説明

液体組成物をスロット押出しコーティングするための方法

コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度で液体組成物をスロット押出しコーティングするための方法であって、該液体組成物は該コーティング温度で100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し:(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に該液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための該液体組成物を選択し、該液体組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択され;そして(ii)コーティング温度及びコーティング速度においてビード真空を用い、スロットを介してウェブ支持体上に組成物をスロット押出しコーティングする段階を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、液体組成物のスロット押出しコーティングのための方法及びスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
コーティングは一般に均一な連続層として適用される。スロット押出しコーティングは、基質上に組成物をコーティングするための単に1つの方法であり、それはカーテン、ナイフもしくはブレード、正転ロール、リバースロール又はスライド法によるコーティングのような他の多くの方法を利用できるからである。スロット押出しコーティングは、高い基質速度においてコーティングを適用するために、及び精密適用のために特に有用である。スロット押出しによるコーティングは、正確な予備計量された量の組成物を与えることができる。一般にスロット押出しコーティングは、流体をコーティングスロット(ダイ)に供給し、それが今度は流体をシート又はフィルムの形態で基質に適用することにより、基質上に材料の薄いシート(例えばコーティング)を送達するために用いられる。
【0003】
コーティング操作の間に液体組成物が示す動力学的及び他の挙動的効果を理解するか又は設計する(model)ために多くの研究がなされてきた。ほんのいくつかを挙げると、例えば流動学、せん断減粘性、粘性率、弾性、ニュートンもしくは非−ニュートン流れ、慣性効果及び拡張効果(extensional effects)がコーティング研究の主題であった。これらの効果及び特性の研究において特に興味深いのは、扱い易さ及び乾燥欠陥を受け難いコーティングを達成するためのコーティング法の最適化である。特定のコーティング法と組み合わされた組成物のコーティング性(coatability)は、特に薄いコーティングを必要とするか、高い固体含有率を使用するか、又は両方である操作のために、興味のある領域である。
【0004】
コーティングの最も単純な方法は、液体浴中に基質を浸漬し、次いで基質を引き上げることである。基質と一緒に取り込まれた(entrapped)空気は、それにより液体で置き換えられる。基質が入ると、自由な液体表面は動的接触線において分かれる。動的接触角θdynが180°に近づくと、空気層が取り込まれ、それは不安定であり、壊れて泡になる。これらの気泡は、コーティングプロセス及び得られるコーティングに不利に影響する。この現象は「空気エントレインメント(air entrainment)」として既知である。それを超えると空気エントレインメントが起こる限界的コーティング速度(Uae)は、液体及び基質の化学的及び物理的性質(例えば粗さ)に依存する。しかしながら、液体の粘性率は最も重要なパラメーターである。Gutoff及びKendrickは1982年に非特許文献1において以下の実験的に決定される関係:
ae=5.11.η−0.67
を報告し、ここでUaeはそこまで空気エントレインメントが起こるm/秒における限界コーティング速度であり、ηはmPa.sにおける粘性率である。高い個体濃度を有する液体は高い粘性率を有し、それは、それを超えると空気エントレインメントが起こる限界コーティング速度がそのような液体の場合に非常に低いことを意味する。
【0005】
現代のコーティングシステムは、空気エントレインメントを抑制する幾何学を用い、それにより3−相点において平衡化する力の方向と強さを変えることにより、空気エントレインメントに関する限界コーティング速度をより高いコーティング速度に移動させる(流体力学的補助(hydrodynamic assistance))という、単純な浸
漬−コーティングを超える利点を有する。真空、重力及びカーテンコーティングの場合には静電力の使用はすべて、スロットと基質の間の間隙をまたぐ(spanning)コーティングビードの幾何学において生ずる変化の故に、それを超えると空気エントレインメントが起こる限界コーティング速度を向上させる。
【0006】
コーティングビードの後の真空、いわゆるビード真空の適用は、ビードの形を修正し、結果として下部メニスカスのスライド表面に近い部分は上方にくぼみ得る。本明細書でビード真空度、P、はPatmospheric−Pvacuum chamberとして定義される。カスケード又はスロットコーテイングにおける特定のビード真空度を超えるビード真空度の上昇は他のコーティング欠陥を起こさせ、主なものはビード破壊、ビード不安定性、メニスカス断絶(meniscus rupture)又は細流形成;及びうね形成(ribbing)として様々に知られている。
【0007】
特定のコーティング液の場合の特定のコーティング速度において、それより下で空気エントレインメントが観察される限界真空度はPminとして定義され、それより上でビード破壊が起こる限界真空度はPmaxとして定義される。特定のコーティング速度、特定のコーティング液及び特定のコーティング温度に関し、空気エントレインメント、ビード破壊及びうね形成がないPminとPmaxの間の真空度範囲は、コーティング性のウインドウ(the window of coatability)、ΔPと定義される。
【0008】
コーティング装置のコーティング能力の最適利用は、コーティング装置中の乾燥装置が許すであろう最大のコーティング速度でコーティング液をコーティングすることを指令する。しかしながら、コーティング速度が増加すると、空気エントレインメントに対するコーティングの感受性はコーティング速度及び従ってPminとともに向上するであろう。空気エントレインメントの抑制に必要な真空度も、コーティング速度とともに上昇するであろう。さらに、コーティング速度の増加とともに増加する一定の湿潤層厚さを保持するのに必要な液体供給の増加は、コーティング速度の増加とともにPmaxを上昇させる。コーティング速度の増加とともにコーティング性のウインドウ、ΔPにおける減少が観察され、それは、コーティング速度とともにPminがPmaxより速く上昇するからであり、従って特定のコーティング速度においてPminはPmaxに等しくなるであろう。特定の温度における特定の液体に関してPminがPmaxと等しいコーティング速度は、最大コーティング速度Umaxとして既知である。
【0009】
一定のコーティング速度、コーティング温度及び一定の湿潤層厚さにおいて、例えばより低い分子量の結合剤を用いることによるか、又はコーティング液をさらに別の担体液で希釈することにより、コーティング液の粘性率を低下させることによって、Pminを低下させることができる。しかしながら、コーティング層の性質は特定の湿潤層厚さが超えられないことを指令し得るのに、さらに別の担体液を用いる希釈は湿潤層厚さを増加させる。さらに、さらに別の担体液を用いる希釈は、乾燥プロセスの間に蒸発させねばならない溶媒を増加させ、乾燥プロセスに含まれるガス流への湿潤層の抵抗性を低下させ、乾燥された層の平滑性を低下させる。
【0010】
特定の高粘性率組成物のスロット押出しコーティングのために、コーティング性のウインドウが可能な限り大きく、高粘性率組成物の成分の性質にあり得る変動を補償するのが望ましい。従って、特定の高粘性率組成物が有意な真空度範囲内でスロット押出しコーティング可能かどうかを示すことができる方法が必要である。
【非特許文献1】Gutoff and Kendrick著,American Institute of Chemical Engineers(AIChE) Journal,volume 28,1982年,page 1283
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の側面
従って本発明の側面は、特定の高粘性率組成物が有意な真空度範囲内でスロット押出しコーティング可能か否かを示すことができる、スロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の側面は、特定の高粘性率組成物が有意な真空度範囲内でスロット押出しコーティング可能か否かを示すことができる、スロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法により選択される液体組成物を用いるスロット押出しコーティングのための方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の側面及び利点は、下記の記述から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概略
驚くべきことに、コーティング温度で100s−1のせん断速度において500mPa.sより高い粘性率を有する液体組成物を、種々の結合剤を用いて特定の温度でコーティングするために、低周波数振動、例えば1Hz下で>>1Pa、例えば250Paのせん断応力を用いて測定される、スロット押出しコーティング法における液体組成物のtanδ値が、液体組成物が有意な真空度範囲内で40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度で、空気エントレインメント、ビード破壊又はうね形成なしでスロット押出しコーティング可能か否かの指標を与えることが見出された。さらに、このコーティング性のウインドウの大きさが、tanδ値が減少するとともに増加することが見出された。
【0015】
本発明の側面は、コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度で液体組成物をスロット押出しコーティングするための方法により実現され、液体組成物はコーティング温度及び100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し、その方法は:(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定(oscillatory dynamic viscosity measurements)により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための液体組成物を選択し、液体組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択され;そして(ii)コーティング温度及びコーティング速度においてビード真空(bead vacuum)を用い、スロットを介してウェブ支持体上に組成物をスロット押出しコーティングする段階を含んでなった。
【0016】
本発明の側面は、コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度におけるスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法によっても実現され、液体組成物はコーティング温度で100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し、その方法は:(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための液体組成物を選択する段階を含んでなり、組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択された。
【0017】
好ましい態様は従属クレイム中に開示される。
【0018】
発明の詳細な記述
定義
「第1」、「第2」などの用語は本明細書で量、順序又は重要性を示すのではなくて、1つの要素を他の要素と区別するために用いられることを注意する。
【0019】
コーティングビードは本明細書で、スロットと基質の間の間隙をまたぐ液体の橋として定義される。
【0020】
Pにより示される「ビード真空度」という用語は本明細書で、本発明の開示の目的のために、Patmospheric−Pvacuum chamberとして定義される。
【0021】
minは本明細書で、本発明の開示の目的のために、特定のコーティング液に関し、特定のコーティング速度及びコーティング温度で、それより低いと空気エントレインメントが観察される限界ビード真空度として定義される。
【0022】
maxは本明細書で、本発明の開示の目的のために、特定のコーティング液に関し、特定のコーティング速度及びコーティング温度において、それより高いとビード破壊が観察される限界ビード真空度として定義される。
【0023】
特定のコーティング速度、特定のコーティング液及び特定のコーティング温度の場合にそれ以内で空気が不在であるPminとPmaxの間の真空度範囲は、本発明の開示の目的のために、操作性のウインドウ、ΔPとして知られ、すなわちΔP=Pmax−Pminである。
【0024】
maxは特定の温度における特定の液に関する最大コーティング速度であり、PminがPmaxに等しいコーティング速度である。
【0025】
水性媒体という用語は、水及び水−混和性有機溶媒を含有し、50重量%の水〜100重量%の水を含有する媒体を意味する。
【0026】
本開示において用いられるPETは、ポリ(エチレンテレフタレート)を示す。
【0027】
本発明の開示において用いられるサーモグラフィー記録材料という用語は、実質的に非感光性のサーモグラフィー記録材料及びフォトサーモグラフィー記録材料を含む。
【0028】
本発明の開示において用いられる「ポリビニルアセタール」という用語は、ポリビニルアルコールと1種もしくはそれより多いアルデヒドの縮合産物である。
【0029】
本発明の開示において用いられる「ポリビニルブチラール」という用語は、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドの縮合産物である。
【0030】
本発明の開示において用いられる「ポリビニルアセト−アセタール」という用語は、ポリビニルアルコールとアセトアルデヒドの縮合産物である。
【0031】
本発明の開示において用いられる着色剤という用語は、染料及び顔料の両方を含む。
【0032】
本発明の開示において用いられる染料という用語は、それが適用される媒体中で、且つ関連する周囲条件下で10mg/Lかそれより高い溶解度を有する着色剤を意味する。
【0033】
本発明の開示において用いられる顔料という用語は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となるDIN 55943で定義されており、関連する周囲条件下に、適用媒体中で実質的に不溶性であり、従ってその中で10mg/Lより低い溶解度を有する無機もしくは有機、有彩もしくは無彩着色剤である。
【0034】
スロット押出しコーティングのための方法
コーティング温度で100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有する液体組成物の場合、1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される場合に1000より小さいtanδを液体組成物が有すると、40m/分におけるか又はそれより速いコーティング速度で有意なコーティング性のウインドウが実現される。本発明に従い、スロット押出しコーティングのための方法に従って0.9〜2.2kPaの範囲内のPmin値が実現され、スロット押出しコーティングのための方法に従って2.5〜4.6kPaの範囲内のPmax値が実現され、実験的配置において最高で3.1kPa及び全生産配置(full production configuration)において3.5kPaより大きい(用いられた真空装置の限界のために、Pmaxは得られなかった)コーティング性のウインドウ、ΔPを生じ、>1.0kPaのコーティング性のウインドウが好ましく、>1.5kPaが特に好ましい。
【0035】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第1の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される500より小さい。
【0036】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第2の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される200より小さい。
【0037】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第3の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1より大きい。
【0038】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第4の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される10より大きい。
【0039】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第5の態様に従うと、液体組成物の粘性率は、コーティング温度及び100s−1において600mPa.sより高い。
【0040】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第6の態様に従うと、液体組成物の粘性率は、コーティング温度及び100s−1において700mPa.sより高い。
【0041】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第7の態様に従うと、液体組成物の粘性率は、コーティング温度及び100s−1において5000mPa.sより低い。
【0042】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第8の態様に従うと、コーテ
ィング速度は60m/分におけるかもしくはそれより速い。
【0043】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第9の態様に従うと、コーティング速度は70m/分におけるかもしくはそれより速い。
【0044】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第10の態様に従うと、少なくとも1種の結合剤はポリビニルアセタールである。
【0045】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第11の態様に従うと、少なくとも1種の結合剤はポリビニルブチラール又はビニルアセト−アセタール及びビニルブチラール単位を含んでなるコポリマーである。
【0046】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第12の態様に従うと、液体組成物はさらに微粒子、例えば顔料粒子、磁性顔料、シリカ、アルミナ及びクレーを含んでなる。
【0047】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第13の態様に従うと、液体組成物はさらに実質的に非感光性の有機銀塩を含んでなる。
【0048】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第14の態様に従うと、液体組成物はさらに有機還元剤を含んでなる。
【0049】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第15の態様に従うと、液体組成物は少なくとも1種の界面活性剤及び/又は少なくとも1種の分散剤を含有する。
【0050】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第16の態様に従うと、液体担体媒体は非−水性である。
【0051】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第17の態様に従うと、液体組成物はさらに着色剤を含んでなる。
【0052】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第18の態様に従うと、方法はさらに乾燥の段階を含んでなり、得られる乾燥された層はサーモグラフィー記録材料の感熱要素である。
【0053】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第19の態様に従うと、スロットとウェブ支持体の間の間隙は、コーティングの湿潤層厚さの10倍より小さい。
【0054】
スロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第1の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される500より小さい。
【0055】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第2の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される200より小さい。
【0056】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第3の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1より大きい。
【0057】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第4の態様に従うと、tanδは、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される10より大きい。
【0058】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第5の態様に従うと、液体組成物の粘性率は、コーティング温度及び100s−1において600mPa.sより高い。
【0059】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第6の態様に従うと、液体組成物の粘性率は、コーティング温度及び100s−1において700mPa.sより高い。
【0060】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第7の態様に従うと、液体組成物の粘性率は、コーティング温度及び100s−1において5000mPa.sより低い。
【0061】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第8の態様に従うと、コーティング速度は60m/分におけるかもしくはそれより速い。
【0062】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第9の態様に従うと、コーティング速度は70m/分におけるかもしくはそれより速い。
【0063】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第10の態様に従うと、少なくとも1種の結合剤はポリビニルアセタールである。
【0064】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第11の態様に従うと、少なくとも1種の結合剤はポリビニルブチラール又はビニルアセト−アセタール及びビニルブチラール単位を含んでなるコポリマーである。
【0065】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第12の態様に従うと、液体組成物はさらに微粒子、例えば顔料粒子、磁性顔料、シリカ、アルミナ及びクレーを含んでなる。
【0066】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第13の態様に従うと、液体組成物はさらに実質的に非感光性の有機銀塩を含んでなる。
【0067】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第14の態様に従うと、液体組成物はさらに有機還元剤を含んでなる。
【0068】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第15の態様に従うと、液体組成物は少なくとも1種の界面活性剤及び/又は少なくとも1種の分散剤を含有する。
【0069】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第16の態様に従うと、液体担体媒体は非−水性である。
【0070】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第17の態様に従うと、液体組成物はさらに着色剤を含んでなる。
【0071】
tanδ
本発明の開示において用いられるtanδは、損失弾性率(液体の粘性成分、G”)対弾性率(液体の貯蔵成分、G’)の比として定義され、ここでG’はひずみを有する位相における応力対ひずみの比であり、G”はひずみを有する位相から90の応力対ひずみの比である。G’及びG”は通常、複素動的弾性率Gの実部と虚部として結び付けられ、Gはせん断の周波数ωの関数である:
(ω)=G’(ω)+jG”(ω)
複素弾性率G(ω)の代わりに、複素粘性率ηを定義することができ:
η=G/ω=π/γ.ω=η’(ω)+jη”(ω)
ここでπ及びγはそれぞれゼロ次ひずみ及び応力である。それは動的せん断に対する全抵抗を記述する。それを2つの成分:動的粘性率、η、粘性成分及び貯蔵(位相外)粘性率η”、弾性成分に分解することもできる。低周波数において、η’はせん断速度がゼロに近づく時の定常せん断において測定される粘性率に近づく。
【0072】
動的粘性率、η’及び貯蔵粘性率、η”は、表式:η’=G”/ω;及びη”=G’/ωによりG’及びG”に関連付けられる。
【0073】
液体のレジリエンス度(degree of resilience)は、tanδの減少とともに上昇する。驚くべきことに、スロット押出しコーティングで実現されるコーティングウインドウと特定の振動周波数及びせん断応力下で決定されるtanδの間の関連性が確立された。
【0074】
スロット押出しコーティングに伸び応力(elongational stress)が存在するので、理想的には、振動伸び応力下における粘性率測定によりtanδを決定するべきである。しかしながら、商業的に入手可能なこの型の装置はない。しかし、振動回転応力下で粘性率測定が行なわれる装置、例えばDynamic Stress Rheometerが例えばGebrueder Haake GmbH,Rheometrics Inc.から、及び例えばPhysica MCR 501がAnton Paar GmbHから商業的に入手可能である。
【0075】
同じ結合剤又は異なる結合剤もしくは結合剤混合物を用いる分散系の場合、250Paのせん断応力及び1Hz又は10Hzの振動周波数で決定されるtanδ値は、与えられるコーティング速度におけるPmaxとPminの間の真空度範囲により示されるコーティング性のウインドウ、ΔPが増加するとともに減少することが見出された。従って、tanδ値が小さい程、コーティング性のウインドウが大きい。
【0076】
1Hzの振動周波数は10Hzの振動周波数より好ましく、それは1Hzの振動周波数において行なわれる測定から得られるtanδ値がコーティング液組成とともにより大きな変動を示すからである。さらに、tanδ値がせん断応力の増加とともに大きく増加することが見出された。これは、液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下で粘性率測定を行なうべきであることを意味する。従って、同心シリンダー粘性率測定がコーン−プレート粘性率測定より好ましい。さらに、試料の粘弾性の故の記憶効果のために、試料当たり1回の測定しか行なえない。さらに、tanδ値がせん断応力に非常に依存することが見出された。従って、位相内及び位相外粘性率値における小さい変動が、得られるtanδ値に強い影響を有するので、そのような測定を高い精度で行なわなければ成らない。同心シリンダーを有するAnton Paar GmbH Physica
MCR 501は、そのような高い精度の測定を行なうことを可能にする。
【0077】
本発明の開示において用いられるtanδは、コーティングヘッドにおける液体組成物のtanδ、すなわちスロット押出しコーティングプロセスの間の液体組成物のtanδ
である。混合、ポンピング及び濾過の間のように、液体組成物をせん断応力に供することは、tanδ値を有意に増加させることが見出された。従って、貯蔵容器中の液体組成物試料について測定されるtanδ値は、コーティングヘッドへの輸送の間に液体組成物が経験するせん断応力の故に、スロット押出しコーティングプロセスの間の液体組成物に関するtanδ値より有意に大きい。
【0078】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法の第20の態様に従うと、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力において振動動的測定により測定されるtanδは、同心シリンダー配置を用いて測定される。
【0079】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法の第18の態様に従うと、1Hz、コーティング温度及び250Paのせん断応力において振動動的測定により測定されるtanδは、同心シリンダー配置を用いて測定される。
【0080】
液体組成物
本発明の側面は、コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度で液体組成物をスロット押出しコーティングするための方法により実現され、液体組成物はコーティング温度及び100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し、その方法は:(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを有する液体組成物を選択し、液体組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択され;そして(ii)コーティング温度及びコーティング速度においてビード真空を用い、スロットを介してウェブ支持体上に組成物をスロット押出しコーティングする段階を含んでなった。用いられた典型的なビード真空度は0.5〜4.75kPaの範囲内であり、用いられたコーティング配置において実現可能な最高のビード真空度であった。
【0081】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための液体組成物がそこから選ばれる液体組成物は溶液であることができ、すなわちすべての成分が担体媒体中に溶解されているか、又は分散系であることができ、少なくとも1種の成分が液体担体媒体中で少なくとも部分的に不溶性である。本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法において用いられる液体組成物中で用いられる液体担体媒体は1種もしくはそれより多い液体を含有し、水性又は非−水性であることができる。
【0082】
液体組成物がそこから選ばれる液体組成物は、同じ又は異なる結合剤を含んでなることができる。少なくとも1種の結合剤は、完全にもしくは部分的に液体中に溶解することができる。液体組成物の弾性は、接合剤の選択、例えば鎖長、分子量分布、架橋度及び鎖中のモノマー単位の性質により影響され得る。例えばポリマーの分子量分布を広くする、すなわちその多分散性を増加させることは、ポリマーの濃溶液及びそれから作られる他の成分を含有する液体組成物の弾性を向上させることが見出された。これらのモノマー単位は嵩高いことができ、例えば水素結合、イオノマーにおけるようなイオン結合、側鎖基間の電子供与体−電子受容体相互作用により、ロンドン力により、及びファンデルワールス力により、互いに非−共有結合的に多少強く結合することができる。
【0083】
結合剤のモノマー単位と、例えば水素結合、イオン結合、側鎖モノマー基との電子供与体−電子受容体相互作用により、ロンドン力により、及びファンデルワールス力により非−共有結合的に多少強く結合するか、あるいはシリカ、アルミナ、CaCO、BaSO及び実質的に非−感光性の有機銀塩のような微粒子又はフレーク−形粒子、例えばクレー及びカオリンのような特定の形態を有する粒子を用いて実現されるような物理的架橋を誘導する弾性−強化添加物を加えることにより、弾性を実現することもできる。しかしながら、微粒子を用いる物理的架橋の故の弾性がせん断処理に供される場合のその損失は、微粒子の不在下における弾性がせん断処理に供される場合のその損失より可逆性が低い。貯蔵容器からコーティングヘッドへの輸送に含まれるせん断でさえ、弾性の不可逆的な損失を生じ得る。
【0084】
実質的に非−感光性のサーモグラフィー記録材料
実質的に非−感光性のサーモグラフィー記録材料は、感熱要素及び支持体を含んでなる。
【0085】
感熱要素
本明細書で用いられる感熱要素という用語は、画像形成に寄与するすべての成分、例えばロイコ染料、酸、実質的に非−感光性の有機銀塩及び還元剤を含有する要素である。本発明の好ましい態様に従うと、感熱要素は1種もしくはそれより多い実質的に非−感光性の有機銀塩、それと熱的作用関係にあるそのための1種もしくはそれより多い還元剤及び結合剤を含有する。要素は、上記の成分が異なる層中に分散されていることができる層系を含んでなることができ、但し、実質的に非−感光性の有機銀塩は還元剤と反応的に会合しており、すなわち熱的現像プロセスの間、還元剤はそれが実質的に非−感光性の有機銀塩の粒子に拡散することができ、銀への還元が起こり得るようなやり方で存在しなければならない。そのような材料は、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる欧州特許第A 0 736 799号明細書に記載されているような、1種もしくはそれより多い実質的に非−感光性の有機銀塩及び/又はそのための1種もしくはそれより多い有機還元剤が熱−反応性マイクロカプセル中に封入される可能性を含む。
【0086】
調色剤
スロット押出しコーティングのための方法を用いて製造される感熱要素はさらに、好ましくはフタラジノン、フタラジノン誘導体、ピリダゾン、ピリダゾン誘導体、ベンズオキサジンジオン、ベンズオキサジンジオン誘導体、ナフトオキサジンジオン及びナフトオキサジンジオン誘導体より成る群から選ばれる少なくとも1種の調色剤を含んでなることができる。
【0087】
特に適したベンズオキサジンジオン調色剤は、ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン、7−(エチルカルボナト)−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン、7−メトキシ−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオン及び7−メチル−ベンゾ[e][1,3]オキサジン−2,4−ジオンである。
【0088】
有機銀塩
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法に従って調製されるコーティング中に場合により含まれることができる有機銀塩は、好ましくは第2のカチオン、例えばマグネシウム又は鉄イオンと一緒になった銀カチオンを含有する有機複塩ではなく、好ましくは脂肪族炭素鎖が好ましくは少なくとも12個のC−原子を有する脂肪酸として知られる脂肪族カルボン酸の銀塩、例えばラウリン酸銀、パリミチン酸銀、ステアリン酸銀、ヒドロキシステアリン酸銀、オレイン酸銀及びベヘン酸銀であり、ベヘン酸銀が特に好ましい。そのような銀塩は「銀せっけん」とも呼ばれる。
【0089】
還元剤
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法に従って調製されるコーティング中に場合により含まれることができる有機還元剤は、好ましくは芳香族ジ−及びトリ−ヒドロキシ化合物の場合のように、O、N又はCに結合する少なくとも1個の活性水素原子を含有する有機化合物である。1,2−ジヒドロキシ−ベンゼン誘導体、例えばカテコ
ール、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、1,2−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸及びエステル、例えば没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル及び3,4−ジヒドロキシ−安息香酸エステルが好ましく、引用することによりその記載事項が本明細書の内容となる欧州特許第A 0 692 733号明細書、欧州特許第a 0 903 625号明細書、欧州特許第A 1 245 403号明細書及び欧州特許第A 1 245 404号明細書に記載されているもの、例えば3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチル、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン及びその誘導体ならびに3,4−ジヒドロキシベンゾニトリルが特に好ましい。
【0090】
結合剤
本発明の側面は、コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度で液体組成物をスロット押出しコーティングするための方法により実現され、液体組成物はコーティング温度及び100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し、その方法は:(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための液体組成物を選択し、液体組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択され;そして(ii)コーティング温度及びコーティング速度においてビード真空を用い、スロットを介してウェブ支持体上に組成物をスロット押出しコーティングする段階を含んでなった。
【0091】
本発明の側面は、コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度におけるスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法によっても実現され、液体組成物はコーティング温度で100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し、その方法は:(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための液体組成物を選択する段階を含んでなり、組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択された。
【0092】
本発明で用いられる結合剤はすべての種類の天然、改質天然又は合成樹脂あるいはそのような樹脂の混合物であることができ、液体担体媒体中に可溶性又は少なくとも部分的に不溶性であることができる。
【0093】
その溶液又は分散液が粘弾性を示す結合剤が好ましいが、過剰の粘弾性はうね形成のようなコーティング欠陥を生じ得る。粘弾性水溶液への少量の高分子量ポリアクリルアミドの添加は、それらの弾性を低下させることができる。M対Mの比により定義される高い分散性(dispersities)を有する結合剤も好ましく、3.5より高い分散性が好ましい。本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法に関する結合剤の適切性の指標は、液体担体媒体中の20又は30重量%の濃度におけるその粘性率である。
【0094】
適したポリマーの例には:セルロース誘導体、デンプンエーテル、ガラクトマンナン、α,β−エチレン性不飽和化合物から誘導されるポリマー、例えばポリ塩化ビニル、後−塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみが少なくとも1種のアルデヒド、好ましくはポリビニルブチラールと反応したポリビニルアセタール、ポリビニルアセト−アセタール又はビニルブチラール
及びビニルアセト−アセタール単位を含んでなるコポリマー、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン及びポリエチレンあるいはそれらの混合物が含まれるが、これらに限られない。これらの結合剤は、本発明において用いられる水性もしくは非−水性液体担体媒体中に少なくとも1種の有機銀塩を均一に分散させるためにも適している。
【0095】
ビニルアセト−アセタール及びビニルブチラール単位を含んでなるコポリマーの場合、コーティング温度及び100s−1のせん断速度において、担体媒体中の20重量%の濃度で800mPa.sより高い粘性率が好ましい。ポリビニルブチラールの場合、コーティング温度及び10s−1のせん断速度において、担体媒体中の30重量%の濃度で4.0Pa.sより高い粘性率が好ましい。
【0096】
結合剤はポリマーラテックスであることができる。好ましいポリマーラテックスにはポリエステル、ポリウレタン及びアクリルエステルコポリマーが含まれ、それらはフィルム−形成プロセスにおいて粒子の凝集を促進する。
【0097】
適した水溶性フィルム−形成性結合剤には:ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、タンパク質性結合剤、多糖類及び水溶性セルロース誘導体が含まれるが、これらに限られない。
【0098】
その濃溶液がコーティング温度において100s−1のせん断速度で少なくとも500mPa.sの粘性率及び1Hz、コーティング温度及び測定中に液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを示す結合剤には、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみが少なくとも1種のアルデヒドと反応したポリビニルアセタール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、多糖類、ポリエチレンオキシド又はそれらの混合物が含まれる。
【0099】
多糖類、ある種のポリアクリレート及びポリ(ヘキサノ−6−ラクトン)、ポリ(ラクチド)−ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(ラチクド)(PLA−PEO−PLA)トリブロックコポリマー、ポリ(2−ビニルピリジン)及びポリエチレンオキシドの短い親水性末端ブロックを有するポリ(イソプレン)は、水性液体担体媒体と一緒に用いるのに適している。適した多糖類にはセルロース、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、グアゴム及びキサンタンゴム、例えばHercules Inc.,USAからのBIOSAN(R) S及びMERCK & Co.,Kelco Division,USAからのKelzan(R) Tが含まれる。水性液体担体媒体と一緒に用いるのに適したポリアクリレートには、ポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリル酸の高分子量ホモ−及びコポリマー、例えばB.F.GoodrichのCARBOPOL(R)樹脂、例えばCARBOPOL(R) ETD 2623が含まれる。
【0100】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法によって場合により製造されることができる感熱要素中の結合剤対有機銀塩の重量比は、好ましくは0.2〜7の範囲内であり、感熱要素の厚さは、好ましくは5〜50μmの範囲内である。本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法によって場合により製造されることができる感熱要素のための結合剤は、好ましくはそれらが用いられるサーモグラフィー記録材料のサーモグラフィー性に悪影響を与えるある種の酸化防止剤(例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)のようなある種の添加剤あるいは不純物を含有しない。
【0101】
安定剤
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法に従って調製されるコーティング中に場合により含まれることができる安定剤は、好ましくはベンゾトリアゾール;置換ベンゾトリアゾール;芳香族ポリカルボン酸、例えばオルト−フタル酸、3−ニトロ−フタル酸、テトラクロロフタル酸、メリト酸、ピロメリト酸及びトリメリト酸及びそれらの無水物;ならびに式(I):
【0102】
【化1】

【0103】
[式中、Qは5−もしくは6−員不飽和複素環式環を形成するのに必要な原子を含み、Aは水素、チオレート基の負の電荷を補償するための対イオンであるか、あるいは2個もしくはそれより多いA基は式(I)により示される2個もしくはそれより多い基の間の連結基を与える]
により示される2個もしくはそれより多い基を有する化合物より成る群から選ばれる少なくとも1種の安定剤である。
【0104】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法によって場合により製造されることができる感熱要素は、好ましくはさらに少なくとも1種の場合により置換されていることができる脂肪族もしくは炭素環式ポリカルボン酸及び/又はその無水物を、存在するすべての有機銀塩に関して少なくとも15のモルパーセンテージで、且つそれと熱的作用関係で含有する。少なくとも2個の遊離のカルボン酸が残るか、又は熱記録段階の間に利用できるという条件で、ポリカルボン酸を無水物形態あるいは部分的にエステル化された形態で用いることができる。
【0105】
感光性ハロゲン化銀
感光性ハロゲン化銀は、スロット押出しコーティングのための方法に従って調製されるコーティング中に場合により含まれることができ、分光増感性シアニンもしくはメロシアニン染料を用いて分光的に増感され得るか及び/又は化学的に増感され得る。
【0106】
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法によって場合により製造されることができる感熱要素は、さらに感光性ハロゲン化銀を含有することができ、それによりサーモグラフィー材料をフォトサーモグラフィー材料にする。
【0107】
感熱要素中で用いられる感光性ハロゲン化銀は、実質的に非−感光性の有機銀塩の0.1〜100モルパーセント;好ましくは0.2〜80モルパーセント;特に好ましくは0.3〜50モルパーセント;特別に好ましくは0.5〜35モル%;そして特定的に1〜12モル%の範囲内で用いることができる。
【0108】
ハロゲン化銀は、臭化銀、ヨウ化銀、塩化銀、臭化ヨウ化銀、塩化臭化ヨウ化銀、塩化臭化銀などのようないずれの感光性ハロゲン化銀であることもできる。ハロゲン化銀は、立方、斜方、板状、四面体、8角形などを含むがこれらに限られない感光性のいずれの形態にあることもでき、その上に結晶のエピタキシャル成長を有することができる。
【0109】
界面活性剤及び分散剤
スロット押出しコーティングのための方法に従って調製されるコーティング中に、特定
の分散媒中で不溶性である成分の分散を助ける少なくとも1種の界面活性剤及び/又は分散剤が場合によって含まれることができる。これらの界面活性剤はアニオン性、非−イオン性又はカチオン性であることができる。適した分散剤は天然のポリマー性物質、合成のポリマー性物質及び微粉砕された粉末、例えば微粉砕された非−金属性無機粉末、例えばシリカである。
【0110】
支持体
液体組成物が上にコーティングされる支持体は、透明又は半透明であることができる。それは、好ましくはセルロースエステル、例えば三酢酸セルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート又はポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートで作られる薄い柔軟性透明樹脂フィルムである。支持体はリボンもしくはウェブ形態にあることができ、その上にコーティングされる感熱要素への接着を促進するために必要なら下塗りされていることができる。支持体を染色又は顔料着色して、画像のための透明着色背景を与えることができる。
【0111】
保護層
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法により調製されるコーティングに保護層を設けることができ、それは滑り層であることができる。
【0112】
コーティングが感熱要素である場合、これは感熱要素を大気水分から、及びスクラッチングなどによる表面損傷から保護し、プリントヘッド又は熱源の記録層との直接の接触を防ぐ。加圧下で熱源と接触し且つそれを経て輸送されねばならない感熱要素のための保護層は、加熱中に熱源を経る輸送の間、局部的変形に対する抵抗性及び優れた滑り特性を示さなければならない。
【0113】
最外層である滑り層は、溶解された潤滑材料及び/又は場合により最外層から突き出ていることができる粒子状材料、例えばタルク粒子を含むことができる。適した潤滑材料の例は、ポリマー性結合剤を含むかもしくは含まない界面活性剤、液体潤滑剤、固体潤滑剤又はそれらの混合物である。
【0114】
サーモグラフィー処理
サーモグラフィー記録材料を用いるサーモグラフィー画像形成は、画像を介する直接の露出によるか又は画像からの反射によるアナログ様式で、あるいは好ましくは赤外吸収化合物を含有する実質的に非−感光性のサーモグラフィー材料を用いて赤外熱源を用いる、例えばNd−YAGレーザー又は他の赤外レーザーを用いることによるかあるいはサーマルヘッドを用いる直接熱的画像形成により画素毎のデジタル様式で、熱を画像通りに適用することにより行なわれる。
【0115】
フォトサーモグラフィー印刷
本発明に従うフォトサーモグラフィー記録材料をX−線波長と5ミクロン波長の間の波長の放射線を用いて露出することができ、CRT光源;例えば400nm、630nm、650nm、780nm、830nmもしくは850nmで発光するバイオレットレーザー、He/Ne−レーザー又はIR−レーザーダイオードのようなUV、可視又はIR波長レーザー;あるいは発光ダイオード、例えば659nmで発光するもののような微細に焦点に集まる光源を用いる画素−通りの露出により、あるいは適した照明を用いる、例えばUV、可視もしくはIR光を用いる物体自身かもしくはそれからの像への直接の露出により画像が得られる。
【0116】
画像通りに露出された本発明に従うフォトサーモグラフィー記録材料の熱的現像のために、関連する用途のために許容され得る時間内に記録材料を現像温度に均一に加熱するこ
とを可能にするいずれの種類の熱源も、例えば接触加熱、放射線加熱、マイクロ波加熱などを用いることができる。
【0117】
工業的用途
本発明に従うスロット押出しコーティングのための方法を用いて、いずれの層をコーティングすることもできる。特定の用途は、医学及びグラフィックス用途において用いることができるサーモグラフィー記録材料の感熱要素を含んでなる単数もしくは複数の層のコーティングである。
【0118】
下記で比較実施例及び本発明の実施例により、本発明を例示する。これらの実施例中で与えられるパーセンテージ及び比は、他にことわらなければ重量による。
【0119】
支持体の乳剤側上の下塗り層番号01は、組成:
【0120】
【表1】

【0121】
を有した。
上記の成分の他の感熱要素中の成分:
AgBeh=ベヘン酸銀
Oil =BAYSILON、BAYERからのシリコーン油;
VL =DESMODUR VL、BAYERからの4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン
結合剤:
【0122】
【表2】

【0123】
還元剤:
R01=3,4−ジヒドロキシベンゾニトリル;
R02=3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン;
R03=3,4−ジヒドロキシ安息香酸エチルエステル
調色剤:
【0124】
【表3】

【0125】
安定剤:
S01=グルタル酸
S02=テトラクロロフタル酸無水物
S03=ベンゾトリアゾール
S04=
【0126】
【化2】

【実施例1】
【0127】
ベヘン酸銀の分散液を以下の通りに調製した:最初に、わずかに修正されたKOWLESS−攪拌機を用いて34.9重量%のベヘン酸銀及び5.2重量%の結合剤1を含有する2−ブタノン中のベヘン酸銀の予備分散液を調製し、それを2−ブタノンを用いて26.2重量%のベヘン酸銀までさらに希釈してから、300rpmでポンピングされる循環系において9分間パール磨砕(pearl milling)(ビーズ直径=0.65mm)に供し、続いて500rpmでポンピングされる循環系において26分間パール磨砕に供した。次いで2−ブタノン中の結合剤1の溶液を加え、20.4重量%のベヘン酸銀及び5.5重量%の結合剤1を含有する分散液を生じ、それを生産容器中にポンピングし、そこで別の結合剤溶液を加え、続いて循環系において1分間パール磨砕し、次いでさらに別の結合剤溶液を再び加え、循環系において1分間パール磨砕し、13.3重量%のベヘン酸銀及び7.6重量%の結合剤1を含有する安定なベヘン酸銀分散液を生じた。
【0128】
次いで2.204重量%の結合剤1、0.107重量%のS04、0.107重量%のS03、1.33重量%のR01、2.11重量%のR02、0.64重量%のS01、
0.308重量%のS02、0.477重量%のT03、0.064重量%のBaysilon及び21.287重量%の下記の表1中に示される結合剤を含有する2−ブタノン溶液を調製し、攪拌しながらベヘン酸銀分散液と混合して最終的な分散液を得、それにDesmodur(R) VLの2−ブタノン溶液をコーティングの直前に加えて25.05重量%の最終的な固体濃度を与えた。
【0129】
貯蔵容器から採取される試料につき、TEZ 150P−C温度制御系を有するCC27同心シリンダー配置を持つ振動回転粘度計、Anton Paar Physica MCR 501を用い、250Paのせん断応力において、1Hzの振動周波数及び20℃で行なわれる複素粘性率測定から、位相内及び90位相外粘性率測定値を抽出し、η’及びη”、それぞれ動的粘性率及び貯蔵粘性率を与えた。G”及びG’は2つの動的粘性率η’及びη”、それぞれ動的粘性率及び貯蔵粘性率に関連付けられる。G”及びG’は:G”=ωη’及びG’=ωη”を介して2つの動的粘性率η’及びη”に関連付けられるので、G”対G’の比であるtanδを計算できるはずである。G’値における不十分な精度の故に、MCR 501を用いて測定される1500より高いtanδの値は信頼できず、再現的でない。
【0130】
CC 27配置は、直径が28.92mmのカップ中に搭載された直径が26.66mmの同軸シリンダーを有するISO 3219に従う同軸シリンダー測定系であり、0.0001Hzから100Hzの振動周波数範囲内で運転される。
【0131】
これらの振動回転粘度計測定の結果を下記の表1にまとめる。
【0132】
表1は、40m/分におけるかそれより速いコーティング速度でのスロット押出しコーティングにおいて有意なコーティング性のウインドウを与えるための基準、すなわち20及び100s−1における500mPa.sより高い粘性率ならびに250Paのせん断応力、1Hz及び20℃において測定される1000より低いtanδ値を満たす広範囲の結合剤を有する液体組成物に関するデータを与える。しかしながら、tanδ値は貯蔵容器から採取される試料について測定され、スロット押出しコーティングヘッドからではなく、上記の通り、スロット押出しコーティングヘッドへの輸送プロセスの間に含まれるせん断応力はtanδ値を有意に増加させる。
【0133】
従って、スロット押出しコーティングヘッドへの輸送プロセスの間に含まれるせん断応力を模するために、これらの液体組成物のいくつかをせん断応力に供する実験を行なった。分散液1.1及び1.2を1500s−1のせん断応力に90秒間供することは、tanδ値を64及び79からそれぞれ107及び136に大体2倍にした。さらに、このtanδにおける増加は15分間かけてそれぞれ42%及び18%減少することが見出された。
【0134】
【表4】

【実施例2】
【0135】
1、2及び3型分散液を用いてコーティングされる層の組成を下記の表2に、そこから層がコーティングされる2−ブタノン分散液の固体濃度と一緒に示す。
【0136】
しかしながら分散液の粘弾性は、いかにして分散液が調製されるか及び分散液がスロット押出しコーティングされる前にそれらに何が起こるかに依存する。
【0137】
【表5】

【0138】
1型分散液を以下の通りに調製した:最初に、わずかに修正されたKOWLESS−攪拌機を用いて34.8重量%のベヘン酸銀及び5.2重量%の結合剤を含有する2−ブタノン中のベヘン酸銀の予備分散液を調製し、それを2−ブタノンを用いて26.1重量%のベヘン酸銀までさらに希釈してから、300rpmでポンピングされる循環系において9分間パール磨砕(ビーズ直径=0.65mm)に供し、続いて500rpmでポンピングされる循環系において26分間パール磨砕に供した。次いで2−ブタノン中の結合剤の溶液を加え、20.5重量%のベヘン酸銀及び5.5重量%の結合剤を含有する分散液を生じ、それを生産容器中にポンピングし、そこで別の結合剤溶液を加え、続いて循環系において1分間パール磨砕し、次いでさらに別の結合剤溶液を再び加え、循環系において1分間パール磨砕し、13.0重量%のベヘン酸銀及び7.66重量%の結合剤を含有する安定なベヘン酸銀分散液を生じた。次いで30.6重量%の結合剤及び0.25重量%のベンゾトリアゾールを含有する2−ブタノン溶液をベヘン酸銀分散液に加え、20.9重量%の結合剤、5.5重量%のベヘン酸銀及び0.14重量%のベンゾトリアゾールを含有するベヘン酸銀分散液を生じた。次いで攪拌しながらBaysilon、T01、T02及びグルタル酸を加え、続いて残る結合剤、R01、R03及びS02を含有する2−ブタノン溶液を加えて27.32重量%の固体濃度を有する最終的な分散液を得た。1型分散液は分散液番号2.1、2.6、2.7、2.9、2.10、2.15〜2.18及び2.21において用いられ、結合剤は下記の表7に示される。追加の指示「+IKA」は、分散液がさらに混合によりせん断応力に供されたことを意味する。
【0139】
2型分散液を以下の通りに調製した:最初に、わずかに修正されたKOWLESS−攪拌機を用いて34.8重量%のベヘン酸銀及び5.2重量%の結合剤を含有する2−ブタノン中のベヘン酸銀の予備分散液を調製し、それを2−ブタノンを用いて26.1重量%のベヘン酸銀までさらに希釈してから、300rpmでポンピングされる循環系において9分間パール磨砕(ビーズ直径=0.65mm)に供し、続いて500rpmでポンピングされる循環系において26分間パール磨砕に供した。次いで2−ブタノン中の結合剤の溶液を加え、20.4重量%のベヘン酸銀及び5.5重量%の結合剤を含有する分散液を生じ、それを生産容器中にポンピングし、そこで別の結合剤溶液を加え、続いて循環系において1分間パール磨砕し、次いでさらに別の結合剤溶液を再び加え、循環系において1分間パール磨砕し、13.2重量%のベヘン酸銀及び7.61重量%の結合剤を含有する安定なベヘン酸銀分散液を生じた。次いで33.3重量%の結合剤、0.13重量%のベンゾトリアゾール、0.348重量%のS04及び0.622重量%のT03を含有する2−ブタノン溶液をベヘン酸銀分散液に加え、21.95重量%の結合剤、5.8重量%のベヘン酸銀、0.35重量%のT03、0.072重量%のS03及び0.09重量%のS04を含有するベヘン酸銀分散液を生じた。次いで攪拌しながら残りの結合剤、R01、R02、S01及びS02を含有する2−ブタノン溶液を加えて28.98重量%の固体濃度を有する最終的な分散液を得た。2型分散液は分散液番号2.8、2.11〜2.14、2.19及び2.20において用いられ、結合剤は下記の表3に示される。追加の指示「+IKA」は、分散液がさらに混合によりせん断応力に供されたことを意味する。
【0140】
3型分散液は、表1における主な結合剤を下記の表3における分散液番号2.2〜2.5に関して示す主な結合剤で置き換える以外は、実施例3における分散液と同様に調製された。
【0141】
貯蔵容器から採取される試料につき、TEZ 150P−C温度制御系を有するCC27同心シリンダー配置を持つ振動回転粘度計、Anton Paar Physica MCR 501を用い、250Paのせん断応力において、1Hzの振動周波数及び20℃で行なわれる複素粘性率測定から、位相内及び90°位相外粘性率測定値を抽出し、η’及びη”、それぞれ動的粘性率及び貯蔵粘性率を与えた。G”及びG’は2つの動的粘性率η’及びη”、それぞれ動的粘性率及び貯蔵粘性率に関連付けられる。G”及びG’は:G”=ωη’及びG’=ωη”を介して2つの動的粘性率η’及びη”に関連付けられるので、G”対G’の比であるtanδを計算できるはずである。
【0142】
調製された直後、保持タンク中に24時間放置した後、及び分散液を保持タンク中に24時間放置した後のコーティングヘッドにおける分散液2.1〜2.21について、試料採取直後に行なわれる振動回転粘度計測定から、250Paのせん断応力、1Hz及び20℃におけるtanδ値を得た。G’値における不十分な精度の故に、MCR 501を用いて測定される1500より高いtanδの値は信頼できず、再現的でない。結果を下記の表3にまとめる。
【0143】
適用されるビード真空値、Pを変えて、コーティング中に空気エントレインメントが視覚により観察されない最低のビード真空値としてのPmin及び「細流」を生ずるビード破壊がない最高のビード真空値としてのPmaxを決定することにより、80m/分及び90m/分のコーティング速度においてコーティング性のウインドウ、ΔPを実験的に決定した。コーティング性のウインドウ、ΔPはPmax−Pminである。結果を上記の表3にまとめる。
【0144】
表3中の結果は、コーティング温度(この場合には20℃)及び100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有する液体組成物を用い、コーティング温度、1Hz及び250Paのせん断応力において決定される液体組成物のコーティングヘッドにおけるtanδが1000より低ければ、40m/分におけるかもしくはそれより高いコーティング速度において有意なコーティング性のウインドウが得られたことを明白に示す。
【0145】
【表6】

【0146】
これらの結果は、分散液がコーティングヘッドに達する前にそれらをせん断応力に供することがtanδの増加、すなわち弾性の低下を生ずることも示す。これは分散液2.9と2.10;2.11と2.12;2.13と2.14;2.15と2.16;及び2.17と2.18に関するtanδの結果を比較することにより示され、それは2.9、2.11、2.13、2.15及び2.17の分散液を混合から生ずるせん断応力に供することがtanδにおける有意な増加を生ずることを明白に示している。
【0147】
さらに、分散液に関するtanδ値は保持タンク中で24時間放置した時に有意に変化しないが、ポンピング、濾過及びコーティングヘッドに分散液を輸送する系の他のせん断応力誘導要素から生ずるせん断応力によりtanδ値は有意に増加し、すなわちそのような輸送は弾性における低下を生ずる。
【0148】
実施例1は、スロット押出しコーティングヘッドに輸送されている液体組成物が経験するせん断応力を模するための試みが成されたいくつかの実験を記載している。表4は、スロット押出しコーティングヘッドに輸送される時のtanδ値における実際の増加を1500rpmで混合される時のせん断応力に90秒間供される時のtanδにおける増加と比較している。
【0149】
表4中の結果は、1500s−1における90秒間のせん断応力はtanδ値を135から242に増加させ、すなわち79%の増加であったが、スロット押出しコーティングヘッドへの輸送はtanδ値を135から520に増加させ、すなわち285%の増加であったことを示す。
【0150】
【表7】

【実施例3】
【0151】
2−プロパノン中の結合剤3、6及び10〜16の20重量%溶液を調製した。次いでこれらの溶液につき、複素粘性率測定を行なった。貯蔵容器から採取される試料につき、TEZ 150P−C温度制御系を有するCC27同心シリンダー配置を持つ振動回転粘度計、Anton Paar Physica MCR 501を用い、250Paのせん断応力において、1Hzの振動周波数及び20℃で行なわれる複素粘性率測定から、位相内及び90°位相外粘性率測定値を抽出し、η’及びη”、それぞれ動的粘性率及び貯蔵粘性率を与えた。G”及びG’は2つの動的粘性率η’及びη”、それぞれ動的粘性率及び貯蔵粘性率に関連付けられる。G”及びG’は:G”=ωη’及びG’=ωη”を介して2つの動的粘性率η’及びη”に関連付けられるので、G”対G’の比であるtanδを計算できるはずである。G’値における不十分な精度の故に、MCR 501を用いて測定される1500より高いtanδの値は信頼できず、再現的でない。結果を表5に、実施例1の表1からの同じ結合剤を用いて調製された2−ブタノンエマルションに関する結果と一緒にまとめる。
【0152】
【表8】

【0153】
表5中の結果は、ポリアセタールの20重量%溶液は20℃及び100s−1において500mPa.sより高い粘性率ならびにまた250Paのせん断応力、1Hz及び20℃で測定される1000より低いtanδ値を示すが、分散液はすべて20℃及び100s−1においてもっと低い粘性率ならびに250Paのせん断応力、1Hz及び20℃において測定されるもっと高いかもしくは同等のtanδ値を示すことを示している。
【実施例4】
【0154】
結合剤番号1を用い、実施例2における1型分散液に関して記載した通りに分散液4.1を調製し、2つの分散液4.2及び4.3を実施例2における1型分散液に関して記載した通りに、しかし固体含有率をそれぞれ6及び8重量%増加させて調製した。
【0155】
分散液4.1〜4.3の粘性率を20℃及び100s−1において決定し、適用されるビード真空値、Pを変えて、コーティング中に空気エントレインメントが視覚により観察されない最低のビード真空値としてのPmin及び「細流」を生ずるビード破壊がない最高のビード真空値としてのPmaxを決定することにより、80m/分及び90m/分のコーティング速度においてコーティング性のウインドウ、ΔPを実験的に決定した。コーティング性のウインドウ、ΔPはPmax−Pminである。結果を下記の表6にまとめる。
【0156】
【表9】

【0157】
minはコーティング速度とともに増加し、与えられるコーティング速度では分散液の濃度とともに増加した。
【0158】
表7は、結合剤をまとめている表からの結合剤1、2、18、21、22及び23の組成及び特性ならびに表3からのコーティングヘッドから採取される試料について測定されるこれらの結合剤を含有する1型分散液の、250Paのせん断応力、1Hz及び20℃におけるtanδをまとめている。
【0159】
液体担体媒体中の結合剤の濃溶液の粘性率は、表7から示される通り、1型分散液のtanδ値に有意に影響し、表7では、結合剤番号1に類似の組成を有する結合剤を含有する1型分散液のtanδ値は10s−1及び20℃における結合剤の30重量%2−ブタノン溶液の粘性率の向上とともに低下した。結合剤の多分散性も1つの因子であったが、結合剤番号1を含む1型分散液は約120かもしくはそれより低いtanδ値を有し、それは結合剤番号1を含む1型分散液の場合に観察される非常に高いコーティング性のウインドウ(1.55〜3.12kPa)に反映されていることが表7から明らかである。
【0160】
【表10】

【0161】
本発明は、暗黙にもしくは明白に本明細書に開示されるいずれの特徴又は特徴の組み合わせあるいは現在特許請求されている発明に関連するか否かにかかわらず、いずれのそれらの一般化をも含むことができる。前記の記述を見て、本発明の範囲内で種々の修正を行い得ることが当該技術分野における熟練者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度で液体組成物をスロット押出しコーティングするための方法であって、該液体組成物は該コーティング温度及び100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し:
(i)1Hz、該コーティング温度及び測定中に該液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定(oscillatory dynamic viscosity measurements)により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための該液体組成物を選択し、該組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んでなる液体組成物から選択され;そして
(ii)該コーティング温度及び該コーティング速度においてビード真空(bead vacuum)を用い、スロットを介してウェブ支持体上に組成物をスロット押出しコーティングする
段階を含む方法。
【請求項2】
該液体組成物が1Hz、該コーティング温度及び測定中に該液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される200より小さいtanδを有する請求項1に従う方法。
【請求項3】
該少なくとも1種の結合剤がポリビニルアセタールである請求項1又は2に従う方法。
【請求項4】
該ポリビニルアセタールがポリビニルブチラール又はビニルアセト−アセタール及びビニルブチラール単位を含んでなるコポリマーである請求項3に従う方法。
【請求項5】
該液体組成物がさらに微粒子を含んでなる請求項1〜4のいずれか1つに従う方法。
【請求項6】
該液体組成物がさらに実質的に非−感光性の有機銀塩を含んでなる請求項1〜5のいずれか1つに従う方法。
【請求項7】
該液体組成物がさらに有機還元剤を含んでなる請求項1〜6のいずれか1つに従う方法。
【請求項8】
該方法がさらに乾燥の段階を含んでなり、そして該得られる乾燥された層がサーモグラフィー記録材料の感熱要素である請求項1〜7のいずれか1つに従う方法。
【請求項9】
該液体担体媒体が非−水性である請求項1〜8のいずれか1つに従う方法。
【請求項10】
該液体組成物がさらに着色剤を含んでなる請求項1〜5及び9のいずれか1つに従う方法。
【請求項11】
コーティング温度及び約40m/分におけるかもしくはそれより速いコーティング速度におけるスロット押出しコーティングのための液体組成物の選択方法であって、該液体組成物は該コーティング温度で100s−1のせん断速度において少なくとも500mPa.sの粘性率を有し:
(i)1Hz、コーティング温度及び測定中に該液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される1000より小さいtanδを有するスロット押出しコーティングのための該液体組成物を選択し、該組成物はそれぞれ少なくとも1種の結合剤及び液体担体媒体を含んで
なる液体組成物から選択される
段階を含む方法。
【請求項12】
該液体組成物が1Hz、該コーティング温度及び測定中に該液体組成物内でせん断応力における変動が事実上ない条件下での250Paのせん断応力における振動動的粘性率測定により測定される200より小さいtanδを有する請求項11に従う方法。
【請求項13】
該少なくとも1種の結合剤がポリビニルアセタールである請求項11又は12に従う方法。
【請求項14】
該ポリビニルアセタールがポリビニルブチラール又はビニルアセト−アセタール及びビニルブチラール単位を含んでなるコポリマーである請求項13に従う方法。
【請求項15】
該液体組成物がさらに微粒子を含んでなる請求項11〜14のいずれか1つに従う方法。
【請求項16】
該液体組成物がさらに実質的に非−感光性の有機銀塩を含んでなる請求項11〜15のいずれか1つに従う方法。
【請求項17】
該液体組成物がさらに有機還元剤を含んでなる請求項11〜15のいずれか1つに従う方法。
【請求項18】
該液体担体媒体が非−水性である請求項11〜16のいずれか1つに従う方法。
【請求項19】
該液体組成物がさらに着色剤を含んでなる請求項11〜15及び18のいずれか1つに従う方法。

【公表番号】特表2009−501071(P2009−501071A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520821(P2008−520821)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063080
【国際公開番号】WO2007/006615
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(504376795)アグフア−ゲヴエルト (24)
【Fターム(参考)】