説明

液体計量容器および液体計量装置

【課題】複数種類の液体をより的確に計量し得る液体計量装置を提供する。
【解決手段】計量装置は、複数種類の液体を順に吐出する液吐出機構12と、計量容器14と、制御部16と、を備えている。計量容器14は、容器本体30と、当該容器本体30の上に取り付けられる蓋ユニット32と、を有する。容器本体30は、それぞれが1以上の液体に対応付けられるとともに対応する液体の目標投入量が小さいほど断面積が小さくなっている複数の領域に高さ方向に区分される。制御部16は、蓋ユニット32に組み付けられた複数の電極対42からの電気信号に基づいて、容器本体30における液面レベルを判断し、その判断結果に応じて液吐出機構12の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の液体を計量する際に、当該複数種類の液体が順に投入される液体計量容器、および、当該液体計量容器を用いて液体を計量する液体計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数種類の液体を正確に計量する技術が求められている。例えば、特許文献1に記載されるような酵素免疫反応測定で用いられる液体試薬は、複数種類の液体試薬を混合することで生成されるが、その混合に先立って、複数種類の液体試薬を正確に計量する必要がある。
【0003】
こうした要望にこたえるべく、従来から、液体の計量や混合に関して、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献2には、所望の倍数の希釈液を容易に得られるように容器の外面に目盛りを付した容器が開示されている。また、特許文献3,4には、複数種類の液体を混合する際に、各液体の濃度を、吸光度や導電率に基づいて計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3740416号公報
【特許文献2】実開平6−54538号公報
【特許文献3】特開平7−159312号公報
【特許文献4】特開平6−264251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2記載の技術は、希釈液の生成には有効ではあるものの、複数種類の液体試薬を計量する場合などには適用し難いという問題があった。また、特許文献3,4記載の技術は、吸光度や導電率を利用する関係上、適用できる液体種類が限られるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、複数種類の液体をより的確に計量し得る液体計量容器、および、液体計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の計量容器は、複数種類の液体を計量する際に、当該複数種類の液体が順に投入される液体計量容器であって、それぞれが1以上の液体に対応付けられるとともに対応する液体の目標投入量が小さいほど断面積が小さくなっている複数の領域に高さ方向に区分される容器本体を含む、ことを特徴とする。
【0008】
好適な態様では、前記複数の領域は、対応する液体の目標投入量が小さいほど、底側に近くなるような順番で並んでいる。他の好適な態様では、前記複数の領域は、対応する液体の投入順序が早いほど、底側に近くなるような順番で並んでいる。
【0009】
他の好適な態様では、前記容器本体は、底に近づくにつれ中心に近づくように傾斜した傾斜面を1以上有している。他の好適な態様では、さらに、前記容器本体への液体投入に伴う泡の発生を抑制する泡抑制部材を備える。
【0010】
他の本発明である液体計量装置は、複数種類の液体を計量する液体計量装置であって、前記複数種類の液体が順に投入される容器本体と、前記容器本体に前記複数種類の液体を順に投入する液吐出手段と、前記液吐出手段により前記容器本体に投入された液体の液面レベルを検出する液面レベル検出手段と、前記液面レベル検出手段での検出結果に応じて前記液吐出手段の駆動を制御する制御手段と、を備え、前記容器本体は、それぞれが1以上の液体に対応付けられるとともに対応する液体の目標投入量が小さいほど断面積が小さくなっている複数の領域に高さ方向に区分される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液体が投入される容器本体が、複数の領域に区分されるとともに、各領域が対応する液体の目標投入量が小さいほど断面積が小さくなっている。そのため、各液体を、当該液体の目標投入量に応じた精度で計量することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態である計量装置の概略構成図である。
【図2】計量容器の斜視図である。
【図3】計量容器の上面図である。
【図4】計量容器の断面図である。
【図5】容器本体の断面図である。
【図6】蓋ユニットの斜視図である。
【図7】泡抑制部材の斜視図である。
【図8】ノズルおよび電極対の先端位置を示すイメージ図である。
【図9】計量処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である計量装置10の概略構成図である。この計量装置10は、複数種類の液体を混合させた混合液を得るために、当該複数種類の液体を計量する装置である。この計量装置10は、単独で用いられてもよいし、複数種類の液体試薬を混合して得られる混合試薬を用いる各種検査装置などに組み込まれてもよい。また、計量される液体の数は、2種類以上であれば特に限定されない。以下では、三種類の液体、すなわち、第一試薬A、第二試薬B,および、これらを希釈するための希釈液C(例えば脱イオン水など)を計量する計量装置10を例に挙げて説明する。
【0014】
計量装置10は、貯留タンク18a,18b,18c(以下、三つを区別しない場合は添字のアルファベットを省略し「貯留タンク18」と呼ぶ。他部材も同じ)から液体を吸引して吐出する液吐出機構12や、計量のために液体が投入される計量容器14、および、液吐出機構12等の駆動を制御する制御部16などを備えている。
【0015】
液吐出機構12は、試薬A,Bや希釈液Cを貯留する貯留タンク18から液体を吸引して吐出する機構である。この液吐出機構12は、各貯留タンク18から、貯留されている液体をそれぞれ個別に吸引吐出できるのであれば、その構成は特に限定されず、従来から知られている様々な公知技術を流用することができる。本実施形態では、各貯留タンク18に連結された配管20や、当該配管20上に設けられたバルブ22、試薬の吸引を行うポンプ24などで液吐出機構12を構成している。制御部16は、この液吐出機構12に設けられたポンプ24やバルブ22の駆動を制御し、所望量の液体を計量容器14に吐出させている。
【0016】
なお、後に詳説するように、本実施形態では、計量容器14に第一試薬A、バッファ液、第二試薬B、希釈液Cの順で吐出させている。バッファ液は、第一試薬Aと第二試薬Bとの急激な混合を防止するために両試薬A,Bの間に吐出される液体で、本実施形態では、希釈液Cをバッファ液として用いている。
【0017】
かかる順序で吐出される複数の液体は、その目標吐出量(使用量)が大きく異なっている。具体的には、本実施形態では、第一試薬A、第二試薬B、および、希釈液C(バッファ液分含む)の目標吐出量の割合は、約9:50:5000となっている。このように目標吐出量が大きく異なる場合、各液体ごとに、当該液体の計量処理で重視される項目が異なってくる。例えば、一般に、目標吐出量が小さい第一試薬Aは、目標吐出量が大きい希釈液Cに比して、許容誤差量が小さくなるため、計量処理において、その精度が重視されやすい。一方、希釈液Cのように目標吐出量の大きい液体の場合は、処理時間(液体の吸引吐出時間)を短縮するために吸引吐出の効率が重視されやすい。かかる液体ごとに異なる重視項目に応じて、対応するポンプ24の特性を異ならせるようにしてもよい。例えば、第一試薬Aを吸引するポンプ24aには、低効率でも高精度で吸引できるポンプを、希釈液Cを吸引するポンプ24cには、若干低精度でも高効率で吸引できるポンプを用いるようにしてもよい。
【0018】
計量容器14は、液吐出機構12で吸引吐出された液体が順に投入される容器である。この計量容器14は、液体が吐出される容器本体30と、当該容器本体30の上側に取り付けられる蓋ユニット32と、に大別される。容器本体30は、後に詳説するように断面積が段階的に変化する階段状形状のカップ体である。この容器本体30に投入され、計量された液体は、容器本体30の下部に接続された連結管50などを介して、適宜、他の装置(例えば、液体を攪拌混和する混和装置など)に移送される。
【0019】
容器本体30の上側に着脱自在に取り付けられる蓋ユニット32は、各配管20に連結される三つの吐出ノズル40と、複数の電極対42(図1では一対のみを図示)とが組みつけられ、ユニット化された部材である。電極対42は、二つの電極44間に流れる電流や電極44間における抵抗の変化に基づいて容器本体30内における液面を検出する液面センサとして機能するものである。制御部16は、この液面センサとして機能する電極対42での検出結果に応じて、液吐出機構12に設けられたポンプ24やバルブ22の駆動を制御する。なお、本実施形態では、各液体をより正確に計量するために、この計量容器14を特殊な構成としているが、これについては後に詳説する。
【0020】
制御部16は、電極対42での液面検出結果などに基づいて上述した液吐出機構12の駆動を制御する。より具体的には、制御部16は、ユーザから指示があった場合には、第一試薬Aに対応するポンプ24aおよびバルブ22aを駆動して、液体を貯留タンク18aから計量容器14へと吐出させる。電極対42での液面検出結果に基づいて、目標吐出量の第一試薬Aの吐出が確認された場合には、バルブ22aの閉鎖、および、ポンプ24aの駆動停止を行い、液吐出を終了させる。そして、同様の処理を、バッファ液(希釈液C)、第二試薬B、希釈液についても行えば計量処理は終了となる。
【0021】
ところで、かかる液体の計量処理においては、当然ながら、各液体が正確に計量され、最終的に所望の割合(濃度)の混合試薬が得られることが望まれる。そこで、本実施形態では、特殊な構成の計量容器14を用いて、各液体をより正確に計量できるようにしている。以下、本実施形態の計量容器14について詳説する。
【0022】
図2、図3、図4は、それぞれ、計量容器14の斜視図、上面図、および、断面図である。また、図5は、容器本体30の断面図であり、図6は、蓋ユニット32の斜視図である。なお、図4においては、見易さのために一部の吐出ノズル40および電極対42の図示を省略している。
【0023】
既述したとおり、計量容器14は、容器本体30と蓋ユニット32とに大別される。容器本体30は、その内径、ひいては、断面積が段階的に変化するカップ状容器である。具体的にいえば、容器本体30は、内径が異なる三つの円筒を高さ方向に並べて連結したような形状をしている。本実施形態では、この容器本体30を、内径に応じて高さ方向に三つの領域、すなわち、第一領域E1、第二領域E2、第三領域E3に区分している。各領域E1,E2,E3には、1種類以上の液体が対応付けられており、各領域E1,E2,E3には、この対応する液体の目標吐出量に応じたサイズを持たせている。
【0024】
具体的に説明すると、本実施形態では、最も底側に位置する第一領域E1を第一試薬Aに、最も上側に位置する第三領域E3を希釈液Cに、第一領域E1および第三領域E3の間に位置する第二領域E2を第二試薬Bおよびバッファ液(希釈液)に対応付けている。
【0025】
各領域E1,E2,E3の内径および高さは、対応する液体の目標吐出量に応じて決定される。具体的には、各領域E1,E2,E3の内径は、対応する液体の目標吐出量、ひいては、許容誤差量が小さいほど小径になるように設定されている。また、各領域E1,E2,E3の高さは、当該領域E1,E2,E3の体積が、対応する液体の目標吐出量とほぼ同じか若干大きくなるように設定されている。このようなサイズに設定するのは次の理由による。
【0026】
一般に、目標吐出量によって、許容される誤差量も大きく異なっている。一般には、目標吐出量が小さい液体は許容誤差量も小さく、目標吐出量が大きい液体は許容誤差量も大きい。かかる許容誤差量や目標吐出量が異なる複数の液体を、径一定の容器に投入し、その液面レベルに基づいて計量しようとしても、うまくいかない場合が多い。
【0027】
例えば、小径の容器の場合、僅かな吐出量の違いが液面レベルに顕著に反映されるため、吐出量を比較的高精度で計量できるといえる。したがって、かかる小径の容器は、第一試薬Aのように目標吐出量、ひいては、許容誤差量が小さい液体の計量に適しているといえる。その一方で、小径の容器は、希釈液Cのように目標吐出量が大きい液体を計量する際には、当該目標吐出量に応じた体積を確保するために、高さをかなり大きくせざるを得えないという問題がある。逆に、大径の容器の場合は、高さを大きくしなくても、十分な体積を確保できるため、希釈液Cのように目標吐出量が大きい液体の計量には適している。その一方で、大径の容器は、吐出量に対する液面レベルの変化度合いが小さいため、吐出量の計量精度は低くなりがちで、第一試薬Aのように許容誤差量が小さい液体を計量するには適さないといえる。
【0028】
つまり、目標吐出量および許容誤差量によって、計量に用いる容器の望ましい径(断面積)は異なっているといえる。本実施形態では、こうした事情を鑑みて、対応する液体の目標吐出量(ひいては許容誤差量)に応じて、各領域E1,E2,E3の径(断面積)および高さを異ならせている。そして、その結果、各領域の高さを過度に大きくしなくても、各液体を適度な精度で計量することができる。
【0029】
すなわち、本実施形態では、第一試薬A、バッファ液(希釈液C)、第二試薬B、希釈液Cの順に容器本体30に投入する。この場合、最初に投入される第一試薬Aの投入量は、最も底側に位置する第一領域E1の液面レベルに反映されることになる。この第一領域E1は、最も小径であるため、僅かな投入量の違いも液面レベルに顕著に反映される。そのため、第一試薬Aを高精度で計量することができる。
【0030】
第一試薬Aの次に投入されるバッファ液および第二試薬Bの投入量は、第二領域E2での液面レベルに反映されることになる。この第二領域E2は、中程度の径となっている。そのため、中程度の精度で、バッファ液および第二試薬Bを計量することができる。
【0031】
第二試薬Bの次に投入される希釈液Cの投入量は、第三領域E3での液面レベルに反映されることになる。この第三領域E3は、最も大径であるため、計量精度が低くなりがちである。しかし、希釈液Cは、そもそも許容誤差量が大きく、精度がそれほど重視されない液体であるため、計量精度が多少低くなっても問題はない。そして、第三領域E3は、大径であるため、その高さを過度に大きくしなくても、目標吐出量分の希釈液Cを貯留することができる。
【0032】
ところで、これまでの説明で明らかなとおり、本実施形態では、液面レベルに基づいて液体を計量している。かかる液面レベルに基づく計量の場合、液体内や液面付近に泡が発生すると、見かけ上の体積が変動し、その計量精度が低下することになる。そこで、本実施形態では、泡の発生を抑制するために、容器本体30の内側面、より具体的には、第二領域の下端近傍に、底側に近づくにつれて内側に近づくような傾斜面34を設けている。そして、液体を計量する際には、この傾斜面34に向かって第一試薬Aおよび第二試薬Bを吐出するようにしている。これにより、第一試薬Aおよび第二試薬Bは、容器本体30の内側面を伝って落ちていくことになり、泡の発生が低減される。
【0033】
また、泡立ちをより効果的に防止するために、本実施形態では、第一領域E1の上側に、泡抑制部材36を配置している。図7は、この泡抑制部材36の斜視図である。この泡抑制部材36は、第一領域E1の内径とほぼ同じ程度の外径を有し、天面および底面が完全開口された略円筒状部材である。この泡抑制部材36の下端には、液体の通過を許容する略U字状の複数の切り欠き36aが、周方向に均等に分散して形成されている。第二領域E2の下端近傍に設けられた傾斜面34に向かって吐出された第一試薬Aは、この泡抑制部材36の外周面に衝突することで、その勢い(流速)が殺がれる。そして、第一試薬Aは、この勢いが低下した状態で、切り欠き36aを通過して第一領域E1へと至るようになっている。その結果、第一領域E1に到達する際に、第一試薬Aが受ける衝撃が低下し、第一試薬Aの泡立ちが効果的に防止されることになる。なお、ここで説明した泡抑制部材36の形状は、一例であり、泡立ちを低減できるのであれば、他の形状であってもよい。また、液体の泡立ち易さ(粘度や表面張力など)などによっては、この泡抑制部材36は省略してもよい。また、本実施形態では、泡抑制部材36を、第一領域E1の上側にのみ設けているが、他の位置、例えば、第二領域E2の上側などにも設けるようにしてもよい。
【0034】
容器本体30の底面には、連結ノズル52が接続されている。この連結ノズル52に接続される連結ノズル52を介して、当該容器本体30に投入された計量済みの液体が他部材(例えば混和装置の混和タンクなど)へと移送される。なお、容器本体30の底面に連結ノズル52を設けるのではなく、容器本体30に貯留された液体をポンプ等で汲み上げて、他部材へと移送するようにしてもよい。
【0035】
次に、蓋ユニット32について説明する。蓋ユニット32は、容器本体30の上端に取り付けられるもので、円盤状の蓋本体38に、複数のノズル40および電極対42を組み付けてユニット化したものである。蓋本体38は、容器本体30の上端開口を完全に覆える程度の大きさを有した円盤状部材であって、容器本体30に対して着脱自在となっている。
【0036】
この蓋本体38には、当該蓋本体38を貫通する三つのノズル40、および、六つの電極対42が組み付けられている。このノズル40および電極対42の構成について図6、図8を参照して説明する。図8は、各ノズル40、および、電極対42の先端高さを説明するためのイメージ図である。
【0037】
三つのノズル、すなわち、第一ノズル40a、第二ノズル40b、第三ノズル40cの上端には、蓋本体38の上側に位置するとともに配管20に接続される接続口46が連結されている。そして、この接続口46および配管20を介して、各ノズル40は、対応する液体を貯留する貯留タンク18に連結される。
【0038】
第一ノズル40aは、第一試薬Aを吐出するノズルである。この第一ノズル40aの先端は、図8に図示するとおり、第二領域E2の下端近傍に位置しており、傾斜面34に近接対向している。第一ノズル40aの先端を、かかる位置におくことで、当該第一ノズル40aから吐出される第一試薬Aが受ける衝撃を低減でき、結果として第一試薬Aの泡立ちを低減できる。
【0039】
なお、本実施形態では、第一領域E1の断面積が小さすぎて、第一ノズル40aを第一領域E1内に進入させることができないため、当該第一ノズル40aを第二領域E2内に位置させている。しかしながら、第一領域E1の断面積が十分に大きい場合には、第一ノズル40aを第一領域E1内まで延設し、当該第一ノズル40aの先端を、第一領域E1の底面に近接対向させてもよい。かかる構成とすることで、第一ノズル40aからの第一試薬Aの落下距離を低減でき、泡立ちをより低減できる。
【0040】
第二ノズル40bは、第二試薬Bを吐出するノズルである。この第二ノズル40bの先端は、図8に図示するとおり、第二領域E2の下端近傍に位置しており、傾斜面34に近接対向している。この場合、第一ノズル40aの場合と同様に、第二ノズル40bから吐出される第二試薬Bが受ける衝撃を低減でき、結果として第二試薬Bの泡立ちを低減できる。第三ノズル40cは、希釈液C(バッファ液含む)を吐出するノズルで、その先端は、第三領域E3の下端近傍に位置している。
【0041】
各電極対42は、容器本体30に投入された液体の液面を検出する液面センサとして機能するものである。各電極対42は、その先端高さが等しく、180度回転対象な位置に設けられた二本の電極44から構成されている。制御部16は、電極対42からの電気信号に基づいて、各電極対42を構成する二つの電極44間に流れる電流や電極間における抵抗の変化を検出する。そして、この電流や抵抗の変化に基づいて、液面が、当該二つの電極44の先端まで到達したか否かを判断する。
【0042】
本実施形態では、かかる電極対42を六つ設けている。第一電極対42aは、容器本体30における残液の有無確認に利用される電極対で、当該第一電極対42aを構成する二本の電極44の先端は、第一領域E1の下端近傍高さL1に位置している。第二電極対42bは、第一試薬Aの吐出量が目標吐出量に達したか否かの確認に利用される電極対である。この第二電極対42bを構成する二本の電極44bの先端は、第一領域E1の上端近傍、より正確には、容器本体30に目標吐出量分の第一試薬Aが投入された際の液面レベル高さL2に位置している。
【0043】
第三電極対42cは、バッファ液の吐出量が目標吐出量に達したか否かの確認に利用される電極対である。この第三電極対42cを構成する二本の電極44cの先端は、第二領域E2の下端より僅かに上側、より正確には、容器本体30に第一試薬Aおよびバッファ液がそれぞれ目標吐出量分だけ投入された際の液面レベル高さL3に位置している。
【0044】
第四電極対42dは、第二試薬Bの吐出量が目標吐出量に達したか否かの確認に利用される電極対である。この第四電極対42dを構成する二本の電極44dの先端は、第二領域E2の上端近傍、より正確には、容器本体30に第一試薬A、バッファ液、および、第二試薬Bがそれぞれ目標吐出量分だけ投入された際の液面レベル高さL4に位置している。
【0045】
第五電極対42eは、希釈液Cの吐出量が目標吐出量に達したか否かの確認に利用される電極対である。この第五電極対42eを構成する二本の電極44eの先端は、第三領域E3の上端より僅かに下側、より正確には、容器本体30に第一試薬A、バッファ液、第二試薬B、および希釈液Cがそれぞれ目標吐出量分だけ投入された際の液面レベル高さL5に位置している。
【0046】
第六電極対42fは、液体の溢れの有無確認に利用される電極対である。この第六電極対42fを構成する二本の電極44fの先端は、第三領域E3の上端近傍高さL6に位置している。なお、以下では、この電極44fの先端高さL6を、「溢れレベルL6」と呼ぶ。
【0047】
なお、ここで説明した電極対42の構成は、一例であり、液面レベルを検知できるのであれば、他のセンサを用いてもよい。例えば、液面センサとして、液面までの距離を測定する距離センサを用いてもよい。また、容器本体30を透明部材で構成したうえで、当該容器本体30を側面から撮像して得られた画像を解析することで液面レベルを算出するような構成にしてもよい。また、本実施形態では、六つの電極対42を設けているが、計量する液体種類数などに応じてで、この電極対42の数は適宜、変更されてもよい。いずれにしても、制御部16は、この液面センサ(電極対)での検出結果に基づいて液吐出機構12の駆動を制御する。
【0048】
次に、かかる構成の計量装置において、複数種類の液体を計量する際の流れについて説明する。図9は、この計量処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
計量処理を行う場合、制御部16は、まず、容器本体30が空であるか否かを確認する(S10)。この確認は、第一電極対42aから出力される電気信号に基づいて行われる。確認の結果、容器本体30に残液が存在している場合、制御部16は、容器本体30に残存している液体を適宜、排出し、容器本体30を空にする(S12)。
【0050】
容器本体30が空になれば、制御部16は、続いて、第一試薬Aに対応するポンプ24aやバルブ22aを駆動して、当該第一試薬Aを容器本体30に吐出させる(S14)。この第一試薬Aは、第一ノズル40aを介して容器本体30内に吐出される。吐出された第一試薬Aは、第二領域E2の傾斜面34を伝って、泡抑制部材36の外周面に衝突した後、第一領域E1内へと流れていく。第一試薬Aが、傾斜面34、泡抑制部材36の外周面を経由することにより、当該第一試薬Aの泡立ちが効果的に防止され、ひいては、泡に起因する液面レベルの変動が防止される。
【0051】
第一試薬Aを吐出している間、制御部16は、第一試薬Aの吐出量が目標吐出量に到達した否かを監視する(S16)。この監視は、第二電極対42bからの電気信号に基づいて行われる。すなわち、制御部16は、第二電極対42bを構成する二つの電極44bの先端に液面が到達し、両電極44b間に流れる電流または抵抗が変動した場合には、第一試薬Aの吐出量が目標吐出量に到達したと判断する。
【0052】
ここで、この吐出量判断の基準として用いられる電極44bの先端は、第一領域E1内に設定されている。換言すれば、本実施形態では、第一領域E1内での液面レベルに基づいて、第一試薬Aの吐出量を計量しているといえる。この第一領域E1は、その内径が最小であり、吐出量に対する液面レベルの変化度合いが最も高い領域である。そして、かかる第一領域E1内での液面レベルに基づいて第一試薬Aを計量することで、目標吐出量、ひいては、許容誤差量が小さい第一試薬Aを高精度で計量することができる。
【0053】
第一試薬Aが目標吐出量に到達すれば、続いて、制御部16は、各種ポンプ24およびバルブ22を駆動して、第一試薬Aの吐出を停止させるとともに、バッファ液(実際には希釈液C)を吐出させる(S18)。バッファ液Cを吐出している間、制御部16は、バッファ液の吐出量が目標吐出に到達した否かを監視する(S20)。この監視は、第三電極対42cからの電気信号に基づいて行われる。
【0054】
監視の結果、バッファ液が目標吐出量に到達したと判断された場合、制御部16は、続いて、各種ポンプ24およびバルブ22を駆動して、バッファ液の吐出を停止させるとともに、第二試薬Bを吐出させる(S22)。第二試薬Bを吐出している間、制御部16は、第二試薬Bの吐出量が目標吐出に到達した否かを監視する(S24)。この監視は、第四電極対42dからの電気信号に基づいて行われる。
【0055】
ここで、バッファ液および第二試薬Bの吐出量検知に用いられる第三電極対42cおよび第四電極対42dを構成する電極44c,44dの先端は、いずれも、第二領域E2内に位置している。換言すれば、本実施形態において、バッファ液および第二試薬Bの吐出量は、第二領域E2内における液面レベルに基づいて計量されるといえる。この第二領域E2は、第一領域E1に比べれば大径ではあるものの、第三領域E3よりも小径であり、吐出量に対する液面レベルの変化度合いが有る程度高い領域である。かかる第二領域E2内での液面レベルに基づいてバッファ液および第二試薬Bを計量することで、当該バッファ液および第二試薬Bをある程度の精度で計量することができる。
【0056】
第二試薬Bが目標吐出量分だけ吐出されれば、続いて、制御部16は、各種ポンプ24およびバルブ22を駆動して、第二試薬Bの吐出を停止させるとともに、希釈液Cを吐出させる(S26)。希釈液Cを吐出している間、制御部16は、希釈液Cの吐出量が目標吐出に到達した否かを監視する(S28)。この監視は、第五電極対42eからの電気信号に基づいて行われる。
【0057】
ここで、希釈液Cの吐出量検知に用いられる第五電極対42eを構成する二本の電極44eの先端は、第三領域E3内に位置している。この第三領域E3は、その内径が最大の領域である。かかる第三領域E3は、吐出量に対する液面レベルの変化度合いが低いため高精度での計量は困難な領域であるといえる。その一方で、断面積が大きいため、その高さを過度に大きくしなくても、大量の液体を受け入れることができる領域である。かかる第三領域E3における液面レベルに基づいて、目標吐出量(ひいては許容誤差量)が大きい希釈液Cを計量することで、容器本体30の高さを過度に大きくなることが防止される。
【0058】
希釈液Cが目標吐出量分だけ吐出されれば、制御部16は、各種ポンプ24およびバルブ22を駆動して、希釈液Cの吐出を停止させる。そして、その後は、必要に応じて容器本体30に貯留されている計量済み液体を、他部材(混和装置の混和タンクなど)に移送する。なお、この他部材に移送されるまでの間、制御部16は、液面レベルが溢れレベルL6に到達したか否かを監視する(S32)。この監視は、第六電極対42fからの電気信号に基づいて行われる。そして、監視の結果、液面レベルが溢れレベルL6に到達した場合、制御部16は、液吐出機構12のバルブ22やポンプ24が正常に駆動しておらず、意図しない液吐出が生じるエラーが発生していると判断する(S34)。この場合、制御部16は、液吐出機構12に供給する電力を遮断するなどして、液吐出機構12を強制的に停止させる。そして、これにより、容器本体30からの液体の溢れを防止する。一方で、エラーが検出されることなく、計量済みの液体が他部材に移送されれば、計量処理は終了となる。
【0059】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態では、容器本体を、1種類以上の液体に対応付けられた複数の領域に区分するとともに、各領域の断面積および体積を対応する液体の目標吐出量(ひいては許容誤差量)に応じた大きさとしている。これにより、各液体を、当該液体に応じた精度で計量できるとともに計量容器14が過度に高くなることが防止される。
【0060】
なお、本実施形態では、互いに断面積が異なる複数の領域を、断面積が小さい領域ほど、底側に近くなるような順序で並べているが、必ずしも、この順序でなくてもよい。例えば、最も小径の第一領域E1が、第一領域の次に大径の第二領域E2の上側、かつ、最も大径の第三領域E3の下側に位置するようにしてもよい。この場合には、第二試薬B、バッファ液、第一試薬A、希釈液Cの順に吐出する。換言すれば、互いに断面積が異なる複数の領域は、対応する液体の投入順序が早い領域ほど、底側に近くなるような順番で並ぶのであれば、底側が小径でなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 計量装置、12 液吐出機構、14 計量容器、16 制御部、18 貯留タンク、20 配管、22 バルブ、24 ポンプ、30 容器本体、32 蓋ユニット、34 傾斜面、36 泡抑制部材、38 蓋本体、40 吐出ノズル、42 電極対、46 接続口、50 連結管、52 連結ノズル、E1 第一領域、E2 第二領域、E3 第三領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の液体を計量する際に、当該複数種類の液体が順に投入される液体計量容器であって、
それぞれが1以上の液体に対応付けられるとともに対応する液体の目標投入量が小さいほど断面積が小さくなっている複数の領域に高さ方向に区分される容器本体を含む、
ことを特徴とする液体計量容器。
【請求項2】
請求項1に記載の液体計量容器であって、
前記複数の領域は、対応する液体の目標投入量が小さいほど、底側に近くなるような順番で並んでいる、ことを特徴とする液体計量容器。
【請求項3】
請求項1に記載の液体計量容器であって、
前記複数の領域は、対応する液体の投入順序が早いほど、底側に近くなるような順番で並んでいる、ことを特徴とする液体計量容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の液体計量容器であって、
前記容器本体は、底に近づくにつれ中心に近づくように傾斜した傾斜面を1以上有している、ことを特徴とする液体計量装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の液体計量容器であって、さらに、
前記容器本体への液体投入に伴う泡の発生を抑制する泡抑制部材を備える、ことを特徴とする液体計量容器。
【請求項6】
複数種類の液体を計量する液体計量装置であって、
前記複数種類の液体が順に投入される容器本体と、
前記容器本体に前記複数種類の液体を順に投入する液吐出手段と、
前記液吐出手段により前記容器本体に投入された液体の液面レベルを検出する液面レベル検出手段と、
前記液面レベル検出手段での検出結果に応じて前記液吐出手段の駆動を制御する制御手段と、
を備え、
前記容器本体は、それぞれが1以上の液体に対応付けられるとともに対応する液体の目標投入量が小さいほど断面積が小さくなっている複数の領域に高さ方向に区分される、
ことを特徴とする液体計量装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate