説明

液体燃料およびこれに類するもののための加熱装置

【課題】燃料噴射装置におけるこのような公知の噴射弁の使用時には、特にエンジンの始動特性が不都合となるという問題を解消すること。
【解決手段】少なくとも1つのハウジング部分(3)と、該ハウジング部分(3)内に少なくとも部分的に埋め込まれた加熱エレメント(2)とが設けられている加熱装置(1)であって、加熱エレメント(2)が、自己制御型の加熱エレメント(2)として形成され、自己制御型の加熱エレメント(2)が、ハウジング部分(3)によって取り囲まれており、ハウジング部分(3)が、熱伝導性のプラスチックまたはコンポジットから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱装置に関する。特に本発明は、燃料噴射システムの1つのコンポーネントに組み込まれていてよい、液体燃料のためのヒータに関する。この場合、当該加熱装置は、とりわけ空気圧縮型の自己着火式の内燃機関の燃料噴射弁のために適している。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に用いられる噴射弁が公知である(例えば、特許文献1参照。)。この場合、弁ニードルのための圧電式の作動部材が設けられている。さらに、燃料で充填された室が設けられており、この室は、ばねダイヤフラムを介してシールされている。このばねダイヤフラムは、それと同時に弁ニードルのための戻しばねとしても働く。
【0003】
上記特許文献1に基づく公知の噴射弁では、弁ニードルが作動させられると、燃料で充填された室から燃料が噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第4005455号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、燃料噴射装置におけるこのような公知の噴射弁の使用時には、特にエンジンの始動特性が不都合となるという問題が生ぜしめられる。この問題は特に、燃料としてガソリンとアルコールとから成る混合物、ディーゼル燃料またはディーゼルと有機燃料とから成る混合物が使用される場合に生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の特徴部に記載の特徴を有する本発明による加熱装置、すなわち加熱装置、特に液体燃料のためのヒータであって、少なくとも1つのハウジング部分と、該ハウジング部分内に少なくとも部分的に埋め込まれた加熱エレメントとが設けられている形式のものにおいて、加熱エレメントが、セルフレギュレーティング型、つまり自己制御型の加熱エレメントとして形成されていることを特徴とする加熱装置、請求項13の特徴部に記載の特徴を有する本発明による燃料噴射弁、すなわち燃料噴射弁、特に空気圧縮型の自己着火式の内燃機関のための燃料噴射弁であって、燃料流入管片とノズルボディとが設けられており、該ノズルボディから燃料が噴射可能である形式のものにおいて、本発明による上記加熱装置が設けられており、該加熱装置が、燃料流入管片からノズルボディにまで案内される燃料を予熱するために働くことを特徴とする燃料噴射弁ならびに請求項14の特徴部に記載の特徴を有する、燃料噴射システムの本発明によるコンポーネント、すなわち運転中に少なくとも部分的に燃料で充填されている燃料室と、該燃料室内に設けられた燃料を予熱するために働く、本発明による上記加熱装置とを備えた燃料噴射システムのコンポーネントには、過剰加熱、つまり過熱に対する確実な防護手段を備えた有利な熱源が保証されているという利点がある。特に液体燃料の加熱時では、信頼性の良い過熱防止を保証することができる。なぜならば、温度が、燃料、特に燃料混合物の着火温度を超過しないようにするために、加熱エレメントの表面温度を制限することができるからである。
【0007】
請求項2〜請求項12に記載の手段により、請求項1に記載の加熱装置、請求項13に記載の燃料噴射弁および請求項14に記載の燃料噴射システムのコンポーネントの有利な改良が可能となる。
【0008】
自己制御型の加熱エレメントが、PTC抵抗(Kaltleiter)を有していると有利である。このようなPTC抵抗は、作業範囲において正の温度係数を有する抵抗によって形成されている。自己制御型の加熱エレメントによって、信頼性の良い、迅速応答性の過熱防止が与えられている。たとえば、エタノールとガソリンとから成る混合物のような燃料の予熱時では、燃料の着火温度が到達されることを阻止するために、ヒータの表面温度が約200℃に制限されていると有利である。燃料の着火温度が到達されるような状況は、たとえば燃料供給が中断されていて、加熱エレメントの範囲における液体レベルが低下し、その結果、少なくとも部分的に加熱エレメントの表面の範囲に燃料と空気とから成る混合物が形成される場合に生じ得る。
【0009】
自己制御型の加熱エレメントの外面が、液体燃料と直接に接触していると有利である。これにより、良好な熱伝達が保証されている。この場合、自己制御型の加熱エレメントが、耐燃料性の材料から形成されていると有利である。自己制御型の加熱エレメントは複数種の材料から成っていてもよく、この場合、自己制御型の加熱エレメントの外側範囲は耐燃料性の材料から形成されており、自己制御型の加熱エレメントのコア範囲は、別の材料から形成されていてよい。
【0010】
また、自己制御型の加熱エレメントの外面が、少なくとも部分的に保護層で被覆されていても有利である。この保護層は、外面の、燃料の作用に対して敏感である部分に限定されていてよい。保護層により、加熱エレメントを取り囲む媒体、特に燃料または水を含有するディーゼル燃料に対する一層高い抵抗性を得ることが可能になる。
【0011】
さらに、前記保護層が、該保護層の熱伝導率を改善する固体顔料(Feststoffpigmente)を有していると有利である。固体顔料は主として窒化ホウ素、黒鉛および/または炭化ケイ素から形成されていてよい。
【0012】
また、自己制御型の加熱エレメントが、ハウジング部分によって取り囲まれていても有利である。この場合には、さらに、ハウジング部分が、熱伝導性のプラスチックまたはコンポジットから形成されていると有利である。ハウジング部分はさらに耐衝撃性でかつ耐熱性に形成されていてよいので、化学的および機械的な損傷に対する加熱エレメントの防護が保証されている。これにより、加熱装置の取扱いも容易になる。特に運搬時または組付け時の損傷が阻止される。
【0013】
さらに、ハウジング部分は複数のプラスチック成分、特に2つのプラスチック成分から形成されていてもよい。この場合、加熱エレメントの加熱範囲を取り囲む第2のプラスチック成分が、熱伝導性でかつ耐燃料性の材料から形成されていると有利である。この材料は、たとえば熱伝導性の充填剤を有しており、これにより、良好な熱伝導率、ひいては過熱防止に関する比較的迅速な応答特性が得られる。このような充填剤は金属粉末、黒鉛、炭化ケイ素および/または窒化ホウ素から形成されていてよい。
【0014】
加熱エレメントのジオメトリ、つまり幾何学的形状は、有利にはその都度の使用事例に適合されていてよい。特に加熱範囲は、ピン形、ディスク形、孔付ディスク形、環形または鍵形に形成されていてよい。これにより、第1には提供された表面によって、放出された熱量を、特定の範囲内に設定することができる。第2には、液状の媒体、特に液体燃料の加熱の場合に、提供されている構成スペースおよび燃料の流れに対する適合を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施例による加熱装置の概略的な断面図である。
【図2】本発明の第2実施例による加熱装置の概略的な断面図である。
【図3】本発明の第3実施例による加熱装置の概略的な断面図である。
【図4】本発明の第4実施例による加熱装置の概略的な断面図である。
【図5】加熱装置の自己制御型の加熱エレメントの特性線を示す、本発明を説明するための線図である。
【図6】本発明の第5実施例による加熱装置の概略図である。
【図7】本発明の第6実施例による加熱装置の概略図である。
【図8】本発明の第7実施例による加熱装置の概略図である。
【図9】本発明の1実施例による加熱装置を備えた燃料噴射システムの、燃料噴射弁として形成されたコンポーネントを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本発明の第1実施例による、セルフレギュレーティング型もしくは自己制御型(selbstregulierend.)の加熱エレメント2を備えた加熱装置1が図示されている。この加熱装置1は特に液体燃料のためのヒータとして形成されていてよい。特にこの加熱装置1は混合気圧縮型の火花点火式の内燃機関または空気圧縮型の自己着火式の内燃機関の燃料噴射装置のために適しており、この場合、燃料としてはガソリン、ディーゼル、ガソリンまたはディーゼルと別の燃料とから成る混合物またはこれに類するものを使用することができる。燃料または燃料成分としては、アルコール、特にメタノールまたはエタノールまたはバイオ燃料、特に菜種油のようなオイルを使用することもできる。しかし、本発明による加熱装置1は別の使用事例のためにも適している。
【0017】
加熱装置1はハウジング部分3を有している。このハウジング部分3内には、自己制御型の加熱エレメント2が部分的に埋め込まれている。この場合、加熱エレメント2はコンタクティング範囲4と加熱範囲5とを有しており、加熱エレメント2のコンタクティング範囲4は少なくとも大体においてハウジング部分3によって取り囲まれており、それに対して加熱エレメント2の加熱範囲5は少なくとも大体において露出しており、これにより液体媒体、特に液体燃料との直接的な接触が可能となる。コンタクティング範囲4において加熱エレメント2は2つの電気的な線路6,7とコンタクティングされている。両電気的な線路6,7はハウジング部分3を通って案内されており、これによって両電気的な線路6,7は周辺環境に対してシールされている。第1の電気的な線路7は加熱エレメント2を、たとえばマイナスコンタクトを形成する金属製のコンタクトエレメント8に接続する。第2の電気的な線路6は一方では加熱エレメント2に接続されている。さらに、第2の電気的な線路6はコンタクトエレメント8と絶縁体9とを通って案内されており、この場合、この電気的な線路6はコンタクトエレメント8に対して電気的に絶縁されている。さらに、丸形コネクタ10が設けられている。この丸形コネクタ10はコンタクトエレメント8に対して絶縁体9によって絶縁されていて、電気的な線路6に接続されている。アースに接続されたコンタクトエレメント8に対して丸形コネクタ10に電圧を印加することにより、自己制御型の加熱エレメント2を所望の電圧で負荷することができ、これにより少なくとも加熱範囲5において加熱エレメント2の加熱を得ることができる。
【0018】
図1に示した加熱装置1では、自己制御型の加熱エレメント2の外面11が加熱範囲5において露出しているので、外面11は燃料を直接に加熱するために働く。この場合、加熱エレメント2はほぼピン形またはフィンガ形に形成されている。加熱エレメント2は、加熱範囲5の20mm〜50mmの突出長さおよび3.5mm〜5.5mmの加熱エレメント2の直径が与えられるように形成されていてよい。しかし、別の寸法が設定されていてもよい。特に、可能となる加熱温度が200℃またはこれに類する値に制限されているような加熱エレメント2においては、加熱装置1の個々のコンポーネントを、これらのコンポーネントの、熱による損傷が生じることなしに、耐熱性のプラスチックまたはコンポジット材料から製作することができる。たとえば、ハウジング部分3が、耐熱性のプラスチックまたはコンポジット材料から形成されていてよい。この場合、加熱したい媒体、特に燃料に対して十分な耐性を有するプラスチックが使用されると有利である。
【0019】
さらに、加熱エレメント2が加熱範囲5で燃料と直接に接触している、図1に示した加熱装置1では、加熱エレメント2が、可能となる温度範囲を考慮して燃料に対して十分な耐性を有する材料から形成されている。このことは、燃料または燃料混合物から形成され得る有機酸およびこれに類するものに対する耐性ならびにハロゲン化物含有の水溶液に対する耐性に関する。しかし、この材料はその都度の使用事例、ひいてはその都度加熱エレメント2と接触する媒体に関連して最適化されていてよい。
【0020】
加熱エレメント2を取り囲む周辺媒体の迅速でかつ有効な加熱を保証するためには、一般に比較的小さな面にわたって高い熱放出が必要となる。要求される典型的な加熱出力は約150W〜250Wである。特に加熱範囲5をも部分的に取り囲むハウジング部分3の場合には、ハウジング部分3による良好な熱搬送が有利である。
【0021】
図1に示した加熱エレメント2は可燃性の燃料と直接に接触しているので、信頼性の良い、迅速応答形の過熱防止が必要となる。加熱エレメント2の外面11は、いかなる時点でも燃料の着火温度を超過しないことが望ましい。典型的には、液体中での加熱エレメント2の熱放出は空気中よりも約4〜6倍高くなる。それゆえに、たとえば燃料供給の中断時に液体レベルが降下すると、既に極めて短い時間の後に過熱が発生する恐れがある。これにより、燃料空気混合物の着火または爆発の危険が生じる。これに相応して、外面11における加熱エレメント2の表面温度を、たとえば200℃よりも下に制限する、迅速応答形の過熱防止が重要となる。これにより、燃料混合物の着火温度が到達されることが阻止されている。たとえば、ガソリンの着火温度は組成に応じて約200℃〜280℃の範囲にある。メタノール、エタノールまたはその混合物の着火温度は、約400℃〜430℃の範囲にある。各使用事例に関連して、場合によっては、一方では高い熱放出を保証し、他方では信頼性の良い過熱防止を保証するために、選択された加熱エレメント2に関する最適化を行うことができる。
【0022】
ハウジング部分3は加熱エレメント2を収容していて、加熱装置1の外側の形状を形成している。ハウジング部分3は、耐熱性でかつ耐衝撃性のプラスチックから形成されていて、たとえば射出成形において1回のステップで1種のプラスチック成分から製作されていてよいので、加熱装置1の廉価な製造が可能となる。
【0023】
図2には、本発明の第2実施例による加熱装置1が概略的に図示されている。この第2実施例では、加熱装置1の加熱エレメント2の外面11が、少なくとも加熱範囲5において保護層12で被覆されている。この保護層12は加熱エレメント2の先端部13から、ハウジング部分3に形成されているシール円錐体14にまで延びている。たとえば浸漬または塗布によって、保護層12をあとから加熱エレメント2にコーティングすることができる。保護層12は媒体に対して耐性を有する保護ラッカ、特に燃料に対して耐性を有する保護ラッカから形成されていると有利である。この保護ラッカは適当な固体顔料の添加によって特に良熱伝導性となる。固体顔料としては、たとえば窒化ホウ素、黒鉛および/または炭化ケイ素が挙げられる。たとえば、保護層12が、窒化ホウ素で充填されたエポキシ樹脂またはシリコーン接着剤から形成されていてよい。
【0024】
図3には、本発明の第3実施例による加熱装置1が概略的に図示されている。この第3実施例では、自己制御型の加熱エレメント2がハウジング部分3によって完全に取り囲まれている。加熱エレメント2のこのような構成に関連して、外面11における加熱エレメント2の最大温度は所定の値に制限されているので、ハウジング部分3の熱的な損傷はハウジング部分3のための材料の適当な選択によって阻止され得る。特に、自己制御型の加熱エレメント2の加熱範囲5はハウジング部分3の被覆体15によって取り囲まれている。この被覆体15は先端部13からシール円錐体14にまで延びており、この場合、被覆体15の熱的な損傷が阻止されている。したがって、被覆体15を備えたハウジング部分3は加熱エレメント2の加熱範囲5をも、加熱エレメント2のコンタクティング範囲4をも取り囲んでいる。ハウジング部分3のための材料としては、特に耐熱性でかつ耐衝撃性でしかも良熱伝導性のプラスチックまたは適当なコンポジットが適している。射出成形において1種のプラスチック成分からの1回のステップで、ハウジング部分3の廉価な製造が可能となる。
【0025】
使用事例に応じて、ハウジング部分3の材料、特に被覆体15に、熱伝導率を改善するための添加剤を導入することができる。
【0026】
図4には、本発明の第4実施例による加熱装置1が概略的な断面図で図示されている。この第4実施例では、ハウジング部分3が第1のプラスチック成分21と第2のプラスチック成分22とから形成されている。この場合、第1のプラスチック成分21は範囲23において所定の区分にわたって電気的な線路6,7を取り囲んでいる。これらの電気的な線路6,7はハウジング部分3を通って加熱エレメント2にまで案内されている。第2のプラスチック成分22は加熱エレメント2の少なくとも1つの加熱範囲5を取り囲んでおり、この場合、図示の実施例では、加熱エレメント2が第2のプラスチック成分22によって完全に取り囲まれている。第2のプラスチック成分22は、熱伝導性でかつ耐燃料性の材料から形成されている。第2のプラスチック成分22は熱伝導性の充填剤を有しており、この熱伝導性の充填剤は第2のプラスチック成分22を通じた、周辺媒体に対する自己制御型の加熱エレメント2の熱伝導率を改善する。
【0027】
ハウジング部分3を2種またはそれ以上のプラスチック成分21,22から形成することにより、第1には廉価な規格材料を使用することができ、第2には熱伝導性の特殊材料を使用することができるので、比較的廉価な製造が得られると同時に、最適化された加熱出力が得られる。
【0028】
図5には、自己制御型の加熱エレメント2の特性線が、本発明を説明するための線図で示されている。この場合、縦座標に示した抵抗R(オーム)と、横座標に示した温度T(℃)との関係が示されている。縦座標に描かれた抵抗Rに関して対数的な表示が選択されている。自己制御型の加熱エレメント2はPTC抵抗(Kaltleiter)として形成されていると有利である。この場合、決定的な温度範囲において抵抗の正の温度係数が生ぜしめられる。たとえば、加熱エレメント2はチタン酸バリウムを主体として形成されていてよい。
【0029】
自己制御型の加熱エレメント2としては、所定の切換温度Tに合わせた、十分に電圧とは無関係な、つまり電圧変動の影響を受けない制御を行うことができる。抵抗Rminが生ぜしめられる温度Tminを起点として、温度Tが増大するにつれて抵抗Rは連続的に増大する。この場合、図示の実施例では、著しく増大する抵抗Rに基づき温度は200℃を上回ることができない。切換温度Tにおいて、設定された電圧と共に加熱エレメント2の送出された加熱出力を規定する抵抗Rが生ぜしめられる。これにより、各使用事例に関連して、適当な加熱エレメント2を選び出すことが可能となる。この加熱エレメント2では、第1には送出された加熱出力が、周辺媒体の所望の加熱を達成し、第2には、たとえば200℃よりも下への温度制限が保証されている。特に、適当な自己制御型の加熱エレメント2の選択により、120℃〜300℃の範囲の切換温度Tを設定することができる。この場合、燃料を加熱するためには、約170〜210℃の切換温度を有する加熱エレメント2が選択されていると有利である。
【0030】
加熱エレメント2のジオメトリ(幾何学的形状)的な構成は、片側でコンタクトされた、円筒形体、楕円形体または直方形体により規定されていてよい。しかし、別の構成、たとえば加熱エレメント2を形成するための、積層体として成層されかつ直列に接続された複数のディスク形の加熱素子も可能である。
【0031】
ハウジング部分3は、たとえば260℃よりも高い耐熱性を有するポリアミドから形成されていてよい。特に第2のプラスチック成分22のためには、改善された熱伝導率を有する材料、たとえば18W/mKの熱伝導率を有するE3603ポリアミド4,6(PA44,6);260℃まで耐熱性を有している20W/mKの熱伝導率を有するE5101ポリフェニレンスルフィド(PPS);または一層高い使用限界を有するフッ素ポリマ、たとえばPTFEまたはPVDFを使用することができる。
【0032】
加熱範囲5のためのコンポジット、特に第2のプラスチック成分22のためのコンポジットの加工および形状付与の際には、加工限界にまで付加的な充填剤を添加することもできる。熱伝導率を改善する金属、たとえば銅またはアルミニウムまたは良熱伝導性の材料、たとえば黒鉛、炭化ケイ素および窒化ホウ素から成る微粒状の粉末が挙げられる。付加的に、コンポジット表面にわたる熱導出を薄い肉厚さまたは構造化もしくはパターン化による表面積の増大によって最適化することができる。
【0033】
図6には、本発明の第5実施例による加熱装置1が概略的に図示されている。この第5実施例では、自己制御型の加熱エレメント2の加熱範囲5が、環状ディスクまたは孔付ディスクとして形成されている。このことは、たとえば燃料管路内の燃料の流れによって加熱エレメント2を有利に取り囲むことを可能にする。
【0034】
図7には、本発明の第6実施例による加熱装置1が概略的に図示されている。この第6実施例では、加熱エレメント2が鍵形に形成されているので、同じく増大された表面積が得られる。
【0035】
図8には、本発明の第7実施例による加熱装置1が概略的に図示されている。この第7実施例では、自己制御型の加熱エレメント2がディスク形に形成されているので、加熱エレメント2を取り囲む媒体への改善された熱放出を得ることができる。
【0036】
図6〜図8に示した実施例では、図2〜図4につき説明した手段を付加的に設けることが可能である。
【0037】
図9には、本発明の1実施例による燃料噴射システムの、燃料噴射弁30として形成されたコンポーネントが図示されている。燃料噴射弁30は電気的な接続部31を有している。この電気的な接続部31によって、電気的な線路を介して燃料噴射弁30を制御装置に接続することができ、これによりノズルボディ33に設けられた少なくとも1つのノズル開口32を介して行われる燃料の噴射を制御することができる。さらに、燃料噴射弁30はノズルボディ33に結合された弁ハウジング34を有している。この弁ハウジング34には、燃料流入管片35が設けられている。この燃料流入管片35を介して燃料が弁ハウジング34内に導入可能となる。この場合、燃料は弁ハウジング34とノズルボディ33とを通じてノズル開口32にまで案内される。図9には、燃料噴射弁30の内部が部分的に開かれて簡略的に図示されており、この場合、弁ハウジング34内部の燃料室36が見えている。燃料室36はこの場合、燃料通路によって形成されていてもよい。加熱装置1は部分的に弁ハウジング34内にねじ込まれており、この場合、弁ハウジング34に対してハウジング部分3のシール円錐体14のシールが行われる。これにより、加熱エレメント2は燃料室36内に位置しているので、加熱エレメント2の加熱範囲5の傍らを流れる燃料が予熱される。
【0038】
念のため付言しておくと、図9に示したような燃料噴射弁30内への加熱装置1の使用は、可能となる1使用事例に過ぎない。熱技術(Thermotechnik)または安全技術における別の使用可能性も考えられる。この場合、過熱防止されたコンパクトな加熱装置1を、外側範囲における敏感な装置、たとえばポンプ、作動モータまたはカメラのための寒冷防止のために使用することができる。
【0039】
本発明は、上記実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 加熱装置
2 加熱エレメント
3 ハウジング部分
5 加熱範囲
6 電気的な線路
7 電気的な線路
11 外面
12 保護層
21 第1のプラスチック成分
22 第2のプラスチック成分
30 燃料噴射弁
33 ノズルボディ
35 燃料流入管片
36 燃料室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのハウジング部分(3)と、該ハウジング部分(3)内に少なくとも部分的に埋め込まれた加熱エレメント(2)とを備える加熱装置(1)であって、
加熱エレメント(2)が、自己制御型の加熱エレメント(2)として形成され、
自己制御型の加熱エレメント(2)が、ハウジング部分(3)によって取り囲まれており、
ハウジング部分(3)が、熱伝導性のプラスチックまたはコンポジットから形成されている、ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
自己制御型の加熱エレメント(2)が、PTC抵抗を有している、請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
ハウジング部分(3)が、第1のプラスチック成分(21)と、少なくとも1つの第2のプラスチック成分(22)とから形成されており、第1のプラスチック成分(21)が、少なくとも所定の区分にわたって加熱エレメント(2)のコンタクティングのための電気的な線路(6,7)を取り囲んでおり、第2のプラスチック成分(22)が、加熱エレメント(2)の加熱範囲(5)を取り囲んでおり、第2のプラスチック成分(22)が、熱伝導性でかつ耐燃料性の材料から形成されている、請求項1又は2記載の加熱装置。
【請求項4】
第2のプラスチック成分(22)が、少なくとも1種の熱伝導性の充填剤を有している、請求項3記載の加熱装置。
【請求項5】
前記充填剤が、少なくとも大体において金属粉末、黒鉛、炭化ケイ素および/または窒化ホウ素から形成されている、請求項4記載の加熱装置。
【請求項6】
加熱エレメント(2)が、少なくとも1つの加熱範囲(5)を有しており、該加熱範囲(5)が、ピン形、ディスク形、孔付ディスク形、環形または鍵形に形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の加熱装置。
【請求項7】
燃料流入管片(35)とノズルボディ(33)とを備え、該ノズルボディ(33)から燃料が噴射可能である燃料噴射弁(30)であって、
請求項1から6までのいずれか1項記載の加熱装置(1)が設けられており、該加熱装置(1)が、燃料流入管片(35)からノズルボディ(33)にまで案内される燃料を予熱するために働くことを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項8】
運転中に少なくとも部分的に燃料で充填されている燃料室(36)と、該燃料室(36)内に設けられた燃料を予熱するために働く、請求項1から6までのいずれか1項記載の加熱装置(1)とを備えた燃料噴射システムのコンポーネント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79799(P2013−79799A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253904(P2012−253904)
【出願日】平成24年11月20日(2012.11.20)
【分割の表示】特願2010−529319(P2010−529319)の分割
【原出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】