説明

液体用紙容器

【課題】強浸透性内容物に対しても、接着強度が低下せず、成形充填時の熱溶着のためにバリア層とシーラント層の間に剥離が起きて、液漏れにつながる恐れのない液体用紙容器を提供する。
【解決手段】表樹脂層、紙層、バリア層、シーラント層が、この順番で積層されてなる包装材料から構成される液体用紙容器であって、バリア層が無機酸化物蒸着フィルムであり、蒸着層側に耐水性コート層を有し、耐水性コート層が、(a)すくなくとも1種以上のアルコキシドと、(b)ポリビニルアルコール系樹脂と、(c)エチレン・ビニルアルコール共重合体と、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーとを含有し、アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物の塗布膜であり、バリア層のシーラント層側に接着剤層が積層され、接着剤層が、2官能以上のイソシアネート基を有する、モノマーあるいはその誘導体であるイソシアネート化合物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用紙容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体用紙容器には、角柱形の胴部と平らな底部からなり、図3(A)のような天部がゲーベルトップ型(屋根型)の液体用紙容器、あるいは、図3(B)のような天部が平らなブリック型(レンガ型)の液体用紙容器、また、図3(C)のような天部の前方が傾斜部で後部が平らな液体用紙容器などがある。また、図3(D)のような底部に脚部を持つ紙カップ型のものや、あるいは正四面体型のものがある。
【0003】
紙を主な構成層とする液体用紙容器は、リサイクル性があり廃棄が容易であることから、牛乳、乳飲料、ジュース、お茶、コーヒー、スープ等の液体飲料、日本酒、焼酎等の酒類の包装に広く用いられている。
【0004】
近年、この液体用紙容器を非食品用に用いるようになってきた。しかし、食品と異なり、非食品の内容物には浸透性の強いものもあり、シーラント層を浸透してラミネート面を侵してデラミネーションを起こし、液漏れなど液体用紙容器としての機能が損なわれることがある。
【0005】
この現象を避けるために、液体用紙容器の層構成にいろいろな改良が行われている。例えば、液体入浴剤、ワイン、香辛料等のように強い浸透性を有する内容物の長期保管を目的とした液体用紙容器がある。
【0006】
この液体用紙容器は、最外層、紙基材層、第1接着樹脂層、樹脂フィルム層、アルミニウム箔層、第2接着樹脂層および最内層を順次積層した積層体からなり、アルミニウム箔層を構成するアルミニウム箔のミラー面が第2接着樹脂層側に向け、マット面が樹脂フィルム層側に向けて積層され、また、第1および第2接着樹脂層が、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、又は、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステル共重合体からなる紙容器があった(特許文献1)。
【0007】
一方、液体用紙容器にもちいる積層体に限られないが、揮発性成分や揮発性成分を含む各種強浸透性内容物が作用しても基材とシーラント層間の接着強度が低下しない積層体として、ポリエステル、ナイロンまたはポリプロピレンのいずれかからなる基材の上に少なくとも接着剤層とシーラント層がこの順序で設けられていて、接着剤層がイソシアネート化合物からなることを特徴とする積層体がある(特許文献2)。
【0008】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−137880号公報
【特許文献2】特開2005−335374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような積層体や紙容器を用いても、特に強浸透性内容物、例えば美容院などで用
いられるシステアミン塩酸塩を含有するカーリング液の包装には、バリア層とシーラント層の間の接着強度の低下が起こり、用いることができない。
【0011】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、強浸透性内容物に対しても、接着強度が低下せず、成形充填時の熱溶着のためにバリア層とシーラント層の間に剥離が起きて、液漏れにつながる恐れのない液体用紙容器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも、表樹脂層、紙層、バリア層、シーラント層が、この順番で積層されてなる包装材料から構成される液体用紙容器であって、前記バリア層が無機酸化物蒸着フィルムであり、蒸着層側に耐水性コート層を有し、該耐水性コート層が、(a)すくなくとも1種以上のアルコキシドと、(b)ポリビニルアルコール系樹脂と、(c)エチレン・ビニルアルコール共重合体と、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーとを含有し、前記アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物の塗布膜であり、前記バリア層の前記シーラント層側に接着剤層が積層され、該接着剤層が、2官能以上のイソシアネート基を有する、モノマーあるいはその誘導体であるイソシアネート化合物からなることを特徴とする液体用紙容器である。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、前記接着剤層が、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、のモノマー、または少なくともその1種以上からなる誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液体用紙容器は、強浸透性内容物に対しても、接着強度が低下せず、成形充填時の熱溶着のためにバリア層とシーラント層の間に剥離が起きて、液漏れにつながる恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の液体用紙容器の一例に用いる包装材料を模式的に断面で示した説明図である。
【図2】本発明の液体用紙容器の他の例に用いる包装材料を模式的に断面で示した説明図である。
【図3】液体用紙容器の形状の例を模式的に斜視で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の液体用紙容器の一例に用いる包装材料を模式的に断面で示した説明図である。図2は、本発明の液体用紙容器の他の例に用いる包装材料を模式的に断面で示した説明図である。
【0017】
本発明の一例の液体用紙容器に用いる包装材料100は、図1のように、表側より、表樹脂層1、紙層2、接着樹脂層3、バリア層4、接着剤層5、接着樹脂層6、シーラント層7よりなる積層体である。
【0018】
表樹脂層1は、低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンからなり、押し出し樹脂加工により、紙層2に直接設ける。この押し出し樹脂加工のときに紙層2の表面に火炎処理などの処理加工を行っても良い。
【0019】
また、表樹脂層1の低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンの外面に印刷
層を設けても良い。印刷層を設け場合は、押し出し樹脂加工の際に、コロナ処理などの処理を行うことが望ましい。
【0020】
またさらに、表樹脂層1の低密度ポリエチレンまたは直鎖状低密度ポリエチレンの外面にポリエチレンテレフタレートフィルムなどのニ軸延伸フィルムを積層しても良い。この場合で印刷層を設けるには、ニ軸延伸フィルムに裏印刷を行って設けることが、好ましい。
【0021】
紙層2としては、密度が0.6〜1.1の板紙が用いられる。特にミルク原紙と呼ばれるバージンパルプの紙を用いることが好ましい。また、液体用紙容器の大きさによって坪量は200g/m〜500g/mの紙が用いられる。
【0022】
接着樹脂層3は、紙層2とバリア層4の間をサンドイッチラミネーションにより接着する樹脂である。樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンメタクリル酸、エチレンエチルアクリレート、アイオノマー、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0023】
接着樹脂層3の厚さとしては、10μm〜60μmが好ましい。10μm未満では、充分な接着強度が得られない。接着強度を強くさせるため、紙層2やバリア層4にコロナ処理、オゾン処理、などの処理、あるいはアンカーコートを行うことができる。
【0024】
バリア層4は、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂の延伸フィルムに、アルミナ、あるいは、シリカを蒸着した無機酸化物蒸着フィルムで、蒸着層面に耐水性コート層を設けたものが用いられる。
【0025】
耐水性コート層は、(a)すくなくとも1種以上のアルコキシドと、(b)ポリビニルアルコール系樹脂と、(c)エチレン・ビニルアルコール共重合体と、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーとを含有し、アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物を塗布、乾燥して設けられている。
【0026】
耐水性コート層に用いるアルコキシドは、M(OR)n(但し、Mは、Si、Ti、Al、Zr、Snなどの金属、Rは、メチル、エチル、プロピルなどのアルキル基、nは、1、2、3・・・などの整数を表す)で表わされ、加水分解により水酸化物となり、脱水して酸化物になるものである。
【0027】
例えば(1)テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシランなどの、酸化ケイ素を形成可能なケイ素アルコキシド、(2)テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、メチルトリメトキシチタン、エチルトリエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、メチルトリイソプロポキシチタンなどの、酸化チタンを形成可能なチタンアルコキシド、(3)テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、メチルトリメトキシジルコニウム、メチルトリエトキシジルコニウム、メチルトリイソプロポキシジルコニウムなどの、酸化ジルコニウムを形成可能なジルコニウムアルコキシド、(4)トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、メチルジイソプロポキシアルミニウムなどの、酸化アルミニウムを形成可能なアルミニウムアルコキシド、(5)テトラメトキシマグネシウム、テトラエトキシマグネシウム、テトライソプロポキシマグネシウムなどの、酸化マグネシウムを形成可能なマグネシウムアルコキシド、が使用可能である。特にテトラエトキシシランが好ましく用いられる。
【0028】
蒸着フィルムの延伸フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好まし
く用いられ、また、延伸フィルムの厚みは6〜25μmが好ましく、蒸着層の厚みは5〜100nmが好ましい。
【0029】
また、耐水性コート層に用いるポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られた樹脂であり、アセチル基が数十%残存している、いわゆる部分ケン化ポリビニルアルコール樹脂でも、アセチル基が数%いか残存していない完全ケン化ポリビニルアルコール樹脂でもよい。あるいは、水酸基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよい。
【0030】
シランカップリング剤としては、二元反応性を有する有機官能性シランモノマー類を使用することができ、例えば、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス(β−ヒドロキシエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルシリコーンの水溶液等の1種またはそれ以上を使用することができる。
【0031】
上記のようなシランカップリング剤は、その分子の一端にある官能基、通常、クロロ、アルコキシ、または、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基(SiOH)を形成し、これが金属または無機酸化物の蒸着膜を構成する金属、あるいは、金属または無機酸化物の蒸着膜表面上の活性な基、例えば、水酸基等の官能基と何らかの作用により、例えば、脱水縮合反応等の反応を起こして、金属または無機酸化物の蒸着膜表面上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、更に、シラノール基自体の金属または無機酸化物の蒸着膜表面に吸着や水素結合等により強固な結合を形成する。
【0032】
他方、シランカップリング剤の他端にある、ビニル、メタクリロキシ、アミノ、エポキシ、あるいは、メルカプト等の有機官能基が、そのシランカップリング剤の薄膜の上に形成される他の層、例えば、接着剤層、紙層、その他を構成する物質と反応して強固な結合を形成し、更に、上記の接着剤層等を介して、紙層等が強固に密接着して、そのラミネート強度を高める。このようにして、本発明においては、ラミネート強度の高い強固な積層構造を形成可能とするものである。
【0033】
本発明においては、シランカップリング剤が有する無機性と有機性とを利用し、無機酸化物の蒸着膜と、接着剤層、その他の層を介して、紙層、プラスチック層等との密接着性を向上させ、これにより、そのラミネート強度を高めるものである。
【0034】
接着剤層5には、2官能以上のイソシアネート基を有する、モノマーあるいはその誘導体であるイソシアネート化合物を用いる。2官能以上のイソシアネート基を有するモノマーとしては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのモノマーが用いられる。
【0035】
また、2官能以上のイソシアネート基を有するモノマーの誘導体であるイソシアネート化合物としては、上記のモノマーのアダクト、イソシアヌレート、ビューレットのタイプの誘導体が使用できる。
【0036】
接着樹脂層6は、接着層5を設けたバリア層4をシーラント層7にサンドイッチラミネーションにより接着する樹脂である。樹脂としては、接着樹脂層3と同様に、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンメタクリル酸、エチレンエチルアクリレート、アイオノマー、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0037】
接着樹脂層6の厚さとしては、10μm〜60μmが好ましい。10μm未満では、充分な接着強度が得られない。接着強度を強くさせるため、バリア層4にコロナ処理、オゾン処理、などの処理を行うことができる。
【0038】
シーラント層7には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの樹脂フィルムが使用可能である。特に、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、さらには、密度0.925以下、MI4以上のものが好ましく使用できる。また、厚みとしては、30μm〜100μmが好ましく使用できる。Tダイ法やインフレ法で成膜したフィルムを用いることができる。
【0039】
本発明の一例の液体用紙容器に用いる包装材料100では、上記のように、表側より、表樹脂層1、紙層2、接着樹脂層3、バリア層4、接着剤層5、接着樹脂層6、シーラント層7よりなる積層体としたが、本発明の他の例の液体用紙容器に用いる包装材料200として、表樹脂層1から接着剤層5までは、包装材料100と同様にして、接着樹脂層6を用いずに、シーラント層7を接着剤層5に押し出し加工により積層して設けても良い。
【0040】
シーラント層7として押し出し加工する樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの樹脂を用いることができる。厚みとしては、30μm〜100μmが好ましく使用できる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0042】
<実施例1>
あらかじめシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmのシリカ蒸着面に(a)すくなくとも1種以上のアルコキシドと、(b)ポリビニルアルコール系樹脂と、(c)エチレン・ビニルアルコール共重合体と、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーとを含有し、アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物の塗布膜である耐水性コート層を塗布により設け、バリア層4となるバリアフィルムを作成した。
【0043】
2軸押し出し機で、板紙(坪量400g/m)の表面に表樹脂層1となる低密度ポリエチレン20μmを押し出し、板紙の裏面に、押し出した低密度ポリエチレン15μmを介してバリアフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルム面を貼り合せ、低密度ポリエチレン20μm(表樹脂層1)/板紙(坪量400g/m)(紙層2)/低密度ポリエチレン15μm(接着樹脂層3)/耐水性コート層を塗布したシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm(バリア層4)の層構成の中間製品を得た。
【0044】
次に別の押し出し機で、この中間製品の耐水性コート層を塗布したシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの耐水性コート層面に、接着剤層5を介して、接着樹脂層6の低密度ポリエチレン15μmを押し出し、サンドイッチラミネーションにより、シーラント層となる直鎖状低密度ポリエチレンフィルム60μmを積層し、さらに表樹脂層1の表面に表面絵柄層を印刷により設けて積層体を得た。
【0045】
この積層体を打ち抜くと同時に、折罫を押罫で設けブランクを作成し、図3のような天部がゲーベルトップ型になる、実施例1の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0046】
実施例1では、接着剤層5として、トリレンジイソシアネートのアダクトタイプの誘導体を用い、塗布量(ドライ)は、1.0g/mであった。
【0047】
<実施例2>
接着剤層5として、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプの誘導体を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0048】
<実施例3>
接着剤層5として、キシリレンジイソシアネートのアダクトタイプの誘導体と、イソホロンジイソシアネートのアダクトタイプの誘導体を重量比1:1で混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0049】
<実施例4>
接着剤層5として、イソホロンジイソシアネートのヌレートタイプの誘導体を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0050】
<実施例5>
接着剤層5として、キシリレンジイソシアネートのアダクトタイプの誘導体と、イソホロンジイソシアネートのヌレートタイプの誘導体を重量比1:1で混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0051】
<実施例6>
接着剤層5として、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプの誘導体と、イソホロンジイソシアネートのアダクトタイプの誘導体を重量比1:1で混合して用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0052】
以下に、本発明の比較例について説明する。
【0053】
<比較例1>
あらかじめシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム12μmのシリカ蒸着面に(a)すくなくとも1種以上のアルコキシドと、(b)ポリビニルアルコール系樹脂と、(c)エチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーを含有せず、アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物の塗布膜である耐水性コート層を塗布により設けバリア層となるバリアフィルムを作成した。
【0054】
また、接着剤層5として、ヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプの誘導体と、イソホロンジイソシアネートのアダクトタイプの誘導体を重量比1:1で混合して用いた。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例1の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0055】
<比較例2>
比較例1と同様に、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーを含有せず、前記アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物の塗布膜である耐水性コート層を塗布により設けバリア層4となるバリアフィルムを作成した。
【0056】
また、接着樹脂層6を設けず、接着剤層として、ウレタン系2液硬化型接着剤を用いて、ドライラミネーションにより、シーラント層7となる直鎖状低密度ポリエチレンフィルム60μmを積層した。これら以外は、実施例1と同様にして、比較例2の液体用紙容器用ブランクを得た。
【0057】
<試験方法>
実施例と比較例の液体用紙容器を下記の方法で試験し、比較評価した。
【0058】
<ラミネート強度>
実施例と比較例の液体用紙容器用ブランクを図3(A)の液体用紙容器になるように成形して、システアミン塩酸塩を5%含有する髪のカーリング液を充填シールし、温度50℃湿度100%の恒温恒湿槽で3ヶ月保存後、バリア層4とシーラント層7の間のラミネート強度を測定した。
【0059】
ラミネート強度の測定は、液体用紙容器から15mm幅でサンプルを切り出し、引張試験機の上下のチャックにそれぞれ、バリア層側とシーラント層側を挟み、180度剥離で、引張速度を300mm/minとし、引っ張り測定した(単位:N/15mm)。
【0060】
その結果を、初期(成形前)のラミネート強度と比較して、表1にまとめた。また、ラミネート強度が3N/15mm以上を◎とし、1N/15mmより強く、3N/15mmより弱いものを○とし、1N/15mm以下を×とした。
【0061】
<生産性試験>
実施例と比較例の液体用紙容器用ブランクを、液体用紙容器成形充填シールで、図3(A)の液体用紙容器を成形した。このとき、ボトムヒーター1とボトムヒーター2の温度をそれぞれ、生産時の温度(290℃と260℃)、それより30℃高い温度、逆に30℃低い温度の3条件で成形した。
【0062】
成形後、上部を開放し、浸透液(テレピン油に赤色染料を溶解した液)を、液体用紙容器の底に垂らし、底シール部分に浸透しているか否かを目視にて検査した。100個検査して浸透した個数を、分数で表し、その結果を表1にまとめた。また、1個も浸透が起こらなかったものを○とし、1個でも浸透が起こったものを×とした。
【0063】
【表1】

以下に、実施例と比較例との比較結果について説明する。
【0064】
<比較結果>
実施例1から実施例6について、初期のラミネート強度は比較例に比べ、低い傾向にあるが、保存後もラミネート強度の低下がなく、安定している。比較例2は初期のラミネート強度は強いが、保存後に著しく低下している。また、比較例1についても、保存後にラミネート強度は低くはないが、低下傾向にあり、更に長期保存した場合に不安がある。
【0065】
また、ヒーター温度を振って成形した場合、実施例1から実施例6については、底シール部分の浸透が起こらず、良好であった。一方、比較例1では、ヒーター温度を振った3条件のいずれでも、バリア層4とシーラント層7の間で、底シール部分へ浸透が認められた。また、比較例2では、ヒーター温度を30℃高くして成形したものでは、バリア層4とシーラント層7の間で、底シール部分へ浸透が認められた。
【0066】
比較例1、2では、成形時の温度条件のばらつきによって、内容物が底シール部分へ浸透して液漏れを起こす恐れがある。
【0067】
以上のように、比較例1、2は、ラミネート強度測定と生産性試験の少なくとも片方に問題や不安材料があり、液漏れにつながる恐れがある。
【0068】
一方、実施例1から実施例6については、ラミネート強度測定と生産性試験において、いずれも、問題がなく、強浸透性内容物に対しても、接着強度が低下せず、液漏れにつながる恐れのない。また、強浸透性内容物として、システアミン塩酸塩を含有するカーリング液に限らず、殺菌剤洗浄剤、入浴剤、インキカートリッジなどの強浸透性内容物に対しても使用が可能である。
【符号の説明】
【0069】
100、200・・・包装材料
1・・・表樹脂層
2・・・紙層
3・・・接着樹脂層
4・・・バリア層
5・・・接着剤層
6・・・接着樹脂層
7・・・シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、表樹脂層、紙層、バリア層、シーラント層が、この順番で積層されてなる包装材料から構成される液体用紙容器であって、前記バリア層が無機酸化物蒸着フィルムであり、蒸着層側に耐水性コート層を有し、該耐水性コート層が、(a)すくなくとも1種以上のアルコキシドと、(b)ポリビニルアルコール系樹脂と、(c)エチレン・ビニルアルコール共重合体と、(d)シランカップリング剤またはシランモノマーとを含有し、前記アルコキシドのゾルゲル法によって重縮合して得られる組成物の塗布膜であり、前記バリア層の前記シーラント層側に接着剤層が積層され、該接着剤層が、2官能以上のイソシアネート基を有する、モノマーあるいはその誘導体であるイソシアネート化合物からなることを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
前記接着剤層が、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、のモノマー、または少なくともその1種以上からなる誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95501(P2013−95501A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242172(P2011−242172)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】