用液体の不足量に対する流量制御弁の弁開度に基づいて流量制御弁の弁開度を制御して混合用液体を混合タンクに供給し、前記混合用液体の測定値が前記混合用液体の理論上の必要量以上であれば前記流量制御弁を全閉にするようにしたことを特徴とする液体混合装置。
【請求項10】
前記第1液体は粘性の低い液体からなり、前記混合用液体は粘性の高い液体からなることを特徴とする請求項9記載の液体混合装置。
【請求項11】
前記複数の液体供給源は、異なった種類の液体を貯留した複数の貯留タンクからなることを特徴とする請求項9又は10記載の液体混合装置。
【請求項12】
前記複数の混合タンクは、2又は3の混合タンクからなることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の液体混合装置。
【請求項13】
前記給液配管は、前記複数の混合タンクの直上流で複数に分岐していることを特徴とする請求項9乃至12のいずれか1項記載の液体混合装置。
【請求項14】
前記給液配管にポンプを設け、インバータ制御により該ポンプの回転数を制御することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項記載の液体混合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126565(P2011−126565A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286200(P2009−286200)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(392032100)キリンエンジニアリング株式会社 (54)
【出願人】(509347262)株式会社藤原電機製作所 (1)
【Fターム(参考)】