説明

液体組成物並びにこれらを用いた飲料及び化粧料

【課題】水を主な溶媒として用いた飲料や化粧品などの液体中で、コラーゲンなどの水溶性タンパクと植物ポリフェノールとを混合したことによって生成する沈澱物質の形成を抑制する技術を提供すること。
【解決手段】本発明の液体組成物は、水と、植物ポリフェノールと、水溶性タンパクと、水中で該植物ポリフェノールと水溶性とが凝集及び/又は沈殿を抑制する凝集・沈殿抑制剤と、が混合され、前記凝集・沈殿抑制剤は、主鎖がα-1,3-マンノースで構成され、側鎖として、D-キシロース,及びD-グルクロン酸を有するキシログルクロノマンナンであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物ポリフェノールを含有する液体組成物に関し、詳しくは、液体中で植物ポリフェノールと水溶性タンパクとが混合されたことに起因する凝集・沈澱物質が生成することを防止する液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ライチ、黒米、クルミ、月見草、ブドウなどに含まれる植物ポリフェノールは、美白効果、美肌効果、保湿効果、抗酸化効果、抗アレルギー効果、癌細胞の増殖抑制効果、血圧上昇抑制効果などのヒトの健康維持・増進に役立つ様々な機能を有することが明らかになり、近年多くの飲料、食品、化粧品等に添加されるようになった。一方、コラーゲンは、胃粘膜保護作用、肌の保湿性向上、血圧上昇抑制などの有用な機能を有していることが知られており、このものも同様に多くの飲料、食品、化粧品等に添加されている。
【0003】
ところで、コラーゲンなどの水溶性タンパクと植物ポリフェノールは、水中で容易に結合して凝集・沈澱物質を形成する。この特性は、皮なめし、飲料の濁りや渋味の除去、チューインガムの製造などに利用されている。これに対して、前記した優れた機能を有する水溶性タンパクと植物ポリフェノールを飲料や化粧品などの液体組成物中で共存させようとすると、凝集・沈澱物質の生成により、製品の外観が著しく害されるという問題を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、即ち、本発明の目的は、水を主な溶媒として用いた飲料や化粧品などの液体中で、コラーゲンなどの水溶性タンパクと植物ポリフェノールとを混合したことによって生成する凝集・沈澱物質の形成を抑制することができる液体組成物並びにこれを用いた飲料及び化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、以下に記載されるものである。
(1) 水と、植物ポリフェノールと、水溶性タンパクと、水中で該植物ポリフェノールと水溶性タンパクとの混合によって生成する凝集及び/又は沈殿を抑制する凝集・沈殿抑制剤と、が混合され、前記凝集・沈殿抑制剤は、主鎖がα-1,3-マンノースで構成され、側鎖として、D-キシロース,及びD-グルクロン酸を有するキシログルクロノマンナンであることを特徴とする液体組成物。
(2) 前記植物ポリフェノールは、アントシアニジン類、フラボノイド類、ヒドロキシスチルベン類、カテキン類、タンニン類及びこれらの配糖体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)に記載の液体組成物。
(3) 前記植物ポリフェノールはライチ、黒米、クルミ、月見草、ブドウのうちの少なくとも1種に由来するもの又はそれらの混合物である(1)又は(2)記載の液体組成物。
(4) 前記キシログルクロノマンナンは、中の前記α-1,3-マンノース及び前記D-グルクロン酸の構成比〔α-1,3-マンノース:D-グルクロン酸〕は9:1〜9:3.5(moler)であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の液体組成物。
(5) 前記キシログルクロノマンナンは、粘度法により算出した重量平均分子量が800000〜1600000であることを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の液体組成物。
(6)前記水溶性タンパクはコラーゲンであることを特徴とする(1)〜(5)に記載の液体組成物。
(7) (1)〜(6)に記載の液体組成物を含有する飲料。
(8) (1)〜(6)に記載の液体組成物を含有する化粧料。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の液体組成物は、水と、植物ポリフェノールと、水溶性タンパクと、水中で該植物ポリフェノールと水溶性との混合によって生成する凝集及び/又は沈殿を抑制する凝集・沈殿抑制剤とが混合されてなるものである。
上記「植物ポリフェノール」とは、植物もしくはその加工物由来のポリフェノールを意味する。ここで、ポリフェノールは、一般に多価フェノールとも呼ばれ、広義には同一ベンゼン環上に2個以上の水酸基を持つ化合物の総称(化学大辞典、(株)東京化学同人発行)と定義されている。上記植物ポリフェノールを構成する代表的な化合物群としては、アントシアニジン類、フラボノイド類、ヒドロキシスチルベン類、タンニン類及びこれらの配糖体等を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0007】
ここで、アントシアニジン類として、例えば、ペラルゴニジン、シアニジン、及びディフィニジン、並びにこれらの配糖体であるアントシアニン類等が挙げられる。
【0008】
また、フラボノイド類として、アピゲニン、ルテオリン、バイカレイン、ケンフェロール、クエルセチン及びこれらの配糖体等が挙げられる。
【0009】
更に、ヒドロキシスチルベン類として、4−ヒドロキシスチルベン、2,4−ジヒドロキシスチルベン、3,4−ジヒドロキシスチルベン、4,4′−ジヒドロキシスチルベン、2,4,4′−トリヒドロキシスチルベン、3,4,4′−トリヒドロキシスチルベン、2′,4′,4−トリヒドロキシスチルベン、3′,4,4′−トリヒドロキシスチルベン、3′4,5′−トリヒドロキシスチルベン(レスベラトロール)、2,3′,4−トリヒドロキシスチルベン、2′,3,4トリヒドロキシスチルベン、2,2′,4−トリヒドロキシスチルベン、2′4,4′,5′−テトラヒドロキシスチルベン、2,3′,4,5′−テトラヒドロキシスチルベン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシスチルベン、3,3′,4,5′−テトラヒドロキシスチルベン、2′,3,4,4′−テトラヒドロキシスチルベン、3,3′,4,4′−テトラヒドロキシスチルベン、3,3′,4,5,5′−ペンタヒドロキシスチルベン、2,2′,4,4′,6′−ペンタヒドロキシスチルベン、2′,3,4,4′,6′−ペンタヒドロキシスチルベン及びこれらの配糖体等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いるものである。特に、3′4,5′−トリヒドロキシスチルベンが好ましい。尚、3′4,5′−トリヒドロキシスチルベンは別名レスベラトロールと呼ばれる化合物である。
【0010】
また、カテキン類として、カテキン、エピガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートおよびカテキンガレート及びこれらの配糖体等が挙げられる。
【0011】
また、タンニン類として、没食子酸、エラグ酸、ペンタガロイルグルコース、ペドゥンクラジン(Pedunculagin)、テリマグランジン(Tellimagrandin)I、カスアリクチン(Casuarictin)、テリマグランジン(Tellimagrandin)II、ルゴシン(Rugsin)C、カスアリニン(Casuarinin)等が挙げられる。
【0012】
本発明では、植物ポリフェノールとして、前記植物ポリフェノールを含有する植物又はその加工物を使用することもできるが、好ましくはこれらの抽出物や乾留物、さらに好ましくは該抽出物や乾留物から植物ポリフェノールを所望の程度に精製したものを使用する。
【0013】
植物ポリフェノールを含有する植物の例としては、ライチ、ブドウ、黒米、クルミ、月見草、茶(ツバキ科)、カカオ(アオギリ科)、黄杞(クルミ科)、コーヒー(アカネ科)、リンゴ(バラ科)、ホップ(クワ科)、カンキツ(ミカン科)、ローズマリー(シソ科)、ダイズ(マメ科)、ブルーベリー(ツツジ科)、フキ、赤米、シソ(シソ種子も含む)イチゴ(イチゴ種子も含む)、キウイ(キウイ種子も含む)、ニクジュヨウ(カンカニクジュヨウも含む)、リンゴンベリー等の植物あるいはそれらの加工物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0014】
これらの中ではライチ、ブドウ、黒米、クルミ、月見草、イチゴ、及びリンゴンベリー並びにそれらの加工物が好ましい。また、ライチ、ブドウ、黒米、クルミ、月見草、イチゴ、及びリンゴンベリー並びにその加工物に含まれている植物ポリフェノールの具体例としては、これらの極性溶媒抽出物などを挙げることができる。これらは、精製品の他、粗精製品であってもよく、またこれらを含有する製剤も使用できる。このとき、極性溶媒抽出物はその抽出原液を用いても良いし、賦形剤を混合しものを用いても良い。更に、疎水性のポリフェノールを水に溶けやすくするためにマルトシルシクロデキストリン等で包接したものも用いてもよい。これらの製剤として例えば、ライチ種子エキス−WSP、レスベラトロール−WSP0.5、黒米エキス−P、クルミポリフェノール−WSP10、月見草エキスWSPS、及びイチゴ種子エキス−P(いずれもオリザ油化株式会社製)等が挙げられる。また、この植物ポリフェノールとして、ポリフェノールを高濃度に含有する果汁や粉末果汁等を用いても良い。ポリフェノールを高濃度に含有する粉末果汁として、リンゴンベリーエキス−PJ(オリザ油化株式会社製)等が挙げられるが、これに限定されない。
【0015】
また、上記「水溶性タンパク」とは、飲料や化粧品などの溶液に添加することが可能で、かつ水に可溶性のものを意味する。水に対する溶解度の大小は問わない。通常、タンパク質は分子量が5000以上のものを指し、それ以下のものをペプチドと呼んで区別することが多い(化学大辞典、(株)東京化学同人発行)が、本発明におけるタンパク質には、上記のペプチドも含む。また、タンパク質には、構成成分により単純タンパク質、核タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、リンタンパク質などがあるが、本発明ではそれらの種類を問わない。また、この水溶性タンパクは水溶性であれば特に由来は限定されず、例えば、米由来のタンパクやペプチドを用いても良い。
これらのうち、本発明では、コラーゲンを用いることが最も好ましい。
【0016】
コラーゲンは、ヒトや動物の皮膚、骨、軟骨、腱、血管壁などに大量に存在するタンパク質である。これら天然コラーゲンの大半は、分子間の架橋により規則正しく会合し、水に不溶性の繊維状あるいは膜状の構造体を形成している。このコラーゲン繊維は、酢酸やクエン酸などによって抽出することができるが、溶液を中性条件下で加温すると、再び繊維を形成し不溶化する。現在、このような水不溶性の天然コラーゲンは、食品や化粧品の原料としてはあまり利用されていない。
【0017】
また、本明細書においてコラーゲンとは、水溶性コラーゲンを意味し、このものは幼獣の真皮等から天然物として僅かに得ることができるが、通常は水不溶性の天然コラーゲンを以下に示す方法などにより処理することによって得られる。
1)酵素可溶化コラーゲン:コラーゲン分子の両端に存在し、コラーゲン分子間の架橋に関与するテロペプチドと呼ばれる部分をペプシンやプロクターゼ等の酵素で切断することにより得られる水溶性コラーゲンである。これは、アテロコラーゲンとも呼ばれる。下記のサクシニル化を行った後、化粧品などに使用されている。
2)アルカリ可溶化コラーゲン:製造工程中でアルカリ処理されることによりテロペプチドが除去されて水可溶化したコラーゲンである。
3)ゼラチン:天然コラーゲンを熱処理して変性させ、水可溶化したもの。天然コラーゲンは、3本のポリペプチド鎖が複合3重螺旋構造を形成しているのに対して、ゼラチンは、3本のポリペプチド鎖が不可逆的に解かれ、それぞれが糸毬状になっている。
【0018】
4)加水分解コラーゲン:コラーゲンを酵素等により分子量3千から2万に加水分解したもので、コラーゲンペプチドと称されている。現在、食品原料として使用されているコラーゲンは、このタイプが多い。
5)加水分解ゼラチン:上記のゼラチンを酵素等により分子量3千から2万に加水分解したもので、ゼラチンペプチドと称されている。
6)化学修飾コラーゲン:上記のアテロコラーゲンの構造アミノ酸であるリジンの側鎖アミノ基をサクシニル化するなどして化学修飾されたものである。
【0019】
上記「凝集・沈殿抑制剤」とは、水中にて植物ポリフェノールと水溶性タンパクが混合されたときに起こる沈殿や凝集等を予防するために添加されたものである。本発明ではこの凝集・沈殿抑制剤としてキシログルクロノマンナンを用いることを特徴としている。
上記「キシログルクロノマンナン」とは、主鎖がα-1,3-マンノースで構成され、側鎖としてD-キシロース,及びD-グルクロン酸を有するヘテロ多糖類の総称である。
キシログルクロノマンナンは、α-1,3-マンノースとD-グルクロン酸との構成比、〔α-1,3-マンノース:D-グルクロン酸〕が9:1〜9:3.5(moler)、好ましくは9:1〜9:3(moler)であることが好ましい。9:1(moler)未満又は9:3.5(moler)を超えると凝集・沈殿を抑制する機能が劣るため、好ましくない。
【0020】
また、本発明のキシログルクロノマンナンは、α-1,3-マンノースとD-キシロースとの構成比は特に限定されないが、構成比、〔α-1,3-マンノース:D-キシロース〕で9:3〜9:6(moler)、好ましくは9:3.5〜9:6(moler)とすることができる。9:3(moler)未満又は9:6(moler)を超えると凝集・沈殿を抑制する機能が劣るため、好ましくない。
【0021】
また、上記キシログルクロノマンナンの側鎖は、D-キシロース,及びD-グルクロン酸以外にも他の糖を有してもよく、例えば、D-フコース、D-マンヌロン酸,L-グルロン酸等のうちの少なくとも1種以上を有してもよいし、更にこれらに限定されない。
また、側鎖としてD-フコースを有する場合、α-1,3-マンノースとD-フコース構成比は特に限定されないが、構成比、〔α-1,3-マンノース:D-フコース〕で9:0.5〜9:4(moler)、好ましくは9:1〜9:4(moler)である。9:0.5(moler)未満又は9:4(moler)を超えると凝集・沈殿を抑制する機能が劣るため、好ましくない。
【0022】
上記キシログルクロノマンナンの分子量は特に限定されないが粘度法にて測定した重量平均分子量で700000〜1600000、好ましくは、750000〜1300000、より好ましくは、800000〜1100000であることが好ましい。700000未満又は1600000を超えると凝集・沈殿を抑制する機能が劣るため、好ましくない。
【0023】
本発明のキシログルクロノマンナンを得る方法は特に限定されないが、本発明ではTremella属に分類されるヘテロ担子菌種を水で抽出処理することにより、製造することができる。
【0024】
このとき、Tremella属に分類されるヘテロ担子菌種の種類は特に限定されず、例えば、T.フシフォルミス(T. fuciformis)、T.メセンテリカ(T.
mesenterica)、T.アウランティア(T. aurantia)、T.シナバリナ(T. cinnabarina)、及びT. encepuala等が含まれるが、これらに限定されるものではない。尚、これらは1種のみ用いても良いし、2種以上併用して良い。また、これらのうち特にT.フシフォルミス(T.
fuciformis)が好ましい。優れた凝集・沈澱作用有するからである。
【0025】
本発明で用いられるTremella属に分類されるヘテロ担子菌種の形態は特に限定されず、例えば、菌糸体、子実体、酵母のいずれも用いることができる。尚、これらは1種の形態のみ用いることもできるし、2種以上の形態のものを併用することも可能である。
【0026】
Tremella属に分類されるヘテロ担子菌種としては、所謂生の状態のもの、その破砕物、その磨砕物、その乾燥物又はその乾燥粉砕物を用いることができ、また生の状態の菌糸体としては、菌糸体培養物から分離した菌糸体の他に、菌糸体培養物それ自体を用いることができる。これらに水を加えて抽出処理し、抽出液を得るが、この際、熱水で抽出処理するのが好ましい。水を加えた後に加熱しつつ抽出処理するか、又は当初から熱水を加えてより好ましくは保温しつつ抽出処理するのである。熱水で抽出処理すると、目的とする多糖類含有複合成分の収率を高めることができる。例えば、Tremella属に分類されるヘテロ担子菌種の乾燥粉砕物に10〜100倍重量の水を加え、60〜95℃に加熱して、必要に応じて還流下に撹拌しながら、0.5〜10時間抽出し、濾過又は遠心分離して、抽出液を得る。抽出残渣に同様の抽出処理を数回繰り返して行ない、抽出液を合わせることもできる。本発明ではかかる抽出液、その濃縮液、その乾燥物又はその乾燥粉砕物を有効成分とすることができる。
【0027】
また、本発明ではTremella属に分類されるヘテロ担子菌種の菌糸体培養物を固液分離処理し、分離液を得る。液体培地にTremella属に分類されるヘテロ担子菌種の菌体を接種し、培養すると、培養した菌糸体だけではなく、上記のような分離液に相当する培養液中にも凝集・沈澱抑制作用を有する多糖類含有複合成分が含まれてくるので、本発明ではかかる分離液、その濃縮物、その乾燥物又はその乾燥粉砕物を有効成分とすることができる。
【0028】
また、分離液又はこれらの濃縮液を極性有機溶媒で沈澱処理し、沈澱物を得るのが好ましい。極性有機溶媒としては各種のアルコール類やアセトン等を用いることができるが、低級アルコール、特にエチルアルコール又はイソプロピルアルコールを用いるのが好ましい。残留有機溶媒に配慮すると共に、目的とする多糖類含有複合成分の収率を高めるためである。例えば、上記のような抽出液又は分離液の1/2〜1/10濃縮液に1〜5倍重量のエチルアルコールを加え、撹拌した後に遠心分離して沈澱物を得る。目的とする多糖類含有複合成分は上記のような沈澱物中に含まれてくるので、本発明ではかかる沈澱物、その乾燥物又はその乾燥粉砕物を用いることができる。ここで、上述したキシログルクロノマンナンとしてオリザ油化株式会社製の白キクラゲ多糖体−P等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の特徴は、コラーゲンをはじめとする水溶性タンパクと植物ポリフェノールによる凝集・沈澱物質の生成を、凝集・沈殿抑制剤の添加によって抑制することにあるが、その効果は上記水溶性タンパクと植物ポリフェノールとを混合する前に、これらのいずれか一方、あるいは両方に必要量の凝集・沈殿抑制剤を作用させることによって発揮される。すなわち、例えば植物ポリフェノールの水溶液に必要量の凝集・沈殿抑制剤またはその水溶液を添加し、十分に攪拌した後、水溶性タンパクまたはその水溶液を混合するか、あるいは水溶性タンパクの水溶液に必要量の凝集・沈殿抑制剤またはその水溶液を添加し、十分に攪拌した後、植物ポリフェノールまたはその水溶液を混合すれば、植物ポリフェノールと水溶性タンパクによる凝集・沈澱物質の生成を完全に抑制することができる。
【0030】
また、植物ポリフェノールと凝集・沈殿抑制剤のそれぞれの乾燥物を予めよく混合した後、これを水に溶解し、該溶液に水溶性タンパクまたはその水溶液を混合するか、あるいは水溶性タンパクと凝集・沈殿抑制剤のそれぞれの乾燥物を予めよく混合した後、これを水に溶解し、該溶液に植物ポリフェノールまたはその水溶液を混合しても同様の効果が得られる。一方、植物ポリフェノールと水溶性タンパクにより凝集・沈澱物質を形成した後、凝集・沈殿抑制剤またはその水溶液を添加しても凝集・沈澱物質が溶解し、混合液が清澄化することはない。
【0031】
飲料や液状化粧品に添加する植物ポリフェノール、水溶性タンパクおよび凝集・沈殿抑制剤の量並びにそれらの比率は、原料の種類、製品の用途、使用目的等に応じて随意決定することができる。ただし、凝集・沈殿抑制剤は濃度依存的に植物ポリフェノールと水溶性タンパクによる凝集・沈澱物質の生成を抑制するので、特に凝集・沈殿抑制剤の添加量については、目的とする効果が得られるように適宜調節する。本発明における凝集・沈殿抑制剤の望ましい添加量は、植物ポリフェノールとの重量比で凝集・沈殿抑制剤:植物ポリフェノール=1:30〜1:3、より好ましくは1:20〜1:7である。凝集・沈殿抑制剤の添加量が下限未満であると、目的とする効果が得られない。一方、凝集・沈殿抑制剤の添加量が上限を越えると、目的とする効果は得られるものの、凝集・沈殿抑制剤の濃度が高くなるに伴い、溶液の粘性が増し、次第にゲル化するので、好ましくない。
【0032】
また、多くの場合、植物ポリフェノールはその有用な生理活性を期待して飲料や化粧品に添加されること、植物ポリフェノールは濃度が低ければ水溶性タンパクとの間で凝集・沈澱物質を形成し難いこと等を勘案すると、本発明を実施する場合、植物ポリフェノールを0.05g/L以上(フォーリンデニス法として)含有することが好ましく、0.2g/L以上(フォーリンデニス法として)含有することがさらに好ましい。しかし、植物ポリフェノールが5.0g/Lを越えると、製品の味や外観に悪影響を及ぼすようになり、製品化が困難になる。
【0033】
次に、本発明における飲料とは、アルコール飲料および各種清涼飲料全般を指す。清涼飲料は、炭酸ガスを含有する飲料、果汁を含有する飲料、乳酸を含有する飲料、あるいは酸性飲料(pH4.6未満)と低酸性飲料(pH4.6以上)など、その成分や特性により多くの分類が可能であるが、本発明にはいずれの飲料にも適用することができる。とりわけ、本発明は果汁を含有しない清涼飲料に好適であり、果汁を含有しない低酸性清涼飲料(pH4.6以上)に特に好適である。なお、上記飲料には、甘味料、酸味料、香料、保存料などの成分を必要に応じて適宜添加することができる。
【0034】
本発明において化粧料とは、石鹸、シャンプー、リンス、化粧水、整髪料、染毛剤、浴用剤、日焼け止め剤、制汗剤などを意味し、化粧料用液体組成物とは、水を主な溶媒とする液体状の化粧品並びに水を主な溶媒とする液体状の組成物であって、上記化粧品の原料となるものを指す。また、上記化粧料と同じ使用目的あるいは同じ使用態様で医薬品もしくは医薬部外品に分類されるものも、本発明における化粧料に包含される。本発明では、上記化粧品用液体組成物に保湿剤、界面活性剤、色素、香料、防腐・殺菌剤、酸化防止剤などを必要に応じて適宜添加することができる。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
ライチ種子エキス−WSP(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
14.2%)0.3gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A1)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B1)。溶液A1と溶液B1を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この実施例1の液体組成物中に含有されるポリフェノールをフォーリンデニス法にて測定したところ、0.852g/Lであった。
尚、この白キクラゲ多糖体−PをIRスペクトル法にて分析したところ、主鎖がα-1,3-マンノースで構成され、側鎖として、D-フコース,D-キシロース,及びD-グルクロン酸を有し、構成比〔α-1,3-マンノース:D-フコース:D-キシロース:-グルクロン酸〕がモル比で9:1:4:3であるヘテロ多糖類、即ち、キシログルクロノマンナンであることが確認された。更に、粘度法により重量平均分子量を算出したところ約1000000であることが確認された。
この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い褐色のやや濁った溶液で、凝集・沈澱物質の生成は認められなかった。
【0036】
(比較例1)
ライチ種子エキス−WSP(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
14.2%)0.3gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。(溶液a1)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B1)。溶液a1と溶液B1を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い褐色のやや濁った溶液で、白い凝集・沈澱物質の生成が認められた。尚、実施例1及び比較例1の結果を下記表1に示す。
【表1】

【0037】
(実施例2)
黒米エキス−P(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
17.2%)0.3gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A2)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B2)。溶液A2と溶液B2を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、紫色の溶液で、凝集・沈澱物質の生成は認められなかった。尚、この実施例2の液体組成物に含有されるポリフェノールをフォーリンデニス法にて測定したところ、1.032g/Lであった。
(比較例2)
黒米エキス−P(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
17.2%)0.3gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。(溶液a2)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B2)。溶液a2と溶液B2を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、紫色の溶液で、紫色の凝集・沈澱物質の生成が認められた。尚、実施例2及び比較例2の結果を下記表2に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
(実施例3)
クルミポリフェノール−WSP10(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
13.0%)0.3gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A3)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B3)。溶液A3と溶液B3を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い茶色の半透明の溶液で、凝集・沈澱物質の生成は認められなかった。この実施例3の液体組成物に含まれるポリフェノール含量をフォーリンデニス法にて測定したところ、0.78g/Lであった。
【0040】
(比較例3)
クルミポリフェノール−WSP10(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
13.0%)0.3gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。(溶液a3)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B3)。溶液a3と溶液B3を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い茶色の濁った溶液で、白い凝集・沈澱物質の生成が認められた。尚、実施例3及び比較例3の結果を下記表3に示す。
【0041】
【表3】

【0042】
(実施例4)
レスベラトロール−WSP0.5(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.5%)0.2gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A4)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B4)。溶液A4と溶液B4を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡いピンク色の半透明の溶液で、凝集・沈澱物質の生成は認められなかった。この実施例4の液体組成物に含まれるポリフェノール含量をフォーリンデニス法にて測定したところ、0.1g/Lであった
【0043】
(比較例4−1)
レスベラトロール−WSP0.5(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.5%)0.2gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。(溶液a4−1)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B4−1)。溶液a4−1と溶液B4−1を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡黄色の透明な溶液で、淡褐色の凝集・沈澱物質の生成が認められた。
【0044】
(比較例4−2)
レスベラトロール−WSP0.5(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.5%)0.2gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、アラビアガム(INSTANTGUM
AA、コロイドナチュレルジャパン株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液a4−2)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B4−2)。溶液a4−2と溶液B4−2を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡黄色の透明な溶液で、ピンク色の凝集・沈澱物質の生成が認められた。
【0045】
(比較例4−3)
レスベラトロール−WSP0.5(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.5%)0.2gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、アラビアガム(INSTANTGUM
AA、コロイドナチュレルジャパン株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液a4−3)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B4−3)。溶液a4−3と溶液B4−3を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、キサンタンガムのゲル化によるものと考えられる、ゲル状の浮遊物質の生成が認められた。尚、実施例4と比較例4−1〜4−3の結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
(実施例5−1)
月見草エキス−WSPS(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
57.7%)86.7mgを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A5−1)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.1gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B5−1)。溶液A5−1と溶液B5−1を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い茶色の溶液で、凝集・沈澱物質の生成は認められなかった。この実施例5−1の液体組成物に含まれるポリフェノール含量をフォーリンデニス法にて測定したところ、3.42g/Lであった。
【0048】
(実施例5−2)
月見草エキス−WSPS(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
57.7%)86.7mgを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)100mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A5−2)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.1gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B5−2)。溶液A5−2と溶液B5−2を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い茶色の溶液で、凝集・沈澱物質の生成は認められなかった。
【0049】
(比較例5)
月見草エキス−WSPS(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
57.7%)86.7mgを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)25mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液a5)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.1gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B5)。溶液a5−1と溶液B5を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。この溶液の様子、凝集・沈澱物質の有無を目視で確認したところ、淡い茶色の溶液で、淡褐色の凝集・沈澱物質の生成が認められた。
尚、実施例5−1及び実施例5−2と比較例5の結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
(実施例6)
イチゴ種子エキス−P(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.6%)0.1gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A6)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B6)。溶液A6と溶液B6を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。室温で4日間保管後にこの溶液の様子、沈殿物質の有無を目視で確認したところ、淡黄色のやや濁った溶液で、沈殿物質の生成は認められなかった。
【0052】
(比較例6−1)
イチゴ種子エキス−P(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.6%)0.1gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。(溶液a6−1)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B6−1)。溶液a6−1と溶液B6−1を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。室温で4日間保管後にこの溶液の様子、沈殿物質の有無を目視で確認したところ、淡黄色のやや濁った溶液で、淡黄色の沈殿物質の生成が認められた。
【0053】
(比較例6−2)
イチゴ種子エキス−P(オリザ油化株式会社製、ポリフェノール含量
2.6%)0.1gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、ペクチン(WAKO製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A6−2)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B6−2)。溶液A6−2と溶液B6−2を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。室温で4日間保管後にこの溶液の様子、沈殿物質の有無を目視で確認したところ、淡黄色のやや濁った溶液で、淡黄色の沈殿物質の生成が認められた。
【0054】
(実施例7)
リンゴンベリーエキス−PJ(オリザ油化株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、白キクラゲ多糖体−P(オリザ油化株式会社製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A7)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B7)。溶液A7と溶液B7を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。室温で4日間保管後にこの溶液の様子、沈殿物質の有無を目視で確認したところ、赤色の僅かに白濁した溶液で、沈殿物質の生成は認められなかった。
【0055】
(比較例7−1)
リンゴンベリーエキス−PJ(オリザ油化株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。(溶液a7−1)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B7−1)。溶液a7−1と溶液B7−1を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。室温で4日間保管後にこの溶液の様子、沈殿物質の有無を目視で確認したところ、赤色の溶液で、赤色の沈殿物質の生成が認められた。
【0056】
(比較例7−2)
リンゴンベリーエキス−PJ(オリザ油化株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した。この溶液をおよそ70℃に設定したホットスターラー上で加温及び激しく撹拌しながら、ペクチン(WAKO製)50mgを添加し、完全に溶解せしめた(溶液A7−2)。また、コラーゲン(水溶性コラーゲンペプチドSS、協和発酵株式会社製)0.5gを蒸留水20mLに添加し、超音波で溶解した(溶液B7−2)。溶液A7−2と溶液B7−2を混合した後、20%クエン酸でpH3.5付近に調整し、50mLにメスアップした。室温で4日間保管後にこの溶液の様子、沈殿物質の有無を目視で確認したところ、赤色の僅かに白濁した溶液で、沈殿物質の生成が認められた。
【0057】
【表6】

【0058】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0059】
以上、説明したように、本発明によれば、植物ポリフェノールと水溶性タンパクによる沈澱物質の生成が抑制され、清澄な外観を呈している。
【0060】
そのため、植物ポリフェノールや水溶性タンパクが有する優れた機能を、製品の外観を害することなく、これら飲料や化粧品に賦与することができる。さらに、本発明を応用すれば、コラーゲンとポリフェノール含量の高い果汁等を用いた飲料や食品において、沈澱物質の生成を防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、植物ポリフェノールと、水溶性タンパクと、水中で該植物ポリフェノールと該水溶性タンパクとの混合によって生成する凝集及び/又は沈殿を抑制する凝集・沈殿抑制剤と、が混合され、
前記凝集・沈殿抑制剤は、主鎖がα-1,3-マンノースで構成され、側鎖として、D-キシロース,及びD-グルクロン酸を有するキシログルクロノマンナンであることを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
前記植物ポリフェノールは、アントシアニジン類、フラボノイド類、ヒドロキシスチルベン類、カテキン類、タンニン類及びこれらの配糖体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記植物ポリフェノールはライチ、ブドウ、黒米、クルミ、及び月見草のうちの少なくとも1種に由来するもの又はそれらの混合物である請求項1又は請求項2記載の液体組成物。
【請求項4】
前記キシログルクロノマンナンは、中の前記α-1,3-マンノース及び前記D-グルクロン酸の構成比〔α-1,3-マンノース:D-グルクロン酸〕は9:1〜9:3.5(moler)であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記キシログルクロノマンナンは、粘度法により算出した重量平均分子量が800000〜1600000であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記水溶性タンパクはコラーゲンであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の液体組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6に記載の液体組成物を含有する飲料。
【請求項8】
請求項1〜請求項6に記載の液体組成物を含有する化粧料。

【公開番号】特開2010−1275(P2010−1275A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171783(P2008−171783)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(594045089)オリザ油化株式会社 (96)
【Fターム(参考)】