説明

液体用可撓性包装袋

【課題】本発明は、インクジェット装置用インク袋や食品、洗剤、家庭用品および健康・医療関連製品などの可撓性包装袋に関するものであって、収納する内容物が、液体であり、かつ、アルコール類、浴用剤や湿布薬など強い浸透力をもつ揮発性成分を含む強浸透性物質や、香料、食酢、油、アルカリ物質などを含有する場合であっても、上記袋を構成しているプラスチック積層フィルムの接着剤層の接着強度を低下させることなく、デラミネーションを引き起こさない内容物の保存性に優れた液体用可撓性包装袋を提供する。
【解決手段】基材フィルム3と、添加剤が無添加のポリエチレンフィルムよりなるヒートシールフィルム8を、尿素結合を含むポリウレタン接着剤層6を介してラミネートした積層フィルム1よりなる液体用可撓性包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット装置用インク袋や食品、洗剤、家庭用品および健康・医療関連製品などの可撓性包装袋に関するものである。
【0002】
本発明の可撓性包装袋は、その内容物が液体であり、かつ、揮発性成分を含む強浸透性物質、香料、油、高沸点有機溶剤、酸性物質または、アルカリ性物質を含有する場合であっても、上記包装袋を構成しているプラスチック積層フィルムの接着剤層の接着強度を低下させることなく、内容物の保存性に優れたものである。
【背景技術】
【0003】
従来、可撓性包装袋は、インクジェット装置用インク袋や食品、洗剤、家庭用品および健康・医療関連製品などあらゆる分野の個包装に使用されている。
【0004】
前記可撓性包装袋の包装材料としては、図3の(a)に示すように、紙層(31)、ポリエチレン層(32)、アルミ箔層(33)および、シーラント層(34)の各層が積層されてなる積層体(30)や、図3の(b)に示すように、紙層(31)、ポリエチレン層(32)、アルミ箔層(33)、ポリエステル層(36)、シーラント層(34)の各層が積層されてなる積層体(39)が広く用いられてきた。
【0005】
その内、前者の積層体(30)におけるアルミ箔層(33)とシーラント層(34)との貼り合わせは、通常はアルミ箔層(33)にシーラント層(34)となる熱接着性樹脂、例えばポリエチレン、またはエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)などを図4に示すように、溶融押出ラミネート装置(40)を用いてそのまま押出ラミネートすることによって行うか、あるいは、アルミ箔層(33)に二液硬化型ポリウレタン系のアンカーコート剤(35)などを塗布してから、シーラント層(34)となる樹脂を押出ラミネートをすることにより行っていた。
【0006】
また、後者の積層体(39)のポリエステル層(36)とシーラント層(34)との貼り合わせは、通常はポリエステルフィルムに二液硬化型ポリウレタン系などのアンカーコート剤(35)を塗布してから、シーラント層(34)を押出ラミネートすることにより行っていた。
【0007】
このような積層体は適度のラミネート強度やガスバリア性などを有しており、食品や医薬品などを包装するための包装材料として広く使用されている。
【0008】
しかしながら、包装材料により収納される内容物によっては、アルコール類、酸性物質、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものが多くあり、これらの内容物を包装すると、接着剤層の接着剤に悪影響を及ぼし、積層体におけるラミネート強度の低下を招いたり、剥離を生じることがあった。
【0009】
また、インクジェット装置用インク袋の場合、その内容物であるインクには、アルコール類、油、顔料等が含有されていることが多い。
【0010】
すなわち前記インクのように、揮発性物質や、アルカリ性の高い物質が含まれていた場合において、前記したような構成の積層体や接着剤層を使用して得られる積層体を包装材料として使用した包装袋に、これらの内容物を収納した場合は、アルミ箔とシーラント層間、あるいはポリエステルフィルムとシーラント層間のラミネート強度が経時的に低下し
、その結果デラミネーション(剥離)を引き起こすことがある。
【0011】
つまり、収納する内容物がインキジェット装置用インクや湿布薬や浴用剤などの場合、これらには揮発性物質が含まれているので、前記したような構成の積層体や接着剤層を使用して得られる積層体を包装材料として使用し、これらの内容物を包装した場合は、揮発性物質の強い浸透力によって、アルミ箔とシーラント層間、あるいはポリエステルフィルムとシーラント層間のラミネート強度が経時的に低下し、その結果デラミネーションを引き起こすという問題がある。
【0012】
一方、従来より液体を噴射する液体噴射装置として、インクをノズルから噴射させて印刷を行なうインクジェット式プリンタが知られている。このプリンタは複数のノズルが形成された記録ヘッドを有しており、該記録ヘッドを往復移動させながら該ノズルからインクを噴射させて印刷を行なう。
【0013】
このようなプリンタには、記録ヘッドに供給するインクを貯留しているインクカートリッジが交換可能に設けられており、このインクカートリッジには、ハードケース内部にインクを包装しているインク袋を収容しているタイプやハードケース内部に形成されるインク収容室に直接インクを収容し、その開口部を樹脂フィルムで封止するタイプがある。
【0014】
インク袋タイプは、図2に示すように、インク袋(20)に弾性栓部材(ゴム等)(22)を備え、ガスバリア性を有するアルミ箔や蒸着フィルム等を使用したラミネートフィルム(25)をヒートシール(21)、(23)して構成された包装袋内部にインクを貯留したものが一般的である。
【0015】
また、樹脂フィルム封止タイプは、ハードケース内部に形成されるインク収容室壁面に弾性栓部材を備え、その開口部をガスバリア性及び水蒸気バリア性を有するアルミ箔や蒸着フィルム等を使用したラミネートフィルムでヒートシールして構成されたインク収容室内部にインクを貯留したものが一般的である。
【0016】
いずれのタイプも貯留されたインクは、前記弾性栓部材(22)に中空針(24)が刺し込まれるなどして記録ヘッドへと供給され、記録ヘッドのタイプにより、加圧、減圧、電気(ピエゾ方式)、熱(サーマル方式)等が印加され、インクを記録ヘッドから噴射させている。
【0017】
また、いずれのタイプも、プリンタのスイッチが入っている時は、インク残量によらずインクの排出性を高めるため、予めインクを脱気状態で収容し、インク袋又はハードケース内部に形成されるインク収容室開口部を封止している樹脂フィルムを一定の圧力で加圧する手段を備えているものが多い。
【0018】
そのため、上記インク袋やハードケース開口部を封止している樹脂フィルムには内容インクとの適性(化学的安定性)やインク排出性(上記加圧手段に対する柔軟性)が良好であることが求められ、従来、特にポリエチレン系樹脂を最内層に使用している場合が多い。
【0019】
すなわち、上記樹脂フィルムとしては、インクによって溶解、膨張等の化学的変化などの影響を受けない化学的安定性と、インクを記録ヘッドのノズルより排出する際、インク袋が上記加圧手段を受けた際に対する柔軟性、可撓性を有している必要がある。
【0020】
そこで液体に接触するインク袋の内面である最内層には、上記特性を有するポリエチレン系樹脂フィルムが用いられてきた。
【0021】
特許文献1には、このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われており、アルカリ性の高い収納物に対する耐性を向上し、さらには各種プラスチックフィルムや金属箔に対する接着力を向上させた接着剤などが種々提案されている。
【0022】
しかし、最内層に使用しているヒートシール層を構成しているポリエチレン系樹脂フィルムには、滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤や可塑剤などの添加剤が使用されており、これらの添加剤が、前記インク袋のインク中に溶出して、インクの流動状態を悪化させることがある。
【0023】
すなわち、上記添加剤が、前記インクの凝集を招いたり、インクの通路であるノズルに壁面に固着して、塊を形成して、インクノズルの中で詰まり現象を起こしたりすることがある。
【0024】
また、上記添加剤が、上記ラミネートの際に基材フイルム側に設ける前記アンカーコート剤(接着剤)に浸透して、上記包装袋を構成している積層フイルムのラミネート接着強度を低下させ、デラミネーションを起こす可能性がある。
【0025】
すなわち、前記アンカーコート剤(接着剤)のラミネート接着強度を低下させる原因となるものは、前記包装袋の内容物中の揮発性物質などを含む強浸透性物質と、前記シーラント層であるポリエチレン系樹脂などに含まれる添加剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2008−049513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明は、インクジェット装置用インク袋や食品、洗剤、家庭用品および健康・医療関連製品などの可撓性包装袋に関するものである。
【0028】
本発明は、包装袋に収納する内容物が、液体であり、かつ、アルコール類、浴用剤や湿布薬など強い浸透力をもつ揮発性成分を含む強浸透性物質や、香料、食酢、油、アルカリ物質などを含有する場合に関するものである。
【0029】
本発明は、その場合にあっても、上記袋を構成しているプラスチック積層フィルムの接着剤層の接着強度を低下させることなく、デラミネーションを引き起こさない、すなわち内容物の保存性に優れた液体用可撓性包装袋を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
請求項1の発明における包装袋は、片面に少なくとも、基材フィルムとヒートシールフィルムを備える積層フィルムよりなり、揮発性成分を含む強浸透性物質または、酸性物質、アルカリ性物質、香料、油、界面活性剤、高沸点有機溶剤を、含有する液体を収納できる液体用可撓性包装袋である。
【0031】
前記ヒートシールフィルムは、前記液体用可撓性包装袋の内壁面を構成しており、添加剤が無添加のポリエチレンフィルムであることを特徴とするものである。
【0032】
前記積層フィルムは、前記基材フィルム上に尿素結合を含むポリウレタン接着剤層およ
びヒートシールフィルムをこの順で設けたことを特徴とする積層フィルムである。
【0033】
請求項2の発明は、前記ポリウレタン接着剤層がアダクト体タイプ、ビューレット体タイプ、トリマー体タイプの、三官能化させたモノマーの誘導体から合成された尿素結合を含むポリウレタンであることを特徴とするものである。
【0034】
請求項3の発明は、前記基材フィルムが、ベースフィルムの片面に、金属箔または、無機酸化物層や金属の蒸着層が設けてあり、更にその上に、前記ベースフィルムと同種のフィルムが設けられた積層体であることを特徴とするものである。
【0035】
前記ベースフィルムおよび前記同種のフィルムが、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたは、ポリオレフィンフィルムのいずれか一つのフィルムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、上記用途向けの可撓性包装袋であって、包装袋に収納する内容物が、液体であり、かつ、アルコール類、浴用剤や湿布薬など強い浸透力をもつ揮発性成分を含む強浸透性物質や、香料、食酢、油、アルカリ物質などを含有する場合であっても、上記袋を構成しているプラスチック積層フィルムの接着剤層の接着強度を低下させることなく、デラミネーションを引き起こさない、すなわち内容物の保存性に優れた液体用可撓性包装袋を提供できるという効果を有するものである。
【0037】
請求項1の発明における包装袋の内壁面を構成している前記ヒートシールフィルムとして、添加剤が無添加のポリエチレンフィルムを用いることによって、従来の添加剤使用で発生していたインクの変質や、インクノズルである針の詰り現象を解決できるという効果を有するものである。
【0038】
すなわち従来の添加剤である滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤や可塑剤などがポリエチレンフィルムよりインクに溶出して、インクの変質や、インクの流動状態を変化させて、インクノズルである針に詰り現象を発生させ、インク吐出に不具合を生じさせていた。
【0039】
また、請求項1の発明における前記基材フィルムとヒートシールフィルムの間に、尿素結合を含むポリウレタン接着剤層を設けることによって、結合が多く、結合密度が高くなり、結合の網目構造が強固となったために、包装袋の内容物の強い浸透力によって、上記接着剤層が、溶解や膨張現象を起こすことが極めて少なくなったために、強いラミネート強度を保持できるという効果を有するものである。
【0040】
すなわち一般的な2液硬化タイプのウレタン接着剤層に比べて、前記尿素結合を含むポリウレタン接着剤層は、結合が多く、結合密度が高くなり、結合の網目構造が強固となっているために、包装袋の内容物に含まれる強い浸透力をもつ揮発性成分を含む強浸透性物質などによって、本件接着剤層が、溶解や膨張現象を発生すること、すなわちラミネート強度の低下が極めて少なくなったものである。
【0041】
請求項2の発明の前記ポリウレタン接着剤層をアダクト体タイプ、ビューレット体タイプ、トリマー体タイプの、三官能化させたモノマーの誘導体から合成された尿素結合を含むポリウレタンにすることによって、請求項1の発明の場合よりも、さらに結合が多く、更に結合密度が高くなり、さらに結合の網目構造が強固となったために、包装袋の内容物の強い浸透力によって、上記接着剤層が、溶解や膨張現象を起こすことが極めて少なくなったために、強いラミネート強度をさらに長く保持できるという効果を有するものである。
【0042】
請求項3の発明の前記基材フィルムのベースフィルムの片面に、金属箔または、無機酸化物層や金属の蒸着層が設けることによって、酸素透過性や水蒸気などのガスバリアが高くなるという効果を有するものである。すなわち内容物の保存性を高めることができるという効果を有する
ものである。
【0043】
また請求項3の発明の前記ベースフィルムおよび同種フィルムとして、ナイロンフィルムを用いることによって、本発明の前記液体用可撓性包装袋の突き刺し性を向上させる効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1の(a)は、本発明の液体用可撓性包装袋を構成する積層フィルム(1)の断面略図である。図1の(b)は、本発明の液体用可撓性包装袋を構成する積層フィルム(1)である図1の(a)の天地を逆にした断面略図である。
【図2】図2は、軟包装袋であるスタンディングパウチのスパウト部材に、弾性栓部材(22)と中空針(24)を設けたインクジエット装置用インク袋(20)の斜視略図である。
【図3】図3の(a)は、従来の軟包装袋であるスタンディングパウチを構成する積層フィルム(30)の五層タイプの断面略図である。図3の(b)は、従来の軟包装袋であるスタンディングパウチを構成する積層フィルム(39)の六層タイプの断面略図である。
【図4】図4は、溶融押出ラミネート装置(40)の側面から見た外観略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、インクジェット装置用インク袋や食品、洗剤、家庭用品および健康・医療関連製品などの可撓性包装袋に収納する内容物が、液体であり、かつ、アルコール類、浴用剤や湿布薬など強い浸透力をもつ揮発性成分を含む強浸透性物質や、香料、食酢、油、アルカリ物質などを含有する場合にも対応できるものである。
【0046】
本発明は、その場合にあっても、上記袋を構成しているプラスチック積層フィルムの接着剤層の接着強度を低下させることなく、デラミネーションを引き起こさない、かつ、内容物の保存性に優れた液体用可撓性包装袋を提供するものである。
【0047】
本発明における液体用可撓性包装袋は、片面に少なくとも、基材フィルムとヒートシールフィルムを備える積層フィルムよりなる包装材料を使用するものである。
【0048】
前記ヒートシールフィルムは、前記液体用可撓性包装袋の内壁面を構成しており、添加剤が無添加のポリエチレン系樹脂フィルムである。
【0049】
前記積層フィルムは、前記基材フィルム上に尿素結合を含むポリウレタン接着剤層およびヒートシールフィルムをこの順で設けたものである。
【0050】
前記尿素結合を含むポリウレタン接着剤層は、アダクト体タイプ、ビューレット体タイプ、トリマー体タイプの、三官能化させたモノマーの誘導体から合成された尿素結合を含むポリウレタンである。
【0051】
前記基材フィルムは、ベースフィルムの片面に、金属箔または、無機酸化物や金属の蒸着層が設けてあり、更にその上に、前記ベースフィルムと同種のフィルムが設けられた積層体であることを特徴とするものである。
【0052】
前記ベースフィルムおよび前記同種のフィルムは、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたは、ポリオレフィンフィルムのいずれか一つのフィルムである。
【0053】
本発明の液体用可撓性包装袋の形態としては、二方シール、三方シール、四方シールの平袋、ガゼット袋、スタンディングパウチが大部分である。
【0054】
二方シール袋は、チューブ状フィルムの上・下(天・地)をヒートシールした形態である。
【0055】
三方シール袋は、1枚のフィルムを二つに折り畳み、その両端と上部をヒートシールした形態と、1枚のフィルムをピロー状に形成して、フィルムの合わせ目をセンターにしてヒートシールし、更にその上下をヒートシールしたもので、所謂、ピロータイプの三方シール袋がある。
【0056】
ピロータイプの三方シール袋は、センターシールの方法に合掌シール、封筒貼りシール、テープシールの3方式がある。四方シール袋は、袋の四方をシールした形態で、1枚のフィルム又は2枚のフィルムから製袋される。
【0057】
スタンディングパウチは、袋に自立性を付与したもので、底部フィルムを二つに折り込んで折り込み部を形成して、胴部のフィルムとヒートシールして底部を形成するものと、1枚のフィルムを使用して底部を折り込み、両サイドをヒートシールして底部を形成するものと2種類ある。
【0058】
スタンディングパウチは、袋に自立性を付与するために、使用する材料に剛性と形状保持性が必要であり、これらの物性に適合した積層材が使用される。ガゼット袋は、袋の両側に折り込み部を有するもので、包材面積当たりの包装内容積を大きくした袋である。
【0059】
柔軟包装袋は、一般に、ヒートシール(熱溶着)によって強力に接着されており、ヒートシール部から開封するのは困難であるので、各種の開封方法が工夫されている。多く使用されている開封方法としては、袋上部の横端部に切り欠きを設けるがその切り欠きとしてはVノッチ、ノッチ、鋸歯カット、ミシン目等がある。目の不自由な人にとって、手さぐりで探しやすい切り欠きを設けることが必要で、Vノッチが好ましく使用できる。
【0060】
本発明の一例として用いるインクジェット用インク袋としては、スタンディングパウチタイプの上部に、口栓部材であるスパウトの口栓部に前記弾性栓部材(22)に中空針(24)が刺し込まれるなどしたスタンディングパウチタイプが用いられる。
【0061】
本発明に係る液体用可撓性包装袋の前記基材フィルム(3)のベースフィルム(4)としては、セロハン、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルペンテン、ポリアクリロニトリル等が使用できる。
【0062】
更に、前記各種プラスチックフィルムの多層の積層フィルム(共押出しフィルム、接着剤で張り合わせたラミネートフィルム)や、プラスチックフィルムと紙、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着フィルムとの積層フィルム等も使用できる。
【0063】
これらの中でも、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたは、ポリオレフィンフィルムは、好ましく使用でき、特にナイロンフィルムは、鋭い突起物であるインクジェット用ノズルなどに対する突き刺し防止性に優れるので、更に好ましく使用できる。
【0064】
また、酸素バリア性や水蒸気バリア性を必要とする場合には、上記ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたは、ポリオレフィンフィルムの片面に無機酸化物層や金属などの蒸着層を設けたものは、更に好ましく使用できる。
【0065】
本発明の場合は、図1の(a)、(b)に示すように、前記ベースフィルム(4)である上記ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたは、ポリオレフィンフィルムの片面に無機酸化物層や金属などの蒸着層を設けたのち、その上に、接着剤(9)を介して前記ベースフィルム(4)と同種のフィルムを積層したものを前記基材フィルム(3)として用いている。
【0066】
この構成をとる理由としては、前記液体用可撓性包装袋の内容物が、無機酸化物層や金属などの蒸着層に直接接触させないようにしたいという意図があり、前記蒸着層と内容物の間に極力、距離を設けるために、接着剤(9)を介して上記ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたは、ポリオレフィンフィルムなどの前記ベースフィルム(4)と同種のフィルムを設けたものである。
【0067】
前記液体用可撓性包装袋の内壁面を構成している前記ヒートシールフィルム(8)としては、ポリエチレン樹脂(低密度ポリエチレン、直線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを含む)、ポリプロピレン系樹脂、エチレンー酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリエステル樹脂等が使用できるが、滑剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤や可塑剤などの添加剤が、無添加のポリエチレン系樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0068】
前記基材フィルム(3)と前記ヒートシールフィルム(8)をラミネートして、前記積層フィルム(3)を作成するが、そのラミネート方法は、ドライラミネート方式でも、溶融押し出しラミネート方式のいずれも用いることができる。
【0069】
後者の溶融押し出しラミネート方式の場合は、図4に示すように、アンカーコート剤(35)を前記基材フィルム(37)に塗布して後、溶融ポリエチレン樹脂(48)を介して、シーラント層(34)(ヒートシールフィルム)を貼り合わせて積層体を作成するものである。
【0070】
本発明の前記積層フィルム(1)は、前記基材フィルム(3)上に、アンカーコート剤として、尿素結合を含むポリウレタン接着剤層(6)に塗布して後、溶融ポリエチレン樹脂(7)を介して、シーラント層としてヒートシールフィルム(8)を貼り合わせて作成するものである。
【0071】
前記溶融ポリエチレン樹脂(7)としては、上記添加剤が無添加のポリエチレン系樹脂が好ましく使用できる。
【0072】
前記尿素結合を含むポリウレタン接着剤層(6)は、アダクト体タイプ、ビューレット体タイプ、トリマー体タイプの、三官能化させたモノマーの誘導体から合成された尿素結合を含むポリウレタン接着剤層であって、一般的な2液硬化タイプのウレタン接着剤層に比べて、前記尿素結合を含むポリウレタン接着剤層は、結合が多く、結合密度が高くなり、結合の網目構造が強固となっている。
【0073】
そのために、包装袋の内容物に含まれる強い浸透力をもつ揮発性成分を含む強浸透性物質や、樹脂の添加剤などによって、溶解や膨張現象を発生すること、すなわちラミネート強度の低下が極めて少なくなったものである。
【0074】
すなわち、前記尿素結合を含むポリウレタン接着剤層が、2官能のイソシアネートモノマー、またはアダクト体タイプ、ビューレット体タイプ、トリマー体タイプの3官能化されたモノマーの誘導体から合成されることでイソシアネート化合物が内容物耐性や樹脂添加剤耐性の高い尿素結合を有する緻密な網目構造を持つことができ、高耐性の積層体を得ることができるものである。
【0075】
図1の(a)は、本発明の液体用可撓性包装袋を構成する積層フィルム(1)の断面略図であって、積層フィルム(1)は、基材フィルム(3)の片面に、アンカーコート層(6)を、設けて後、押し出し樹脂(7)を介して、ヒートシールフィルム(8)をラミネートして設けたものである。
【0076】
前記基材フィルム(3)は、ベースフィルム(4)の片面に、接着剤(9)を介して、金属箔または、無機酸化物または金属の蒸着層(1)が設けてあり、更にその上に、前記ベースフィルム(4)と同種のフィルム(4)が接着剤(9)を介して、設けられた積層体である。
【0077】
図1の(b)は、本発明の液体用可撓性包装袋を構成する積層フィルム(1)である図1の(a)の天地を逆にした断面略図である。
【0078】
すなわち図1の(a)を液体用可撓性包装袋の表となるフィルムとすると、図1の(b)は、裏のフィルムとなるものである。各々のヒートシールフィルム面の端部を重ね合わせて熱接着して、液体用可撓性包装袋を作成するものである。
【0079】
図2は、軟包装袋であるスタンディングパウチのスパウト部に、弾性栓部材(22)と中空針(24)を設けたインクジエット装置用インク袋(20)の斜視略図であって、上記スタンディングパウチは、アルミ箔層を備えた基材フィルムにシーラント層を貼り合わせた積層体を用いてヒートシール法により熱接着して作成したものである。
【0080】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0081】
片面コロナ処理したナイロンフィルム(厚さ15μm)のコロナ処理面に、絵柄を印刷し、アルミニウム箔(厚さ9μm)、両面コロナ処理したナイロンフィルム(厚さ15μm)とを順次ドライラミネートを行い、基材フィルムを得た。
【0082】
上記基材フィルムを溶融ポリエチレン(厚さ20μm)の押し出しラミネートにて、添加剤無添加の直線状低密度ポリエチレンフィルム(厚さ60μm)と貼り合わせてインクカートリッジ袋用のラミネート積層フィルムを得た。押し出しラミネートのアンカーコート接着剤としては、TDI(トリレンジイソシアネート)のアダクト体で、尿素結合を有するウレタン接着剤、固形分5%を用いた。その塗布量は、乾燥時重量(ドライ)で0.3g/mである。
【0083】
上記ラミネート積層フィルムを用いて、幅、長さの袋を作成し、天部にはスパウトを溶着してインクカートリッジ袋を得た。
【実施例2】
【0084】
実施例1とは異なるアンカーコート接着剤でHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のビューレット体で、尿素結合を有するウレタン接着剤、固形分5%を用いた。それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。、
【実施例3】
【0085】
実施例1〜2とは異なるアンカーコート接着剤で、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のトリマー体で、尿素結合を有するウレタン接着剤、固形分5%を用いた。それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。、
【実施例4】
【0086】
実施例1〜3とは異なるアンカーコート接着剤で、XDI(キシレンジイソシアネート)のアダクト体とIPDI(イソホロンジイソシアネート)のトリマー体を混合したもので、尿素結合を有するウレタン接着剤、固形分5%を用いた。それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。、
【実施例5】
【0087】
実施例1〜4とは異なるアンカーコート接着剤HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のビューレット体とHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のトリマー体で、尿素結合を有するウレタン接着剤、固形分5%を用いた。それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。、
【実施例6】
【0088】
実施例1〜5とは異なるアンカーコート接着剤XDI(キシレンジイソシアネート)のアダクト体とIPDI(イソホロンジイソシアネート)のアダクト体で、尿素結合を有するウレタン接着剤、固形分5%を用いた。それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。、
【0089】
以下に、本発明の具体的比較例について説明する。
【0090】
<比較例1>片面コロナ処理したナイロンフィルム(厚さ15μm)のコロナ処理面に、絵柄を印刷し、アルミニウム箔(厚さ9μm)、両面コロナ処理したナイロンフィルム(厚さ15μm)とを順次ドライラミネートを行い、基材フィルムを得た。
【0091】
上記基材フィルムをドライラミネートにて、添加剤無添加の直線状低密度ポリエチレンフィルム(厚さ80μm)と貼り合わせてインクカートリッジ袋用のラミネート積層フィルムを得た。ドライラミネート接着剤としては、ポリオールとイソシアネートの二液ウレタン接着剤、固形分5%で、尿素結合を有さないものを用いた。
その塗布量は、乾燥時重量(ドライ)で0.3g/mである。
それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。
【0092】
<比較例2>実施例1と同様のラミネート方法で、シーラント層のポリエチレンフィルムのみ、添加剤が一般的に添加されているものに変更して、それ以外は、実施例1と同様にしてインクカートリッジ袋を得た。
【0093】
実施例1〜6と比較例1〜2の結果(表1)を評価する。
【0094】
実施例と比較例ともにインクジェットプリンター用インクを充填し、二ヶ月保存して、ラミネート強度、外観、インク変質を評価した。
【0095】
【表1】

【0096】
比較例1〜2は、実施例1〜6に比較して、ラミネート強度の低下、ラミネートの浮きやフクレ現象および、インクの変質が確認された。
【符号の説明】
【0097】
1、積層フィルム
3、基材フィルム
4、ベースフィルム
5、無機酸化物または金属の蒸着層
6、本発明の尿素結合を含むポリウレタン接着剤層
7、ポリエチレン樹脂
8、ヒートシールフィルム
9、ドライラミネート接着剤層
20、インク袋
21、ヒートシール部
22、弾性栓部材
23、ヒートシール部
24、中空針
25、ラミネートフィルム
30、五層の積層体
31、紙層
32、ポリエチレン層
33、アルミ箔層
34、シーケント層
35、アンカーコート層
36、ポリエステル層
37、紙層(31)/ポリエチレン層(32)/アルミ箔層(33)
38、紙層(31)/ポリエチレン層(32)/アルミ箔層(33)/ポリエステル層(36)
39、六層の積層体
40、押し出しラミネート装置
41、押し出し機
42、Tダイ
43、圧胴ロール
44、冷却ロール
45、ガイドロール
46、コーター
47、圧ロール
48、ポリエステル樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に少なくとも基材フィルムとヒートシールフィルムを備える積層フィルムよりなり、揮発性成分を含む強浸透性物質、酸性物質、アルカリ性物質、香料、油、界面活性剤または、高沸点有機溶剤を含有する液体を収納する包装袋であって、
前記ヒートシールフィルムが前記包装袋の内壁面を構成しており、
前記ヒートシールフィルムが、添加剤が無添加のポリエチレンフィルムであり、
前記積層フィルムが、前記基材フィルム上に尿素結合を含むポリウレタン接着剤層およびヒートシールフィルムをこの順で設けた積層フィルムであることを特徴とする液体用可撓性包装袋。
【請求項2】
前記ポリウレタン接着剤層がアダクト体タイプ、ビューレット体タイプ、トリマー体タイプの、三官能化させたモノマーの誘導体から合成された尿素結合を含むポリウレタンであることを特徴とする請求項1に記載の液体用可撓性包装袋。
【請求項3】
前記基材フィルムが、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたはポリオレフィンフィルムのいずれか一つのフィルムであって、その片面に無機酸化物層や金属蒸着層が設けてなり、その上に、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルムまたはポリオレフィンフィルムのいずれか一つのフィルムが設けられてなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体用可撓性包装袋。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95454(P2013−95454A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238519(P2011−238519)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】