説明

液体特に血液の自動分析機用のシリンジブロック

複数のシリンジ(2)と1つのマニホルド(3)とを備えたシリンジブロック(1)であって、夫々のシリンジは吸引容積を備え、マニホルドは、電磁弁と、電磁弁を内部容積に直接に接続する第1管路と、電磁弁からサンプル及び/又は他の液体用のコンテナの方へ延長する第2の管路とを備え、シリンジの少なくとも1つはエアポンプ(15、16)である。シリンジブロックはその使用に用いる種々の構成要素に対する支持体として使うことができ、空調された囲いの中に配置することができる。このようなシリンジブロックは液体の自動分析機で使用するのに特に適しており、エアポンプは特にサンプルの採取、及び/又は、サンプルを容れた種々の槽の排液と清掃に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体特に血液の自動分析機に用いるシリンジ・ブロック(即ち、一セットのシリンジ)に関する。本発明は、更に、斯るシリンジブロックを備えた自動分析機に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンジは自動分析機の基本的要素である。それらの作動は、特に分析すべき液体や分析に用いる試薬の正確な計量の点で、信頼性がなければならない。配管やモータ系や弁や関連する電子機器のようなシリンジ付属装置についても同様である。従って、分析を狂わしたり不可能にしたりすることのある故障や種々の漏れのリスクを最大限に低減するのが望ましい。また、実施コストやこれらの自動機のメンテナンスの時間とコストを可能な限り低減することが望ましい。
【0003】
斯る自動分析機の信頼性を向上させる目的で、シリンジの運動を制御するモータの数を減少させることが特に提案されている。即ち、文献FR 2,815,719は試薬の計量分配をつかさどる複数のシリンジに共通の1つのモータ系を提案している。
【0004】
しかしながら、自動分析機は更に多数の難点、特に種々の構成要素の間で多数の油(水)圧ケーブルおよび電気ケーブルをまとめるという難点を呈し、これは種々の構成要素の組立やメンテナンスのコストを増加させる。即ち、油圧配管を構成する材料は特に老化に敏感である。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、組立およびメンテナンスのコストを低減しながらも自動分析機の信頼性を向上させることの可能な装置を提供することである。
【0006】
本発明によれば、斯る装置は液体サンプルの自動分析機で使用するのに特に適したシリンジブロックであり、このシリンジブロックは複数のシリンジと1つのマニホルドとを備え、夫々のシリンジは相互間に1つの内部容積を画成する1つのケーシングと1つのピストンとを備え、前記マニホルドは、切換え用電磁弁と、電磁弁を夫々の内部容積(その変化は例えば自動分析機で使用する流体又は液体の排除を可能にする)に直接に接続する第1の管路と、電磁弁から付属装置の方へ(特にサンプル及び/又は他の液体用のコンテナの方向へ)延長する第2の管路とを備えている。このように、これらのシリンジは直接にマニホルド上に搭載されているので、油圧(水圧)ケーブルが限定せられ、従って、特に漏れのおそれが制限される。
【0007】
付属装置は、好ましくは、第2の管路によって電磁弁に直接に接続するか、或いは、マニホルドと付属装置との間で第2管路をパイプによって延長させることができる。
【0008】
好ましくは、シリンジブロックは、更に、エアポンプを有することができる。エアポンプは少なくとも1つ又は複数のシリンジを有することができる。このエアポンプは、自動分析機において、サンプルの計数の目的でサンプルを採取するにあたり、槽内に負圧を生成するために特に設けることができる。エアポンプは、更に、廃棄物(即ち、今終了した分析で使用した不要な液体)を吸引するために設けることができる。これらの廃棄物は、また、使用済みの洗浄液であり得る。エアポンプは分析に使用した槽や室内の廃棄物を吸引してごみ箱に廃棄するのを可能にする。
【0009】
シリンジブロックは内部管路が成形によって形成された1つ若しくは複数の部品を有することができる。従って、これらの部品はプラスチック材料で形成することができる。このようにして形成した管路は特に老化しにくい。
【0010】
エアポンプは同時に又は同時にではなく作動される少なくとも2つのシリンジを有することができ、これは嵩を制限しながらも大きな容量をエアポンプに与えるのを可能にする。更に、これは、エアポンプを構成する各シリンジのケーシングの直径をより小さくするのを可能にし、従って、シール性の問題を低減すると共に夫々のピストンに対する力を小さくするのを可能にする。
【0011】
好ましくは、すべてのシリンジのピストンは、それらが夫々のケーシングの内部で同時に同じ運動をするように互いに強固に連結されている。従って、電磁弁は、使用していない各シリンジが、使用中のシリンジと同時に運動するにも拘わらず、液体を吸引して同じ領域に排出するように(従って、ニュートラル動作を行うように)配置することができる。
【0012】
シリンジブロックは、更に、シリンジブロックが組み込まれる装置(特に、自動分析機)の作動に必要なある種の構成要素を有することができ、これらの要素は有利なことにマニホルドに固定され、こうしてマニホルドは支持体として作用する。これらの構成要素は、少なくとも1つの希釈室、及び/又は、少なくとも1つの測定室、及び/又は、少なくとも1つの培養室、及び/又は、少なくとも1つの油圧循環容器、及び/又は、少なくとも1つの光学台を有する。また、1つの構成要素は電子回路を搭載したカードであり、この電子回路はシリンジブロックを自動分析機で使用するときに分析で使用される。このように、シリンジブロックに組み込まれているので、すべての構成要素は互いに接近していると共に、特にマニホルドと種々の液体を分配する電磁弁に接近している。
【0013】
シリンジブロックは更に空調された囲いの中に配置することができる。液体や構成要素は液体の分析や構成要素の作動にとって理想的な条件に維持することができる。
【0014】
更に、本発明は、本発明のシリンジブロックを備えた自動分析機、特に血液自動分析機、を提供する。
【0015】
本発明の他の特徴や利点は非限定的な実施例に関する以下の記載から更に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は血液自動分析機に組み込むようになったシリンジブロック1を示す。
【0017】
シリンジブロックは平行に配列された6つのシリンジ11〜16のセットを備え、これらのシリンジのすべてのケーシングはほぼ平行六面体型の唯一かつ同一のケーシング部品2内に形成されている。これらのケーシングは、夫々のピストン21〜26(図3参照)がケーシングの下端を横切って、ケーシング部品2の下面を横切って摺動するように、垂直に配置してある。
【0018】
図1では、すべてのピストンは唯一かつ同一のクランプ9に強固に固定してある。このクランプは1つのモータに連結してあり、このクランプがすべてのピストンをして夫々のケーシングの内側で同一の運動M(ここでは垂直並進運動)をさせるべく駆動するようになっている。図3では、ピストン21を除くすべてのピストンはクランプに強固に固定してある。ピストン21はクランプ9のための2つのストッパ17(夫々のストッパは運動Mに沿った並進運動の各方向にある)を備え、これら2つのストッパは従ってシリンジ11のピストン21のための空動き行程を限定している。
【0019】
マニホルドはほぼ平行六面体の形の基部4を有する。ケーシング部品はその上面を基部4の下面に当てることにより固定してある。マニホルドは平行六面体の上面に固定された複数の電磁弁を備えている。マニホルドは、更に、平行六面体(図2の部品を参照)内に成形によって形成された管路ネットワーク5、6を備えている。このネットワークは、各シリンジを少なくとも1つの電磁弁に接続する、内部的な、第1の管路5を有する。このネットワークは、更に、電磁弁から例えば分析すべき又は分析中のサンプルのコンテナに向かって、又は他の液体用のコンテナ41〜43に向かって延長する、第2の管路6を有する。
【0020】
図2に示したように、ネットワークは基部4の一部を成す部品8内に成形によって形成されている。部品8に対して相補的な他の部品(図示せず)が管路の形状を補完する。
【0021】
更に、マニホルドの上面は、自動分析機の構成要素(特に、分析に使用する、光学台51、希釈・計量用槽52、光学測定・抵抗用槽53、電子カード54)のための支えとして作用する。
【0022】
次に、自動分析機10の作動を模式的に示す図3をより詳しく説明する。シリンジ群11〜16は、原血液サンプルの採取に割り当てられた1つのシリンジ11(即ち、ニードル61を用いた自動分析とこのニードルの清掃に最初に使用されるようなシリンジ)を有する。
【0023】
シリンジ群は、更に、希釈液41を操作するための
1つのシリンジ12と、溶解液41を操作するためのシリンジ13と、洗浄液42を操作するためのシリンジ14と、1つのエアポンプを形成するように連結された2つのシリンジ15、16(特に分析の最中又は最後の廃棄物44の排出に割り当てられている)を有する。
【0024】
原サンプルはニードル61を用いて自動分析機に導入され、次いでこのニードルによって特にサンプル希釈用の槽62内に入れられる。エアポンプを構成するシリンジ15、16は、計数の目的で、槽62と直接に連通する容器63内のサンプルを採取するために特に使用することができる。この採取はエアポンプを用いて容器63内に負圧を発生させることにより行われる。
【0025】
負圧の代わりに、エアポンプは、また、例えば混合物の均一化を行うために、正圧を発生させるために使用することができる。
【0026】
電磁弁の種々の位置は、1つのシリンジでは1つの仕事を行うが、他のシリンジは、これら他のシリンジの夫々のピストンが前記1つのシリンジと同じ運動Mで駆動されているにも拘わらず、ニュートラルの動作をするのを可能にする。
【0027】
図4のシリンジブロックは図1のシリンジブロックよりも軽量化した実施例である。それは6つの電磁弁31と5つのシリンジ2とを支持するマニホルド3を備えており、2つのシリンジ15、16はエアポンプを形成している。
【0028】
勿論、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく上記実施例に種々の修正を施すことができる。
【0029】
特に、本発明の種々の部品や構成要素は、数および形状において、機能に影響がない限り前述したものとは異なることができる。
【0030】
第1及び/又は第2の管路は、例えば電磁弁とそれに対応するシリンジとを連結するマニホルド部品を横断するに充分な厚さの、単なる穴にすることができる。
【0031】
第1及び/又は第2の管路は、機械加工や成形以外の任意の適当な手段によって形成することができる。これらの管路は、また、2つの相補的な部品の間に唯一の層の管路だけを形成する代わりに、互いに重ね合わせられ適当な1つの部品によって2つづつ分離された複数の管路の層として形成することができ、斯く分離された2つの層の1つを前記部品の中に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は本発明のシリンジブロックの斜視図である。
【図2】図2は本発明のシリンジブロックのためのマニホルドの一部である。
【図3】図3は本発明の自動分析機の機能的模式図である。
【図4】図4はシリンジブロックの他の実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体サンプルの自動分析機(10)で使用するのに特に適したシリンジブロック(1)であって、このシリンジブロックは複数のシリンジ(11〜16)と1つのマニホルド(3)とを備え、夫々のシリンジは相互間に1つの内部容積を画成する1つのケーシングと1つのピストン(21〜26)とを備え、前記マニホルドは、切換え用電磁弁(31)と、電磁弁を夫々の内部容積に直接に接続する第1の管路(5)と、電磁弁から特にサンプル及び/又は他の液体用のコンテナ(41〜44)の方向へ延長する第2の管路(6)とを備え、これらのシリンジは1つのエアポンプ(15、16)を備え、前記エアポンプは少なくとも1つのシリンジ(15、16)を備え、その特徴は、すべてのシリンジのピストンは、それらが夫々のケーシングの内部で同時に同じ運動(M)をするように、互いに強固に連結されていることからなるシリンジブロック。
【請求項2】
エアポンプは少なくとも2つのシリンジ(15、16)を有することを特徴とする請求項1に基づくシリンジブロック。
【請求項3】
マニホルドは、第1及び/又は第2の管路が特に成形又は機械加工により形成された1つ又は複数の部品(8)を有することを特徴とする請求項1又は2に基づくシリンジブロック。
【請求項4】
エアポンプは、自動分析機内での分析の際の計数段階の目的で、サンプルを採取するための負圧を生成するために使用されることを特徴とする請求項1から3のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項5】
エアポンプは、特に分析が終了したときに自動分析機内にある廃棄物(44)を排出するために使用されることを特徴とする請求項1から4のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項6】
少なくとも1つの希釈室を備え、この希釈室は、マニホルドの上に固定するか、及び/又は、前記2つの管路のうちの一方の管路によって対応する1つの電磁弁に直接に接続することができることを特徴とする請求項1から5のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項7】
少なくとも1つの測定室を備え、この測定室は、マニホルドの上に固定するか、及び/又は、前記2つの管路のうちの一方の管路によって対応する1つの電磁弁に直接に接続することができることを特徴とする請求項1から6のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項8】
少なくとも1つの培養室を備え、この培養室は、マニホルドの上に固定するか、及び/又は、前記2つの管路のうちの一方の管路によって対応する1つの電磁弁に直接に接続することができることを特徴とする請求項1から7のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項9】
少なくとも1つの油圧循環容器を備え、この容器は、マニホルドの上に固定するか、及び/又は、前記2つの管路のうちの一方の管路によって対応する1つの電磁弁に直接に接続することができることを特徴とする請求項1から8のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項10】
少なくとも1つの光学台(51)を備え、この光学台は、マニホルドの上に固定するか、及び/又は、前記2つの管路のうちの一方の管路によって対応する1つの電磁弁に直接に接続することができることを特徴とする請求項1から9のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項11】
電子回路を搭載した少なくとも1つのカード(54)を備え、前記電子回路はシリンジブロックを自動分析機で使用する場合に分析で使用されることを特徴とする請求項1から10のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項12】
空調された囲いの中に配置されることを特徴とする請求項1から11のいづれかに基づくシリンジブロック。
【請求項13】
請求項1から12のいづれかに基づくシリンジブロック(1)を備えた自動分析機、特に血液自動分析機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−511776(P2007−511776A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540503(P2006−540503)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002708
【国際公開番号】WO2005/062015
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506167155)
【Fターム(参考)】