説明

液体窒素供給装置

【課題】複数の液体窒素保存容器ごとに、液体窒素の供給を制御する必要がなく、簡単な構造により、各液体窒素保存容器ごとに設定量の液体窒素を確実に供給することができる液体窒素供給装置を提供する。
【解決手段】本発明の液体窒素供給装置は、密閉された複数の液体窒素保存容器と、液体窒素保存容器間に送液配管を備え、液体窒素保存容器に液体窒素を供給し、液体窒素の送液に伴なう容器内の内圧の上昇により、後続の液体窒素保存容器に液体窒素を送液することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
極低温状態にするために、液体窒素を圧送する液体窒素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極低温状態で使用する電子顕微鏡などでは、液体窒素などの液化ガスで検出部および試料収容部を冷却して使用する。また、核磁気共鳴装置に使用する超電導磁石についても、装置を動作するための冷媒として液体窒素が不可欠である。このような液体窒素を必要なときに自動的に供給する液体窒素供給装置には、従来より各種の構造のものが知られている。
【0003】
たとえば、複数の液体窒素保存容器に、設定された時間が来るたびに液体窒素を移送する液体窒素供給装置が知られている(特許文献1参照)。この装置は、液体窒素を蓄える液体窒素容器と、液体窒素容器から窒素ガスを大気中にリークするリーク弁と、液体窒素を使用する複数の液体窒素保存容器と、液体窒素容器と複数の液体窒素保存容器の各々とを結ぶ移送管と、移送管に個別に設けられた複数の遮断弁と、リーク弁および遮断弁を開閉制御する制御手段とを備える。この制御手段は、タイマ機能を有し、液体窒素保存容器ごとに予め設定された時間が来るたびに、リーク弁を閉じ、遮断弁を開いて、液体窒素を液体窒素容器から各液体窒素保存容器に移送する。この装置は、複数の液体窒素保存容器に対応して遮断弁が設けられ、制御手段がタイマ機能を有しているため、複数の液体窒素保存容器の1つ1つに対して設定された時間が来るたびに遮断弁を択一的に開いて液体窒素の移送を行なうことができる。
【0004】
また、他の態様の液体窒素供給装置として、液体窒素生成容器と、液体窒素生成容器に装着した極低温冷凍機と、液体窒素を使用する液体窒素保存容器とを有し、液体窒素生成容器に供給した窒素ガスを極低温冷凍機で液化し、生成した液体窒素を液体窒素保存容器に移送する装置が知られている(特許文献2参照)。液体窒素保存容器の液面が、設定した下限値より低下すると、冷凍機の運転を停止し、温度を上昇させて、液体窒素生成容器内の圧力により自動的に液体窒素を液体窒素保存容器に移送する。また、液面が、設定した上限値より高くなると、液体窒素の移送を停止するように制御しているので、液体窒素保存容器内の液体窒素の貯蔵量を一定に保つことができるとある。
【特許文献1】特開平7−269792号公報
【特許文献2】特開平8−178186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの液体窒素供給装置では、複数の液体窒素保存容器に液体窒素を供給する場合、各液体窒素保存容器ごとに独立して液体窒素が供給されるため、液体窒素保存容器ごとに制御機構が必要となる。本発明の課題は、複数の液体窒素保存容器ごとに液体窒素の供給を制御する必要がなく、簡単な構造により、各液体窒素保存容器に設定量の液体窒素を確実に供給することができる液体窒素供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体窒素供給装置は、密閉された複数の液体窒素保存容器と、液体窒素保存容器間に送液配管を備え、液体窒素保存容器に液体窒素を供給し、液体窒素の送液に伴なう容器内の内圧の上昇により、後続の液体窒素保存容器に液体窒素を送液することを特徴とする。
【0007】
液体窒素を供給した容器内の液体窒素の液面が、その容器内の液体窒素排出口の高さを越えると、液体窒素の供給に伴ない、容器内の内圧が上昇し、後続の液体窒素保存容器に液体窒素を送液する態様が好適である。液体窒素保存容器内において、液体窒素排出口の高さが、液体窒素供給口の高さより低い態様が好ましい。また、液体窒素供給装置は、液体窒素の液面管理のためにモニターを備える態様が好ましく、後続の液体窒素保存容器のうち最後の容器にモニターを備える態様がより好ましい。また、後続の液体窒素保存容器のうち最後の容器から溢流する液体窒素を貯留する容器にモニターを備える態様が好適である。
【発明の効果】
【0008】
複数の液体窒素保存容器ごとに、液体窒素の供給を制御する必要がなく、簡単な構造により、各液体窒素保存容器に設定量の液体窒素を確実に供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の液体窒素供給装置の構造を、図1に例示する。図1に示すように、この液体窒素供給装置は、密閉された複数の液体窒素保存容器1a,1b,1cを備え、液体窒素保存容器には送液配管2a,2b,2cが設けられている。図1に示す例では、3連の液体窒素保存容器からなる液体窒素供給装置を示す。液体窒素供給元容器9から液体窒素保存容器1aに液体窒素を供給すると、液体窒素保存容器1a内の液体窒素の液面が上昇し、容器内の液体窒素排出口の高さh1を液面が越えると、液体窒素の送液に伴ない、容器内の内圧が上昇するため、後続の液体窒素保存容器1bに液体窒素を送液することができる。このように本発明の液体窒素供給装置は、液体窒素保存容器に液体窒素を供給し、液体窒素の送液に伴なう容器内の内圧の上昇により、後続の液体窒素保存容器に液体窒素を送液する。
【0010】
その後、同様にして、液体窒素保存容器1b内の液体窒素の液面が上昇し、容器内の液体窒素排出口の高さh2を液面が越えると、液体窒素の圧送により容器内の内圧が上昇するため、後続の液体窒素保存容器1cに液体窒素が送液される。その後、液体窒素保存容器1cの液面が所定の高さh3になると、溢流する液体窒素は送液配管2dを通って貯留容器4に流入する。したがって、1つの液体窒素圧送機により、複数の液体窒素保存容器に液体窒素を圧送することができ、各液体窒素保存容器に送液ポンプあるいは開閉バルブを設ける必要がないため、装置構造を簡素化できる。また、各液体窒素保存容器ごとに設定量の液体窒素を確実に供給することができ、各液体窒素保存容器ごとに液体窒素の供給量を制御する必要がない。したがって。本発明の液体窒素供給装置は、装置の構造が簡単であるため、装置の小型化が容易である。
【0011】
図1に示すように、液体窒素保存容器1a内において、液体窒素排出口の高さh1が、液体窒素供給口の高さh1'より低い態様、言い換えれば、液体窒素保存容器内の液面の高さが、液体窒素供給口の高さより低い態様であるときは、液体窒素を容器に供給する際のバブリングによる液面の揺れを抑える点で好ましい。
【0012】
本発明の液体窒素供給装置における複数の液体窒素保存容器の配列例を、図2に示す。図2(a)に示すように、液体窒素供給元容器23から液体窒素を移送する液体窒素保存容器21を直列に配列することにより上記の効果を得ることができる。また、図2(b)に示すように、1群の液体窒素保存容器21a,21b,21cを並列に配列する場合にも同様に、上記の効果を得ることができる。
【0013】
液体窒素は、徐々に気化するため、液体窒素保存容器内における液体窒素の残量を管理するときは、図1に示すように、液体窒素供給装置に液面管理用のモニター5a,5b,5cを設ける態様が好ましく、モニターを付けることにより、自動制御が可能となる。
【0014】
液体窒素の供給に伴ない、液体窒素保存容器1a,1b,1cには、順次、設定量の液体窒素が充填されていくため、後続の液体窒素保存容器のうち最後の液体窒素保存容器1cにモニターを設けて、液面管理をすることにより、先行する液体窒素保存容器1a,1bに設定量の液体窒素が充填されたことを1つのモニターで知ることができる。さらに、最後の液体窒素保存容器1cに設定量の液体窒素が充填されたことを確認することにより、すべての液体窒素保存容器に設定量の液体窒素が充填されたことを知ることができる。
【0015】
液体窒素の供給に伴ない、液体窒素保存容器1a,1b,1cには、順次、設定量の液体窒素が充填されていく。したがって、図1に示すように、後続の液体窒素保存容器のうち最後の液体窒素保存容器1cの後に、液体窒素保存容器1cから溢流する液体窒素を貯留する容器4を設ける態様においては、容器4にモニター5dを設けて、容器4の液面を管理することにより、液体窒素保存容器1a,1b,1cに設定量の液体窒素が充填されたことを1つのモニターで知ることができる。
【0016】
モニターとしては、電気抵抗値が温度により変化する超伝導薄膜または抵抗測温体を使用したモニターが好適である。たとえば、液体窒素温度で超電導特性を示す超電導薄膜からなるモニターを使用すると、モニターが液体窒素に浸漬すると、電気抵抗が低下するので、液体窒素の液面を管理することができる。一方、抵抗測温体を使用するモニターでは、金属または金属酸化物である抵抗測温体の電気抵抗が温度により変化するため、モニターが液体窒素に浸漬すると、抵抗測温体の電気抵抗が変化する。したがって、電気抵抗を測定することにより、容器内の液体窒素の液面を管理することができる。抵抗測温体には、白金測温抵抗体またはサーミスタ測温体などがある。
【0017】
図1に示す液体窒素供給元容器9には、別の場所にて液体窒素を充填した物を使用することができ、液体窒素生成装置8と組み合わせた物も使用することができる。別の場所にて液体窒素を充填した物を使用するときは、液体窒素供給元容器9と送液配管2dで連結する液体窒素生成装置8は不要である。液体窒素生成装置8には、窒素ガス供給装置と極低温冷凍機からなるものを使用することができる。窒素ガス供給装置は、酸素・窒素分離用分子篩炭(モレキュラー・シービング・カーボン;MSC)を使用し、吸着材であるMSCに対するガスの吸着速度の差を利用して窒素ガスを空気中から分離する。MSCを利用して、99%以上の純度の窒素ガスを毎分10リットル以上、供給することが可能である。また、このような窒素ガス発生機を使用するものに限らず、窒素ガスボンベを用いてもよい。
【0018】
極低温冷凍機は、圧縮機によってヘリウムガスを圧縮し、圧縮されたヘリウムガスを液化器に供給し、液化機において断熱膨張により約マイナス210℃に冷却し、窒素ガスを液化する。窒素ガスの供給量を毎分10リットルとした場合、液体窒素を日産15リットル程度製造することができる。図1に示すように、液体窒素供給元容器9から液体窒素保存容器1aへの液体窒素の移送は、送液配管2e,2aを利用し、液体窒素移送装置10により行なうことができ、窒素ガス発生器から供給される窒素ガスの供給圧力を利用して移送することもできる。あるいは、液体窒素供給元容器9と加圧気体配管12で連結する加圧装置11により液体窒素供給元容器9の内圧を高めて、液体窒素の移送を行なうことができ、その場合には、液体窒素移送装置10は不要である。液体窒素移送装置10には、液体窒素供給元容器9から液体窒素を汲み出すための汲み出しポンプを使用できる。加圧装置11には、コンプレッサーまたは加圧ポンプを使用することができる。
【0019】
液体窒素供給装置は、図1に示すように、モニター5a,5b,5c,5dと、液体窒素生成装置8、液体窒素移送装置10あるいは加圧装置11とを、供給制御装置6に連結し、液体窒素保存容器1a,1b,1cにおける液面レベルをモニタリングし、液面レベルが低下すると、自動的に送液し、レベルが所定値に達すると、送液を自動的に停止することができる。図1には、液体窒素生成装置8、液体窒素移送装置10と加圧装置11のうち、加圧装置11と供給制御装置6とを連結した態様を例示する。また、供給制御装置6に、ブザーなどを備える表示装置7を接続し、液体窒素の貯蔵量が少なくなると、ブザーをなどの警報を鳴らすように設定することができる。
【0020】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
複数の液体窒素保存容器ごとに、液体窒素の供給を制御する必要がなく、液体窒素保存容器に設定量の液体窒素を確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の液体窒素供給装置の構造を示す図である。
【図2】本発明の液体窒素供給装置における複数の液体窒素保存容器の配列例を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1a,1b,1c,21 液体窒素保存容器、2a,2b,2c,2d,2e 送液配管、4 貯留容器、5a,5b,5c,5d モニター、6 供給制御装置、7 表示装置、8 液体窒素生成装置、9,23 液体窒素供給元容器、10 液体窒素移送装置、11 加圧装置、12 加圧気体配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された複数の液体窒素保存容器と、該液体窒素保存容器間に送液配管を備える液体窒素供給装置であって、液体窒素保存容器に液体窒素を供給し、液体窒素の送液に伴なう前記容器内の内圧の上昇により、後続の液体窒素保存容器に液体窒素を送液する液体窒素供給装置。
【請求項2】
液体窒素を供給した前記容器内の液体窒素の液面が、前記容器内の液体窒素排出口の高さを越えると、液体窒素の供給に伴ない、前記容器内の内圧が上昇し、後続の液体窒素保存容器に液体窒素を送液する請求項1に記載の液体窒素供給装置。
【請求項3】
前記液体窒素保存容器内において、液体窒素排出口の高さが、液体窒素供給口の高さより低い請求項1または2に記載の液体窒素供給装置。
【請求項4】
前記液体窒素の液面管理のためのモニターを備える請求項1〜3のいずれかに記載の液体窒素供給装置。
【請求項5】
後続の液体窒素保存容器のうち最後の容器に前記モニターを備える請求項4に記載の液体窒素供給装置。
【請求項6】
後続の液体窒素保存容器のうち最後の容器から溢流する液体窒素を貯留する容器に前記モニターを備える請求項4に記載の液体窒素供給装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−196523(P2008−196523A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29466(P2007−29466)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(504126112)住友電工システムソリューション株式会社 (78)
【Fターム(参考)】