説明

液体濾過用塗被濾材

【課題】本発明の課題は、微細粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現した液体濾過用塗被濾材を提供することにある。
【解決手段】通気性を有する基材の片表面に顔料と有機重合物を含有してなる塗被層を設けてなることを特徴とする液体濾過用塗被濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に含有される固体粒子を効率良く除去して清浄な液体を得るための液体濾過フィルターなどに用いられる濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体濾過用濾材の構造には大きく分けて2つある。一つは「内部濾過タイプ」であり、これは濾材の内部で固体粒子を捕捉する構造の濾材である。もう一つは「表面濾過タイプ」であり、これは濾材の表面で固体粒子を捕捉する構造の濾材である(例えば、特許文献1参照)。また、これら濾材をプリーツ加工「ひだ折り加工」を施して濾材の表面積を増大させてから所定の形状に成形してフィルターが作製され、他の部品と組み合わせて濾過機にセットして使用するものである。
【0003】
従来、放電加工機やIC生産工程で使用されている液体濾過用濾材としては、天然パルプと有機繊維の混抄シートにフェノール樹脂等を含浸処理したシートやポリエステル不織布等が使用されていた。しかし、これらは固体粒子の濾過効率が低く、寿命が短い等の問題点があった。また、高性能の濾材としてフッ素樹脂等の多孔質シートがあるが、高価なため特殊用途に限定され、多量の液体を処理する濾材としては不適当であった。
【0004】
これらの問題を解決する濾材の一つとして、本出願人らは、1μm以下にフィブリル化された有機繊維5〜40質量%と繊維径1〜5μmの極細有機繊維5〜60質量%及び繊維径5μm以上の有機繊維20〜70質量%からなり、且つ該繊維径5μm以上の有機繊維の一部または全部が繊維状有機バインダーであり、濾材密度が0.25〜0.8g/cmの「表面濾過タイプ」の液体濾過用濾材を提案し、上記問題を解決した(例えば、特許文献2参照)。この「表面濾過タイプ」の濾材は、フィブリル化された有機繊維が固体粒子の捕集効率を発現し、その他の有機繊維との含有量を限定することで、圧力損失を抑え、多量の液体を効率良く短時間に処理することができるようにしている。
【0005】
上記「表面濾過タイプ」の濾材は、厚みが非常に薄く、硬くないために、ひだ折り加工ができない問題点があったことから、本出願人は、強度や腰(堅さ)を向上させるために、薄くて表面濾過性能に優れた上記濾材層と、液体の透過性が良く高強度でひだ折り加工性の良い支持体層を抄合わせ一体化した液体濾過用フィルター濾材を考案するに至り、現在でも有用に産業界で活用されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかし、切削加工機や放電加工機等の高精度化に伴い、切削屑等の固体粒子の粒子径はさらに小さくなり、サブミクロンオーダーになっているのが現状である。また、環境に配慮して加工液のクローズド化も進んでおり、加工液を循環して使用するために、濾過後の液は必然的に綺麗にすることが重要になっている。そのため、従来よりも微細な固体粒子(以下、「微細粒子」という)の捕集効率を高めることが求められている。
【0007】
このような状況下で、「内部濾過タイプ」の濾材では、粉体を濾材内部に含有させることによって、捕集効率を上げる試みがなされている。例えば、セルロース繊維をベースとする液体用濾紙に粉末有機物質(粉体)を充填することによって、高い吸着及び吸収能と高い多孔度を特徴とした濾材が提案されている(例えば、特許文献4参照)。また、ポリオレフィン系フィブリル化合成繊維、熱接着性合成複合繊維、平均繊維径2μm以下のガラス繊維及び平均粒子径10μm以下の無機粉体をスラリーに分散混合して湿式抄紙法で抄造した液体濾過用濾紙が提案されている(例えば、特許文献5参照)。このような粉体で捕集効率を上げた「内部濾過タイプ」の濾材は初期濾過性能が低く、使用初期には微細粒子が流れてしまい、その後、微細粒子が捕集されてくると圧力損失が高くなってくるという問題があった。また、粉体は濾材から落下しやすく、特に、特許文献5のように、無機粉体を湿式抄紙法で抄造した場合、無機粉体が抄紙ワイヤーから脱落するという問題があった(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
上述したように、「表面濾過タイプ」の濾材では、特許文献1〜3のように、フィブリル化された有機繊維とその他の有機繊維との含有量を限定することで、捕集効率を高め、圧力損失とのバランスをとっていたが、サブミクロンオーダーの固体粒子の捕捉効率をこの方法で上げようとすると、フィブリル化有機繊維を含んだ濾材層の坪量を増す必要があり、抄紙ワイヤーからの搾水が不十分になって均一な地合いが得られず、また、圧力損失が高い濾材しか得られないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開2000−70628号公報
【特許文献2】特許第2633355号公報
【特許文献3】特許第3305372号公報
【特許文献4】特開平10−237798号公報
【特許文献5】特開平7−256021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、微細粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現した液体濾過用塗被濾材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、
(1)通気性を有する基材の片表面に顔料と有機重合物を含有してなる塗被層を設けてなるとを特徴とする液体濾過用塗被濾材、
(2)通気性を有する基材が不織布または紙である上記(1)記載の液体濾過用塗被濾材、
(3)通気性を有する基材が有機繊維を含む不織布である上記(1)または(2)記載の液体濾過用塗被濾材、
(4)塗被層面を上流側にセットして使用する上記(1)〜(3)のいずれか記載の液体濾過用塗被濾材、を見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体濾過用塗被濾材は、通気性を有する基材の片表面に顔料と有機重合物の塗被層が設けられている。顔料と有機重合物を基材の内部または全体に含浸した場合、表面濾過にならず内部濾過となるため、初期濾過性能を向上できないばかりでなく、濾材の圧力損失を高める結果となり、ライフを短くしてしまう。これに対し、本発明のように、塗被層を基材の片表面に設けた場合は、圧力損失が高くならず、また、顔料及び有機重合物が基材表面に均一に存在させることが可能となる。また、使用初期から表面濾過を可能とし、微細粒子の捕集効率が向上する。つまり、本発明の液体濾過用塗被濾材は、微細粒子の捕集効率、圧力損失といった性能をバランス良く発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明の液体濾過用塗被濾材は、表面濾過を効率良く行うために、通気性を有する基材に塗被層を設けることによって、基材表面での空隙径を小さくコントロールすることにより達成するものである。
【0015】
通気性を有する基材とは、エアフィルター用濾材、液体用フィルター用濾材、またはそれらに積層、貼り合わせ用に用いられるものであり、フラジール通気度が0.3cc/cm/sec以上のものであり、好ましくは0.5cc/cm/sec以上、より好ましくは1.0cc/cm/sec以上である。本発明は液体濾過用塗被濾材であるが、通液性試験にかわり、JIS L 1096の通気性A法(フラジール型法)を準用した通気性試験を使用した。通気性を有する基材としては、具体的には、特に限定しないが、織物、編物、不織布、多孔膜、紙などの通気性を有するものであり、中でも濾材としてプリーツ加工性等を考慮すると、不織布、紙が好ましい。不織布は、スパンボンド、メルトブローン、ケミカルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、エレクトロスピニング等の乾式不織布、抄紙法による湿式不織布が挙げられる。紙としては、通気性を確保するために、木材パルプの叩解度合いを抑えたり、リンターパルプを混合したり、パルプを予め架橋させる等の処理により低密度になるように抄造されたものが好ましい。
【0016】
基材は、単層でも2層以上の多層構造であっても良いが、2層構造が好ましい。2層構造の場合、粗密構造であることが好ましく、塗被層は密層面に付与することが好ましい。基材の坪量は、特に限定しないが20〜300g/mが好ましく、より好ましくは、30〜180g/mである。20g/m未満の場合は、フィルターに加工する場合や塗被層を形成する段階で断紙する場合がある。また、300g/mを超えた場合、通液抵抗が高くなる場合や、厚みが増してフィルターユニット内に規定量の濾材を収納できない場合がある。
【0017】
基材に用いられる素材は、特に限定しないが、天然繊維、再生繊維、合成繊維、半合成繊維等の有機繊維、無機繊維が挙げられる。天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプ、竹パルプ、ケナフパルプ、リンター、リントなどの木本類、草本類が挙げられ、再生繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル繊維等が挙げられる。合成繊維としては、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ビニロン系、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられ、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが挙げられ、単独または併用して用いられる。これらの有機繊維は、フィブリル化されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維等も含まれる。また、断面形状がT型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も通気性、通液性確保のために含有できる。無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、ロックファイバー、ステンレスファイバーなどが挙げられる。中でもアルミナ繊維とマイクロガラス繊維が好ましく、より好ましいのはマイクロガラス繊維である。
【0018】
また、有機繊維は、熱融着性バインダー繊維であっても良い。熱融着性バインダー繊維を含有させて、熱融着性バインダー繊維の溶融温度以上に濾材の温度を上げる工程を基材の製造工程に組み入れることで、基材の機械的強度が向上する。例えば、基材を湿式抄造法で製造し、その後の乾燥工程で、熱融着性バインダー繊維を溶融させることができる。本発明の基材に用いることができる熱融着性バインダー繊維としては、単繊維のほか、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)、放射状分割繊維などの複合繊維が挙げられる。複合繊維は、皮膜を形成しにくいので、濾材の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。熱融着性バインダー繊維としては、例えば、ポリプロピレンの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)や、ポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、濾材の乾燥工程で皮膜を形成しやすいが、特性を阻害しない範囲で使用することができる。
【0019】
基材の片表面には顔料と有機重合物の塗被層が設けられる。塗被層を設ける場合に、基材内部に深く沈降することを抑えるために、塗被層を設ける基材の片表面には細い繊維が混在していることが好ましい。細い繊維とは、特に限定しないが、繊維径が10μm以下の繊維であり、好ましくは7μm以下、より好ましくは4μm以下である。
【0020】
本発明で塗被層に用いられる顔料は、合成非晶質シリカ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料、スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、メラミン樹脂等の有機顔料等が単独または併用して用いられる。
【0021】
顔料のコールターカウンター法による平均二次粒子径は、特に限定しないが濾材の塗被層形成をスムーズに行うために粒子径が50μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下である。平均二次粒子径が50μmを超えると、有機重合物と顔料の混合液中で顔料が沈降し塗布性が悪化し、均一な塗被層が得られなくなることがある。また、顔料の形状は、特に限定しないが、閉塞し難い形状の不定形、球状、棒状、針状等であることが、通液性確保の観点からも好ましい。
【0022】
本発明で用いられる有機重合物は、ポリビニルアルコールまたはそのシラノール変性物、カルボキシル化物、カチオン化物、アセトアセチル化物等の各種誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、或いはこれら各種重合体のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性重合体、ポリウレタン樹脂系重合体、ポリエステル系重合体、澱粉等が挙げられ、これらを単独または2種類以上を併用できる。耐水性、粉体保持性、通液性等を考慮し、アクリル系重合体、ポリウレタン樹脂系重合体、ポリエステル系重合体等を使用することが好ましい。これらの有機重合体は、ラテックス状のものを使用しても良い。
【0023】
塗被層における有機重合物の含有量は、顔料に対し、5〜70質量%であると良好な塗被層強度が得られ、好ましい。より好ましくは、10〜60質量%である。
【0024】
さらに、塗被層には、添加剤として、架橋剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、サイズ剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、湿潤強度増強剤、乾燥強度増強剤等を適宜配合することもできる。
【0025】
顔料と有機重合物を含有した塗被層を設ける方法としては、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、コンマコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテンコーター、ショートドウェルコーター、サイズプレス等の各種装置をオンマシン或いはオフマシンで用いることができる。塗工ムラがなく均一な厚さの塗被層が得られるカーテンコーターやエアナイフコーターを用いることが好ましい。
【0026】
当該塗被層の塗工後に、裏面に加湿空気、加湿蒸気を吹き付けてカール矯正を行っても良い。また、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等を用いたカレンダー処理により、塗被層表面の平滑性を高めても良い。
【0027】
塗被層の塗工量は、特に限定しないが0.5〜40g/mであると、良好な塗被層を形成できることから好ましい。より好ましくは、1〜20g/mである。0.5g/m未満では均一な塗被層が得られない場合があり、40g/mを超えると通液性が低下することがある。
【0028】
本発明の液体濾過用塗被濾材は、耐水性、プリーツ加工性が得られ、放電加工機用、エンジンオイル用、燃料用、油水分離用、油圧機器用等の液体濾過用フィルター濾材に好適となる。この場合、塗被層面を上流側として使用することにより、表層濾過機構を発現でき好ましい。しかし、対象となる液体中の粒子径が大きい場合などは、塗被層の反対面を上流とすることが好ましい場合がある。
【0029】
本発明の液体濾過用塗被濾材において、濾材の密度は0.1〜0.8g/cmであることが好ましい。濾材全体の密度が0.1g/cm未満の場合は濾材の厚みが厚くなるためユニットに組み込める濾材の面積が小さくなってしまい、結果としてフィルターのライフが短くなってしまう。一方、0.8g/cmを超える場合は、通液性が低くなることがあり、ライフが短くなる場合がある。
【実施例】
【0030】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。以下、特にことわりのないかぎり、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
【0031】
<顔料と有機重合物の混合液の作製>
ミルを用いて平均粒子径1.5μmに粉砕した重質炭酸カルシウム70質量%、アクリル系重合体ラテックス(商品名:ニッポールLX842、日本ゼオン社製)30質量%を分散タンクに投入し、分散水に混合して10分間撹拌し、固形分濃度15質量%の顔料と有機重合物の混合液を作製した。
【0032】
(実施例1)
通気性を有する基材としてのポリエステルスパンボンド不織布(坪量100g/m、商品名:アクスター、東レ社製)に顔料と有機重合物の混合液を固形分10g/mになるように、卓上エアナイフコーターを用いて塗被し、乾燥させて実施例1の液体濾過用塗被濾材を得た。
【0033】
(比較例1)
ポリエステルスパンボンド不織布(坪量100g/m、商品名:アクスター、東レ社製)を比較例1の液体濾過用濾材とした。
【0034】
(実施例2)
特許文献3に記載された構成を有する濾材層(密層)と支持体層(粗層)とからなる2層構造の湿式不織布(坪量70g/m、商品名:HF−V、三菱製紙社製)を通気性を有する基材に用い、濾材層面に塗被層を設けたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の液体濾過用塗被濾材を得た。
【0035】
(比較例2)
2層構造の湿式不織布(坪量70g/m、商品名:HF−V、三菱製紙社製)を比較例2の液体濾過用濾材とした。
【0036】
(実施例3)
<基材の作製>
カナディアン濾水度500mlに叩解したNBKPを40質量%、市販のリンターパルプを40質量%、熱融着性バインダー繊維(芯鞘タイプ、ポリエステル繊維、直径15μm、繊維長:5mm、ユニチカ社製)を20質量%の比率で水に分散し、乾燥質量70g/mになるように分散液を採取し、標準角形手抄き抄紙機を用いて抄紙した後、シリンダードライヤーで乾燥して通気性を有する基材を作製した。実施例1で作製した顔料と有機重合物の混合液を固形分10g/mになるように卓上エアナイフコーターを用いて塗被し、乾燥させて実施例3の液体濾過用塗被濾材を得た。
【0037】
(比較例3)
実施例3の基材のみを比較例3の液体濾過用濾材とした。
【0038】
(比較例4)
実施例3の基材に、実施例1で作製した顔料と有機重合物の混合液を固形分10g/mになるように含浸装置を用いて基材全体に含浸し、乾燥させて比較例4の液体濾過用濾材を得た。
【0039】
実施例及び比較例で得られた液体濾過用(塗被)濾材に対して、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0040】
試験1(厚さ)
JIS L 1096に準じ、不織布用の厚さ計により厚さを測定した。
【0041】
試験2(坪量、密度)
JIS P 8124及び8118に準じ、坪量及び密度を算出した。
【0042】
試験3(初期濾過効率)(単位:%)
実施例1〜3の液体濾過用塗被濾材及び比較例1〜4の液体濾過用濾材を用い、JIS第8種粉体とJIS第11種粉体を1:1の比率で混合し、0.05質量%濃度になるように水に希釈したものを試験用液体として用い、濾材を水で湿潤した後、試験用液体100mlを濾材の塗被層を上流側にセットして濾過面積14cm、差圧△P=320mmHgでの条件で濾過し、濾過前後液の3〜10μm粒子数をリオン社製の液中微粒子計数器(商品名:KL−01)で測定した。比較例2の液体濾過用濾材は、濾材層を上流側にセットした。
【0043】
試験4(初期濾過速度)(単位:cc/cm/min)
試験3の濾過性能試験時の濾過時間から濾過速度を得た。
【0044】
試験5(濾液の濁り)
試験3で得られた濾過後の液体(濾液)の濁りの度合いを目視で観察し、透明度の非常に高いものを◎、透明度の高いものを○、やや濁っているものを△、非常に濁っているものを×の4段階で評価した。
【0045】
試験6(ライフ試験)
試験3の試験液を用いて10回繰り返し濾過した後、上記試験と同様の方法で濾過効率、濾過速度を測定した。
【0046】
試験7(プリーツ加工性)
サンプルをひだ状に加工し、加工性の非常に良いものを◎、良いものを○、やや悪いものを△、悪いものを×の4段階で評価した。
【0047】
試験8(初期濾過効率2)(単位:%)
実施例1〜3の液体濾過用塗被濾材及び比較例2の液体濾過用濾材を用い、JIS第8種粉体とJIS第11種粉体を1:1の比率で混合し、0.05%濃度になるように水に希釈したものを試験用液体として用い、濾材を水で湿潤した後、試験用液体100mlを濾材の塗被層を下流側にセットして濾過面積14cm、差圧△P=320mmHgでの条件で濾過し、濾過前後液の3〜10μm粒子数をリオン社製の液中微粒子計数器(商品名:KL−01)で測定した。比較例2の液体濾過用濾材は、支持体層を上流側にセットした。
【0048】
試験9(初期濾過速度2)(単位:cc/cm/min)
試験8の濾過性能試験時の濾過時間から濾過速度を得た。
【0049】
試験10(濾液の濁り2)
試験8で得られた濾過後の液体(濾液)の濁りの度合いを目視で観察し、透明度の非常に高いものを◎、透明度の高いものを○、やや濁っているものを△、非常に濁っているものを×の4段階で評価した。
【0050】
試験11(ライフ試験2)
試験8の試験液を用いて10回繰り返し濾過した後、上記試験と同様の方法で濾過効率2、濾過速度2を測定した。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1の液体濾過用塗被濾材は、比較例1の液体濾過用濾材と比較して、初期濾過効率、ライフ試験の濾過効率が良好であり、濾液の濁りが少なかった。実施例2の液体濾過用塗被濾材は、比較例2の液体濾過用濾材と比較して、初期濾過効率、ライフ試験の濾過効率が良好であり、濾液の濁りが少なかった。実施例3の液体濾過用塗被濾材は、比較例3の液体濾過用濾材と比較して、初期濾過効率、ライフ試験の濾過効率が良好であり、濾液の濁りが少なかった。顔料と有機重合物が通気性を有する基材の内部に含有されてなる比較例4の液体濾過用濾材は、実施例3の液体濾過用塗被濾材と比較して、初期濾過効率が低く、濾液にやや濁りがみられたばかりでなく、ライフ試験において、濾過効率も濾過速度も低かった。
【0053】
本発明の液体濾過用濾材の塗被層を上流側にセットして濾過した場合、塗被層を下流側にセットして濾過する場合と比較して、ライフが長くなる傾向にあることから、塗被層側を上流にセットして使用することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する基材の片表面に顔料と有機重合物を含有してなる塗被層を設けてなることを特徴とする液体濾過用塗被濾材。
【請求項2】
通気性を有する基材が不織布または紙である請求項1記載の液体濾過用塗被濾材。
【請求項3】
通気性を有する基材が有機繊維を含む不織布である請求項1または2記載の液体濾過用塗被濾材。
【請求項4】
塗被層面を上流側にセットして使用する請求項1〜3のいずれか記載の液体濾過用塗被濾材。

【公開番号】特開2010−125410(P2010−125410A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304136(P2008−304136)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】