説明

液体薬品用ペール缶

【課題】廉価に製造できるワンウェイ方式の液体薬品用ペール缶を提供する。
【解決手段】本発明は、筒状に形成された耐薬合成樹脂製の内側容器1と、内側容器1の外殻を構成する金属製の外側容器2と、を備える液体薬品用ペール缶10であって、内側容器1は、液体薬品を注入可能に開口する口部11を有し、外側容器2は、口部11が突出する穴2aを有する天板と、内側容器1の外周を囲う胴体と、内側容器1の底面に当接する地板と、を有し、外側容器2は、内側容器1に加わる内圧に対して、内側容器1の変形を防止するように剛性を有しており、内側容器1は、口部11の外周に、液体薬品用ペール缶10を密閉する蓋及びディスペンサ40を着脱自在に取り付けるための雄ねじ11aを有し、ディスペンサ40は、内側容器1の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段42と、内側容器1の内部から液体薬品を排出可能な液出しパイプ43と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体薬品用ペール缶に関する。特に、本発明は、電子工業用薬品などの流体を貯蔵し、運搬し、かつ分配するペール缶に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ホトレジストなどの電子工業用薬品は、運搬用の薬品容器に貯蔵されて製造工場に納入される。このような薬品容器は、同じ容器を繰返し使用するリンク方式と、毎回新しい容器を使用するワンウェイ方式がある。特に、高純度薬品の純度に影響を与えぬためには、ワンウェイ方式の容器を使用することが好ましいが、経済的ではないという欠点がある。近年では、前記両方式を複合した複式格納型の容器が普及している。
【0003】
一般に、複式格納型の容器は、予め洗浄された可撓性フィルムからなるバッグ(袋体)を有している。このフィルム・バッグは、不活性材料から形成され、外側容器の中に設けられている。フィルム・バッグから薬品を排出した後に、このフィルム・バッグは廃棄され、新たなフィルム・バッグに薬品が充填される。そして、継手などを含む外側容器は繰返し使用される。
【0004】
このような複式格納型の容器として、安全、確実に液体薬品を排出できる液体薬品用容器が発明されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−100087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、特許文献1による容器及びディスペンサの正面図であり、要部を断面としている。本願の図8は、特許文献1の図1に相当している。
【0007】
図8において、特許文献1による容器は、容器7及びディスペンサ8を備えている。容器7は、外側容器716と、ポート(以下、取付体という)718と、リテーナ719を備えている。又、容器7は、可撓性のバッグ720と、液出しチューブ722と、カップリング724と、を備えている。更に、容器7は、蓋726と、破断可能なシール膜727と、キャップ728と、を備えている。
【0008】
図8において、外側容器716は、雄ネジを形成する口部730を有し、口部730の中には、リテーナ719及び取付体718が取り付けられている。バッグ720は、取付体718に取り付けられ、外側容器716の中に設けられている。又、カップリング724は、取付体718の中に設けられ、バッグ720の内部の中へ下がっている液出しチューブ722に接続されている。
【0009】
図8において、蓋726は、取付体718、カップリング724及び外側容器716の口部730を包囲すると共に、破断可能なシール膜727によって取付体718及び外側容器716を封止している。そして、キャップ728は、蓋726の頂部をねじ止めしている。
【0010】
図8において、外側容器716は、スチール製のドラム缶であって、地板732、胴体734、傾斜した天板736を備えている。又、外側容器716は、天板736に口部730を有し、胴体734は、成形された一対のハンドル738を有している。
【0011】
図8において、ディスペンサ8は、下部コネクタ842と、リテーナ844と、プローブ846と、上部コネクタ848と、を備えている。リテーナ844は、下部コネクタ842の中に入れ子式に収容されている。プローブ846は、リテーナ844を貫通し、リテーナ844によって支持されている。上部コネクタ848は、リテーナ844及び下部コネクタ842に接続され、プローブ846を包囲している。
【0012】
図8において、バッグ720が装着された取付体718を口部730に取り付けた後に、バッグ720に液体薬品が充填される前に、好ましくは窒素によって膨張される。その後、バッグ720は取付体718を介して液体薬品で充填される。次に、液出しチューブ722及びカップリング724を取付体718に挿入する。蓋726は、破断可能なシール膜727を取付体718の頂端部上に置き、空所776を封止する。又、容器7の口部730にキャップ728を設けて破断可能なシール膜727を覆うことができる。
【0013】
容器7を運搬及びハンドリングの間に、可撓性のバッグ720の中に発生した気体は全て、液出しチューブ722のカップリング724によって形成された気体通路を通って流れ、液出しチューブ722のカップリング724の上端に設けられた空所776に溜まることができる。
【0014】
特許文献1による容器7は、破断可能なシール膜727を備えており、ディスペンサ8に設けられるプローブ846がシール膜727を突き破ることにより、プローブ846は空所790の中に挿入することができる。容器7にディスペンサ8を接続し、ディスペンサ8及び空所782を介して、バッグ720内を窒素で加圧することにより、プローブ846から液体薬品を排出できる。
【0015】
特許文献1による容器7は、液出しチューブ722付きカップリング724を内蔵して運搬される構成となっている。液出しチューブをディスペンサ側に移動する構成とすれば、液体薬品用容器の製造原価を引き下げることも可能である。
【0016】
又、特許文献1による容器7は、完全密封容器である、いわゆるキャニスター缶であり、厚肉の金属板を成形加工した堅牢な構造であるが、製造原価が高価であるという問題がある。高価なキャニスター缶に換えて、薄肉の金属板を成形加工することにより、廉価に製造できる液体薬品用ペール缶が求められる。
【0017】
更に、特許文献1による容器7は、液体薬品が排出された可撓性のバッグ720は廃棄され、液出しチューブ722が洗浄された後に、新たなバッグ720に装着される。ワンウェイ方式のペール缶であれば、液出しチューブ722の洗浄の手間や、外側容器716へのバッグ720の詰め替えの手間が省け、総合的にはむしろ経済的であるといえる。
【0018】
例えば、塗料を収容するペール缶は、金属缶の内壁が合成樹脂フィルムでコーティングされている。このようなペール缶は、金属と合成樹脂との分離が困難である。そして、金属と合成樹脂を分離することなく、このペール缶を廃棄することは、素材毎に資源を再利用する観点からは好ましくない。金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体可能な液体薬品用ペール缶が求められる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0019】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、廉価に製造できるペール缶を利用して、金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体できるワンウェイ方式の液体薬品用ペール缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者は、成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造のペール缶とすることにより、廉価に製造でき、金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体できることを見出し、これに基づいて、以下のような新たなワンウェイ方式の液体薬品用ペール缶を発明するに至った。
【0021】
(1) 筒状に形成された耐薬合成樹脂製の内側容器と、この内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器と、を備える液体薬品用ペール缶であって、前記内側容器は、液体薬品を注入可能に開口する口部を有し、前記外側容器は、前記口部が突出する穴を有する天板と、前記内側容器の外周を囲う胴体と、前記内側容器の底面に当接する地板と、を有し、前記外側容器は、前記内側容器に加わる内圧に対して、当該内側容器の変形を防止するように剛性を有している液体薬品用ペール缶。
【0022】
(1)の発明による液体薬品用ペール缶は、耐薬合成樹脂製の内側容器と金属製の外側容器を備えている。内側容器は、筒状に形成されている。外側容器は、内側容器の外殻を構成している。内側容器は、液体薬品を注入可能に開口する口部を有している。外側容器は、天板と胴体と地板を有している。天板は、口部が突出する穴を有している。胴体は、内側容器の外周を囲っている。地板は、内側容器の底面に当接している。そして、外側容器は、内側容器に加わる内圧に対して、内側容器の変形を防止するように剛性を有している。
【0023】
内側容器が筒形に形成されているとは、内側容器が直円柱状に形成される形状を含み、内側容器が上面の面積が底面の面積より大きい直円すい台状に形成される形状を含んでいる。又、内側容器が筒形に形成されているとは、内側容器の上面に口部が突出することを排除しない。本発明は、内側容器が角筒形に形成されることを必ずしも排除しない。しかし、内側容器の製作の容易性や、内部圧力による膨張などの変形に抗するためには、内側容器は角筒よりも円筒が好ましい。
【0024】
耐薬合成樹脂製の内側容器とは、内側容器が耐薬合成樹脂で製造されることであってよく、内側容器がプラスチック成形されることにより大量生産できる。更に、耐薬合成樹脂製の内側容器とは、この内側容器に収容される薬品、すなわち化学物質が内側容器と接触して化学反応、例えばイオンによる汚染が困難である合成樹脂から成る内側容器を意味している。耐薬合成樹脂は、耐酸合成樹脂を含み、耐アルカリ合成樹脂を含み、耐腐蝕合成樹脂を含み、例えば、後述するポリオレフィンが好ましい。
【0025】
外側容器は、内側容器を覆うべく金属板が製缶されてよく、内側容器の外殻を構成している。外側容器は、内側容器を保護し、又は、内側容器の力学的強度を補強し、吊手やつる状の取っ手など必要な付属品が取り付けられる構造を有している。
【0026】
外側容器は内側容器の外殻を構成するとは、内側容器の外周全てに亘り、外側容器が当接することを必ずしも意味しない。外側容器自体の力学的強度を増加させるために、内側容器の外周を囲う胴体に輪帯を設けてよく、天板に同心円状に輪帯を設けてよく、これらの輪帯が内側容器と部分的に当接又は離反してもよい。又、口部が突出する穴を天板に設けてよく、この穴に引張り応力が集中して亀裂が生じないように、この穴の周囲に円環状の段差を設けて補強してもよい。
【0027】
そして、内側容器は、液体薬品を注入可能に開口する口部を有しており、この口部から液体薬品が排出することができる。口部は、筒状に形成された内側容器の本体と一体に成形されてよく、別体の口部を内側容器の本体に溶着してもよい。又、口部の根元と外側容器との間に輪環状のパッキンを介装してよく、内側容器と外側容器との間に液体薬品が侵入しないように防水できる。
【0028】
口部の外周に雄ねじを設けてよく、口部の開口をキャップで封止し、更に口部を蓋で螺合することにより、液体薬品用ペール缶が密閉される。そして、液体薬品をこぼすことなく搬送できる。又、外周に雄ねじを設ける口部を利用して、ディスペンサを着脱容易に取り付けることができる。例えば、このディスペンサは、液出しチューブと内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段と、を備え、通気手段から内側容器内部に窒素などの圧縮流体を加圧することにより、液出しチューブから液体薬品を分配できる。
【0029】
例えば、外側容器は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体を製作し、天板及び地板を巻締めにより胴体に固着する、いわゆる天板固着式のペール缶であってよく、天板がバンドにより胴体に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式バンドタイプのペール缶であってもよく、天板は周縁に複数の爪を有し、この天板が複数の爪により胴体に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式ラグタイプのペール缶であってもよい。又、天板、及び/又は地板は、必要に応じて胴体の終端にシーム溶接されてもよい。
【0030】
このように、薄肉の鋼板が成形加工されたペール缶は、厚肉の鋼板が成形加工されたキャニスター缶と比較して、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。
【0031】
(1)の発明による液体薬品用ペール缶は、内側容器が窒素などの圧縮流体で加圧されて、液体薬品が排出される。ここで、外側容器は、内側容器に加わる内圧に対して、内側容器の変形を防止するように剛性を有している。剛性を有しているとは、外側容器が剛性を有する金属板で形成されていることを含んでよく、内側容器が膨張などで変形しないように、外側容器が力学的構造を備えていることを含むことができる。
【0032】
(1)の発明による液体薬品用ペール缶は、液出しチューブ付きカップリングを内蔵して運搬される構成となっておらず、ディスペンサ側に液出しチューブを備える構成となっているので、液体薬品用容器の製造原価を引き下げることも可能である。
【0033】
又、(1)の発明による液体薬品用ペール缶は、液体薬品が排出された後に廃棄されるワンウェイ方式の容器であるが、液出しチューブの洗浄の手間や、外側容器へのバッグの詰め替えの手間が省け、複式格納型の液体薬品用容器と比較して、総合的には経済的であるというメリットがある。
【0034】
更に、(1)の発明による液体薬品用ペール缶は、金属缶の内壁が合成樹脂フィルムでコーティングされておらず、合成樹脂から成る内側容器を金属製の外側容器が外殻を構成している。このような二重構造のペール缶は、金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体でき、資源の再利用に役立つことができる。
【0035】
(2) 前記天板及び前記地板は、巻締めにより前記胴体に固着されている(1)記載の液体薬品用ペール缶。
【0036】
(3) 前記天板は、バンドにより前記胴体に締め付けられている(1)記載の液体薬品用ペール缶。
【0037】
(4) 前記天板は周縁に複数の爪を有し、当該天板は前記複数の爪により前記胴体に締め付けられている(1)記載の液体薬品用ペール缶。
【0038】
(5) 前記天板に吊手を備える(2)記載の液体薬品用ペール缶。
【0039】
例えば、吊手を回動自在に支持する取付金具が天板にスポット溶接で接合されてもよい。吊手は、天板の略中心に配置されることが好ましい。
【0040】
(6) 前記胴体の前記天板側に設けられた一対のイヤーと、当該一対のイヤーと回動可能に連結するつる状の取っ手と、を備える(3)又は(4)記載の液体薬品用ペール缶。
【0041】
例えば、つる状の取っ手を回動自在に支持するイヤーとなる一対の取付金具が、胴体の天板側にスポット溶接で接合されてもよい。
【0042】
(7) 前記胴体は、直円柱状に形成される(1)から(6)のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【0043】
(8) 前記胴体は、前記天板側の面積が前記地板側の面積より大きい直円すい台状に形成される(1)から(6)のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【0044】
(9) 前記天板の周縁、及び/又は、前記地板の周縁に損傷保護体を設けている(1)から(8)のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【0045】
天板の周縁、及び/又は、地板の周縁に損傷保護体を設けることにより、移送中の損傷を防止できる。
【0046】
(10) 前記内側容器は、ポリオレフィンで成形されている(1)から(9)のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【0047】
ポリオレフィンは、ポリエチレン(PE)を含み、ポリプロピレン(PP)を含むことができる。
【0048】
(11) 前記液体薬品は、感光性樹脂組成物を含む(1)から(10)のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【発明の効果】
【0049】
本発明は、成形された耐薬合成樹脂製の内側容器を金属製の外側容器で囲う二重構造のペール缶としており、廉価に製造でき、金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体できるワンウェイ方式の液体薬品用ペール缶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明による液体薬品用ペール缶の一実施形態を示す斜視外観図である。
【図2】前記実施形態による液体薬品用ペール缶に接続するディスペンサの一実施形態を示す正面図であり、要部を断面で示している。
【図3】前記実施形態による液体薬品用ペール缶に前記実施形態によるディスペンサが接続された状態図であり、ディスペンサは分解組立図となっている。
【図4】前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板取り外し式バンドタイプの液体薬品用ペール缶を示している。
【図5】前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板取り外し式ラグタイプの液体薬品用ペール缶を示している。
【図6】前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板の周縁、及び地板の周縁に損傷保護体を設け、胴体がテーパに形成されるT型の液体薬品用ペール缶を示している。
【図7】前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板の周縁、及び地板の周縁に損傷保護体を設け、胴体がストレートに形成されるS型の液体薬品用ペール缶を示している。
【図8】従来技術による容器及びディスペンサの正面図であり、要部を断面としている。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0052】
図1は、本発明による液体薬品用ペール缶の一実施形態を示す斜視外観図である。図2は、前記実施形態による液体薬品用ペール缶に接続するディスペンサの一実施形態を示す正面図であり、要部を断面で示している。図3は、前記実施形態による液体薬品用ペール缶に前記実施形態によるディスペンサが接続された状態図であり、ディスペンサは分解組立図となっている。
【0053】
図4は、前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板取り外し式バンドタイプの液体薬品用ペール缶を示している。図5は、前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板取り外し式ラグタイプの液体薬品用ペール缶を示している。
【0054】
図6は、前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板の周縁、及び地板の周縁に損傷保護体を設け、胴体がテーパに形成されるT型の液体薬品用ペール缶を示している。図7は、前記実施形態による液体薬品用ペール缶の斜視外観図であり、天板の周縁、及び地板の周縁に損傷保護体を設け、胴体がストレートに形成されるS型の液体薬品用ペール缶を示している。
【0055】
最初に、本発明による液体薬品用ペール缶の構成を説明する。図1において、液体薬品用ペール缶10(以下、容器10という)は、耐薬合成樹脂製の内側容器1と金属製の外側容器2を備えている。内側容器1は、筒状に形成されている。外側容器2は、内側容器1の外殻を構成している。内側容器1は、液体薬品を注入可能に開口する口部11を有している。
【0056】
図1において、外側容器2は、天板21と胴体22と地板23を有している。天板21は、口部11が突出する穴2aを有している。胴体22は、内側容器1の外周を囲っている。地板23は、内側容器1の底面に当接している。
【0057】
図1に示された内側容器1は、上面の面積が底面の面積より大きい直円すい台状に形成されている。内側容器1は、耐薬合成樹脂で成形されている。内側容器1は、口部11が一体でプラスチック成形されている。
【0058】
図1において、外側容器2は、内側容器1を覆うべく金属板が製缶されており、内側容器1の外殻を構成している。外側容器2は、内側容器1の外周全てに亘り、必ずしも当接していない。図4又は図5において、内側容器1(図示せず)の外周を囲う胴体22には、輪帯22aが設けられており、外側容器2自体の力学的強度を増加させている。輪帯22aは、内側容器1と部分的に離反している。
【0059】
図1において、天板21には、同心円状に複数の輪帯21aが設けられおり、外側容器2自体の力学的強度を増加させている。輪帯21aは、内側容器1と部分的に当接している。又、穴2aの周囲に円環状の段差21bが設けられ、穴2aに引張り応力が集中して亀裂が生じないように補強されている(図2参照)。
【0060】
図1において、口部11の外周には雄ねじ11aが形成されている(図2参照)。口部11の開口をキャップ31で封止し、更に口部11を蓋32で螺合することにより、容器10が密閉される。そして、液体薬品をこぼすことなく運搬できる。
【0061】
図2又は図3において、外周に雄ねじ11aを設ける口部11を利用して、ディスペンサ40を着脱容易に取り付けることができる。そして、ディスペンサ40は、円筒状のプラグ本体41と、内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段42と、液出しパイプ43と、を備えている。
【0062】
図2又は図3において、プラグ本体41は、中央部が開口されたシールリング41aを遊動自在に内装しており、プラグ本体41を口部11に締結することにより口部11を密封できる。通気手段42は、エルボ形(L字形)の継手42aと、プラグ本体41の外部から口部に向かって貫通する開口42bと、を含んでいる。継手42aを開口42bに接続して、内側容器1の内部に圧縮流体を通気できる。液出しパイプ43は、一端が内側容器1の底面に到達し、他端がプラグ本体41から突出し、プラグ本体41に密封可能に装着される。そして、通気手段42から内側容器1内部に窒素などの圧縮流体を加圧することにより、液出しパイプ43から液体薬品を分配できる。
【0063】
図1に示された外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21及び地板23を巻締めにより胴体に固着する、いわゆる天板固着式のペール缶となっている。又、図1に示された外側容器2は、天板21に吊手24を備えている。そして、吊手24を回動自在に支持する取付金具24aは、天板21にスポット溶接で接合されている。吊手24は、天板21の略中心に配置されている。
【0064】
図4に示された外側容器2は、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21がバンド2bにより胴体22に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式バンドタイプのペール缶となっている。又、図4に示された外側容器2は、胴体22の天板21側に設けられた一対のイヤー25a・25bと、一対のイヤー25a・25bと回動可能に連結するつる状の取っ手25と、を備えている。そして、一対のイヤー25a・25bとなる取付金具は、胴体22の天板21側にスポット溶接で接合されている。
【0065】
図5に示された外側容器2は、天板21の周縁に複数の爪2cを有している。そして、平板状の鋼板を円筒状に形成して胴体22を製作し、天板21が複数の爪2cにより胴体22に締め付けられている、いわゆる天板取り外し式ラグタイプのペール缶となっている。又、図5に示された外側容器2は、胴体22の天板21側に設けられた一対のイヤー25a・25bと、一対のイヤー25a・25bと回動可能に連結するつる状の取っ手25と、を備えている。そして、一対のイヤー25a・25bとなる取付金具は、胴体22の天板21側にスポット溶接で接合されている。
【0066】
図1又は図6に示されるように、胴体22は、天板21側の面積が地板23側の面積より大きい直円すい台状に形成されてもよく、図7に示されるように、胴体22は、直円柱状に形成されてもよい(図4及び図5参照)。
【0067】
又、図6及び図7に示されるように、天板21の周縁と地板23の周縁と両方に、損傷保護体26を設けることにより、移送中の容器10の損傷を防止できる。例えば、損傷保護体26は、長手方向に溝を形成する屈曲自在な合成樹脂帯であり、前記溝を天板21の周縁と地板23の周縁に嵌合させて取り付ける。図6に示された円錐体の容器10であれば、天板21側のみに損傷保護体26を設けてもよい。円錐体の容器10を縦横に並設配置したときに、天板21の周囲の損傷を防止できる。
【0068】
次に、本発明による液体薬品用ペール缶の作用を説明する。
【0069】
本発明による容器10は、内側容器1が窒素などの圧縮流体で加圧されて、液体薬品が排出される。外側容器2は、内側容器1に加わる内圧に対して、内側容器1の変形を防止するように剛性を有している。剛性を有しているとは、外側容器2が剛性を有する金属板で形成されていることを含んでよく、内側容器1が膨張などで変形しないように、外側容器2が力学的構造を備えていることを含むことができる。
【0070】
例えば、図1に示された容器10は、定格容量が20リットルのペール缶であり、耐力が0.5kgf/cmとなっている。内側容器1は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンで成形されてよく、感光性樹脂組成物を含む液体薬品が収容される。
【0071】
本発明による液体薬品用ペール缶は、外側容器が薄肉の鋼板で成形加工されたペール缶となっており、厚肉の鋼板が成形加工されたキャニスター缶と比較して、製造が容易であり、廉価に製造できるというメリットがある。
【0072】
本発明による液体薬品用ペール缶は、液出しチューブ付きカップリングを内蔵して運搬される構成となっておらず、ディスペンサ側に液出しチューブを備える構成となっているので、液体薬品用容器の製造原価を引き下げることも可能である。
【0073】
又、本発明による液体薬品用ペール缶は、液体薬品が排出された後に廃棄されるワンウェイ方式の容器であるが、液出しチューブの洗浄の手間や、外側容器へのバッグの詰め替えの手間が省け、複式格納型の液体薬品用容器と比較して、総合的には経済的であるというメリットがある。
【0074】
更に、本発明による液体薬品用ペール缶は、金属缶の内壁が合成樹脂フィルムでコーティングされておらず、合成樹脂から成る内側容器を金属製の外側容器が外殻を構成している。このような二重構造のペール缶は、金属と合成樹脂とが容易に分離及び解体でき、資源の再利用に役立つことができる。
【0075】
本発明による液体薬品用ペール缶と特許文献1による容器のそれぞれにホトレジストを収容し、このホトレジストに含有される水分(%)と金属原子量(ppb)との径時変化を比較した結果を表1に示す。なお、表1において、丸番1は、本発明による液体薬品用ペール缶に収容されたホトレジストを示し、丸番2は、特許文献1による容器に収容されたホトレジストを示している。
【0076】
【表1】

【0077】
表1に示されるように、3ヶ月経過した段階においても、本発明による液体薬品用ペール缶と特許文献1による容器とでは、収容される液体薬品の品質にほとんど違いがないことが実証された。
【0078】
その他にも、ホトレジストの感度、粘度、膜厚などの径時変化を比較してみたが、本発明による液体薬品用ペール缶と特許文献1による容器とでは、収容される液体薬品の品質にほとんど違いがないことが実証された。液体薬品が空気層に触れる面積が大きいペール缶であっても、収容される液体薬品の品質に影響を及ぼさないことが実証されたことから、廉価に提供できる本発明による液体薬品用ペール缶の普及が期待される。
【符号の説明】
【0079】
1 内側容器
2 外側容器
2a 穴
10 液体薬品用ペール缶(容器)
11 口部
21 天板
22 胴体
23 地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された耐薬合成樹脂製の内側容器と、この内側容器の外殻を構成する金属製の外側容器と、を備える液体薬品用ペール缶であって、
前記内側容器は、液体薬品を注入可能に開口する口部を有し、
前記外側容器は、前記口部が突出する穴を有する天板と、前記内側容器の外周を囲う胴体と、前記内側容器の底面に当接する地板と、を有し、
前記外側容器は、前記内側容器に加わる内圧に対して、当該内側容器の変形を防止するように剛性を有しており、
前記内側容器は、前記口部の外周に、液体薬品用ペール缶を密閉する蓋及びディスペンサを着脱自在に取り付けるための雄ねじを有し、
前記ディスペンサは、前記内側容器の内部に圧縮流体を通気可能な通気手段と、前記内側容器の内部から液体薬品を排出可能な液出しパイプと、を有している液体薬品用ペール缶。
【請求項2】
前記天板及び前記地板は、巻締めにより前記胴体に固着されている請求項1記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項3】
前記天板は、バンドにより前記胴体に締め付けられている請求項1記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項4】
前記天板は周縁に複数の爪を有し、当該天板は前記複数の爪により前記胴体に締め付けられている請求項1記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項5】
前記天板に吊手を備える請求項2記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項6】
前記胴体の前記天板側に設けられた一対のイヤーと、当該一対のイヤーと回動可能に連結するつる状の取っ手と、を備える請求項3又は4記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項7】
前記胴体は、直円柱状に形成される請求項1から6のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項8】
前記胴体は、前記天板側の面積が前記地板側の面積より大きい直円すい台状に形成される請求項1から6のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項9】
前記天板の周縁、及び/又は、前記地板の周縁に損傷保護体を設けている請求項1から8のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項10】
前記内側容器は、ポリオレフィンで成形されている請求項1から9のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。
【請求項11】
前記液体薬品は、感光性樹脂組成物を含む請求項1から10のいずれかに記載の液体薬品用ペール缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−126606(P2011−126606A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58238(P2011−58238)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【分割の表示】特願2006−284012(P2006−284012)の分割
【原出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】