説明

液体自動注入装置及び液体自動注入装置における液体自動注入方法

【課題】従来の液体自動注入装置では,標線付容器を,センサ手段により標線と液面を検出する位置に正確に移動しなければならず,高精度の制御が必要となる。
【解決手段】本発明では,標線付容器に液体を注入する際に位置させる空間を横方向に隔てて,二次元イメージセンサと,それに対向させて,面状投光部と,その左右側に配置し,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部とから構成し面状照明手段を配置し,標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像から水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出する検出手段と,それにより検出したそれらの位置に基づき液体注入手段を制御する制御手段を構成し,検出手段は,標線付容器の両端縁に線状に表れる配色部の像により,標線付容器の二次元画像上の水平方向の位置を検出する構成として課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動メスアップ装置等の液体自動注入装置及びこのような液体自動注入装置における液体自動注入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば含量均一性試験等の分析業務では,多種多様の溶液の調整を行うために、メスフラスコ等の多数の標線付容器に対して,メスアップ,即ち,ある条件下で,溶液を,一定量を定めた標線と称される線上まで注入する操作が必要である。
【0003】
このメスアップは,厳密に行う必要性があるので,人手により行った場合には多大な時間と労力を要していた。このため、これらの操作を,高精度で,且つ迅速に実行することができる液体自動注入装置の開発が求められている。
【0004】
このような液体自動注入装置の従来技術の一つとしては,特許文献1において提案されている自動メスアップシステムが挙げられる。この自動メスアップシステムは,標線及び液面の高精度の検出を可能としてメスアップの操作を高精度の状態で自動化するというもので,ロボットシステムにより所定位置にセットされ,溶媒を注入している標線付容器に,平行レーザ光を標線を含む部分に向けてレーザ発光部から投光し,標線付容器を透過したレーザ光をレーザ受光部により受光して,透過レーザ光の光量を検出し,この検出された光量信号に基づいて注入手段を制御して標線に基づく所望液面レベルまで液体を満たすというものである。この装置では,レーザ投光器とレーザ受光器を標線に対応させて位置決めするための駆動手段が設けられている。
【0005】
また他の従来技術として,特許文献2には,ターンテーブルに載置して所定位置まで移動させた標線を有するメスフラスコを挟んでセンサ手段と光源が配置され,光源によってメスフラスコを照射し,透過光をセンサ手段によって受光して,光量の低下により標線の位置と,液面の位置を検出する液体自動注入装置が提案されている。この装置では,センサ手段は,メスフラスコの高さ方向に配置した一次元CCDカメラであり,それから出力されるビデオ信号の波形により,光が遮光される標線及び液面を検出するように構成されている。
【0006】
更に他の従来技術として,特許文献3には,液量を設定量に調整する調整タンクと平行にレベルゲージを配置し,このレベルゲージの一方側に光源を配置すると共に,他方側に一次元CCDカメラ(一次元アレイ)を配置した構成の液面検出手段を備えた自動液量調整装置が提案されている。この装置は,CCDカメラの出力レベルにより液面を検出して,その液面を設定した位置に調整するものであり,この液面,従って液量の設定値は変更可能としており,標線は設けられていない。
【特許文献1】特開平6−295208号公報
【特許文献2】特開平6−50981号公報
【特許文献3】特開平1−276022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし以上に説明した従来技術では,以下に示すような課題があった。
1.特許文献1では,標線付容器をロボットアームにより所定位置まで移動して,正確に位置決めし,次いでレーザ光投光器とレーザ光受光器を,標線に対する所定位置に正確に位置決めする操作が必要である。このため,ロボットアームやレーザ光投光器,レーザ光受光器を高精度に制御することが必須である。
【0008】
2.また特許文献2では,センサ手段は,標線付容器の高さ方向に配置した一次元CCDカメラであるから,標線付容器に関する情報は高さ方向の情報のみであり,このため,標線付容器をロボットアームにより載置手段に載置する際に,左右方向の位置決めを正確に行う必要がある。従ってロボットアームを高精度に制御することが必須である。
【0009】
3.また特許文献3の装置において,液量を調整する容器は,設置されているタンクであって,メスフラスコ等の移動可能な標線付容器ではなく,本件発明の対象とは異なる。仮に,レベルゲージにおける液面の検出手段,即ち光源と一次元CCDカメラの配置を標線付容器に適用した場合にも,特許文献1,2と同様に,この操作をロボットアームやターンテーブル等のハンドリング手段を用いて自動化する際に,標線付容器を高精度で位置決めするための制御手段が必要となる。
【0010】
またメスフラスコ等の標線付容器は、同じ容量であっても,個々の形状が微妙に異なっており,標線の位置や所定量の液量にする液面の高さも異なっているため,上記引用文献に記載された従来技術のいずれを利用する場合においても,上記の位置決めを標線付容器の種類毎に行ったり,また複数のセンサ手段を設ける必要があった。
【0011】
一方,メスアップを自動的に行う場合において、液体の液面と標線の位置を検出し,これらが一致するまで溶液を注入する手法では,比較的時間がかかるため,液体の注入量と液面の上昇量との相対関係を用い,液面が標線に達するのに要する液体の注入量を推定して注入する手法もあるが,この手法では,上記相対関係を,各種の大きさの標線付容器毎に実験により求めて,予め制御手段に記憶させておく必要があり,面倒であった。
本発明は以上の課題を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するために,本発明では、まず標線付容器を液体注入手段の液体注入部の下方空間まで移動させ,標線付容器内に,標線に基づく所定の位置まで液体を注入する液体自動注入装置において,上記下方空間を横方向に隔てて,一方側に二次元イメージセンサを配置すると共に,他方側に,上記二次元イメージセンサに対向させて面状照明手段を配置し,面状照明手段は,面状投光部と,その左右側に配置し,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部とから構成し,上記下方空間に位置させた標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像から標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出する検出手段と,検出手段により検出した標線と液面の位置に基づき上記液体注入手段を制御する制御手段を構成し,検出手段は,標線付容器の両端縁に線状に表れる上記配色部の像により,標線付容器の二次元画像上の水平方向の位置を検出する構成とした液体自動注入装置を提案する。
【0013】
また本発明では,上記の構成において,面状照明手段の投光部の下側に,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成することを提案する。
【0014】
また本発明では,上記の構成において,面状照明手段から標線付容器の底部に至る範囲の下側に,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成することを提案する。
【0015】
また本発明では,上記の構成において,標線付容器の底部の下側に,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成することを提案する。
【0016】
また本発明では,上記の構成において,配色部は発光手段により構成することを提案する。
【0017】
また本発明では,上記の構成において,配色部は発光しない構成とすることを提案する。
【0018】
また本発明では,上記の構成において,二次元イメージセンサの入射側の光学系にテレセントリックレンズを設けることを提案する。
【0019】
また本発明では,上記の構成において,制御手段には,液体注入手段により一定量の液体を標線付容器に注入した際の液面の上昇量を検出手段により検出して,液面が標線に至るまでの注入量を演算する手段を構成することを提案する。
【0020】
また本発明では,標線付容器内に,液体注入手段により標線に基づく所定の位置まで液体を注入する液体自動注入装置において,液体注入手段の液体注入部の下方空間を横方向に隔てて,一方側に二次元イメージセンサを配置すると共に,他方側に,上記二次元イメージセンサに対向させて面状照明手段を配置し,上記下方空間に標線付容器を位置させて注入部から液体を注入する際,標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像して,その二次元画像から検出手段により容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出するものとし,液面を検出した後,液体注入手段による液体の注入を一時停止して,その時点の液面の位置を記憶し,次いで液体注入手段により所定量の液体を注入して,注入後の液面の位置を検出し,記憶している注入前の液面の位置とから,所定量の液体の注入に対する液面の上昇量を演算すると共に,注入後の液面の位置と,標線の位置と,上記液面の上昇量とから,液面を標線まで上昇させるための液体の注入量を演算し,この演算した注入量に基づいて液体注入手段を制御して液体の注入を行うこととした液体自動注入装置における液体自動注入方法を提案する。
【0021】
そして本発明では,上記の方法において,演算した注入量よりも所定量少ない液体を注入した後,二次元画像により液面を監視しながら液体の注入を行うことを提案する。
【0022】
また本発明では,上記の方法において,液体自動注入装置は,上述したいずれかの構成を有するものとすることを提案する。
【発明の効果】
【0023】
以上の構成の本発明では,標線付容器を液体注入部の下方空間に移動させた後,背面側から面状照明手段により照明されている標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像し,その二次元画像から標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出する。
【0024】
この際,二次元画像中には,標線付容器の広角のレンズ作用によって,照明手段の面状投光部の左右側に配置した配色部の像が,標線付容器の両端縁に縦方向に線状に表れ,この配色部の色は面状投光部の色と異ならせているため明確に区別して検出することができ,こうして,これらの平行な線状の像を検出することにより,それらの線状の像が標線付容器の両端縁に対応するものとして,標線付容器の二次元画像上の水平方向の位置を正確に検出することができる。
【0025】
このような標線付容器の水平方向の位置の検出は,二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像により行うので,水平方向の位置決めには余り精度を必要とせず,しかも正確な位置の検出を行うことができる。
【0026】
また標線付容器の標線や液面のメニスカスは,面状照明手段の面状投光部の光を透過しないため,二次元画像に表れるそれらの部分を検出手段で検出することにより,標線と液面の位置を検出することができる。
【0027】
従って検出手段により標線と液面の位置を検出しながら,液体の注入を行って,それらが一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線に基づいた所定量の液体注入を正確に行うことができる。
【0028】
標線と液面の位置の検出は,標線付容器の水平方向の位置の検出と同様に,二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像により行うので,標線の位置が異なっている標線付容器に対しても,従来のようにセンサを標線の位置に応じて移動させたり,複数のセンサを設けたりする必要は全くない。
【0029】
ここで,液面のメニスカスは,それよりも下方からの光に対して凸面鏡の作用を有するため,面状投光部よりも下方の個所,例えば,面状照明手段における面状投光部の下側,又は面状照明手段から標線付容器の底部に至る範囲の下側,又は標線付容器の底部の下側の,少なくともいずれかに面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成すると,液面のメニスカスに,これらの配色部の色が表れるため,面状投光部の照明光とは明確に区別することができ,従って,液面の位置の検出を,容易にそして正確に行うことができる。
【0030】
このように配色部の色は,面状投光部による照明光の色と異なれば良く,従って配色部は,発光手段で構成しても良いし,発光しない構成とすることもできる。また色の異ならせ方は,色彩で異ならせても良いし,明度で異ならせても良いし,またはこれらを組み合わせて異ならせても良い。例えば,その例としては,配色部を黒色とすることが挙げられる。
【0031】
次に,本発明において,二次元イメージセンサの入射側の光学系にテレセントリックレンズを設ければ,レンズと標線付容器との距離が異なっても,通常のレンズとは異なり,二次元イメージセンサにより撮像された標線付容器の像の高さが倍率変動等により変化して,標線付容器の周囲に渡ってリング状に形成されている標線の像や,液面のメニスカスの像が手前側と奥側とで二重に表れることがなく,常に一本の線状として表れるので,標線と液面の位置を常に精度良く検出することができる。またこのことからテレセントリックレンズを適用することにより,二次元イメージセンサに対しての奥行き方向の標線付容器の位置決め精度も余り高くする必要はない。
【0032】
上述したように本発明の装置では,検出手段により標線と液面の位置を検出しながら,液体の注入を行って,それらが一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線に基づいた所定量の液体注入を正確に行うことができるのであるが,液体の注入量と液面の上昇量との相対関係を用い,液面が標線に達するのに要する液体の注入量を推定して注入する手法を適用することもできる。
【0033】
即ち,標線付容器に注入部から液体を注入する際,標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像して,その二次元画像から検出手段により標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出するものとし,液面を検出した後,液体注入手段による液体の注入を一時停止して,その時点の液面の位置を記憶し,次いで液体注入手段により所定量の液体を注入して,注入後の液面の位置を検出し,記憶している注入前の液面の位置とから,所定量の液体の注入に対する液面の上昇量を演算すると共に,注入後の液面の位置と,標線の位置と,上記液面の上昇量とから,液面を標線まで上昇させるための液体の注入量を演算し,この演算した注入量に基づいて液体注入手段を制御して液体の注入を行うようにすれば,径等の異なった標線付容器の夫々について,従来のように,予めの実験により液体の注入量と液面の上昇量との相対関係を求めて,これを記憶しておく必要がなく,液面が標線に達するのに要する液体の注入量を推定して注入する手法を適用することができる。
【0034】
このような手法は,標線と液面の位置を検出しながら,液体の注入を行って,それらが一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線に基づいた所定量の液体注入を行う手法の前段階として行うこともできる。
【0035】
これらの手法に使用する液体自動注入装置としては,上述した本発明に係る液体自動注入装置を使用することにより,これらの手法を行う際に,標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置の検出を,確実に,しかも容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る液体自動注入装置の全体構成の一例を模式的に示す斜視図,図2は要部を模式的に示す側面図,図3は面状照明手段を模式的に示す正面図である。
符号1は基台であり,この基台1上に液体注入手段2と,標線付容器3を所定位置に移動させるためのターンテーブル4を設けている。
【0037】
液体注入手段2は,シリンジポンプ5と,その吸込側にチューブ6を介して接続した液体容器7と,吐出側にチューブ8を介して接続したプローブニードル等の液体注入部9と,注入制御手段10とから構成している。液体注入部9は,基台1上に設けた支持部11によりターンテーブル4の上方に支持されており,その下方空間12において標線付容器3に液体を注入する構成としている。
【0038】
そして支持部11は,上記下方空間12を横方向に隔てて,一方側に二次元イメージセンサ13を支持すると共に,他方側に,この二次元イメージセンサ13に対向させて面状照明手段14を支持している。
【0039】
二次元イメージセンサ13にはレンズ等の撮像用光学系15を設けており,また面状照明手段14は,矩形状の面状投光部16を設けており,その周囲に面状投光部16の投光色とは色を異ならせた配色部17を構成している。図3に示されるように,左右側の配色部17aと下側の配色部17bは幅を太く形成している。
【0040】
また,ターンテーブル4には,標線付容器3を安定に載置して支持するための凹部18を形成している。
【0041】
一方,二次元イメージセンサ13からの撮像信号は,その信号を処理する検出手段19に入力され,その検出信号は制御手段20に入力される。そして制御手段20は,上記検出信号に基づいて適宜の処理を行って注入制御手段10を制御する。尚,検出手段19は制御手段20の一つの機能として構成することもできる。
【0042】
更にこの実施の形態では,ターンテーブル4において,面状照明手段14から標線付容器3の底部に至る範囲と,標線付容器3の底部の下側に,夫々面状投光部16の投光色とは色を異ならせた配色部21a,21bを構成している。
【0043】
尚,図において符号22は標線付容器3に形成されている標線,23は標線付容器3に注入された液体の液面のメニスカスを示すものである。
【0044】
以上の構成において,この実施の形態では,標線付容器3をターンテーブル4の凹部18上に載置した状態で,ターンテーブル4を駆動して標線付容器3を液体注入部9の下方空間12に移動する。
【0045】
次いで背面側から面状照明手段14により照明されている標線付容器3を二次元イメージセンサ13により撮像し,その二次元画像24から標線付容器3の水平方向の位置と,標線22及び液面の夫々の位置を検出する。
【0046】
即ち,この二次元画像24中には図4に模式的に示したように,照明手段の面状投光部の左右側に配置した配色部17aの像25が,標線付容器3の広角のレンズ作用によって,標線付容器3の両端縁に縦方向に線状に表れており,この配色部17aの色は面状投光部16の投光色と異ならせているため,検出手段19によって明確に区別して検出することができる。
【0047】
こうして,二次元画像24中に表れる,色の異なった平行な線状の像25を検出することにより,それらの線状の像25が標線付容器3の両端縁に対応するものとして,標線付容器3の二次元画像24上の水平方向の位置を正確に検出することができる。
【0048】
このような標線付容器3の水平方向の位置の検出は,二次元イメージセンサ13により撮像した二次元画像24により行うので,水平方向の位置決めには余り精度を必要とせず,しかも正確な位置の検出を行うことができる。
【0049】
このように二次元画像24中の標線付容器3の位置を検出した後,検出手段19は,標線22と液面のメニスカス23を検出するのであるが,これらの標線22や液面のメニスカス23は,面状照明手段14の面状投光部16の光を透過しないため,二次元画像24中に表れるそれらの部分22,23の像を検出手段19で検出することにより,標線22と液面の位置を容易に検出することができる。
【0050】
従って制御手段20は,検出手段19からの標線22と液面の位置の検出信号を監視しながら,注入制御手段10を制御して,液体の注入を行い,標線22と液面の位置が一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線22に基づいた所定量の液体注入を正確に行うことができる。
【0051】
ここで,この実施の形態では,面状照明手段14は,上記配色部17aと共に,矩形状の面状投光部16の下側にも面状投光部16の投光色とは色を異ならせた配色部17bを構成しており,更にターンテーブル4において,面状照明手段14から標線付容器3の底部に至る範囲と,標線付容器3の底部の下側に,夫々面状投光部16の投光色とは色を異ならせた配色部21a,21bを構成しており,液面のメニスカス23は,それよりも下方からの光に対して凸面鏡の作用を有するため,これらの配色部17b,21a,21bの色が液面のメニスカス23の像に表れる。従って,二次元画像24中において,液面のメニスカス23を面状投光部の照明光とは明確に区別することができ,従って,二次元画像24中における液面の位置の検出を,容易にそして正確に行うことができる。
【0052】
ここで,以上の配色部17a,17b,21a,21bの色は,面状投光部16による照明光の色と異なれば良いので,これらの配色部は,発光手段で構成しても良いし,発光しない構成とすることもできる。また色の異ならせ方は,色彩で異ならせても良いし,明度で異ならせることもでき,またはこれらを組み合わせて異ならせることもできる。例えば,その好適な例としては,配色部17a.17b,21a,21bを黒色とすることが挙げられる。また,液面のメニスカス23に関する配色部17b,21a,21bは,これらのうちのいずれかを単独で,あるいは適宜に組み合わせて構成することができる。
【0053】
次に,この実施の形態においては,二次元イメージセンサ13の入射側の光学系にテレセントリックレンズ15を設けているので,このレンズ15と標線付容器3との距離,即ち奥行きが異なっても,通常のレンズとは異なり,二次元イメージセンサ13により撮像された標線付容器3の像の高さが倍率変動等により変化することがない。従って,二次元画像24において,標線付容器3の周囲に渡ってリング状に形成されている標線22の像や,液面のメニスカス23の像が手前側と奥側とで二重に表れることがなく,常に一本の線状として表れるので,標線22と液面の位置を常に精度良く検出することができる。またこのことからテレセントリックレンズ15を二次元イメージセンサ13の入射光学系に利用することにより,二次元イメージセンサに対しての奥行き方向の標線付容器3の位置決め精度も余り高くする必要はない。
【0054】
上述したようにこの実施の形態の装置では,制御手段20が検出手段19からの標線22と液面の位置の検出信号を監視しながら,注入制御手段10を制御して,液体の注入を行い,標線22と液面の位置が一致した時点で液体の注入を停止するという手法により,標線22に基づいた所定量の液体注入を正確に行うことができるのであるが,液体の注入量と液面の上昇量との相対関係を用い,液面が標線に達するのに要する液体の注入量を推定して注入する手法を適用することもできる。
【0055】
図5は,このような手法を適用した液体自動注入方法の一例の説明する流れ図である。
この液体自動注入方法においては,まずステップS1において,ターンテーブル4の凹部18に載置した標線付容器3を液体注入部(プローブニードル)9の下方に移動する。
次いでステップS2では,面状照明手段14によって背面側から照明された標線付容器3を二次元イメージセンサ13によって撮像して,上述したように,その二次元画像24から検出手段19により標線付容器3の二次元画像24中の位置を検出する。
次いでステップS3では,上述したように二次元画像24により標線22の位置を検出する。即ち,この時点では,まだ液体の注入を行っていないので,二次元画像24中には液面のメニスカス23の像は表れていない。
次いでステップS4では,検出手段19からの検出信号を制御手段20が監視しながら,注入制御手段10を制御して液体の注入を開始する。こうして標線付容器3に液体が次第に注入されていき,液面のメニスカス23が二次元画像24により検出できる位置まで上昇した時点で注入を停止する。
次いでステップS5では,注入を停止した時点の液面の位置を記憶した後,予め設定された所定量の液体を注入する。液面の位置の記憶は,検出手段19や制御手段20のいずれかに設けた記憶手段(図示省略)に記憶することができる。
次いでステップS6では,所定量の液体が注入された後の液面の位置を検出手段19により検出する。
ついでステップS7では,所定量の液体が注入された後の液面の位置と,記憶されている注入前の液面の位置の差から,所定量の液体の注入に対しての液面の上昇量を演算して記憶する。この演算は,制御手段20等に設けた演算手段26により行う。
次いでステップS8では,注入後の液面の位置から標線22までの所要上昇量を検出手段19により検出し,これを所定量の液体の注入に対しての液面の上昇量で除算した後,液体の所定量を乗算することにより,液面を標線22まで上昇させるための液体の注入量を演算手段26により演算して求める。
こうして液体の注入量を演算により求めた後,制御手段20は注入制御手段10を制御して,演算した注入量の液体を注入し,こうして標線22に基づく所定量の液体の注入を自動的に行うことができる。
【0056】
以上の手法では,標線22と液面の位置の検出信号を監視しながら,液体の注入を行い,標線22と液面の位置が一致した時点で液体の注入を停止するという手法と比較して,液体の注入速度を速くすることができ,従って液体の注入に要する時間を短縮することができる。
【0057】
しかしながら後者の手法は,この手法と比較して,より正確な液体の注入制御を行うことができるので,これらの手法を組み合わせて注入制御を行うことができる。
【0058】
即ち,図6は,このような手法を適用した液体自動注入方法の一例の説明する流れ図である。
この液体自動注入方法におけるステップS1〜S8までの流れは,先の液体自動注入方法における流れと同様であるため,重複する説明は省略する。
この液体自動注入方法では,ステップS8の次のステップS10において,ステップS8で演算した注入量よりも所定量少ない液体をまず注入する。このステップS10における液体の注入速度は,先の液体自動注入方法におけるステップS9と同様に速くすることができる。
次いでステップS11においては,液体の注入速度を落とし,標線22と液面の位置の検出信号を監視しながら,液体の注入を行い,標線22と液面の位置が一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線22に基づき所定量の液体を正確に注入することができる。
【0059】
この液体自動注入方法では,液体の注入に要する時間を短縮すると共に,より正確な注入制御を行うことができる。
【0060】
尚,以上に説明した実施の形態では,標線付容器3は一本のみ標線22を設けたものを挙げているが,複数本の標線22を有する標線付容器3にも本発明の装置及び方法を適用できることは勿論である。
【0061】
また以上に説明した実施の形態では,標線付容器3を所定位置まで移動させる手段としてターンテーブル4を説明しているが,この他,ロボットアーム等の適宜のハンドリング手段を適用できることも勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は以上のとおりであるので、以下に示すような特徴を有し,産業上の利用可能性が大である。
1.標線付容器を液体注入部の下方空間に移動させた後,背面側から面状照明手段により照明されている標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像し,その二次元画像から標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出する際,二次元画像中には,標線付容器の広角のレンズ作用によって,照明手段の面状投光部の左右側に配置した配色部の像が,標線付容器の両端縁に縦方向に線状に表れ,この配色部の色は面状投光部の色と異ならせているため明確に区別して検出することができ,こうして,これらの平行な線状の像を検出することにより,それらの線状の像が標線付容器の両端縁に対応するものとして,標線付容器の二次元画像上の水平方向の位置を正確に検出することができる。
2.このような標線付容器の水平方向の位置の検出は,二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像により行うので,水平方向の位置決めには余り精度を必要とせず,しかも正確な位置の検出を行うことができる。
3.こうして,標線と液面の位置を検出しながら,液体の注入を行って,それらが一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線に基づいた所定量の液体注入を正確に行うことができる。
4.標線と液面の位置の検出は,標線付容器の水平方向の位置の検出と同様に,二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像により行うので,標線の位置が異なっている標線付容器に対しても,従来のようにセンサを標線の位置に応じて移動させたり,複数のセンサを設けたりする必要は全くない。
5.液面のメニスカスは,それよりも下方からの光に対して凸面鏡の作用を有するため,面状投光部よりも下方の個所,例えば,面状照明手段における面状投光部の下側,又は面状照明手段から標線付容器の底部に至る範囲の下側,又は標線付容器の底部の下側の,少なくともいずれかに面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成することにより,液面のメニスカスに,これらの配色部の色が表れるため,面状投光部の照明光とは明確に区別することができ,従って,液面の位置の検出を,容易にそして正確に行うことができる。
6.二次元イメージセンサの入射側の光学系にテレセントリックレンズを設ければ,レンズと標線付容器との距離が異なっても,通常のレンズとは異なり,二次元イメージセンサにより撮像された標線付容器の像の高さが倍率変動等により変化して,標線付容器の周囲に渡ってリング状に形成されている標線の像や,液面のメニスカスの像が手前側と奥側とで二重に表れることがなく,常に一本の線状として表れるので,標線と液面の位置を常に精度良く検出することができる。またこのことからテレセントリックレンズを適用することにより,二次元イメージセンサに対しての奥行き方向の標線付容器の位置決め精度も余り高くする必要はない。
7.本発明の装置では,検出手段により標線と液面の位置を検出しながら,液体の注入を行って,それらが一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線に基づいた所定量の液体注入を正確に行うことができるのであるが,液体の注入量と液面の上昇量との相対関係を用い,液面が標線に達するのに要する液体の注入量を推定して注入する手法を適用することにより,液体の注入に要する時間を短縮することができる。
8.7の手法は,標線と液面の位置を検出しながら,液体の注入を行って,それらが一致した時点で液体の注入を停止することにより,標線に基づいた所定量の液体注入を行う手法の前段階として行うこともでき,この場合には,液体の注入に要する時間の短縮と,より正確な注入に制御を行うことができる。
9.7と8の手法に使用する液体自動注入装置としては,以上に説明した本発明に係る液体自動注入装置を使用することにより,これらの手法を行う際に,標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置の検出を確実に,しかも容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る液体自動注入装置の全体構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の要部を模式的に示す側面図である。
【図3】面状照明手段を模式的に示す正面図である。
【図4】二次元イメージセンサで撮像した二次元画像の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る液体注入制御方法の流れ図である。
【図6】本発明に係る他の液体注入制御方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0064】
1 基台
2 液体注入手段
3 標線付容器
4 ターンテーブル
5 シリンジポンプ
6,8 チューブ
7 液体容器
9 液体注入部(プローブニードル)
10 注入制御手段
11 支持部
12 下方空間
13 二次元イメージセンサ
14 面状照明手段
15 撮像用光学系
16 面状投光部
17(17a,17b) 配色部
18 凹部
19 検出手段
20 制御手段
21a,21b 配色部
22 標線
23 液面のメニスカス
24 二次元画像
25 配色部の像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標線付容器を液体注入手段の液体注入部の下方空間まで移動させ,標線付容器内に,標線に基づく所定の位置まで液体を注入する液体自動注入装置において,上記下方空間を横方向に隔てて,一方側に二次元イメージセンサを配置すると共に,他方側に,上記二次元イメージセンサに対向させて面状照明手段を配置し,面状照明手段は,面状投光部と,その左右側に配置し,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部とから構成し,上記下方空間に位置させた標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像した二次元画像から標線付容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出する検出手段と,検出手段により検出した標線と液面の位置に基づき上記液体注入手段を制御する制御手段を構成し,検出手段は,標線付容器の両端縁に線状に表れる上記配色部の像により,標線付容器の二次元画像上の水平方向の位置を検出する構成としたことを特徴とする液体自動注入装置。
【請求項2】
面状照明手段の投光部の下側に,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成したことを特徴とする請求項1に記載の液体自動注入装置。
【請求項3】
面状照明手段から標線付容器の底部に至る範囲の下側に,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体自動注入装置。
【請求項4】
標線付容器の底部の下側に,面状投光部の投光色とは色を異ならせた配色部を構成したことを特徴とする請求項1〜3までのいずれか1項に記載の液体自動注入装置。
【請求項5】
配色部は発光手段により構成したことを特徴とする請求項1〜4までのいずれか1項に記載の液体自動注入装置。
【請求項6】
配色部は発光しない構成とすることを特徴とする請求項1〜4までのいずれか1項に記載の液体自動注入装置。
【請求項7】
二次元イメージセンサの入射側の光学系にテレセントリックレンズを設けたことを特徴とする請求項1に記載の液体自動注入装置。
【請求項8】
制御手段には,液体注入手段により一定量の液体を標線付容器に注入した際の液面の上昇量を検出手段により検出して,液面が標線に至るまでの注入量を演算する手段を構成したことを特徴とする請求項1に記載の液体自動注入装置。
【請求項9】
標線付容器内に,液体注入手段により標線に基づく所定の位置まで液体を注入する液体自動注入装置において,液体注入手段の液体注入部の下方空間を横方向に隔てて,一方側に二次元イメージセンサを配置すると共に,他方側に,上記二次元イメージセンサに対向させて面状照明手段を配置し,上記下方空間に標線付容器を位置させて注入部から液体を注入する際,標線付容器を二次元イメージセンサにより撮像して,その二次元画像から検出手段により容器の水平方向の位置と,標線及び液面の夫々の位置を検出するものとし,液面を検出した後,液体注入手段による液体の注入を一時停止して,その時点の液面の位置を記憶し,次いで液体注入手段により所定量の液体を注入して,注入後の液面の位置を検出し,記憶している注入前の液面の位置とから,所定量の液体の注入に対する液面の上昇量を演算すると共に,注入後の液面の位置と,標線の位置と,上記液面の上昇量とから,液面を標線まで上昇させるための液体の注入量を演算し,この演算した注入量に基づいて液体注入手段を制御して液体の注入を行うことを特徴とする液体自動注入装置における液体自動注入方法。
【請求項10】
演算した注入量よりも所定量少ない液体を注入した後,二次元画像により液面を監視しながら液体の注入を行うことを特徴とする請求項9に記載の液体自動注入装置における液体自動注入方法。
【請求項11】
液体自動注入装置は請求項1〜8のいずれかに記載の構成を有するものとすることを特徴とする請求項9又は10に記載の液体自動注入装置における液体自動注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−101366(P2007−101366A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291794(P2005−291794)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000138200)株式会社モリテックス (120)
【Fターム(参考)】