説明

液体繰出し容器

【課題】液体繰出し後のタンク内の残圧を除去することができて、その後の液体のタンク部Tからの漏れ出しを防ぐことができる液体繰出し容器を提供する。
【解決手段】液体を収容するタンク部Tを内蔵し、その先端供給口から液体を繰出し可能となった本体12と、タンク部T内を摺動して液体を先端供給口方向へと押し出すピストン22及びピストンロッド24と、本体12に対して移動可能に設けられ外部から操作が可能となった操作筒26と、操作筒の操作をピストン22及びピストンロッド24のタンク部T内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、を備え、変換機構は、操作筒26の操作に基づきピストン22及びピストンロッド24が前進運動した後にピストン22及びピストンロッド24の所定量の後退運動を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用、筆記用、修正用媒体等の液体を繰り出す液体繰出し容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体繰出し容器としては、特許文献1及び特許文献2に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1で開示される液体繰出し容器では、液体を収容するタンク部を有し、先端側に供給口を有する本体と、タンク部内を前進するピストンと、ピストンと一体的に連結され後方へと伸び、周面に雄ネジが形成されたピストンロッドと、本体の後部に相対回転可能に取り付けられた操作筒と、ピストンロッドの雄ネジに螺合する雌ネジ孔が形成されると共に、操作筒と一体に回転するピストンロッドガイドと、本体の後内部に固定されると共に、前記ピストンロッドが相対回転不能に挿通する挿通孔が形成されたラチェット筒と、を備え、操作筒の前端に鋸歯が形成され、ラチェット筒の後端には、該鋸歯と噛み合うと共に軸方向に出没可能となったラチェット歯が形成されており、操作筒を回転すると、ピストンロッドガイドが回転してピストンが前進して液体が先端の供給口より繰出されるようになっている。
【0004】
また、特許文献2で開示される液体繰出し容器では、液体を収容し、先端側に供給口を有するタンクと、タンク内を摺動するピストンと、ピストンと一体的に連結され後方へと伸び、周面に雄ネジが形成されタンクに対して相対的に回転不能となったネジ軸と、ネジ軸の雄ネジに螺合する雌ネジ孔が形成された回転カムと、回転カムの後方にあって該回転カムを一方向に回転するノックカムと、ノックカムに対して後方へ弾発され、ノック操作可能となったノック体と、を備え、ノック体とノックカムとのいずれか一方に突起が形成され、他方に軸線方向に傾斜し、該突起が嵌入された傾斜路が形成されており、ノック体のノック動作によりノックカムが回転し回転カムを回転してピストンが前進して液体が先端の供給口より繰出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−299442号公報
【特許文献2】特開2001−232273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来の液体繰出し装置においては、回転操作またはノック操作によりピストンが前進して、タンク内の圧力を上げて、供給口より液体が繰出されるようになっているが、タンク内に収容される液体の粘度によって、タンク内の圧力と液体粘度とのバランスがとられるまで、液体がじわじわと供給口から出続け、キャップを被せて供給口を塞いだ後でも、液体が漏れ出すおそれがある、という問題がある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、液体繰出し後のタンク内の残圧を除去することができて、その後のタンク部からの液体の漏れ出しを防ぐことができる液体繰出し容器を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明のうち請求項1記載の発明は、液体を収容するタンク部を内蔵し、その先端供給口から液体を繰出し可能となった本体と、
前記タンク部内を摺動して液体を先端供給口方向へと押し出す繰出し体と、
本体に対して移動可能に設けられ外部から操作が可能となった操作体と、
操作体の操作を繰出し体のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、
を備えた液体繰出し容器において、
前記変換機構は、操作体の操作に基づき繰出し体が前進運動した後に繰出し体の所定量の後退運動を発生させることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記変換機構が、繰出し体と螺合する螺合部材を備え、前記操作体の操作によって該螺合部材と繰出し体との間に相対回転を発生させて前記繰出し体の軸方向の前進運動に変換すると共に、前記螺合部材を後退させることによって前記繰出し体の後退運動を発生することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記変換機構が、前記操作体の操作開始に伴い螺合部材を前進させることによって前記繰出し体の前進運動を発生することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2または3記載の前記変換機構が、前記螺合部材を後退方向に付勢するリターンスプリングを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の前記変換機構が、前記螺合部材に形成された第1鋸歯と、該第1鋸歯に噛み合い軸方向に移動不能な第2鋸歯とを備えており、前記第1鋸歯と前記第2鋸歯とは、前記操作体からの操作に基づき噛み合いが外れる方向へと相対回転し、螺合部材は、その相対回転に応じて軸方向に前後動することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の前記螺合部材が前記本体に対して相対回転不能であり、
前記変換機構は、操作体の一方向の回転操作を繰出し体に伝達する第1伝達部材を備えており、前記第2鋸歯は、第1伝達部材の前記一方向の回転に対して同方向に回転する一方で、第1伝達部材の前記一方向と反対の方向の回転に対して、第1鋸歯との噛み合いによって回転しないことを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項4記載の前記変換機構が、前記螺合部材に形成された第1係合部と、該第1係合部に係合し軸方向に移動不能な第2係合部とを備えており、前記操作体の操作開始に伴い前記第1係合部と前記第2係合部との係合が外れる方向へと螺合部材が軸方向に前進し、前記螺合部材と前記繰出し体との相対回転発生後に、螺合部材が軸方向に後退して前記第1係合部と前記第2係合部とが係合することを特徴とする。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の前記変換機構が、操作体のノック操作を一方向の回転に変換して螺合部材に伝達する第2伝達部材を備えており、第2伝達部材は、操作体の操作開始に伴い操作体と一緒に前進して螺合部材を前進させ、その後に操作体に対して回転して螺合部材を回転させ、その後に操作体に対して相対的に後退して螺合部材を後退させることを特徴とする。
【0016】
明細書及び特許請求の範囲において、「操作体の操作開始に伴う」とは、操作開始と同時、部材の空転、遊びなどの遅延を含めた操作開始の直後をも含み、必ずしも、操作体の操作開始と同時に繰出し体または螺合部材が前進を開始する場合に限られない。操作体の操作開始をトリガとして繰出し体または螺合部材が前進を開始すればよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、変換機構は、操作体の操作に基づき繰出し体が前進運動した後に繰出し体の所定量の後退運動を発生させることができるため、この繰出し体の後退運動によって、タンク部内の残圧を解消することができて、タンク部からの液体の漏れ出しを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の液体繰出し容器の第1実施形態を表す全体縦断面図である。
【図2】第1実施形態による液体繰出し容器の要部部品の分解斜視図である。
【図3】第1実施形態によるピストンロッドガイドの(a)は側面図、(b)は縦断面図、(c)は(b)のc−c線に沿って見た断面図である。
【図4】第1実施形態によるラチェット筒の(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図5】第1実施形態による中ネジ筒の(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図6】第1実施形態による回り止め筒の(a)は側面図、(b)は縦断面図である。
【図7】第1実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図である。
【図8】第1実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図であり、操作筒を正方向に回転したときの図である。
【図9】第1実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図であり、操作筒を逆方向に回転したときの図である。
【図10】本発明の液体繰出し容器の第2実施形態を表す全体縦断面図である。
【図11】第2実施形態による液体繰出し容器の要部部品の分解斜視図である。
【図12】第2実施形態による尾冠の(a)は平面図、(b)は(a)のb−b線に沿って見た縦断面図、(c)は(b)のc−c線に沿って見た縦断面図、(d)は(b)のd−d線に沿って見た横断面図、(e)は(b)のe−e線に沿って見た横断面図である。
【図13】第2実施形態による操作筒の平面図である。
【図14】第2実施形態による摺動カムの(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図15】第2実施形態による回転カムの(a)は平面図、(b)は縦断面図である。
【図16】第2実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図である。
【図17】第2実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図であり、操作筒のノックを開始したときの図である。
【図18】第2実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図であり、操作筒のノックの途中の図である。
【図19】第2実施形態による液体繰出し容器を使用する際の縦断面図であり、操作筒のノックを完全に行ったときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
(第1実施形態)
図1において、符号10は液体繰出し容器であり、液体繰出し容器10は、例えば、化粧用、筆記用、修正用媒体等の液体Lが収容されたタンク部Tを有し、先端に先端供給口12bを有する本体12を有している。
【0020】
本体12の先端側には、本体12の先端の先端供給口12bに固定された先具14と、先具14の後部に固定されたパイプホルダー16と、パイプホルダー16の先端に固定された先端パイプ18と、先端パイプ18の先端がその基部内に挿入され先具14内に基部が固定されたブラシ(先端塗布体)20と、が設けられる。
【0021】
また、本体12の後端側には、タンク部T内を摺動可能となったピストン22と、ピストン22と一体的に連結されたピストンロッド24と、本体12の後部に取り付けられた操作筒26とが設けられ、さらに操作筒26内及び本体12の後端部内において、ピストンロッドガイド28と、ラチェット筒30と、中ネジ筒32と、回り止め筒34と、リターンスプリング36とが設けられる。ピストンロッド24とピストン22とで繰出し体を構成し、ピストンロッドガイド28と、ラチェット筒30と、中ネジ筒32と、回り止め筒34と、リターンスプリング36とで、操作筒26の操作を繰出し体のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構を構成する。以下、これらの部材について詳細に説明する。
【0022】
ピストンロッド24は、ピストン22から後方へと延びており、図2に示すように、その断面が円形形状から一部が切り欠かれた非円形形状、この実施形態では小判形状をしており、周面に雄ネジ24aが形成されている。
【0023】
操作筒26には、前部外周面に環状凹部26a(図2)が形成されており、この環状凹部26aは、本体12の後部内周面に形成された環状突起12d(図1)に嵌入されており、これによって、操作筒26は、本体12に対して相対回転可能に取り付けられている。また、操作筒26の内部後部には、内径方向に突出した複数の回り止め用リブ26c(図1)が形成されている。
【0024】
ピストンロッドガイド28には、図2及び図3に示すように、その後端に複数の縦リブ28aが形成されており、隣合う縦リブ28a、28aの間に、前記操作筒26の回り止め用リブ26cが嵌入されて、これによって、操作筒26とピストンロッドガイド28とは一体に回転するようになっている。また、ピストンロッドガイド28の内部には、ピストンロッド24の断面形状と合致する小判形状の挿通孔28cを持つ筒部28bが形成されており、前記ピストンロッド24がこの筒部28bの挿通孔28cを貫通することにより、ピストンロッド24はピストンロッドガイド28と一体に回転するようになっている。さらにピストンロッドガイド28には、前方に臨んで円周方向に鋸歯28dが形成されている。
【0025】
ラチェット筒30には、図2及び図4に示すように、その後端に、L字状スリット30aにより軸方向に弾性変形して揺動可能となったラチェット歯30bが一対形成されており、このラチェット歯30bは、ピストンロッドガイド28の鋸歯28dに噛み合っている。また、ラチェット筒30には、その前端において、前方に臨んで円周方向に鋸歯30cが形成されており、この鋸歯30cは、ピストンロッドガイド28の鋸歯28dの歯の向きとは反対の向きとなっている。ラチェット筒30は、ピストンロッドガイド28と後述の中ネジ筒32に挟まれて、軸方向に移動不能となっている。
【0026】
中ネジ筒32には、図2及び図5に示すように、その後端において、後方に臨んで円周方向に鋸歯32aが形成されており、この鋸歯32aはラチェット筒30の鋸歯30cと噛み合い可能となっている。また、中ネジ筒32の外周面には、複数の回り止め用リブ32bが形成される。また、中ネジ筒32の内部には雌ネジ孔32cが形成されて、この雌ネジ孔32cにピストンロッド24の雄ネジ24aが螺合しており、中ネジ筒32は螺合部材を構成する。
【0027】
図2及び図6に示すように、回り止め筒34の外周面の一部は多角形外周面34aとなっており、本体12の内周面の一部に形成された多角形孔12c(図1)と嵌合している。これら多角形外周面34aと多角形孔12cとで回り止め構造が形成され、回り止め筒34は本体12に対して相対的に回転不能となっている。また、回り止め筒34の多角形外周面34aに隣接して形成され前方に面した外段部34bが、本体12の内周面に形成されて後方に面した内段部12aに当接している。回り止め筒34は、本体12の内段部12aと操作筒26の先端との間に挟まれて、本体12に対して固定される。また、回り止め筒34の内周面には、複数の縦リブ34cが形成されており、隣合う縦リブ34c、34cの間に、前記中ネジ筒32の回り止め用リブ32bが嵌入されて、これによって、中ネジ筒32は回り止め筒34と共に本体12に対して回転不能となっている。
【0028】
回り止め筒34の後端と中ネジ筒32との間にはリターンスプリング36が介挿され、リターンスプリング36は、中ネジ筒32を常時後方へと付勢している。
【0029】
また、本体12の先端には、不使用時にブラシ20を保護するキャップ38が着脱可能に被着されている。
【0030】
以上のように構成される液体繰出し容器10を使用する場合は、図7に示すように、キャップ38を外して、ブラシ20を用いて塗布を行うが、ブラシ20から液体をさらに供給したいときには、操作筒26を本体12に対してある方向(正方向とする、例えば右回り)に回動する。
【0031】
操作筒26が本体12に対して回動されると、操作筒26と共にピストンロッドガイド28が同じ方向に回動し、ピストンロッド24も同じ方向に回動する。
【0032】
一方、ピストンロッド24と螺合する中ネジ筒32は、本体12に固定された回り止め筒34によって回転不能となっているために、ピストンロッド24と中ネジ筒32との間で相対回転が発生し、ピストンロッド24は、軸方向に前進し、ピストン22がタンク部T内を前進するので、タンク部T内の液体Lが本体12の先端側に設けられた供給口12bへと押圧され、先端パイプ18内を通り、ブラシ20先端より供給されて使用できるようになる。
【0033】
ピストンロッドガイド28が正方向に回動するときに、ピストンロッドガイド28の回動は、鋸歯28dとラチェット筒30のラチェット歯30bとの噛み合いによってラチェット筒30に伝達する。しかしながら、前述の通り、中ネジ筒32は回転不能となっているために、図8に示すように、ラチェット筒30の鋸歯30cと中ネジ筒32の鋸歯32aとの間で滑りが発生し、ラチェット筒30の鋸歯30cは中ネジ筒32の鋸歯32aの斜面を滑りながら回動し、中ネジ筒32は、リターンスプリング36のバネ力に抗して、軸方向前方に移動する。これによって、中ネジ筒32に螺合するピストンロッド24も中ネジ筒32の前方移動と共に移動する。ラチェット筒30の鋸歯30cが中ネジ筒32の鋸歯32aの頂を乗り越えると、中ネジ筒32はリターンスプリング36の反発力により後退する。
【0034】
こうして、中ネジ筒32が後退すると、ピストンロッド24及びピストン22も後退し、タンクT内が減圧され、供給口12bから外気を吸引することで、タンクT内の圧力を外気に等しくすることができる。
【0035】
操作筒26の操作が終了したときには、必ず中ネジ筒32が後退するので、タンクT内からの液体の漏れ出しを防ぐことができる。
【0036】
また、この中ネジ筒32の前後動に応じて鋸歯30c、32aとの間の噛み合いが繰り返されるので、クリック感を発生させることができる。使用者がクリック感に応じて操作することで、ピストンロッド24の所定ネジピッチに相当する回転分ピストン22が前進することになると共に、1つのクリックに応じて、中ネジ筒32の前後の往復動が行われることになり、中ネジ筒32の後退の度にタンクT内の圧力の減圧が行われる。
【0037】
次に、図9に示すように、操作筒26を本体に対して前記と反対の方向(逆方向とする、例えば左回り)に回動すると、ピストンロッド24も同じ方向に回動する。
【0038】
一方、正方向の回転時と同様に、中ネジ筒32は回転不能となっているために、ピストンロッド24と中ネジ筒32との間で相対回転が発生し、ピストンロッド24は、軸方向を後退し、ピストン22がタンク部T内を後退するので、タンク部T内の液体Lが供給口12bから吸引されることになる。
【0039】
このピストンロッドガイド28が逆方向に回動するときに、ラチェット筒30は、鋸歯30cの鋸歯32aとの噛み合いにより回動できないため、ピストンロッドガイド28の鋸歯28dは、ラチェット筒30のラチェット歯30bに対して滑り、ラチェット歯30bが軸方向に揺動しながら、ピストンロッドガイド28が回動する。このラチェット歯30bの揺動に応じて鋸歯28dとラチェット歯30bとの噛み合いが繰り返されるので、クリック感を発生させることができる。こうして、使用者がクリック感に対応して操作することで、ピストンロッド24の所定ネジピッチに相当する回転分ピストン22が後退することになる。但し、この後退操作時には、ラチェット筒30と中ネジ筒32との間で相対回転が発生しないため、中ネジ筒32の前後動は発生しない。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、操作筒26の回動による繰出し操作時に、中ネジ筒32が回動して中ネジ筒32とピストンロッド24との間の相対回転により両者の螺合によってピストンロッド24が前進することに加えて、中ネジ筒32の前後動によってピストンロッド24が一緒に前後動する。特に、操作筒26の操作開始に伴い、必ず中ネジ筒32が前進するために、ピストンロッド24及びピストン22が一緒に大きく前進してタンクT内に大きな圧力を加えて、タンクT内の液体を一気に供給口12bから押し出すことができる。また、操作筒26の回動操作を止めると、必ず、中ネジ筒32が後退するために、ピストンロッド24及びピストン22が一緒に大きく後退してタンクT内を減圧することができる。タンクT内の残圧を解除することができるので、操作終了後に供給口12bから液体が漏れ出すことはない。
【0041】
尚、この実施形態では、操作筒26の正逆操作を可能として、ピストン22をタンク部T内で前進及び後退のいずれも可能としていたが、これに限るものではなく、中ネジ筒32の前後動に伴うピストン22の前後動を除き、ピストン22にタンク部T内で前進のみを行わせる場合には、ラチェット筒30を省略することも可能である。ラチェット筒30を省略する場合には、ピストンロッドガイド28の鋸歯28dが中ネジ筒32の鋸歯32aと噛み合うように、ピストンロッドガイド28の鋸歯28dの向きを反対に変更することで対応できる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、図10は、本発明の第2実施形態を表す。
図において、符号100は液体繰出し容器であり、液体繰出し容器100は、例えば、化粧用、筆記用、修正用媒体等の液体Lが収容されたタンク部Tを有し、先端に先端供給口112bを有する本体112を有している。
【0043】
本体112の先端側には、本体112の先端の先端供給口112bに固定された先具114と、先具114の後部に固定されたパイプホルダー116と、パイプホルダー116の先端に固定された先端パイプ118と、先端パイプ118の先端がその基部内に挿入され先具114内に基部が固定されたブラシ(先端塗布体)120と、が設けられる。
【0044】
また、本体112の後端側には、タンク部T内を摺動可能となったピストン122と、ピストン122と一体的に連結されたピストンロッド124と、本体112の後端に固定された尾冠126と、が設けられ、さらに尾冠126内及び本体112の後端部内において、操作筒128と、摺動カム130と、回転カム132と、リターンスプリング134と、ノックスプリング136とが設けられる。ピストンロッド124とピストン122とで繰出し体を構成し、摺動カム130と、回転カム132と、リターンスプリング134と、ノックスプリング136とで、操作筒128の操作を繰出し体のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構を構成する。以下、これらの部材について詳細に説明する。
【0045】
ピストンロッド124は、ピストン122から後方へと延び、図11に示すように、その断面が円形形状から一部が切り欠かれた非円形形状、この実施形態では小判形状をしており、周面に雄ネジ124aが形成されている。
【0046】
尾冠126には、図11及び図12に示すように、その外周面に環状凹部126aが形成されており、この環状凹部126aは、本体112の後部内周面に形成された環状突起112d(図10)に嵌入される。また、外周面に多数の回り止め用リブ126bが形成されており、回り止め用リブ126bは、本体112の内周面に形成された縦溝112c(図10)に嵌入される。これによって、尾冠126は、本体112に対して固定される。
【0047】
さらに尾冠126には、その周面に第1開口126cと第2開口126dが形成される。第2開口126dは、その後端面が周囲の内周面よりも内径方向に突出しており(図12e参照)、さらに後端面には、係合突起126eが第2開口126d内に前方に突出するように形成される。また、尾冠126の内部には、ピストンロッド124の断面形状と合致する小判形状の挿通孔126gを持つ内筒部126fが形成されており、前記ピストンロッド124がこの内筒部126fの挿通孔126gを貫通することにより、ピストンロッド124は尾冠126及び本体112に対して回り止めされている。
【0048】
操作筒128には、図11及び図13に示すように、その側面に軸線方向に傾斜した傾斜溝128aが形成される。傾斜溝128aの後端部分は、後方へと凹んだ凹部128bとなっている。また、三方がスリット128cに包囲された弾性片128dを有しており、弾性片128dの表面に突起128eが形成される。突起128eが尾冠126の第1開口126cに軸方向移動可能に嵌入されており、突起128eが第1開口126c内を摺動することで、その摺動範囲内で、操作筒128を尾冠126及び本体112に対してノック操作することが可能となっている。
【0049】
摺動カム130は、図11及び図14に示すように、その側面に三方がスリット130aに包囲された弾性片130bを有しており、弾性片130bの表面に突起130cが形成される。突起130cが操作筒128の傾斜溝128aに摺動可能に嵌入されており、突起130cが傾斜溝128a内を摺動することで、摺動カム130は尾冠126及び本体112に対して回転可能となっている。また、摺動カム130の先端には、L字状スリット130dにより軸方向に弾性変形して揺動可能となったラチェット歯130eが一対形成されている。また、摺動カム130の内部には段部130fが形成される。
【0050】
回転カム132には、図11及び図15に示すように、後方に臨んで円周方向に鋸歯132aが形成されており、この鋸歯132aは摺動カム130のラチェット歯130eと噛み合っている。また、鋸歯132aよりも前方には、拡径部132bが形成されており、拡径部132bの後端には、円周方向に離間して複数の係合凹部132cが後方に向かって形成されている。この拡径部132bは、前記尾冠126の第2開口126dの後端面に係止されており、係合凹部132cは、第2開口126dの後端面に形成された係合突起126eに係合可能となっている。回転カム132の後端は、摺動カム130の段部130fに当接する。
【0051】
さらに回転カム132の内部には雌ネジ孔132dが形成されて、この雌ネジ孔132dにピストンロッド124の雄ネジ124aが螺合しており、回転カム132は螺合部材を構成する。
【0052】
尾冠126と回転カム132との間にはリターンスプリング134が介挿され、リターンスプリング134は、回転カム132を常時後方へと付勢している。
【0053】
また、摺動カム130と操作筒128との間にはノックスプリング136が介挿され、ノックスプリング136は両者を離反する方向へと付勢している。
【0054】
また、本体112の先端には、不使用時にブラシ120を保護するキャップ138が着脱可能に被着されている。
【0055】
以上のように構成される液体繰出し容器100を使用する場合は、図16に示すように、キャップ138を外して、ブラシ120を用いて塗布を行うが、ブラシ120から液体をさらに供給したいときには操作筒128を本体112に対してノックする。
【0056】
操作筒128が本体112に対してノックされて前進すると、操作筒128の傾斜溝128aに摺動カム130の突起130cが嵌入しているために、摺動カム130も動作を開始するが、ノック操作開始時は、回転カム132の係合凹部132cが尾冠126の係合突起126eと嵌合しており、回転カム132の回動は禁止されており、且つ回転カム132の鋸歯132aと摺動カム130のラチェット歯130eとの噛み合いによって摺動カム130もその回動が禁止されるために、摺動カム130は、操作筒128と共に前進する。
【0057】
図17に示したように、摺動カム130と一緒に回転カム132も前進するために、回転カム132の係合凹部132cと尾冠126の係合突起126eとの嵌合が解除され、回転カム132及び摺動カム130は回動可能となる。また、摺動カム130の前進運動も制限されると、図18に示したように、摺動カム130の突起130cが操作筒128の傾斜溝128aを相対的に移動し、摺動カム130は回動し、これに伴い回転カム132も回動する。
【0058】
ピストンロッド124は、尾冠126によって回り止めされているために、回転カム132が前進したときに、一緒に軸方向を前進し、その後、回転カム132が回動すると、回転カム132とピストンロッド124との間に相対回転が発生するので、ピストンロッド124は軸方向を前進する。このピストンロッド124の前進により、ピストン122がタンク部T内を前進するので、タンク部T内の液体Lが本体112の先端側に設けられた供給口112bへと押圧され、先端パイプ118内を通り、ブラシ120先端より供給されて使用できるようになる。
【0059】
操作筒128が尾冠126に対して摺動可能な範囲で完全に操作筒128のノックを行うと、摺動カム130の突起130cは、傾斜溝128aの端部に到達する。すると、リターンスプリング134の反発力によって、回転カム132及び摺動カム130が後退し、突起130cは、傾斜溝128aの端部の凹部128bに嵌合する。
【0060】
回転カム132が後退することで、ピストンロッド124及びピストン122も後退し、タンクT内が減圧され、供給口112bから外気を吸引することで、タンクT内の圧力を外気に等しくすることができる。よって、タンクT内からの液体の漏れ出しを防ぐことができる。
【0061】
また、回転カム132が後退することによって、回転カム132の係合凹部132cが尾冠126の係合突起126eと嵌合し、回転カム132は再びその回動が禁止される。
【0062】
次に、操作筒128のノックを解除すると、ノックスプリング136の反発力によって、操作筒128が後退し、摺動カム130の突起130cは、傾斜溝128aを相対的に移動し、摺動カム130は回動する。このとき、回転カム132は回動が禁止されているために、摺動カム130のラチェット歯130eが、回転カム132の鋸歯132aの斜面を滑りながら、先と反対方向に回動する。
【0063】
このノック操作を繰り返すことで、摺動カム130は一定の角度範囲の往復回動を繰り返すが、回転カム132は一定方向のみの回動を行い、回転カム132の回動によってピストンロッド124及びピストン122を一定距離だけ確実に前進させることができ、タンクT内に充填された液体を供給口112bから繰り出すことができる。
【0064】
以上のように本実施形態によれば、操作筒128のノックによる繰出し操作時に、回転カム132が回動して回転カム132とピストンロッド124との間の相対回転により両者の螺合によってピストンロッド124が前進することに加えて、回転カム132の前後動によってピストンロッド124が一緒に前後動する。特に、操作筒128の操作開始に伴い、必ず回転カム132が前進するために、ピストンロッド124及びピストン122が一緒に大きく前進してタンクT内に大きな圧力を加えて、タンクT内の液体を一気に供給口112bから押し出すことができる。また、操作筒128をノックしきると、回転カム132が後退するために、ピストンロッド124及びピストン122が一緒に大きく後退してタンクT内を減圧することができる。タンクT内の残圧を解除することができるので、操作終了後に先端供給口112bから液体が漏出ることはない。
【0065】
また、この実施形態では、操作筒128をノックしきった時に既に回転カム132が後退しているので、操作筒128を長時間押し続けていたとしても、既にタンクT内の残圧が解除されているために、液体が漏れ出ることを防ぐことができる。
【0066】
但し、以上の例に限らず、操作筒128がノックをしきった後に回転カム132が後退してもよく、または、操作筒128が後方に戻るのに伴って、回転カム132が後退するようにしてもよい。
【0067】
以上の実施形態において複数の部材で構成した部品を単一部材で構成することも可能であり、または単一の部材で構成した部品を複数の部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0068】
12、112 本体
12b、112b 先端供給口
22、122 ピストン(繰出し体)
24、124 ピストンロッド(繰出し体)
26、128 操作筒(操作体)
28 ピストンロッドガイド(第1伝達部材)
30 ラチェット筒
30c 鋸歯(第2鋸歯)
32 中ネジ筒(螺合部材)
32a 鋸歯(第1鋸歯)
34 回り止め筒
36 リターンスプリング
126e 係合突起(第2係合部)
130 摺動カム(第2伝達部材)
132 回転カム(螺合部材)
132c 係合凹部(第1係合部)
134 リターンスプリング
L 液体
T タンク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容するタンク部を内蔵し、その先端供給口から液体を繰出し可能となった本体と、
前記タンク部内を摺動して液体を先端供給口方向へと押し出す繰出し体と、
本体に対して移動可能に設けられ外部から操作が可能となった操作体と、
操作体の操作を繰出し体のタンク部内の軸方向の前進運動に変換する変換機構と、
を備えた液体繰出し容器において、
前記変換機構は、操作体の操作に基づき繰出し体が前進運動した後に繰出し体の所定量の後退運動を発生させることを特徴とする液体繰出し容器。
【請求項2】
前記変換機構は、繰出し体と螺合する螺合部材を備え、前記操作体の操作によって該螺合部材と繰出し体との間に相対回転を発生させて前記繰出し体の軸方向の前進運動に変換すると共に、前記螺合部材を後退させることによって前記繰出し体の後退運動を発生することを特徴とする請求項1記載の液体繰出し容器。
【請求項3】
前記変換機構は、前記操作体の操作開始に伴い螺合部材を前進させることによって前記繰出し体の前進運動を発生することを特徴とする請求項2記載の液体繰出し容器。
【請求項4】
前記変換機構は、前記螺合部材を後退方向に付勢するリターンスプリングを備えることを特徴とする請求項2または3記載の液体繰出し容器。
【請求項5】
前記変換機構は、前記螺合部材に形成された第1鋸歯と、該第1鋸歯に噛み合い軸方向に移動不能な第2鋸歯とを備えており、前記第1鋸歯と前記第2鋸歯とは、前記操作体からの操作に基づき噛み合いが外れる方向へと相対回転し、螺合部材は、その相対回転に応じて軸方向に前後動することを特徴とする請求項4記載の液体繰出し容器。
【請求項6】
前記螺合部材は前記本体に対して相対回転不能であり、
前記変換機構は、操作体の一方向の回転操作を繰出し体に伝達する第1伝達部材を備えており、前記第2鋸歯は、第1伝達部材の前記一方向の回転に対して同方向に回転する一方で、第1伝達部材の前記一方向と反対の方向の回転に対して、第1鋸歯との噛み合いによって回転しないことを特徴とする請求項5記載の液体繰出し容器。
【請求項7】
前記変換機構は、前記螺合部材に形成された第1係合部と、該第1係合部に係合し軸方向に移動不能な第2係合部とを備えており、前記操作体の操作開始に伴い前記第1係合部と前記第2係合部との係合が外れる方向へと螺合部材が軸方向に前進し、前記螺合部材と前記繰出し体との相対回転発生後に、螺合部材が軸方向に後退して前記第1係合部と前記第2係合部とが係合することを特徴とする請求項4記載の液体繰出し容器。
【請求項8】
前記変換機構は、操作体のノック操作を一方向の回転に変換して螺合部材に伝達する第2伝達部材を備えており、第2伝達部材は、操作体の操作開始に伴い操作体と一緒に前進して螺合部材を前進させ、その後に操作体に対して回転して螺合部材を回転させ、その後に操作体に対して相対的に後退して螺合部材を後退させることを特徴とする請求項7記載の液体繰出し容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−274989(P2010−274989A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131373(P2009−131373)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000156134)株式会社壽 (69)
【Fターム(参考)】