説明

液体用ノズルチップ

【課題】弁体をより円滑に作動させることができるとともに、液体の吸引吐出を安定して行うことができる液体用ノズルチップを提供する。
【解決手段】液体連通部16を有する接続部15を備え、先端部12に開口部13が形成されるとともに内部に弁座14が形成された筒状のチップ本体11と、チップ本体11内に配置され、開口部13より突出するように形成された先端小径部21と弁座14を開閉するシール部22とを有する弁体20と、チップ本体11内に配置された弁体20を常時前方に付勢保持してシール部22によって弁座14を閉鎖するとともに、先端小径部21が後退することによって弁座14を開放するように構成された板バネ部材30と、チップ本体11の先端部12に突設され、弁体20の先端小径部21と摺接して先端小径部21が直動するように形成されたセンター保持部材40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置やピペット等の液体吸引吐出装置のノズル先端部に取り付ける液体用ノズルチップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電動や手動等の適宜の手段で液体の吸引保持あるいは保持した液体の吐出等を行うことができる分注装置やピペット等の液体吸引吐出装置では、液体を吸引吐出するノズル先端部に先鋭な筒状の液体用ノズルチップが着脱自在に取り付けられる(例えば、特許文献1参照。)。このような液体用ノズルチップは、例えば、吸引した液体を自ら保持するように構成して液体吸引吐出装置のノズル部分の汚染を防止したり、該ノズルチップを介してノズル部分の後部あるいは先端に別途設けられた液体保持部に液体を吸引保持し吐出する等、液体吸引吐出装置によって吸引吐出される液体の吸引吐出口として適宜構成される。
【0003】
ところで、液体吸引吐出装置のノズル先端部に取り付けられる液体用ノズルチップでは、例えば、図7ないし図9に示すような、筒状のチップ本体101の先端部102に形成された液体を吸引吐出するための開口部103が常時閉鎖可能に構成されたノズルチップ100が知られている。このノズルチップ100は、図示のように、内部に弁座104が形成されたチップ本体101の開口部103より突出するように形成された先端小径部111と前記弁座104を開閉するシール部112を有する弁体110を備えており、チップ本体101内に配置されたコイルバネ120によって前記弁体110を常時前方に付勢保持して前記シール部112によって前記弁座104を閉鎖する(図7参照)とともに、前記先端小径部111が後退することによって前記弁座104を開放する(図8参照)ように構成される。図において、符号105は吸引吐出装置のノズル先端部Nに接続される接続部、106は吸引あるいは吐出される液体が流通可能に形成された液体連通部、113は弁体110の弁本体、114は弁体110の後端部、130は弁座104の開放時にチップ本体101の姿勢を安定させるための脚部、Bは吸引吐出される液体のための容器の底部である。
【0004】
上記ノズルチップ100において、液体の吸引あるいは吐出時には、図8に示すように、弁体110の先端小径部111を容器の底部Bに当接させて、チップ本体101を前記底部B方向に押し下げることによって前記弁体110をチップ本体101内で後退させ、弁座104の開放を行う。その際、チップ本体101は、先端部102に形成された3個の脚部130が前記底部Bに当接する位置まで押し下げられる。このように弁座104を開放させた状態で液体吸引吐出装置を適宜作動させることによって、チップ本体101の開口部103を介して液体の吸引あるいは吐出が行われる。また、ノズルチップ100を前記底部Bから遠ざけるとにより、前記弁体110がコイルバネ120の付勢力によって前方に付勢保持されて、弁体110のシール部112によって弁座104が閉鎖されるので、吸引された液体がノズルチップ100外に漏れ出すことなく常時保持することができる。
【0005】
しかしながら、従来のノズルチップ100では、弁体110はその後端部114がコイルバネ120によって支持されるのみであるため、弁体110を前後動させる際に弁体110が安定せずに傾いたり、コイルバネ120に引っかかりが生じて弁体110の円滑な作動が困難になる等の動作不良が発生することがある。そして、このような動作不良により、液体の安定した吸引あるいは吐出が妨げられたり、弁体110による弁座104の閉鎖が不完全になる等の問題があった。
【特許文献1】特開2003−254873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、弁体をより円滑に作動させることができるとともに、液体の吸引吐出を安定して行うことができる液体用ノズルチップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1の発明は、液体連通部を有する接続部を備え、先端部に開口部が形成されるとともに内部に弁座が形成された筒状のチップ本体と、前記チップ本体内に配置され、前記開口部より突出するように形成された先端小径部と前記弁座を開閉するシール部とを有する弁体と、前記チップ本体内に配置された前記弁体を常時前方に付勢保持して前記シール部によって前記弁座を閉鎖するとともに、前記先端小径部が後退することによって前記弁座を開放するように構成された板バネ部材と、前記チップ本体の先端部に突設され、前記弁体の先端小径部と摺接して前記先端小径部が直動するように形成されたセンター保持部材とを有することを特徴とする液体用ノズルチップに係る。
【0008】
請求項2の発明は、前記板バネが中心保持部と円弧状のバネ部を有する請求項1に記載の液体用ノズルチップに係る。
【0009】
請求項3の発明は、前記センター保持部材が前記チップ本体の先端部に少なくとも3個の部分突部によって形成されている請求項1又は2に記載の液体用ノズルチップに係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明に係る液体用ノズルチップによれば、液体連通部を有する接続部を備え、先端部に開口部が形成されるとともに内部に弁座が形成された筒状のチップ本体と、前記チップ本体内に配置され、前記開口部より突出するように形成された先端小径部と前記弁座を開閉するシール部とを有する弁体と、前記チップ本体内に配置された前記弁体を常時前方に付勢保持して前記シール部によって前記弁座を閉鎖するとともに、前記先端小径部が後退することによって前記弁座を開放するように構成された板バネ部材と、前記チップ本体の先端部に突設され、前記弁体の先端小径部と摺接して前記先端小径部が直動するように形成されたセンター保持部材とを有するため、弁体が前後動する際に傾くことがなく、安定して作動させることができ、動作不良が発生するおそれがない。したがって、弁体を円滑に作動させることが可能で該弁体による弁座の閉鎖を完全に行うことができ、液体の吸引あるいは吐出が妨げられることがなく安定して行うことができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1において、前記板バネが中心保持部と円弧状のバネ部を有するため、弁体をチップ本体の中心で常時保持することができ、前記弁体をより安定して付勢保持することができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2において、前記センター保持部材が前記チップ本体の先端部に少なくとも3個の部分突部によって形成されているため、弁体の先端小径部をチップ本体の中心位置で確実に保持するとともに直動させることができ、前記弁体の作動時の安定性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係る液体用ノズルチップをノズル先端部に取り付けた正面図、図2は同ノズルチップの断面図、図3は同ノズルチップの弁座開放時の断面図、図4は同ノズルチップの板バネ部材の上面図、図5は同ノズルチップの先端部側の上面図、図6は他の実施例に係る液体用ノズルチップの断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施例に係る液体用ノズルチップ10は、分注装置やピペット等の適宜の液体吸引吐出装置におけるノズル先端部Nに取り付けられ、液体吸引吐出装置の作動に応じて、適宜の液体を吸引保持または保持した液体を吐出するものである。実施例では、吸引される液体はノズルチップ10を介してノズル先端部Nの後部に設けられた液体保持部Kで保持され、適宜液体吸引吐出装置を作動させて前記液体保持部Kからノズルチップ10を介して吐出される。
【0015】
このノズルチップ10は、図2ないし図5に示すように、チップ本体11と、弁体20と、板バネ部材30と、センター保持部材40とを有する。また、このノズルチップ10は、ポリプロピレンやポリエチレン等の公知の樹脂材料によって成形されている。図において、符号Bは吸引吐出される液体のための容器の底部を表す。
【0016】
チップ本体11は、吸引あるいは吐出される液体が流通可能な液体連通部16を有する接続部15を備え、先端部12に開口部13が形成されるとともに内部に弁座14が形成された筒状の部材である。チップ本体11の接続部15は、液体吸引吐出装置のノズル先端部Nに着脱自在に取付けられるものであって、図示のように、テーパ状に形成された内壁部分で前記ノズル先端部Nに固定される。
【0017】
弁体20は、チップ本体11内に配置され、前記開口部13より突出するように形成された先端小径部21と前記弁座14を開閉するシール部22とを有する。該弁体20の先端小径部21は、図示のように、チップ本体15の開口部13よりも小径とされ、前記開口部13との間に液体が通過可能な隙間が形成されるように構成される。また、シール部22は、先端小径部21に向かって傾斜するテーパ部22aが形成され、該テーパ部22aの一部が前記弁座14に着座可能に構成されている。図において、符号23は弁本体、24は弁体後端部である。なお、この弁体20は、特に、公知の樹脂材料の中でも硬質の材料によって形成される。
【0018】
板バネ部材30は、チップ本体11内に配置された弁体20を常時前方に付勢保持して前記シール部22によって前記弁座14を閉鎖する(図2参照)とともに、前記先端小径部21が後退することによって前記弁座14を開放する(図3参照)ように構成される。この板バネ部材30は、図示のように、弁体20の後端部24と係合するとともに、チップ本体11の接続部15によって前記チップ本体11に固定されている。また、バネ板部材30では、液体が流通可能に形成された液体連通部16をふさがないように連通開口部33が形成されている。
【0019】
実施例の板バネ部材30は、図4に図示しかつ請求項2の発明として規定したように、中心保持部31と円弧状のバネ部32,32を有する。図示のように、板バネ部材30では、中心保持部31がチップ本体11の中心位置に配置されるように円弧状のバネ部32,32と一体に形成され、弁体後端部24が前記中心保持部31に係合することによって弁体20をチップ本体11の中心に保持するように構成される。これにより、弁体20をチップ本体11の中心で常時保持することができ、前記弁体20をより安定して付勢保持することができる。
【0020】
センター保持部材40は、チップ本体11の先端部12に突設され、弁体20の先端小径部21と摺接して前記先端小径部21が直動するように形成されている。該センター保持部材40は、弁座14の閉鎖時(図2参照)において、チップ本体11から突出した先端小径部21が内接するように形成され、弁体20が後退した弁座14の開放時(図3参照)には、容器の底部Bに当接してチップ本体11の姿勢を安定させるための脚部としても作用する。
【0021】
実施例のセンター保持部材40は、図5に図示しかつ請求項3の発明として規定したように、チップ本体11の先端部12に3個の部分突部41,41,41によって形成されていて、前記部分突部41,41,41はそれぞれ約120°の間隔に配設されている。このように構成することにより、弁体20の先端小径部21をチップ本体11の中心位置で確実に保持するとともに直動させることができ、前記弁体20の作動時の安定性をより向上させることができる。なお、前記部分突部41は、少なくとも3個形成されていればよく、それ以上であっても構わない。
【0022】
上記の如く構成された液体用ノズルチップ10の使用例について説明する。まず、ノズルチップ10のチップ本体11の接続部15に適宜の液体吸引吐出装置のノズル先端部Nが取り付けられた後、吸引する液体が入った適宜の容器に対して略垂直に下降させてノズルチップ10の先端小径部21を容器底部Bに当接させる。
【0023】
続いて、先端小径部21が容器底部Bに当接した状態からノズルチップ10をさらに押し下げることによって、チップ本体11内で弁体20が板バネ部材30の付勢力に抗して後退し、前記チップ本体11の弁座14が開放される(図3参照)。この時、弁体20は、先端小径部21がセンター保持部材40に摺接し、弁体後端部24が板バネ部材30に保持されているため、傾くことなく直動して後退するように構成される。また、チップ本体11は、先端部12に形成されたセンター保持部材40が容器底部Bに当接する位置まで押し下げられ、前記センター保持部材40が当該弁座開放時のチップ本体11の姿勢を安定させる脚部としても作用することにより、前記弁座14の開放状態が確実に維持される。
【0024】
上記の如く弁座14が開放されると、液体吸引吐出装置を適宜作動させて、チップ本体11の開口部13を介して所定の液量が吸引され、ノズル先端部Nの後部に設けられた液体保持部Kに所定量の液体が保持される。液体の吸引が完了した後、ノズルチップ10は略垂直に上昇されて、前記先端小径部21が容器底部Bから遠ざけられる。その際、弁体20は、板バネ部材30の付勢力によって後退状態から前進して付勢保持され、前記弁体20のシール部22によって弁座14を閉鎖するので(図2参照)、吸引された所定量の液体がノズルチップ10外に漏れ出すことなく常時保持することができる。なお、前述のように、先端小径部21がセンター保持部材40に摺接し、弁体後端部24が板バネ部材30に保持されているため、弁体20が傾くことなく直動して前進するのはいうまでもない。
【0025】
また、前記液体保持部Kに保持した液体を吐出する場合は、前述の弁座14を開放する手順に従って前記弁座14が開放され、液体吸引吐出装置を適宜作動させて所定の液量が吐出され、液体の吐出が完了した後、前述の弁座14を閉鎖する手順に従って前記前座14が閉鎖される。
【0026】
以上説明したように、この発明に係る液体用ノズルチップ10では、弁体20が前後動する際に傾くことがなく、安定して作動させることができ、動作不良が発生するおそれがない。したがって、弁体20を円滑に作動させることが可能で該弁体20による弁座14の閉鎖を完全に行うことができ、液体の吸引あるいは吐出が妨げられることがなく安定して行うことができる。
【0027】
なお、本発明の液体用ノズルチップは、上記実施例で述べた構成に限るものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を付加して実施することができる。例えば、実施例では、弁体20のシール部22がテーパ部22aによって形成されていたが、図6に示すように、エラストマー22bをシール部として形成し、チップ本体11の弁座14を開閉するように構成する等、前記弁座14を開閉可能な適宜の構成とすることができる。
【0028】
また、実施例では、吸引した液体をノズル先端部Nの後部に設けられた液体保持部Kによって保持するように構成したが、この例に限定されるものではなく、ノズル先端部Nに別途液体保持部を設けて液体を保持可能に構成したり、ノズルチップ10内で液体を保持するように構成してもよい。
【0029】
さらに、前述の実施例では、ノズルチップを公知の樹脂材料によって成形したが、金属によって成形する等、用途に応じて適宜の材料で成形してもよい。
【0030】
各部の大きさや形状等についても図示の実施例のみに限定されるものではなく、適宜のものとすることができるのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係るノズルチップをノズル先端部に取り付けた正面図である。
【図2】同ノズルチップの断面図である。
【図3】同ノズルチップの弁座開放時の断面図である。
【図4】同ノズルチップの板バネ部材の上面図である。
【図5】同ノズルチップの先端部側の上面図である。
【図6】他の実施例に係る液体用ノズルチップの断面図である。
【図7】従来の液体用ノズルチップの断面図である。
【図8】同ノズルチップの弁座開放時の断面図である。
【図9】同ノズルチップの先端部側の上面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 液体用ノズルチップ
11 チップ本体
12 先端部
13 開口部
14 弁座
15 接続部
16 液体連通部
20 弁体
21 先端小径部
22 シール部
23 弁本体
24 弁体後端部
30 板バネ部材
31 中心保持部
32 円弧状のバネ部
33 連通開口部
40 センター保持部材
41 部分突部
B 容器の底部
K 液体保持部
N ノズル先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体連通部を有する接続部を備え、先端部に開口部が形成されるとともに内部に弁座が形成された筒状のチップ本体と、
前記チップ本体内に配置され、前記開口部より突出するように形成された先端小径部と前記弁座を開閉するシール部とを有する弁体と、
前記チップ本体内に配置された前記弁体を常時前方に付勢保持して前記シール部によって前記弁座を閉鎖するとともに、前記先端小径部が後退することによって前記弁座を開放するように構成された板バネ部材と、
前記チップ本体の先端部に突設され、前記弁体の先端小径部と摺接して前記先端小径部が直動するように形成されたセンター保持部材
とを有することを特徴とする液体用ノズルチップ。
【請求項2】
前記板バネが中心保持部と円弧状のバネ部を有する請求項1に記載の液体用ノズルチップ。
【請求項3】
前記センター保持部材が前記チップ本体の先端部に少なくとも3個の部分突部によって形成されている請求項1又は2に記載の液体用ノズルチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−214803(P2006−214803A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26297(P2005−26297)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000101514)アドバンス電気工業株式会社 (24)
【Fターム(参考)】