説明

液体状態検知センサ

【課題】 センサ素子に固着した端子部材と、自身の先端部にセンサ素子を保持し、端子部材の少なくとも一部を包囲してなる保持管とを備え、液体の状態を検知する液体状態検知センサであって、組み付け状態においてあるいは実使用において振動がかかった場合に発生する不具合を防止した液体状態検知センサを提供する。
【解決手段】 液体状態検知センサ1は、尿素水溶液と少なくとも一部が接触するセンサ素子51と、これに固着された接続端子52と、これを介して濃度センサ素子51と導通する接続ケーブル53と、ホルダ部材55を用いて先端部421に濃度センサ素子51を保持すると共に、接続ケーブル53の一部及び接続端子52全体を包囲してなる内筒42と、接続端子52と内筒42との間に介在して両者間を絶縁してなる端子−内筒絶縁部542を含むセパレータ(ゴム状弾性を有する材料から構成されるセパレータ)54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定液体の状態を検知する液体状態検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等を搭載した自動車の排気ガスには、窒素酸化物(NOx)等の物質が含まれる。近年、特に環境保護及び生活環境の汚染防止等の目的で、これらの自動車の排気ガスを浄化すべく種々の対策が講じられている。このような排気ガスの浄化対策の一つとして、排気ガス浄化装置が挙げられる。
【0003】
この排気ガス浄化装置は、自動車に搭載され、有害な窒素酸化物(NOx)をNOx選択還元触媒(SCR)により分解して無害化する。NOx選択還元触媒(SCR)には尿素水溶液が還元剤として用いられ、自動車に搭載した収容タンク内に収容される。この尿素水溶液は、窒素酸化物(NOx)を効果的に分解させるため、尿素水溶液の濃度(尿素水溶液中に含まれる尿素の濃度)が適正な範囲に保たれることを必要としている。
【0004】
ところで、適正な濃度の尿素水溶液を収容タンクに収容しても、経時変化等に起因して尿素水溶液の濃度が適正な範囲から外れてしまうことがある。また、収容タンクに作業者が誤って軽油や水を混入してしまうこともある。これに対処すべく、尿素水溶液が適正な濃度の範囲にあるかを検知するものとして、タンク内の尿素水溶液に含まれる尿素の濃度を識別することができる識別装置が開示されている(特許文献1)。
【0005】
この特許文献1に開示された識別装置は、濃度識別センサ部及び支持部からなる。このうち、濃度識別センサ部は、発熱体及び感温体を含む濃度検知部と、尿素水溶液の温度を測定する液温検知部とを有している。
一方、支持部は、この濃度識別センサ部の上方に位置しており、尿素水溶液タンクの開口部に取付け可能な取付け部、この上方に位置する回路基板のほか、取付け部の下方に位置し濃度識別センサ部を保持する筒状の管部材を有する。この支持部のうち、回路基板には、濃度検知回路が構成されてなり、この回路基板は蓋部材によって覆われている。また、濃度識別センサ部の濃度検知部及び液温検知部は、管部材内を挿通してなるリード線を通じて、それぞれ回路基板に電気的に接続されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−84026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、センサ素子に端子部材を固着し、この端子部材にリード線やケーブル等の導通保持部材をハンダ付け等によって接続した場合において、端子部材の少なくとも一部をさらにはセンサ素子の少なくとも一部を保持管(管部材)内に配置し、保持管内に液体が入り込まないように、この保持管でセンサ素子を直接または間接的に保持したい場合がある。
しかしながら、このように構成した場合、組み付け状態において、保持管と端子部材とが接触し短絡する虞がある。また、保持管とセンサ素子とが接触し短絡する虞があるいはセンサ素子にクラック等の生じる虞がある。複数の端子部材がある場合には、端子部材同士が接触し短絡する虞もある。さらに、実使用において掛かる振動や衝撃により、センサ素子や端子部材、リード線等が振動し、リード線と端子部材あるいは端子部材とセンサ素子との接続部分に応力が掛かり、これらの接続部分あるいは端子部材やセンサ素子のうちこの近傍の部分に亀裂が生じるなどの不具合が生じる虞もある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、センサ素子に固着した端子部材と、自身の先端部にセンサ素子を直接又は間接的に保持し、端子部材の少なくとも一部を包囲してなる保持管とを備え、液体の状態を検知する液体状態検知センサであって、組み付け状態においてあるいは実使用において振動がかかった場合に発生する不具合を防止した液体状態検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その解決手段は、被測定液体に少なくとも一部を浸漬して、上記被測定液体の状態を検知する液体状態検知センサであって、上記被測定液体に少なくとも一部が浸漬するセンサ素子と、上記センサ素子に固着された端子部材と、上記端子部材に接続され、これを介して上記センサ素子と導通してなる導電経路部材と、自身の先端部に直接または間接的に上記センサ素子を保持し、上記導電経路部材の少なくとも一部及び上記端子部材の少なくとも一部を包囲してなる保持管と、上記端子部材と上記保持管との間に介在して両者間を絶縁するセパレータと、を備える液体状態検知センサである。
【0010】
本発明の液体状態検知センサはセパレータを備え、このセパレータにより、端子部材と保持管との間に介在して両者間を絶縁してなる。
このため、この液体状態検知センサでは、端子部材の少なくとも一部が保持管に包囲されている形態でありながらも、端子部材と保持管との間を離間させて、両者が接触して短絡することを確実に防止できる。
【0011】
なお、液体状態検知センサとしては、例えば、液体温度センサ、液体濃度センサ、液体の種類を識別するセンサ、液体の有無を検知するセンサ、さらにはこれらをあるいはこれらと他の液体センサとを複合したセンサ等が挙げられる。
また、導電経路部材としては、端子部材に機械的にまた電気的に接続して、センサ素子と導通しうる部材であれば良い。具体的には、例えば、撚り線等の芯線をポリエチレン等の樹脂で被覆した被覆線、エナメル線などのリード線のほか、複数の被覆線(リード線)を1つのケーブルとしてまとめた多芯ケーブル、芯線と同軸に配置した編組を有する同軸ケーブル等を挙げることができる。
導電経路部材と端子部材との接続としては、ハンダ付け、ロー付けのほか、端子部材の一部を加締めることによりリード線(芯線)に端子部材を圧着することもできる。さらに、セパレータとしては、保持管と端子部材との間を絶縁できるもので有ればよいが、全体を絶縁材料で構成するのが好ましい。また、保持管内への配置を考慮すると、ゴム状弾性を有する絶縁材を用いるのが好ましい。
【0012】
さらに、上記液体状態検知センサであって、前記端子部材を複数備え、前記セパレータは、上記端子部材同士の間に介在して、これらを互いに絶縁してなる端子間絶縁部を含む液体状態検知センサとすると良い。
【0013】
本発明の液体状態検知センサでは、セパレータの端子間絶縁部が、端子部材同士の間に介在してこれらを互いに絶縁してなる。
このため、端子部材同士を離間させることができ、これらが互いに接触して短絡することを確実に防止できる。
【0014】
さらに、上記いずれかに記載の液体状態検知センサであって、前記セパレータは、ゴム状弾性を有する材料からなり、前記保持管内において、前記端子部材を弾性的に保持してなる端子保持部を含む液体状態検知センサとすると良い。
【0015】
本発明の液体状態検知センサでは、セパレータは、ゴム状弾性を有する材料からなる。しかも、このセパレータの端子保持部は、保持管内において端子部材を弾性的に保持してしる。
この液体状態検知センサは、自動車に搭載した場合など振動や衝撃が加わったときでも、セパレータの端子保持部が端子部材を弾性的に保持しているので、端子部材自身が振動するのが抑制される。このため、端子部材の振動によって、この端子部材と導通保持部材とのハンダ付けなどによる接続部分や、この端子部材とセンサ素子との接続部分、この端子部材やセンサ素子のうち接続部分の近傍において、亀裂等の不具合が生じるのを適切に防止することができる。
【0016】
なお、セパレータの端子保持部は、セパレータを保持筒内に配置した状態において、端子部材を弾性的に保持していればよい。従って、セパレータを保持管内に配置する前段階から、常に端子保持部で端子部材を弾性的に保持する形態が挙げられる。
あるいは、セパレータを保持管内に配置しない状態では、端子保持部は端子部材を弾性的に保持しないが、セパレータを保持管内に配置した状態では、セパレータの変形により端子保持部が端子部材を弾性的に保持する形態とすることもできる。この形態とすると、このセパレータを保持管内に配置する前に、端子部材等をセパレータ内で移動させるなどの位置合わせが容易となるので、特に好ましい。
【0017】
さらに、上述のいずれかに記載の液体状態検知センサであって、前記センサ素子は、その一部が前記保持管に包囲されてなり、前記セパレータは、上記保持管内において、上記センサ素子を保持してなる素子保持部を含む液体状態検知センサとすると良い。
【0018】
本発明の液体状態検知センサでは、センサ素子は、その一部が保持管に包囲されている。そして、セパレータの素子保持部が、保持管内においてセンサ素子を保持している。
この液体状態検知センサは、自動車に搭載した場合など振動や衝撃が加わったときでも、セパレータの素子保持部がセンサ素子を保持しているので、センサ素子が振動することが抑制される。このため、センサ素子が振動することによって、このセンサ素子と端子部材の接続部分や端子部材と導通保持部材とのハンダ付けなどによる接続部分、端子部材やセンサ素子のうち接続部分の近傍において、亀裂等の不具合が生じるのを防止することができる。
【0019】
そして、この液体状態検知センサにおいて、前記素子保持部を含む前記セパレータは、ゴム状弾性を有する材料からなり、この素子保持部が前記センサ素子を弾性的に保持してなると特に良い。
【0020】
ゴム状弾性を有する材料にて素子保持部を含むセパレータを構成しつつ、当該素子保持部にてセンサ素子を弾性的に保持することにより、液体状態検知センサに振動や衝撃が加わったときでも、素子保持部がその振動や衝撃を吸収することができるため、センサ素子が振動するのをより抑制することができる。このため、センサ素子と端子部材の接続部分や端子部材と導通保持部材とのハンダ付けなどによる接続部分、端子部材やセンサ素子のうち接続部分の近傍において、亀裂等の不具合が生じるのをより適切に防ぐことができる。
【0021】
なお、セパレータの素子保持部は、セパレータを保持筒内に配置した状態において、センサ素子を弾性的に保持していればよい。従って、セパレータを保持管内に配置する前段階から、常に素子保持部でセンサ素子を弾性的に保持する形態が挙げられる。あるいは、セパレータを保持管内に配置しない状態では、素子保持部はセンサ素子を弾性的に保持しないが、セパレータを保持管内に配置した状態では、セパレータの変形により素子保持部がセンサ素子を弾性的に保持する形態とすることもできる。この形態とすると、このセパレータを保持管内に配置する前に、センサ素子等をセパレータ内で移動させるなどの位置合わせが容易となるので、特に好ましい。
【0022】
さらに、上記の液体状態検知センサであって、前記センサ素子は、その一部が前記保持管に包囲されてなり、前記セパレータは、ゴム状弾性を有する材料からなり、自身の外周面から突出するとともに、前記長手方向に沿って複数設けられた突起部を含んでなり、前記セパレータの上記突起部が前記保持管の内周面に接触して、前記セパレータの少なくとも一部が径方向内側に向かって弾性変形することにより、前記セパレータは、前記保持管内において、前記センサ素子および前記端子部材を弾性的に保持してなる液体状態検知センサとすると良い。
【0023】
本発明の液体状態検知センサでは、保持管の内周面に接するよう設けられた複数の突起部を含むセパレータを保持管内に配置させることで、セパレータ自身が、複数の突起部を介して内側に弾性変形する現象を生ずることから、この現象を利用して、センサ素子および端子部材をセパレータにより弾性的に保持させる構成を採っている。
このような構成によって、保持管内において、センサ素子および端子部材をセパレータにより弾性的に保持させることで、セパレータを弾性変形させるために保持管を変形させる等の工数が不要となり、簡易的な構成で、且つ、安定してセンサ素子および端子部材を保持管内にて弾性的に保持することができる。
【0024】
さらに、上記の液体状態検知センサであって、前記セパレータは、自身の外周面から突出するとともに、前記保持管の内径よりも大きい外径を有する内筒係合部を含んでおり、前記セパレータの上記内筒係合部の後端面が、前記保持管の先端に係合してなる液体状態検知センサとすると良い。
【0025】
セパレータが、保持管内において、端子部材およびセンサ素子の少なくとも一方を保持する構成では、端子部材に接続される導電経路部材に対し端子部材が位置する方向と逆方向の引張り力が加わることがあると、その引張り力の程度によってはセパレータが保持管内を移動する可能性がある。そして、セパレータの保持管に対する適正な位置から大きくずれると、端子部材と保持管との間の絶縁状態を良好に得られなる虞がある。
そこで、本発明の液体状態検知センサでは、セパレータに保持管の内径よりも大きい外径を有する内筒係合部を設け、この内筒係合部を保持管の先端に係合させるようにしている。このため、端子部材に接続される導電経路部材に対して引張り力が加わった場合にも、内筒係合部が保持管の先端に係合されるため、セパレータが保持管内に引きずり込まれるのを抑制することができる。
【0026】
さらに、上記いずれかに記載の液体状態検知センサであって、前記センサ素子は、その一部が前記保持管に包囲されてなり、前記セパレータは、上記センサ素子に当接して、上記セパレータ内における上記センサ素子の基端−先端方向の位置決めを行う素子当接部を含む液体状態検知センサとすると良い。
【0027】
本発明の液体状態検知センサでは、セパレータは、センサ素子をその基端と先端との間を結ぶ方向である基端−先端方向の位置決めを行う素子当接部を備えている。これにより、センサ素子の基端または先端を素子当接部に当接させるだけで、セパレータ内におけるセンサ素子の基端−先端方向についての位置決めが容易にできる。
【0028】
さらに、上記いずれかに記載の液体状態検知センサであって、前記セパレータはゴム状弾性を有する材料からなり、前記導電経路部材及び前記端子部材のうち少なくともいずれかを内部に収容する貫通孔をなす貫通孔壁部を有し、上記貫通孔壁部は、上記貫通孔の一方端から他方端にわたってこの貫通孔壁部を横断し、この貫通孔壁部の外周面から上記貫通孔にまで届くスリットであって、上記セパレータを変形させ上記スリットを開かせることにより、上記導電経路部材及び上記端子部材のうち少なくともいずれかを上記貫通孔内に収納可能としてなるスリットを有する液体状態検知センサとすると良い。
【0029】
本発明の液体状態検知センサは、ゴム状弾性を有する材料からなるセパレータを備えている。このセパレータは貫通孔壁部を含み、この貫通孔壁部はスリットを有している。そして、このセパレータを変形させスリットを開かせることにより、この貫通孔内に導電経路部材及び端子部材のうち少なくともいずれかを収容可能となっている。
このようなセパレータを用いることにより、この液体状態検知センサを組み立てるにあたり、導通経路部材をセンサ素子の端子部材に接続する前に、導電経路部材をセパレータの貫通孔に予め挿通しておく必要が無く、液体状態検知センサの組立が容易となる。また、導電経路部材をセパレータの貫通孔に予め挿通しておく場合には、組立の際、導電経路部材や端子部材を貫通孔内に引き込むにあたり、セパレータやその貫通孔の形状を、それらの移動を考慮した形状とする必要がある。しかし、本発明の液体状態検知センサでは、セパレータやその貫通孔の形状についてこのような考慮は必要ないから、導通経路部材や端子部材をより適切に保持できる形状とすることができる。
【0030】
さらに、スリットを開かせてこの貫通孔内に導通経路部材及び端子部材のうち少なくともいずれかを収容した後、開いたスリットから手放すと、貫通孔壁部は自身の弾性によりスリットを閉じるように変形するため、貫通孔内に収容された部材がスリットから抜け出るのが抑制され、信頼性に優れる利点もある。
【0031】
また、上記いずれかに記載の液体状態検知センサであって、前記センサ素子は、第1セラミック層と、上記第1セラミック層に積層される第2セラミック層と、上記第1セラミック層と上記第2セラミック層との間に配置され、自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体とを有するとともに、上記発熱抵抗体に前記端子部材を介して通電がなされたとき、前記被測定液体の状態に関連した出力信号を上記発熱抵抗体より出力する液体状態検知センサとすると良い。
【0032】
本発明の液体状態検知センサでは、センサ素子として、自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体を有している。ところで、被測定液体の状態(具体的には、被測定液体の種類あるいは被測定液体に含まれる特定成分の濃度等)により、被測定液体の熱容量が異なることから、上記のような性質の発熱抵抗体に端子部材を介して通電を行うと、被測定液体の状態により発熱抵抗体の温度変化(換言すれば、抵抗値変化)に差異が生じることとなる。そこで、本発明の液体状態検知センサでは、発熱抵抗体を有するセンサ素子を用いて、発熱抵抗体より被測定液体の状態に関連した出力信号を得るようにしているので、良好に被測定液体の状態を検知することができる。
なお、この発熱抵抗体を第1セラミック層と第2セラミック層との間に配置してセンサ素子を構成することで、素子自身を液体に接触させることも可能となる。このように素子を液体に接触させたときには、被測定液体の状態検知精度が一層高まるというメリットが得られる。
また、発熱抵抗体への通電により、当該発熱抵抗体の抵抗値に対応して出力される「出力信号」としては、例えば、発熱抵抗体に定電流を流すことにより生ずる「電圧」や、発熱抵抗体に定電圧をかけたときに流れる「電流」を挙げることができる。
【0033】
さらに、上記いずれかに記載の液体状態検知センサであって、長手方向に延びる筒状をなし、前記保持管の径方向外側を包囲する外筒を有しており、上記外筒と前記保持管との間で前記被測定液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサをなすレベルセンサ部を構成した液体状態検知センサとすると良い。
【0034】
本発明の液体状態検知センサでは、保持管の径方向外側を包囲するように外筒を設け、この外筒と保持管との間で静電容量型のレベルセンサ部を構成してなる。このように、被測定液体のレベル検出精度に優れる静電容量型のレベルセンサ部をセンサ素子と一体化させて液体状態検知センサを構成することで、センサ素子による被測定液体の状態検知(例えば、被測定液体の種類の検知、被測定液体に含まれる特定成分の濃度検知等)と被測定液体のレベル検知とを1つのセンサを用いて精度良く行うことができる。
【0035】
さらに、上記いずれかに記載の液体状態検知センサであって、前記被測定液体が尿素水である液体状態検知センサとすると良い。
【0036】
本発明の液体状態検知装置によれば、これを排気ガス浄化装置に用いて自動車等に搭載した場合において、走行等により振動や衝撃が加えられたときでも、短絡や亀裂等の不具合を生じることなく適切にこの液体状態検知センサを使用し続けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
(実施形態)
本発明を具体化した液体状態検知センサの一実施の形態について、図1〜図7を参照して説明する。
なお、本実施形態にかかる液体状態検知センサ1及び各部品の説明では、図1に示す軸線Oに沿う方向(軸線方向)のうち、この図1における上方を基端側とし、下方を先端側とする。
【0038】
本実施形態にかかる液体状態検知センサ1は、例えば、ディーゼルエンジン等を搭載した自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を、尿素水溶液で還元して無害化する排気ガス浄化装置において、収容タンクに収容された尿素水溶液の濃度や、尿素水溶液の液位を検知する装置である。
この液体状態検知センサ1は、基部2及びこの基部2から延びるセンサ部3から構成されている。この液体状態検知センサ1は、その基部2を、尿素水溶液を収容してなる収容タンク(図示せず)の開口部周りに取り付けて、基部2 の先端側に設けたセンサ部3を尿素水溶液に浸漬させて用いる。
【0039】
液体状態検知センサ1のうち、基部2は、取付フランジ部21、蓋体25及びこれらに包囲された配線基板22、外部接続ケーブル24、及びこれを保持するブッシュ23等を備える。また、センサ部3は、二重円筒状の液面レベルセンサ部4とこの先端部分に位置する液体濃度センサ部5とからなる。
【0040】
まず、基部2について説明する。取付フランジ21は、金属からなり、基部2のうち先端側に位置し、液体状態検知センサ1を収容タンク(図示せず)の開口部の周縁に取付けるための台座として用いる。この取付フランジ21には、図示しないボルト挿通孔が穿孔されており、液体状態検知センサ1を収容タンクにボルトで固定できるようになっている
【0041】
この取付フランジ21の基端側には、配線基板22が設けられている。この配線基板22には、CPUや電気回路等を備える制御回路が形成されており、液面レベルセンサ部4及び液体濃度センサ部5と電気的に接続されると共に、外部接続ケーブル24を介して外部の電気的回路(例えば、ECU)と接続可能となっている。また、この配線基板22は、取付フランジ部21に取付けられた蓋体25によって覆われ、保護されている。
この配線基板22に形成された制御回路は、液体濃度センサ部5のうち、図6に示す濃度センサ素子51への通電により、内部ヒータ配線518の抵抗値に対応した出力信号に基づいて、例えば、濃度センサ素子51に所定の電流を流すことにより生じる電圧値に基づいて、尿素水溶液の濃度を検知する。
【0042】
次に、センサ部3について説明する。上述したようにこのセンサ部3は、液面レベルセンサ部4と液体濃度センサ部5とからなる。このうち、まず、液面レベルセンサ部4について説明し、その後、液体濃度センサ部5について説明する。
液面レベルセンサ部4は、図1に示すように、軸線Oに沿う方向(長手方向)に延びた円筒形状の外筒41と、その内部に配置され、この外筒41と同軸に長手方向に延び、相対的に小径の円筒形状を有する内筒42とを含む。外筒441の内周面と内筒42の外周面とは、所定間隔で離間している。なお、内筒42が、本発明の保持管に対応する。
【0043】
これらのうち、外筒41は、金属からなり、液面レべルを検出するための一方の電極となっている。また、外筒41は、軸線O方向に沿った細幅のスリット415を、所定位置に複数有しており、内筒42側との間に、外部と連通した状態で、尿素水溶液を収容できるようになっている。また、外筒41のうち、その先端(図1中、下方)は開口する一方、基端は溶接等により取付フランジ21に固着されている。なお、本実施の形態では、外筒41を取付フランジ21に溶接する。さらに、この取付フランジ21を配線基板22上に形成された制御回路におけるグランド電位に接続することで、外筒41をグランド電位としている。
また、外筒41の先端部411と内筒42の先端部421との間には、後述するゴムブッシュ56が介在しており、このゴムブッシュ56の係合突起部562と係合してゴムブッシュ56(液体濃度センサ部5)を保持するための保持孔41Hが、外筒41の周方向の複数の所定位置に形成されているく図1参照)。
【0044】
また、内筒42も、金属からなり、液面レベルを測定するための他方の電極として、外筒41と電気的に絶縁しつつ、この外筒41と対向し、配線基板22上の制御回路と電気的に接続されている。内筒42の外周面42Gには、例えば、PTFE,PFA等のフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などからなる絶縁性被膜43が形成されており、導電性の尿素水溶液(被測定液体)を介しても、内筒42と外筒41が絶縁されるようにされている。
【0045】
この液面レベルセンサ部4で尿素水溶液の液位を検知するには、この液面レベルセンサ部4を尿素水溶液に浸漬して、尿素水溶液を、スリット415を通じて、外筒41と内筒42(絶縁性被膜43)との間に流入させる。
すると、この液面レベルセンサ部4では、外筒41と内筒42との間において、液位に応じて尿素水溶液が存在する部分と存在しない部分とができるから、液位に応じて外筒41と内筒42との間に形成されるコンデンサの静電容量が変化する。そこで、外筒41と内筒42との間に交流電圧を印加すると、この静電容量の大きさに応じた電流が流れるので、この電流の大きさに基づき尿素水溶液の液位を検知できる。
【0046】
次に、液体濃度センサ部5について説明する。
液体濃度センサ部5は、液面レベルセンサ部4の先端側に配置され、濃度センサ素子51、ホルダ部材55、プロテクタ58及びゴムブッシュ56等から構成されている(図1、図4、図5参照)。
このうち、濃度センサ素子51は、ホルダ部材55の内部に保持されている。また、濃度センサ素子51は、これにハンダ付けにより固着された接続端子52及び接続ケーブル53を介して、配線基板22に形成された制御回路と電気的に接続されている。一方、ホルダ部材55は、これを取り囲む外筒41との間に介在するゴムブッシュ56により、外筒41の先端部411に保持されている。さらに、プロテクタ58は、ホルダ部材55の先端部(径小部553)に係合して保持されている。
【0047】
まず、液体濃度センサ部5のうち、濃度センサ素子51(図6参照)について説明する。この濃度センサ素子51は、平面視矩形板状をなし、アルミナセラッミクスからなる平板状の2層のセラミック層519(519A,519B)と、これらの間に液密に配置された内部配線516とを備える。この内部配線516は、幅広一対の内部リード配線517と、これらの間に配置され蛇腹状に折り返された内部ヒータ配線518とを含む。
【0048】
また、この濃度センサ素子51は、内部に内部ヒータ配線518が配置されている先端部511、この先端部511の基端側(図6において上方)に隣接する挿通部512、さらに、この挿通部512の基端側に位置する樹脂保持部513、及び、一対の接続端子52がそれぞれハンダ付け接続されてなる基端部514に分けられる。
【0049】
接続端子52は、所定形状の金属板をコ字状に折り曲げて形成されてなる。この接続端子52のうち、その先端部521は、先端側(図6中、下方)に向けて延びる形状とされており、濃度センサ素子51の基端部514に形成された図示しないパッドにハンダ付けにより接続されて、この濃度センサ素子51に固着されている。これにより、接続端子52(先端部521)は、一方のセラミック層519Aを貫通する図示しないビア導体を介して内部リード配線517に接続している。このため、一対の接続端子52間に電圧を印加すると、内部リード配線517を通じて、主に内部ヒータ配線518が発熱する。この内部ヒータ配線518を含む内部配線516は、白金やタングステンといった自身の温度に応じて抵抗値が変化する材質を主体に構成されており、発熱抵抗体に相当するものである。
【0050】
一方、接続端子52のうち基端部522には、接続ケーブル53のリード線532の芯線533がハンダ付けにより電気的、機械的に接続されている。この接続ケーブル53は、図1に示すように、内筒42内を挿通されて基端側(図1中、上方)に延び、配線基板22(制御回路)に接続している。つまり、内筒42は、接続ケーブル53の一部(大部分)を包囲してなる。
【0051】
次いで、ホルダ部材55について説明する。このホルダ部材55は、絶縁性の樹脂材からなり、図4及び図5に示すように、相対的に径大の円筒形状を有する径大部551、この径大部551より径小の円筒形状を有する径小部553と、径大部551と径小部553との間に位置し外周面がテーパ面とされたテーパ部552とからなる。また、このホルダ部材55は、自身を軸線方向に貫通するホルダ貫通孔55Hを有する中空状の部材である。このホルダ貫通孔55Hは、その基端側から徐々に小径となる、内筒保持部55H1、第2段部55H2、及び第3段部55H3の3段円孔状の部分と、最も先端側に位置する概略角孔状の素子保持部55H4とからなる。
【0052】
このホルダ部材55は、図4、図5に示すように、濃度センサ素子51を保持している。具体的には、このホルダ部材55の素子保持部55H4に濃度センサ素子51の挿通部512が挿通され、第3段部55H3内に配置された濃度センサ素子51の樹脂保持部513がこの第3段部55H3内に充填された封止樹脂59により固定されている。なお、この封止樹脂59により濃度センサ素子51とホルダ部材55との間の間隙が液密に封止されている。
これにより、この濃度センサ素子51のうち、内部に内部ヒータ配線518が配置されている先端部511が、ホルダ部材55から先端側(図1中、下方)に突出した状態に配置される。
【0053】
また、このホルダ部材55は、そのホルダ貫通孔55Hの内筒保持部55H1の内側に、内筒42の先端部421を保持しており、この内筒保持部55H1と第2段部55H2との間に位置する内筒当接面55Dで、内筒42の先端422と当接して、内筒42とホルダ部材55との軸線方向の位置決めを行っている。なお、ホルダ貫通孔55Hの内筒保持部55H1には、2つのリング溝55G1,55G2が凹設されており、これらの内部に配置されたOリング57により、ホルダ部材55と内筒42(絶縁性被膜43)との間は液密に封止されている。
【0054】
このようにして、濃度センサ素子51を保持しているホルダ部材55と内筒42とが接続されているので、濃度センサ素子51の基端部514の大部分、及び接続端子52全体が、内筒42内に配置される。また、本実施形態においては、内筒42はその先端部421において、ホルダ部材55を介して間接的に濃度センサ素子51を保持している。さらに、この内筒42内には、この濃度センサ素子51及び接続端子52と内筒42との間を絶縁するセパレータ54が配置されている。
【0055】
ついで、このセパレータ54について、図7を参照して説明する。
セパレータ54は、ゴム状弾性を有する絶縁性の樹脂からなり、概略円柱形状を有する部材である。このセパレータ54は、軸線方向にかつ互いに平行に延びて自身を貫通する2つの貫通孔54H1,54H2をなす貫通孔壁部541、及びこの2つの貫通孔54H1,54H2の間を隔てる壁状の端子間絶縁部548を備えている。この2つの貫通孔54H1,54H2は、図4、図5に示すように、接続端子52及びリード線532をそれぞれ挿通し保持するための貫通孔である。
【0056】
また、この2つの貫通孔54H1,54H2のうち先端側の部分は、孔連通部54H3により互いに連通した形態とされており、この孔連通部54H3及び貫通孔54H1,54H2のうちこの孔連通部54H3によって互いに連通している部分には、濃度センサ素子51の基端部514が挿入される。従って、2つの貫通孔54H1,54H2の間を隔てる端子間絶縁部548のうち最も先端側の素子当接部549に、濃度センサ素子51の基端515を当接させることにより、この濃度センサ素子51のセパレータ54内における基端と先端との間を結ぶ基端−先端方向、すなわち、軸線方向の位置決めを行うことができる(図5参照)。
【0057】
さらに、このセパレータ54(貫通孔壁部541)の外周面541Gのうち、先端部分には、略リング状の当接突起547が軸線O方向に沿って複数段(本実施形態では5段)設けられている。この当接突起547は、セパレータ54を内筒42内に挿入した場合に、内筒42の内周面421に当接して貫通孔壁部541(セパレータ54自身)を径方向内側に向けて変形させるための突起部である。
さらに、このセパレータ54の最も先端部分は、径方向外側に突出してなり、内筒42の先端422に係合して、内筒42に対するセパレータ54の挿入深さを規定する内筒係合部546とされている(図5参照)。なお、後述するが、本実施形態では、セパレータ54により接続端子52及び濃度センサ素子51の一部を保持するものであるため、接続ケーブル53に引張り力がかかった場合に、セパレータ54が内筒42の内側に引きずり込まれる可能性がある。しかし、セパレータ54の内筒係合部546の後端面が内筒42の先端に係合することで、接続ケーブル53に引張り力がかかった場合にも、セパレータ54が内筒42内に引きずり込まれるのを抑制することができる。
【0058】
このセパレータ54は、孔連通部54H3及び貫通孔54H1,54H2のうちこの孔連通部54H3によって互いに連通している部分に濃度センサ素子51を挿入し、素子当接部549に濃度センサ素子51の基端515を当接させた状態とし、かつ、接続端子52及びリード線532を貫通孔54H1,54H2内にそれぞれ配置した状態で、内筒42の先端部421に挿入されている。
【0059】
本実施形態では、このセパレータ54のうち貫通孔壁部541が、内筒42と接続端子52との間に介在する(図4、図5参照)。具体的には、セパレータ54(貫通孔壁部541)のうち、軸線方向の中央部分に位置する端子−内筒絶縁部542(図7(b)参照)が、内筒42と接続端子52との間に介在する。これにより、接続端子52が内筒42に接触して短絡を生じることが確実に防止されている。
また、セパレータ54のうち端子間絶縁部548が、一対の接続端子52同士の間に介在する。これにより、接続端子52同士が互いに接触して短絡を生じることが確実に防止されている。
【0060】
さらに、このセパレータ54は、上述したように、その先端部分に、当接突起547を備えている。このため、セパレータ54を内筒42内に挿入すると、貫通孔壁部541のうち、この当接突起547が形成されている変形部543が、径方向内側に向けて変形する。
このセパレータ54を内筒42内に挿入する以前には、このセパレータ54の2つの貫通孔54H1,54H2内に、濃度センサ素子51、接続端子52及びリード線532が遊挿された状態となっていた。
【0061】
しかし、このセパレータ54を内筒42内に挿入して、当接突起547が内筒42の内周面421に当接し、貫通孔壁部541(変形部543)が径方向内側に向けて変形すると、図5に示すように、この貫通孔壁部541の変形部543のうち、端子保持部544は、接続端子52に弾性的に接触しこれを保持する。すると、本実施形態にかかる液体状態検知センサ1が自動車等に搭載されることにより、振動や衝撃がかかったとしても、接続端子52は端子保持部544に弾性的に保持されているために、接続端子52が振動することが抑制される。
同様に、この貫通孔壁部541の変形部543のうち、素子保持部545は、濃度センサ素子51に弾性的に接触し、この濃度センサ素子51を保持する。すると、振動や衝撃がかかったとしても、濃度センサ素子51は素子保持部545に弾性的に保持されているために、濃度センサ素子51が振動することが抑制される。
これにより、接続端子52や濃度センサ素子51の振動によって、この接続端子52とリード線532とのハンダ付けなどによる接続部分や、この接続端子52と濃度センサ素子51との接続部分、この接続端子52や濃度センサ素子51のうち接続部分の近傍において、亀裂等の不具合が生じるのを適切に防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態におけるセパレータ54は、図7(a)に示すように、貫通孔壁部541の外周面541Gから、2つの貫通孔54H1,54H2にまでそれぞれ達するスリット54S1,54S2を有している。これらのスリット54S1,54S2は、それぞれ、外側に位置するV字状のV字溝部54S1A,54S2Aと、切れ目状のスリット部54S1B,54S2Bとからなり、2つの貫通孔54H1,54H2の一方端から他方端(セパレータ54の基端54Bから先端54C)にわたって形成されている。このようにして2つの貫通孔54H1,54H2についてスリット54S1,54S2を形成しておくと、貫通孔54H1,54H2内への濃度センサ素子51、接続端子52及びリード線532(芯線533)の配置が容易になる。すなわち、このセパレータ54を用いる場合には、まず、濃度センサ素子51に接続端子52を接続し、また、接続端子52にリード線532(芯線533)を接続する。その後に、セパレータ54を変形させて、スリット54S1,54S2を開かせ、これを通じて貫通孔54H1,54H2内にそれぞれ濃度センサ素子51、接続端子52及びリード線532(芯線533)を配置すれば良い。これによって、貫通孔54H1,54H2内に予めリード線532を挿通しておく必要がない。さらに本実施形態においては、接続ケーブル53のうちケーブル部531から延びるリード線532のみの部分の長さを短くしても、接続端子52との接続が可能となるため、組み付け後にリード線532に余分な部分が生じず、組み付けが容易になる利点もある。
【0063】
次に、液体濃度センサ部5のうち、プロテクタ58について説明する。
プロテクタ58は、図2〜図5に示すように、円筒状の側部581とこの側部581の先端側を閉塞する底部582とを含む。概略有底円筒形のキャップ形状を有する。側部581及び底部582には、このプロテクタ58の内外を尿素水溶液が流通可能とするための液体流通孔58H1,58H2,58H3が形成されている。また、側部582のうち基端付近には、その一部にコ字状の切り込みを形成して内側に折り曲げた係止舌部583が形成されている。
【0064】
このプロテクタ58は、ホルダ部材55の径小部553の外周に形成されたプロテクタ係止溝55G3に、上述の係止舌部583を係止させることにより、プロテクタ58が、このホルダ部材55の径小部553及び濃度センサ素子51の先端部511を包囲するように配置されている。
【0065】
さらに、このようにして濃度センサ素子51及びプロテクタ58を保持したホルダ部材55は、その外周面に適合する形態のホルダ保持孔56Hを備えるゴムブッシュ56に保持されている。
このゴムブッシュ56は、ゴム状弾性を有する絶縁性の高分子材料からなる。このゴムブッシュ56は、図2〜図5に示すように、その中央に上述のホルダ保持孔56Hが貫通してなり、外筒41と最合可能な外径を有する円筒形状のブッシュ本体部561と、このブッシュ木体部561の外周の3カ所に均等に配置され、ブッシュ本体部561から径方向外側に向けて突出する係止突起部562とを有する。ブッシュ本体部561のホルダ保持孔56Hは、ホルダ部材55及びプロテクタ58と密着して、これらを保持可能な形状とされている。
【0066】
さらに、このホルダ保持孔56Hには、図3及び図4から容易に理解できるように、このホルダ保持孔56Hの内周面に沿って軸線方向に延びる3本の内部スリット56Jが凹設されている。また、このゴムブッシュ56(ブッシュ本体部561)の外周のうち、係止突起部562同士の間には、軸線方向に延びる外部スリット56Gが多数溝設されている(図2,図3参照)。これら内部スリット56J及び外部スリット56Gは、ゴムブッシュ56の基端側と先端側との間で尿素水溶液を流通可能とするための流通孔をなす。このプロテクタ56は、外筒41の保持孔41Hに係止突起部562を挿入係止することにより、外筒41に保持されている。かくして、濃度センサ素子51及びプロテクタ58を保持したホルダ部材55は、ゴムブッシュ56に保持され、このゴムブッシュ56が外筒41に保持されることにより、液体濃度センサ部5全体が外筒41の先端部411及び内筒42の先端部421との間に保持される。
【0067】
次に、尿素水溶液の尿素濃度検知にあたり、本実施形態における液体濃度センサ部5の動作について説明する。
本実施形態の液体状態検知センサ1では、配線基板22上に構成された制御回路から一定の大きさの電流を液体濃度センサ部5の濃度センサ素子51に流し、その内部ヒータ配線518を発熱させる。すると、内部ヒータ配線518には自身の抵抗値の大きさに対応した検出電圧が発生する。そこで、この検出電圧の変化を制御回路で検知して、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度を検知する。具体的には、濃度センサ素子51への通電開始直後の検出電圧と、通電開始から所定時間経過後の検出電圧とを計測する。そして、この間の検出電圧の変化量を用いて、この変化量に対応する尿素水溶液の尿素濃度を、予め得ておいた尿素水溶液の尿素濃度と変化量との関係から得る。
【0068】
なお、本実施形態では、尿素水溶液の尿素濃度検知を、制御回路内のCPU等を用いて行っており、この制御回路で得られた濃度情報の信号は、外部接続ケーブル24を通じて、外部回路(例えば、ECU)に出力される。この外部回路では、入力された濃度情報の信号に基づいて、尿素水溶液の濃度が適正範囲内であるか否かを判断し、適正な濃度範囲でないあるいは尿素水溶液以外の液体が混入していると判定される場合には、運転者にその旨を通知する等の処理を適宜行う。
【0069】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、液体状態検知センサ1として、液体レベルセンサ部4と液体濃度センサ部5とを一体化したタイプのセンサを例示した。しかし、液体レベルセンサとしての機能を有さないもの、さらには、外筒を備えないものに、本発明を適用することもできる。また、上述の実施形態では、液体濃度センサ部5において、尿素水溶液の尿素濃度を検知する手法について説明したが、濃度センサ素子51(内部ヒータ配線518)への通電直後の抵抗値から、尿素水溶液の液温が測定できる。従って、尿素水溶液の尿素濃度のほか、液温を測定する液温センサとして用いることもできる。
【0070】
また、上述の実施形態では、並んで配置された2つの接続端子52同士の間の絶縁を行うために、セパレータ54において、端子間絶縁部548を設けた例を示した。しかし、接続端子52間の絶縁を行う必要のない場合には、この端子間絶縁部548を設ける必要はない。一方、さらに多数の接続端子を設ける必要のある場合には、接続端子同士の絶縁のため、さらに複雑な形状のあるいは複数の端子間絶縁部を設けることもできる。
また、上述の実施形態では、接続端子52のみならず、濃度センサ素子51の基端部514もセパレータ54内に配置される形態とした。しかし、接続端子と内筒との絶縁、接続端子同士の絶縁を考慮するだけであるならば、濃度センサ素子51をセパレータ54内に配置しない形態とすることもできる。
【0071】
さらに、上述の実施形態では、貫通孔壁部541(変形部543)を径方向内側に向けて変形させるための当接突起547を5段備えるセパレータ54を備える例を示した。しかし、当接突起の数、配置、形態等は適宜設定すればよい。さらに、接続端子と内筒との絶縁、接続端子同士の絶縁を考慮する一方、接続端子の弾性的保持等を考慮しないのであれば、当接突起を形成しない形態とすることもできる。
また、上述の実施形態では、セパレータ54を内筒42内に挿入する以前には、このセパレータ54の2つの貫通孔54H1,54H2内に、濃度センサ素子51、接続端子52及びリード線532が遊挿された状態となる。その一方、セパレータ54を内筒42内に挿入すると、貫通孔壁部541(変形部543)が径方向内側に向けて変形して、接続端子52及び濃度センサ素子51を弾性的に保持する形態のセパレータ54を備える液体状態検知センサ1を例示した。しかし、貫通孔の径を小さくする、貫通孔の内側に突出する突起を設けるなどにより、セパレータを内筒内に挿入する以前から、貫通孔内で接続端子あるいは濃度センサ素子が常にセパレータの貫通孔壁部に弾性的に保持される形態のセパレータを備える液体状態検知センサとしても良い。
【0072】
さらに、上述の実施形態では、セパレータ54の端子間絶縁部548の先端に位置する素子当接部549に濃度センサ素子51の基端515を当接させて濃度センサ素子51の位置決めを行った例を示した。しかし、セパレータの他の部分と濃度センサ素子の他の部分とを当接させて、濃度センサ素子の位置決めを行うようにしても良い。また、上述の実施形態では、液体状態検知センサ1として、制御回路を搭載した配線基板22を有するものを例示した。しかし、本発明の液体状態検知センサとしては、濃度センサ素子51などのセンサ素子やこれと導通してなるケーブル等の導電経路部材を備えていればよく、制御回路を含まないタイプの液体状態検知センサをも含む。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施形態に係る液体状態検知センサの概略の形態及び要部の構造を示す部分破断断面図である。
【図2】本実施形態に係る液体状態検知センサから外筒を除いた状態における、液体濃度センサ部の部分拡大側面図である。
【図3】本実施形態に係る液体状態検知センサから外筒を除いた状態における、液体濃度センサ部の部分拡大底面図である。
【図4】本実施形態に係る液体状態検知センサにおける、液体濃度センサ部の縦断面図であって、図3におけるA−O−A’断面図である。
【図5】本実施形態に係る液体状態検知センサにおける、液体濃度センサ部の部分破断縦断面図であって、図3におけるB−O−B’断面図である。
【図6】本実施形態に係る液体状態検知センサに用いるセンサ素子、接続端子及びリード線の形態及び接続形態を示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る液体状態検知センサに用いるセパレータであり、(a)は斜視図、(b)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 液体状態検知センサ
2 基部
22 配線基板
3 センサ部
4 液面レベルセンサ部
41 外筒
41H 保持孔
42 内筒(保持管)
5 液体濃度センサ部
51 濃度センサ素子
516 内部配線(発熱抵抗体)
52 接続端子(端子部材)
53 接続ケーブル(導電経路部材)
532 リード線
533 芯線
54 セパレータ
54B (セパレータの)基端
54C (セパレータの)先端
54H1,54H2 貫通孔
54H3 孔連通部
541 貫通孔壁部
541G (貫通孔壁部の)外周面
542 (貫通孔壁部のうち)端子一内筒絶縁部(端子一管絶縁部)
544 端子保持部
545 素子保持部
546 内筒係合部
547 当接突起(突起部)
548 端子間絶縁部
549 (端子間絶縁部のうち)素子当接部
54S1,54S2 スリット
55 ホルダ部材
56 ゴムブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液体に少なくとも一部を浸漬して、上記被測定液体の状態を検知する液体状態検知センサであって、
上記被測定液体に少なくとも一部が浸漬するセンサ素子と、
上記センサ素子に固着された端子部材と、
上記端子部材に接続され、これを介して上記センサ素子と導通してなる導電経路部材と、
自身の先端部に直接または間接的に上記センサ素子を保持し、上記導電経路部材の少なくとも一部及び上記端子部材の少なくとも一部を包囲した長手方向に延びる保持管と、
上記端子部材と上記保持管との間に介在して両者間を絶縁するセパレータと、を備える
液体状態検知センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体状態検知センサであって、
前記端子部材を複数備え、
前記セパレータは、
上記端子部材同士の間に介在して、これらを互いに絶縁してなる端子間絶縁部を含む
液体状態検知センサ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体状態検知センサであって、
前記セパレータは、
ゴム状弾性を有する材料からなり、
前記保持管内において、前記端子部材を弾性的に保持してなる端子保持部を含む
液体状態検知センサ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記センサ素子は、その一部が前記保持管に包囲されてなり、
前記セパレータは、
上記保持管内において、上記センサ素子を保持してなる素子保持部を含む
液体状態検知センサ。
【請求項5】
請求項4に記載の液体状態検知センサであって、
前記素子保持部を含む前記セパレータは、ゴム状弾性を有する材料からなり、この素子保持部が前記センサ素子を弾性的に保持してなる
液体状態検知センサ。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の液体状態検知センサであって、
前記センサ素子は、その一部が前記保持管に包囲されてなり、
前記セパレータは、
ゴム状弾性を有する材料からなり、
自身の外周面から突出するとともに、前記長手方向に沿って複数設けられた突起部を含んでなり、
前記セパレータの上記突起部が前記保持管の内周面に接触して、前記セパレータの少なくとも一部が径方向内側に向かって弾性変形することにより、前記セパレータは、前記保持管内において、前記センサ素子および前記端子部材を弾性的に保持してなる
液体状態検知センサ。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記セパレータは、
自身の外周面から突出するとともに、前記保持管の内径よりも大きい外径を有する内筒係合部を含んでおり、
前記セパレータの上記内筒係合部が、前記保持管の先端に係合してなる
液体状態検知センサ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記センサ素子は、その一部が前記保持管に包囲されてなり、
前記セパレータは、
上記センサ素子に当接して、上記セパレータ内における上記センサ素子の基端−先端方向の位置決めを行う素子当接部を含む
液体状態検知センサ。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記セパレータは、
ゴム状弾性を有する材料からなり、
前記導電経路部材及び前記端子部材のうち少なくともいずれかを内部に収容する貫通孔をなす貫通孔壁部を有し、
上記貫通孔壁部は、
上記貫通孔の一方端から他方端にわたってこの貫通孔壁部を横断し、この貫通孔壁部の外周面から上記貫通孔にまで届くスリットであって、上記セパレータを変形させ上記スリットを開かせることにより、上記導電経路部材及び上記端子部材のうち少なくともいずれかを上記貫通孔内に収納可能としてなるスリットを有する
液体状態検知センサ。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記センサ素子は、
第1セラミック層と、
上記第1セラミック層に積層される第2セラミック層と、
上記第1セラミック層と上記第2セラミック層との間に配置され、自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体と、を有するとともに、
上記発熱抵抗体に前記端子部材を介して通電がなされたとき、前記被測定液体の状態に関連した出力信号を上記発熱抵抗体より出力する
液体状態検知センサ。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
長手方向に延びる筒状をなし、前記保持管の径方向外側を包囲する外筒を有しており、
上記外筒と前記保持管との間で前記被測定液体のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサをなすレベルセンサ部を構成した
液体状態検知センサ。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の液体状態検知センサであって、
前記被測定液体が尿素水溶液である
液体状態検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−225593(P2007−225593A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316489(P2006−316489)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】