説明

液体現像剤の製造方法および液体現像剤

【課題】粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することにある。特に、環境に優しい方法で、粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤の製造方法は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を製造する方法であって、水系液体で構成された水系分散媒中に、樹脂材料を含む材料で構成された分散質が分散した水系分散液を用意する工程と、水系分散液を液滴として噴霧することにより、水系分散媒を除去し、液滴中に含まれる複数個の分散質の凝集体として得られるトナー粒子を、直接、絶縁性液体中に分散させる工程とを有する。トナー粒子の含水量は、0.3〜5.0wt%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤の製造方法および液体現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液に分散した液体現像剤を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、保存時等における粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、保存時における液体現像剤中でのトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
従来、液体現像剤は、従来、樹脂を粉砕することによりトナーを製造する粉砕法(例えば、特許文献1参照)、モノマー成分を電気絶縁性液体中で重合させることにより、前記電気絶縁性液体に不溶な樹脂微粒子を形成する重合法(例えば、特許文献2参照)非水系の溶媒に、樹脂材料および顔料を溶解した溶液に、攪拌しながら、樹脂材料に対して溶解性のない溶媒を添加していくことにより、樹脂材料を析出させる析出法(例えば、特許文献3参照)等により、製造されてきた。
しかしながら、従来の液体現像剤の製造方法では、以下のような問題点があった。
【0005】
すなわち、粉砕法では、トナー粒子を十分小さな大きさ(例えば、5μm以下)に粉砕するのが困難であり、トナー粒子の大きさを、上述したような液体現像剤を用いることによる効果を十分に発揮し得る大きさとするには、非常に長い時間、非常に大きな粉砕エネルギーを要し、液体現像剤の生産性が著しく低かった。また、粉砕法では、トナー粒子の粒度分布が広く(粒径のばらつきが大きく)なり易く、また、トナー粒子の形状が不定形で不均一になり易い。その結果、各トナー粒子間での特性(例えば、帯電特性等)のばらつきが大きくなり易い。また、樹脂を、無極性溶媒(絶縁性液体)中での湿式粉砕ではなく、乾式粉砕することも考えられるが、このような場合、粉砕により微粉末が形成されたとしても、当該微粉末は凝集し易く、トナー粒子の大きさを十分に小さいものとするのが困難である。
【0006】
また、重合法では、重合反応の条件を好適なものとするのが困難で、好適な分子量の樹脂材料を生成したり、所望の大きさのトナー粒子を形成したり、トナー粒子の大きさのばらつきを十分に小さくするのが困難である。その結果、トナーの品質の安定性、信頼性は、低いものになり易い。また、重合法では、トナー粒子の形成に比較的長い時間を要し、液体現像剤の生産性に劣る。また、重合法では、一般に、大型の生産装置、生産設備が必要である。
【0007】
また、析出法では、樹脂材料の析出時に、各材料(特に、顔料)が凝集し易く、各トナー粒子間での組成、特性のばらつきが大きくなり易いという問題点があった。また、析出法では顔料の凝集が起こりやすいため、得られる液体現像剤を用いた場合、十分な透明性の(鮮明な)画像を形成するのが困難であった。
また、従来の方法で製造された液体現像剤は、一般に、紙等の記録媒体に対するトナー粒子の定着性が劣るという問題点もあった。
【0008】
【特許文献1】特開平7−234551号公報
【特許文献2】特公平8−7470号公報
【特許文献3】特開2003−345071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を提供すること、また、このような液体現像剤を効率良く製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することにある。特に、環境に優しい方法で、粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤の製造方法は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を製造する方法であって、
水系液体で構成された水系分散媒中に、樹脂材料を含む材料で構成された分散質が分散した水系分散液を用意する工程と、
前記水系分散液を液滴として噴霧することにより、前記水系分散媒を除去し、前記液滴中に含まれる複数個の前記分散質の凝集体として得られるトナー粒子を、直接、前記絶縁性液体中に分散させる工程とを有することを特徴とする。
【0011】
これにより、粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を効率良く(生産性良く)製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することができる。特に、環境に優しい方法で、粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を製造することが可能な液体現像剤の製造方法を提供することができる。
【0012】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記トナー粒子は、前記樹脂材料の吸水量以上の水分を含むものであることが好ましい。
これにより、記録媒体に対するトナー粒子の定着性を特に優れたものとすることができる。
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記トナー粒子の含水量は、0.3〜5.0wt%であることが好ましい。
これにより、トナー粒子の帯電性を十分に良好なものとしつつ、分散性を良くして、記録媒体に対するトナー粒子の定着性を特に優れたものとすることができる。
【0013】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系分散液中における前記分散質の平均粒径は、0.01〜1.0μmであることが好ましい。
これにより、トナー粒子を、十分に円形度が高く、各粒子間(トナー粒子間)での特性、形状の均一性が特に優れたものとして得ることができる。また、これにより、水系分散液の噴霧条件をさらに安定化させることができる。
【0014】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記液滴の平均粒径は、1.0〜100μmであることが好ましい。
これにより、水系分散媒の除去を、より効率良く行うことができる。また、適度な粒径を有するトナー粒子を、より確実に形成することができる。
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]、前記トナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足することが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での、形状、大きさのばらつきを特に小さくすることができる。
【0015】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記液滴の平均粒径をDd[μm]、前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足することが好ましい。
これにより、トナー製造時における分散液の特長(液切れのよさ等)を十分に発揮させつつ、トナー粒子の粒径のばらつきをより小さいものとすることができる。
【0016】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記液滴の平均粒径をDd[μm]、前記トナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足する請求項1ないし7のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
これにより、十分に微細で、かつ、円形度が大きく、粒度分布がシャープなトナー粒子を比較的容易に得ることができる。
【0017】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系分散液は、乳化重合法により製造された微粒子を、前記分散質として含むものであることが好ましい。
これにより、分散質の大きさを十分小さなものとすることができ、かつ分散質の大きさのばらつきを小さくできる。その結果、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さくすることができる。
【0018】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系分散液は、粉砕法により得られた粉末を用いて調製されたものであることが好ましい。
これにより、容易かつ確実に、水系分散液を構成する分散質の大きさを十分に小さなものとすることができ、その結果、トナー粒子の大きさを十分に小さなものとすることができる。
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記分散液は、前記樹脂材料と着色剤とを含む混練物を用いて調製されたものであることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での組成、特性のばらつきを特に小さいものとすることができる。
【0019】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系分散液は、前記混練物の少なくとも一部を溶解可能な溶媒に、前記混練物を溶解して溶液を得る工程と、当該溶液を前記水系液体中に分散させる工程とを経て調製されたものであることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さくすることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性等)のばらつきを特に小さくすることができる。また、トナー粒子の粒径をより小さくすることができる。
【0020】
本発明の液体現像剤の製造方法では、前記水系分散液は、前記溶液を水系液体中に分散させた後に、前記溶媒を除去することにより調製されたものであることが好ましい。
これにより、分散質同士、トナー粒子同士の不本意な凝集を、より効果的に防止することができ、結果として、トナー粒子の形状、大きさの均一性を特に優れたものとすることができる。また、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができ、異形状のトナー粒子が形成されるのをより効果的に防止することができる。また、溶媒の除去に伴い、水系分散媒(水)を分散質内部に効率良く侵入(置換)させることができ、その結果、最終的なトナー粒子を適度な含水量のものとして得ることができる。
【0021】
本発明の液体現像剤は、本発明の方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、粒度分布の幅が小さく、均一な形状を有し、記録媒体に対するトナー粒子の定着性に優れた液体現像剤を提供することができる。
本発明の液体現像剤では、トナー粒子の平均粒径が0.1〜5μmであることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
本発明の液体現像剤では、各トナー粒子間での粒径の標準偏差が1.0μm以下であることが好ましい。
これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の液体現像剤の製造方法および液体現像剤の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、水系乳化液(水系分散液)の調製に用いる混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図、図2は、本発明の液体現像剤の製造に用いられる液体現像剤製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図3は、図2に示す液体現像剤製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。以下、図1中、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
【0023】
本発明の液体現像剤の製造方法は、水系液体で構成された水系分散媒中に、樹脂材料を含む材料で構成された分散質が分散した水系分散液を用意する工程と、水系分散液を噴霧して、水系分散媒が除去されることにより得られるトナー粒子を、直接、絶縁性液体中に分散させる工程とを有することを特徴とする。
本発明で用いる水系分散液は、いかなる方法で調製されたものであってもよいが、本実施形態では、着色剤と樹脂材料とを含む混練物を用いて調製したものを用いる。
【0024】
<混練物の構成材料>
後述する混練工程で得られる混練物は、液体現像剤のトナーを構成する成分を含むものであり、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
まず、混練物の調製に用いられる材料について説明する。
1.樹脂(バインダー樹脂)
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂(バインダー樹脂)を含む材料で構成されている。
【0025】
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、いかなるものであってもよいが、後述する水系液体に対して自己分散性を有する自己分散型樹脂であるのが好ましい。自己分散型樹脂を用いることにより、水系分散液中における分散質の分散性を特に優れたものとすることができるとともに、分散質中に適度な水分を含ませることができ、最終的なトナー粒子を、適度な含水量を有するものとして得ることができる。なお、本明細書中において、「自己分散性」とは、分散剤を用いなくても分散媒に対する分散性を有する性質のことを指す。そして、「自己分散型樹脂」とは、このような自己分散性を有する樹脂材料のことを指す。
自己分散型樹脂としては、特に限定されないが、例えば、後述する水性液体に対する親液性(親水性)を有する基を多数有する樹脂が挙げられる。
【0026】
前記親液性(親水性)を有する基(官能基)としては、例えば、−COO基、−SO、−CO基、−OH基、−OSO基、−COO−基、−SO−、−OSO−基、−PO、−OH基、−OSO基、−COO−基、−SO−、−OSO−基、−PO2−、−PO基、および第4級アンモニウムならびにそれらの塩等が挙げられる。このような自己分散型樹脂は、水系液体に対する分散性が特に優れているため、分散剤を用いることなく、または、極めて少量の分散剤を用いるだけで、後述するような水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)を好適に調製することができる。これにより、例えば、最終的な液体現像剤中に分散剤が含まれることによる問題の発生を効果的に防止することができる。より具体的には、液体現像剤において、分散剤がトナー粒子の帯電特性に悪影響を与えるのを効果的に防止することができる。また、分散液の調製に分散剤を用いることに起因する消泡性の低下による発泡を効果的に防止することができ、後述するような水系分散液(水系懸濁液)の吐出時における吐出安定性が向上する。また、液体現像剤を構成するキャリア液に粒子を分散する際、分散剤や帯電制御剤を吸着しやすくなり、分散および帯電をさらに安定化することができる。
【0027】
また、上記のような基は、それ自体が電荷を帯び易い性質を有しており、トナー粒子そのものの帯電性を向上させる上でも有利である。
また、前述した基の中でも、特に、−COO−基、−SO−基が好ましい。このような基を有する自己分散型樹脂は、水系液体に対する分散性が特に優れており、適度な水分保持力を有するとともに、また、製造が比較的容易で、比較的安価に入手でき、その結果、液体現像剤の製造の更なる低コスト化を図ることができる。
【0028】
上記のような基は、樹脂材料を構成する高分子の側鎖に存在するものであるのが好ましい。これにより、水系液体に対する親和性を特に優れたものとすることができ、水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)中における、自己分散型樹脂で構成された分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。また、製造工程で有機溶媒を用いなくても、特に優れた分散状態の分散液を得ることができ、環境負荷が少ないという効果も得られる。
【0029】
上記のような自己分散型樹脂は、例えば、後述する原料となる樹脂材料(原料樹脂)またはそのモノマー(単量体)、ダイマー(2量体)、オリゴマー等に、前述したような官能基を有する材料を結合させることにより、製造することができる。
例えば、−COO−基を有する自己分散型樹脂は、水難溶性または水不溶性の樹脂(原料樹脂)に不飽和カルボン酸類をグラフト共重合またはブロック共重合させること、または、熱可塑性樹脂を構成する単量体と不飽和カルボン酸類とをランダム共重合させることにより、製造することができる。
【0030】
不飽和カルボン酸類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の不飽和モノカルボン酸またはジカルボン酸またはその無水物、その不飽和カルボン酸のメチル、エチル、プロピル等のモノエステル、ジエステル等のエステル化物、また、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の不飽和カルボン酸塩類等を用いることができる。
【0031】
また、例えば、−SO−基を有する自己分散型樹脂は、熱可塑性樹脂(原料樹脂)に不飽和スルホン酸類をグラフト共重合またはブロック共重合させること、付加重合性熱可塑性樹脂を構成する不飽和単量体と不飽和スルホン酸類を含有する単量体とをランダム共重合させること、または、重縮合系熱可塑性樹脂を構成する単量体と不飽和スルホン酸類を含有する単量体とを重縮合させることにより、製造することができる。
【0032】
不飽和スルホン酸類としては、例えば、スチレンスルホン酸類、スルホアルキル(メタ)アクリレート類、またはこれらの金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。また、スルホン酸類を含有する単量体としては、スルホイソフタル酸類、スルホテレフタル酸類、スルホフタル酸類、スルホコハク酸類、スルホ安息香酸類、スルホサリチル酸類、またはこれらの金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。
【0033】
原料となる樹脂(原料樹脂)としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
また、上記のような自己分散型樹脂は、例えば、前述したような官能基を有する前駆体(例えば、対応するモノマー(単量体)、ダイマー(2量体)、オリゴマー等)を重合させること等によっても製造することができる。
前記自己分散型樹脂に含有されている前記官能基(親水基)の数は、前記自己分散型樹脂100gに対して0.001〜0.050molであるのが好ましく、0.005〜0.030molであるのがより好ましい。これにより、トナーとして必要な特性をより効果的に維持しつつ、自己分散型樹脂を主材料とする分散質の分散性を向上させることができる。
【0035】
上記のような自己分散型樹脂の、混練物中における含有率(混練物の調製に用いる組成物中における含有率)は、特に限定されないが、55〜95wt%であるのが好ましく、60〜90wt%であるのがより好ましく、65〜85wt%であるのがさらに好ましい。自己分散型樹脂の含乳率が前記下限値未満であると、水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)における分散質の分散性を十分に高いものとするのが困難となる可能性がある。一方、自己分散型樹脂の含乳率が前記上限値を超えると、相対的に着色剤の含有率が低下し、最終的な液体現像剤を用いた際に、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。
【0036】
なお、混練物は、上述したような自己分散型樹脂以外の樹脂材料を含むものであってもよい。このような樹脂材料(自己分散型樹脂以外の樹脂材料)としては、例えば、上記で原料樹脂として例示したものを用いることができる。
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜120℃であるのが好ましく、60〜115℃であるのがより好ましく、65〜115℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスターにおける昇温速度5℃/min、ダイ穴径1.0mmの条件で規定される軟化開始温度のことを指す。また、複数種の樹脂成分を含む場合、樹脂(樹脂材料)の軟化温度としては、これらの成分についての加重平均値を採用することができる。
【0037】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
3.その他の成分
また、混練物の調製には、上記以外の成分を用いてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
【0040】
また、混練物の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩等を用いてもよい。
また、混練物の構成材料(成分)としては、例えば、無機溶媒、有機溶媒等の溶媒として用いられるような材料を用いてもよい。これにより、例えば、混練の効率を向上させることができ、各成分がより均一に混ざり合った混練物を容易に得ることができる。
【0041】
<混練物>
次に、上記のような成分を含む原料K5を混練して、混練物K7を得る方法の一例について説明する。
混練物K7は、例えば、図1に示すような装置を用いて製造することができる。
[混練工程]
混練に供される原料K5は、前述したような成分を含むものである。特に、原料K5が着色剤を含むことにより、本工程で原料K5中に含まれる空気(特に着色剤が抱き込んだ空気)を効率よく除去することができ、トナー粒子の内部に気泡が混入(残存)するのを効果的に防止することができる。混練に供される原料K5は、これらの各成分が予め混合されたものであるのが好ましい。
【0042】
本実施形態では、混練機として、2軸混練押出機を用いる構成について説明する。
混練機K1は、原料K5を搬送しつつ混練するプロセス部K2と、混練された原料(混練物K7)を所定の断面形状に形成して押し出すヘッド部K3と、プロセス部K2内に原料K5を供給するフィーダーK4とを有している。
プロセス部K2は、バレルK21と、バレルK21内に挿入されたスクリューK22、スクリューK23と、バレルK21の先端にヘッド部K3を固定するための固定部材K24とを有している。
【0043】
プロセス部K2では、スクリューK22、スクリューK23が、回転することにより、フィーダーK4から供給された原料K5に剪断力が加えられ、均一な混練物K7が得られる。
プロセス部K2の全長は、50〜300cmであるのが好ましく、100〜250cmであるのがより好ましい。プロセス部K2の全長が前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2の全長が前記上限値を超えると、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0044】
また、混練時の原料温度は、原料K5の組成等により異なるが、80〜260℃であるのが好ましく、90〜230℃であるのがより好ましい。なお、プロセス部K2内での原料温度は、均一であっても、部位により異なるものであってもよい。例えば、プロセス部K2は、設定温度の比較的低い第1の領域と、該第1の領域より基端側に設けられ、かつ、その設定温度が第1の領域より高い第2の領域とを有するようなものであってもよい。
【0045】
また、原料K5のプロセス部K2での滞留時間(通過に要する時間)は、0.5〜12分であるのが好ましく、1〜7分であるのがより好ましい。プロセス部K2での滞留時間が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、プロセス部K2での滞留時間が、前記上限値を超えると、生産効率が低下し、また、プロセス部K2内の温度、スクリューK22、スクリューK23の回転数等によっては、熱による原料K5の変性が起こり易くなり、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の物性を十分に制御するのが困難になる可能性がある。
【0046】
スクリューK22、スクリューK23の回転数は、バインダー樹脂の組成等により異なるが、50〜600rpmであるのが好ましい。スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記下限値未満であると、原料K5中の各成分を十分均一に混ぜ合わせることが困難となる可能性がある。一方、スクリューK22、スクリューK23の回転数が、前記上限値を超えると、剪断により、樹脂の分子鎖が切断され、樹脂の特性が劣化する場合がある。
【0047】
また、本実施形態で用いる混練機K1では、プロセス部K2の内部は、脱気口K25を介して、ポンプPに接続されている。これにより、プロセス部K2の内部を脱気することができ、原料K5(混練物K7)が加熱されたり、発熱すること等によるプロセス部K2内の圧力の上昇を防止することができる。その結果、混練工程を安全かつ効率よく行うことができる。また、プロセス部K2の内部が脱気口K25を介してポンプPに接続されていることにより、得られる混練物K7中に気泡(特に、比較的大きな気泡)が含まれるのを効果的に防止することができ、最終的に得られる液体現像剤(トナー)の特性をより優れたものとすることができる。
【0048】
[押出工程]
プロセス部K2で混練された混練物K7は、スクリューK22とスクリューK23との回転により、ヘッド部K3を介して、混練機K1の外部に押し出される。
ヘッド部K3は、プロセス部K2から混練物K7が送り込まれる内部空間K31と、混練物K7が押し出される押出口K32とを有している。
【0049】
内部空間K31内での混練物K7の温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、原料K5中に含まれる樹脂材料の軟化温度以上の温度であるのが好ましい。これにより、トナー粒子を各構成成分がより均一に混ざり合ったものとして得ることができ、各トナー粒子間での特性(帯電特性、定着性等)のばらつきを特に小さくすることができる。
【0050】
内部空間K31内での混練物K7の具体的な温度(少なくとも押出口K32付近での温度)は、特に限定されないが、80〜150℃であるのが好ましく、90〜140℃であるのがより好ましい。内部空間K31内での混練物K7の温度が上記範囲内の値であると、混練物K7が内部空間K31で固化せず、押出口K32から押し出しやすくなる。
図示の構成では、内部空間K31は、押出口K32の方向に向って、その横断面積が漸減する横断面積漸減部K33を有している。このような横断面積漸減部K33を有することにより、押出口K32から押し出される混練物K7の押出量が安定し、また、後述する冷却工程における混練物K7の冷却速度が安定する。その結果、これを用いて製造されるトナーは、各トナー粒子間での特性のばらつきが小さいものとなり、全体としての特性に優れたものになる。
【0051】
[冷却工程]
ヘッド部K3の押出口K32から押し出された軟化した状態の混練物K7は、冷却機K6により冷却され、固化する。
冷却機K6は、ロールK61、K62、K63、K64と、ベルトK65、K66とを有している。
ベルトK65は、ロールK61とロールK62とに巻掛けられている。同様に、ベルトK66は、ロールK63とロールK64とに巻掛けられている。
【0052】
ロールK61、K62、K63、K64は、それぞれ、回転軸K611、K621、K631、K641を中心として、図中e、f、g、hで示す方向に回転する。これにより、混練機K1の押出口K32から押し出された混練物K7は、ベルトK65−ベルトK66間に導入される。ベルトK65−ベルトK66間に導入された混練物K7は、ほぼ均一な厚さの板状となるように成形されつつ、冷却される。冷却された混練物K7は、排出部K67から排出される。ベルトK65、K66は、例えば、水冷、空冷等の方法により、冷却されている。冷却機として、このようなベルト式のものを用いると、混練機から押し出された混練物と、冷却体(ベルト)との接触時間を長くすることができ、混練物の冷却の効率を特に優れたものとすることができる。
【0053】
ところで、混練工程では、原料K5に剪断力が加わっているため、相分離(特に、マクロ相分離)等が十分防止されているが、混練工程を終えた混練物K7は、剪断力が加わらなくなるので、混練物の構成材料によっては、長期間放置しておくと再び相分離(マクロ相分離)等を起こしてしまう可能性がある。従って、上記のようにして得られた混練物K7は、できるだけ早く冷却するのが好ましい。具体的には、混練物K7の冷却速度(例えば、混練物K7が60℃程度まで冷却される際の冷却速度)は、−3℃/秒以上であるが好ましく、−5〜−100℃/秒であるのがより好ましい。また、混練工程の終了時(剪断力が加わらなくなった時点)から冷却工程が完了するまでに要する時間(例えば、混練物K7の温度を60℃以下に冷却するのに要する時間)は、20秒以下であるのが好ましく、3〜12秒であるのがより好ましい。
【0054】
本実施形態では、混練機として、連続式の2軸混練押出機を用いる構成について説明したが、原料の混練に用いる混練機はこれに限定されない。原料の混練には、例えば、ニーダーやバッチ式の三軸ロール、連続2軸ロール、ホイールミキサー、ブレード型ミキサー等の各種混練機を用いることができる。
また、図示の構成では、スクリューを2本有する構成の混練機について説明したが、スクリューは1本であってもよいし、3本以上であってもよい。また、混練装置にディスク(ニーディングディスク)部があってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、1つの混練機を用いる構成について説明したが、2つの混練機を用いて混練してもよい。この場合、一方の混練機と、他方の混練機とで、原料の加熱温度、スクリューの回転速度等が異なっていてもよい。
また、本実施形態では、冷却機として、ベルト式のものを用いた構成について説明したが、例えば、ロール式(冷却ロール式)の冷却機を用いてもよい。また、混練機の押出口K32から押し出された混練物の冷却は、前記のような冷却機を用いたものに限定されず、例えば、空冷等により行うものであってもよい。
【0056】
[粉砕工程]
次に、上述したような冷却工程を経た混練物K7を粉砕する。このように、混練物K7を粉砕することにより、後述する水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)を、比較的容易に、より微小な分散質が分散したものとして得ることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、トナー粒子の大きさをより小さなものとすることができ、高解像度の画像形成に好適に用いることができる。
【0057】
粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。
粉砕の工程は、複数回(例えば、粗粉砕工程と微粉砕工程との2段階)に分けて行ってもよい。また、このような粉砕工程の後、必要に応じて、分級処理等の処理を行ってもよい。分級処理には、例えば、ふるい、気流式分級機等を用いることができる。
【0058】
原料K5に対して上記のような混練を施すことにより、原料K5中に含まれる空気を効果的に除去することができる。言い換えると、上記のような混練により得られる混練物K7は、その内部に空気(気泡)をほとんど含まない。これにより、後述する水系分散液噴霧工程において、異形粒子(中空粒子、欠落粒子、融合粒子等)が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においては、異形トナー粒子による転写性、クリーニング性等の低下等の問題が発生するのを効果的に防止することができる。
本実施形態では、上記のような混練物を用いて、水系分散液を調製する。特に、本実施形態では、上記のような混練物を用いて、一旦、水系乳化液を調製し、その後、当該水系乳化液を用いて水系懸濁液を調製する。
【0059】
水系分散液(水系乳化液)の調製に混練物K7を用いることにより、以下のような効果が得られる。すなわち、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、顔料(着色剤)は、通常、後述するような溶媒として用いられる液体に対する分散性が低いが、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、後述する水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)の分散媒(水系分散媒)に対する分散性に劣る成分(以下、「難分散性成分」とも言う。)や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分(以下、「難溶性成分」とも言う。)が含まれる場合であっても、水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)における分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤においても、各トナー粒子間での組成、特性のばらつきが小さくなり、全体としての特性が特に優れたものとなる。
【0060】
<水系乳化液調製工程>
次に、上記のような混練物K7を用いて、水系液体で構成された水系分散媒中に、トナー材料で構成された分散質が分散した水系乳化液を調製する(水系乳化液調製工程)。
水系乳化液においては、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)ため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、当該水系乳化液を用いて調製される懸濁液(水系懸濁液)も、分散質の形状が比較的円形度(真球度)の大きいものとなり、最終的に得られるトナー粒子も比較的円形度(真球度)の大きいものとなる。また、分散質が液状である(流動性を有し、比較的容易に変形可能である)乳化液では、乳化液を攪拌すること等により、比較的容易に分散質の大きさの均一性を十分に高いものとすることができる。
【0061】
水系乳化液の調製方法は、特に限定されないが、本実施形態では、混練物K7の少なくとも一部が溶解した混練物K7の溶液を得、当該溶液を水系液体に分散させることにより水系乳化液を調製する。なお、本明細書中において、「乳化液(エマルション、乳濁液、乳状液)」とは、液状の分散媒中に、液状の分散質(分散粒子)が分散した分散液のことを指し、「懸濁液(サスペンション)」とは、液状の分散媒中に、固体状(固形)の分散質(懸濁粒子)が分散した分散液(懸濁コロイドを含む)のことを指す。また、分散液中に、液状の分散質と、固体状の分散質とが併存する場合には、分散液中において、液状の分散質の総体積が、固体状の分散質の総体積よりも大きいものを乳化液とし、分散液中において、固体の分散質の総体積が、液状の分散質の総体積よりも大きいものを懸濁液とする。
以下、水系乳化液の調製方法について詳細に説明する。
【0062】
[混練物溶液(混練物の溶液)の調製]
本実施形態では、まず、混練物の少なくとも一部が溶解した混練物の溶液を得る。
溶液は、混練物と、混練物の少なくとも一部を溶解し得る溶媒とを混合することにより調製することができる。
溶液の調製に用いる溶媒は、混練物の少なくとも一部を溶解しうるものであればいかなるものであってもよいが、通常、後述する水系液体(水系乳化液の調製の用いる水系液体)との相溶性の低いもの(例えば、25℃における水系液体100gに対する溶解度が10g以下の液体)が用いられる。
【0063】
このような溶媒としては、例えば、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、2−ヘプタノン等のケトン系溶媒、ペンタノール、n−ヘキサノール、1−オクタノール、2−オクタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、フラン、チオフェン等の芳香族複素環化合物系溶媒、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、アクリル酸エチル等のエステル系溶媒、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0064】
溶液中における溶媒の含有率は、特に限定されないが、5〜75wt%であるのが好ましく、10〜70wt%であるのがより好ましく、15〜65wt%であるのがさらに好ましい。溶媒の含有率が前記下限値未満であると、溶媒に対する混練物の溶解性(溶解度)によっては、混練物を十分に溶解するのが困難になる可能性がある。一方、溶媒の含有率が前記上限値を超えると、後の処理で溶媒を除去するのに要する時間が長くなり、液体現像剤の生産性が低下する。また、溶媒の含有率が高すぎると、前述した混練工程で、十分均一に混ざり合った各成分が相分離してしまう可能性があり、これにより、最終的に得られる液体現像剤における各トナー粒子の特性のばらつきを十分に小さくするのが困難になる可能性がある。
なお、溶液中においては、混練物を構成する成分の少なくとも一部が溶解(膨潤を含む)していればよく、溶液中に、溶解していない不溶分が存在していてもよい。
【0065】
[水系乳化液の調製]
次に、上記のような溶液を水系液体と混合することにより、水系乳化液を得る。この水系乳化液においては、通常、前述した溶媒と混練物の構成材料とを含む分散質が、水系液体で構成された水系分散媒中に分散している。
本発明において、「水系液体」とは、少なくとも水(HO)を含む液体のことを指し、好ましくは、主として水で構成されたものである。水系液体中に占める水の含有率は、50wt%以上であるのが好ましく、80wt%以上であるのが好ましく、90wt%以上であるのが好ましい。なお、水系液体は、水以外の成分を含むものであってもよい。例えば、水系液体は、水との相溶性に優れる成分(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の物質)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0066】
また、水系乳化液(水系分散液)の調製には、例えば、分散質の分散性を向上させる目的で、分散剤等を用いてもよい。分散剤としては、例えば、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ドデシルベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩(例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等)等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。水系乳化液の調製に上記のような分散剤を用いることにより、分散質の分散性が向上するとともに、比較的容易に、水系乳化液中での分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとし、また、分散質の形状を略球形状とすることができる。その結果、最終的な液体現像剤を、略球形状で、均一な形状、大きさのトナー粒子で構成されたものとして得ることができる。また、水系乳化液の調製に上記のような分散剤を用いることにより、水系乳化液の保存安定性を特に優れたものとすることができる
溶液と水系液体との混合は、少なくとも一方の液体を攪拌しつつ行うのが好ましい。これにより、大きさ、形状のばらつきの小さい分散質が均一に分散した乳化液(水系乳化液)を、容易かつ確実に得ることができる。
【0067】
溶液と水系液体との混合の具体的な方法としては、例えば、容器内の水系液体中に溶液を加える方法(例えば、滴下する方法)、容器内の溶液中に水系液体を加える方法(例えば、滴下する方法)等が挙げられる。これらの場合、少なくとも、攪拌した状態の液体中に、他方の液体を加えるのが好ましい。これにより、上述した効果は更に顕著に発揮される。
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の不本意な結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0068】
水系乳化液中における分散質の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜1.0μmであるのが好ましく、0.05〜0.5μmであるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の不本意な結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0069】
なお、上記の説明では、水系乳化液中において、混練物中の成分が分散質に含まれるものとして説明したが、混練物の構成成分の一部が分散媒中に含まれていてもよい。
また、水系乳化液中には、上記以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
前記帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフミン酸等が挙げられる。
【0070】
前記磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、水系乳化液中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
【0071】
<水系懸濁液調製工程>
上記のようにして得られた水系乳化液は、そのまま、トナー粒子製造用の噴霧液として用いてもよいが、本実施形態においては、(液状の分散質が水系分散媒中に分散した)水系乳化液から、固形状の分散質31が分散媒(水系分散媒)32中に分散した水系懸濁液3を得、当該水系懸濁液3をトナー粒子製造用の噴霧液として用いる。これにより、分散質同士、トナー粒子同士の不本意な凝集を、より効果的に防止することができ、結果として、トナー粒子の形状、大きさの均一性を特に優れたものとすることができる。また、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができ、異形状のトナー粒子が形成されるのをより効果的に防止することができる。また、溶媒の除去に伴い、水系分散媒(水)を分散質内部に効率良く侵入(置換)させることができ、その結果、最終的なトナー粒子を適度な含水量のものとして得ることができる。
以下、水系懸濁液3の調製方法について詳細に説明する。
【0072】
水系懸濁液3の調製は、水系乳化液から分散質を構成する溶媒を除去することにより行うことができる。
溶媒の除去は、例えば、水系乳化液を加熱(加温)したり、減圧雰囲気下に置くことにより行うことができるが、水系乳化液を減圧下で加熱することにより行うものであるのが好ましい。これにより、分散質31の大きさ、形状のばらつきが特に小さい水系懸濁液3を、比較的容易に得ることができる。また、上記のように溶媒を除去することにより、溶媒の除去とともに、脱気処理を施すことができる。これにより、水系懸濁液3中の気体の溶存量を低減させることができ、液体現像剤製造装置M1の分散媒除去部M3において、水系懸濁液3の液滴5から分散媒32を除去する際に、当該水系懸濁液3中に気泡等が発生するのを効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中に異形状のトナー粒子(中空粒子、欠落粒子等)が混入するのをより効果的に防止することができる。
【0073】
水系乳化液を加熱(加温)する場合、加熱温度は、30〜110℃であるのが好ましく、40〜100℃であるのがより好ましい。加熱温度が前記範囲内の値であると、異形状の分散質31の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
また、水系乳化液を減圧雰囲気下に置く場合、水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力は、0.1〜50kPaであるのが好ましく、0.5〜5kPaであるのがより好ましい。水系乳化液が置かれる雰囲気の圧力が前記範囲内の値であると、異形状の分散質31の発生を十分に防止しつつ(水系乳化液の分散質の内部から溶媒が急激に気化(沸騰)するのを確実に防止しつつ)、溶媒を速やかに除去することができる。
【0074】
なお、溶媒の除去は、少なくとも分散質が固形状となる程度に行われるものであればよく、水系乳化液中に含まれる実質的に全ての溶媒を除去するものでなくてもよい。
水系懸濁液3中における分散質31の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜1.0μmであるのが好ましく、0.05〜0.5μmであるのがより好ましい。これにより、分散質同士の不本意な結合(凝集)をより確実に防止することができるとともに、最終的に得られるトナー粒子の大きさ、円形度を最適なものとすることができる。
【0075】
<水系分散液噴霧工程>
次に、水系懸濁液(水系分散液)3を液滴5として噴霧する。これにより、水系懸濁液3(液滴5)から分散媒(水系分散媒)32が除去され、液滴5中に含まれる複数個の分散質31の凝集体としてのトナー粒子8が形成されるとともに、形成されたトナー粒子8を、直接、絶縁性液体9中に分散させる(水系分散液噴霧工程)。これにより、絶縁性液体9にトナー粒子8が分散した液体現像剤10が得られる。また、噴霧液として用いられる分散液は、分散媒が水系液体で構成されたものであるため、環境に優しい方法で液体現像剤を得ることができる。
【0076】
水系懸濁液(水系分散液)の噴霧は、いかなる方法で行ってもよいが、水系懸濁液の液滴を間欠的に吐出することにより行うのが好ましい。これにより、分散質の不本意な凝集等を効果的に防止しつつ、水系分散媒の除去をより効率良く行うことができ、液体現像剤の生産性が向上する。また、水系懸濁液の液滴を間欠的に吐出して水系分散媒の除去を行うことにより、前述した水系懸濁液の調製において、溶媒の一部が残存している場合であっても、この残存している溶媒を水系分散媒とともに効率良く除去することができる。
特に、本実施形態では、図2、図3に示すような液体現像剤製造装置を用いて、水系分散媒の除去を行う。
【0077】
[液体現像剤製造装置]
図2に示すように、液体現像剤製造装置M1は、上述したような水系懸濁液(水系分散液)3を、液滴5として間欠的に吐出するヘッド部M2と、ヘッド部M2に水系懸濁液3を供給する水系懸濁液供給部(水系分散液供給部)M4と、ヘッド部M2から吐出された液滴状(微粒子状)の水系懸濁液3(液滴5)を搬送しつつ分散媒32を除去し、トナー粒子8とする分散媒除去部M3と、絶縁性液体9を貯留する絶縁性液体貯留部M5とを有している。
【0078】
水系懸濁液供給部M4は、ヘッド部M2に水系懸濁液3を供給する機能を有するものであればよいが、図示のように、水系懸濁液3を攪拌する攪拌手段M41を有するものであってもよい。これにより、例えば、分散質31が分散媒(水系分散媒)32中に分散しにくいものであっても、分散質31が十分均一に分散した状態の水系懸濁液3を、ヘッド部M2に供給することができる。
【0079】
ヘッド部M2は、水系懸濁液3を微細な液滴(微粒子)5として、吐出する機能を有するものである。
ヘッド部M2は、分散液貯留部M21と、圧電素子M22と、吐出部M23とを有している。
分散液貯留部M21には、水系懸濁液3が貯留されている。
【0080】
分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3は、圧電素子M22の圧力パルス(圧電パルス)により、吐出部M23から、液滴5として分散媒除去部M3に吐出される。
このように、本発明では、吐出液(噴霧液)として分散液を用いる点に特徴を有する。これにより、以下のような効果が得られる。
すなわち、吐出液として分散液を用いることにより、吐出部から吐出液(分散液)を吐出する際に、微視的に粘度の低い分散媒の部分で選択的に切断され、液滴として吐出される。このため、吐出される分散液の大きさは、各液滴で大きさのばらつきが小さいものとなる。したがって、形成されるトナー粒子は、各粒子(トナー粒子)間での大きさのばらつきが小さいものとなる。
【0081】
そして、吐出部から吐出された液滴は、分散媒の表面張力により、吐出後速やかに球形状となる。さらに、分散液で構成された液滴は、多数個の分散質を含んでおり、分散媒除去部内を搬送される際においても、形状の安定性に優れており、全体として、略球形状を保持した状態でトナー粒子となる。したがって、形成されるトナー粒子は、円形度が大きく、各粒子間(トナー粒子間)での形状のばらつきが小さいものとなる。
【0082】
これに対し、吐出液として溶液や溶融液を用いた場合、このような効果は得られない。すなわち、このような吐出液は、微視的に見ても一様な粘度を有しているため、吐出部から吐出(噴霧)される際に、いわゆる液切れが悪い状態になり易く、液滴が尾を引くような形状になりやすい。したがって、吐出液(噴霧液)として溶液や溶融液を用いた場合、形成されるトナー粒子は、各粒子間(トナー粒子間)での大きさ、形状のばらつきが大きく、円形度が小さいものになり易い。
【0083】
また、吐出液として分散液を用いることにより、製造するトナー粒子の粒径が十分に小さい場合であっても、容易に、その円形度を十分に高いものとし、かつ、粒度分布がシャープなものとすることができる。これにより、得られるトナーは、各粒子間での帯電が均一で、かつ、トナーを印刷に用いたときに、現像ローラ上に形成されるトナーの薄層が平準化、高密度化したものとなる。その結果、カブリ等の欠陥を生じ難く、よりシャープな画像を形成することができる。
吐出部M23の形状は、特に限定されないが、略円形状であるのが好ましい。これにより、吐出される水系懸濁液3や、分散媒除去部M3内において形成されるトナー粒子8の真球度を高めることができる。
【0084】
吐出部M23が略円形状のものである場合、その直径(ノズル径)は、例えば、0.5〜100μmであるのが好ましく、0.8〜50μmであるのがより好ましく、0.8〜15μmであるのがより好ましい。吐出部M23の直径が前記下限値未満であると、目詰まりが発生し易くなり、吐出される液滴5の大きさのばらつきが大きくなる場合がある。一方、吐出部M23の直径が前記上限値を超えると、分散液貯留部M21の負圧と、ノズルの表面張力との力関係によっては、吐出される水系懸濁液3(液滴5)が気泡を抱き込んでしまう可能性がある。
【0085】
また、ヘッド部M2の吐出部M23付近(特に、吐出部M23の開口内面や、ヘッド部M2の吐出部M23が設けられている側の面(図中の下側の面))は、水系懸濁液3に対し撥液性(撥水性)を有するのが好ましい。これにより、水系懸濁液3が吐出部付近に付着するのを効果的に防止することができる。その結果、いわゆる、液切れの悪い状態になったり、水系懸濁液3の吐出不良が発生するのを効果的に防止することができる。また、吐出部付近への水系懸濁液3の付着が効果的に防止されることにより、吐出される液滴の形状の安定性が向上し(各液滴間での形状、大きさのばらつきが小さくなり)、最終的に得られるトナー粒子の形状、大きさのばらつきも小さくなる。
【0086】
このような撥液性を有する材料としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、シリコーン系材料等が挙げられる。
図3に示すように、圧電素子M22は、下部電極(第1の電極)M221、圧電体M222および上部電極(第2の電極)M223が、この順で積層されて構成されている。換言すれば、圧電素子M22は、上部電極M223と下部電極M221との間に、圧電体M222が介挿された構成とされている。
【0087】
この圧電素子M22は、振動源として機能するものであり、振動板M24は、圧電素子(振動源)M22の振動により振動し、分散液貯留部M21の内部圧力を瞬間的に高める機能を有するものである。
ヘッド部M2は、圧電素子駆動回路(図示せず)から所定の吐出信号が入力されていない状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に電圧が印加されていない状態では、圧電体M222に変形が生じない。このため、振動板M24にも変形が生じず、分散液貯留部M21には容積変化が生じない。したがって、吐出部M23から水系懸濁液3は吐出されない。
【0088】
一方、圧電素子駆動回路から所定の吐出信号が入力された状態、すなわち、圧電素子M22の下部電極M221と上部電極M223との間に所定の電圧が印加された状態では、圧電体M222に変形が生じる。これにより、振動板M24が大きくたわみ(図3中下方にたわみ)、分散液貯留部M21の容積の減少(変化)が生じる。このとき、分散液貯留部M21内の圧力が瞬間的に高まり、吐出部M23から粒状の水系懸濁液3が吐出される。
【0089】
1回の水系懸濁液3の吐出が終了すると、圧電素子駆動回路は、下部電極M221と上部電極M223との間への電圧の印加を停止する。これにより、圧電素子M22は、ほぼ元の形状に戻り、分散液貯留部M21の容積が増大する。なお、このとき、水系懸濁液3には、水系懸濁液供給部M4から吐出部M23へ向かう圧力(正方向への圧力)が作用している。このため、空気が吐出部M23から分散液貯留部M21へ入り込むことが防止され、水系懸濁液3の吐出量に見合った量の水系懸濁液3が水系懸濁液供給部M4から分散液貯留部M21へ供給される。
【0090】
上記のような電圧の印加を所定の周期で行うことにより、圧電素子M22が振動し、粒状の水系懸濁液3が繰り返し吐出される。
このように、水系懸濁液3の吐出(噴射)を、圧電体M222の振動による圧力パルスで行うことにより、水系懸濁液3を一滴ずつ間欠的に吐出することができ、また、吐出される水系懸濁液3の液滴5の形状が安定する。その結果、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さいものとすることができるとともに、製造されるトナー粒子を真球度の高いもの(幾何学的に完全な球形に近い形状)にすることが比較的容易にできる。
【0091】
また、分散液(水系分散液)の吐出に圧電体の振動を用いることにより、より確実に分散液を所定間隔で吐出することができる。このため、吐出される液滴5同士が、衝突、凝集するのを効果的に防止することができ、異形状のトナー粒子8の形成をより効果的に防止することができる。
ヘッド部M2から分散媒除去部M3に吐出される水系懸濁液3(液滴5)の初速度は、例えば、0.1〜10m/秒であるのが好ましく、2〜8m/秒であるのがより好ましい。水系懸濁液3の初速度が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、水系懸濁液3の初速度が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナー粒子の真球度が低下する傾向を示す。
【0092】
また、ヘッド部M2から吐出される水系懸濁液(水系分散液)3の粘度は、特に限定されないが、例えば、0.5〜200[mPa・s]であるのが好ましく、1〜25[mPa・s]であるのがより好ましい。水系懸濁液3の粘度が前記下限値未満であると、吐出される水系懸濁液3の大きさを十分に制御するのが困難となり、最終的に得られるトナー粒子のばらつきが大きくなる場合がある。一方、水系懸濁液3の粘度が前記上限値を超えると、形成される粒子の径が大きくなり、水系懸濁液3の吐出速度が遅くなるとともに、水系懸濁液3の吐出に要するエネルギー量も大きくなる傾向を示す。また、水系懸濁液3の粘度が特に大きい場合には、水系懸濁液3を液滴として吐出できなくなる。
【0093】
また、ヘッド部M2から吐出される水系懸濁液(水系分散液)3は、予め冷却されたものであってもよい。このように水系懸濁液3を冷却することにより、例えば、吐出部M23付近における水系懸濁液3からの分散媒32の不本意な蒸発(揮発)を効果的に防止することができる。その結果、吐出部の開口面積が経時的に小さくなることによる水系懸濁液3の吐出量変化等を効果的に防止することができ、各粒子間での大きさ、形状のばらつきが特に小さいトナーを得ることができる。
【0094】
また、ヘッド部M2から吐出される液滴5の平均粒径は、水系懸濁液(水系分散液)3中に占める分散質31の含有率等により若干異なるが、1.0〜100μmであるのが好ましく、1.0〜50μmであるのがより好ましく、1.0〜30μmであるのがさらに好ましい。液滴5の平均粒径をこのような範囲の値にすることにより、形成されるトナー粒子8を適度な粒径のものにすることができる。
【0095】
ところで、ヘッド部M2から吐出(噴霧)される液滴5は、一般に、水系懸濁液(水系分散液)3中の分散質31に比べて十分に大きいものである。すなわち、液滴5中には、多数個の分散質31が分散した状態となっている。このため、分散質31の粒径のばらつきが比較的大きいものであっても、吐出される液滴5中に占める分散質31の割合は、各液滴5でほぼ均一である。したがって、分散質31の粒径のばらつきが比較的大きい場合であっても、液滴5の吐出量をほぼ均一とすることにより、トナー粒子8は、各粒子間で粒径のばらつきの小さいものとなる。このような傾向は、以下のような関係を満足する場合に、より顕著なものとなる。すなわち、液滴5の平均粒径をDd[μm]、水系懸濁液3中における分散質31の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足するのが好ましく、Dm/Dd<0.2の関係を満足するのがより好ましい。
【0096】
また、液滴5の平均粒径をDd[μm]、製造されるトナー粒子8の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.1≦Dt/Dd≦0.8の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、十分に微細で、かつ、円形度が大きく、粒度分布がシャープなトナー粒子8を比較的容易に得ることができる。
【0097】
圧電素子M22の振動数(圧電パルスの周波数)は、特に限定されないが、1kHz〜500MHzであるのが好ましく、5kHz〜200MHzであるのがより好ましい。圧電素子M22の振動数が前記下限値未満であると、トナーの生産性が低下する。一方、圧電素子M22の振動数が前記上限値を超えると、粒状の水系懸濁液3の吐出が追随できなくなり、水系懸濁液3一滴分の大きさのばらつきが大きくなり、結果として、形成されるトナー粒子8の大きさのばらつきが大きくなる可能性がある。
【0098】
図示の構成の液体現像剤製造装置M1は、ヘッド部M2を複数個有している。そして、これらのヘッド部M2から、それぞれ、粒状の水系懸濁液3(液滴5)が分散媒除去部M3に吐出される。
各ヘッド部M2は、ほぼ同時に水系懸濁液3(液滴5)を吐出するものであってもよいが、少なくとも隣り合う2つのヘッド部で、水系懸濁液3(液滴5)の吐出タイミングが異なるように制御されたものであるのが好ましい。これにより、隣接するヘッド部M2から吐出された液滴5からトナー粒子8が形成される前に、液滴5同士が衝突し、不本意な凝集が発生するのをより効果的に防止することができる。
【0099】
また、図2に示すように、液体現像剤製造装置M1は、ガス流供給手段M10を有しており、このガス流供給手段M10から供給されたガスが、ダクトM101を介して、ヘッド部M2−ヘッド部M2間に設けられた各ガス噴射口M7から、ほぼ均一の圧力で噴射される構成となっている。これにより、吐出部M23から間欠的に吐出された液滴5の間隔を保ち、液滴5同士が衝突するのを効果的に防止しつつ、トナー粒子8を形成することができる。その結果、形成されるトナー粒子8の大きさ、形状のばらつきをより小さくすることができる。
【0100】
また、ガス流供給手段M10から供給されたガスをガス噴射口M7から噴射することにより、分散媒除去部M3において、ほぼ一方向(図中、下方向)に流れるガス流を形成することができる。このようなガス流が形成されると、分散媒除去部M3内で形成されたトナー粒子8をより効率良く搬送することができる。これにより、トナー粒子8の回収効率が向上し、液体現像剤の生産性が向上する。
【0101】
また、ガス噴射口M7からガスが噴射されることにより、各ヘッド部M2から吐出される液滴5の間に気流カーテンが形成され、例えば、隣り合うヘッド部から吐出された各液滴間での衝突、凝集をより効果的に防止することが可能となる。
また、ガス流供給手段M10には、熱交換器M11が取り付けられている。これにより、ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度を好ましい値に設定することができ、分散媒除去部M3に吐出された粒状の水系懸濁液3から分散媒32を効率良く除去することができる。
また、このようなガス流供給手段M10を有すると、ガス流の供給量を調整すること等により、吐出部M23から吐出された水系懸濁液3からの分散媒32の除去速度等を容易にコントロールすることも可能となる。
【0102】
ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度は、水系懸濁液(水系分散液)3中に含まれる分散質31、分散媒32の組成等により異なるが、通常、0〜70℃であるのが好ましく、15〜60℃であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの温度がこのような範囲の値であると、得られるトナー粒子8の形状の均一性、安定性を十分に高いものとしつつ、液滴5中に含まれる分散媒32を効率良く除去することができる。
【0103】
また、ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度は、例えば、50%RH以下であるのが好ましく、30%RH以下であるのがより好ましい。ガス噴射口M7から噴射されるガスの湿度が50%RH以下であると、後述する分散媒除去部M3において、水系懸濁液3に含まれる分散媒32を効率良く除去することが可能となり、トナー粒子8の生産性がさらに向上する。
【0104】
分散媒除去部M3は、筒状のハウジングM31で構成されている。分散媒除去部M3内の温度を所定の範囲に保つ目的で、例えば、ハウジングM31の内側または外側に熱源、冷却源を設置したり、ハウジングM31を、熱媒体または冷却媒体の流路が形成されたジャケットとしてもよい。
また、図示の構成では、ハウジングM31内の圧力は、圧力調整手段M12により調整される構成となっている。このように、ハウジングM31内の圧力を調整することにより、より効率良くトナー粒子8を形成することができ、結果として、液体現像剤の生産性が向上する。なお、図示の構成では、圧力調整手段M12は、接続管M121でハウジングM31に接続されている。また、接続管M121のハウジングM31と接続する端部付近には、その内径が拡大した拡径部M122が形成されており、さらに、トナー粒子8等の吸い込みを防止するためのフィルターM123が設けられている。
【0105】
ハウジングM31内の圧力は、特に限定されないが、150kPa以下であるのが好ましく、100〜120kPaであるのがより好ましく、100〜110kPaであるのがさらに好ましい。ハウジングM31内の圧力が前記範囲内の値であると、例えば、液滴5からの急激な分散媒32の除去(沸騰現象)等を効果的に防止することができ、異形状のトナー粒子8の発生等を十分に防止しつつ、より効率良くトナー粒子8を製造することができる。なお、ハウジングM31内の圧力は、各部位でほぼ一定であってもよいし、各部位で異なるものであってもよい。
また、ハウジングM31には、電圧を印加するための電圧印加手段M8が接続されている。電圧印加手段M8で、ハウジングM31の内面側に、トナー粒子8(液滴5)と同じ極性の電圧を印加することにより、これにより、以下のような効果が得られる。
【0106】
通常、トナー粒子8等は、正または負に帯電している。このため、トナー粒子8と異なる極性に帯電した帯電物があると、トナー粒子8は、当該帯電物に、静電的に引き付けられ付着するという現象が起こる。一方、トナー粒子8と同じ極性に帯電した帯電物があると、当該帯電物とトナー粒子8とは、互いに反発しあい、前記帯電物表面にトナー粒子8が付着するという現象を効果的に防止することができる。したがって、ハウジングM31の内面側に、粒状のトナー粒子8と同じ極性の電圧を印加することにより、ハウジングM31の内面にトナー粒子8が付着するのを効果的に防止することができる。これにより、異形状のトナー粒子8の発生をより効果的に防止することができるとともに、トナー粒子8の回収効率も向上する。
【0107】
また、ハウジングM31は、絶縁性液体貯留部M5付近に、図2中の下方向に向けて、その内径が大きくなる拡径部M311を有している。このような拡径部M311を有することにより、液体現像剤製造装置M1の内壁面(特に、ハウジングM31や絶縁性液体貯留部M5の内壁面)へのトナー粒子8の付着をより効果的に防止することができる。その結果、液体現像剤10の生産効率が向上するとともに、液体現像剤10中に異形状のトナー粒子が混入するのを効果的に防止することができ、液体現像剤10の信頼性を高めることができる。
【0108】
上記のようにして分散媒除去部M3(ハウジングM31内)で形成されたトナー粒子8は、通常、液滴5に含まれる複数個の分散質31の凝集体として得られる。これにより、水系分散液(水系懸濁液)中に含まれる分散質の大きさ、形状のばらつきが比較的大きい場合であっても、各トナー粒子間での大きさ、形状のばらつきを小さくするとともに、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さくすることができ、その結果、液体現像剤全体としての信頼性を高めることができる。
【0109】
また、上記のように、トナー粒子8は、水系液体で構成された分散媒を含む水系分散液(水系乳化液、水系懸濁液)を用いて製造されたものである。そして、水系液体を構成する水は、各種液体の中でも、比較的沸点が高く、室温付近での蒸気圧が比較的低いものである。このため、分散媒除去部M3(ハウジングM31内)で形成されたトナー粒子8は、十分な形状の安定性を有しつつも、所定量の水分を含むものとして得られる。そして、このように所定量の水分を含むトナー粒子は、紙等の記録媒体に対する定着性に優れることを、本発明者は見出した。これは、以下のような理由によるものであると考えられる。
【0110】
すなわち、液体現像剤を構成する絶縁性液体(キャリア)は、絶縁性、低誘電率であることが求められるため、一般に、極性の高い官能基を有さない構造を有する分子で構成されている。一方、液体現像剤による画像形成に用いられる紙等の記録媒体は、通常、セルロース等の親水性官能基(例えば、水酸基等)を有する材料で構成されている。したがって、従来の液体現像剤では、トナー粒子の表面に絶縁性液体が残存していると、この絶縁性液体がトナー粒子の定着性(トナー粒子と記録媒体との密着性)を低下させてしまっていた。これに対し、本発明では、トナー粒子が、所定量の水分を含むものであるため、トナー粒子が含んでいる水分がトナー粒子と記録媒体との親和性を高める機能を発揮し、結果として、トナー粒子の定着性は優れたものとなる。
【0111】
また、本発明では、トナー粒子が液滴に含まれる複数個の分散質の凝集体として得られるため、トナー粒子を構成する分散質間の空間等に、適量の水分を確実に保持することができる。このように、液体現像剤(未定着のトナー粒子)においては、水分を確実に保持することができ、水分がトナー粒子の外部に漏出するのが効果的に防止される。また、定着時においては、加えられる圧力等により、効率良く水分を放出することができ、トナー(トナー像)の記録媒体に対する密着性を特に優れたものとすることができる。
【0112】
トナー粒子8は、所定量の水分を含むものであればよいが、トナー粒子を構成する樹脂材料の吸水量以上の水分を含むものであるのが好ましい。これにより、記録媒体に対するトナー粒子8の定着性を特に優れたものとすることができる。なお、本発明において、「吸水量」とは、トナー材料自身が保持する最大の水分量のことを指し、吸水量には吸着量(樹脂表面に官能基で吸着させる分など)を含まない。
【0113】
また、トナー粒子8の含水量は、特に限定されないが、0.3〜5.0wt%であるのが好ましく、0.5〜2.5wt%であるのがより好ましく、0.5〜2.0wt%であるのがさらに好ましい。トナー粒子8の含水量が前記範囲内の値であると、トナー粒子8の帯電性を十分に良好なものとしつつ、記録媒体に対するトナー粒子8の定着性を特に優れたものとすることができる。
【0114】
そして、上記のようにして形成されたトナー粒子8は、絶縁性液体貯留部M5に導入され、ここで、絶縁性液体9と混合される。その結果、トナー粒子8が絶縁性液体9中に分散した液体現像剤10が得られる。このように、本発明では、形成されたトナー粒子を粉体として回収することなく、直接、絶縁性液体と混合する。これにより、トナー粒子同士の凝集等の発生を十分に防止するとともに、液体現像剤の生産性を優れたものとすることができる。
【0115】
図示の構成では、絶縁性液体貯留部M5は、絶縁性液体9を攪拌する攪拌手段M51を有している。これにより、例えば、絶縁性液体9とトナー粒子8の比重の差が比較的大きい場合(例えば、比重の差の絶対値が0.3g/cm以上)であっても、トナー粒子8を十分均一に分散させることができ、得られる液体現像剤10においては、トナー粒子8の良好な分散状態を長期間にわたって安定的に保持することができる。また、絶縁性液体9の液面付近にトナー粒子8が浮遊すること等を効果的に防止することができ、トナー粒子8の凝集等も効果的に防止することができる。
絶縁性液体9は、十分に絶縁性の高い液体であればよいが、具体的には、室温(20℃)での電気抵抗が10Ωcm以上のものであるのが好ましく、1011Ωcm以上のものであるのがより好ましく、1013Ωcm以上のものであるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体9の比誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0116】
このような条件を満足する絶縁性液体9としては、例えば、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、各種シリコーンオイル、アマニ油、大豆油等の植物油、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)等が挙げられる。
【0117】
<液体現像剤>
上記のようにして得られる液体現像剤は、トナー粒子の記録媒体に対する定着性に優れている。また、上記のようにして得られる液体現像剤は、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが小さい。したがって、このような液体現像剤は、トナー粒子が絶縁性液体中(液体現像剤中)で泳動し易く、高速現像にも有利である。また、トナー粒子の形状、大きさのばらつきが小さいため、トナー粒子の分散性に優れており、液体現像剤中でのトナー粒子の沈降や浮遊等が効果的に防止される。したがって、このような液体現像剤は、長期安定性にも優れている。
【0118】
上記のようにして得られる液体現像剤10中におけるトナー粒子8の平均粒径は、0.1〜5μmであるのが好ましく、0.4〜4μmであるのがより好ましく、0.5〜3μmであるのがさらに好ましい。トナー粒子8の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子8間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきを特に小さいものとし、液体現像剤10全体としての信頼性を特に高いものとしつつ、液体現像剤(トナー)により形成される画像の解像度を十分に高いものとすることができる。
【0119】
また、液体現像剤10を構成するトナー粒子8間での粒径の標準偏差は、1.0μm以下であるのが好ましく、0.1〜1.0μmであるのがより好ましく、0.1〜0.8μmであるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子8間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤10全体としての信頼性がさらに向上する。
【0120】
また、水系懸濁液3中における分散質31の平均粒径をDm[μm]、トナー粒子8の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足するのが好ましく、0.01≦Dm/Dt≦0.2の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、液体現像剤10を、各トナー粒子8間での、形状、大きさのばらつきが特に小さいものとして得ることができる。
【0121】
また、液体現像剤10を構成するトナー粒子8についての下記式(I)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.85以上であるのが好ましく、0.90〜0.99であるのがより好ましく、0.95〜0.99であるのがさらに好ましい。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子8の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、トナー粒子8の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子8の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
【0122】
また、液体現像剤10を構成するトナー粒子8間での平均円形度の標準偏差は、0.15以下であるのが好ましく、0.001〜0.10であるのがより好ましく、0.001〜0.05であるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子8間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤10全体としての信頼性がさらに向上する。
次に、上述したような本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の好適な実施形態について説明する。
【0123】
図4は、本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。画像形成装置P1には、円筒状の感光体P2のドラムを有し、エピクロロヒドリンゴム等で構成された帯電器P3によりその表面が均一に帯電された後、レーザーダイオード等によって記録すべき情報に応じた露光P4が行なわれて静電潜像が形成される。
現像器P10は、現像剤容器P11中にその一部が浸漬された塗布ローラP12、現像ローラP13を有している。塗布ローラP12は、例えば、ステンレス等の金属製のグラビアローラであり、現像ローラP13と対向して回転する。また、塗布ローラP12の表面には、液体現像剤塗布層P14が形成され、メータリングブレードP15によってその厚さが一定に保持される。
【0124】
そして、塗布ローラP12から現像ローラP13に対して液体現像剤が転写される。現像ローラP13は、ステンレス等の金属製のローラ芯体P16上に低硬度シリコーンゴム層を有し、その表面には導電性のPFA(ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)製の樹脂層が形成されており、感光体P2と等速で回転して液体現像剤を潜像部に転写する。感光体P2へ転写後に現像ローラP13に残った液体現像剤は、現像ローラクリーニングブレードP17によって除去されて現像剤容器P11内へ回収される。
【0125】
また、感光体から中間転写ローラへのトナー画像の転写の後には、感光体は、除電光P21によって除電されるとともに、感光体上に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP22によって除去される。
同様に、中間転写ローラP18から情報記録媒体P20へ転写後に中間転写ローラP18に残留した転写残りトナーは、ウレタンゴム等で構成されたクリーニングブレードP23によって除去される。
感光体P2上に形成されたトナー像は、中間転写ローラP18に対して転写された後に、二次転写ローラP19に転写電流を通電して、両者の間を通過する紙等の情報記録媒体P20に画像が転写され、紙等の情報記録媒体P20上でのトナー画像は図6に示す定着装置使用して定着が行われる。
【0126】
図5は、本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示すものである。非接触方式にあっては、現像ローラP13には0.5mm厚のリン青銅板で構成された帯電ブレードP24が設けられる。帯電ブレードP24は液体現像剤層に接触して摩擦帯電させる機能を有すると共に、塗布ローラP12がグラビアロールであるために現像ローラP13上にはグラビアロール表面の凹凸に応じた現像剤層が形成されるので、その凹凸を均一に均す機能を果たすものであり、配置方向としては現像ローラの回転方向に対してカウンタ方向でもトレイル方向のいずれでもよく、また、ブレート形状ではなくローラ形状でもよい。
【0127】
また、現像ローラP13と感光体P2との間は、200μm〜800μmの間隔が設けられると共に、現像ローラP13と感光体P2との間には直流電圧200〜800Vに重畳される500〜3000Vpp、周波数50〜3000Hzの交流電圧が印加されるのが好ましい。それ以外は、図4を参照しつつ説明した画像形成装置と同様である。
なお、図4、図5共に一色の液体現像剤による画像形成について説明したが、複数色のカラートナーを用いて画像形成する場合には、複数色の現像器を用いて各色の画像を形成してカラー画像を形成することができる。
【0128】
図6は定着装置の断面図であり、F1は熱定着ロール、F1aはハロゲンランプ、F1bはロール基材、F1cは弾性体、F2は加圧ロール、F2aは回転軸、F2bはロール基材、F2cは弾性体、F3は耐熱ベルト、F4はベルト張架部材、F4aは突壁、F5はシート材、F5aは未定着トナー像、F6はクリーニング部材、F7はフレーム、F9はスプリング、Lは押圧部接線である。
図に示すように、定着装置F40は、熱定着ロール(以下、加熱ロールともいう)F1、加圧ロールF2、耐熱ベルトF3、ベルト張架部材F4、およびクリーニング部材F6を備えている。
【0129】
熱定着ロールF1は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F1bとして、その外周に厚み0.4mm程度の弾性体F1cを被覆して形成され、ロール基材F1bの内部に、加熱源として1,050W、2本の柱状ハロゲンランプF1aが内蔵されており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。また、加圧ロールF2は、外径25mm程度、肉厚0.7mm程度のパイプ材をロール基材F2bとして、その外周に厚み0. 2mm程度の弾性体F2cを被覆して形成し、熱定着ロールF1と加圧ロールF2の圧接力を10kg以下、ニップ長を10mm程度で構成し、熱定着ロールF1に対向して配置し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0130】
このように、熱定着ロールF1および加圧ロールF2の外径が25mm程度の小径に構成されているため、定着後のシート材F5が熱定着ロールF1または耐熱ベルトF3に巻き付くことがなく、シート材を強制的に剥がすための手段が不要となっている。また、熱定着ロールF1の弾性体F1cの表層には約30μmのPFA層を設けることで、その分剛性が向上する。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ロールF1の周速に対して耐熱ベルトF3またはシート材F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0131】
また、熱定着ロールF1の内部に、加熱源を構成する2本のハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらのハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントはそれぞれ異なった位置に配置されている。そして、各ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1に巻き付いた定着ニップ部位とベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接する部位との異なる条件や、幅の広いシート材と幅の狭いシート材との異なる条件下での温度コントロールが容易に行われるようになっている。
【0132】
耐熱ベルトF3は、加圧ロールF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。この耐熱ベルトF3は0.03mm以上の厚みを有し、その表面(シート材F5が接触する側の面)をPFAで形成し、また、裏面(加圧ロールF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0133】
ベルト張架部材F4は、熱定着ロールF1と加圧ロールF2との定着ニップ部よりもシート材F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ロールF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。ベルト張架部材F4は、シート材F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架するように構成されている。シート材F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、シート材F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ロールF1の接線方向に張架する構成にすることで、シート材F5の進入がスムーズに行われるシート材F5の導入口部が形成でき、安定したシート材F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0134】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ロールF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ロールF1と加圧ロールF2との押圧部接線Lより熱定着ロールF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ロールF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ロールF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に摺接して位置決めされる。
【0135】
耐熱ベルトF3を加圧ロールF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ロールF2で安定して駆動するには、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ロールF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0136】
そこで、加圧ロールF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ロールF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ロールF2で安定して駆動することができるようになる。
【0137】
更に、クリーニング部材F6が加圧ロールF2とベルト張架部材F4との間に配置されており、このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、この凹部F4fは、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等の収納に好適である。
【0138】
ベルト張架部材F4が熱定着ロールF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ロールF1に加圧ロールF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。そして、シート材F5はニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ロールF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、シート材F5上に形成された未定着トナー像F5aが定着され、その後、熱定着ロールF1への加圧ロールF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0139】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、液体現像剤製造装置を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、本発明の液体現像剤は、前述したような画像形成装置に適用されるものに限定されない。
【0140】
また、図7に示すように、ヘッド部M2に、音響レンズ(凹面レンズ)M25が設置されていてもよい。このような音響レンズM25が設置されることにより、例えば、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)を、吐出部M23付近の圧力パルス収束部M26で収束させることができる。その結果、圧電素子M22が発生した振動エネルギーを、水系懸濁液3を吐出させるためのエネルギーとして、効率よく利用することができる。したがって、分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3が比較的高粘度のものであっても、確実に吐出部M23から吐出させることができる。また、分散液貯留部M21に貯留された水系懸濁液3が凝集力(表面張力)の比較的大きいものであっても、微細な液滴として吐出することが可能となるため、容易かつ確実に、トナー粒子8の粒径を比較的小さい値にコントロールすることができる。
このように、図示のような構成とすることにより、水系懸濁液3として、より粘度の高い材料や、凝集力の大きい材料を用いた場合であっても、トナー粒子8を所望の形状、大きさにコントロールすることができるので、材料選択の幅が特に広くなり、所望の特性を有するトナーをさらに容易に得ることができる。
【0141】
また、図示のような構成とした場合、収束した圧力パルスにより水系懸濁液3を吐出させるため、吐出部M23の面積(開口面積)が比較的大きい場合であっても、吐出する水系懸濁液3の大きさを比較的小さいものにすることができる。すなわち、トナー粒子8の粒径を比較的小さくしたい場合であっても、吐出部M23の面積を大きくすることができる。これにより、水系懸濁液3が比較的高粘度のものであっても、吐出部M23における目詰まりの発生等をより効果的に防止することができる。
【0142】
音響レンズとしては、凹面レンズに限定されず、例えば、フレネルレンズ、電子走査レンズ等を用いてもよい。
さらに、図8〜図10に示すように、音響レンズM25と吐出部M23との間に、吐出部M23に向けて、収斂する形状を有する絞り部材M13等を配置してもよい。これにより、圧電素子M22が発生した圧力パルス(振動エネルギー)の収束を補助することができ、圧電素子M22が発生した圧力パルスをさらに効率よく利用することができる。
また、前述した実施形態では、トナーの構成成分が固形成分として、分散質中に含まれるものとして説明したが、トナーの構成成分の少なくとも一部は、分散媒中に含まれていてもよい。
【0143】
また、前述した実施形態では圧電パルスによりヘッド部から分散液(水系懸濁液)を間欠的に吐出するものとして説明したが、分散液の吐出方法(噴霧方法)としては、他の方法を用いることもできる。例えば、分散液を吐出(噴霧)する方法としては、スプレードライ法や、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法等の方法のほか、「分散液を、ガス流で平滑面に押し付けて薄く引き伸ばして薄層流とし、当該薄層流を前記平滑面から離して微小な液滴として噴霧するようなノズルを用いて、分散液を液滴状に噴霧する方法(特願2002−321889号明細書に記載されたような方法)」等を用いてもよい。スプレードライ法は、高圧のガスを用いて、液体(分散液)を噴射(噴霧)させることにより、液滴を得る方法である。また、いわゆるバブルジェット(「バブルジェット」は登録商標)法を適用した方法としては、特願2002−169348号明細書に記載された方法等が挙げられる。すなわち、分散液を吐出(噴霧)する方法として、「気体の体積変化によりヘッド部から分散液を間欠的に吐出する方法」を適用することができる。
【0144】
また、噴霧液としての水系分散液の調製方法は、前述したような方法に限定されない。例えば、固体状態の分散質が分散した分散液(懸濁液)を加熱することにより、分散質を一旦液状として水系乳化液を得、当該水系乳化液を冷却することにより噴霧液としての水系懸濁液を得てもよい。また、水系乳化液を、懸濁液とすることなく、そのまま噴霧液として用いてもよい。また、噴霧液として懸濁液を用いる場合であっても、当該懸濁液は、乳化液(水系乳化液)を介することなく調製されたものであってもよい。例えば、前述したような混練物の粉砕物を水系液体中に分散することにより得られた懸濁液を、噴霧液として用いてもよい。また、噴霧液としての水系分散液は、乳化重合法により製造された微粒子を、分散質として含むものであってもよい。これにより、分散質の大きさを十分小さなものとすることができ、かつ分散質の大きさのばらつきを小さくすることができる。その結果、各トナー粒子間での形状、大きさのばらつきを特に小さくすることができる。
【実施例】
【0145】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
まず、自己分散型樹脂としての、側鎖に多数の−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(ガラス転移点:58℃、軟化温度:120℃、吸水量:0.3wt%):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。自己分散型樹脂は、当該自己分散型樹脂100g中に、−SO基を0.2mol有するものであった。
【0146】
これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
次に、この原料(混合物)を、図1に示すような2軸混練押出機を用いて、混練した。
2軸混練押出機のプロセス部の全長は160cmとした。
また、プロセス部における原料の温度が125〜135℃となるように設定した。
【0147】
また、スクリューの回転速度は120rpmとし、原料の投入速度は20kg/時間とした。
このような条件から求められる、原料がプロセス部を通過するのに要する時間は約4分間である。
なお、上記のような混練は、脱気口を介してプロセス部に接続された真空ポンプを稼動させることにより、プロセス部内を脱気しつつ行った。
【0148】
プロセス部で混練された原料(混練物)は、ヘッド部を介して2軸混練押出機の外部に押し出した。ヘッド部内における混練物の温度は、130℃となるように調節した。
このようにして2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を、図1中に示すような冷却機を用いて、冷却した。冷却工程直後の混練物の温度は、約40℃であった。
混練物の冷却速度は、−9℃/秒であった。また、混練工程の終了時から冷却工程が終了するのに要した時間は、10秒であった。
【0149】
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.5mmの粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
前記水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が0.8μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
【0150】
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は29.1wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は0.5μmであった。なお、分散質の平均粒径の測定は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA−920)を用いて行った。
【0151】
上記のようにして得られた懸濁液を、図2、図3に示す構成のトナー製造装置の水系懸濁液供給部内に投入した。水系懸濁液供給部内の水系懸濁液を攪拌手段で攪拌しつつ、定量ポンプによりヘッド部に供給し、吐出部から分散媒除去部に吐出(噴射)させた。吐出部は、直径:25μmの円形状をなすものとした。また、ヘッド部としては、吐出部付近に、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)コートによる疎水化処理が施されたものを用いた。なお、水系懸濁液供給部内における水系懸濁液の温度は、35℃になるように調節した。
【0152】
水系懸濁液の吐出は、ヘッド部内における分散液温度を35℃、圧電体の振動数を10kHz、吐出部から吐出される分散液の初速度を3m/秒、ヘッド部から吐出される水系懸濁液の液滴一滴分の吐出量を2pl(粒径:15μm)に調整した状態で行った。また、水系懸濁液の吐出は、複数個のヘッド部のうち少なくとも隣接しあうヘッド部で、水系懸濁液の吐出タイミングがずれるようにして行った。
【0153】
また、水系懸濁液の吐出時には、ガス噴射口から温度:35℃、湿度:27%RH、流速:3m/秒の空気を鉛直下方に噴射した。また、ハウジング内の温度(雰囲気温度)は、40℃となるように設定した。また、ハウジング内の圧力は、約105kPaであった。分散媒除去部の長さ(搬送方向の長さ)は1.5mであった。
また、分散媒除去部のハウジングには、その内表面側の電位が−100Vとなるように電圧を印加し、内壁に水系懸濁液の液滴(トナー粒子)が付着するのを防止するようにした。
【0154】
分散媒除去部内において、吐出した水系懸濁液の液滴から分散媒が除去され、各液滴に含まれていた複数個の分散質が凝集した凝集体としてのトナー粒子が形成され、形成されたトナー粒子を、絶縁性液体としてのアイソパーH(エクソン化学社製)が貯留された絶縁性液体貯留部内に導入し、これを攪拌手段で攪拌することにより、液体現像剤が得られた。分散媒除去部で形成されたトナー粒子の含水量は1.8wt%であった。また、絶縁性液体(アイソパーH)の室温(20℃)での電気抵抗は1014Ωcm、絶縁性液体の比誘電率は2.3であった。また、液体現像剤中に占めるトナー粒子の割合は、20wt%であった。
【0155】
(実施例2〜6)
混練物のトルエン溶液調製時におけるトルエンの使用量、水系乳化液の調製時における水系液体の攪拌条件、溶液の滴下速度、ヘッド部内での水系懸濁液の温度、ガス噴射口から噴射する空気の温度を変更することにより、水系乳化液中における分散質の平均粒径、含有率、トナー粒子の含水量等を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0156】
(実施例7)
トナー製造用の原料(混練物)の調製において、自己分散型樹脂の代わりに、自己分散型樹脂ではないエポキシ樹脂(ガラス転移点:52℃、軟化温度:80.5℃、吸水量:0.2wt%)を用い、更に、分散剤としてのドデシルトリメチルアンモニウムクロライド:0.5重量部を用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0157】
(実施例8)
以下に示すような乳化重合法により水系懸濁液を調製した。
オクタデシルメタクリレート:100g、トルエン:150gおよびイソプロパノール:50gの混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度75℃に加温した。2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸):30gを加え8時間反応した。冷却後、メタノール:2リットル中に再沈し白色粉末を凝集後、乾燥した。得られた白色粉末:50g、酢酸ビニル:3.3g、ハイドロキノン:0.2gおよびトルエン:100gの混合物を温度40℃に加温して、3時間反応した。次に70℃に昇温し、100%硫酸:3.8×10−3mlを加え10時間反応した。温度25℃まで冷却し酢酸ナトリウム三水和物:0.02gを加え30分間攪拌した後、メタノール:1リットル中に再沈し、凝集後、乾燥し、分散安定用樹脂を得た。
【0158】
次に、得られた上記の分散安定用樹脂:12gを酢酸ビニル:100g、オクタデシルメタクリレート:1.0gおよびアイソパーH:384gの混合液を窒素気流下攪拌しながら温度70℃に加温した。2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル):0.8gを加え6時間反応した。開始剤添加後20分して白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。温度を100℃に上げ2時間攪拌し未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後200メッシュのナイロン布を通し白色ラテックス粒子を得た。平均粒子は0.3μmであった。
上記の白色ラテックス粒子:30gを水中に分散させた。
上記のようにして得られた水系懸濁液を噴霧液として用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0159】
(比較例1)
水系懸濁液の代わりに、前記実施例1で調製したトルエン溶液を噴霧液として用いた以外は、前記実施例1と同様にして、主として樹脂材料で構成された微粒子が絶縁性液体中に分散した分散液を得た。
その後、この分散液を攪拌しつつ、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの環境下に置くことにより、トルエンが除去された液体現像剤を得た。
【0160】
(比較例2)
まず、前記実施例1と同様にして混練物の粗粉砕物(平均粒径:1.5mm)を得た。
次に、ジェットミルを用いて、この粗粉砕物を微粉砕し、平均粒径:4.5μmの微粉末とした。
その後、上記のようにして得られた微粉砕物:20重量部を、アイソパーH(エクソン化学社製):80重量部と、分散剤(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド):1重量部との混合物中に分散させることにより、液体現像剤を得た。
【0161】
(比較例3)
まず、前記実施例7と同様にして混練物の粗粉砕物(平均粒径:1.5mm)を得た。
次に、ジェットミルを用いて、この粗粉砕物を微粉砕し、平均粒径:4.2μmの微粉末とした。
その後、上記のようにして得られた微粉砕物:20重量部を、アイソパーH(エクソン化学社製):80重量部と、分散剤(ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド):1重量部との混合物中に分散させることにより、液体現像剤を得た。
【0162】
(比較例4)
まず、電気絶縁性液体として、アイソパーH(エクソン化学社製)を用意した。この電気絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は1014Ωcm、絶縁性液体の比誘電率は2.3であった。
オクタデシルメタクリレート:100g、トルエン:150gおよびイソプロパノール:50gの混合溶液を窒素気流下攪拌しながら温度75℃に加温した。2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸):30gを加え8時間反応した。冷却後、メタノール:2リットル中に再沈し白色粉末を凝集後、乾燥した。得られた白色粉末:50g、酢酸ビニル:3.3g、ハイドロキノン:0.2gおよびトルエン:100gの混合物を温度40℃に加温して、2時間反応した。次に70℃に昇温し、100%硫酸:3.8×10−3mlを加え10時間反応反応した。温度25℃まで冷却し酢酸ナトリウム三水和物:0.02gを加え30分間攪拌した後、メタノール:1リットル中に再沈し、凝集後、乾燥し、分散安定用樹脂を得た。
【0163】
次に、得られた上記の分散安定用樹脂:12gを酢酸ビニル:100g、オクタデシルメタクリレート:1.0gおよびアイソパーH:384gの混合液を窒素気流下攪拌しながら温度70℃に加温した。2,2’−アゾビス(イソバレロニトリル):0.8gを加え6時間反応した。開始剤添加後20分して白濁を生じ、反応温度は88℃まで上昇した。温度を100℃に上げ2時間攪拌し未反応の酢酸ビニルを留去した。冷却後、アイソパーで希釈して液体現像剤を得た。
【0164】
(比較例5)
エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化樹脂(商品名:デュミランC−2280、武田薬品工業社製):80重量部を、2−エチルヘキサン酸エステル(商品名:エキセパールHO、花王社製):200重量部に加熱時溶解させた後、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部と混合し、80℃に加熱した熱3本ロールミル(井上製作所社製)で分散した。得られた40℃に加温している顔料分散溶液:30重量部に、アイソパーH(エクソン化学社製):70重量部をホモジナイザーにて7000rpmで攪拌混合しながら添加し、その後更にホモジナイザーにて7000rpmで30分間攪拌混合した。次いで、サリチル酸Al塩(商品名:ボントロンE−88、オリエント化学社製):1重量部をアイソパーH:100部に溶解した溶液をホモジナイザーにて7000rpmで攪拌分散しながら添加し、その後更にホモジナイザーにて7000rpmで30分間攪拌分散を行うことにより、液体現像剤を得た。
【0165】
(比較例6)
混練物のトルエン溶液調製時におけるトルエンの使用量、水系乳化液の調製時における水系液体の攪拌条件を変更することにより、水系乳化液中における分散質の平均粒径、含有率を表1に示すように変更し、噴霧する各液滴中に複数個の分散質が含まれるのを防止し、トナー粒子を1個の分散質に対応する大きさ、形状のものとして形成した以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を調製した。
【0166】
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件を、分散液の吐出安定性の評価とともに表1に示した。なお、液滴の吐出安定性の評価は、平均粒径のばらつきが20%未満の液滴を、6時間以上にわたって安定的に吐出することができたものを「○」、分散液の吐出開始から6時間での吐出液滴の平均粒径のばらつきが20%以上40%未満であったものを「△」、分散液の吐出開始から6時間での吐出液滴の平均粒径のばらつきが40%以上であったものを「×」で示した。
【0167】
【表1】

【0168】
表1から明らかなように、本発明では、液滴の吐出を安定的に行うことができた。特に、実施例1〜6では、分散剤を用いていないにも関わらず、特に優れた安定性で液滴の吐出を行うことができた。
【0169】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、定着強度、透明性、保存安定性の評価を行った。
[2.1]定着強度
図4に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成した。その後、記録紙上に形成された画像について、オーブンによる熱定着を行った。この熱定着は、120℃×30分間という条件で行った。
【0170】
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。
○:画像濃度残存率が90%以上。
△:画像濃度残存率が70%以上90%未満。
×:画像濃度残存率が70%未満。
【0171】
[2.2]透明性
図4に示すような画像形成装置、図6に示すような定着装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの画像をOHPシート(エーワン社製、27081)上に形成した。
その後、HAZEメーター(日本電色工業社製、MODEL1001DP)でHAZE値を測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。なお、HAZE値は、拡散透過率を全透過率で除した値であり、トナー中の各成分の分散性が良い程、この値は小さくなる。
◎:HAZE値が47未満。
○:HAZE値が47以上50未満。
△:HAZE値が50以上53未満。
×:HAZE値が53以上。
【0172】
[2.3]保存安定性
前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤を、温度:15〜20℃の環境下に、6ヵ月間静置した。その後、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:トナー粒子の凝集沈降がまったく認められない。
○:トナー粒子の凝集沈降がほとんど認められない。
△:トナー粒子の凝集沈降がわずかに認められる。
×:トナー粒子の凝集沈降がはっきりと認められる。
【0173】
これらの結果を、トナー粒子の含水量、平均円形度R、円形度標準偏差、体積基準の平均粒径、粒径標準偏差とともに表2に示す。なお、円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(東亜医用電子社製、FPIA−2000)を用いて行った。ただし、円形度Rは、下記式(I)で表されるものとする。
R=L/L・・・(I)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象の粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
【0174】
【表2】

【0175】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤では、いずれも、トナー粒子の円形度が大きく、粒度分布の幅の小さいものであった。また、トナー粒子の形状のばらつき(円形度の標準偏差)も小さかった。また、本発明の液体現像剤は、定着強度、透明性、および、保存安定性に優れていた。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。特に、各トナー粒子が1個の分散質に対応するものである比較例6では、各トナー粒子間での大きさのばらつき、特性のばらつきも大きく、液体現像剤全体としての信頼性が低かった。
【0176】
また、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
また、液体現像剤製造装置のヘッド部付近の構造を、図3に示すような構成のものから、図7〜図10に示すような構成のものに変更して、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。また、図7〜図10に示すようなヘッド部を備えた液体現像剤製造装置では、比較的高粘度(分散質の含有率の高い)分散液でも好適に吐出することができた。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】水系乳化液(水系分散液)の調製に用いる混練物を製造するための混練機、冷却機の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
【図2】本発明の液体現像剤の製造に用いられる液体現像剤製造装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図2に示す液体現像剤製造装置のヘッド部付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の液体現像剤が適用される接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の液体現像剤が適用される非接触方式の画像形成装置の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の液体現像剤が適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【図7】液体現像剤製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図8】液体現像剤製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図9】液体現像剤製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【図10】液体現像剤製造装置のヘッド部付近の構造の他例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0178】
K1…混練機 K2…プロセス部 K21…バレル K22、K23…スクリュー K24…固定部材 K25…脱気口 K3…ヘッド部 K31…内部空間 K32…押出口 K33…横断面積漸減部 K4…フィーダー K5…原料 K6…冷却機 K61、K62、K63、K64…ロール K611、K621、K631、K641…回転軸 K65、K66…ベルト K67…排出部 K7…混練物 M1…液体現像剤製造装置 M2…ヘッド部 M21…分散液貯留部 M22…圧電素子 M221…下部電極 M222…圧電体 M223…上部電極 M23…吐出部 M24…振動板 M25…音響レンズ M26…圧力パルス収束部 M3…分散媒除去部 M31…ハウジング M311…拡径部 M4…水系懸濁液供給部(水系分散液供給部) M41…攪拌手段 M5…絶縁性液体貯留部 M51…攪拌手段 M7…ガス噴射口 M8…電圧印加手段 M10…ガス流供給手段 M101…ダクト M11…熱交換器 M12…圧力調整手段 M121…接続管 M122…拡径部 M123…フィルター M13…絞り部材 P…ポンプ 3…水系懸濁液(水系分散液) 31…分散質 32…分散媒(水系分散媒) 5…液滴 8…トナー粒子 9…絶縁性液体 10…液体現像剤 P1…画像形成装置 P2…感光体 P3…帯電器 P4…露光 P10…現像器 P11…現像剤容器 P12…塗布ローラ P13…現像ローラ P14…液体現像剤塗布層 P15…メータリングブレード P16…ローラ芯体 P17…現像ローラクリーニングブレード P18…中間転写ローラ P19…二次転写ローラ P20…情報記録媒体 P21…除電光 P22…クリーニングブレード P23…クリーニングブレード P24…帯電ブレード F40…定着装置 F1…熱定着ロール(加熱ロール) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ロール基材 F1c…弾性体 F2…加圧ロール F2a…回転軸 F2b…ロール基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…シート材 F5a…未定着トナー像 F6…クリーニング部材 F9…スプリング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体中にトナー粒子が分散した液体現像剤を製造する方法であって、
水系液体で構成された水系分散媒中に、樹脂材料を含む材料で構成された分散質が分散した水系分散液を用意する工程と、
前記水系分散液を液滴として噴霧することにより、前記水系分散媒を除去し、前記液滴中に含まれる複数個の前記分散質の凝集体として得られるトナー粒子を、直接、前記絶縁性液体中に分散させる工程とを有することを特徴とする液体現像剤の製造方法。
【請求項2】
前記トナー粒子は、前記樹脂材料の吸水量以上の水分を含むものである請求項1に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項3】
前記トナー粒子の含水量は、0.3〜5.0wt%である請求項1または2に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項4】
前記水系分散液中における前記分散質の平均粒径は、0.01〜1.0μmである請求項1ないし3のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項5】
前記液滴の平均粒径は、1.0〜100μmである請求項1ないし4のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項6】
前記水系分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]、前記トナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.005≦Dm/Dt≦0.5の関係を満足する請求項1ないし5のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項7】
前記液滴の平均粒径をDd[μm]、前記分散液中における前記分散質の平均粒径をDm[μm]としたとき、Dm/Dd<0.5の関係を満足する請求項1ないし6のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項8】
前記液滴の平均粒径をDd[μm]、前記トナー粒子の平均粒径をDt[μm]としたとき、0.05≦Dt/Dd≦1.0の関係を満足する請求項1ないし7のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項9】
前記水系分散液は、乳化重合法により製造された微粒子を、前記分散質として含むものである請求項1ないし8のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項10】
前記水系分散液は、粉砕法により得られた粉末を用いて調製されたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項11】
前記分散液は、前記樹脂材料と着色剤とを含む混練物を用いて調製されたものである請求項1ないし10のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項12】
前記水系分散液は、前記混練物の少なくとも一部を溶解可能な溶媒に、前記混練物を溶解して溶液を得る工程と、当該溶液を前記水系液体中に分散させる工程とを経て調製されたものである請求項1ないし11のいずれかに記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項13】
前記水系分散液は、前記溶液を水系液体中に分散させた後に、前記溶媒を除去することにより調製されたものである請求項12に記載の液体現像剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする液体現像剤。
【請求項15】
トナー粒子の平均粒径が0.1〜5μmである請求項14に記載の液体現像剤。
【請求項16】
各トナー粒子間での粒径の標準偏差が1.0μm以下である請求項14または15に記載の液体現像剤。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−201196(P2006−201196A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9634(P2005−9634)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】