説明

液体漂白剤組成物

【課題】pHジャンプ技術を応用した液体漂白剤組成物において、pHを高く設定しても、過酸化水素の保存安定性及び漂白力に優れ、保存後の組成物の匂いの変化が極めて少なく、且つ繊維製品に対する香り付与効果に優れた液体漂白剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)過酸化水素、(b)グリフィン法で求めたHLBが10.5〜17.5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤、(c)特定のケイ酸エステル化合物、(d)ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物、(e)隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物、並びに(f)陰イオン界面活性剤を含有し、20℃におけるpHが3.5〜6である液体漂白剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体漂白剤組成物、より詳細には、衣類等の繊維製品用として好適な液体漂白剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素等の漂白基剤を配合した液体漂白剤組成物は、漂白基剤の安定性の観点から、組成物の保存時のpHを酸性(例えば、pH1.5〜6)にする必要がある。漂白基剤を含有する漂白剤組成物や洗浄剤組成物分野において、ホウ素化合物及び糖類を含有する組成物を使用時に水に希釈することでpHを上昇させる技術(pHジャンプ技術)が特許文献1〜3に開示されている。この技術を用いた場合、水で希釈した時にpHが上昇し、過酸化水素等の漂白基剤が活性化される事で高い性能を発揮するが、有効にpHを上昇させるための達成手段として、水希釈前(保存時)の組成物のpHを、弱酸性に(例えば、pH3.5〜6)調整することが必要である。
【0003】
一方、液体漂白剤組成物には、衣類によい香りを残す観点から香料が配合され得るが、pHが高い程、漂白基材が香料成分と反応しやすくなり、香りが劣化し、衣類によい香りを残す事が困難になる。
【0004】
一方、特許文献3には、一定した機能性物質を徐放できる、ケイ酸エステルを含む機能性物質放出剤が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−72595号公報
【特許文献2】特開平10−72596号公報
【特許文献3】特開2000−144187号公報
【特許文献4】特開2009−197055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過酸化水素等の漂白基剤を配合した液体漂白剤組成物において、過酸化水素による漂白効果の向上と、衣類によい香りを残す事を両立させるために、高いpHの液体漂白剤組成物中で、香料成分を安定に配合する技術が求められている。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、pHジャンプ技術を応用した液体漂白剤組成物において、pHを高く設定しても、過酸化水素の保存安定性及び漂白力に優れ、保存後の組成物の匂いの変化が極めて少なく、且つ繊維製品に対する香り付与効果に優れた液体漂白剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分、及び(f)成分を含有し、20℃におけるpHが3.5〜6である液体漂白剤組成物に関する。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:グリフィン法で求めたHLBが10.5〜17.5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤
(c)成分:一般式(1)で表される化合物
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い、炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は香料アルコールから水酸基1個を除いた残基、好ましくは当該残基であって炭素数5〜22の炭化水素基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(d)成分:ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物
(e)成分:隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物
(f)陰イオン界面活性剤
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、pHジャンプ技術を応用した液体漂白剤組成物において、pHを高く設定しても、過酸化水素の保存安定性及び漂白力に優れ、保存後の組成物の匂いの変化が極めて少なく、且つ繊維製品に対する香り付与効果に優れた液体漂白剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[(a)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(a)成分として過酸化水素を含有する。(a)成分の含有量は、液体漂白剤組成物中に好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%、更に好ましくは1.5〜10質量%、特に好ましくは1.8〜5質量%である。このような範囲において優れた漂白効果と良好な安定性を得ることができる。
【0013】
[(b)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(b)成分としてグリフィン法で求めたHLB(以下、特記しない限りHLBはグリフィン法によるものである)が10.5〜17.5、好ましくは11.5〜16、より好ましくは12.5〜15である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤を含有する。(b)成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、一般式(2)で表される非イオン界面活性剤が挙げられる。
3−O[(EO)a/(PO)b]−H (2)
〔式中、R3は、炭素数10〜18、好ましくは12〜14の、炭化水素基、好ましくはアルキル基又はアルケニル基を示す。EOはエチレンオキシ基であり、POはプロピレンオキシ基である。aはEOの平均付加モル数であり0〜40の数、bはPOの平均付加モル数であり0〜20の数を示し、a及びbの両者が0の場合を除く。好ましくはaは5〜30、より好ましくは5〜25の数であり、好ましくはbは0〜10、より好ましくは0〜8、特に好ましくは0〜6の数である。“/”はEO及びPOが、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
【0014】
なお、一般式(2)においては、EOとPOとはランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれの形態で配列されていてもよい。
【0015】
(b)成分は効率的に後述する(c)成分をミセル中に取り込む性質があるため、(c)成分が反応性の高い過酸化水素と共存するような系においても、(b)成分を配合する事で安定性を維持する事が出来る。ここで、HLBが高過ぎる場合には、香料がミセル中に取り込まれにくくなり、香料の衣類への吸着性は向上するが、製品中での(c)成分の安定性は低下する虞がある。一方、HLBが低過ぎる場合には、(c)成分がミセル中により取り込まれやすくなるために(c)成分の安定性は向上するが、使用場面においては、(c)成分の衣類への吸着が低減する虞のあることが懸念される。
【0016】
従って、上記HLBは、製品中での(c)成分の安定性向上と、使用場面での衣類への(c)成分の吸着性向上の観点から、10.5〜17.5、好ましくは11.5〜16、より好ましくは12.5〜15である。
【0017】
本発明の液体漂白剤組成物は、(c)成分の保存安定性、及び、漂白性を向上させる観点から、(b)成分を好ましくは3〜50質量%、より好ましくは4〜40質量%、更に好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%含有する。
【0018】
[(c)成分]
本発明の(c)成分は、上記一般式(1)で表される化合物である。(c)成分は、1種以上の化合物を使用することができる。
【0019】
一般式(1)において、Xは−OH、−R1又は−OR2、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数であり、複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。
【0020】
1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い、炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基を示すが、特に直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基並びにアリールアルキル基が好ましく、nが0の場合には、炭素数6〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基並びに置換基としてフェニル基を有する炭素数1〜5(総炭素数6〜10)のアルキル基がより好ましく、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数6〜18の直鎖アルキル基又はフェニル基を有する炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましく、炭素数7〜16の直鎖アルキル基又はフェニルエチル基が更に好ましく、炭素数7〜12の直鎖アルキル基が更により好ましい。また、nが0超〜15、更に1〜15の場合には、R1はメチル基等の炭素数1〜5のアルキル基及びベンジル基から選ばれる基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0021】
2は香料アルコールから水酸基1個を除いた残基を示すが、好ましくはこのような残基であって、炭素数5〜22、より好ましくは6〜18、より好ましくは7〜15の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基及びアリールアルキル基から選ばれる基が好ましく、アルキル基、アルケニル基及びアリールアルキル基から選ばれる基が好適である。
【0022】
ここで、香料アルコールとしては、例えば「合成香料−化学と商品知識」(株式会社化学工業日報社、2005年3月発行)記載のアルコールが挙げられ、具体的には、青葉アルコール(cis−3−ヘキセノール)、3−オクテノール(1−オクテン−3−オール)、9−デセノール、ゲラニオール、ネロール、シトロネロール、ロジノール、ファルネソール、ヒドロキシシトロネロール、3,7−ジメチル−7−メトキシオクタン−2−オール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ペンタノール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテノール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテノール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノール、3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール、3,3−ジメチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール等の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール(β−フェニルエチルアルコール)、シンナミックアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、アニスアルコール、フェノキシエチルアルコール、スチラリルアルコール、3−メチル−5−フェニルペンタノ−ル、2,2−ジメチル−3−(3−メチルフェニル)−プロパノール等の芳香族アルコール;2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、4−イソプロピルシクロヘキシルメタノール、1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、p−tert−ブチルシクロヘキサノール、o−tert−ブチルシクロヘキサノール、L−メントール、1−(2−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ)−2−ブタノール、ペンタメチルシクロヘキシルプロパノール、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)−3−ヘキサノール、サンタロール、ベチベロール等の飽和又は不飽和の環式アルコール等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)において、nが0の場合には、4個のXのうち2〜4個、更に3又は4個が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適である。
【0024】
nが0の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0025】
【化2】

【0026】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。〕
一般式(1)において、nが1〜15の場合には、nは平均値を示し、全てのX及びYに対して、1/10以上、好ましくは1/8以上が−OR2であり、残りが−R1である化合物が好適であり、全てのX及びYが−OR2である化合物が特に好ましい。nとしては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
【0027】
nが1〜15の場合の好ましい化合物としては、下記式(1−3)又は(1−4)で表される化合物が挙げられる。
【0028】
【化3】

【0029】
〔式中、R1及びR2は前記と同じ意味を示す。n’は1〜15の数を示し、Tは、−OR2又は−R1を示す。〕
【0030】
一般式(1)で表される化合物は、特開昭54−59498号公報などに記載されている方法で入手することができる。
【0031】
本発明の液体漂白剤組成物は、製品の安定性の観点から、(c)成分を好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、更に好ましくは0.2〜3質量%、特に好ましくは0.4〜2質量%含有する。
【0032】
[(d)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(d)成分としてホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。ホウ酸塩としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、4ホウ酸ナトリウム、4ホウ酸カリウム、4ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物中の(d)成分の含有量は、ホウ素原子として、好ましくは0.05〜1質量%、より好ましくは0.15〜0.5質量%、更に好ましくは0.2〜0.4質量%である。
【0034】
[(e)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(e)成分として、隣合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物を含有する。
【0035】
(e)成分の具体例としては下記(i)〜(iv)の化合物が好適であり、これらの化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を用いることができる。
【0036】
(i)グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、アルキル(炭素数1〜10)ポリグリセリルエーテル(例えば、アルキル(炭素数1〜10)ジグリセリルエーテル、アルキル(炭素数1〜10)トリグリセリルエーテル)
(ii)ソルビトール、マンニトール、マルチトース、イノシトール、及びフィチン酸から選ばれる糖アルコール類
(iii)グルコース、アピオース、アラビノース、ガラクトース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロース、及びフルクトースから選ばれる還元糖類、及びこれらの誘導体(アルキル(ポリ)グリコシド等)
(iv)デンプン、デキストラン、キサンタンガム、グアガム、カードラン、プルラン、アミロース、及びセルロースから選ばれる多糖類。
【0037】
本発明では、特に上記(ii)の糖アルコール類が好適であり、単独又は複数で用いることができる。特にソルビトールが安定性及び漂白/洗浄効果の点から好適である。
【0038】
本発明の組成物中の(e)成分の含有量は、好ましくは3〜35質量%、より好ましくは5〜30質量%、更に好ましくは10〜20質量%である。
【0039】
[(f)成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(f)成分として、陰イオン界面活性剤を含有する。陰イオン界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキシド平均付加モル数0.5〜5)アルキル(炭素数10〜18)エーテル硫酸エステル塩、アルキル(炭素数10〜16)硫酸エステル塩、α−オレフィン(炭素数8〜18)スルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸(炭素数10〜16)低級アルキル(炭素数1〜3)エステル塩が挙げられる。
【0040】
アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、洗剤用界面活性剤市場に一般に流通しているものの中で、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜14のものであればいずれも用いることができ、例えば花王(株)製のネオペレックスF25、Shell社製のDobs102等を用いることができる。また、工業的には、洗剤用原料として広く流通しているアルキルベンゼンをクロルスルホン酸、亜硫酸ガス等の酸化剤を用いてスルホン化して得ることもできる。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数10〜18、好ましくは炭素数10〜16の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールに、エチレンオキサイドを1分子当たり平均0.5〜5モル付加させ、これを例えば特開平9−137188号記載の方法を用いて硫酸化して得ることができる。アルキル硫酸エステル塩としては炭素数10〜16、好ましくは10〜14の直鎖もしくは分岐鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコールをSO3又はクロルスルホン酸でスルホン化し、中和して得ることができる。α−オレフィンスルホン酸塩としては、炭素数8〜18のα−アルケンをSO3でスルホン化し、水和/中和を経て得ることができ、炭化水素基中にヒドロキシ基が存在する化合物と不飽和結合が存在する化合物の混合物である。また、α−スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩としてはアルキル基の炭素数は10〜16が好ましく、メチルエステル又はエチルエステルが洗浄効果の点から好ましい。これら(f)成分の塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好適であり、洗浄効果の点からナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましい。
【0041】
(f)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、1〜30質量%、更に2〜20質量%、より更に3〜10質量%が好ましい。
【0042】
[pH]
本発明の液体漂白剤組成物は、20℃におけるpHが3.5〜6であり、好ましくは3.5〜5.5、特に好ましくは4〜5である。pHを前記範囲に設定することで、(a)成分及び(c)成分の保存時の安定性を維持することができる。
【0043】
[その他の成分]
本発明の液体漂白剤組成物は、(g)成分として漂白活性化剤を含有することが好ましい。(g)成分の漂白活性化剤としては、アルカノイル基の炭素数が8〜14のアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、アルカノイル基の炭素数が8〜14のアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種が挙げられるが、希釈時の過酸生成と製品中での安定性の両立させる観点から、炭素数8〜12の直鎖又は分岐鎖のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンスルホン酸、炭素数8〜12の直鎖又は分岐のアルカノイル基を有するアルカノイルオキシベンゼンカルボン酸及びそれらの塩から選ばれる漂白活性化剤が好ましい。
【0044】
また、組成物の20℃におけるpHが3.5〜5.5の場合は、希釈時の過酸生成の点から、(g)成分はスルホン酸型の漂白活性化剤が好ましく、特にノナノイルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩が特に好ましい。
【0045】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩が好ましく、特にナトリウム塩が溶解性の点から好ましい。
【0046】
(g)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.01〜5質量%、更に0.1〜3質量%、より更に0.2〜1質量%が好ましい。
【0047】
本発明の液体漂白剤組成物は、過酸化水素の安定性向上の観点から、(h)成分として、ホスホン酸基又はその塩基を有する金属イオン封鎖剤を含有し得る。組成物中の(h)成分の含有量は0.01〜5質量%、更に0.05〜1質量%が好ましい。
【0048】
(h)成分の具体例としては、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸塩、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エタン−1−ヒドロキシ−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等の有機ホスホン酸誘導体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上配合することができる。中でも、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等が好ましく、特にエタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0049】
本発明の液体漂白剤組成物は、低温での増粘を防止する観点から、(i)成分として、溶剤を含有し得る。(i)成分としては、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチルジグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールフェニルエーテル等のポリアルキレングリコールモノアルキル又はアリールエーテル類が挙げられる。これらの中でも、エタノール又はプロピレングリコールが好ましく、特にプロピレングリコールが好ましい。(i)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.5〜15質量%、更に1〜10質量%、より更に2〜5質量%が好ましい。
【0050】
本発明の液体漂白剤組成物は、香調のバリエーションを広げるために、さらに(j)成分として香料を含有することができる。(j)成分は、複数の香料成分を特定の比率で含有する香料混合物として用いることもできる。香料成分としては、「香料の化学」(赤星亮一著、日本化学会編,産業化学シリーズ,昭和58年9月16日発行)や「合成香料 化学と商品知識」(印藤 元一著、化学工業日報社、1996年3月6日発行)や「香料と調香の実際知識」(中島 基貴著、産業図書(株)、1995年6月21日発行)に記載のものを用いることができる。
【0051】
香料成分としては、炭化水素系化合物、アルコール系化合物、エーテル系化合物、アルデヒド系化合物、ケトン系化合物、エステル系化合物、ラクトン系化合物、カルボン酸系化合物、環状ケトン系化合物、シッフ塩基化合物、シッフ塩基以外の含窒素化合物(二トリル、アミン、オキシム、キノリンなど)、天然精油類を挙げることができる。それらの具体例としては、特開2006−161229号公報の7〜13頁(段落0030〜0044)に示される例が同様に挙げられる。
【0052】
(j)成分の含有量は、本発明の液体漂白剤組成物中、0.01〜5質量%、更に0.1〜3質量%、より更に0.2〜2質量%が好ましい。
【0053】
その他に本発明の液体漂白剤組成物は、ラジカルトラップ剤、シリコーン類、殺菌剤、蛍光染料、酵素等の任意成分を含有し得る。本発明の液体漂白剤組成物は水を含有し、通常、組成物の残部は水である。水の含有量は、組成物中、15〜85質量%、更に20〜80質量%が好ましい。
【0054】
本発明の液体漂白剤組成物は、衣類、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。
【実施例】
【0055】
表1に示す各成分を混合し、液体漂白剤組成物(本発明品1〜8及び比較品1〜8)を得た。得られた液体漂白剤組成物を用いて、その貯蔵安定性(製品匂い変化、過酸化水素安定性)、液体漂白剤組成物で処理した布の匂い、漂白力を以下の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0056】
なお、表中の各成分としては、以下のものを用いた。
<配合成分>
・a−1;過酸化水素
・b−1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数20、HLB16.5)
・b−2:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数9、HLB13.6)
・b−3:ポリオキシエチレンミリスチルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数9、HLB13.0)
・b’−1:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数4、HLB9.6)
・b’−2:ポリエチレングリコールモノラウレート(オキシエチレン平均付加モル数12、HLB13.7、脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤)
・b’−3:ポリオキシエチレンラウリルエーテル(オキシエチレン平均付加モル数40、HLB18.1)
・c−1:下記合成例1で得られたオクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステル
・c−2:下記合成例2で得られたテトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン
・c’−1:フェニルエチルアルコール
・c’−2:cis−3−ヘキセノール
・d−1:ホウ酸(ホウ素原子含有量15.3質量%であり、表中の配合量が、例えば1.5質量%の場合、ホウ素原子としては0.26質量%の配合量となる。)
・e−1:ソルビトール
・f−1:アルキル(炭素数12)ベンゼンスルホン酸
・g−1:デカノイルオキシ−p−ベンゼンスルホン酸ナトリウム
・h−1:エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸(デイクエスト2010、ソルーシア社製)
・i−1:プロピレングリコール
・j−1:香料(パールライド/クマリン/ベンジルサリシレート(質量比)=1/1/1)
【0057】
合成例1:オクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステル[トリス(2−フェニルエチルオキシ)オクチルシラン]の合成
300mLの四つ口フラスコにオクチルトリエトキシシラン83.01g(0.30mol)、フェニルエチルアルコール127.76g(0.83mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液0.857mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら110〜115℃で2.5時間攪拌した。2.5時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら110〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、オクチルケイ酸トリス(2−フェニルエチル)エステルを含む173.61gの淡黄色油状物を得た。
【0058】
合成例2:テトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シラン[ケイ酸テトラキス(cis−3−ヘキセニル)エステル]の合成
200mLの四つ口フラスコにテトラエトキシシラン35.45g(0.17mol)、cis−3−ヘキセノール64.74g(0.65mol)、2.8%ナトリウムメトキシドメタノール溶液1.34mLを入れ、窒素気流下エタノールを留出させながら118〜120℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を徐々に8kPaまで下げ、エタノールを留出させながら112〜119℃でさらに3時間攪拌した。3時間後、冷却、減圧を解除した後、濾過を行い、テトラキス(cis−3−ヘキセニルオキシ)シランを含む66.17gの薄茶色油状物を得た。
【0059】
<製品匂い変化評価>
液体漂白剤組成物を100mLガラス製サンプル瓶に80g入れ、40℃で1ヶ月間貯蔵した。貯蔵後の液体漂白剤組成物の匂い変化の官能評価を、香り強度専門パネラー10人により以下の基準で行い、平均値を求めた。
評価基準
3 貯蔵前の製品の匂いとほぼ同じ
2 貯蔵前の製品の匂いとわずかに異なる
1 貯蔵前の製品の匂いと異なる
0 貯蔵前の製品の匂いと大きく異なる
【0060】
<液体漂白剤組成物で処理した布の匂い評価>
あらかじめ、市販洗剤(花王(株)アタック高活性バイオEX、2009年7月25日製造)を用いて、木綿タオル24枚を日立全自動洗濯機NW−6CYで5回洗浄を繰り返し、室内乾燥することによって、過分の薬剤を除去した(洗剤濃度0.0667質量%、水道水47L使用、水温20℃、洗浄10分、ため濯ぎ2回)。
【0061】
表1に示す液体漂白剤組成物を40℃で1ヶ月貯蔵し、貯蔵後の液体漂白剤組成物を0.1質量%となる様に25℃の3°DH硬水に添加し、上記で調製した木綿タオル1枚をターゴトメーターにて洗浄した(100rpm×10分、浴比15)。その後、水道水ですすぎ乾燥させて、このタオルの匂いの官能評価を、香り強度専門パネラー10人により以下の基準で行い、平均値を求めた。
評価基準
3 タオルから強い香りがする
2 タオルから香りがする
1 タオルからわずかに香りがする
0 タオルからほとんど香りがしない
【0062】
<過酸化水素の貯蔵安定性評価>
液体漂白剤組成物を100mLガラス製サンプル瓶に80g入れ、40℃で2ヶ月間貯蔵した。貯蔵前後の液体漂白剤組成物中の過酸化水素の含有量をヨードメトリー法により測定し、下式により過酸化水素残存率を求めた。
過酸化水素残存率(%)=(貯蔵後の過酸化水素含有量)/(貯蔵前の過酸化水素含有量)×100
【0063】
<漂白力の評価>
表1に示す液体漂白剤組成物を40℃で2ヶ月貯蔵し、貯蔵後の液体漂白剤組成物を25℃の3°DH硬水を用いて0.1容量%濃度になる様に添加し、下記で調製したミートソース汚染布4枚をターゴトメーターにて洗浄した(100rpm×10分)。その後、水道水ですすぎ乾燥させて、下式により漂白率を求めた。
漂白率(%)=[(漂白後の汚染布の反射率−漂白前の汚染布の反射率)/(白布の反射率−漂白前の汚染布の反射率)]×100
反射率は日本電色工業(株)製NDR-10DPで460nmフィルターを使用して測定した。また、白布とは汚染布の調製に用いた未汚染の布(木綿金布#2003)のことである。
【0064】
(汚染布の調製)
カゴメ(株)製ミートソース(完熟トマトのミートソース(2009年8月9日賞味期限、ロット番号:D7809JC)/内容量295gの缶詰)の固形分をメッシュ(目の開き;500μm)で除去した後、得られた液を煮沸するまで加熱した。この液に木綿金布#2003を浸し、10分間煮沸した。そのまま火からおろし2時間程度放置し30℃まで放置した後、布を取りだし、余分に付着している液をへらで除去し、自然乾燥させた。その後プレスし、8cm×8cmの試験布として実験に供した。
【0065】
【表1】

【0066】
*(d)成分のかっこ内の数字は、ホウ素原子としての配合量である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分、及び(f)成分を含有し、20℃におけるpHが3.5〜6である液体漂白剤組成物。
(a)成分:過酸化水素
(b)成分:グリフィン法で求めたHLBが10.5〜17.5である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤
(c)成分:一般式(1)で表される化合物
【化1】


〔式中、Xは−OH、−R1(R1は置換基としてフェニル基、水酸基又はアルコキシ基を有していても良い、炭素数1〜22の脂肪族炭化水素基)又は−OR2(R2は香料アルコールから水酸基1個を除いた残基)、YはX又は−OSi(X)3、nは平均値を示す0〜15の数である。複数個のX及びYはそれぞれ同一でも異なっていても良いが、一分子中に−OR2を少なくとも1つ有する。〕
(d)成分:ホウ酸、ホウ砂及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物
(e)成分:隣り合う炭素原子の両方にそれぞれ1つヒドロキシル基を有する部位が1つ以上存在する化合物
(f)陰イオン界面活性剤
【請求項2】
(c)成分が、一般式(1)中のR2が香料アルコールから水酸基1個を除いた残基であって、炭素数5〜22の炭化水素基である化合物である、請求項1記載の液体漂白剤組成物。
【請求項3】
更に(g)成分として漂白活性化剤を含有する請求項1又は2記載の液体漂白剤組成物。

【公開番号】特開2011−122071(P2011−122071A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281184(P2009−281184)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】