説明

液体用容器の口栓、及び、口栓を有する液体用の容器

【課題】容器用の密閉性を高め内容物の劣化を抑制する、機能的で高級感のある口栓、及び、当該口栓を有する容器を提供する。
【解決手段】口栓200は、容器1を水平面上に直立させた第1状態において容器1の上端に位置し、球体210と第1係止部221と第2係止部222とを備える。球体210は、容器1の傾きに応じて口栓本体の内部にある第1空間250内を自重により移動する。第1係止部221は、第1状態において球体の下方に位置して隙間なく球体210を係止し、容器内の内容物130が保持されている第2空間140と第1空間250とを遮断する。第2係止部222は、第1状態において球体210の上方に位置し、容器1を傾けた第2状態において隙間を残して球体210を係止して内容物130の外部への流出を許す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収納するための容器用の口栓に関し、特に、保存中、及び使用中における内容物の劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小容量で使い切りタイプのビールやジュース等の容器には、アルミ缶、スチール缶、紙パック、及びペットボトル等が主に使用されている。また使い切りでないタイプの調味料や大容量のジュース等の容器には、紙パックやペットボトル等が主に使用されている。以前は液体を封入するための容器と言えばほとんどがガラス瓶であったが、ガラス瓶は重くて嵩張るため、最近では一部の用途を除きあまり使われていない。
一方、日本酒、焼酎、ワイン、ウィスキー、及びブランディ等のビール以外の酒類の容器には、現在でもガラス瓶が多く使用されている。紙パックやペットボトルに詰められた酒も一部には販売されているが、そのほとんどが廉価なものに限られており、「パック入りの酒=安い酒」のイメージが定着しているようである。従って、特に有名ブランドの高価な酒類(以下「特定名称酒」と記す)のほとんどはガラス瓶に詰められて販売されている。
一方、例えば、吟醸酒、大吟醸酒、本格焼酎、及び焼酎(乙類)は特有の芳香を持っているため、容器には高い密閉性が要求されるが、現在清涼飲料水等に多用されている一般的なペットボトルの本体及びキャップの材質や構造では密閉性が足らず、保存中に香りが抜けていくので、ペットボトル等を使用するには特に口栓の密閉性を高める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−67171号公報
【特許文献2】特開2006−213360号公報
【特許文献3】特開2006−213361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信販売等により遠方から購入した際の空き瓶の廃棄の問題や、ヘビーユーザの高齢化に伴う一升瓶の取り扱いによる危険性や労力を軽減する等の観点から、嵩張らず軽量でありながら機能的で高級感のある容器のニーズは少なからず存在する。
【0005】
それ故に、本発明は、密閉性を高め内容物の劣化を抑制する、機能的で高級感のある液体用容器の口栓、及び、当該口栓を有する液体用の容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を保持する容器に用いられる口栓に向けられている。そして上記課題を解決するために、本発明の口栓は、前記容器を水平面上に直立させた第1の状態において、前記容器の上端に位置し、球体と、第1の係止部と、第2の係止部とを備える。球体は、前記容器の傾きに応じて、口栓本体の内部にある第1の空間内を自重により移動する。第1の係止部は、前記第1の状態において、前記球体の下方に位置して隙間なく前記球体を係止し、前記容器内の液体が保持されている第2の空間と前記第1の空間とを遮断する。第2の係止部は、前記第1の状態において、前記球体の上方に位置し、前記容器を傾けた第2の状態において、隙間を残して前記球体を係止して、前記容器内に保持されている液体の外部への流出を許す。
好ましくは、前記第2の係止部は、開口部分の内周付近に、複数の凸部、又は複数の凹部を有し、前記第2の状態において、前記球体との間に、前記液体の流路と、空気孔とが形成されているとよい。
好ましくは、当該口栓は、さらに、前記容器を使用しない時に、前記球体を、前記第2の係止部の側から前記第1の係止部に向かって押圧して、前記容器の傾きに関係なく、前記球体と前記第1の係止部とを隙間なく密着させて、前記第2の空間と前記第1の空間とを遮断させるとともに、前記第1の空間と外気とを遮断するインナーキャップを備えているとよい。
本発明は、液体を保持する容器に向けられている。そして上記課題を解決するために、本発明の容器は、水平面上に直立させた第1の状態において上端に口栓を備える。前記口栓は、球体と、第1の係止部と、第2の係止部とを含む。球体は、当該容器の傾きに応じて、口栓本体の内部にある第1の空間内を自重により移動する。第1の係止部は、前記第1の状態において、前記球体の下方に位置して隙間なく前記球体を係止し、当該容器内の液体が保持されている第2の空間と前記第1の空間とを遮断する。第2の係止部は、前記第1の状態において、前記球体の上方に位置し、当該容器を傾けた第2の状態において、隙間を残して前記球体を係止して、当該容器内に保持されている液体の外部への流出を許す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の口栓を用いれば、保存中において高い密閉性が得られるとともに、使用中であっても、容器をテーブルの上に普通に置いておくだけで、容器内の空間と外気とが遮断されるので、香りが抜けにくい等内容物の劣化を抑制することができる。さらに、口栓の内部に球体があるので、球体の大きさ等を調整することにより内容物の排出量を適度に規制することができる。また球体が、容器の傾きに応じて口栓の内部を自重により移動するので、特有の振動や音を発し、普通の口栓とは全く異なった質感が得られるため、ユーザに対して高級な印象を与えることができる。
また、容器を使用しない時に、インナーキャップを取り付けると、容器の傾きに関係なく容器内の空間と外気とが2重に遮断されるので、保存中の内容物の劣化を大幅に抑制することができる。
特に酒類の容器において、胴体部分に樹脂材料等を主原料とする軽量で嵩張らないものを用いたとしても、上記口栓を取り付ければ、ユーザに対して「安い酒」という印象を与えることがなくなり、逆に高級な印象を与えて売上向上に貢献することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る容器の外観を示す図
【図2】図1に示す容器を中心軸Xを通る任意の面で半分に切断したときの断面を示す図
【図3】オーバーキャップ240を取り外したときの口栓周辺の断面を示す図
【図4】インナーキャップ230を取り外したときの口栓周辺の断面を示す図
【図5】容器1を傾けたときの、図2と同様の断面を示す図
【図6】図1に示す容器を、使用状態において真上から見た図
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る容器の外観を示す図である。
図2は、図1に示す容器を中心軸Xを通る任意の面で半分に切断したときの断面を示す図である。
図3は、オーバーキャップ240を取り外したときの口栓周辺の断面を示す図である。また図4は、インナーキャップ230を取り外したときの口栓周辺の断面を示す図である。
図5は、容器1を傾けたときの、図2と同様の断面を示す図である。
図6は、図1に示す容器を、使用状態(オーバーキャップ240とインナーキャップ230とを取り外した状態)において真上から見た図である。
【0010】
容器1は、液体を保持するための入れ物であり、図2に示すように、水平面上に直立させた状態(以下「直立状態」と記す)において、下方に位置するボトル部100と、上端に位置する口栓部200とから構成される。
ボトル部100は、インナーボトル110、及び外装紙120を有する。
インナーボトル110は、ボトル部100の胴体部分にあたり、液体(以下「内容物130」と記す)を保持することができ、例えばPET等の樹脂材料を主原料とする嵩張らず軽量な材質でつくられており、アルミナ、シリカ、及びDLC(ダイアモンドライクカーボン)等を蒸着させて密閉性を高めたものが好ましい。なお、ここではインナーボトル110は嵩張らず軽量な材質としているが、本実施形態は特に口栓部200に特徴があるので、どの様な容器であっても十分に効果が得られる。
外装紙120は、内容物の名称等が印刷されたラベルであり、図1に示すようにインナーボトル110の外周をぐるりととり巻いてもよいし、インナーボトル110の一部に張り付けてもよい。
【0011】
口栓部200は、球体210、封止栓付き注ぎ口部220、インナーキャップ230、及びオーバーキャップ240を有する。
球体210は、ガラス製の球であり、容器1の傾きに応じて、封止栓付き注ぎ口部220の内部にある第1空間250内を自重により移動する。なお、球体210は、ガラス製に限られず、有る程度重量がある球体であればよいので、例えば金属、セラミック、樹脂、及び鉱物等の球であってもよい。
封止栓付き注ぎ口部220は、ガラス製の口栓本体であり、インナーボトル110の開口部分に固定され、球体210を内部の空間内において移動可能、かつ外部に出ないように係止する。なお、球体210は、ガラス製に限られず、例えば樹脂性、及び金属性であってもよいし、複数の素材を組み合わせて製造してもよい。特に、開口部分よりも大きな球体210を第1空間250内に入れなければならないので、例えば、封止栓付き注ぎ口部220を上下のパーツに分けて形成し、球体210を下パーツの中央に入れた状態で上パーツを組み合わせて、上パーツと下パーツとを勘合、もしくは接着する等の方法を用いて製造する必要がある。従って、上パーツと下パーツとをそれぞれの用途に適した異なる素材で製造することが好ましい。
【0012】
ここで封止栓付き注ぎ口部220は、直立状態において球体210の下方に位置する第1係止部221、及び直立状態において球体210の上方に位置する第2係止部222を備える。
第1係止部221は、容器1内(インナーボトル110内)の内容物130が保持されている第2空間140と第1空間250とを連結する開口部分を有し、直立状態において、隙間なく球体210を係止して開口部分が塞がれ、第2空間140と第1空間250とを遮断する。ここで、図5に示すように、容器1を傾けた状態(以下「傾斜状態」と記す)においては、球体210が移動して第1係止部221と球体210との間に隙間が生じ、第2空間140と第1空間250とは遮断されない。
【0013】
第2係止部222は、第1空間250と外気とを連結する開口部分を有し、直立状態においては球体210と接触せず、傾斜状態においては隙間を残して球体210を係止して、内容物130の流出を許す。本実施形態では、第2係止部222には、開口部分の内周付近に複数の突起223を設け、容器1を大きく傾けても球体210と第2係止部222との間の隙間が塞がらないようにしている。また図6に示すように、突起223は3個有るが、突起の個数はこれに限られず、また、突起ではなく窪み等であってもよい。要するに、第2係止部222の開口部分の内周に、複数の凸部、又は複数の凹部を有し、傾斜状態において、球体210と第2係止部222との間に、内容物130の流路と、空気孔とが形成されればよい。
【0014】
インナーキャップ230は、開封前や容器1を使用しない時に取り付けられ、球体210を、第2の止部222の側から第1係止部221に向かって押圧して、容器1の傾きに関係なく、球体210と第1係止部221とを隙間なく密着させて、第2空間140と第1空間250とを遮断させるとともに、第1空間250と外気とを遮断する。なお、インナーキャップ230には、取り付けた際に勝手に外れないように、封止栓付き注ぎ口部220の一部に引っ掛かる爪を付けてもよい。
オーバーキャップ240は、開封前に取り付けられており、インナーキャップ230の上から封止栓付き注ぎ口部220のほぼ全体を覆い、封止栓付き注ぎ口部220の外周との間を隙間なく密着させ、容器内の空間と外気とを3重に遮断し、さらに密閉性を高める。なお、オーバーキャップ240には、インナーキャップ230と同様に、取り付けた際に勝手に外れないように、封止栓付き注ぎ口部220の一部に引っ掛かる爪を付けてもよい。
【0015】
なお、保存のためにはインナーキャップ230があれば足りるので、オーバーキャップ240は必ずしも必要ではない。また、使用時にはインナーキャップ230は使用しないので、長期的な保存を要しない場合やいつでも使用できるように食卓等に常備しておく場合等においては、インナーキャップ230も必ずしも必要ではない。
また、本実施形態では口栓部200とボトル部100との接続にスクリューキャップ方式を採用している。この様に口栓部200をボトル部100から取り外しが可能な構造にしておくことにより、内容物を使い切った後は、口栓部200が付いていない同様の内容物が充填された詰め替え用のボトルを購入して、これに使用済の口栓部200を付け替えて再利用することができる。さらに、口栓部200を再利用するにあたり、自分専用の口栓として特別仕様のものを準備しておき、これを飲食店にキープしたボトルに付け替えながら継続的に使用するといった利用形態が想定できる。このように自分専用の口栓を継続して使用することによりユーザに満足感を与えることができるので、新規にボトルをキープする顧客やボトルのキープを継続する顧客が増加して、売り上げの向上に貢献することが期待される。
【0016】
また、口栓部200のボトル部100との接続部分を、他の一般的なボトル等の接続部分と接続可能な形状にして互換性を持たせ、かつ取り外しが可能な構造にしておくことにより、内容物を使い切った後は、口栓部200を他のボトル等に付け替えて再利用することもできる。特に口栓部200は内容物の流路中に球体があり、球体の大きさ等を調整することにより内容物の排出量を適度に規制することができるため、例えば調理油や調味料等のボトルに取り付ければ、内容物の排出量を適度に規制することができ、使い勝手がよくなる。
また、口栓部200が複数の素材を組み合わせて製造されている場合には、口栓部200を取り外しが可能な構造にするとともに、廃棄方法が異なる素材単位で容易に分解が可能な構造にしておくことにより、分別廃棄が容易に行えるようにすることが好ましい。
【0017】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る口栓を用いれば、保存中、及び使用中における内容物の劣化を抑制することができる。例えば、使用中においては、容器をテーブルの上に普通に置いておくだけで、容器内の空間と外気とが遮断されるので、内容物の劣化を抑制することができる。また、インナーキャップを取り付けると、容器の傾きに関係なく容器内の空間と外気とが2重に遮断されるので、保存中の内容物の劣化を大幅に抑制することができる。さらに、製造出荷時には、オーバーキャップがされているのでバージン性が保たれる。また使用中においては、球体が容器の傾きに応じて口栓の内部を自重により移動するので、特有の振動や音を発し、従来の口栓とは全く異なった質感が得られるため、ユーザに対して高級な印象を与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の口栓は、あらゆる液体の商品の容器に用いることができる。特に高い密閉性を有するので、吟醸酒、大吟醸酒、本格焼酎、及び焼酎(乙類)等の特有の芳香を持っている高価な酒類用の容器に適している。さらに内容物の排出量を適度に規制することができるので、調理油や調味料等の容器にも適している。
【符号の説明】
【0019】
1 容器
100 ボトル部
110 インナーボトル
120 外装紙
200 口栓部
210 球体
220 封止栓付き注ぎ口部
221 第1係止部
222 第2係止部
223 突起
230 インナーキャップ
240 オーバーキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する容器に用いられ、前記容器を水平面上に直立させた第1の状態において、前記容器の上端に位置する口栓であって、
前記容器の傾きに応じて、口栓本体の内部にある第1の空間内を自重により移動する球体と、
前記第1の状態において、前記球体の下方に位置して隙間なく前記球体を係止し、前記容器内の液体が保持されている第2の空間と前記第1の空間とを遮断する第1の係止部と、
前記第1の状態において、前記球体の上方に位置し、前記容器を傾けた第2の状態において、隙間を残して前記球体を係止して、前記容器内に保持されている液体の外部への流出を許す第2の係止部とを備えることを特徴とする、口栓。
【請求項2】
前記第2の係止部は、
開口部分の内周付近に、複数の凸部、又は複数の凹部を有し、前記第2の状態において、前記球体との間に、前記液体の流路と、空気孔とが形成されることを特徴とする、請求項1に記載の口栓。
【請求項3】
当該口栓は、さらに、
前記容器を使用しない時に、前記球体を、前記第2の係止部の側から前記第1の係止部に向かって押圧して、前記容器の傾きに関係なく、前記球体と前記第1の係止部とを隙間なく密着させて、前記第2の空間と前記第1の空間とを遮断させるとともに、前記第1の空間と外気とを遮断するインナーキャップを備えることを特徴とする、請求項1に記載の口栓。
【請求項4】
水平面上に直立させた第1の状態において上端に口栓を備え、液体を保持する容器であって、
前記口栓は、
当該容器の傾きに応じて、口栓本体の内部にある第1の空間内を自重により移動する球体と、
前記第1の状態において、前記球体の下方に位置して隙間なく前記球体を係止し、当該容器内の液体が保持されている第2の空間と前記第1の空間とを遮断する第1の係止部と、
前記第1の状態において、前記球体の上方に位置し、当該容器を傾けた第2の状態において、隙間を残して前記球体を係止して、当該容器内に保持されている液体の外部への流出を許す第2の係止部とを含むことを特徴とする、容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111508(P2012−111508A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261430(P2010−261430)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】