説明

液体混合機構

【課題】簡単な構造で、配管を通過する水に対する薬液等の他の液体を混合する際の混合量を簡易な操作で制御できる液体混合機構を提供する。
【解決手段】管本体100に形成される細径部113よりも上流側に流量調整孔114を設け、その開口量を調整する開口量調整部材115を設けている。このため、開口量調整部材115によって流量調整孔114の開口量を調整することにより、流量調整孔114から流出する水の流出量が変化する。この水の流出量を調整することで、混合液体用導入路120から吸引される他の液体の混合量を供給水量に拘わらず安定化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物に飲水を供給する際、水供給管を通過する水に、薬液等の他の混合液体を所望量混合する液体混合機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、養豚、養鶏、乳牛などを飼育する際に、疾病予防や栄養管理等のために、抗菌性物質やビタミン剤などの薬液を、飲水に混合して投与する。上記の水溶性薬剤の混合液体を混合するために、液体混合機構が従来から開発されている。
【0003】
従来の液体混合機構としては、例えば、特許文献1に示されている。
すなわち、特許文献1の液体混合機構は、飲水用の配管系に対して、水溶性薬剤導入用の支管路を接続すると共に、混合弁を配設して所定量の薬液を投入するものである。
【0004】
混合弁としては、配管系に接続される、液体流入孔と液体吐出孔とが形成された外枠体と、該外枠体に、回転可能に収納装填されたバルブ本体とで構成される。バルブ本体には、第1の液体通過孔と第2の液体通過孔が、回転中心を挟んで略平行に形成されている。このバルブ本体を回転することによって、第1の液体通過孔と第2の液体通過孔が、前記液体流入孔と前記液体吐出孔に連通可能に切り替えられる。
【0005】
前記第1の液体通過孔は、ストレート孔である。前記第2の液体通過孔は、略中央部の孔径が、最も細くなるテーパ状に形成されている。さらに、薬液などの他の液体(混合液体)を導入する混合液体導入孔が、前記第2の液体通過孔の略中央部よりも液体吐出孔側の孔壁適宜位置に穿設されている。前記混合液体導入孔は、混合液体導入路である給液チューブを経て貯留タンクに連通されている。
【0006】
前記第1の液体通過孔では、単に水のみを供給するときに使用される。一方、前記第2の液体通過孔では、水に薬液等の他の液体(混合液体)を混合するときに使用される。すなわち、水が最も細い孔径となっている略中央部を通過して大径の部位に至る過程で混合液体導入孔付近が負圧となり、給液チューブ及び混合液体導入孔を経て吸引され、第2の液体通過孔を通過する水に混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3179541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の液体混合機構においては、バルブ本体を回転することによって、ストレート孔の第1の液体通過孔と、中途に細い孔径の部位を有する第2の液体通過孔が、前記液体流入孔と液体吐出孔とに連通可能に切り替えられる。従って、薬液等を混合する場合には、第2の液体通過孔に切り替えを行うだけでよい。
【0009】
ところで、牛等家畜の水飲み場となる水槽は、幅が数十cmで、長さが数十cm〜2m程度で、飼育施設に複数設置されており、水の供給源から分枝された水供給管が各水槽に接続され、各水槽に接続される水供給管毎に上記の液体混合機構が設けられる。もちろん、薬液等の混合液体の貯留タンクも水槽毎に設けられる。各水供給管にはボールタップなどが設けられ、水槽の水位に応じた量の水が供給されるように制御されるが、水槽内の水位が低ければより多くの水が供給され、水位が高くなれば供給される水の量は少なくなる。薬液等の混合液体は、それに伴い、水位が低くなればより多く混合され、水位が高くなれば混合量が少なくなる。従って、薬液等の混合液体の混合量が水槽内の水位によって変化するため一定にならない。この場合、貯留タンクあるいは混合液体導入路に薬液等の導入量自体を制御する手段を付設することも考えられるが、その制御を水圧に応じたものとするには構造が複雑となりコストも高くなる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、簡単な構造で、水供給管を通過する水に対する薬液等の他の液体を混合量を容易に調整でき、混合量を所望の量で安定化することが可能な液体混合機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の液体混合機構は、水供給管を通過する水に他の液体を混合する液体混合機構であって、前記水供給管に連結される管本体を有し、前記管本体内に、水の流れ方向に沿って狭まる上流側の第一テーパ部と、水の流れ方向に沿って拡がる下流側の第二テーパ部と、前記第一テーパ部と第二テーパ部との間の細径部とを備えた主流路が形成されており、前記細径部及び第二テーパ部が形成されている範囲内のいずれかの位置における、前記管本体の周壁に、他の液体を導入する混合液体用導入路が接続され、さらに、前記細径部よりも上流側において、前記管本体の周壁を貫通する流量調整孔が形成されていると共に、この流量調整孔の開口量を調整する開口量調整部材が前記管本体に設けられ、前記開口量調整部材により前記流量調整孔の開口量を調整して、前記水供給管から供給される供給水量の変化に応じて前記流量調整孔から水を流出可能とし、前記細径部を通過して第二テーパ部へ流れる水量を及び前記混合液体用導入路からの他の液体の導入量を調整することを特徴とする。
【0012】
前記開口量調整部材が、前記管本体における前記流量調整孔の周囲に装着され、円周方向に沿った開口部を有する筒状体からなり、この開口部と前記流量調整孔との重なり面積を調整して、前記流量調整孔から流出する水量を調整する構造であることが好ましい。前記流量調整孔は、前記管本体の周壁に所定の角度の範囲に亘って形成された展開状態で略方形の孔であることが好ましい。前記開口量調整部材に形成された開口部が、展開状態で略三角形の孔であることが好ましい。前記第二テーパ部内に、乱流発生部材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、管本体に形成される細径部よりも上流側に流量調整孔を設け、その開口量を調整する開口量調整部材を設けている。開口量調整部材によって流量調整孔の開口量を所定の位置に設定すると、流量調整孔からはその開口量に応じた量の水が流出する。この水の量は、管本体内を流れる水量が多ければ流出量も多くなり、水量が少なければ流出量も少なくなる。その結果、第一テーパ部から細径部を通過して第二テーパ部に流出する水量は、水供給管から供給される水量が変化してもあまり変わらないことになる。水供給管から供給される水量は、水槽内の水位によって変化する。すなわち、水位が低いほど多く供給され、水位が高くなるほど供給量は減少するが、本発明の液体混合機構を設ければ、水供給管からの供給水量に拘わらず、第一テーパ部から細径部を通過して第二テーパ部に流出する水量がほぼ安定化するため、混合液体導入路における主流路との接続口付近に生じる負圧値は、水供給管からの供給水量が変化しても比較的安定化した値となる。従って、薬液等の混合液体の混合量を、水槽内の水位に拘わらず、安定化することができる。これにより、混合液体の貯液タンクの消費スピードも安定化し、貯液タンクの交換時期や補充時期などの管理を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る液体混合機構を水槽に取り付けた状態の要部を示した図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図2】図2は、上記実施形態の液体混合機構を水槽に取り付けた状態を示した斜視図である。
【図3】図3は、上記実施形態の液体混合機構の要部を示す斜視図である。
【図4】図4は、上記実施形態の液体混合機構の管本体を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のA−A線断面図、(d)は(c)のB−B線断面図である。
【図5】図5は、上記実施形態の液体混合機構の開口量調整部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は(b)のC−C線断面図、(d)は展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る液体混合機構10は、図1及び図2に示すように、水供給管20に連結されて設けられる。水供給管20は、例えば、家畜の飲料用の水を、家畜の水飲み場の水槽30まで供給するものであり、液体混合機構10は、この水供給管20を流れる水に、他の液体、例えば、家畜に対する疾病予防や栄養管理等のための抗菌性物質やビタミン剤などの薬液(以下、本実施形態では「混合液体」という)を混合する機構である。
【0016】
具体的には、水供給管20は、水槽30の壁部30aを外部から内部に貫通して設けられる。水供給管20の端部には、ボールタップ21(本実施形態では、このボールタップ21も水供給管20の一部を構成するものとする)が接続されており、ボールタップ21における水流出口21aに本実施形態に係る液体混合機構10が接続される。液体混合機構10は、管本体100を備え、管継ぎ手100aを介してボールタップ21の水流出口21aに連結される。
【0017】
ボールタップ21は、水槽30内に配置されるボール21bが設けられ、水槽30内の水位に応じて上下動し、所定の水位に至ると、ボールタップ21内の弁を閉弁させ、水供給管20からの水の供給をストップさせ、水位が低下すると弁を開弁させる。
【0018】
液体混合機構10は、上記のように管本体100をボールタップ21に連結して配置されるが、管本体100内には、主流路110が形成されている(図4参照)。主流路110は、図4(c)に示すように、管継ぎ手100aと接続される上流側の端部110aから所定長さ内方に向かった部位に、水の流れ方向に沿って内径が次第に狭くなる第一テーパ部111が形成されている。この第一テーパ部111に対して下流側に所定間隔をおいた部位に、水の流れ方向に沿って内径が次第に大きくなる第二テーパ部112が形成されており、第一テーパ部111と第二テーパ部112との間が最も狭い細径部113となっている。
【0019】
管本体100の周壁には、混合液体を導入するための混合液体導入路120が貫通形成されている。混合液体導入路120の主流路110に臨む接続口120aは、細径部113及び第二テーパ部112が形成されている範囲内のいずれかの位置となるように形成される。好ましくは、細径部113と第二テーパ部112との境界付近に接続口120aが臨むように形成される。
【0020】
混合液体導入路120には、薬液等を貯留した混合液体の貯留タンク122と結ぶ導入チューブ121が接続され、この導入チューブ121を介して、混合液体が取り込まれる。
【0021】
細径部113よりも上流側における管本体100の周壁には、流量調整孔114が形成されている。流量調整孔114は、本実施形態では、管本体100の円周方向最下端部を中心として断面視で左右に所定の角度で開口されている(図4(d)参照)。また、展開状態では略方形に形成されている(図4(a)参照)。
【0022】
流量調整孔114が形成されている範囲の管本体100の周囲には、開口量調整部材115が装着される(図3参照)。開口量調整部材115は、図5に示したように、管本体100の周囲に装着可能な内径を有する筒状体からなり、その厚さ方向に貫通する開口部115aが形成されている。開口部115aは、筒状体の円周方向に沿って開口形成されており、開口部115aと流量調整孔114との重なり面積の大きさに応じて、水が流出される。本実施形態では、開口部115aを展開状態で略三角形に開口されている。上記した流量調整孔114は略方形に形成されているため、略三角形の開口部115aの頂点側から底辺側に向かって両者を合わせていくと、重なり面積が徐々に大きくなっていく。従って、この重なり面積を調整することにより主流路110から外部に流出する水量を調整できる(図3参照)。
【0023】
本実施形態によれば、水供給管20を介して所定量の水を供給する。水は管本体100内の主流路110を通過し、第一テーパ部111から細径部113に向かい、細径部113を通過して細径部113より大径の第二テーパ部112に至る。これにより、混合液体導入路120の接続口120aが、細径部113と第二テーパ部112との境界に形成されているため、該接続口120a付近が負圧となり、混合液体が主流路110内に導入される。
【0024】
従って、開口量調整部材115の開口部115aが流量調整孔114と全く重なっていない状態が、細径部113を通過して第二テーパ部112に向かう流量が最も大きくなり、接続口120a付近の圧力は負圧側に最大となり混合液体の導入量が最も多くなる。混合液体の濃度を低下させたい場合には、開口量調整部材115を所定量回転させ、開口部115aと流量調整孔114との重なり面積の大きさを調整する。それにより、この重なり面積に応じた量の水が主流路110から外部に流出する。その結果、第一テーパ部111から細径部113を通過して第二テーパ部112へ向かう水量は少なくなり、接続口120a付近の負圧の絶対値はそれに応じて小さくなり、混合液体の導入量が少なくなる。なお、管本体100は、平面視で水槽30内に位置しているため、流量調整孔114及び開口量調整部剤115の開口部115aから流出する水は水槽30内に貯まっていく。
【0025】
逆に言うと、次のとおりである。開口量調整部材115を所定量回転させ、流量調整孔114の開口量を所定の大きさに設定したとする。この状態で、まず、水槽30内の水位が比較的多い状態では、ボールタップ21内の弁はあまり大きく開いてはいないため、水供給管20からの相対的に供給水量が少ない。供給水量が少ない場合には、それに応じて、流量調整孔114からの流出量も少ないため、その多くが第一テーパ部111から細径部113に向かい、さらに細径部113を通過して第二テーパ部112に至る。一方、水槽30内の水位が低下した状態では、ボールタップ21内の弁が上記よりも大きく開くため、水供給管20からの供給水量は相対的に増加する。供給水量が増加すると、それに応じて、流量調整孔114からの流出量が多くなり、流出しなかった分の水量が第一テーパ部111から細径部113に向かい、さらに細径部113を通過して第二テーパ部112に至る。すなわち、第一テーパ部111、細径部113及び第二テーパ部112へと通過する水量は、結果的には、供給水量の多少に拘わらず安定した量に近くなる。従って、接続口120a付近の負圧値はこの通過水量によって変化するため、通過水量が安定に近くなればなるほど、薬液等の混合液体の混合量が安定化する。
【0026】
なお、開口量調整部材115による流量調整孔114の開口量は、当該水槽30において、薬液等の混合液体を混合したいと所望する最低水位から最高水位までの間の供給水量に応じて調整され、この最低水位から最高水位までの間で増減する供給水量の範囲内で、第一テーパ部111、細径部113及び第二テーパ部112へと通過する水量が大きく変化しないように設定される。
【0027】
本実施形態によれば、このように、開口量調整部材115を管本体100の周囲で回転させて開口部115aと流量調整孔114との重なり面積を調整するだけで、混合液体の導入量を調整でき、簡易な構造で容易に薬液等の他の液体の混合量を制御できる。但し、開口部115a及び流量調整孔114の形状は、流出する水量を調節できる限り、上記した形状に限定されるものではない。
【0028】
なお、第二テーパ部112内に、例えば、周壁内面から内方に向かって部分的に突出する隔壁部、あるいは、ボール部材やピン部材などの乱流発生部材(図示せず)を設けることが好ましい。本発明者の実験によればこのような乱流発生部材を設けると、混合液導入路120からの混合液体の導入がよりスムーズに行われ、混合液体の混合量の安定性を高めることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 液体混合機構
20 水供給管
21 ボールタップ
100 管本体
110 主管路
111 第一テーパ部
112 第二テーパ部
113 細径部
114 流量調整孔
115 開口量調整部材
115a 開口部
120 混合液体導入路
120a 接続口
121 導入チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水供給管を通過する水に他の液体を混合する液体混合機構であって、
前記水供給管に連結される管本体を有し、
前記管本体内に、水の流れ方向に沿って狭まる上流側の第一テーパ部と、水の流れ方向に沿って拡がる下流側の第二テーパ部と、前記第一テーパ部と第二テーパ部との間の細径部とを備えた主流路が形成されており、
前記細径部及び第二テーパ部が形成されている範囲内のいずれかの位置における、前記管本体の周壁に、他の液体を導入する混合液体用導入路が接続され、
さらに、前記細径部よりも上流側において、前記管本体の周壁を貫通する流量調整孔が形成されていると共に、この流量調整孔の開口量を調整する開口量調整部材が前記管本体に設けられ、前記開口量調整部材により前記流量調整孔の開口量を調整して、前記水供給管から供給される供給水量の変化に応じて前記流量調整孔から水を流出可能とし、前記細径部を通過して第二テーパ部へ流れる水量を及び前記混合液体用導入路からの他の液体の導入量を調整することを特徴とする液体混合機構。
【請求項2】
前記開口量調整部材が、前記管本体における前記流量調整孔の周囲に装着され、円周方向に沿った開口部を有する筒状体からなり、この開口部と前記流量調整孔との重なり面積を調整して、前記流量調整孔から流出する水量を調整する構造である請求項1記載の液体混合機構。
【請求項3】
前記流量調整孔は、前記管本体の周壁に所定の角度の範囲に亘って形成された展開状態で略方形の孔である請求項2記載の液体混合機構。
【請求項4】
前記開口量調整部材に形成された開口部が、展開状態で略三角形の孔である請求項2又は3記載の液体混合機構。
【請求項5】
前記第二テーパ部内に、乱流発生部材が設けられている請求項1〜4のいずれか1に記載の液体混合機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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