説明

液体用紙容器の殺菌方法およびそれを用いた液体用紙容器および殺菌装置

【課題】スリーブを短時間で殺菌し、殺菌後の包装材料、特にポリエチレンフィルムの酸化劣化による変色がなく、異臭の発生を低減させた放射線殺菌方法を提供することにある。
【解決手段】板紙を基材層とした積層体で、ブランクを形成し、該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成し、次に四角筒状スリーブを形成し、該四角筒状スリーブの底部を成型して紙容器を形成し、該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成し、該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌し、該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填し、密封された液体用紙容器の殺菌方法であって、
前記スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブが放射線により放射線殺菌されることを特徴とする液体用紙容器の殺菌方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラルウォーター、コーヒー、ジュースなどの飲料やスープなどの液体食品を無菌充填する液体用紙容器の殺菌方法に関するものである。特に液体用紙容器を形成するスリーブの殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品を無菌充填する方法は、無菌環境下で充填することにより、低温充填が可能であり、その結果、内容物の味、香りなどの変化を最低限に抑えながら、長期保存が可能になるという利点を有している。
【0003】
無菌充填方法の基本的な考え方は、無菌処理された液体用紙容器を用いて、無菌の環境下で無菌処理された液体食品を充填包装することである。
【0004】
無菌の環境は、充填包装機内部を加熱、殺菌剤などで殺菌処理し、更にクリーンエアを導入し、外気と遮断することにより充足されるものである。
【0005】
無菌充填方法は、殺菌処理されたブランクまたはスリーブを、無菌の環境下にある無菌充填包装機内に供給し、底部が成型され紙容器の内面を過酸化水素により殺菌し、その後殺菌処理した液体食品を充填する無菌充填方法が広く使用されている。
【0006】
また、ブランクまたはスリーブを殺菌処理する方法として、光殺菌としては、紫外線(UV)殺菌、ガス殺菌としては、エチレンオキサイドガス(EOG)殺菌、放射線殺菌としては、ガンマー戦線殺菌、電子線(EB)殺菌、また過酸化水素殺菌などが使用されている。
【0007】
また光殺菌である紫外線殺菌では、従来から広く使用されている。連続して処理が可能で、ガス殺菌のエチレンオキサイドガスの残留ガス、放射線殺菌の包装材料の酸化劣化などのような問題がない。しかし、より短時間で確実な殺菌、短時間高効率殺菌が求められている。
【0008】
光殺菌の中で、パルス光殺菌による無菌充填方法の提案がある(特許文献1)。これはポリエチレンテレフタレート樹脂からなる透明プラスチックボトルをパルス光殺菌し、液体食品を充填する無菌充填方法である。
【0009】
ガス殺菌では、エチレンオキサイドガスの毒性が強いため、残留ガスの問題がある。エチレンオキサイドガスの排気に長い時間を必要とする。
【0010】
また過酸化水素による殺菌では、過酸化水素が包装材料の内面全てに行き届かない(殺菌ムラ)問題がある。また過酸化水素の乾燥後でも内面のフィルムに吸着する問題がある。包装材料の性能低下を防ぐために、過酸化水素の吸着、浸透を防ぐ提案がある(特許文献2)。
【0011】
この提案は、ポリエチレンテレフタレートフィルムに無機酸化物を蒸着し、ガスバリア性を向上させた蒸着フィルムを積層している。
【0012】
放射線殺菌であるガンマー線殺菌および電子線殺菌は、常温での処理が可能である。殺菌ムラがなく、包装形態を選ばない特徴がある。しかし放射線自体が強いために、包装材
料のポリエチレンフィルムの変色、異臭を発生させるなどの問題がある。特に包装材料のポリエチレンフィルムは、空気中の酸素の存在下では酸化劣化が起き易い。特に紫外線、放射線、熱などが切っ掛けとなって始まる。よって酸化防止剤が含まれているのが一般的である。また酸化防止剤の種類によっても変色を起こしたり、異臭を発生させたりすることもあるので、予め放射線処理をすることにより、酸化劣化からくる変色、異臭を確認した後、材料の選定をしているのが現状である。
【0013】
耐放射線性に優れたポリプロピレン組成物の提案がある、特に放射線照射後の物性、変色が抑制され、異臭の少ないシートの提案である(特許文献3)。
【0014】
この提案は、プロピレンシートの中に、リン酸系酸化防止剤、ヒンダードアミン系化合物、ステアリン酸化合物を配合したものである。あくまでもプロピレンシートでの効果である。ポリエチレンフィルムには配合比、厚みのバラツキ、前もって放射線処理での確認など管理上の問題がある。
【0015】
以上から、スリーブを短時間で殺菌が可能で、かつ殺菌後の包装材料、特にポリエチレンフィルムの酸化劣化による変色がない、かつ異臭の発生の少ない殺菌方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003―72719号公報
【特許文献2】特開2005―231042号公報
【特許文献3】特開2007―231036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、背景技術の問題に鑑みて、スリーブを短時間で殺菌可能で、殺菌後の包装材料、特にポリエチレンフィルムの酸化劣化による変色がなく、異臭の発生を低減させた放射線殺菌方法を提供することにある。特に殺菌されたスリーブから形成される無菌充填可能な液体用紙容器の殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、発明者らは鋭意検討を行い、本発明を完成した。
【0019】
本発明の請求項1に係る発明は、板紙を基材層とし、少なくとも、ポリエチレン層(外面)/基材層/ガスバリア層/ポリエチレン層(内面)が順次積層された積層体で、
ブランクを形成し、
該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成し、
該スリーブを起こし、四角筒状スリーブを形成し
該四角筒状スリーブの底部を成型して紙容器を形成し、
該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成し
該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌し
該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填し、
密封された液体用紙容器の殺菌方法であって、
前記スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、
該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブが放射線により放射線殺菌されることを特徴とする液体用紙容器の殺菌方法である。
【0020】
本発明の請求項2に係る発明は、前記放射線殺菌が、電子線による電子線殺菌であることを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器の殺菌方法である。
【0021】
本発明の請求項3に係る発明は、前記包装袋内が、真空吸引、窒素置換のいずれか、または真空吸引および窒素置換されることを特徴とする請求項1または2記載の液体用紙容器の殺菌方法である。
【0022】
本発明の請求項4に係る発明は、前記包装袋が、少なくともガスバリア基材層とシーラント層からなり、該ガスバリア基材層がアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムのいずれかを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体用紙容器の殺菌方法である。
【0023】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌方法により形成されたことを特徴とする液体用紙容器である。
【0024】
本発明の請求項6に係る発明は、板紙を基材層とし、少なくとも、ポリエチレン層(外面)/基材層/ガスバリア層/ポリエチレン層(内面)が順次積層された積層体で、
ブランクを形成する手段と、
該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成する手段と、
該スリーブを起こし、四角筒状スリーブを形成する手段と
該四角筒状のスリーブの底部を成型して紙容器を形成する手段と、
該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成する手段と
該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌する手段と、
該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填する手段と、
を備えた密封された液体用紙容器の殺菌装置であって、
前記スリーブを形成する手段の後に、
該スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、
該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブを放射線により放射線殺菌する手段を備えたことを特徴とする液体用紙容器の殺菌装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の液体用紙容器の殺菌方法は、液体用紙容器を形成するためのスリーブを酸素濃度5%以下の環境下で電子線殺菌するものである。積層体の中のポリエチレンフィルムの酸化劣化を低減し変色を抑え、かつ異臭の発生を低減させた殺菌方法である。電子線照射による殺菌のため、残留ガスの問題、殺菌ムラの問題がなく連続して短時間で高効率の殺菌をすることができる。殺菌処理されたスリーブを無菌充填包装機内に供給し、該スリーブの底部を成型、液体用紙容器を形成し、該液体用紙容器の内面を過酸化水素にて殺菌し、殺菌処理された液体食品を無菌充填する。無菌充填され、密封された液体用紙容器ができる。スリーブの電子線殺菌を含めた液体用紙容器の殺菌方法である。
【0026】
本発明の請求項1によれば、板紙を基材層とし、少なくとも、ポリエチレン層(外面)/基材層/ガスバリア層/ポリエチレン層(内面)が順次積層された積層体で、
ブランクを形成し、
該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成し、
該スリーブを起こし、四角筒状スリーブを形成し
該四角筒状スリーブの底部を成型して紙容器を形成し、
該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成し
該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌し
該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填し、
密封された液体用紙容器の殺菌方法であって、
前記スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、
該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブが放射線により放射線殺菌されることを特徴とする。本発明は、液体用紙容器を形成するためのスリーブに電子線を照射して放射線殺菌するのである。特に放射線殺菌する環境を酸素濃度5%以下で行うことにより、積層体、特にポリエチレン層(ポリエチレンフィルム)の酸化劣化を低減させることができる。
【0027】
スリーブを酸素濃度5%以下で放射線殺菌させるために、該スリーブを複数纏めて包装袋に梱包する。包装袋内の空気の酸素濃度を5%以下に調整してから密封して、該包装袋の外側から放射線にて放射線殺菌する。包装袋内の酸素濃度を調整することで可能である。
【0028】
ポリエチレンフィルムは、酸素の存在下、放射線のエネルギーが切っ掛けとなって酸化劣化が促進される。酸素濃度を5%以下の環境下で放射線殺菌することは、ポリエチレンフィルムの酸化劣化を低減することができる。よって空気の環境下で放射線殺菌するより酸化劣化を低減させることができる。特に酸化劣化による起こる異臭については、脂肪族炭化水素(C〜C13)、アルデヒド(C〜C)、ケトン(C〜C)、カルボン酸(C〜C)の揮発性物質の生成によるものである。酸素濃度が5%以下の環境下で放射線殺菌することで、酸化劣化を低減することができる。無酸素環境下であれば、更に酸化劣化を低減することができる。また酸素濃度が5%以上になると酸化劣化が進み、上記異臭成分の生成が増大してくる。
【0029】
このように殺菌されたスリーブを無菌充填包装機に供給する。無菌充填包装機では、供給されたスリーブから四角筒状スリーブを形成し、該四角筒状スリーブの底部を成型し紙容器を形成する。該紙容器に口栓を装着して、口栓付き紙容器を形成し、該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素により殺菌、乾燥して、殺菌処理された液体食品を無菌充填する。無菌充填された液体用紙容器ができる。スリーブを電子線殺菌する無菌充填可能な液体用紙容器の殺菌方法である。
【0030】
本発明の請求項2によれば、前記放射線殺菌が、電子線による電子線殺菌であることを特徴とする。放射線殺菌には、ガンマー線殺菌と電子線殺菌がある。ガンマー線殺菌でも可能であるが、ガンマ―線は高い透過力を示すため、ポリエチレンフィルムやその他の材料にも酸化劣化を起こし易く、かつコバルト60を線源とするために照射装置の管理を十分に行う必要がある。電子線は電子加速器より発せられるために、照射装置の管理は、ガンマー線照射装置より比較的に容易である。また透過力は、ガンマー線に比べて低い。しかし本発明のスリーブを複数殺菌するレベルでは十分の殺菌能力がある。電子線線量としては5〜60kGyが好ましい。
【0031】
本発明の請求項3によれば、前記包装袋内が、真空吸引、窒素置換のいずれか、または真空吸引および窒素置換されることを特徴とする。包装袋内の酸素濃度を5%以下の環境にするためには、袋内の空気を低減する必要がある。真空吸引することによって空気を低減するように吸引して密封すればよい。真空包装機を用いて行いことができる。また窒素置換しても可能である。空気を窒素置換して、酸素濃度を低減すればよい。また真空吸引と窒素置換を併用してもよい。適宜方法を決めればよい。
【0032】
本発明の請求項4によれば、、前記包装袋が、少なくともガスバリア基材層とシーラント層からなり、該ガスバリア基材層がアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムのいずれかを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特
徴とする。スリーブが梱包された包装袋は、包装袋の外側から電子線照射されてスリーブが殺菌される。電子線照射される前に、密封された包装袋が日数保管されると、大気中の酸素が包装材料を透過して包装袋内に入り込む。酸素濃度が5%以上になることもある。よって包装袋にガスバリア基材層を形成している。このガスバリア基材層は、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムのいずれかを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることができる。またアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムのいずれかを蒸着したポリアミドフィルムも使用できる。前記包装袋を密封するためにシーラント層を貼り合わる。シーラント層としては、ポリエチレンフィルムを使用できる。密封する包装袋としては、酸素透過度を2cc/m/day以下(JIS−K7126B法での測定)であることが好ましい。
【0033】
本発明の請求項5によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌方法により形成されたことを特徴とする。電子線殺菌されたスリーブを使用し形成された液体用紙容器である。電子線殺菌されたスリーブを無菌充填包装機内に供給し、該スリーブの底部を成型、液体用紙容器を形成し、該液体用紙容器の内面を過酸化水素にて殺菌し、殺菌処理された液体食品を無菌充填する。無菌充填され密封された液体用紙容器ができる。ポリエチレン層(ポリエチレンフィルム)の酸化劣化による変色や異臭が低減された液体用紙容器ができる。
【0034】
本発明の請求項6によれば、板紙を基材層とし、少なくとも、ポリエチレン層(外面)/基材層/ガスバリア層/ポリエチレン層(内面)が順次積層された積層体で、
ブランクを形成する手段と、
該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成する手段と、
該スリーブを起こし、四角筒状スリーブを形成する手段と
該四角筒状のスリーブの底部を成型して紙容器を形成する手段と、
該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成する手段と
該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌する手段と、
該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填する手段と、
を備えた密封された液体用紙容器の殺菌装置であって、
前記スリーブを形成する手段の後に、
該スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、
該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブを放射線により放射線殺菌する手段を備えたことを特徴とする。スリーブを酸素濃度が5%以下の環境下で電子線殺菌し、それを使用して口栓付き紙容器を形成し、該口栓付き紙容器を更に過酸化水素にて殺菌し無菌充填する液体用紙容器の殺菌装置である。ポリエチレン層(ポリエチレンフィルム)の酸化劣化による変色や異臭の発生を低減した殺菌装置である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の液体用紙容器の製造工程のフローの一例を示す説明図である。
【図2】液体用紙容器を形成するためのブランクの一例を示す説明図である。
【図3】図2のブランクから折り畳んで形成したスリーブの一例を示す説明図である。
【図4】図3のスリーブを電子線殺菌している状態の一例を示す説明図である。
【図5】図4のスリーブを四角筒状の紙容器にした一例を示す説明図である。
【図6】図5の四角筒状の紙容器の底部を成型した状態の紙容器の一例を示す説明図である。
【図7】図6の紙容器に口栓を装着した口栓付き紙容器の一例を示す説明図である。
【図8】図7の口栓付き紙容器を過酸化水素殺菌している状態の一例を示す説明図である。
【図9】図8の口栓付き紙容器に殺菌処理された液体食品を無菌充填している一例を示す説明図である。
【図10】本発明の無菌充填方法で作成した液体用紙容器(ゲーブルトップ型)の一例を示す説明図である。
【図11】本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【図12】包装袋の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態を、ゲーブルトップ型液体用紙容器を一例として説明する。
【0037】
図1は、本発明の液体用紙容器の製造フローの一例を示す説明図である。液体用紙容器の製造フロー200を説明する。積層体30からブランク1を形成し、その背シール110を接着し折り畳まれたスリーブ2を形成し、該折り畳まれたスリーブ2を電子線殺菌し、それを無菌充填機に供給する。供給された折り畳まれたスリーブ2を起こし、四角筒状スリーブ3を形成し、該四角筒状スリーブ3の底部を成型して紙容器4を形成し、該紙容器4に口栓5を装着して口栓付き紙容器6を形成する。該口栓付き紙容器6の内面を過酸化水素23で殺菌し、殺菌処理された液体食品10を無菌充填し、密封された液体用紙容器100を形成する。点線状の枠210内に示すは、無菌充填機の工程を示す。
【0038】
図2は、液体用紙容器を形成するためのブランクの一例を示す説明図である。図1は紙容器の外面を表すブランク1である。ブランク1は、背シール110と左側パネル120、表パネル130、右側パネル140、裏パネル150からなり、各パネルには、それぞれ側壁部C、該側壁部の上部には頂部B、下部には底部Dが形成されている。左側パネル120、右側パネル140の頂部には折り曲げ線を介して折り込みできるようになっている。また頂部Bの上部にトップシール部Aがそれぞれ形成されている。また頂部には口栓を装着するための孔Fが形成されている。
【0039】
図3は、図2のブランクから折り畳んで形成したスリーブの一例を示す説明図である。ブランク1の背シールパネル110の外面を裏パネル150の内面と接着し、スリーブ2を形成したものである。この状態では、折り畳まれた状態を示している。
【0040】
図4は、図3のスリーブを電子線殺菌している状態の一例を示す説明図である。折り畳まれたスリーブ2は、酸素濃度5%以下の環境下で包装袋7に密封されている。これをベルトコンベアで電子線照射する殺菌室21に搬入される。電子線20は、電子加速器を線源としている。電子線20は、電子線照射口22より電子線20が照射され、決められた線量までスリーブ2に均一に照射される。その後ベルトコンベア搬出される。
【0041】
図5は、図4のスリーブを四角筒状紙容器にした一例を示す説明図である。電子線殺菌されたスリーブ2を無菌環境下に設置された無菌充填機に供給する。無菌充填機で、折り畳まれたスリーブ2を起こし、四角筒状紙容器3にする。この時は、頂部。底部は開口されている。
【0042】
図6は、図5の四角筒状紙容器の底部を成型した状態の紙容器の一例を示す説明図である。図5の四角筒状紙容器6の底部Dを成型して立体にした紙容器4である。(図6−1)は、寝かせた状態の斜視図である。(図6−2)は、正立させた状態の斜視図である。
【0043】
図7は、図6の紙容器4に口栓5を装着した口栓付き紙容器6の一例を示す説明図である。孔Fに口栓5を装着し、口栓付き紙容器6を形成する。
【0044】
図8は、図7の口栓付き紙容器を過酸化水素殺菌している状態の一例を示す説明図であ
る。過酸化水素23の加熱ミストをミスト照射口24より口栓付き紙容器6の内面に吹き付ける。その後、過酸化水素ミストを加熱乾燥する。
【0045】
図9は、図8の口栓付き紙容器に殺菌処理された液体食品を無菌充填している一例を示す説明図である。殺菌処理された口栓付き紙容器6に、殺菌処理された液体食品10をを無菌充填している一例である。液体食品タンク11の充填ノズル12から液体食品10を一定量充填する。
【0046】
図10は、本発明の無菌充填方法で作成した液体用紙容器(ゲーブルトップ型)の一例を示す説明図である。液体食品10を無菌充填後にトップシール部Aがシールされ、密封された液体用紙容器100が形成される。一例としてゲーブルトップ型の液体用紙容器100を示したが、トップシール部Aをフラットトップ型にしてもよい。
【0047】
図11は、本発明の積層体の一例を示す断面図である。本発明のブランクを形成する積層体30の一例を示す断面図である。ポリエチレン層(外面)31/基材層32/接着層34/ガスバリア層33/接着層34/ポリエチレン層(内面)35が順次積層された積層板からなっている。絵柄印刷などを使用する場合は、ポリエチレン層31(外面)に印刷層Gを設けてもよい。
【0048】
図12は、包装袋の一例を示す断面図である。包装袋7は、少なくともガスバリア基材層8とシーラント層9からなる。内容物の突き刺し性向上が必要になればポリアミドフィルムを基材層または中間層に用いてもよい。
【0049】
更に詳しく実施するための形態を説明する。
【0050】
ブランク1を構成する積層体30は、板紙を基材層32とし、通常坪量が200〜500g/m、密度0.6〜1.1g/cmが使用できる。ミルク原紙などの板紙が使用できる。また基材層32の表面に、15〜30μmのポリエチレンフィルムを貼り合わせる。ポリエチレンフィルムは、押出し機にて押出しラミネートすることで可能である。ポリエチレン層(外面)31を形成する。
【0051】
基材層32の裏面に、接着層34としてポリエチレンを介して、ガスバリア層33を積層する。ガスバリア層33は、無機酸化物を蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムを使用できる。接着層34のポリエチレンと無機酸化物の蒸着面を相対するように貼り合わせる。次に該ポリエチレンテレフタレートフィルム面に、接着層34としてポリエチレンを介してポリエチレン層(内面)35であるポリエチレンフィルムを貼り合わせる。ポリエチレンフィルム層(内面)35は、30〜100μmの厚さのものを使用することができる。接着層34としてのポリエチレンならびにポリエチレン層(内面)35も押出し機にてフィルム化することができる。
【0052】
接着層34に使用するポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用できる。その他エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系樹脂も使用できる。これらの樹脂を押し出し機でフィルム化して接着させる。
【0053】
ポリエチレン層(内面)35は、HDPE、LDPE、MDPE、LLDPEが使用可能で単層もしくは多層でもよい。好ましくLLDPEが好ましい。異臭を低減させるには、酸化防止剤の選択も必要になる。できればフェノール系酸化防止剤を含まないフィルムの方が好ましい。
【0054】
ガスバリア層33としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムにアルミニウム箔を貼り合わせたもの、無機酸化物を蒸着したものが使用できる。無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムなどが使用できる。またエチレンビニルアルコール共重合体のフィルムを用いてガスバリア層としても可能である。この場合は、前もってバリア性能他の物性も確認する必要がある。
【0055】
積層体30の構成として、例えば、ポリエチレン層(外面)/基材層/接着層/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着層/ポリエチレン層(内面)、ポリエチレン層(外面)/基材層/接着層/酸化珪素蒸着/ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着層/ポリエチレン層(内面)、ポリエチレン層(外面)/基材層/接着層/酸化マグネシウム蒸着/ポリエチレンテレフタレートフィルム/接着層/ポリエチレン層(内面)、などを挙げることができる。
【0056】
この積層体30を、ロール状またはシート状にする。その後容器形状に合わせ、折り曲げ線、外形抜きなどを一般的な公知の方法で加工し、ブランク1を形成する。
【0057】
次にブランク1の背シール110の表面と裏パネル150の裏面とを熱シールし、折り畳んだスリーブ2を作成し、複数纏めて包装袋7に梱包する。この時に、包装袋内の酸素濃度を5%以下にするために、真空吸引、窒素置換のいずれか、または真空吸引および窒素置換して調整する。酸素濃度が調整され密封された包装袋は、電子線殺菌されるまで保管される場合がある。包装袋7は、少なくともガスバリア基材層8とシーラント層9から形成されているために、大気中の酸素をバリアしている。よって電子線殺菌されるまで酸素濃度が5%以上にならないようにすることができる。
【0058】
次に包装袋の外側から電子線照射して折り畳まれたスリーブを電子線殺菌する。包装袋内の酸素濃度は5%以下に保たれた状態で殺菌する。また包装袋にも電子線耐性が必要になる。出来れば包装袋のシーラント層、即ちポリエチレンフィルムから異臭が生じないように材料を選択する方が好ましい。できればフェノール系酸化防止剤を含まないポリエチレンフィルムの方が好ましい。
【0059】
包装袋を開封し、殺菌され折り畳まれたスリーブ2を、無菌環境下にある無菌充填包装機に供給し、底部を熱シールして成型し閉塞して、口栓3を装着し、口栓付き紙容器6を形成し、該口栓付き紙容器6を過酸化水素23で殺菌した後、殺菌処理された液体食品10を無菌充填し、トップシール部Aを熱シールして、無菌充填された液体用紙容器100ができる。切り妻屋根型に成型することにより、ゲーベルトップ型紙容器ができる。フラットトップ型に成型すれば、フラットトップ型紙容器ができる。
【0060】
積層体のポリエチレン層(外面)31の表面には、絵柄や文字を表現することができる。印刷方式としては、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷など通常の方式を用いることができる。表面層にはコロナ処理などして印刷インキとの密着性を向上させるとよい。
【0061】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【実施例1】
【0062】
坪量350g/mの板紙の表面に、ポリエチレンを20μm押出しラミネートした。
【0063】
次にガスバリア層を有する酸化珪素30nmを蒸着したポリエチレンテレフタレートフ
ィルム12μmと、直鎖状低密度ポリエチレン60μmを、ポリエチレンを20μmにてサンドポリして貼り合わせた。直鎖状低密度ポリエチレン60μmは、予め押出し法により作成したものを使用した。
【0064】
次に板紙の裏面と中間層の酸化珪素蒸着面とを、EMMA30μmにてサンドポリして貼り合わせた。
【0065】
次に作成した積層板を、罫線、抜き加工を行い、1L用、70角(縦方向の折れ線の間隔)のゲーブルトップ型紙容器を形成するためのブランクを作成した。
【0066】
このブランクの背シールの表面と裏パネルの裏面とを熱シールし、折り畳んだスリーブを作成し、複数纏めて包装袋に密封した。この時の包装を、包装袋内の空気を窒素置換して酸素濃度5%にて密封包装した。包装袋はガスバリア基材層として酸化アルミニウム蒸着ポリアミドフィルム12μmとシーラント層として低密度ポリエチレン40μmを貼り合わせた構成のものを使用した。この包装袋を段ボールケースに梱包して電子線線量15kGyにて照射してスリーブを殺菌した。
【0067】
殺菌されたスリーブを開封して、無菌環境下にある無菌充填包装機に供給し、四角筒状のスリーブ、底部を成形した紙容器、口部を装着した口栓付き紙容器を順次形成した。
【0068】
次に35%過酸化水素を加熱気化させ、ミストを作成し口栓付き紙容器の内面に吹き付け、その後乾燥した。
【0069】
該口栓付き紙容器に殺菌された蒸留水を一定量無菌充填し、トップシールして密封された液体用紙容器を作成した。
【実施例2】
【0070】
包装袋内の空気を窒素置換の替わりに、真空吸引し、電子線殺菌の替わりにガンマー線殺菌した以外は実施例1の如く行い液体用紙容器を作成した。尚ガンマ―線線量も同様に15kGyで行った。
【実施例3】
【0071】
包装袋内の空気を真空吸引して、窒素置換した以外は実施例1の如く行い、液体用紙容器を作成した。
【0072】
<比較例1>
包装袋内の空気を窒素置換しない以外は、実施例1の如く行い液体用紙容器を作成した。
【0073】
<比較例2>
包装袋内の空気を窒素置換して酸素濃度を10%とした以外は、実施例1の如く行い液体用紙容器を作成した。
【0074】
実施例、比較例で作成した液体用紙容器を、常温で3ヶ月間保存した。同時にガラス瓶に同様の蒸留水を充填し、常温で3ヶ月間保存した。ガラス瓶の蒸留水との臭いについて官能評価を三点識別法にて行った。パネラー10名、○:有意差なし、×:有意差あり。
【0075】
【表1】

実施例では、包装袋内の酸素濃度を5%以下にすることにより、異臭について有意差が認められなかった。比較例では、有意差が認められた。ポリエチレン(内面)の酸化劣化が低減したためである。実施例、比較例ともに無菌保証レベルは、10−6SALで良好
であった。
【符号の説明】
【0076】
1 ブランク
2 スリーブ
3 四角筒状紙容器
4 紙容器
5 口栓
6 口栓付き紙容器
7 包装袋
8 ガスバリア基材層
9 シーラント層
10 液体食品
11 液体食品タンク
12 充填ノズル
20 電子線
21 殺菌室
22 電子線照射口
23 過酸化水素
24 ミスト照射口
30 積層体
31 ポリエチレン層(外面)
32 基材層
33 ガスバリア層
34 接着層
35 ポリエチレン層(内面)
100 液体用紙容器(ゲーブルトップ型)
110 背シール
120 左側パネル
130 表パネル
140 右側パネル
150 裏パネル
200 液体用紙容器の製造フロー
210 点線状の枠
A トップシール部
B 頂部
C 側壁部
D 底部
E 罫線
F 孔
G 印刷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙を基材層とし、少なくとも、ポリエチレン層(外面)/基材層/ガスバリア層/ポリエチレン層(内面)が順次積層された積層体で、
ブランクを形成し、
該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成し、
該スリーブを起こし、四角筒状スリーブを形成し
該四角筒状スリーブの底部を成型して紙容器を形成し、
該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成し
該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌し
該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填し、
密封された液体用紙容器の殺菌方法であって、
前記スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、
該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブが放射線により放射線殺菌されることを特徴とする液体用紙容器の殺菌方法。
【請求項2】
前記放射線殺菌が、電子線による電子線殺菌であることを特徴とする請求項1記載の液体用紙容器の殺菌方法。
【請求項3】
前記包装袋内が、真空吸引、窒素置換のいずれか、または真空吸引および窒素置換されることを特徴とする請求項1または2記載の液体用紙容器の殺菌方法。
【請求項4】
前記包装袋が、少なくともガスバリア基材層とシーラント層からなり、該ガスバリア基材層がアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムのいずれかを蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体用紙容器の殺菌方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の殺菌方法により形成されたことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項6】
板紙を基材層とし、少なくとも、ポリエチレン層(外面)/基材層/ガスバリア層/ポリエチレン層(内面)が順次積層された積層体で、
ブランクを形成する手段と、
該ブランクから背シールを接着し折り畳まれたスリーブを形成する手段と、
該スリーブを起こし、四角筒状スリーブを形成する手段と
該四角筒状のスリーブの底部を成型して紙容器を形成する手段と、
該紙容器に口栓を装着して口栓付き紙容器を形成する手段と
該口栓付き紙容器の内面を過酸化水素で殺菌する手段と、
該口栓付き紙容器の中に殺菌処理された液体食品を無菌充填する手段と、
を備えた密封された液体用紙容器の殺菌装置であって、
前記スリーブを形成する手段の後に、
該スリーブが、複数包装袋に密封され、該包装袋内の空気の酸素濃度が5%以下に調整され、
該包装袋の外側から放射線が照射され、前記スリーブを放射線により放射線殺菌する手段を備えたことを特徴とする液体用紙容器の殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−18535(P2013−18535A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155552(P2011−155552)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】