説明

液体肥料の製造装置および製造方法

【課題】小さな規模でも容易に有益な液体肥料の製造ができるようにするとともに、製造が安価で手軽にできるようにする。
【解決手段】処理槽に投入された原料を微生物で発酵させて液体肥料を製造する液体肥料製造装置において、前記処理槽22の上部に、固形の原料を破砕する破砕機21が備える。この破砕機21には、水を供給する水供給口21aと、該水供給口21aから供給された水と混ざって液状となった液状原料を前記処理槽22に注入する液状原料供給口21bを備える。前記処理槽22内には、供給された液状原料を処理槽22内の微生物とともに加温するヒータと、液状原料と微生物に空気を送り込んでばっ気をするためのエア噴出部材28と、処理槽22内で発酵して得られた液体肥料を排出する取り出し口31を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば野菜くずなどのような食品廃棄物から液体肥料を製造するための技術に関し、より詳しくは、個々の農家等であっても、有益な液体肥料を安価で手軽に製造できるようにする装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミなどの有機廃棄物を微生物で発酵させて液体肥料を製造する方法として、下記特許文献1の発明が提案されている。
【0003】
この方法は、バケツ状の外器の中に、それよりも小さくて外器の内面との間に間隙を作れる大きさの内器を備えた装置を用いるものである。すなわち、原料となる生ゴミを、水と微生物が入っている内器に投入して、内器の底のほうに備えた破砕刃によって投入された生ゴミを破砕して攪拌する。
【0004】
内器は液化槽として機能するもので、加熱ヒータを通して送り込まれる空気で加熱される。加熱された空気は上から下に向けてのびる送風パイプを通して内器の中に供給され、破砕された生ゴミの液化が促進される。液化された液化物は、内器の底の濾過材を通して内器から出て、内器と外器の間の間隙に入る。この間隙は熟成槽であり、液化物が熟成されて、液体肥料となる。
【0005】
熟成された液体肥料は、外器に設けられたバルブから取り出して使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2563013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明では、前記のようにバケツのような形状の装置を用いるので、小規模農家でも液体肥料を製造することができて便利に使用できるようにも思える。
【0008】
しかし、前記のような製造方法では、水と微生物が入っている内器の中に生ゴミを入れてから破砕するうえに、発酵中の破砕物が入っている状態でも生ゴミが投入されるので、内器の中に残っている内容物の量や質、投入される生ゴミの量、その質や割合などの条件によって破砕の程度に違いが生じる。つまり、破砕刃が回転するときの内器の内部の状況は常に異なるので、破砕刃を同じ回転数で同じ時間回転させても、必ずしも破砕状態が同一になるとは限らない。このため、微生物が常に所望通りに働くことを期待できず、均質な液体肥料を簡単に得ることができなかった。
【0009】
また、液化した液化物は内器と外器との間の間隙に順次流れ出るが、間隙に出た液化物は熟成しないうちに取り出される事態も生じる。このことからも、均質な液体肥料を得ることができなかった。
【0010】
このように液体肥料の成分にばらつきがあると、例えば使用するたびに成分分析をする必要が生じて、簡単には使えず、有益な肥料とはいえない。
【0011】
そこで、この発明は、有益な液体肥料の製造を、工場のような大きな規模で行えるのはもちろんのこと、例えば個々の農家などのような小さな規模でも行えるようにするとともに、製造が安価で手軽にできるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのための手段は、処理槽に投入された原料を微生物で発酵させて液体肥料を製造する液体肥料製造装置であって、前記処理槽の上部に、固形の原料を破砕する破砕機が備えられ、該破砕機には、水を供給する水供給口と、該水供給口から供給された水と混ざって液状となった液状原料を前記処理槽に注入する液状原料供給口を備え、前記処理槽には、供給された液状原料を処理槽内の微生物とともに加温するヒータと、液状原料と微生物に空気を送り込んでばっ気をするためのエア噴出部材が備えられ、前記処理槽に、処理槽内で発酵して得られた液体肥料を排出する取り出し口が設けられた液体肥料製造装置である。
【0013】
別の手段は、微生物で原料を発酵させて液体肥料を製造する液体肥料製造方法であって、処理槽の上部に設けられた破砕機に前記原料を投入して破砕する破砕ステップと、破砕された原料を前記破砕機に水を流し込んで液状にするとともに前記処理槽に流下させる液状原料投入ステップと、投入された液状原料を加温するとともにばっ気をして発酵させて液体肥料とする発酵ステップを有し、発酵した液体肥料を前記処理槽に設けられた取り出し口から取り出して使用できるようにする液体肥料製造方法である。
【0014】
この構成では、原料は、まず破砕機で破砕されて所望の細かさに破砕された後、破砕機の水供給口から供給された水と混ざって液状原料となり、破砕機の液状原料供給口から処理槽に供給される。処理槽に入った液状原料は、処理槽に入っていた微生物によって発酵される。このとき、処理槽のヒータが液体原料を加熱し、処理槽のエア噴出手段がばっ気を行って、発酵を促進する。予め破砕されて水と混合してできた液体原料は、破砕の程度などの条件が一定のものとなり、この状態で微生物による所望の発酵処理を受ける。エア供給手段はまた、発酵中の液体原料を処理槽内で攪拌して循環させる。循環されながら発酵がすすんだ液体原料は、液体肥料となる。液体肥料は、処理槽の取り出し口から取り出して、希釈するなどして適宜使用される。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、液体肥料は処理槽内のみで製造できるうえに、攪拌させるための機構も不要であり、装置を小さくコンパクトにすることができる。しかも、原料を破砕して一定条件の液体原料を得てから発酵処理がなされるので、原料等に応じて液体肥料の定量化を図ることができる。
【0016】
このため、成分のばらつきが生じにくく、得られた液体肥料は便利に使用できる有益なものである。また、その液体肥料の製造は、大規模にできるのはもちろんのこと、個々の農家や家庭などの小規模でも実施できるものとなる。そのうえ、構造が簡素であるために装置は安価に得られ、液体肥料の製造コストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液体肥料製造装置の正面図。
【図2】液体肥料製造装置の側面図。
【図3】液体肥料製造装置の平面図。
【図4】蓋体を開けた液体肥料製造装置の平面図。
【図5】液体肥料製造装置の概要構造を示す断面図。
【図6】作用状態の説明図。
【図7】作用状態の説明図。
【図8】作用状態の説明図。
【図9】液体肥料の効果を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、原料となる野菜くずなどを微生物で発酵させて液体肥料にする液体肥料製造装置11の正面図、図2はその側面図、図3はその平面図であり、これらの図に示すように、液体肥料製造装置11は一個の筐体12に収められて構成されている。
【0019】
筐体12は略直方体形状をなし、移動を容易にするためのキャスタ13を底面に備えている。図2に示したように筐体12における長手方向の一方側の面12aには作業台14が装着されており、原料の投入作業などが簡単に行えるように工夫されている。
【0020】
筐体12のうち前記作業台14を有する側の部分は上流側部分12bであり、長手方向の他方側の下流側部分12cよりも若干高く形成されている。この上流側部分12bに、材料を破砕する破砕機21が内蔵され、破砕機21から排出される液体原料を受ける処理槽22が前記下流側部分12cに備えられている。このように液体肥料製造装置11は、処理槽22の上部に固形の原料を破砕する前記破砕機21を有する。
【0021】
前記破砕機21における前記一方の面12aと反対側の側面には、水道等から水を供給するための水供給口21aと、破砕されて前記水供給口21aから供給された水と混ざって液状となった前記液状原料を排出して前記処理槽22に注入する液状原料供給口21bが上下に配設されている。また破砕機21の上面には、原料を入れ易くするために上端が開口したカップ形状のホッパ23が設けられている。このホッパ23は前記上流側部分12bの上面から突出している。前記破砕機21は、モータ出力が大きく回転数も高い、処理能力の高いものであるのが好ましい。
【0022】
前記水供給口21aには給水管24が接続されており、この給水管24の上流側の端にはホース等の接続口24a(図1参照)が設けられ、接続口24aの下流側には給水管24を開閉し流量を調節するためのタップ24bが備えられている。前記給水管24は前記処理槽22よりも高い前記上流側部分12bにおける他方側の面12dに設けられている。
【0023】
前記水供給口21aの下方に前記液状原料供給口21bが設けられる。液状原料供給口21bには逆L字状をなす供給管25が接続されている。
【0024】
前記処理槽22は直方体形状をなす有底箱状であり、上面の開口部は着脱可能な蓋体26で覆われる。蓋体26には図3に示したように通気穴26aが形成されている。
【0025】
この処理槽22の内底面22aにはヒータ27とエア噴出部材28が備えられている。ヒータ27は、処理槽22内に供給された前記液状原料を、予め処理槽22内に収容されていた微生物とともに加温するためものので、図4に示したように内底面22aの中央付近に設置される。
【0026】
前記エア噴出部材28は多孔質の棒状をなし、処理槽22の長手方向に延びるように複数本が並べられている。エア噴出部材28に対しては、前記上流側部分12bに内蔵されたエアポンプ29からエアを供給する。エアはエア供給管30を通って前記エア噴出部材28から噴出する。
【0027】
前記処理槽22における長手方向と直交する方向の一方側の面に、処理槽22内で発酵して得られた液体肥料を排出する取り出し口31が設けられている。取り出し口31がこのように設けられているので、前記エア噴出部材28は取り出し口31に対して横たわる姿勢で配設されることになる。エア噴出部材28の配設は、処理槽22内での循環を考慮して、処理槽22の内底面22aにおける前記取り出し口31の反対側に偏在するように行う。すなわち、図4に例示したようにエア噴出部材28を4本設ける場合、1本のエア噴出部材28aは取り出し口31側に設けて、残りの3本のエア噴出部材28b,28c,28dうちの一本のエア噴出部材28bを反取り出し口側の端に設けて、残りの2本のエア噴出部材28c,28dを処理槽22の長手方向に直交する方向の中間から反取り出し口側の偏った位置に設ける。前記ヒータ27は図4に示したように中央部分の前記2本のエア噴出部材28c,28dの間に設けるとよい。
【0028】
前記取り出し口31は処理槽22の内底面22aよりも高い上方位置に設けられており、液体肥料を、ポンプを用いずに自然流下により取り出す部分である。取り出し口31は排出管32によって筐体12の外に連通している。この排出管32には開閉と流量調節のためのタップ33が設けられている。
【0029】
前記取り出し口31の高さは、製造された液体肥料を自然流下により排出しても、一定量残るように設定されている。一定量とは、微生物が乾燥しない程度の量であり、投入する微生物の量などにもよるが、おおよそ発酵処理時の全体量の一割程度が残るようにするとよい。つまり図5に示したように、取り出し口31の下端の高さh1を、処理槽22の規定量h2の9分の1程度の高さになるように設定して、前記一定量の液体肥料が残るようにする。
【0030】
また前記取り出し口31における処理槽22の内面側に、取り出し口31を囲む中空立体形状のフィルタ34を備えている。すなわち、筒状をなす取り出し口31の端に、この取り出し口31の端部を平面で覆うのではなく、例えば図示例のような直方体箱状など、適宜の立体形状で広く覆う前記フィルタ34が備えられている。換言すれば、取り出し口31の内側の端を、中空状のフィルタ34で塞いでいる。フィルタ34の形状としては、図示例のもののほかに、例えば球状、円錐状、角錐状などがある。
【0031】
前記フィルタ34は図4に示したように、パンチングメタルなどからなり、全面に複数の穴34aを有する。穴34aは固形物を通過させない大きさである。具体的には、前記微生物を粒状の微生物吸着担体41(図6参照)に吸着させて処理槽22に収容する場合には、前記穴34aは少なくとも前記微生物吸着担体41が通過しない大きさに設定される。微生物を単体で用いる場合には、排出されないほうが望ましい固形物の通過を防止できる大きさに設定される。
【0032】
また前記フィルタ34の下面は、前記処理槽22の内底面22aとの間に隙間35を形成する高さに設けられ、この隙間35に前記複数本のエア噴出部材28のうちの1本のエア噴出部材28aが設置される(図7、図8参照)。
【0033】
このように構成された液体肥料製造装置11では、処理槽22の上部に設けられた破砕機21に前記原料を投入して破砕する破砕ステップと、破砕された原料を前記破砕機に水を流し込んで液状にするとともに前記処理槽に流下させる液状原料投入ステップと、投入された液状原料を加温するとともにばっ気をして発酵させて液体肥料とする発酵ステップを経て、液体肥料が製造される。前記発酵ステップの後段に、酵母、乳酸菌または納豆菌の少なくとも一種以上を混合してなり悪臭を放つ有機物を分解可能な微生物を投入する消臭ステップを設けてもよい。
【0034】
具体的には、処理槽22内には、微生物を吸着した前記微生物吸着担体41を収容しておく。微生物吸着担体41としては、例えばクラレ株式会社製「クラゲール」(登録商標)などを用いることができる。いずれも合成樹脂製で微細孔を多数有する粒状である。
【0035】
前記微生物としては、生物体を分解する活性を有するものが使用できる。例えば、納豆菌、枯草菌、酵母菌、乳酸菌などを適宜混合したものを用いるとよい。
【0036】
これらの微生物を培養したあと液体培地に懸濁させる。この懸濁液に前記微生物吸着担体41を投入して静置すれば、微生物は微生物吸着担体41に吸着させる。このようにして微生物が吸着された微生物吸着担体41を前記処理槽22に予め投入しておく。
【0037】
微生物吸着担体41の投入量は、処理槽22で処理する前記原料の量に応じて対して適宜設定される。例えば、原料と同程度であるとよく、具体的には原料1Kgに対して0.8Kg〜1.2Kg程度でよい。
【0038】
原料には前記野菜くずのほか、家庭生ゴミ、家庭や飲食店などから出る肉や魚等も含めた食品加工廃棄物、家畜の糞尿など、液体肥料製造装置11を使用する者の生活環境や社会環境に応じて適宜の生物系廃棄物を使用できる。
【0039】
まず、原料としての廃棄物を前記破砕機21に所定量投入する。投入は前記ホッパ23から行い、破砕機21を駆動して固形の原料を破砕する。前記破砕ステップである。このとき、同時に、給水管24を通して水供給口21aから破砕機21に水を供給して液状原料を得る。水はぬるま湯や活性水などであってもよい。
【0040】
水の供給に伴って、液状原料は液状原料供給口21bから処理槽22に供給される。これが液状原料投入ステップである。このときに供給する水の量は原料の量に応じて適宜設定される。
【0041】
この後、発酵ステップに移行する。発酵ステップでは、前記ヒータ27を駆動して液状原料を微生物吸着担体41とともに加温する。同時に、前記エアポンプ29を駆動して、エア噴出部材28から液状原料にエアを供給し、ばっ気する。エアの供給は多孔質のエア噴出部材28から勢いよく行い、図6に示したように液状原料を微生物吸着担体41とともに攪拌する。
【0042】
このとき、前記エア噴出部材28は図7に示したように、前記処理槽22の内底面22aにおける前記取り出し口31の反対側に偏在しているので、液状原料と微生物吸着担体41は、取り出し口31の反対側から巻き上げられて上昇し、取り出し口31側において降下するという循環がなされつつ、ばっ気される。
【0043】
熱とばっ気によって微生物による液状原料の発酵が行われる。この発酵がすすむと、液体原料は液体肥料となる。発酵処理中は、蓋体26で処理槽22の上端の開口部を閉じておいても、通気穴26aがあるので処理に支障はない。
【0044】
製造された液体肥料は、前記取り出し口31から適宜排出して使用される。取り出し口には図8に示したように前記フィルタ34が取付けられてあり、このフィルタ34の下にエア噴出部材28aが備えられている。このため、エア噴出部材28aから噴出されたエアは、フィルタ34を逆洗するような作用をする。つまり、前記のような循環をするうえに、取り出し口31を通して液体肥料が出るので、フィルタ34の穴34aには微生物吸着担体41や原料のかすなどの固形物が穴34aを塞ぐように移動するが、エア噴出部材28から出るエアがそれらの固形物を穴34aから放すような作用をして、目詰まりを防止する。このため、取り出し口31からの排液が支障なく円滑に行える。排液はタップ33(図1〜図4参照)を操作するだけの簡単な操作で電力も使わずに行える。
【0045】
前記取り出し口31の高さは、前記のように処理槽22の内底面22aより上方の所定の高さに設定されているので(図5参照)、液体肥料を出るだけ出しても、一定量の液体肥料が処理槽22の中に残ることになる。一定量とは、微生物吸着担体41が液体肥料に浸るような量である。このため、微生物が乾燥することを防止でき、微生物を連続して使用できるようになる。
【0046】
前記液体肥料製造装置11を用いて前記方法にて液体肥料を製造した具体例を次に説明する。
【0047】
納豆菌ベースの微生物を吸着させた10Kgの前記「クラゲール」を処理槽22に投入した。原料としては野菜くずとしてキャベツとブロッコリーの葉を用い、これを10Kg破砕機に投入し、水を180L供給して液体原料を製造し、順次処理層22内に供給した。
【0048】
つづいて、処理槽22内を25℃に設定してばっ気をした。24時間運転すると、発酵した液体肥料が得られた。前記微生物の一部に乳酸菌を用いているため、悪臭もしない液体肥料であった。
【0049】
前記液体肥料の成分について計量したところ、次の表1のような結果が得られた。
【0050】
【表1】

このように液体肥料は、窒素、燐、カリウムのそれぞれについて肥料として十分に含有するものであった。これは適宜希釈して使用できる濃度である。
【0051】
また前記の結果から、24時間の発酵処理で十分な液体肥料が得られることがわかる。
【0052】
この液体肥料の効果を確かめるべく、栽培中のホウレンソウに追肥として使用した。本葉が出た状態のホウレンソウに液体肥料を与えたところ、追肥をしたホウレンソウは液体肥料を与えなかったものと比較して大きく成長した。図9は、追肥から1ヶ月後の写真であり、左側が追肥をしないホウレンソウ、右側が追肥をしたホウレンソウである。写真からわかるように、液体肥料を与えたほうのホウレンソウは根の張りもしっかりしていた。
【0053】
以上のように、肥料として十分な成分を含む液体肥料は、一個の処理槽22内で製造できる。すなわち、液体原料は処理槽22の上部に一体に設けられた破砕機21で破砕して水と一定の比で混合することによって得られ、この液体原料を下に流して処理槽22内で発酵処理することで液体肥料が製造できる。そのうえ、攪拌させるためのドラムや羽根のような機構も不要であり、装置を小さくコンパクトにすることができる。
【0054】
このため、液体肥料製造装置11は安価に製造できるので、個々の農家などのような小規模での実施好適である。側面には作業台14を有するうえに、底面にはキャスタ13も備えられており移動が容易で、便利に使用できる。また、一個の処理槽22で発酵を行う構成であるので、清掃等のメンテナンスが容易である。
【0055】
しかも、原料を破砕して一定条件の液体原料を得てから発酵処理がなされるので、原料等に応じて液体肥料の定量化を図ることができる。このため、得られた液体肥料は便利に使用できる有益なものとなる。そのうえ、図9の写真から明らかなように、肥料としての効果も絶大である。大きく成長させることができ、短期間での収穫も可能となる。この結果、生産効率の大幅な向上を期待できる。
【0056】
また破砕した原料を破砕機21内で水と混合して処理槽22に供給する構成であるので、破砕作業のたびに破砕機21を清掃する作業は不要であって、使用が簡単である。このため、簡便に液体肥料を製造できる。
【0057】
液体肥料の排出は、目詰まりも起こさずに円滑に行えるので、この点からも使い勝手が良好である。
【0058】
そのうえ一度使用した微生物は、取り出し口31の高さを前記のように設定することによって連続して使用できるので、ランニングコストを抑えて廉価で液体肥料を得ることができる。
【0059】
さらに、原料として使用するものを選択することによって、用途に応じた液体肥料を得られる。例えば原料の野菜くずとしてキャベツを用いた場合、キャベツに適用するに好適な肥料とすることができる。これは、キャベツが生育する際に吸収した成分を、肥料の形で還元することができるからである。しかも、ミネラルなどの微量元素を含有するキャベツを用いるので、それを土壌に戻すことができるため、連作障害の発生を抑制することもできる。
【0060】
以上の構成は、この発明を実施するための一形態の構成であり、この発明は前記構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0061】
例えば、前記の説明では微生物を微生物吸着担体に吸着させて用いたが、微生物のみで利用してもよい。この場合、フィルタの穴の大きさは、固形物として排出してはならない物の大きさを考慮して適宜設定される。
【0062】
前記ヒータは処理槽内の内底面に設けるのではなく、側面に設けることも、内面から突出しないように設けることもできる。エア噴出部材についても、処理槽の内底面から突出しないように設けることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
11…液体肥料製造装置
21…破砕機
21a…水供給口
21b…液状原料供給口
22…処理槽
22a…内底面
27…ヒータ
28…エア噴出部材
31…取り出し口
34…フィルタ
34a…穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽に投入された原料を微生物で発酵させて液体肥料を製造する液体肥料製造装置であって、
前記処理槽の上部に、固形の原料を破砕する破砕機が備えられ、
該破砕機には、水を供給する水供給口と、該水供給口から供給された水と混ざって液状となった液状原料を前記処理槽に注入する液状原料供給口を備え、
前記処理槽には、供給された液状原料を処理槽内の微生物とともに加温するヒータと、液状原料と微生物に空気を送り込んでばっ気をするためのエア噴出部材が備えられ、
前記処理槽に、処理槽内で発酵して得られた液体肥料を排出する取り出し口が設けられた
液体肥料製造装置。
【請求項2】
前記取り出し口が、前記液体肥料を自然流下により取り出すものであるとともに、前記処理槽の内底面よりも上方に設けられた
請求項1に記載の液体肥料製造装置。
【請求項3】
前記処理槽の内面における取り出し口部分に、取り出し口を囲む中空の立体形状をなしており固形物を通過させない複数の穴を全面に有するフィルタを備えた
請求項1または請求項2に記載の液体肥料製造装置。
【請求項4】
前記フィルタの下に、前記エア噴出部材が設けられた
請求項3に記載の液体肥料製造装置。
【請求項5】
前記エア噴出部材が棒状に形成されて、前記処理槽の内底面に前記取り出し口に対して横たわる姿勢で複数本配設されるとともに、
これらのエア噴出部材が、前記処理槽の内底面における前記取り出し口の反対側に偏在している
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の液体肥料製造装置。
【請求項6】
微生物で原料を発酵させて液体肥料を製造する液体肥料製造方法であって、
処理槽の上部に設けられた破砕機に前記原料を投入して破砕する破砕ステップと、
破砕された原料を前記破砕機に水を流し込んで液状にするとともに前記処理槽に流下させる液状原料投入ステップと、
投入された液状原料を加温するとともにばっ気をして発酵させて液体肥料とする発酵ステップを有し、発酵した液体肥料を前記処理槽に設けられた取り出し口から取り出して使用できるようにする
液体肥料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−214346(P2012−214346A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81474(P2011−81474)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(510291426)
【Fターム(参考)】