説明

液体用紙容器

【課題】紙容器を構成する積層体に用いられる接着層を低分子量成分の副生成物が生成しがたい組成物とすることによって、内容液の風味変質を防止した液体用紙容器。
【解決手段】バリア層の接液面側に設けた接着層として、主剤としてのポリオール成分と硬化剤としてのポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型接着剤であって、主剤としてのポリオール成分中にダイマー脂肪酸をジカルボン酸の主成分とするポリエステルポリオールとジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含有するポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンポリオールを含有する組成物を用いて、ドライまたはニーラムラミネート法によってシーラント層とラミネートした積層体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物の風味が変わらない液体用紙容器に関する。特に接液面にバリア性基材を積層した紙を主体とする積層体を使用した液体用紙容器において接着剤由来成分が溶出することの少ない紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品などを包装する包装材料として、例えば、紙層/ポリエチレン層/アルミ箔層/ポリエステル層/シーラント層のような各層が積層されてなる積層体を用いた紙容器が広く用いられてきた。
この積層体のポリエステル層とシーラント層との貼り合わせは、通常はポリエステルフィルムからなるポリエステル層に二液硬化型ポリウレタン系などのドライラミネート用接着剤を塗布してから、シーラント層を押出ラミネートすることにより行っていた。そして、このような積層体は適度のラミネート強度やガスバリア性などを有しており、食品や医薬品などを包装するための包装材料として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、従来のドライラミネート用接着剤を使用している液体用紙容器においては、殺菌処理を目的とした加熱充填により内容液側に溶出してくる接着剤由来成分が多いために内容液そのものの風味が変質してしまうという問題があった。
特に内容物の飲料成分としてアルコールを含有する場合にはこの接着剤由来成分の溶出による充填や保存の過程での風味変質の問題は深刻であった。
【0004】
一方、包装材料により包装される内容物には、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものも多くあり、これらの内容物を包装すると、接着層を構成する接着剤に悪影響を及ぼし、積層体におけるラミネート強度の低下を招いたり剥離が生じることがあった。
【0005】
このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われており、アルカリ性の高い内容物に対する耐性を向上させ、さらには各種プラスチックフィルムに対する接着力を向上させた接着剤などが提案されている。
例えば、特許文献1には、有機ポリオール化合物、有機ポリイソシアネート化合物、鎖延長剤を反応して得られるNH基およびNH基を有するポリウレタン樹脂であって、ポリウレタン樹脂の分子量が数平均分子量で2000〜20000の範囲にあり、アミン価が5〜30mgKOH/gの範囲にある前記ポリウレタン樹脂と、有機ポリイソシアネート化合物またはそれらの変性体とを配合することを特徴とする接着剤組成物が提案されている。
【0006】
包装する内容物が湿布薬や浴用剤などの場合、これらには揮発性物質が含まれているので、前述したような構成の積層体を包装材料として使用し、これらの内容物を包装した時、揮発性物質の強い浸透力によってポリエステルフィルムからなるポリエステル層とシーラント層間のラミネート強度が経時的に低下し、その結果デラミネーション(剥離)を引き起こすという問題があった。
【0007】
これに対して、特許文献5では、基材上に、一級アミングラフトアクリル系ポリマーであるアミン含有ポリマーからなる第1接着層と、ジイソシアネートモノマー、または、ジイソシアネートモノマーのアダクトタイプ、ビューレットタイプ、あるいはトリマー(イソシアヌレート)タイプの誘導体のいずれかからなる第2接着層との二層構成の接着層を設け、さらに接着層を構成する第2接着層上にはシーラント層を設けてある積層体が提案
されている。
【0008】
また、特許文献3には、基材の上に、1級アミングラフトアクリル系ポリマーとウレタン変性エポキシ樹脂を、該1級アミングラフトアクリル系ポリマーのアミンと該ウレタン変性エポキシ樹脂中のエポキシの混合当量が、アミン:エポキシ=1.0:(0.5〜1.0)で混合してなる第1接着層が形成され、該第1接着層上にイソシアネート化合物からなる第2接着層が形成され、該第2接着層上にシーラント層が押出しラミネート法又は熱ラミネート法により積層され、前記第2の接着層と前記第1の接着層とが架橋反応して形成された架橋反応物で前記基材と前記シーラント層が強固に接着されている積層体が提案されている。
【0009】
特許文献4には、基材の上に少なくとも接着層とシーラント層がこの順序で設けられていて、接着層がイソシアネート化合物からなる積層体が、特許文献2には、主剤よりも硬化剤の配合割合の方が大きく、また1μm以下の非常に薄くて緻密な接着層が提案されている。接着層の強度低下に対するこのような対策は同時に接着層に含まれる低分子量物質の溶出を抑制する付随的な効果もあると考えられるが、逆に接着層中の低分子量物質を増加させる効果も考えられる。
【0010】
二液硬化型ウレタン接着剤として用いられる一般的なポリエステルポリオールやポリエステルポリウレタンポリオールを主剤とした接着層にはその重合や製造段階に於いて加熱反応で生じる低分子量の副生成物成分が残存していることが多く、ドライラミネート、養生硬化後に溶出物試験によってしてしばしば検出されていた。
従来は、接液面から紙容器の材料に含まれる低分子物質が溶出することが内容物の香りや味に影響することを防止するための対策として、環状ポリオレフィンなどからなる吸収層をシーラント層に用いるなどの対応が行われてきた。
【0011】
特許文献6、特許文献7には接着剤由来の低分子量物質の溶出が少なく、時には重合触媒およびシランカップリング剤等からの分解残留物も少ないドライもしくはノンソルベントラミネーション用接着剤として、主剤が、ダイマー脂肪酸類とそのエステル化合物とグリコール類との反応によりできるポリエステルレジンでなるドライラミネーション用接着剤が提案されている。
【0012】
特許文献8には高ガスバリア性を維持しつつ、包装材のヘッドスペース分の酸素を酸素吸収剤で消費させ、高ガスバリア層中のガスバリア性被膜層の性能を水蒸気吸収剤で消費させ、ボイル・レトルト直後から高ガスバリア性を発現させる包装材として、ベースフィルム層を含む多層ガスバリア性層とポリオレフィン樹脂からなるシーラント層との層間に、酸素吸収剤又は/及び水蒸気吸収剤を含むポリオレフィン樹脂単体又はポリオレフィン樹脂と環状ポリオレフィンとのブレンドによるポリオレフィン樹脂層を積層し、多層ガスバリア性層とポリオレフィン樹脂層との層間にドライラミネーション用接着剤層を積層した包装材が提案されている。
【0013】
低分子量成分の溶出防止を試みたこれらの提案はたとえばアルコール飲料を内容物とする液体用紙容器のような苛酷な条件に適用するには工程及び効果の点で無理があった。
そこで、本発明者は、紙容器を構成する積層体の内容物に近い接液側でバリア層とシーラント層を接着する際に用いられる接着層の原料モノマーを低分子量成分の副生成物が生成しがたい組み合わせとすることによって、接着強度を落とすことなく、殺菌処理のための加熱充填等により内容液側に溶出してくる接着剤由来成分を減少させて内容液の風味変質を防止することが出来る液体用紙容器とすることが可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−130615号公報
【特許文献2】特開2006−187908号公報
【特許文献3】特許4492269号
【特許文献4】特開2005−335374号公報
【特許文献5】特許4306278号
【特許文献6】特開2002−155260号公報
【特許文献7】特開2004−238050号公報
【特許文献8】特開2004−136479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、液体用紙容器の構成部材から容器内の内容物に対する構成成分の溶出を低減することを目的としている。
その課題とするところは、紙容器を構成する積層体の内容物に近い接液側でバリア層とシーラント層を接着する際に用いられる接着層を低分子量成分の副生成物が生成しがたい組成物とすることによって、内容液側に溶出してくる接着剤由来成分を減少させて内容液の風味変質を防止することが出来る液体用紙容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、容器外側となる紙基材上面に少なくとも熱可塑性樹脂層を積層し、前記紙基材下面に少なくとも、バリア層、接着層、シーラント層を順次に積層してなる積層体により成形された液体用紙容器において、
バリア層の接液面側に設けた接着層に用いる接着剤として、主剤としてのポリオール成分と硬化剤としてのポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型接着剤であって、
主剤としてのポリオール成分中にダイマー脂肪酸をジカルボン酸の主成分とするポリエステルポリオールとジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含有するポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンポリオールを含有するラミネート用接着剤組成物を用いて、
ドライラミネート法またはニーラムラミネート法によってシーラント層とラミネートした積層体を用いたことを特徴とする液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0017】
このラミネート用接着剤組成物を用いることによって接着された複合フィルムから、内容物中に溶出する環状ウレタン化合物あるいは環状エステル化合物等の接着剤に由来する低分子成分の生成が抑えられることでアルコール飲料等の内容物の変化を防ぎ風味を保つことが出来る。
【0018】
本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物では、とくにこのような環状ウレタン化合物と環状エステル化合物の生成濃度が低いため、従来のエステル系ウレタン接着剤に比較して、複合フィルムの内容物中への、接着剤に起因する低分子量化合物の溶出が極端に少なくなる。
そのため、食品や飲料等が充填されている場合、特にアルコール飲料の容器として、その食品や飲料等が本来有する味やにおい等の味覚的な特徴を損わせることがすくない包装材料を製造するためのラミネート用接着剤組成物として好適に使用することが可能となった。
【0019】
また、本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物では、ポリオール成分中にポリエステルポリウレタンポリオールを含有している場合には、そのポリエステルポ
リウレタンポリオールを得るためのポリイソシアネートが、ポリエステルポリオール中の未反応グリコールが少ないジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネートであることが好ましい。
また、本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物では、ポリエステルポリオールが、ダイマー脂肪酸を含有していることが好ましく、さらには、ポリエステルポリオールが、フタル酸および主鎖炭素数6〜7のグリコールを含有していることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の液体用紙容器に用いる積層体の概略の構成例を示す説明図である。(A)はバリア層に蒸着フィルムを用いた場合、(B)はアルミニウム箔を用いた場合のそれぞれ断面を示す。
【図2】本発明の液体用紙容器の容器形状の例(ゲーベルトップ型)を示す説明図である。(A)は形状外観、(B)はブランクスを示す。
【図3】本発明の液体用紙容器の容器形状の例(フラットトップ型)を示す説明図である。(A)は形状外観、(B)はブランクスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の液体用紙容器に用いる積層体の一例の概略の断面構成を示している。図1(A)はバリア層に蒸着フィルムを用いた場合、図1(B)はバリア層にアルミニウム箔を用いた場合のそれぞれ断面を示す
【0022】
図1(A)に示した積層体は、容器外側となる紙基材(1)の上面に熱可塑性樹脂層(2)を積層し、下面にバリア層(3)、接着層(4)、シーラント層(5)を順次に積層してなる積層体である。外側の熱可塑性樹脂層(2)の表面には印刷インキ層(6)が必要に応じて設けられている。
また、紙基材(1)の下面とバリア層(3)は熱可塑性樹脂層(7)を介して積層されており、接着層(4)とシーラント層(5)は熱可塑性樹脂層(8)を介して積層されている。
【0023】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成する紙基材(1)としては、通常、カップ原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量150g/m〜500g/mの範囲のカップ原紙がよく用いられる。
【0024】
本発明の液体用紙容器に用いる積層体を構成するバリア層(3)としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックの延伸または未延伸のフィルムや、各種プラスチックフィルムにアルミニウムなどの金属や酸化珪素などの金属酸化物の薄膜を蒸着した厚みが5μm〜30μmの範囲の透明蒸着加工フィルム、さらに厚みが5μm〜50μm程度のアルミ箔などが適用できる
それらの一方の面にコロナ処理などの必要な表面処理がなされていてその上に接着層が安定的に形成できるようになっていれば、いずれのタイプのフィルムでもバリア層基材として使用可能である。
【0025】
接着層(4)は、前記のバリア層(3)の上に、例えば上記の接着剤組成物をその固形分割合を0.05〜5wt%程度の割合で含む塗工液を塗工して設けることが出来る。この接着層(4)は薄層であることが好ましく、具体的にはその乾燥時の厚みが5μm以下1μm以上の薄層となるように設ければよい。
【0026】
他方、接着層(4)上に設けられるシーラント層(5)は、ポリエチレン系樹脂やポリ
プロピレン系樹脂などからなる層である。
具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより設けられる。中では高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンが望ましい。
シーラント層は単層で形成されていてもよく、多層でも構わない。厚みは特に限定はないが30μm〜100μmの範囲が通常である。
【0027】
容器外側の熱可塑性樹脂層(2)はシーラント層と類似したポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などからなる単層もしくは多層の層である。厚みは5μmから50μmの範囲が通常用いられる。
容器外側の熱可塑性樹脂層(2)の表面に必要に応じて設けられる印刷インキ層(6)は周知のインキを用いてグラビア印刷等の方法で施すことが出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。
熱可塑性樹脂層としてポリオレフィン樹脂を用いる場合には、樹脂層に対するインキの密着を良くするために通常は印刷前に印刷機上でインラインでコロナ処理等の易接着処理を表面に行う。
【0028】
また、紙基材(1)の下面とバリア層(3)は熱可塑性樹脂層(7)を介して積層されており、接着層(4)とシーラント層(5)は熱可塑性樹脂層(8)を介して積層されている。
これらの熱可塑性樹脂層は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂が使用出来、具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより押出し法により設けられる。
熱可塑性樹脂層(7)と(8)の厚みは特に限定はないが通常は5μm〜50μmの範囲の厚みの層が用いられる。
【0029】
図1(B)は本発明の液体用紙容器に用いる積層体の他の一例の概略の断面構成を示したものである。
図1(A)に示した例ではバリア層として蒸着プラスチックフィルムを用いたが図1(B)の例ではバリア層としてバリア性の高いアルミニウム箔を用い中間層としてポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックの非蒸着フィルムを用いた構成例を示した。
【0030】
図1(B)の積層体は、容器外側となる紙基材(1)の上面に熱可塑性樹脂層(2)を積層し、下面にアルミニウム箔からなるバリア層(3)、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロンなどのプラスチックの非蒸着フィルムからなる中間層(10)、接着層(4)、シーラント層(5)を順次に積層してなる積層体である。
外側の熱可塑性樹脂層(2)の表面には印刷インキ層(6)が必要に応じて設けられている。
図1(B)に示した例では、紙基材(1)の下面とアルミニウム箔からなるバリア層(3)が熱可塑性樹脂層(7)を介して積層されており、さらに接着層(9)と中間層(10)と接着層(4)熱可塑性樹脂層(8)シーラント層(5)がこの順序で積層されている。
なお、接着層(4)と接着層(9)のうちで少なくとも接液側の接着層(4)が本発明に係る接着剤組成物を用いた層であればよく、もちろん両方の層が本発明に係る接着剤組成物を用いた層であっても構わない。
【0031】
以上、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体について説明したが、これらの積層体は上記のような構成のものに限定されるものではなく、液体用紙容器としての用途を考慮し、容器として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0032】
本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物は、主剤としてのポリオール成分と硬化剤としてのポリイソシアネート成分とを含んでいる。
硬化剤としてのポリイソシアネート成分としては、ポリウレタンの製造に通常用いられるポリイソシアネー卜でよく、例えば、ポリイソシアネー卜単量体およびその誘導体等が挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物等の脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼンもしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネー卜等が挙げられる。
【0034】
また、ポリイソシアネート単量体の誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の二量体、三量体などや、例えば、上記したポリイソシアネート単量体と、水、多価アルコール、炭酸ガスなどとの反応によりそれぞれ得られる、ビウレット変性体、アロファネート変性体、オキサジアジントリオン変性体などが挙げられる。これらポリイソシアネート成分は、1種類に限定されることはなく、必要に応じて2種以上併用してもよい。
【0035】
主剤としてのポリオール成分としては、ポリウレタンの製造に通常用いられるポリオールのうちで、好ましくは、ポリエステルポリウレタンポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリウレタンポリオールは、ポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート単量体とを、公知のウレタン化反応の条件で反応させることによって得ることができる。
また、ポリエステルポリオールは、公知のエステル化反応、すなわち、多塩基酸と多価アルコールとの縮合反応や、あるいは、多塩基酸のアルキルエステルと多価アルコールとのエステル交換反応により得ることができる。
【0037】
ポリエステルポリオールの合成に用いる多塩基酸およびそのアルキルエステルとしては、好ましくは、ダイマー酸や、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのフタル酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物等が挙げられる。
なお、ダイマー酸は、通常、工業用原料として入手し得る、主成分が炭素数18の不飽和脂肪酸の2量体からなるものであって、その他に、モノマー酸およびトリマー酸を含むものであり本発明に用いる接着剤組成物には特に好ましい。
【0038】
また、ポリエステルポリオールの合成に用いる多価アルコールとしては、好ましくは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3'−ジメチロールヘプタン、2−メチル−1,8−オクタンジオール等のグリコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、もしくはそれらの混合物が挙げられる。
【0039】
これら多塩基酸および多価アルコールのうち、多塩基酸としては、とりわけ、ダイマー酸が好ましく、また、多価アルコールとしては、グリコールが好ましい。
【0040】
多塩基酸としてダイマー酸、多価アルコールとしてグリコールが好ましい理由として、ダイマー酸とグリコールとの反応で生成するダイマー酸とグリコールの環状エステル化合物がフィルムを介して溶出しないことが挙げられる。
【0041】
このようなポリエステルポリオールを得るためのエステル化反応の条件は、公知の条件でよく、得られるポリエステルポリオールは、その数平均分子量が、約500〜10000、好ましくは、約1000〜5000である。
【0042】
また、得られるポリエステルポリオール中の未反応グリコールが、少ないことが好ましい。多いと、ポリイソシアネー卜成分と反応させる場合、あるいはポリエステルポリウレタンポリオールを得る場合において、そのポリエステルポリオールとポリイソシアネー卜単量体とを反応させた時に、ポリイソシアネート単量体の種類によっては、未反応グリコールと反応して環状ウレタン化合物を生成し、これがフィルムを介して溶出する場合がある。
なお、このようなポリエステルポリオール中の未反応グリコール含量は、例えば、ガスクロマトグラフ法(水素炎イオン化検出器)によって求めることができる。ポリエステルポリオール中の未反応グリコールを除去するには、例えば、エステル化反応後に未反応グリコールを減圧除去するなど、公知の除去操作を行なえばよい。
【0043】
主剤としてのポリオール成分として用いるポリエステルポリウレタンポリオールは、上記のポリエステルポリオールと、上記のポリイソシアネート単量体とを、公知のウレタン化反応の条件で反応させることによって得ることができる。
ポリエステルポリオールと反応させるポリイソシアネート単量体は、適宜、好適なポリイソシアネート単量体を選択することが出来るが、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−
ジイソシアネートを用いることが好ましい。ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネートまたはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートは、溶出低分子量物質であるグリコールとの環状ウレタン化合物を生成しにくいため、ポリエステルポリオール中の未反応グリコール含量を気にしなくてもよい。
【0044】
そして、上記の硬化剤としてのポリイソシアネート成分と主剤としてのポリオール成分とを配合することにより、本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物を得ることができる。
ポリイソシアネート成分とポリオール成分との好ましい組み合わせとしては、例えば、ポリイソシアネート単量体の誘導体とポリエステルポリウレタンポリオールが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物には、シランカップリング剤、リンの酸素酸またはその誘導体等の接着性付与を目的とした添加剤、および硬化反応を調節するための公知の触媒等を、ラミネート用接着剤としての組成物の性能を阻害しない範囲において配合してもよい。
【0046】
このようにして得られるラミネート用接着剤組成物は、紙容器を構成する積層体のフィルムをラミネート加工によって製造するときの接着剤として使用される。
ラミネート加工は、例えば、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を有機溶剤で希釈して配合して塗工液を調製した後、溶剤塗工型ドライラミネータによって、この接着剤組成物をフィルム表面に塗布し、溶剤を揮散させた後、単層の押出し樹脂層や複層の共押出し樹脂層の接着面を貼り合わせ、その後常温または加温下において養生して硬化させる方法などにより行なうことができる。
通常、塗布量は、溶剤型の場合溶剤揮散後で、約1.0〜5.0g/mの範囲であることが好ましい。
【0047】
また、ラミネートされるフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルム、例えば、アルミニウム等の金属蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルム、アルミニウム等の金属箔等が挙げられる。
また、その厚みは、例えば、プラスチックフィルムの場合には、5〜50μm、アルミニウム箔の場合には5〜20μmの範囲であることが好ましい。
【0048】
本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物は、このようにしてラミネートされた複合フィルムから抽出された抽出水中の、接着剤に起因する環状ウレタン化合物の濃度が、従来のエステル系ウレタン接着剤に比較して極端に少ない。
また、本発明の液体用紙容器に用いるラミネート用接着剤組成物は、このようにしてラミネートされた複合フィルムから抽出された抽出水中の、接着剤に起因する環状エステル化合物の濃度が極端に少ない。
【0049】
溶出物質の定量はガスクロマトグラフの水素炎イオン化検出器で、標準物質として例えばジブチルフタレートを使用して、そのジブチルフタレート濃度への換算値として求めればよく、例えば、ジブチルフタレートの検出限界を抽出水中の環状ウレタン化合物および環状エステル化合物の濃度に換算した値が、0.5ppbである場合には、環状ウレタン化合物および環状エステル化合物が検出されるか否かによって、ジブチルフタレート換算値で0.5ppb以下であるか否かを判定することができる。
【0050】
本発明に係るラミネート用接着剤組成物を用いた場合には、このようにして測定される環状ウレタン化合物と環状エステル化合物の濃度が検出限界以下であるため、従来のエス
テル系ウレタン接着剤に比較して、複合フィルムから内容物中への、接着剤に起因する低分子量化合物の溶出が極端に少ない。
そのため、食品や飲料等が充填されている場合にも、その食品や飲料等が本来有する匂いや味を損わせることがなく、これらを含む各種の産業用品を包装する包装材料を製造するためのラミネート用接着剤組成物としても好適に使用することができる。
【0051】
また、このような構成の積層体は、例えば次のようにして作製できる。
すなわち作製方法の一つとしては、前記バリア層の無機化合物蒸着面にコロナ処理などの表面処理を行い、酢酸エチルに溶解した接着剤組成物を固形分割合が0.05〜5wt%、好ましくは0.1〜2wt%になるように調製した塗工液を押出ラミネートの塗工部において塗工して接着層を設ける。
その後に、この接着層上に、Tダイから押し出されるダイ下温度320℃の例えばポリエチレンなどからなるシーラント層を積層し、バリア層/接着層/シーラント層の三層からなる構成の積層体(内層フィルム)を得る方法が例示できる。
【0052】
また他の作製方法としては、前記バリア層の一方の面にインラインでコロナ処理を施した直後に、塗工装置の接着剤塗工部にて接着剤組成物を含む塗工液を塗工して接着層を形成させる一方、Tダイから押し出されるダイ下温度320℃の例えばポリエチレンなどからなるシーラント層の前記接着層と接する面にオゾン処理を適宜施して、しかる後に接着層を介してバリア層とシーラント層とを積層することにより、層間ラミネート強度がさらに向上し、各種の強浸透性内容物耐性にも優れる積層体(内層フィルム)を得る方法が挙げられる。
【0053】
このときのダイ下温度としては、250〜330℃が好ましい。250℃未満ではオゾン処理を施しても押出樹脂の酸化不足により層間ラミネート強度が不十分となり、330℃を超えると熱分解により押出樹脂の凝集力が低下し、その結果層間ラミネート強度が不十分となる。
また、このときのオゾン処理条件としては、5〜20mg/mが好ましい。5mg/m未満では押出樹脂の酸化不足により層間ラミネート強度が不十分となり、20mg/mを超えると過度の酸化により押出樹脂の凝集力が低下し、その結果層間ラミネート強度が不十分となる。
上記押出温度とオゾン処理条件を適宜組み合わせることによって、層間ラミネート強度がさらに向上した積層体を得ることができる。
【0054】
以上のような作製方法によれば、液体用紙容器の内層フィルムに用いる、バリア層とシーラント層とのラミネート強度が良好で、かつ接着層に起因する低分子量物質の内容物液体に対する浸透や溶出が少ない積層体を作製することができる。
【0055】
この内層フィルムとカップ原紙をポリエチレンの押出し加工により貼り合せて、カップ原紙の反対面に熱可塑性樹脂層を形成し、さらに熱可塑性樹脂層の表面にコロナ処理を行う。
次工程で印刷、ブランクス形状に打ち抜き加工を行い、さらに加熱溶着によりスリーブを作成する。具体的にはこの紙を基材とした積層体を容器の形状に合わせて所定の形状に打ち抜き、同時に折曲げ用の罫線を入れたブランクスとして成形する。そのブランクスを罫線に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を接着することによって本発明の液体用紙容器を製造することが出来る。
【0056】
たとえば図2(A)に示したゲーベルトップ型(屋根型)の液体用紙容器は図2(B)に示したブランクスから通常の方法で容易に製造することが出来る。
一般的な紙箱ブランクスを折り曲げて箱を形成する場合には、まず、ブランクス(B)
を給紙部から折りぐせ部に供給して折ぐせを付けた後、底折り部に供給して底板を内側に折込んで側板に重ねると共に、耳部を外側に折込む。
次に、糊付け部において、耳部の裏面側と接着フラップの表面側に接着材層をそれぞれ形成した後、残りの底板を内側に折り曲げて側板に重ねる。
次に、本折り部において、側板を折込んで一方の底板を他方の底板に折り重ねることにより、一方の底板の耳部の接着材層が他方の底板に接着すると共に、接着フラップの接着材層が側板に接着し、折り畳まれた状態の紙箱(スリーブ)を完成する。
【0057】
この状態での紙箱は接着部分の乾燥が完了していないので、圧着搬送部の上下一対の圧着ベルトにて紙箱を圧着しながら搬送して紙箱の接着を促進して成形を完了し、排出部によって次工程に排出される。
この折り畳まれた状態の紙箱に充填装置によってボトム成形後に内容物の充填と必要な部分の封止を行うことによって内容物の充填された容器を作成する。
図3(A)に示したフラット型の液体用紙容器も同様に図3(B)に示したブランクスから通常の方法で容易に製造することが出来る。
以下、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0058】
<実施例1>
主剤としてダイマー酸、ビフェニルジカルボン酸とプロパンジオール、ジメチロールブタン酸とジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートとのポリエステルウレタンレジンと硬化剤としてイソホロンジイソシアネートの三量体とトリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネート付加体をラミネート用接着剤組成物として用いた二液硬化型接着剤をドライラミネート用接着剤Aとして使用して以下の層構成の積層体を作成した。
【0059】
低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)/板紙(350g/m)/エチレン−メタクリル酸共重合体(20μm)/アルミナ蒸着ポリチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ドライラミネート用接着剤A(3g/m)/シーラント低密度ポリエチレン樹脂(60μm)。
【0060】
厚みが12μmのアルミナ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルムを使用し、その蒸着面にドライラミネート用接着剤Aを溶剤で希釈した塗工液をグラビアコート法で塗工して接着層を形成しながら、厚み60μmの低密度ポリエチレン樹脂を加工速度80m/minで共押出ラミネート法(ニーラムラミ)により押し出して前記接着層上にシーラント層として積層し、内層フィルムを得た。接着層の乾燥後の塗布量は3g/mであった。
【0061】
坪量350g/mのカップ原紙と上記内層フィルムを押出しラミネート法により貼り合わせして、容器外側となるカップ原紙の反対面に低密度ポリエチレン樹脂を20μmの厚みで押出してさらにその表面にコロナ処理を行った。
コロナ処理面に印刷を施し印刷寸法に合わせて、ゲーベルトップ型の柱状容器(図2B)となるようなブランクス形状に打ち抜き加工をし、さらに必要部分を加熱溶着により接着して折り畳まれた状態(スリーブ状態)の紙容器を得た。
さらに、充填工程に於いて、容器のボトム成形後に内容物として20%エタノール水溶液または蒸留水を充填してからトップ成形して充填済み容器を作成した。
【0062】
<比較例1>
ドライラミネート用接着剤AをTM−250HVとCAT−RT−86(以下接着剤Bと呼ぶ:東洋モートン社製)に変えたほかは実施例1と同様にして充填済み容器を作成した。
【0063】
<実施例2>
アルミナ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルムに代えてバリア層として厚さ20μmのアルミニウム箔を、中間層として二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以下の層構成としたほかは実施例1と同様にして充填済み容器を作成した。
低密度ポリエチレン樹脂層(15μm)/板紙(350g/m)/エチレン−メタクリル酸共重合体(20μm)/アルミニウム箔(20μm)/接着剤B(2g/m)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/ドライラミネート用接着剤A(3g/m)シーラント低密度ポリエチレン樹脂(60μm)。
<比較例2>
ドライラミネート用接着剤Aを接着剤Bに変えたほかは実施例2と同様にして充填済み容器を作成した。
【0064】
<実施例3>
アルミニウム箔と二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを接着する接着剤B(2g/m)をドライラミネート用接着剤A(2g/m)に代えたほかは実施例2と同様にして充填済み容器を作成した。
<比較例3>
ドライラミネート用接着剤Aを接着剤Bに変えたほかは実施例3と同様にして充填済み容器を作成した。
【0065】
上記の充填済み容器を40℃環境下で1ヶ月間保存後に内容物中への接着剤成分の溶出と内容物の味覚の変化の有無及び接着剤でラミネートした層構成間の接着強度について評価を行った。
【0066】
内容物中への接着剤成分の溶出の評価は、内容物として20%エタノール水溶液を用いた充填済み容器で行った。内容液に溶出してきた成分について、接着剤成分を溶媒で抽出、濃縮の上、ガスクロマトグラフ法(水素炎イオン化検出器)により測定を行ない、溶出物が認められた場合は、ガスクロマトグラフ質量分析装置でその構造を特定して接着剤由来成分かどうかの判断を行った。ここでは環状エステル化合物および環状ウレタン化合物等の接着剤由来成分の検出限界を基準に溶出の有無を判断した。
溶出試験の結果は実施例1、2、3では溶出が認められず、比較例1,2,3では溶出が認められた。
【0067】
内容物の味覚の変化の評価は、内容物として蒸留水を用いた充填済み容器で行った。実施例1と比較例1について、蒸留水を基準として味覚の変化の有無を3点識別法で評価を行った。
味覚試験の結果は実施例1では保存後の内容物の味覚の有意な差は認められなかったが比較例1では味覚の変化が認められた。
【0068】
接着剤でラミネートした層構成間の接着強度の評価は内容物として20%エタノール水溶液を用いた充填済み容器で行った。通常の引張試験機を用い幅15mmのT型剥離で引張速度300mm/minで行った結果の平均値(複数層の場合は最も低い層の平均値)を比較した。
接着強度の結果は実施例と比較例で殆ど変わらなかったが、比較例1ではやや低い結果が出た。数値は実施例1,2,3、比較例1,2,3の順に、5.2N、5.4N、5.1N、4.5N、5.3N、5.1Nであった。
比較例1の場合は接着剤でラミネートした層が接液側に近い単層であり、接着剤由来の成分の溶出も認められていることから他の場合に比べて接着強度が低下している可能性がある。
【0069】
結果から明らかなように本発明の液体用紙容器は、そのラミネート用接着剤によって接着された接着層から、溶出する接着剤由来成分の濃度が、従来の接着剤に比較して極端に少なく、そのため、食品や飲料等が充填されている場合にも、その食品や飲料等が本来有する味を損わせることがなく容器として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…紙基材
2…熱可塑性樹脂層
3…バリア層
4…接着層
5…シーラント層
6…印刷インキ層
7…熱可塑性樹脂層
8…熱可塑性樹脂層
9…接着層
10…中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器外側となる紙基材上面に少なくとも熱可塑性樹脂層を積層し、前記紙基材下面に少なくとも、バリア層、接着層、シーラント層を順次に積層してなる積層体により成形された液体用紙容器において、
バリア層の接液面側に設けた接着層に用いる接着剤として、
主剤としてのポリオール成分と硬化剤としてのポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型接着剤であって、
主剤としてのポリオール成分中にダイマー脂肪酸をジカルボン酸の主成分とするポリエステルポリオールとジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを含有するポリイソシアネートとを反応させることによって得られるポリエステルポリウレタンポリオールを含有するラミネート用接着剤組成物を用いて、
ドライラミネート法またはニーラムラミネート法によってシーラント層とラミネートした積層体を用いたことを特徴とする液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−71845(P2012−71845A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216717(P2010−216717)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】