説明

液体計量装置および遺伝子自動分析装置

【課題】1種類のノズルチップのみで液体計量装置を構成させるとき、プランジャと液との間にある空気が、微量な液を吸引・吐出する場合に影響を及ぼすことを防止した液体計量装置を提供する。
【解決手段】往復運動により液を吸引・吐出するプランジャ1と、プランジャ1にて吸引された液を収容するノズルチップ3と、ノズルチップ3を保持するノズル2を有する液体計量装置において、ノズルチップ3の中にノズルチップ3内の液の収容スペースを減らすべく所定の体積を有する部材5を設けることにより、プランジャ1と液との間にある空気の体積を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の液量を計測しながら吸引・吐出する液体計量装置およびこれを備えた遺伝子自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の液量を計測しながら吸引・吐出する液体計量装置は、ノズル先端にノズルのチップを装着し、プランジャを一定量引くことにより一定の液量を吸引し、プランジャを一定量押すことで一定の液量を吐出する。しかし、この方式では、プランジャと液との間に空気が存在するため、微量な液を吸引・吐出する場合に空気の圧縮が精度に影響を及ぼす。
【0003】
この問題を解決する1つの手段として、微量な液を吸引・吐出する場合は、その液量に対応した小容量のチップを使用する方法がある。チップ内の空気の量をあらかじめ小さくし、空気の圧縮の影響を軽減させることで、高精度の吸引・吐出を行うことができる。しかし、1台の液体計量装置で多量な液の吸引・吐出と微量な液の吸引・吐出を両方行う場合、2種類のノズルチップを使い分けることになり、構成が複雑になる。
【0004】
また、この問題を解決する別の手段として、例えば特許文献1に記載されているように、チップ内部にプランジャを突出させて、空気を減らすという方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−325170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は次の3つの課題を有する。
(1)チップ内の空気体積を埋める物体がプランジャなので、プランジャとしての機能を阻害するような形状にすることはできない。例えば、チップ挿入のためのフィッティング部には強度確保のため一定の厚みが必要なので、チップの内壁寸前まで接近するような大径のプランジャは使用できず、空気層が大きく残ってしまう。また、通常はプランジャ先端がシリンジ内部まで戻るため、プランジャ先端のみを大きくすることができない。
(2)また、分注量の分解能を上げるにはプランジャは細くしなければいけない。必要な分解能に比して、吸引量が大きい場合には、松下特許方式では、空気体積は余計に埋まらない。もしくは、すごく長細い形状のチップとプランジャが必要になる。
(3)接液を防ぐ構造も寸法の限定もないので吸引液とプランジャとの接液が問題となりうる。吸引時の液の飛散,蒸発などによるプランジャやシリンジの汚染を避けることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、往復運動により液を吸引・吐出するプランジャと、該プランジャにて吸引された液を収容するノズルチップと、前記ノズルチップを保持するノズルを有する液体計量装置において、前記ノズルチップの中に前記ノズルチップ内の液の収容スペースを減らすべく所定の体積を有する部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体計量装置は、1種類のノズルチップで構成され、体積を有するものをチップ内に設けることにより、プランジャと液との間にある空気を減少させ、微量な液を高精度に吸引・吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1における液体計量装置。
【図2】多量の液を吸引・吐出する場合の液体計量装置。
【図3】実施例2における液体計量装置。
【図4】実施例3における液体計量装置。
【図5】実施例4における液体計量装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の各実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1における液体計量装置の概要について、図1を引用して説明する。実施例1の液体計量装置は、図1に示すように、プランジャ1,ノズル2,ノズルチップ3,第1のフィルタ4,第1の体積を有するもの5を有する。プランジャ1は往復運動をすることで、液体の吸引・吐出を行う。
【0012】
ノズルチップ3はノズル2に保持され、吸引された液体はノズルチップ3の中に一時的に収納される。ノズルチップ3はコンタミネーション防止のための第1のフィルタ4と、第1の体積を有するもの5で構成される。第1のフィルタ4は多孔質でできており、空気を通す。第1の体積を有するもの5は例えば多孔質であり、円錐形状で、中心に穴を設けることで空気の通り道を設ける。第1の体積を有するもの5がその体積分だけ空気の量を減少させることで、高精度の吸引・吐出を行うことができる。
【0013】
多量な液を吸引・吐出する場合の液体計量装置を図2に示す。多量な液を吸引・吐出する場合の液体計量装置は、図2に示すように、プランジャ1,ノズル2,ノズルチップ3,第2のフィルタ6を有する。プランジャ1は往復運動をすることで、液体の吸引・吐出を行う。ノズルチップ3はノズル2に保持され、吸引された液体はノズルチップ3の中に一時的に収納される。ノズルチップ3はコンタミネーション防止のための第2のフィルタ6で構成される。ノズルチップ3を共通化することにより、1種類のノズルチップのみで、液体計量装置を構成させることができる。
【実施例2】
【0014】
本発明の実施例2における液体計量装置の概要について、図3を引用して説明する。実施例2の液体計量装置は、図3に示すように、プランジャ1,ノズル2,ノズルチップ3,第3のフィルタ7,第2の体積を有するもの8を有する。プランジャ1は往復運動をすることで、液体の吸引・吐出を行う。ノズルチップ3はノズル2に保持され、吸引された液体はノズルチップ3の中に一時的に収納される。ノズルチップ3はコンタミネーション防止のための第3のフィルタ7と、第2の体積を有するもの8で構成される。
【0015】
第3のフィルタ7は多孔質でできており、空気を通す。第2の体積を有するもの8は円錐形状で、中心に穴を設けることで空気の通り道を設ける。実施例1と異なる点は、フィルタと体積を有するものの位置関係である。第2の体積を有するもの8がその体積分だけ空気の量を減少させることで、高精度の吸引・吐出を行うことができる。
【実施例3】
【0016】
本発明の実施例3における液体計量装置の概要について、図4を引用して説明する。実施例3の液体計量装置は、図4に示すように、プランジャ1,ノズル2,ノズルチップ3,第4のフィルタ9を有する。プランジャ1は往復運動をすることで、液体の吸引・吐出を行う。ノズルチップ3はノズル2に保持され、吸引された液体はノズルチップ3の中に一時的に収納される。ノズルチップ3はコンタミネーション防止のための第4のフィルタ9で構成される。第4のフィルタ9は多孔質でできており、通常よりもサイズの大きいものを用い、空気の量を減らす。しかし、ただ大きくするだけだと抵抗が大きくなり、精度に影響を及ぼしてしまうので、通常よりもフィルタのポアサイズを大きくし抵抗を軽減することで改善する。
【実施例4】
【0017】
本発明の実施例4における液体計量装置の概要について、図5を引用して説明する。実施例4の液体計量装置は、図5に示すように、プランジャ1,ノズル2,ノズルチップ3,第3の体積を有するもの10を有する。プランジャ1は往復運動をすることで、液体の吸引・吐出を行う。ノズルチップ3はノズル2に保持され、吸引された液体はノズルチップ3の中に一時的に収納される。ノズルチップ3は第3の体積を有するもの10で構成される。第3の体積を有するもの10は円錐形状で、中心に穴を設けることで空気の通り道を設ける。実施例1と異なる点は、コンタミネーション防止用のフィルタがないことである。第3の体積を有するもの10がその体積分だけ空気の量を減少させることで、高精度の吸引・吐出を行うことができる。
【0018】
本発明によれば、上述の特許文献1に比べて次のような効果を奏する。
【0019】
本発明では、体積を有するものの形状自由度が高いので、このフィッティング部にかかるチップ内壁までの部分体積を埋めることができ、体積低減効果が大きい。よって分注精度もより向上する。特に円の中心側とそのまわりのドーナツ形状部分では、ドーナツ形状部分の面積が半径が大きいため比較的大きくなることからこの効果は大きいといえる。
【0020】
また、本発明はフィルタを挿入したり、あるいはフィルタだけでは不十分な場合には体積を有するものをいれたりするので、吸引時の液の飛散,蒸発などによるプランジャやシリンジの汚染を避けることができる。特に遺伝子などの分子生物学分野向けでは必須の機能である。
【0021】
なお、本発明は次のように表現することもできる。
【0022】
本発明は、往復運動するプランジャと、液を保持するノズルチップと、前記ノズルチップを保持するノズルを有する液体計量装置において、前記ノズルチップの中に体積を有するものを設けることにより、プランジャと液との間にある空気の体積を減少させることを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、往復運動するプランジャと、液を保持するノズルチップと、前記ノズルチップを保持するノズルを有する液体計量装置において、前記体積を有するものが円錐形状で中心に穴が開いたものを特徴とする。
【0024】
更に本発明は、往復運動するプランジャと、液を保持するノズルチップと、前記ノズルチップを保持するノズルを有する液体計量装置において、前記体積を有するものが多孔質で空気が通過できることを特徴とする。
【符号の説明】
【0025】
1 プランジャ
2 ノズル
3 ノズルチップ
4 第1のフィルタ
5 第1の体積を有するもの
6 第2のフィルタ
7 第3のフィルタ
8 第2の体積を有するもの
9 第4のフィルタ
10 第3の体積を有するもの

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動により液を吸引・吐出するプランジャと、該プランジャにて吸引された液を収容するノズルチップと、前記ノズルチップを保持するノズルを有する液体計量装置において、
前記ノズルチップの中に前記ノズルチップ内の液の収容スペースを減らすべく所定の体積を有する部材を設けたことを特徴とする液体計量装置。
【請求項2】
請求項1であって、
前記所定の体積を有する部材は、円錐形状であり、中心に穴を有するものであることを特徴とする液体計量装置。
【請求項3】
請求項1であって、
前記所定の体積を有する部材は、多孔質で形成されていることを特徴とする液体計量装置。
【請求項4】
請求項1であって、
前記ノズルチップ内には前記所定の体積を有する部材の前記プランジャ側にコンタミネーション防止用のフィルタが設けられていることを特徴とする液体計量装置。
【請求項5】
請求項1であって、
前記ノズルチップ内には前記所定の体積を有する部材の前記プランジャ側とは反対側にコンタミネーション防止用のフィルタが設けられていることを特徴とする液体計量装置。
【請求項6】
請求項1であって、
前記ノズルチップは取り外し可能であり、
より多くの液を吸引・吐出する際にはコンタミネーション防止用のフィルタのみが設けられた別のノズルチップに取り替え可能であることを特徴とする液体計量装置。
【請求項7】
請求項1であって、
ノズルチップの一部はコンタミネーション防止用のフィルタで形成されていることを特徴とする液体計量装置。
【請求項8】
往復運動により液を吸引・吐出するプランジャと、該プランジャにて吸引された液を収容するノズルチップと、前記ノズルチップを保持するノズルを有する液体計量装置を用いた遺伝子自動分析装置において、
前記ノズルチップの中に前記ノズルチップ内の液の収容スペースを減らすべく所定の体積を有する部材を設けたことを特徴とする遺伝子自動分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−17568(P2011−17568A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161381(P2009−161381)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】