説明

液体燃料電池システム

【課題】液体燃料電池の長期保管後の起動時における出力低下を防止し、かつメタノール直接型の液体燃料電池搭載四輪車に適用可能である、コンパクトな構造の液体燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック10と、燃料容器1内の燃料と水容器2内の水とを混合して所定の濃度の燃料水溶液を生成して燃料水溶液入口管16を介して燃料電池スタック10に供給する燃料水溶液供給手段と、燃料電池スタック10に作動用の空気を供給する空気供給手段を備えた液体燃料電池システム36であって、燃料水溶液入口管16には、燃料水溶液を貯留する燃料水溶液保持用の燃料保持容器4が設けられ、燃料水溶液入口管16の燃料保持容器4の出口側には、燃料水溶液入口管16を開閉する開閉弁41が設けられ、燃料保持容器4は、燃料電池スタック10よりも上方に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を使用して起電力を発生させる燃料電池を備えた液体燃料電池システムに係り、特に車両の走行駆動用燃料電池システムにおける、燃料電池内部の液体燃料の乾燥による出力特性の低下防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、輸送用車両などの分野では、地球環境に配慮して、複数の燃料電池セルを積層した燃料電池スタックを駆動用エネルギー源とする液体燃料電池システムが搭載されている。このような液体燃料電池システムにおいては、メタノール水溶液等の液体燃料を燃料電池スタックに供給して起電力を発生させている。
図1は、固体高分子型(PEM型)燃料電池が搭載された燃料電池搭載四輪車の1例を示している。
図1において、車体30の前後位置には、左右一対の前後車輪32,33が回転自在にそれぞれ配設されている。また、車体30の前部30aは、車両後方に向かって斜め上方へ立設され、該前部30aの上部には、運転操作用のハンドル34が設けられている。さらに、車体30の上方には、シートクッション31a及びシートバック31b等を備えたシート31が配置されており、該シート31の下方には、内部に液体燃料電池システム36を収納した液体燃料電池システム収納部36aが設けられている。
【0003】
このような液体燃料電池システム36においては、液体燃料電池を長時間放置した場合、放置後の再始動時には、電解質膜が乾燥化した状態にあり、その場合には、再始動時において再度電解質膜を湿潤させることが容易ではなく、所要の定格出力が得られるように元の性能まで回復するまでには、例えば何日というような長い時間が必要とされていた。
特に、電解質膜の乾燥化の問題は、空気の圧送を行わない大気開放型の液体燃料電池で顕著であり、上述したように、運転後に放置するだけで乾燥化の問題が発生し、出力特性が短時間で低下するおそれがあった。
【0004】
かかる液体燃料電池システムにおいて、液体燃料電池を放置した後の再始動時に電解質膜の乾燥化した状態を防止するための従来技術としては、特許文献1(特開2004−146236号公報)、特許文献2(特開2004−47427号公報)、特許文献3(特開2003−77512号公報)、特許文献4(特開2005−222823号公報)等が提供されている。
【0005】
特許文献1の技術は、液体燃料電池内部の水分状態を適切に制御可能としたものであり、複数の検出手段によりガスが流通する部位の水分状態を検出し、その検出結果に基づいて燃料電池の内部の水分状態を診断している。このため、特許文献1には、ガスの流路中における液滴滞留や電解質膜の乾燥を防止する手段が開示されている。
【0006】
特許文献2の技術は、運転時や起動時の出力低下の問題を未然に防止できる燃料電池装置及び燃料電池の制御方法を提供するものであり、液体燃料電池に掛かる負荷を当該液体燃料電池の出力状態に応じて可変させる負荷制御部や空気供給制御部を有する構成となっている。このため、特許文献2には、燃料電池内での生成水の発生量が一時的に増大し、酸素電極の乾燥化を抑制するとともに、電解質を適正な湿潤状態に保持する手段が開示されている。
【0007】
特許文献3の技術は、メタノール直接型燃料電池に関するものであり、発電開始の際に、負極へのメタノール水溶液の供給を先に開始し、その後、正極への酸化ガス供給を開始するようにした方法が開示されている。
【0008】
特許文献4の技術は、燃料電池の使用開始に際しての、ユーザの操作性を改善できる燃料電池の発電方法を提供するものであり、発電運転の休止期間から発電運転期間へ移行する起動時には、発電運転の休止期間にセルの燃料極に存在していた水またはクロスオーバーが発生しない濃度の燃料水溶液の少なくとも一部を回収して保管し、さらに燃料水溶液の濃度を適正濃度にして発電運転を開始するようにした手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−146236号公報
【特許文献2】特開2004−47427号公報
【特許文献3】特開2003−77512号公報
【特許文献4】特開2005−222823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の液体燃料電池システムでは、一般に長期保管後に、燃料電池スタックの燃料電池内部の乾燥化により、起動時に燃料電池の出力低下が起こるという問題があった。
すなわち、燃料電池を長時間放置した場合、放置後の再始動時には、電解質膜が乾燥化した状態にあり、その再始動時においては再度電解質膜を一気に湿潤させることが容易ではなかった。そのため、長期保管後の起動時には燃料電池の出力低下が避けられず、運転初期に必要な出力が得られないおそれがあった。
【0011】
このような液体燃料電池システムの運転中の電解質膜の乾燥防止による燃料電池の出力低下については、特許文献1及び特許文献2に開示されているが、長期保管後の起動時における燃料電池の出力低下については、特許文献1及び特許文献2の両者共に述べられていない。
【0012】
また、特許文献3には、メタノール直接型燃料電池において、発電開始の際に、負極へのメタノール水溶液の供給を先に開始し、次いで正極への酸化ガス供給を開始する方法が提示されているが、長期保管後の起動時においては、燃料電池の出力低下を防止する方法が概念的に開示されているに過ぎず、具体的手段は示されていない。
【0013】
さらに、特許文献4には、発電運転の休止期間後の起動時には、発電運転の休止期間にセルの燃料極に存在していた水またはクロスオーバーが発生しない濃度の燃料水溶液の少なくとも一部を回収して保管し、該燃料水溶液の濃度を適正濃度にして発電運転を開始するようにする手段が提示されているが、メタノール水溶液を循環タンク、ポンプにて燃料電池スタックを通して循環タンクに循環させる手段が示されていない。
【0014】
以上のように、燃料電池を長期保管後の起動時に出力低下を防止する基本的構成については、特許文献1〜4に示されているが、燃料電池長期保管後の起動時に燃料電池の出力低下する具体的手段、特にメタノール直接型の燃料電池搭載四輪車において、図1の燃料電池システム収納部36aのような狭い車載スペースに燃料電池システム36を搭載可能とするような具体的構成は、示されていない。
【0015】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、液体燃料電池の長期保管後の起動時における出力低下を防止し、かつメタノール直接型の液体燃料電池搭載四輪車に適用可能である、コンパクトな構造の液体燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、電解質の両側を負極と正極とで挟んで接合し、メタノール水溶液を含む燃料と酸化性ガスとを前記負極と正極に用いて発電を行う燃料電池スタックと、燃料容器内の燃料と水容器内の水とを混合して所定の濃度の燃料水溶液を生成して燃料水溶液入口管を介して前記燃料電池スタックに供給する燃料水溶液供給手段と、前記燃料電池スタックに作動用の空気を供給する空気供給手段を備えた液体燃料電池システムであって、前記燃料水溶液入口管には、前記燃料水溶液を貯留する燃料水溶液保持用の燃料保持容器が設けられ、前記燃料水溶液入口管の前記燃料保持容器の出口側には、前記燃料水溶液入口管を開閉する開閉弁が設けられ、前記燃料保持容器は、前記燃料電池スタックよりも上方に配置されている。
【0017】
また、本発明において、前記燃料電池スタックから発電作用後の燃料が燃料液出口管を通して導入されるとともに、前記燃料容器内の燃料と前記水容器内の水とを混合して、所定の濃度の燃料水溶液を生成して前記燃料水溶液入口管を介して前記燃料電池スタックに供給する循環容器を備え、該循環容器は、前記燃料保持容器よりも下方に配置されており、上方に配置した前記燃料保持容器と下方に配置した前記燃料電池スタック及び前記循環容器とを循環路で連結し、該循環路の燃料保持容器出口に前記開閉弁が設けられている。
【0018】
さらに、本発明において、前記燃料保持容器は、下部が漏斗状に形成された筒状体であり、前記燃料保持容器の上部には、空気口を開閉する空気弁が設けられ、前記燃料保持容器の上面が前記循環容器の上限水位よりも上方に配置されているとともに、前記燃料保持容器の底面が前記循環容器の上限水位よりも下方に配置されている。
そして、本発明において、前記循環容器と前記燃料保持容器との間に位置する前記循環路には、前記循環容器側から前記燃料保持容器に向う燃料水溶液の流れのみを許容する逆止弁が設けられている。
【発明の効果】
【0019】
上述の如く、本発明に係る液体燃料電池システムは、電解質の両側を負極と正極とで挟んで接合し、メタノール水溶液を含む燃料と酸化性ガスとを前記負極と正極に用いて発電を行う燃料電池スタックと、燃料容器内の燃料と水容器内の水とを混合して所定の濃度の燃料水溶液を生成して燃料水溶液入口管を介して前記燃料電池スタックに供給する燃料水溶液供給手段と、前記燃料電池スタックに作動用の空気を供給する空気供給手段を備え、前記燃料水溶液入口管には、前記燃料水溶液を貯留する燃料水溶液保持用の燃料保持容器が設けられ、前記燃料水溶液入口管の前記燃料保持容器の出口側には、前記燃料水溶液入口管を開閉する開閉弁が設けられ、前記燃料保持容器は、前記燃料電池スタックよりも上方に配置されているので、燃料保持容器内には燃料水溶液が常に貯留されることになり、燃料水溶液入口管を開閉する開閉弁の開閉を適切に行うことにより、燃料保持容器から燃料電池スタックの間に常時燃料を存在させることが可能になった。
【0020】
したがって、本発明の液体燃料電池システムによれば、液体燃料電池を長時間放置した場合でも燃料電池スタックの電解質膜は常時湿潤にしており、電解質膜の乾燥化を防ぐことができ、長期保管後等の起動時における液体燃料電池の出力低下の発生を確実に防止できる。しかも、液体燃料電池を長時間放置した場合に、燃料電池スタックの電解質膜を常時湿潤にして乾燥化するのをコンパクトな構造で防げるので、メタノール直接型の燃料電池搭載四輪車に対して、最適な構造の液体燃料電池システムを提供することができる。
【0021】
また、本発明において、前記燃料電池スタックから発電作用後の燃料が燃料液出口管を通して導入されるとともに、前記燃料容器内の燃料と前記水容器内の水とを混合して、所定の濃度の燃料水溶液を生成して前記燃料水溶液入口管を介して前記燃料電池スタックに供給する循環容器を備え、該循環容器は、前記燃料保持容器よりも下方に配置されており、上方に配置した前記燃料保持容器と下方に配置した前記燃料電池スタック及び前記循環容器とを循環路で連結し、該循環路の燃料保持容器出口に前記開閉弁が設けられているので、開閉弁の開閉を適切に行うことにより、燃料保持容器から燃料電池スタック及び循環容器の間の循環路内は、常時燃料が存在することになり、上記と同様、液体燃料電池を長時間放置した場合でも、燃料電池スタックの電解質膜は常時湿潤になっており、乾燥化するのをより確実に防止できる。
【0022】
さらに、本発明において、前記燃料保持容器は、下部が漏斗状に形成された筒状体であり、前記燃料保持容器の上部には、空気口を開閉する空気弁が設けられ、前記燃料保持容器の上面が前記循環容器の上限水位よりも上方に配置されているとともに、前記燃料保持容器の底面が前記循環容器の上限水位よりも下方に配置されているので、燃料保持容器から燃料電池スタック及び循環容器への燃料の移動を気泡の混入がなく円滑に行うことができる。
そして、本発明において、前記循環容器と前記燃料保持容器との間に位置する前記循環路には、前記循環容器側から前記燃料保持容器に向う燃料水溶液の流れのみを許容する逆止弁が設けられているので、燃料水溶液が燃料保持容器から循環容器に流れるのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明が適用される液体燃料電池搭載四輪車の全体構成を示す概略側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る液体燃料電池システムを示す構成図である。
【図3】上記第1実施形態における要部の燃料電池システムであり、液体燃料電池の停止直後の状態を示す構成図である。
【図4】上記第1実施形態における要部の燃料電池システムであり、液体燃料電池の停止時(1)の状態を示す構成図である。
【図5】上記第1実施形態における要部の燃料電池システムであり、液体燃料電池の停止時(2)の状態を示す構成図である。
【図6】上記第1実施形態における要部の燃料電池システムであり、液体燃料電池の起動時(1)の状態を示す構成図である。
【図7】上記第1実施形態における要部の燃料電池システムであり、液体燃料電池の起動時(2)の状態を示す構成図である。
【図8】上記第1実施形態における機器の配置を示すものであり、(A)はその正面図、(B)は(A)のZ矢視図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明が適用される固体高分子型(PEM型)燃料電池を用いた液体燃料電池搭載四輪車の全体構成の概略側面図である。
本実施形態の液体燃料電池搭載四輪車においては、車体30の上方に位置するシート31の下方に液体燃料電池システム収納部36aが設けられており、該液体燃料電池システム収納部36a内には、液体燃料電池システム36が収納されている。一方、車体30の前部30a内には、燃料容器1が配置されている。
【0026】
本実施形態の液体燃料電池システム36は、上述したように、液体燃料電池を長時間放置した後の再始動時には電解質膜が乾燥化した状態にあり、その再始動時においては再度電解質膜を湿潤させることが容易ではなく、所要の定格出力が得られるように元の性能まで回復するまでには、長期間が必要とされるものである。
[第1実施形態]
【0027】
図2は、本発明の第1実施形態における液体燃料電池システムの構成図である。
本実施形態の液体燃料電池システム36は、図2に示すように、所定の位置関係で配置された燃料電池スタック10、燃料容器1、水容器2、循環容器3、燃料保持容器4、ブロア5及びラジエータ110を主として備えており、これら構成要素は、各種の管路を介して互いに接続されている。このうち、燃料保持容器4は、特に本液体燃料電池システムの重要な特徴部分の1つである。
【0028】
燃料容器1にはメタノール燃料が収容され、水容器2には水が収容されている。そして、燃料電池スタック10の燃料水溶液入口10a側には、燃料水溶液管16及び燃料液入口管21が接続され、該燃料電池スタック10の電解質膜を経た燃料の出口10b側には、燃料液出口管22が接続されている。
循環容器3には、当該燃料容器1からのメタノール燃料が燃料ポンプ12により燃料管15を通して供給され、水容器2からの水が水ポンプ14により水管17を通して供給されている。すなわち、循環容器3では、燃料管15からのメタノール燃料と、水管17からの水とを混合することによって、所定の最適濃度に調整されたメタノール燃料水溶液が生成されるようになっている。このため、循環容器3には、連通管9a及びポンプ9bを介して濃度センサ9が接続されており、この濃度センサ9によって、循環容器3内の燃料の濃度を検出するようにしている。
また、燃料電池スタック10内で高温化された燃料水溶液は、水管18を通ってラジエータ110に送られ、当該ラジエータ110で放熱された後、その冷却水が水管19を通って水容器2に供給されるようになっている。
【0029】
本実施形態の液体燃料電池システム36において、循環容器3で生成されたメタノール燃料水溶液は、燃料循環ポンプ11により燃料水溶液管16を通して燃料水溶液保持用の燃料保持容器4に供給されるようになっている。しかも、循環容器3と燃料保持容器4との間に位置する燃料水溶液管16の途中には、循環容器3側から燃料保持容器4に向う燃料水溶液の流れのみを許容する逆止弁20が設けられている。なお、燃料保持容器4は、当該燃料水溶液を一定量貯留することが可能な容積を有している。
【0030】
また、本実施形態の液体燃料電池システム36においては、図3〜図7に示すように、燃料保持容器4と燃料電池スタック10の燃料水溶液入口側10aとの間が燃料液入口管21で連結され、該燃料液入口管21には開閉弁41が設置されている。このため、燃料保持容器4と燃料電池スタック10との間は、開閉弁41の開閉によって連通あるいは遮断されるようになっている。
【0031】
そして、燃料電池スタック10内においては、電解質の両側を負極と正極とで挟んで接合し、負極に燃料としてのメタノール水溶液を供給するとともに、正極にブロワ5(図2参照)からの空気による酸化性ガスを供給する構成を有する単電池セルが複数個積層されたセルスタックを備えている。
この燃料電池スタック10において、発電作用を行った燃料は、燃料液出口管22を通って循環容器3に循環されるように構成されている。
すなわち、本実施形態の液体燃料電池システム36においては、循環容器3からの燃料水溶液が、燃料水溶液管16を通って燃料保持容器4に至り、更に燃料保持容器4から燃料電池スタック10における電解質膜を経て、燃料液出口管22を通って循環容器3に至るように形成された燃料の循環路101が設けられている。
【0032】
また、本実地形態の燃料保持容器4は、図2〜図7に示すように、底部が先細りの漏斗状部4fに形成された筒状体(この例では四角筒状体であるが、これに限定されず、例えば円筒体でも良い)であり、燃料水溶液を貯留する一定容積を有している。そして、この燃料保持容器4の上部には、開閉可能に構成された空気弁42と多数の小孔からなる通気孔43が設けられている。通気孔43の小孔は、気体のみを通過し、液体は通過しない大きさに設定されている。
【0033】
なお、図8は、本発明の第1実施形態における機器類の配置図であり、(A)は正面図、(B)は(A)のZ矢視図(平面図)である。
本実施形態においては、図8(A)に示すように、前記燃料保持容器4が、燃料電池スタック10の上部に配置され、前記漏斗状部4fの下部が下方に向けられている。また、燃料保持容器4の漏斗状部4fの下部よりも下方には、燃料電池スタック10及び循環容器3が配置されている。
【0034】
かかる構成にすれば、燃料電池スタック10の運転停止後にも、燃料保持容器4内に溜まった燃料を、重力により燃料電池スタック10を通過して循環容器3へ流せ、燃料電池スタック10の電解質膜の乾燥化を防止することが可能となる。
また、燃料保持容器4の底部を漏斗状部4fに形成し、燃料保持容器4の下方に、燃料電池スタック10及び循環容器3を配置していることから、燃料保持容器4から燃料電池スタック10及び循環容器3への燃料の重力による移動が、気泡の混入がなく、円滑に行われることになる。
【0035】
本発明の第1実施形態において、液体燃料電池システム36の運転開始時には、燃料保持容器4の出口の開閉弁41を閉じ、燃料循環ポンプ11を稼動し、また燃料保持容器4の空気弁42を開いて循環容器3で混合調整された最適な濃度の燃料水溶液を、燃料循環ポンプ11により、燃料水溶液管16を通して燃料保持容器4に供給する。さらに、燃料保持容器4が満水になったところで空気弁42を閉じ、開閉弁41を開いて、燃料電池スタック10に燃料水溶液を供給する。そして、燃料電池スタック10で発電に供された後の燃料は、燃料液出口管22を通って循環容器3に供給される。このとき、燃料循環ポンプ11の流量と燃料電池スタック10に供給される燃料水溶液の流量は等しい。
また、図3において、運転時における循環容器3の水位つまり運転水位3cは、下限水位3bと上限水位3aとの間に予め定めてられている。しかも、燃料保持容器4の上面は、循環容器3の上限水位3aよりも上方に配置され、運転停止時に燃料保持容器4からの燃料水溶液が燃料電池スタック10を通って循環容器3に流れるようになっている。運転水位3cは、燃料保持容器4の底面よりも低く設定され、燃料保持容器4と循環容器3との間の燃料電池スタック10を含む流路が空にならないように構成されている。
【0036】
次に、本実施形態の液体燃料電池システム36の停止時、及び停止時からの起動時の動作を図3〜図7に基づき説明する。なお、図3〜図7において、図1及び図2と同じ部材は同一の符号で示している。
【0037】
図3は、液体燃料電池の停止直後の構成図である。
停止直後には、燃料保持容器4は満水であり、空気弁42は閉状態である。ここで開閉弁41を開くと、燃料保持容器4内の燃料水溶液が燃料電池スタック10及び循環容器3に向けて流れる。
【0038】
図4は液体燃料電池の停止時(1)の構成図、図5は液体燃料電池の停止時(2)の構成図である。
燃料水溶液は、停止時(1)の燃料保持容器4の満水時から開閉弁41を開くと、燃料電池スタック10及び循環容器3が燃料保持容器4よりも下方に配置されているので、燃料保持容器4から円滑に燃料液入口管21を通って燃料電池スタック10に供給されて発電に供され、さらに燃料は燃料電池スタック10を経て、燃料液出口管22を通って循環容器3に供給される。これに伴って、燃料保持容器4の水位4sは下降し、循環容器3の水位3sは上昇する。
【0039】
そして、図5(液体燃料電池の停止時(2))に示すように、燃料保持容器4の水位4sと循環容器3の水位3sが等しくなった時(水位40)、燃料保持容器4側から燃料電池スタック10を通る循環容器3への燃料の供給は停止する。なお、この場合において、燃料電池スタック10からの電力に余裕があれば、循環容器3側から燃料保持容器4側に燃料を供給しても良い。
【0040】
図6は液体燃料電池の停止時後の起動時(1)の構成図、図7は停止時後の起動時(2)の構成図である。
起動時(1)において、燃料保持容器4はその水位4sが循環容器3の水位3sと等しくなって水位4sが低下しているので(水位40)、空気弁42を開いて開閉弁41を閉じる。そして、循環容器3で混合調整された最適濃度の燃料水溶液を、燃料循環ポンプ11により、燃料水溶液管16を通して燃料保持容器4に供給する。これにより、燃料保持容器4の水位4sが上昇し、循環容器3の水位3sが下降する。
【0041】
そして、図7(液体燃料電池の起動時(2))に示すように、燃料保持容器4の水位4sが満水になったとき、空気弁42を閉じ、開閉弁41を開く。これにより、燃料保持容器4から円滑に燃料液入口管21を通って燃料電池スタック10に供給されて発電に供され、さらに燃料は燃料電池スタック10を経て、燃料液出口管22を通って循環容器3に供給される。
【0042】
このように構成された本発明の第1実施形態の液体燃料電池システム36においては、燃料電池スタック10及び循環容器3よりも高い位置の上部に、燃料水溶液を貯留する容積を備えた燃料水溶液保持用の燃料保持容器4が配置され、該燃料保持容器4の下流側でかつ燃料電池スタック10の上流側の循環路101に該循環路101を開閉する開閉弁41が設けられているので、開閉弁41の開閉操作を適切に行うことにより、燃料保持容器4から燃料電池スタック10及び循環容器3の間は、常時燃料が存在することになる。したがって、本実施形態の液体燃料電池システム36によれば、液体燃料電池を長時間放置した場合でも燃料電池スタック10の電解質膜は湿潤にされているため、燃料電池スタック10が乾燥化するのを防ぐことができ、長期保管後等の起動時における出力の低下の発生を確実に防止できる。
【0043】
また、本実施形態の液体燃料電池システム36では、燃料電池スタック10及び循環容器3よりも上部に、燃料水溶液を貯留する一定容積を有する燃料保持容器4が配置されているため、液体燃料電池を長時間放置した場合でも燃料電池スタック10の電解質膜を常時湿潤にして乾燥化を防止するコンパクトな構造となり、メタノール直接型の液体燃料電池搭載四輪車に対して最適な構造を得ることができる。
[第2実施形態]
【0044】
また、図2において、本発明の第2実施形態の液体燃料電池システム36として、循環容器3を燃料電池スタック10よりも高い位置に配置し、該循環容器3の上部に前記のような空気弁42および通気孔43を設けて、該循環容器3を燃料保持容器4となし、さらに燃料水溶液管16の循環容器3出口部に開閉弁41を配置する構成も、本発明に含まれる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施形態では、本実施形態の液体燃料電池システム36を四輪車に搭載したが、三輪車などに搭載しても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 燃料容器
2 水容器
3 循環容器
3a,3b,3c 水位線
4 燃料保持容器
4f 漏斗状部
3s,4s 水位
5 ブロワ
9 濃度センサ
10 燃料電池スタック
11 燃料循環ポンプ
12 燃料ポンプ
14 水ポンプ
15 燃料管
16 燃料水溶液管
17 水管
18 水管
19 水管
20 逆止弁
22 燃料液出口管
21 燃料液入口管
30 車体
30a 前部
32,33 車輪
36 燃料電池システム
36a 燃料電池システム収納部
41 開閉弁
42 空気弁
43 通気孔
101 燃料の循環路
110 ラジエータ





【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質の両側を負極と正極とで挟んで接合し、メタノール水溶液を含む燃料と酸化性ガスとを前記負極と正極に用いて発電を行う燃料電池スタックと、燃料容器内の燃料と水容器内の水とを混合して所定の濃度の燃料水溶液を生成して燃料水溶液入口管を介して前記燃料電池スタックに供給する燃料水溶液供給手段と、前記燃料電池スタックに作動用の空気を供給する空気供給手段を備えた液体燃料電池システムであって、
前記燃料水溶液入口管には、前記燃料水溶液を貯留する燃料水溶液保持用の燃料保持容器が設けられ、前記燃料水溶液入口管の前記燃料保持容器の出口側には、前記燃料水溶液入口管を開閉する開閉弁が設けられ、前記燃料保持容器は、前記燃料電池スタックよりも上方に配置されていることを特徴とする液体燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池スタックから発電作用後の燃料が燃料液出口管を通して導入されるとともに、前記燃料容器内の燃料と前記水容器内の水とを混合して、所定の濃度の燃料水溶液を生成して前記燃料水溶液入口管を介して前記燃料電池スタックに供給する循環容器を備え、該循環容器は、前記燃料保持容器よりも下方に配置されており、上方に配置した前記燃料保持容器と下方に配置した前記燃料電池スタック及び前記循環容器とを循環路で連結し、該循環路の燃料保持容器出口に前記開閉弁が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料保持容器は、下部が漏斗状に形成された筒状体であり、前記燃料保持容器の上部には、空気口を開閉する空気弁が設けられ、前記燃料保持容器の上面が前記循環容器の上限水位よりも上方に配置されているとともに、前記燃料保持容器の底面が前記循環容器の上限水位よりも下方に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の液体燃料電池システム。
【請求項4】
前記循環容器と前記燃料保持容器との間に位置する前記循環路には、前記循環容器側から前記燃料保持容器に向う燃料水溶液の流れのみを許容する逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の液体燃料電池システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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