説明

液体状態検知センサ

【課題】抵抗体を含む通電経路の異常を検知し、液体が凍結しているか否かを的確に判定することができる液体状態検知センサを提供すること。
【解決手段】液体収容容器内に収容される液体の状態を検知する液体状態検知センサにおいて、液体性状検出素子が備える抵抗体を含む通電経路に通電を行っているときに、抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値を取得する。続いて、第1対応値に基づいて液体状態検知センサの周囲の液体の温度を求める。続いて、この周囲の液体の温度と第1温度とを比較して、液体が凍結しているか否かを判定し(S52)、さらに周囲の液体の温度と、第1温度よりも低い第2温度とを比較して、通電経路が異常状態にあるか否かを判定する(S60)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器内に収容される液体の状態、例えば液体の温度や当該液体に含まれる特定成分の濃度を検知する液体状態検知センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばディーゼル自動車から排出される窒素酸化物(NOx)を無害なガスに還元する排ガス浄化装置にNOx選択還元触媒(SCR)を用いる場合があるが、その還元剤として尿素水溶液が用いられる。この還元反応を効率よく行うには、尿素濃度が32.5wt%の尿素水溶液を用いるとよいことが知られている。しかし、自動車に搭載される尿素水タンクに収容される尿素水溶液は、過酷な環境条件下で保管され、また経時変化等により、その尿素濃度に変化を生ずる場合がある。また、尿素水タンクに誤って異種水溶液(例えば軽油)あるいは水が混入される可能性もある。こうしたことから、発熱体を有する液体状態検知素子を備えた尿素濃度検知用の濃度センサが尿素水タンクに取り付けられている。
【0003】
ところで、寒冷地等では尿素水タンクに収容された尿素水溶液が凍結することがあり、このような場合、触媒に対して尿素水溶液を噴射することができないため、尿素水溶液の解凍を待つ必要がある。しかし、尿素水溶液の凍結時に、発熱体に所定時間の通電を行って尿素濃度を検知する処理が繰り返し実行されると、濃度識別センサ部が破損してしまう虞がある。より詳細には、尿素水溶液の凍結時に発熱体に所定時間の通電を行うと、その発熱に伴い濃度識別センサ部周りにある一部の尿素水溶液が解凍されるが、解凍したその一部の尿素水溶液は、大部分の尿素水溶液が依然として凍結した状態であれば再凍結を生ずるため、そのときの凍結膨張圧によって濃度識別センサ部が破損してしまうことがある。そこで、液体の温度検知と濃度検知とを発熱抵抗体を有する一つの素子で行え、また、液体凍結時におけるその素子の破損を防止することができる液体状態検知センサが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1の液体状態検知センサでは、液体が凍結していると判定された場合に、その後の通電手段による発熱抵抗体への通電を強制的に停止するようにしている。
【特許文献1】特開2007−114181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の液体状態検知センサのように、発熱抵抗体の第1対応値に基づいて液体の温度情報を求める場合、発熱抵抗体等の抵抗体を含む通電経路の異常を考慮する必要がある。具体的には、通電経路がショート(グランドショート)している場合、通電経路の電流が異常に少ない場合、又は、通電経路の抵抗値が異常に低い場合等には、液体の温度に関わらず、液体の凍結温度より低い温度に対応する温度情報が得られる。また、抵抗体を含む通電経路が断線している場合、通電経路の電流が異常に多い場合、又は、通電経路の抵抗値が異常に大きい場合等には、液体の温度に関わらず、液体の沸点よりも高い温度に対応する温度情報が得られる。このように通電経路に異常がある状態で、液体の凍結の有無を判定した場合には、通電経路の異常と液体の凍結との区別がつかず、通電経路の異常を看過してしまう虞があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、抵抗体を含む通電経路の異常を検知し、液体が凍結しているか否かを的確に判定することができる液体状態検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明の液体状態検知センサは、液体収容容器内に収容される液体の状態を検知する液体状態検知センサであって、周囲の液体の温度によって自身の抵抗値が変化する抵抗体を有し、前記液体収容容器内に配置される液体性状検出素子と、前記抵抗体を含む通電経路に通電を行う通電手段と、前記通電手段により前記通電経路に通電を行っているときに、前記抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値を取得する第1対応値取得手段と、前記第1対応値に基づいて前記液体の温度を求める温度取得手段と、前記温度取得手段によって得られた前記温度と第1温度とを比較して、前記液体が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、前記温度取得手段によって得られた前記温度と前記第1温度よりも低い第2温度とを比較して、前記通電経路が異常状態にあるか否かを判定する第1通電経路異常判定手段とを備えている。
【0007】
また、請求項2に係る発明の液体状態検知センサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記温度取得手段によって得られた前記温度と前記第1温度よりも高い第3温度とを比較して、前記通電経路が異常状態にあるか否かを判定する第2通電経路異常判定手段を備えている。
【0008】
また、請求項3に係る発明の液体状態検知センサは、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記抵抗体は、通電によって発熱する発熱抵抗体であり、前記通電手段は、前記通電経路に所定の検出時間通電を行うように構成され、前記第1対応値取得手段は、前記検出時間内に前記第1対応値を取得するように構成される一方、前記凍結判定手段は、前記検出時間内に前記液体が凍結しているか否かを判定するように構成されており、前記検出時間経過後に前記抵抗体の第2抵抗値に対応した第2対応値を取得する第2対応値取得手段と、前記第2対応値と前記第1対応値とに基づいて前記液体に含まれる特定成分の濃度を求める濃度取得手段と、前記凍結判定手段にて前記液体が凍結していると判定された場合に、前記検出時間経過前に前記通電手段による前記抵抗体への通電を停止する通電停止手段とを備えている。
【0009】
また、請求項4に係る発明の液体状態検知センサは、請求項3に記載の発明の構成に加え、前記液体は尿素水溶液であって、前記特定成分が尿素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の液体状態検知センサによれば、本発明の液体状態検知センサが備える抵抗体は、周囲の液体の温度によって自身の抵抗値が変化する抵抗値が変化する性質を有する。そこで、本発明では、抵抗体への通電開始後の第1抵抗値に対応した第1対応値に基づいて、周囲の液体の温度を検知している。そして、その温度に基づき、液体が凍結しているか否かに加え、通電経路に異常が生じているか否かを判定している。通電経路に異常が生じているか否かの判定に用いる第2温度は、液体が凍結しているか否かの判定に用いる第1温度よりも低い温度であり、通電経路に異常がない場合には通常の使用環境では想定されない温度が適宜設定される。したがって、本発明において検知できる通電経路の異常は、通電経路がショートしている場合、通電経路の電流が異常に少ない場合、又は、通電経路の抵抗値が異常に低い場合等(以下、これらの通電経路の異常を単に「通電経路ショート異常」と言う。)が挙げられる。このため、これらの通電経路の異常を検知することで、通電経路の異常が看過されることにより液体の実際の温度によらず液体が凍結していると誤判定され続けることを回避することができる、即ち、液体が凍結しているか否かを適切に判断することができる。
【0011】
なお、本発明における第1対応値としては、抵抗体の第1抵抗値に対応した値であればよく、具体的には電圧値や電流値、温度換算値を挙げることができる。また、液体状態検知素子を構成する「抵抗体」としては、前述したように、周囲の液体の温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体であればよく、通電によって発熱するとともに液体の温度に応じて抵抗値が変化する自己発熱型抵抗体をも含むものである。
【0012】
請求項2に係る発明の液体状態検知センサによれば、通電経路に異常が生じているか否かの判定に用いる第3温度として、液体が凍結しているか否かの判定に用いる第1温度よりも高い温度を設定し、この第3温度と温度取得手段によって得られた温度とを比較している。これにより、抵抗体を含む通電経路が断線している場合、通電経路の電流が異常に多い場合、又は、通電経路の抵抗値が異常に大きい場合等(以下、これらの通電経路の異常を単に「通電経路オープン異常」と言う。)の通電経路の異常をも検知することができる。
【0013】
請求項3に係る発明の液体状態検知センサによれば、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、液体を発熱させる発熱体と感温体との機能を兼ねた発熱抵抗体(所謂、自己発熱型抵抗体)を有する液体性状検出素子を用いて、液体の温度検知と濃度検知とを行う構成を採用している。これにより、液体状態検知センサの小型化を図ることができ、また構造や検知回路が複雑化するのを抑制することができる。なお、第1対応値と同様に、本発明の第2対応値についても、発熱抵抗体の第2抵抗値に対応した値であればよい。ただし、本発明では、第2対応値と第1対応値とに基づいて液体に含まれる特定成分の濃度を求める必要があるため、例えば第1対応値を電圧値とする場合には、第2対応値は同様に電圧値とする必要がある。
【0014】
なお、請求項3に記載の液体状態検知センサのように、発熱抵抗体への通電を停止するにあたり凍結判定手段の判定結果を利用する場合には、凍結判定手段による判定を、第1通電経路異常判定手段による判定よりも優先させて実施することが好ましい。液体が凍結を生じている場合に、液体性状検出素子の破損をより確実に防止することができるからである。
【0015】
請求項4に係る発明の液体状態検知センサによれば、請求項3に記載の発明の構成に加え、尿素水溶液の温度と、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した液体状態検知センサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1および図2を参照して、一例としての液体状態検知センサ100の構造について説明する。図1は、液体状態検知センサ100の一部切欠縦断面図である。図2は、セラミックヒータ110のヒータパターン115を示す模式図である。なお、液体状態検知センサ100においてレベル検知部70(外筒電極10および内部電極20から構成されるコンデンサ)の長手方向を軸線O方向とし、液体性状検知部30が設けられる側を先端側、取付部40が設けられる側を後端側とする。
【0017】
本実施の形態の液体状態検知センサ100は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水溶液の状態、つまりは尿素水溶液のレベル(液位)、温度、およびその溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知するためのセンサである。図1に示すように、液体状態検知センサ100は、円筒形状を有する外筒電極10,およびその外筒電極10の内部にて外筒電極10の軸線O方向に沿って設けられた円筒状の内部電極20から構成されるレベル検知部70と、内部電極20の先端側に設けられた液体性状検知部30と、液体状態検知センサ100を尿素水タンク98(図3参照)に取り付けるための取付部40とを備えて構成される。
【0018】
外筒電極10は金属材料からなり、軸線O方向に延びる長細い円筒形状を有する。外筒電極10の外周上にて周方向に等間隔となる3本の母線上には、各母線に沿ってそれぞれ複数の細幅のスリット15が断続的に開口されている。また、外筒電極10の先端部11において、上記スリット15が形成された各母線上には、後述する内部電極20との間に介在されるゴムブッシュ80の抜け防止のための開口部16がそれぞれ設けられている。さらに、外筒電極10の後端側の基端部12に近い位置で、スリット15が形成された各母線とは異なる母線上には、1つの空気抜孔19が形成されている。また、外筒電極10の先端部11は、後述する液体性状検知部30のセラミックヒータ110の径方向周囲を、そのセラミックヒータ110を覆って保護するプロテクタ130ごと包囲するように、開口部16の位置よりさらに軸線O方向先端側に延長されている。なお、本実施の形態では、外筒電極10の最先端部(図中最下部)は開口されてなるが、セラミックヒータ110周りの尿素水溶液の流動等の影響をより受けにくくする意味合いから、外筒電極10の開口部に、液導入口を確保した形で下蓋を設けるようにしても良い。
【0019】
次に、外筒電極10は、基端部12が金属製の取付部40の電極支持部41の外周に係合した状態で溶接されている。取付部40は尿素水タンク98(図3参照)に液体状態検知センサ100を固定するための台座として機能し、取り付けボルトを挿通するための取り付け孔(図示外)が鍔部42に形成されている。また、取付部40の鍔部42を挟んで電極支持部41の反対側には、後述する尿素水溶液のレベル、温度、尿素濃度等を検知するための回路や、図示外の外部回路(例えば自動車のエンジン制御装置(ECU))との電気的な接続を行うための入出力回路等が搭載された回路基板60等を収容する収容部43が形成されている。
【0020】
回路基板60は、収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示外)上に載置されている。収容部43はカバー45に覆われ保護されており、そのカバー45は、鍔部42に固定されている。また、カバー45の側面にはコネクタ62が固定されており、コネクタ62の接続端子(図示外)と回路基板60上のパターン(後述する入出力回路部290)とが配線ケーブル61によって接続されている。このコネクタ62を介し、回路基板60とECUとの接続が行われる。
【0021】
取付部40の電極支持部41には収容部43内に貫通する孔46が開口されており、この孔46内に、内部電極20の基端部22が挿通されている。本実施の形態の内部電極20は軸線O方向に延びる長細い円筒形状をした金属材料からなる。この内部電極20の外周面上には、PTFE,PFA,ETFE等のフッ素系樹脂やエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなる絶縁性被膜23が形成されている。この内部電極20と外筒電極10との間で、尿素水溶液のレベルに応じて静電容量が変化するコンデンサを形成してなるレベル検知部70が構成されている。
【0022】
内部電極20の軸線O方向後端側の基端部22には、内部電極20を取付部40に固定するためのパイプガイド55とインナーケース50が係合されている。パイプガイド55は、内部電極20の基端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材である。インナーケース50は内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように内部電極20を位置決め支持する鍔付き筒状の樹脂製部材であり、先端側が取付部40の電極支持部41の孔46に係合する。インナーケース50には径方向外側に向かって突出する鍔部51が形成されており、インナーケース50が電極支持部41に係合される際には、収容部43側から電極支持部41の孔46に挿通される。そして、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、インナーケース50が孔46内を通り抜けることが防止される。また、内部電極20は、収容部43側からインナーケース50の内側に挿通されるが、パイプガイド55が鍔部51に当接することで、インナーケース50からの脱落が防止される。
【0023】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、Oリング53とOリング54とが設けられている。Oリング53は、インナーケース50の外周と取付部40の孔46との間の隙間を密閉し、Oリング54は、インナーケース50の内周と内部電極20の基端部22の外周との間の隙間を密閉している。これにより、液体状態検知センサ100が尿素水タンク98(図3参照)に取り付けられた際に、尿素水タンク98の内部と外部とが収容部43を介して連通しないように、その水密性および気密性が保たれる。
【0024】
そして、内部電極20の取付部40への組み付けの際には、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧される。絶縁性の押さえ板56は、パイプガイド55との間に押さえ板57を挟み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58によって収容部43内に固定される。これにより、パイプガイド55に接合された内部電極20が電極支持部41に固定されることとなる。押さえ板56,57には中央に孔59が開口されており、内部電極20の電極引出線52と、後述するセラミックヒータ110との電気的な接続を行う2本のリード線90(図1では一方のリード線90のみを表示している。)を内包する2芯のケーブル91とが挿通され、それぞれ回路基板60上のパターンに電気的に接続されている。回路基板60のグランド側の電極(図示外)は取付部40に接続されており、これにより、取付部40に溶接された外筒電極10がグランド側に電気的に接続される。
【0025】
次に、内部電極20の先端部21に設けられた液体性状検知部30は、本実施の形態では尿素水溶液の温度および含有される尿素の濃度の検知を行う液体性状検出素子としてのセラミックヒータ110と、セラミックヒータ110を支持するとともに、内部電極20の先端部21に装着される絶縁性樹脂製のホルダ120と、ホルダ120から露出されたセラミックヒータ110の周囲を覆って保護するプロテクタ130とを備えて構成される。
【0026】
図2に示すように、セラミックヒータ110は、絶縁性セラミックからなる板状のセラミック基体111上にPtを主体とするヒータパターン115を形成し、対となるセラミック基体(図示せず)で挟みヒータパターン115を埋設した状態に形成されている。発熱抵抗体114を構成するパターンの断面積を、電圧印加のための両極となるリード部112,113のパターンよりも小さくするようにして、通電時、主に発熱抵抗体114において発熱が行われるようにしている。また、リード部112,113の両端には、それぞれセラミック基体111の表面に設けられた電極パッドに導通するビア導体(図示外)がつながっており、2本のリード線90との接続を中継する2つの中継端子119(図1ではともに一方のみを表示している。)のそれぞれと電気的に接続されている。なお、本実施形態のセラミックヒータ110は、本発明における「液体性状検出素子」に相当する。また、発熱抵抗体114,並びに、発熱抵抗体114と定電流出力部240とを結ぶ経路上の導電性部材である、リード部112,113,ビア導体、中継端子119,リード線90およびスイッチ260は、本発明における「通電経路」に相当する。この通電経路を構成する部材には、少なくとも発熱抵抗体114が含まれればよく、適宜変更可能である。
【0027】
次に、図1に示すように、セラミックヒータ110を支持するホルダ120は、外径が段違い状2段に構成された円筒形状を有し、小径となる先端側にて、発熱抵抗体114の埋設された側(図2参照)を露出した状態のセラミックヒータ110を、接着剤からなる固定部材125,126で固定している。そして大径側となる後端側が内部電極20の先端部21に装着されており、その内部電極20の外周面とホルダ120の内周面との間にシールリング140が介在され、内部電極20の内部の水密性および気密性が確保されている。
【0028】
ところで、ホルダ120の装着前に、セラミックヒータ110の中継端子119にはケーブル91の2本のリード線90の芯線がそれぞれ加締め又は半田付けにより接合される。さらに絶縁性の保護部材95により、中継端子119とリード線90とが接合部位ごと覆われ保護される。そして、2つのリード線90は筒形状の内部電極20内を挿通され、上記回路基板60に接続されている。
【0029】
次に、プロテクタ130は、有底円筒形状に形成された金属製の保護部材である。開口側がホルダ120の小径部分の外周に嵌合されている。また、プロテクタ130の外周上には液体流通孔(図示外)が開口されており、プロテクタ130の内外での尿素水溶液の交換が行われる。
【0030】
また、ホルダ120を支持するゴムブッシュ80は円筒形状を有しており、その外周面上に形成された突起部87が、外筒電極10の開口部16に係合されて固定される。
【0031】
次に、図3を参照して、液体状態検知センサ100の電気的な構成について説明する。図3は、液体状態検知センサ100の電気的な構成を示すブロック図である。
【0032】
図3に示すように、液体状態検知センサ100は液体収容容器としての尿素水タンク98に取り付けられ、一対の電極(外筒電極10および内部電極20)を備えたレベル検知部70と、発熱抵抗体114が埋設されたセラミックヒータ110を備えた液体性状検知部30とが、尿素水タンク98に収容された状態検知対象の液体としての尿素水溶液に浸漬される。液体状態検知センサ100は、回路基板60上にマイクロコンピュータ220を搭載し、レベル検知部70の制御を行うレベル検知回路部250と、液体性状検知部30の制御を行う液体性状検知回路部280と、ECUとの通信を行う入出力回路部290とが接続されている。
【0033】
マイクロコンピュータ220は公知の構成からなるCPU221,ROM222,RAM223を備える。CPU221は、液体状態検知センサ100の制御を司り、ROM222には図示外の各種記憶エリアが設けられ、後述する性状検知プログラムや各種変数の初期値、閾値等が所定の記憶エリアに記憶されている。同様に、RAM223にも各種記憶エリアが設けられており、性状検知プログラムの実行時には、各種フラグ、各種変数、タイマーカウント値等が一時的に所定の記憶エリアに記憶される。
【0034】
入出力回路部290は、液体状態検知センサ100とECUとの間での信号の入出力を行うため、通信プロトコルの制御を行う。また、レベル検知回路部250は、マイクロコンピュータ220の指示に基づき、レベル検知部70の外筒電極10と内部電極20との間に交流電圧を印加し、レベル検知部70をなすコンデンサを流れた電流を電圧変換して、その電圧信号をマイクロコンピュータ220に出力する回路部である。
【0035】
次に、液体性状検知回路部280は、マイクロコンピュータ220の指示に基づき、液体性状検知部30のセラミックヒータ110に定電流を流し、発熱抵抗体114の両端に発生する検出電圧をマイクロコンピュータ220に出力する回路部である。液体性状検知回路部280は、差動増幅回路部230,定電流出力部240,スイッチ260から構成される。
【0036】
定電流出力部240は、発熱抵抗体114に流す定電流を出力する。スイッチ260は、発熱抵抗体114への通電経路上に設けられ、マイクロコンピュータ220の制御に従ってスイッチの開閉を行う。差動増幅回路部230は、発熱抵抗体114の一端に現れる電位Pinと他端に現れる電位Poutとの差分を検出電圧としてマイクロコンピュータ220に出力する。
【0037】
次に、本実施の形態の液体状態検知センサ100により、尿素水溶液のレベル、温度および尿素濃度を検知する原理について説明する。まず、図4を参照し、レベル検知部70において尿素水溶液のレベルを検知する原理について説明する。図4は、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図である。
【0038】
液体状態検知センサ100(図1参照)は、尿素水溶液を収容した尿素水タンク98(図3参照)に、その底壁側に外筒電極10および内部電極20の先端側を向けた状態で組み付けられる。つまり液体状態検知センサ100のレベル検知部70は、尿素水タンク98内で容量の変化する尿素水溶液の変位方向(尿素水溶液のレベルの高低方向)を軸線O方向とし、外筒電極10および内部電極20の先端側が尿素水溶液の容量の少ない側(低レベル側)となるように、尿素水タンク98に組み付けられる。そして、外筒電極10と内部電極20とのギャップ間の静電容量を測定し、両者間に存在する尿素水溶液が軸線O方向においてどれだけのレベルまで存在しているか検知している。これは周知のように、径方向の電位の異なる2点間において、その径の差が小さくなるほど静電容量の大きさが大きくなることに基づく。
【0039】
すなわち、図4に示すように、尿素水溶液で満たされていない部分300においては、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、外筒電極10の内周面と絶縁性被膜23との間に介在する空気層の厚みに相当する距離(距離Yで示す)と、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離(距離Zで示す)との合計の距離(距離Xで示す)となる。一方、尿素水溶液が満たされた部分301において、ギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、尿素水溶液が導電性を示すため外筒電極10と尿素水溶液との電位がほぼ等しくなることから、絶縁性被膜23の厚みに相当する距離Zとなる。
【0040】
換言すれば、尿素水溶液で満たされていない部分300におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がYで空気を誘電体(不導体)とするコンデンサの静電容量と、電極間の距離がZで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサとを直列に接続したコンデンサの合成の静電容量といえる。また、尿素水溶液で満たされた部分301におけるギャップ間の静電容量は、電極間の距離がZで絶縁性被膜23を誘電体とするコンデンサの静電容量といえる。そして両者を並列に接続したコンデンサの静電容量が、レベル検知部70全体の静電容量として測定されることとなる。
【0041】
ここで距離Zと比べ距離Yは大きく構成されているため、空気を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量は、絶縁性被膜23を誘電体とする電極間の単位当たりの静電容量よりも小さい。このため、尿素水溶液で満たされていない部分300の静電容量の変化よりも尿素水溶液で満たされた部分301の静電容量の変化の方が大きく、外筒電極10および内部電極20からなるコンデンサ全体としての静電容量は、尿素水溶液のレベルに比例する。
【0042】
このような尿素水溶液のレベルの測定は、レベル検知回路部250を介してマイクロコンピュータ220にて行われ、得られたレベル情報信号は、入出力回路部290から図示外のECUに対して出力される。
【0043】
次に、液体性状検知部30を構成するセラミックヒータ110において、尿素水溶液の温度と、尿素水溶液に含まれる特定成分としての尿素の濃度を検知する原理について説明する。
【0044】
通電開始後間もない時間内では、発熱抵抗体の発熱がまだ大きくなされていないため、発熱抵抗体自身の温度は、自身の周囲に存在する液体の温度とほぼ同一である。そして、発熱抵抗体へ定電流を流し始めた後(ただし、通電開始後、電流値が安定となるまで約10msecを要する。)より、時間の経過とともに発熱抵抗体自身の温度が連続的に上昇していく。
【0045】
このことから、発熱抵抗体への通電開始から10msec経過時の抵抗値に対応した電圧値と、周囲に存在する尿素水溶液の温度との相関関係を予め確認しておけば、尿素水溶液の温度を測定することが可能である。
【0046】
次に、発熱抵抗体への通電が継続された場合、発熱抵抗体自身の温度は周囲に存在する液体に奪われるが、それら液体の熱伝導率によって発熱抵抗体の奪われる熱量は異なる。つまり、周囲に存在する液体の熱伝導率に応じて発熱抵抗体の温度上昇率は異なってくる。また、液体に含まれる特定成分の濃度によって、液体の熱伝導率が異なることが知られている。このことから、発熱抵抗体を液体に浸漬させ、その液体を一定時間加熱した場合、発熱抵抗体の抵抗値変化の度合いが求まれば周囲の液体の熱伝導率の違いを見いだすことができ、液体の濃度を得ることができる。
【0047】
例えば、温度25℃の尿素水溶液に浸漬した発熱抵抗体に700msec通電した場合、尿素水溶液の尿素濃度が0wt%のときには発熱抵抗体の抵抗値変化に対応した電圧値変化は1220mVとなり、16.25wt%,32.5wt%のときにはそれぞれ1262mV,1298mVとなる。すなわち、尿素水溶液の尿素濃度が高くなるに従って熱伝導率が低くなり、発熱抵抗体は熱が奪われにくくなるので温度上昇率が大きくなり、その結果、発熱抵抗体の抵抗値変化が大きくなって、その抵抗値変化に対応した電圧値変化が大きくなる。そして、尿素水溶液の尿素濃度と発熱抵抗体の抵抗値変化(電圧値変化)との間には、比例関係がある。
【0048】
一方、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度が同一であっても、尿素水溶液の温度が異なると、発熱抵抗体の温度上昇率(すなわち、電圧値変化)が異なる。つまり、発熱抵抗体の温度上昇率は、尿素水溶液の温度に対する依存性がある。例えば、発熱抵抗体に700msec通電し、尿素濃度が32.5wt%、温度が25℃の尿素水溶液を加熱した場合、発熱抵抗体の抵抗値変化に対応した電圧値変化(差分値ΔV)は1298mVとなるのに対し、同濃度で温度が80℃の尿素水溶液に対して発熱抵抗体に700msec通電した場合、電圧値変化は1440mVとなる。すなわち、尿素水溶液の尿素濃度が一定である場合、尿素水溶液の温度が低いほど発熱抵抗体の抵抗値変化が小さくなって、抵抗値変化に対応した電圧値変化が小さくなる。このように、尿素水溶液の尿素濃度と発熱抵抗体の抵抗値変化(電圧値変化)との関係には、尿素水溶液の温度に対する依存性がある。
【0049】
本実施の形態の液体状態検知センサ100では、このような原理に基づいて、尿素水溶液のレベル、温度および尿素濃度の検知が行われる。以下、図3,図5および図6を参照して、液体状態検知センサ100において実行される性状検知処理について説明する。図5は、性状検知処理のフローチャートである。図6は、図5の性状検知処理において実行される、凍結判定・通電経路異常判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、図5および図6におけるフローチャートの各ステップを「S」と略記する。また、図5および図6のフローチャートに示す各処理を実行させるプログラムは、ROM222に記憶されており、図3に示すCPU221が実行する。また、プログラムを実行するために必要な各種情報は、ROM222から読み出され、RAM223の所定の記憶エリアに記憶されているものとする。
【0050】
図5のフローチャートに示すように、まず、マイクロコンピュータ220(図3参照)からの制御信号に基づきスイッチ260が閉じられ、定電流出力部240から発熱抵抗体114への通電が開始される(S1)。そして、別途実行されているタイマープログラム(図示外)のカウント値が参照され、通電開始から10msecが経過するまで待機が行われる(S2:NO)。前述したように本実施形態の液体状態検知センサ100では、発熱抵抗体114への通電開始後、電流値が安定となる時間である初期通電時間として10msecが設定されており、この処理により、その10msec間にS3における電圧値の測定が行われることはない。
【0051】
そして10msecが経過すれば(S2:YES)、S3に進み、差動増幅回路部230により発熱抵抗体114の検出電圧が測定され、その検出電圧がマイクロコンピュータ220に入力される(S3)。なお、S3で差動増幅回路部230により測定された通電開始後の発熱抵抗体114の検出電圧値が、本発明の「第1対応値」に相当し、その電圧値を取得するCPU221が、本発明における「第1対応値取得手段」として機能する。
【0052】
続いて、マイクロコンピュータ220では、入力された発熱抵抗体114の電圧値に基づき予め設定された演算式を用いて、発熱抵抗体114の周囲の尿素水溶液の温度Tが求められる。算出された温度Tは入出力回路部290からECUに対して送信される(S4)。なお、S4で尿素水溶液の温度Tの算出を行うCPU221が、本発明における「温度取得手段」として機能する。
【0053】
続いて、S4において算出された温度Tに基づき、液体状態検知センサ100の周囲の液体が凍結しているか否かを判定するとともに、発熱抵抗体114を含む通電経路に異常があるか否かを判定する凍結判定・通電経路異常判定処理が実行される(S5)。この凍結判定・通電経路異常判定処理の詳細は、図6のフローチャートを参照して後述する。このS5において、液体状態検知センサ100の周囲の液体が凍結していると判定された場合には凍結判定フラグに1がセットされ、同液体が凍結していないと判定された場合には凍結判定フラグに0がセットされ、それぞれRAM223の所定の記憶エリアに記憶される。続いて、RAM223の所定の記憶エリアが参照され、S5において凍結判定フラグに1がセットされたか否かが判定される(S7)。
【0054】
凍結判定フラグに1がセットされている場合には(S7:YES)、続いて、S10〜S21の処理は行わず、後述するS22の処理を行う。一方、凍結判定フラグに1がセットされていない場合には(S7:No)、タイマープログラムのカウント値の参照により、発熱抵抗体114への通電が継続されたまま、700msecが経過するまで待機が行われる(S10:NO)。
【0055】
発熱抵抗体114への通電開始後700msecが経過すると(S10:YES)、S3と同様に、差動増幅回路部230により測定された発熱抵抗体114の検出電圧がマイクロコンピュータ220に入力される(S11)。この電圧測定が終了すれば、マイクロコンピュータ220からスイッチ260の制御信号が出力され、発熱抵抗体114への通電が停止される(S12)。なお、S11で、差動増幅回路部230により測定された発熱抵抗体114への通電後700msecが経過した時点での発熱抵抗体114の検出電圧値が、本発明の「第2対応値」に相当し、その電圧値を取得するCPU221が、本発明における「第2対応値取得手段」として機能する。また、S1で定電流出力部240から発熱抵抗体114への通電を開始し、S10で本発明の検出時間に相当する700msecの待機を行った後、S12で通電を停止するように、スイッチ260の制御信号を出力するCPU221が、本発明における「通電手段」として機能する。
【0056】
そして、S3で得られた発熱抵抗体114の電圧値を、S11で得られた700msecが経過した時点での発熱抵抗体114の電圧値から減算した差分値ΔVの計算が行われる(S13)。算出された差分値ΔVが、予め実験等により決定されROM222に記憶された、尿素水溶液の尿素濃度の取りうる値に基づく電圧値変化の最大値(閾値Q)よりも小さければ(S14:YES)、差分値ΔVの値が正常な値の範囲内にある正常差分値であるとして所定の演算を行い、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度Cが求められる。そして算出された尿素濃度は濃度情報信号として、入出力回路部290からECUに対して送信される(S18)。なお、S13で差分値ΔVの算出を行い、S18で尿素水溶液の尿素濃度Cの算出を行うCPU221が、本発明における「濃度取得手段」として機能する。
【0057】
その後、タイマープログラムのカウント値の参照により、60secが経過するまで待機が行われる(S22:NO)。この待機時間は、700msec通電された発熱抵抗体114自身の温度が周囲の尿素水溶液の温度と同一となるのに十分な時間として設定されている。60secの経過後にはS1に戻り(S22:YES)、あらためて、尿素水溶液の温度および尿素濃度の検知が行われることとなる。
【0058】
一方、S14において、算出された差分値ΔVが上記閾値Q以上であった場合(S14:NO)、予め実験等により決定されROM222に記憶された、発熱抵抗体114の周囲が空気である場合に取りうる電圧値変化の最小値(閾値R)よりも大きければ(S19:YES)、空焚き状態であると判断され、空焚きを報知する報知信号が入出力回路部290を介してECUに送信される(S20)。
【0059】
また、差分値ΔVが閾値R以下であっても(S19:NO)、閾値Q以上であることから発熱抵抗体114の周囲の液体が尿素水溶液ではない(例えば、軽油である。)と判断され、異種液体を報知する報知信号が入出力回路部290を介してECUに送信される(S21)。そしていずれの報知が行われた場合でもS22に進み、60secの待機後にS1に戻り(S22:YES)、あらためて、尿素水溶液の温度および尿素濃度の検知が行われる。
【0060】
次に、図6のフローチャートを参照して、図5の性状検知処理において実行される、凍結判定・通電経路異常判定処理を説明する。図6に示すように、凍結判定・通電経路異常判定処理ではまず、図5のS4において算出された温度Tが、発熱抵抗体114の周囲の液体が凍結していると判断される所定の凍結判定温度より低い温度であるか否かが判定される(S52)。S52において閾値として用いる凍結判定温度は、本発明の「第1温度」に相当する。この凍結判定温度は、液体の種類や、溶質の濃度、液体の凍結温度等に応じて適宜定められ、本実施形態では、液体が確実に凍結していると想定される、液体の凍結温度よりもやや低い−15℃である。
【0061】
図5のS4において算出された温度Tが、発熱抵抗体114の周囲の液体が凍結していると判定される所定の凍結判定温度より低い温度である場合には(S52:YES)、続いて、凍結判定フラグに1がセットされ、RAM223の所定の記憶エリアに記憶される(S54)。この凍結判定フラグは、前述のように、図5のS7において参照される。続いて、液体が凍結していると判定された場合の処理として、マイクロコンピュータ220からの制御信号に基づきスイッチ260が開けられ、発熱抵抗体114への通電が停止される(S56)。なおS56において、制御信号を送信してスイッチ260を開き、発熱抵抗体114への通電を停止する、図3に示すCPU221は本発明の「通電停止手段」として機能する。
【0062】
一方、図5のS4において算出された温度Tが、凍結判定温度より低い温度ではない場合には(S52:NO)、続いて、凍結判定フラグに0がセットされRAM223の所定の記憶エリアに記憶される(S58)。なお、図5のS4において算出された温度Tが、凍結判定温度よりも低い温度であるか否かに基づき、凍結判定フラグに1又は0をセットする(S52,S54,S58)、図3に示すCPU221が、本発明の「凍結判定手段」として機能する。
【0063】
S56又はS58に続いて、図5のS4において算出された温度Tが温度下限以下である場合には(S60:YES)、通電経路が異常状態にあると判定される(S62)。この温度下限は、本発明の「第2温度」に相当する。本実施形態の温度下限は、S52において用いた凍結判定温度(−15℃)よりも低い温度であり、通電経路に異常がない場合には通常の使用環境では想定されない温度−50℃である。S62において検知される通電経路の異常は、例えば、通電経路ショート異常が挙げられる。なお、図5のS4において算出された温度Tと温度下限とを比較して(S60)、通電経路が異常状態にあるか否かを判定する(S62,S74)、図3に示すCPU221が、本発明の「第1通電経路異常判定手段」として機能する。
【0064】
一方、図5のS4において算出された温度Tが、温度下限以下ではないが(S60:NO)、温度上限以上である場合には(S64:YES)、通電経路が異常状態にあると判定される(S66)。この温度上限は、本発明の「第3温度」に相当する。本実施形態の温度上限は、S52において用いた凍結判定温度(−15℃)よりも高い温度であり、通電経路に異常がない場合には通常の使用環境では想定されない温度150℃である。本実施形態の温度上限は、通常の使用環境では想定されない温度として、液体の沸点よりも高い温度を設定している。なお、S66において検知される通電経路の異常は、例えば、抵抗体を含む通電経路オープン異常が挙げられる。なお、図5のS4において算出された温度Tと温度上限とを比較して(S64)、通電経路が異常状態にあるか否かを判定する(S66,S74)、図3に示すCPU221が、本発明の「第2通電経路異常判定手段」として機能する。
【0065】
図5のS4において算出された温度Tが、温度下限以下ではなく(S60:NO)、且つ、温度上限以上でもない場合には(S64:NO)、続いて、RAM223の所定の記憶エリアに記憶されている通電経路異常検知回数がクリアされる(S74)。この処理は、通電経路が異常状態ではないと判定された場合の処理である。この処理により、連続して規定回数(例えば、5回)通電経路の異常を検知した場合に、通電経路が異常であると確定させることができる。続いて、凍結判定・通電経路異常判定処理を終了し、図5の処理に戻る。
【0066】
S62又はS66に続いて、通電経路異常検知回数が1増加(インクリメント)され、RAM223の所定の記憶エリアに記憶される(S68)。通電経路異常検知回数の初期値は0であり、性状検知処理の起動時に初期化される。また、通電経路異常検知回数に上限値(例えば5回)を設けている場合であって、既に通電経路異常検知回数がその上限値に達している場合には、この処理が省略される。続いて、RAM223が参照され、通電経路異常検知回数が規定回数以上である場合には(S70:YES)、通電経路が異常状態にあるという判定結果が確定され、その判定結果がRAM223の所定の記憶エリアに記憶される(S72)。規定回数は、液体状態検知センサ100の用途、設置場所、通電経路の異常を検知する精度等に応じて適宜定められ、本実施形態では5回である。続いて、凍結判定・通電経路異常判定処理を終了し、図5の性状検知処理に戻る。一方、続いて、RAM223が参照され、通電経路異常検知回数が規定回数以上ではない場合には(S70:NO)、凍結判定・通電経路異常判定処理を終了し、図5の性状検知処理に戻る。
【0067】
以上のように、図3に示すCPU221により凍結判定・通電経路異常判定処理が実行される。なお、上記凍結判定・通電経路異常判定処理における判定結果の一部又は全部は、入出力回路部290を介してECU等の外部機器に出力し、その外部機器において別途実行されるプログラムにより、図示しない表示ディスプレイ等の表示手段、警報器やスピーカ等の音声報知手段、警報ランプ等によりユーザに対して報知するようにしてもよい。
【0068】
以上詳述した本実施形態の液体状態検知センサ100は、通電によって発熱する発熱体と感温体との機能を兼ねた発熱抵抗体114を有する一つのセラミックヒータ110を用いて、尿素水溶液の温度と(図5のS4)、尿素水溶液に含まれる尿素の濃度を検知と(図5のS18)を行う構成を採用している。これにより、液体状態検知センサ100の小型化を図ることができ、また構造や検知回路が複雑化するのを抑制することができる。
【0069】
また、発熱抵抗体114への通電開始後の第1抵抗値に対応した第1対応値に基づいて、周囲の液体の温度を検知している(図5のS4)。そして、所定の検出時間の通電が発熱抵抗体114に実行される前に、発熱抵抗体114への通電開始後にS4において算出された温度Tに基づいて液体が凍結しているか否かを判定するようにしている(図6のS52)。そして、液体が凍結していると判定された場合に(S52:YES)、スイッチ260を開いてその後の発熱抵抗体114への通電を強制的に停止するようにしている(S56)。このようにすることで、液体が凍結した場合であっても、セラミックヒータ110が再凍結時の凍結膨張圧により破損するといった事態を回避することができ、信頼性の高い液体状態検知センサ100とすることができる。
【0070】
凍結判定後(S52)、通電経路が異常状態にあるか否かを判定する(S60,S64)。まず、液体が凍結しているか否かの判定に用いる第1温度(−15℃)よりも低く、通電経路に異常がない場合には通常の使用環境では想定されない第2温度(−50℃)と、図5のS4において算出された温度Tとを比較して、通電経路が異常状態にあるか否かを判定する(S60)。このS60において検知できる通電経路の異常は、通電経路ショート異常が挙げられる。続いて、液体が凍結しているか否かの判定に用いる第1温度(−15℃)よりも高く、通電経路に異常がない場合には通常の使用環境では想定されない、即ち液体の沸点よりも高い第3温度(150℃)と、図5のS4において算出された温度Tとを比較して、通電経路が異常状態にあるか否かを判定する(S64)。このS64において検知できる通電経路の異常は、通電経路オープン異常が挙げられる。
【0071】
本実施形態では、通電経路が異常状態にあると連続して規定回数(例えば、5回)判定された場合に(S70:YES)、通電経路が異常状態にあると確定するようにしている。このため、通電経路自体は正常であるが、図5のS4において換算された液体の温度が偶発的に異常値を示した場合を、通電経路が異常状態にあると誤って判定してしまう虞を回避し、より信頼性の高い判定結果を得ることができる。このように通電経路の異常の有無を判定することで、通電経路の異常を的確に検知しつつ、液体が凍結しているか否かを適切に判定することができる。
【0072】
また本実施形態では、発熱抵抗体114への通電を停止するにあたり凍結しているか否かの判定を、通電経路が異常状態にあるか否かの判定よりも先に実施させている。このため、液体が凍結している場合に(S54:YES)、発熱抵抗体114への通電をより早く停止させることができる。このため、セラミックヒータ110の破損をより確実に防ぐことができる。
【0073】
なお、本発明は、以上詳述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、以下の(A)〜(I)に示す変更を加えてもよい。
【0074】
(A)上記実施形態の性状検知処理では、尿素水溶液の温度(S6)を所定の演算式に基づいて算出したが、これに限定されない。例えば、予め実験等によりテーブルを作成し、ROM222の所定の記憶エリアに記憶させ、図5のS4の処理で参照することによって求めてもよい。
【0075】
(B)図5のS2,S10,S22におけるそれぞれの待機時間は一例に過ぎず、実験等により最適な待機時間を求め設定してもよい。さらには、S4において検知された尿素水溶液の温度にあわせ、S22の待機時間がそれぞれ設定されるようにしてもよい。
【0076】
(C)回路基板60は、レベル検知部70および液体性状検知部30からの出力を中継する回路基板として設け、マイクロコンピュータ220等を搭載した外部回路と接続し、その外部回路の制御によって、レベル検知および温度・濃度検知が行われるようにしてもよい。
【0077】
(D)上記実施の形態の液体状態検知センサ100では、外筒電極10および内部電極20を設け、尿素水溶液の液面レベルも検知するようにしたが、液体状態検知センサ100の構成、形状、大きさ、部材等は適宜変更可能である。例えば、液体状態検知センサ100では、外筒電極10および内部電極20を設けなくともよい。また例えば、温度検知と、濃度検知とを別々の素子を用いて行う、所謂傍熱型の液体状態検知センサに本発明を適用するようにしてもよい。この場合、温度検知を行う素子に液体の温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体が備えられることになるが、この抵抗体についても本発明の「抵抗体」に相当するものであり、この抵抗体を含む通電経路が本発明の「通電経路」に相当する。
【0078】
(E)上記実施の形態の液体状態検知センサ100では、液体性状検知回路部280に定電流出力部240を設け、発熱抵抗体114に定電流を流し、発熱抵抗体114の抵抗値に対応した電圧値を取得するようにした。しかし、例えば、液体性状検知回路部280に定電圧出力部を設け、発熱抵抗体114に定電圧をかけて、発熱抵抗体114に流れる電流に対応した電流値を出力して、尿素水溶液の温度・濃度検知を行うようにしてもよい。
【0079】
(F)上記実施形態の液体状態検知センサ100では、凍結判定・通電経路異常判定処理を、検出時間中に行うようにしていたが、取得した第1対応値に基づき、液体状態検知センサ100の周囲の液体の温度を求めた後であればよく、これに限定されない。
【0080】
(G)上記実施形態の図6のフローチャートに示す凍結判定・通電経路異常判定処理において、図5のS4において換算された液体の温度Tが温度下限以下であるか否かを判定する処理と(S60)、温度Tが温度上限以上であるか否かを判定する処理(S64)との双方を実行するようにしていたが、S60の処理のみを行うようにしてもよい。S60のみを行った場合でも、通電経路の異常が看過されることにより、液体の実際の温度によらず液体が凍結していると誤判定され続けることを回避することができる、即ち、液体が凍結しているか否かを適切に判断することができる。
【0081】
(H)上記実施形態の図6のフローチャートに示す凍結判定・通電経路異常判定処理において、凍結判定と、通電経路異常判定とを別に行うようにしていたが、これに限定されない。例えば、凍結判定と、通電経路異常判定とを次のように組み合わせて行うようにしてもよい。図5のS4において算出された温度Tが、温度下限以下の場合を通電経路が異常にあると判定し、温度下限より高く、且つ、凍結判定温度未満の場合に液体が凍結していると判定する。さらに、図5のS4において算出された温度Tが、凍結判定温度以上、且つ、温度上限未満の場合に液体が凍結していないと判定し、温度上限以上である場合に通電経路が異常であると判定する。このようにした場合には、液体の異常と、通電経路の異常とを明確に区別することができる。
【0082】
また上記実施形態の図6のフローチャートに示す凍結判定・通電経路異常判定処理において、図5のS4において換算された液体の温度Tが温度下限以下であり、通電経路ショート異常が疑われる場合(S60:YES,S62)、又は、温度Tが温度上限以上であり、通電経路オープン異常が疑われる場合(S64:YES,S66)に、通電経路異常検知回数を1増加させるようにしていたが、これに限定されない。例えば、想定される通電経路の異常の種類に応じて、通電経路異常検知回数を2種類設けて、それぞれ別々にカウントするようにしてもよい。この場合には、通電経路異常検知回数と比較する規定回数は、想定される通電経路の異常の種類に応じて変えてもよいし、同じ値を用いてもよい。このようにした場合には、例えば、想定される通電経路の異常の種類をECU等に出力することにより、通電経路が異常状態にあるか否かに加え、想定される通電経路の異常の原因を把握することが可能である。
【0083】
さらに、図6のS52では、尿素水溶液の温度Tを算出後に尿素水溶液の凍結判定温度との比較を行ったが、通電開始から10msec経過時の発熱抵抗体114の電圧値VTを、予め実験等により求めた凍結判定温度に対応する発熱抵抗体114の電圧値と比較するようにしてもよい。
【0084】
(I)上記実施の形態の液体状態検知センサ100では、一例として、尿素水溶液の温度・濃度検知を行う液体状態検知センサを例示したが、これに限定されない。例えば、アンモニアを特定成分として、アンモニア水の状態(水位、温度、濃度等)を検知する液体状態検知センサに本発明を適用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】液体状態検知センサ100の一部切欠縦断面図である。
【図2】セラミックヒータ110のヒータパターン115を示す模式図である。
【図3】液体状態検知センサ100の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】外筒電極10と内部電極20とのギャップ間に満たされた尿素水溶液の水面近傍の拡大断面図である。
【図5】性状検知処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図5のフローチャートに示す性状検知処理において実行される凍結判定・通電経路異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
90 リード線
98 尿素水タンク
100 液体状態検知センサ
110 セラミックヒータ
111 セラミック基体
112,113 リード部
114 発熱抵抗体
119 中継端子
220 マイクロコンピュータ
221 CPU
222 ROM
223 RAM
260 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体収容容器内に収容される液体の状態を検知する液体状態検知センサであって、
周囲の液体の温度によって自身の抵抗値が変化する抵抗体を有し、前記液体収容容器内に配置される液体性状検出素子と、
前記抵抗体を含む通電経路に通電を行う通電手段と、
前記通電手段により前記通電経路に通電を行っているときに、前記抵抗体の第1抵抗値に対応した第1対応値を取得する第1対応値取得手段と、
前記第1対応値に基づいて前記液体の温度を求める温度取得手段と、
前記温度取得手段によって得られた前記温度と第1温度とを比較して、前記液体が凍結しているか否かを判定する凍結判定手段と、
前記温度取得手段によって得られた前記温度と前記第1温度よりも低い第2温度とを比較して、前記通電経路が異常状態にあるか否かを判定する第1通電経路異常判定手段と
を備えたことを特徴とする液体状態検知センサ。
【請求項2】
前記温度取得手段によって得られた前記温度と前記第1温度よりも高い第3温度とを比較して、前記通電経路が異常状態にあるか否かを判定する第2通電経路異常判定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の液体状態検知センサ。
【請求項3】
前記抵抗体は、通電によって発熱する発熱抵抗体であり、
前記通電手段は、前記通電経路に所定の検出時間通電を行うように構成され、
前記第1対応値取得手段は、前記検出時間内に前記第1対応値を取得するように構成される一方、前記凍結判定手段は、前記検出時間内に前記液体が凍結しているか否かを判定するように構成されており、
前記検出時間経過後に前記抵抗体の第2抵抗値に対応した第2対応値を取得する第2対応値取得手段と、
前記第2対応値と前記第1対応値とに基づいて前記液体に含まれる特定成分の濃度を求める濃度取得手段と、
前記凍結判定手段にて前記液体が凍結していると判定された場合に、前記検出時間経過前に前記通電手段による前記抵抗体への通電を停止する通電停止手段と
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体状態検知センサ。
【請求項4】
前記液体は尿素水溶液であって、前記特定成分が尿素であることを特徴とする請求項3に記載の液体状態検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−2718(P2009−2718A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−162100(P2007−162100)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】