説明

液体温度調整装置

【課題】構成が常態的に大型化、高コスト化することなく、熱交換効率が高く、更に、輸液回路に損傷が発生した場合にも、熱媒体が輸液回路内に流入することがない。
【解決手段】
熱媒体が入った第1、第2の熱媒体筐体10、80と、熱媒体に囲繞され且つ熱媒体から水密の、第1の熱媒体筐体に備えられる収納室13と、第1、第2の熱媒体筐体間に熱媒体を循環させる循環経路96、97と、熱媒体を第2の熱媒体筐体を介さずに第1の熱媒体筐体へ戻すバイパス経路98と、循環経路とバイパス経路との接続部位に設けられ、経路を第2の熱媒体筐体への循環経路とバイパス経路とのいずれかに切り換える制御弁87A、87Bと、制御弁と第2の熱媒体筐体との間に設けられ、循環経路と第2の熱媒体筐体とを着脱可能とする着脱手段83A、93A、83B、93Bと、循環経路及びバイパス経路の熱媒体を強制的に循環させる循環攪拌手段88とを具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、血液などの液体を冷却/加温して所望の温度とするための液体温度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、臨床分野においては全身低体温療法が注目されており、各種の手術において採用されている。このための装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この装置は、(A)温度が調節された補液を血管に(従って、体内に)計量注入する補液供給ユニット、(B)補液により希釈された血液を血管から(従って、体内から)計量導出し(即ち、脱血し)、導出した希釈血液を濃縮するための血液濃縮ユニット、及び(C)濃縮された血液の温度を調節して血管に(従って、体内に)計量注入する血液供給ユニットを備えている。
【0003】
そして、上記装置において、血液濃縮ユニットは、導出される希釈血液の温度を測定する希釈血液温度センサを有し、また、補液供給ユニットは、測定された希釈血液温度(T1)と対象の所定温度(T0)との相違(例えば、差ΔTa(=T1−T0)、割合TR(=T1/T0)等)に基づいて、供給する補液の温度を調節する手段を有するというものである。
【0004】
上記に対し、希釈を行わないものとしては、図8に示すように構成された装置が知られている。この装置では、体外循環血液回路41を熱媒体槽47内の熱媒体46に浸し、熱媒体槽47に設けられた冷却/加温装置44により熱媒体46を介して体外循環血液回路41内の血液を冷却/加温するものである。
【0005】
上記装置においては、冷却/加温能力を増加させるためには、冷却/加温装置44をより強力なものとする必要があり、このために、要求される最大能力に合わせた冷却/加温装置44を備えた装置とするため、装置の大型化またコスト高を招来する問題点がある。
【0006】
更に、図9に概略構成が示されるように、体外循環血液回路41を温調器45によって調温した熱媒体槽47内の熱媒体46に浸すことにより体外循環血液回路41内の血液を冷却/加温するものが知られている(特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
上記特許文献2の構成では、温調器45と熱媒体槽47を設置する必要があるため、装置が大型化する問題がある。更に特許文献3の構成では、熱媒体が攪拌されておらず、熱媒体槽47内に温度勾配ができ、血液との熱交換効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3655197号明細書
【特許文献2】特開2002−119586号公報
【特許文献3】特開2007−151696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような従来の液体温度調整装置の問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、構成が常態的に大型化、高コスト化することなく、熱交換効率が高く、更に、輸液回路に損傷が発生した場合にも、熱媒体が輸液回路内に流入することのない安全性の高い液体温度調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る液体温度調整装置は、熱媒体が入った第1の熱媒体筐体と、熱媒体が入った第2の熱媒体筐体と、液体を輸液する輸液回路を挿抜するための開口を有し、開口から挿入された輸液回路に接した状態で前記輸液回路を収納し得ると共に前記第1の熱媒体筐体の熱媒体に囲繞され且つ前記熱媒体から水密の、前記第1の熱媒体筐体に備えられる収納室と、前記第1の熱媒体筐体と前記第2の熱媒体筐体とに接続され、前記第1の熱媒体筐体と前記第2の熱媒体筐体間において熱媒体を循環させるための循環経路と、この循環経路に接続され、前記第1の熱媒体筐体を出た熱媒体が前記第2の熱媒体筐体を介することなく前記第1の熱媒体筐体へ戻すためのバイパス経路と、前記循環経路と前記バイパス経路との接続部位に設けられ、熱媒体の経路を前記第2の熱媒体筐体への循環経路と前記バイパス経路とのいずれかに切り換えるための制御弁と、前記制御弁と前記第2の熱媒体筐体との間の循環経路に設けられ、前記循環経路と前記第2の熱媒体筐体とを着脱可能とする着脱手段と、前記循環経路及び前記バイパス経路の熱媒体を強制的に循環させる循環攪拌手段とを具備したことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る液体温度調整装置は、前記第1の熱媒体筐体を冷却/加温する冷却/加温手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る液体温度調整装置は、前記収納室の熱媒体側の面に熱媒体を導き得る誘導手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る液体温度調整装置では、前記誘導手段は、前記熱媒体を前記収納室の周りに螺旋状に流し得る流路で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る液体温度調整装置では、必要に応じて予め冷却/加温しておいた熱媒体が入った第2の熱媒体筐体を用意し、循環経路により第1の熱媒体筐体と第2の熱媒体筐体間において熱媒体を循環させるようにでき、強力な冷却/加温が必要な場合に速やかに対応できる。また、バイパス経路と制御弁とによって第1の熱媒体筐体を出た熱媒体が第2の熱媒体筐体を介することなく第1の熱媒体筐体へ戻すようにし、着脱手段によって第2の冷却筐体を切り離すことにより、第2の冷却筐体が不要な場合に構成を小型化して必要な冷却/加温を行うことができ、狭い手術室などでも場所をとることなく使用できる。
【0015】
本発明に係る液体温度調整装置では、第1の熱媒体筐体を冷却/加温する冷却/加温手段を備えているので、効率よく第1の熱媒体筐体を冷却/加温することができる。
【0016】
本発明に係る液体温度調整装置では、収納室の熱媒体側の面に熱媒体を導き得る誘導手段を設けたので、この誘導手段によって収納室の熱媒体側の面に熱媒体が導かれ、熱媒体の流れが生じ、更に効率良く熱媒体筐体内の熱媒体を均一な温度に保つことが可能となり、液体との熱交換効率を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る液体温度調整装置では、前記熱媒体を前記収納室の周りに螺旋状に流し得る流路で構成されている前記誘導手段を備えるので、流路に熱媒体が導かれて熱媒体の流れが生じ、更に効率良く熱媒体筐体内の熱媒体を均一な温度に保つことが可能となり、液体との熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る液体温度制御装置の第1の実施形態に係る全体構成を示す斜視図。
【図2】本発明に係る液体温度制御装置の要部を示す平面図。
【図3】本発明に係る液体温度制御装置の要部を示す断面図。
【図4】図1のA−A断面図。
【図5】図1のB−B断面図。
【図6】本発明に係る液体温度制御装置の第2の実施形態に係る全体構成を示す一部断面図。
【図7】本発明に係る液体温度制御装置の第2の実施形態に係る全体構成を示す一部断面図。
【図8】従来例に係る液体温度制御装置の全体構成を示す一部断面図。
【図9】従来例に係る液体温度制御装置の全体構成を示す一部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下添付図面を参照して、本発明に係る液体温度調整装置の実施例を説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1は、第1の実施形態に係る液体温度調整装置を示す斜視図である。液体温度調整装置は、後述する冷却/加温手段31を貼着する箇所を除いてプラスチックなどの熱伝導性の悪い素材により構成される第1の熱媒体筐体10内に、図4などに示される熱媒体11を封入したものである。熱媒体11としては、水や不凍液などを用いることができる。
【0020】
第1の熱媒体筐体10の一壁面には、血液などの液体を輸液する輸液回路21が挿抜可能に、例えば横長の開口12が形成されている。図1のように立設された第1の熱媒体筐体10の底壁には、ペルチェ素子により構成される冷却/加温手段31が貼着されて取り付けられており、冷却/加温手段31によって第1の熱媒体筐体10内の熱媒体11を冷却/加温するように構成されている。前記第1の熱媒体筐体10の冷却/加温手段31が貼着される部分は、銅、ステンレスなどの良熱伝導素材で構成されている。
【0021】
図1のA−A断面図を図4に示し、B−B断面図を図5に示す。図4、図5共に輸液回路21を開口12から収納室13に挿入した収納状態を示している。開口12につながる収納室13は、良熱伝導素材である銅或いはステンレスなどにより構成され、熱媒体11から水密に構成されている。
【0022】
収納室13は、第1の熱媒体筐体10の高さのほぼ中間位置に設けられ、輸液回路21の所要部分を収納可能な大きさを有している。ここで、所要部分とは、輸液回路21を構成するチューブ22が葛折りされた部分や袋体とされた部分を指す。そして、好ましくは収納室13の全ての壁に輸液回路21が接触し、収納室13を囲繞している熱媒体11と輸液回路21内の液体の熱交換が行われるように構成されている。
【0023】
この液体温度調整装置では、第2の熱媒体筐体80を用いる。この第2の熱媒体筐体80は、例えば、プラスチックなどの熱伝導性の悪い素材により構成され、内部に熱媒体81を封入したものである。熱媒体81は、熱媒体11と同じものであり、使用する状況に応じて予め所要温度に冷却或いは加温されている。
【0024】
第2の熱媒体筐体80には、それぞれ中央に開口部を有し周縁にネジが形成されたレセプタクル83A及び83Bが設けられている。90は、循環経路及びバイパス経路を構成する中空のホース体で、第1のホース96、第2のホース97及び第3のホース98からなり、熱媒体11(81)により内部が満たされたH字状の流路を有している。ホース体90の第1の熱媒体筐体10側は、第1の熱媒体筐体10に直に接続されている。また、第2の熱媒体筐体80側の端部には、図2に示されるように、上記レセプタクル83A及び83Bのネジに対応するネジがスリーブ91内に形成されているプラグ93A及び93Bが設けられている。
【0025】
レセプタクル83A及び83Bは、図3に示されるように第2の熱媒体筐体80に一部が埋設して設けたられた本体筒部aの先端側周縁にネジbが形成されており、本体筒部aの内室は常態においてバネ94にて付勢された外周縁の空隙95sを有する蓋体95にて閉成されている。
【0026】
ホース96、97に連通するプラグ93A及び93Bは、レセプタクル83A及び83Bの本体筒部aの外径とほぼ同じ寸法の内径を有する開口部cを備えた本体管dを備えている。開口部cの内壁部はネジbと螺合するネジeが形成されている。本体管dの中央部は熱媒体81を流通させるように中空に形成され、レセプタクル83A(83B)と接続される側には、タケノコバネkの大径側基部を支持する支持部を備える弁室hhが形成されている。弁室hhの支持部と対向する側には弁室hhの径より小径の透孔fが形成されている。弁室hhには、大径の蓋部j及び小径のピン部iを備える弁体hが設けられている。この弁体hは、タケノコバネkにより透孔f側に付勢され、大径の蓋部jが常態において上記透孔fを塞ぐように配置されている。弁体hのピン部iは、透孔fから開口部c側に突出している。
【0027】
一方、ホース96、97の先端にはフランジ96f、97fが形成されており、フランジ96f、97fを外側にネジを有するブッシングgにより押圧してホース96、97を固定している。上記レセプタクル83A及び83Bとプラグ93A及び93Bとで着脱手段を構成している。
【0028】
上記の構成のレセプタクル83A及び83Bとプラグ93A及び93Bとが、図3に示されるようにはずされた状態では、レセプタクル83A及び83Bそれぞれが蓋体95により閉塞されるため、第2の熱媒体筐体80の熱媒体81が外部に漏れることはない。また、プラグ93A及び93Bそれぞれが弁体hの蓋部jにより閉塞されるため、ホース96、97内の熱媒体が外部に漏れることはない。プラグ93A及び93Bが、レセプタクル83A及び83Bに対してねじ込まれると、弁体hのピン部iに押圧されて蓋体95が内側へ移動して開口するとともに、ピン部iが蓋体95に押圧されて蓋部jがホース96、97側に移動し開口する。これにより、蓋体95の周縁に存在する空隙95s、透孔fを介して熱媒体81が流れ得る状態を呈する。
【0029】
符号98は、第2の熱媒体筐体80を介することなく熱媒体11を循環させるためのバイパス経路を構成する第3のホースであり、この第3のホース98の両端は、それぞれ第1のホース96及び第2のホース97と、流路方向を切り換えるための制御弁87A及び87Bを介して接続されている。制御弁87A、87Bは、第1の熱媒体筐体10からの熱媒体11を、第2の熱媒体筐体80を介して循環させるか、或いは第2の熱媒体筐体80を通さずに第3のホース98を介してバイパスさせて循環させるかを決めるものである。
【0030】
上記着脱手段は、上記の場所に替えて制御弁87A及び87Bの第2の冷却筐体80側に設けても良く、また、両者に設けても良い。着脱手段は上記の構成に限定されず、要は簡単に着脱でき、取り外したときに中の熱媒体が外部に漏れない構成であれば良い。
【0031】
第2のホース97における制御弁87Bと第1の熱媒体筐体10との間には、循環経路とバイパス経路との熱媒体11、81を強制的に循環させる、例えばポンプにより構成される循環攪拌手段88が設けられている。
【0032】
上記構成の装置において、輸液回路21内の液体は、図示しない輸液ポンプなどにより送り出され、図4の矢印S1、S2の方向へ流れる。冷却/加温手段31による温度調整のために、開口12付近のチューブ22には温度センサ32が設けられる。ここでは、収納室13に液体が流れ込む側のチューブ22と、収納室13から液体が流れ出す側のチューブ22とに、それぞれ温度センサ32が設けられる。
【0033】
温度センサ32によって検出された信号は、図5に示される制御部40に取り込まれて温度データとされる。制御部40には設定温度情報が与えられ、制御部40は、この設定温度情報と上記により得られる温度データとの差に応じた電力制御を冷却/加温手段31に対して行うことにより温度調整を行う。
【0034】
また、制御部40には弁制御情報が与えられ、制御部40は、この弁制御情報に応じて制御弁87A、87Bを制御する。これにより、第1の熱媒体筐体10から流れ出る熱媒体11をバイパス経路を構成する第3のホース98を介して(第2の熱媒体筐体80を通ることなく)第1の熱媒体筐体10へ戻る経路で循環させることができる。また、制御弁87A、87Bを切換え制御することにより、第1の熱媒体筐体10から流れ出る熱媒体11を第1のホース96を介して第2の熱媒体筐体80へ送り込み、第2の熱媒体筐体80の熱媒体81が第2のホース97を介して第1の熱媒体筐体10へ到る経路で循環させることができる。いずれの場合にも循環攪拌手段88が熱媒体11(81)を強制的に循環させるように働く。
【0035】
次に、上記液体温度調整装置の使用方法を説明する。通常の血液の体外循環に使用する場合は、熱媒体が第3のホース98を通るように制御弁87A、87Bを切り換え、第1の熱媒体筐体10のみを使用して血液の温度調整を行う。この場合、第2の熱媒体筐体80を着脱手段で切り離すと、コンパクトになって狭い手術室などでも場所をとることなく使用できる。
【0036】
低体温療法を行うときなど、急速に所定の目標温度まで体温を低下させる場合は、強力な冷却能力が必要となるため、第2の熱媒体筐体80の熱媒体81を予め氷などで冷やしておき、熱媒体が第2の熱媒体筐体80を通るように制御弁87A、87Bを切り換えて、血液の温度調整を行う。このようにすることにより、血液の温度が速やかに低下する。血液の温度が目標温度まで低下すると、大きな冷却能力は必要ないため、熱媒体が第2の熱媒体筐体80をバイパスして第3のホースを通るように、制御弁87A、87Bを切り換え、血液の温度を目標温度に保つように温度調整を行う。この場合、着脱手段で第2の熱媒体筐体80を切り離すと、コンパクトになって場所をとることなく使用することができる。
【0037】
前記制御弁87A、87Bは、電気的に切り換えるように構成したが、手動で切り換えるように構成しても良い。また、前記熱媒体81の温度調整のために前記第2の熱媒体筐体80に冷却/加温手段を設けても良い。
【0038】
次に、本発明に係る液体温度調整装置の第2の実施例を図6、図7を示す。第1の実施例と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。この実施例に係る液体温度調整装置においては、第1の熱媒体筐体10の内壁面10aと、収納室13の外壁面13aとの間を仕切る連続する仕切り板50を設ける構成を有する。仕切り板50は、例えば収納室13と同一の良熱伝導素材(銅、ステンレスなど)によって構成することで、熱交換効率を向上させることができる。第1の熱媒体筐体10の内壁面10a及び収納室13の外壁面13aと、上記仕切り板50との接合部を結んだ形状は、収納室を中心とした螺旋状となっている。
【0039】
熱媒体筐体10の内壁面10aと、収納室13の外壁面13aと、仕切り板50により囲まれる領域は、開口12側から開口12に対向する面側へ連続する通路51を形成し、流路を構成している。この通路51の始端部52には第2のホース97が接続されており、熱媒体11(81)が送り込まれるように構成されている。
【0040】
また、仕切り板50による螺旋状の通路51の終端部53には、第1のホース96が接続されており、仕切り板50による螺旋状の流路を通過して到来する熱媒体11は、第1のホース96へ送出される。上記の仕切り板50は、収納室13の熱媒体11側の面に熱媒体11を導き得る誘導手段を構成する。
【0041】
この実施例においても、温度センサ32によって検出された信号が、制御部40に取り込まれて温度データとされ、制御部40に与えられる構成を有している。本実施例においても、制御部40が、設定温度情報と上記により得られる温度データとの差に応じた電力制御を冷却/加温手段31に対して行うことにより温度調整を行う。また、制御部40には弁制御情報が与えられ、制御部40は、この弁制御情報に応じて制御弁87A、87Bを制御する構成も備えており、前述の第1の実施形態と同様となっている。
【0042】
以上の構成に係る液体温度調整装置によれば、循環攪拌手段88によって第2のホース97を通って通路51の始端部52へ送り込まれた熱媒体11は、通路51を流れてその終端部53へ到る。そして、第1のホース96へ送り込まれ、第1の実施形態と同様の外部経路を介して熱媒体11(81)が循環される。
【0043】
この循環の過程において、熱媒体11(81)は通路51において収納室13の外壁面13aと絶えず接触して熱交換する状態において流れる。また、熱媒体11(81)は、冷却/加温手段31による冷却/加熱を受けることになる。即ち、熱媒体11(81)は、冷却/加温手段31による冷却/加熱を受けながら、収納室13の外壁面13aを介して輸液回路21と絶えず熱交換することになり、流れによって温度が均一化された熱媒体11(81)によって輸液回路21の液体を効率よく冷却/加熱でき、極めて適切に温度調整することが可能となるものである。
【0044】
なお、上記通路51の形状は螺旋状に限ることなく、熱媒体筐体10の内壁面10aと収納室13の外壁面13aとの間を、複数のリング状仕切り板により区分し、仕切り板に通口を形成するなどして、開口12側から開口12に対向する面側へ連続する通路を構成するようにしてもよい。また、循環攪拌手段88を第1の熱媒体筐体10の内側に設ける構成を採用してもよい。
【0045】
上記の変形例に係る構成によっても、通路内の流れによって温度が均一化された熱媒体11(81)によって輸液回路21の液体を極めて適切に温度調整することが可能となるという効果を得ることができる。この場合、必要に応じて第2の熱媒体筐体80を設け、制御弁87Aと制御弁87Bの切換えにより、必要な経路により熱媒体11(81)を循環させて必要な速度で冷却/加温を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
10 第1の熱媒体筐体
11 熱媒体
12 開口
13 収納室
16A、16B レセプタクル
21 輸液回路
31 加温手段
32 温度センサ
40 制御部
80 第2の熱媒体筐体
81 熱媒体
87A、87B 制御弁
88 循環攪拌手段
90 ホース体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体が入った第1の熱媒体筐体と、
熱媒体が入った第2の熱媒体筐体と、
液体を輸液する輸液回路を挿抜するための開口を有し、開口から挿入された輸液回路に接した状態で前記輸液回路を収納し得ると共に前記第1の熱媒体筐体の熱媒体に囲繞され且つ前記熱媒体から水密の、前記第1の熱媒体筐体に備えられる収納室と、
前記第1の熱媒体筐体と前記第2の熱媒体筐体とに接続され、前記第1の熱媒体筐体と前記第2の熱媒体筐体間において熱媒体を循環させるための循環経路と、
この循環経路に接続され、前記第1の熱媒体筐体を出た熱媒体が前記第2の熱媒体筐体を介することなく前記第1の熱媒体筐体へ戻すためのバイパス経路と、
前記循環経路と前記バイパス経路との接続部位に設けられ、熱媒体の経路を前記第2の熱媒体筐体への循環経路と前記バイパス経路とのいずれかに切り換えるための制御弁と、
前記制御弁と前記第2の熱媒体筐体との間の循環経路に設けられ、前記循環経路と前記第2の熱媒体筐体とを着脱可能とする着脱手段と、
前記循環経路及び前記バイパス経路の熱媒体を強制的に循環させる循環攪拌手段と
を具備したことを特徴とする液体温度調整装置。
【請求項2】
前記第1の熱媒体筐体を冷却/加温する冷却/加温手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の液体温度調整装置。
【請求項3】
前記収納室の熱媒体側の面に熱媒体を導き得る誘導手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体温度調整装置。
【請求項4】
前記誘導手段は、前記熱媒体を前記収納室の周りに螺旋状に流し得る流路で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の液体温度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−24626(P2011−24626A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170411(P2009−170411)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】