説明

液体試料の濾過分注装置

【課題】ディスクフィルタの液流出側に接続される流路接続具および送液チューブや分注ノズルを不要にし、それらの洗浄操作に要する手間や時間を節減し、配管構成を簡略化することができる装置を提供する。
【解決手段】液体試料の供給装置に流路接続され下端の接続口部30をディスクフィルタ1の液流入口部4に嵌挿してディスクフィルタが取着されるフィルタ継手部材28と、フィルタ継手部材を上下方向へ移動させる昇降機構14と、昇降機構を水平方向へ移動させる水平直動機構16とを備える。フィルタ収容部10から取り出されたディスクフィルタ1をフィルタ継手部材28に取着して試料分注部18へ移動させ、フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部5をサンプル瓶6の口部内に挿入して、ディスクフィルタの液流出口部から直接に液体試料をサンプル瓶内へ吐出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体試料を、円盤状ハウジングの内部にフィルタ材が収納され円盤状ハウジングの上面中央部および下面中央部にそれぞれ管状の液流入口部および液流出口部が一体に形設されたディスクフィルタに通して濾過し、サンプル瓶に分注する液体試料の濾過分注装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固形製剤の溶出試験装置や液体クロマトグラフなどの分析機器により液体試料を分析する場合、液体試料中に固形分や塵埃などの不純物が含まれていると測定結果に影響を及ぼすことになる。このため、液体試料を分析機器へ導入する前に液体試料を濾過するようにしている。この液体試料の濾過には、使い捨てのフィルタ(ディスポーザルフィルタ)が使用される。このような用途のフィルタとして、円盤状ハウジングの内部にフィルタ材が収納され円盤状ハウジングの上面中央部および下面中央部にそれぞれ管状の液流入口部および液流出口部が一体に形設されたディスクフィルタが一般に用いられている。このディスクフィルタは、それを複数個収容するフィルタ収容部からフィルタ取出し部によって順次取り出され、濾過操作部へ移送される。そして、ディスクフィルタの液流入口部を、送液用シリンジを備えた液体試料供給装置に送液チューブを通して流路接続された流路接続具に連通接続するとともに、ディスクフィルタの液流出口部を、液体試料をサンプル瓶内へ吐出する分注ノズルに別の送液チューブを通して流路接続された別の流路接続具に連通接続し、液体試料供給装置から送液用シリンジにより液体試料を送り出す。液体試料供給装置から送り出された液体試料は、送液チューブおよび流路接続具を通ってディスクフィルタの液流入口部へ送り込まれ、円盤状ハウジング内のフィルタ材を通過する間に濾過されて、液流出口部から流出する。そして、濾過された液体試料は、別の流路接続具および別の送液チューブを通って分注ノズルへ送られ、分注ノズルの吐出口からサンプル瓶内へ吐出される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2922693号公報(第3−5頁、図3−図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の液体試料の濾過分注装置では、ディスクフィルタの液流出口部に、流路接続具を介して送液チューブを接続し、送液チューブの先端部を分注ノズルに連通接続して、ディスクフィルタで濾過された液体試料を分注ノズルへ送り、分注ノズルの吐出口からサンプル瓶内へ液体試料を吐出するようにしていた。このため、ディスクフィルタは使い捨てにされるが、ディスクフィルタの液流出口部に接続された流路接続具、送液チューブおよび分注ノズルは、1回の分注操作が終わるごとに洗浄する必要がある。この洗浄操作が面倒であり、その洗浄操作のために時間がかかる、といった問題点がある。また、通常は、複数の分注ノズルを並べて、一度に複数本のサンプル瓶に対して分注操作が行われるが、このために複数本の送液チューブを配設する必要があり、配管構成が煩雑となるという問題点があった。
【0005】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、液体試料を使い捨てのディスクフィルタに通して濾過しサンプル瓶に分注する液体試料の濾過分注装置において、ディスクフィルタの液流出側に接続される流路接続具および送液チューブや分注ノズルを不要にして、それらの洗浄操作に要する手間や時間を節減し、また、配管構成を簡略化することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、液体試料を、円盤状ハウジングの内部にフィルタ材が収納され円盤状ハウジングの上面中央部から突出するように管状の液流入口部が一体に形設されるとともに下面中央部から突出するように管状の液流出口部が一体に形設されたディスクフィルタに通して濾過し、サンプル瓶に分注する液体試料の濾過分注装置において、ディスクフィルタの液流出口部から直接に液体試料をサンプル瓶内へ吐出することができるようにするために、液体試料を供給する試料供給手段と、この試料供給手段に流路接続されたフィルタ継手部材と、このフィルタ継手部材を、その接続口部が下向きとなるように鉛直姿勢に保持する継手部材保持手段と、複数個のディスクフィルタを収容するフィルタ収容部と、このフィルタ収容部からディスクフィルタを取り出し、その液流入口部に前記フィルタ継手部材の接続口部を嵌挿して、ディスクフィルタをフィルタ継手部材に取着するフィルタ取出し部と、複数本のサンプル瓶を収容し、そのサンプル瓶に液体試料が分注される試料分注部と、前記継手部材保持手段を水平面内で移動させて、それに保持された前記フィルタ継手部材を、前記フィルタ取出し部から前記試料分注部へ移動させ、フィルタ継手部材を、試料分注部に収容されたサンプル瓶の直上に位置させる水平移動手段と、前記継手部材保持手段を鉛直方向に移動させて、それに保持された前記フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部を、前記試料分注部に収容されたサンプル瓶の直上位置とサンプル瓶の口部内に挿入される分注位置との間で昇降させる上下移動手段と、を備えて液体試料の濾過分注装置を構成したことを特徴とする。
【0007】
上記した構成において、サンプル瓶の上部開口部に、弾性素材で形成されディスクフィルタの液流出口部の挿通を許容する切込みが設けられた蒸発防止用の弾性蓋を取着し、前記試料分注部に収容されたサンプル瓶と前記継手部材保持手段に保持された前記フィルタ継手部材との間に、継手部材保持手段が下降してフィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部がサンプル瓶の弾性蓋を挿通し口部内に挿入されて液体試料が分注された後、継手部材保持手段が上昇するときに、フィルタ継手部材およびディスクフィルタと一緒にサンプル瓶が持ち上がらないようにサンプル瓶の上面部を押さえる浮上り規制板を介在して配設し、その浮上り規制板に、フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部が貫挿される開孔もしくは切欠きを形成するようにし、この浮上り規制板を水平姿勢に保持する規制板保持手段を備えた構成とすることができる。
【0008】
また、前記浮上り規制板を、前記規制板保持手段に上下方向へ微小移動可能に支持し、規制板保持手段に対しばねによって弾発的に保持するように構成してもよい。この場合に、前記浮上り規制板に形成される開孔を、長手方向の寸法がサンプル瓶の上部開口部の直径寸法より大きい長孔とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る液体試料の濾過分注装置においては、フィルタ取出し部によりフィルタ収容部からディスクフィルタが取り出されて、継手部材保持手段に保持されたフィルタ継手部材にディスクフィルタが取着される。ディスクフィルタが取着されたフィルタ継手部材は、水平移動手段により試料分注部のサンプル瓶の直上位置まで移動させられ、上下移動手段により下降させられて、フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部がサンプル瓶の口部内に挿入される。この状態において、試料供給手段によりフィルタ継手部材へ液体試料が供給され、その液体試料は、ディスクフィルタを通過する間に濾過された後に、ディスクフィルタの液流出口部から流出して直接にサンプル瓶内へ吐出される。
したがって、この発明に係る液体試料の濾過分注装置を使用すると、ディスクフィルタの液流出側に接続される流路接続具および送液チューブや分注ノズルが不要になるので、それらの洗浄操作に要する手間や時間を節減することができ、また、配管構成を簡略化することができる。
【0010】
サンプル瓶の上部開口部に蒸発防止用の弾性蓋を取着し、試料分注部に収容されたサンプル瓶と継手部材保持手段に保持されたフィルタ継手部材との間に浮上り規制板を配設したときは、サンプル瓶に分注された液体試料の蒸発が防止される。そして、液体試料の分注後において、フィルタ継手部材と共にディスクフィルタが上昇するときに、浮上り規制板により、ディスクフィルタの液流出口部と弾性蓋が係合したサンプル瓶がフィルタ継手部材およびディスクフィルタと一緒に持ち上がることが防止される。
【0011】
また、浮上り規制板を規制板保持手段に上下方向へ微小移動可能に支持したときは、サンプル瓶の上面部と浮上り規制板との間にサンプル瓶をセットするための多少の間隔を設けていても、フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの円盤状ハウジング部の下面が浮上り規制板の上面に当接した状態でディスクフィルタによって浮上り規制板が押し下げられ、浮上り規制板とサンプル瓶の上面部とが近接ないし密接する。このため、液流出口部の長さが短いタイプのディスクフィルタであっても、その液流出口部がサンプル瓶の口部内に確実に挿入されるので、液体試料の分注時に液漏れを生じる心配が無くなる。そして、液体試料の分注後にディスクフィルタが上昇するときには、浮上り規制板は、ばねの復元力によって上向きに移動して元の位置に戻る。
この場合に、浮上り規制板に形成される開孔が長孔であれば、分注時に浮上り規制板がサンプル瓶の上面部に密接していても、長孔によって浮上り規制板とサンプル瓶の上面部との間に僅かな隙間が出来る。このため、サンプル瓶の内部が密閉状態とはならず、内部の空気が隙間を通して外部に抜け出るので、分注操作に支障を生じる心配が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態の1例を示し、液体試料の濾過分注装置の全体構成を一部破断した状態で示す斜視図である。
【図2】ディスクフィルタを縦方向に半分に切断した状態で示す斜視図である。
【図3−A】サンプル瓶の斜視図である。
【図3−B】サンプル瓶を各部品に分離した状態を示す斜視図である。
【図4】図1に示した濾過分注装置の構成を、一部の部材の図示を省略して示す斜視図である。
【図5】図1に示した濾過分注装置の構成要素であるフィルタ取出し部および昇降機構の構成を示す側面図である。
【図6】図1に示した濾過分注装置の構成要素であるサンプル液分注部の構成を、一部の部材の図示を省略して示す斜視図である。
【図7】同じくサンプル液分注部の構成を、一部の部材の図示を省略して示す斜視図である。
【図8】図1に示した濾過分注装置の構成を、一部の部材の図示を省略し一部を破断した状態で示す側面図である。
【図9】図1に示した濾過分注装置の構成を、一部の部材の図示を省略し一部を破断した状態で示す正面から見た図である。
【図10】図1に示した濾過分注装置の構成要素である浮上り規制板を示す斜視図である。
【図11】図1に示した濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図12】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図13】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図14】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図15】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図16−A】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図16−B】同じく濾過分注装置における動作を説明するための図であって、この濾過分注装置の構成要素であるフィルタ継手部材およびディスクフィルタとサンプル瓶と浮上り規制板との位置関係を、一部断面で示す側面図である。
【図16−C】同じく濾過分注装置における動作を説明するための図であって、この濾過分注装置の構成要素であるディスクフィルタとサンプル瓶と浮上り規制板との位置関係を、一部破断して示す斜視図である。
【図17−A】同じく濾過分注装置における動作を説明するための図であって、この濾過分注装置の構成要素であるフィルタ継手部材およびディスクフィルタとサンプル瓶と浮上り規制板との位置関係を、一部断面で示す側面図である。
【図17−B】同じく濾過分注装置における動作を説明するための図であって、この濾過分注装置の構成要素であるディスクフィルタとサンプル瓶と浮上り規制板との位置関係を、一部破断して示す斜視図である。
【図18】同じく濾過分注装置における動作を説明するための図であって、この濾過分注装置の構成要素であるフィルタ継手部材およびディスクフィルタとサンプル瓶と浮上り規制板との位置関係を、一部断面で示す側面図である。
【図19】同じく濾過分注装置における動作を説明するための図であって、この濾過分注装置の構成要素であるフィルタ継手部材およびディスクフィルタとサンプル瓶と浮上り規制板との位置関係を、一部断面で示す側面図である。
【図20】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図21】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【図22】同じく濾過分注装置における動作を説明するための要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
この液体試料の濾過分注装置は、図1に一部破断した状態で全体構成を斜視図で示すように、複数のディスクフィルタ1を収容するフィルタ収容部10、このフィルタ収容部10からディスクフィルタ1を取り出すフィルタ取出し部12、このフィルタ取出し部12を鉛直方向へ往復移動させる昇降機構14、この昇降機構14を水平方向へ直線的に往復移動させる水平直動機構16、および、複数本のサンプル瓶6を収容しサンプル瓶6にサンプル液(液体試料)が分注されるサンプル液分注部18を備えて構成されている。
【0014】
ディスクフィルタ1は、図2に縦方向に半分に切断した斜視図を示すように、円盤状ハウジング2の内部にフィルタ材3を収納し、円盤状ハウジング2の上面中央部から突出するように管状の液流入口部4を一体に形設するとともに、下面中央部から突出するように管状の液流出口部5を一体に形設して構成されている。そして、ディスクフィルタ1の液流入口部4へサンプル液が導入され、そのサンプル液が円盤状ハウジング2内部のフィルタ材3を通過する間に固形分や塵埃などの不純物が濾過され、不純物が除去されたサンプル液が液流出口部5から流出して分析に供される。
【0015】
サンプル瓶6は、図3−Aに斜視図を、図3−Bに各部品に分離した状態の斜視図をそれぞれ示すように、上部が開口した容器部7、蓋面が円形状に大きく切り抜かれた外蓋部8、および、容器部7の上部開口面と外蓋部8の蓋面との間に介挿される弾性蓋9から構成される。弾性蓋9は、ゴム材等の弾性素材で形成され、弾性蓋9には、ディスクフィルタ1の液流出口部5が挿通して容器部7の口部内に挿入することができるように複数の切込み9aが設けられている。この弾性蓋9は、容器部7の上部開口面に配置され、外蓋部8を容器部7の口部外面に螺合することにより容器部7に固着される。そして、弾性蓋9により、サンプル瓶6に分注されたサンプル液の蒸発が防止される。
【0016】
フィルタ収容部10には、図4に理解し易いように一部の部材の図示を省略して斜視図で示すように、複数個のディスクフィルタ1を支持するベースプレート20が水平に配設されている。ベースプレート20には、ディスクフィルタ1の液流出口部5の外径寸法より大きい内径寸法を有して液流出口部5が遊嵌する複数のセット用孔22が形成されている。複数のセット用孔22は、互いに直交する縦・横の2方向にそれぞれ複数ずつ、図示例では縦方向に5個、横方向に6個、整列して設けられている。ディスクフィルタ1は、このベースプレート20の上面に、セット用孔22の周縁部にディスクフィルタ1の円盤状ハウジング2の下面が当接した状態で支持される。ベースプレート20の下方には、ベースプレート20と平行にかつベースプレート20に近接して位置決めプレート24が配設されている。位置決めプレート24は、ベースプレート20の各セット用孔22にそれぞれ対応する位置に、ディスクフィルタ1の液流出口部5の先端部分(下端部分)の外径寸法とほぼ同じ内径寸法を有する位置決め用孔26が形成されている。したがって、複数の位置決め用孔26は、縦方向に5個、横方向に6個、整列して設けられている。この位置決めプレート24の位置決め用孔26にディスクフィルタ1の液流出口部5の下端部分が嵌挿することにより、ベースプレート20上に支持されたディスクフィルタ1が所定位置に位置決めされることになる。
【0017】
フィルタ収容部10からディスクフィルタ1を取り出すフィルタ取出し部12には、図示していないがサンプル液を供給する液供給部に流路接続された送液チューブが接続されたフィルタ継手部材28が、ベースプレート20の横方向に並列したセット用孔22と同数、図示例では6個、一列に並列して設けられる。それらのフィルタ継手部材28は、ベースプレート20の横方向に並列した各セット用孔22にそれぞれ対応するようにそれらと同一間隔で配設される。このフィルタ継手部材28は、その下端の接続口部30をディスクフィルタ1の液流入口部4に嵌挿することにより、ディスクフィルタ1を保持してフィルタ収容部10から取り出す。
【0018】
フィルタ継手部材28は、図5にフィルタ取出し部12および昇降機構14の側面図を示すように、それぞれ個別に水平保持板32に取着され、接続口部30が下向きとなるように鉛直姿勢に保持されている。水平保持板32には、鉛直方向に設けられる左右一対の摺動棒34の各下端部がそれぞれ固着されている。摺動棒34の上端部分には固定具36が固着されており、摺動棒34は、固定具36の下方部分がブラケット38の鉛直貫通孔40に摺動可能に挿通されて支持されている。この摺動棒34には、水平保持板32とブラケット38との間に介設されるように圧縮コイルばね42が外挿されている。そして、複数(2×6)のブラケット38が共通の昇降板44にそれぞれ固着されている。したがって、6個のフィルタ継手部材28は、昇降板44が昇降することにより一体的に同時に上下方向へ移動し、また、各フィルタ継手部材28は、昇降板44およびそれに固着されたブラケット38に対してそれぞれ個別に、圧縮コイルばね42の弾発力に抗して上向きに微小移動するとともに、圧縮コイルばね42の復元力によって下向きに微小移動する。
【0019】
昇降板44、従って昇降板44に連接した6個のフィルタ継手部材28を鉛直方向へ往復移動させる昇降機構14は、昇降板44が固着された昇降ブロック46を備え、昇降ブロック46にはナット部材48が一体的に固設されている。昇降ブロック46のナット部材48には、鉛直方向に配設され回転自在に固定部に支持されたねじ桿50が螺合している。また、昇降ブロック46には、スライド軸受52が一体的に固設されており、スライド軸受52に、鉛直方向に配設され固定部に固設された案内軸54が挿通されている。ねじ桿50の、ナット部材48との螺合部分より上方に突き出た非ねじ部分は、ハウジング56の水平取付板部58に固設された軸受62に支持され、ねじ桿50の上端部に従動側プーリ64が固着されている。また、ハウジング56の水平取付板部58には駆動モータ66が固設され、駆動モータ66の回転軸に駆動側プーリ68が固着されている。そして、ねじ桿50に固着された従動側プーリ64と駆動モータ66の回転軸に固着された駆動側プーリ68とにタイミングベルト70が掛け回されている。このように構成された昇降機構14により、駆動モータ66の回転駆動力をねじ桿50に伝達してねじ桿50を正・逆回転させ、それに伴ってナット部材48が一体的に固設された昇降ブロック46を上下方向へ移動させ、昇降ブロック46に昇降板44を介して連接されたフィルタ継手部材28が上下方向へ移動させられる。
【0020】
昇降機構14を水平方向へ往復移動させる水平直動機構16は、固定フレーム72に固設された駆動モータ74、駆動モータ74の回転軸に固着された駆動側プーリ76、固定フレーム72に固着されたL形支持板78に回転自在に支持された従動側プーリ80、および、駆動側プーリ76と従動側プーリ80とに掛け回されたタイミングベルト82を備えて構成されている。そして、固定フレーム72に固設された水平案内レール84に、昇降機構14のハウジング56の鉛直取付板部56に固着された摺動部材86を摺動自在に係合させるとともに、タイミングベルト82の上方面部に、ハウジング56の鉛直取付板部60に固着されたL形連接板88を連接している。このような構成により、駆動モータ74を正・逆方向に回転駆動させて、タイミングベルト82を前後方向に往復移動させ、それに伴って昇降機構14の全体を前後方向へ移動させ、昇降機構14に連接されたフィルタ継手部材28が前後方向へ移動させられる。
【0021】
サンプル液分注部18には、複数本のサンプル瓶6を収容する収容プレート90が設けられている。サンプル瓶6は、互いに直交する縦・横の2方向にそれぞれ複数ずつ整列して収容プレート90に収容されているが、横方向には、フィルタ継手部材28と同数の6本のサンプル瓶90がフィルタ継手部材28と同一間隔で配置され、縦方向に、図示例では5本のサンプル瓶6が配置されている。また、サンプル液分注部18には、図6および図7に理解し易いように一部の部材の図示を省略して斜視図で示し(図6は、フィルタ継手部材28が上昇位置にあるときの状態を示し、図7は、フィルタ継手部材28が下降位置にあるときの状態を示す)、図8および図9に同じく側面図および正面から見た図をそれぞれ一部破断した状態で示すように、フィルタ継手部材28の個数に対応して6枚の浮上り規制板92がフィルタ継手部材28と同じ間隔で並列して設けられる。浮上り規制板92は、図10に示すように、矩形状の板材の対向する両側辺部を上向きに折曲して形成され、その中央部に長孔94が形設されている。長孔94は、その長手方向の寸法がサンプル瓶6の上部開口部(外蓋部8の蓋面の開孔)の直径寸法より大きく、短手方向の寸法がサンプル瓶6の上部開口部の直径寸法と同等に形成されている。この浮上り規制板92の上面には、左右に一対の支軸96、96が一体的に植設されている。
【0022】
また、サンプル液分注部18には、複数個のフィルタ継手部材28の並列方向に沿って取付け板98が水平方向に設けられている。取付け板98の両端部には、それぞれスライド軸受部材100が固設されており、各スライド軸受部材100に、水平方向に配設され固定フレーム102に固設された案内軸104がそれぞれ挿通されている。したがって、取付け板98は、その長手方向と直交する水平方向へ移動自在に支持されている。そして、取付け板98は、サンプル液分注部18の区域内において、図示しない連動機構により、水平直動機構16によるフィルタ継手部材28の水平方向への移動に連動して移動するような構成となっている。取付け板98には、6個の円形孔を連ねた形状を有し6個のディスクフィルタ1およびフィルタ継手部材28を保持する6つの水平保持板32が貫通可能である横長開孔106が形設されている。また、取付け板98には、左右一対の貫通小孔108、108が6組穿設されており、各一対の貫通小孔108、108に各浮上り規制板92の一対の支軸96、96がそれぞれ摺動可能に挿通されている。そして、支軸の96に圧縮コイルばね110が外挿され、支軸96の上端部に圧縮コイルばね110の一端部が固着されて、支軸96の上端部と取付け板98の上面との間に圧縮コイルばね110が介設されている。したがって、各浮上り規制板92は、取付け板98に対してそれぞれ個別に、圧縮コイルばね110の弾発力に抗して下向きに微小移動するとともに、圧縮コイルばね110の復元力によって上向きに微小移動して元の位置へ戻る。
【0023】
さらに、サンプル液分注部18の収容プレート90の近傍には、ディスクフィルタ1の液流入口部4の直径寸法より大きく円盤状ハウジング2の直径寸法より小さい幅を有する6本の切欠き114がフィルタ継手部材28と同一間隔で形設されたフィルタ離脱板112が配設されている。このフィルタ離脱板112により、フィルタ継手部材28の接続口部30からディスクフィルタ1を離脱させる。フィルタ離脱板112の下方に、フィルタ継手部材28から脱落した使用済みのディスクフィルタ1を回収する回収容器116(図11−図15等参照)が設置されている。
【0024】
上記した構成を備えたサンプル液の濾過分注装置を使用した一連の操作は、以下のようにして行われる。
図11に要部側面図を示すように、複数個のディスクフィルタ1は、位置決めプレート24によって位置決めされベースプレート20上に支持されてフィルタ収容部10に収容されている。この操作開始前の待機状態から、先ず、図12に示すように、水平直動機構16により昇降機構14を手前側のフィルタ収容部10の方へ移動させて、フィルタ取り出し部12の6個のフィルタ継手部材28をフィルタ収容部10に収容され横方向に並列した6個のディスクフィルタ1の直上位置まで移動させる。続いて、図13に示すように、昇降機構14を駆動させて、6個のフィルタ継手部材28を下降させ、フィルタ継手部材28の下端の接続口部30をディスクフィルタ1の液流入口部4に嵌挿する。これにより、フィルタ継手部材28にディスクフィルタ1が保持される。このとき、フィルタ継手部材28は、昇降機構14の昇降板44に対して上下方向へ微小移動可能にかつ圧縮コイルばね42によって弾発的に保持されているので、ベースプレート20上に支持されたディスクフィルタ1の最上位置がその種類によって多少変化しても、また、複数のフィルタ継手部材28の取付け高さ位置にばらつきがあったとしても、各フィルタ継手部材28の接続口部30が各ディスクフィルタ1の液流入口部4にそれぞれ確実に嵌挿されて、6個のフィルタ継手部材28に6個のディスクフィルタ1が保持される。
【0025】
フィルタ継手部材28にディスクフィルタ1が保持されると、図14に示すように、昇降機構14を駆動させて、6個のフィルタ継手部材28を上昇させ、フィルタ継手部材28に保持されたディスクフィルタ1をベースプレート20のセット用孔22から抜き出して、フィルタ収容部10から6個のディスクフィルタ1を取り出す。続いて、図15に示すように、水平直動機構16により昇降機構14を後方側へ移動させて、6個のフィルタ継手部材28に保持された6個のディスクフィルタ1を、収容プレート90に収容され横方向に並列した6本のサンプル瓶6の直上位置まで移送する。
【0026】
次に、図16−A〜図19に基づいてサンプル液の分注操作について説明する。
図16−Aに要部側面図を示し、図16−Bに、フィルタ継手部材28およびディスクフィルタ1とサンプル瓶6と浮上り規制板92との位置関係を、一部断面で表した側面図を示し、図16−Cに、ディスクフィルタ1とサンプル瓶6と浮上り規制板92との位置関係を、一部破断して斜視図で示すように、フィルタ継手部材28に保持されたディスクフィルタ1がサンプル瓶6の直上に位置すると、昇降機構14を駆動させて、フィルタ継手部材28を下降させる。この下降動作により、フィルタ継手部材28に保持されたディスクフィルタ1が取付け板98の横長開孔106を貫通し、ディスクフィルタ1の円盤状ハウジング2の下面が浮上り規制板92に当接した後、さらに圧縮コイルばね110の弾発力に抗してディスクフィルタ1で浮上り規制板92を押し下げる。そして、図17−Aおよび図17−Bに示すように、浮上り規制板92の下面をサンプル瓶6の外蓋部8の蓋面に密接させた状態で、ディスクフィルタ1の液流出口部5をサンプル瓶6の弾性蓋9に挿通してサンプル瓶6の口部内に挿入する。この状態において、図示しないサンプル液供給部から送液チューブを通してフィルタ継手部材28へサンプル液を供給することにより、フィルタ継手部材28の接続口部30からディスクフィルタ1内へサンプル液が導入され、サンプル液がディスクフィルタ1内を通過する間に濾過されて、不純物が除去されたサンプル液がディスクフィルタ1の液流出口部5から流出して直接にサンプル瓶6内へ吐出される。このとき、浮上り規制板92がサンプル瓶6の蓋面に密接しているが、浮上り規制板92には長孔94が形成されているので、長孔94によって浮上り規制板92とサンプル瓶6の蓋面との間に僅かな隙間が出来る。このため、サンプル瓶6の内部が密閉状態とはならず、内部の空気が隙間を通して外部に抜け出るので、分注操作に支障を生じる心配は無い。
【0027】
サンプル瓶6内へのサンプル液の分注が終わると、昇降機構14を駆動させて、フィルタ継手部材28を上昇させ、フィルタ継手部材28に保持されたディスクフィルタ1を持ち上げる。このとき、ディスクフィルタ1と共に浮上り規制板92も上方へ移動するが、さらに、サンプル瓶6の弾性蓋9とディスクフィルタ1の液流出口部5とが係合していることにより、図18に示すようにサンプル瓶6もディスクフィルタ1と一緒に持ち上がることとなる。しかしながら、浮上り規制板92が取付け板98に当接した元の位置に戻ると、浮上り規制板92はそれ以上、上方へ移動することがないので、浮上り規制板92によってサンプル瓶6のそれ以上の浮上りが防止され、図19に示すように、サンプル瓶6の弾性蓋9がディスクフィルタ1の液流出口部5から離脱して、サンプル瓶56を下方位置に残してフィルタ継手部材28およびディスクフィルタ1が上方位置へ移動する。
【0028】
図20に示すように、ディスクフィルタ1がフィルタ離脱板112の高さ位置まで移動すると、図21に示すように、水平直動機構16により昇降機構14を手前側へ移動させて、フィルタ継手部材28に保持されたディスクフィルタ1の液流入口部4をフィルタ離脱板112の切欠き114に挿入する。この後、図22に示すように、昇降機構14を駆動させて、フィルタ継手部材28をさらに上方へ移動させることにより、フィルタ離脱板112によってフィルタ継手部材28の接続口部30からディスクフィルタ1が離脱し、使用済みのディスクフィルタ1が下方の回収容器116内に落下して収容される。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明に係る液体試料の濾過分注装置は、試薬の溶出試験装置、液体クロマトグラフ等の分析機器に組み込まれ、試料の分析前にサンプル液を濾過してサンプル瓶内へ分注するのに使用される。
【符号の説明】
【0030】
1 ディスクフィルタ
2 ディスクフィルタの円盤状ハウジング
4 ディスクフィルタの液流入口部
5 ディスクフィルタの液流出口部
6 サンプル瓶
8 サンプル瓶の外蓋部
9 サンプル瓶の弾性蓋
9a 弾性蓋の切込み
10 フィルタ収容部
12 フィルタ取出し部
14 昇降機構
16 水平直動機構
18 サンプル液分注部
20 ベースプレート
24 位置決めプレート
28 フィルタ継手部材
30 フィルタ継手部材の接続口部
32 水平保持板
34 摺動棒
36 固定具
38 ブラケット
40 鉛直貫通孔
42、110 圧縮コイルばね
44 昇降板
46 昇降ブロック
48 ナット部材
50 ねじ桿
52 スライド軸受
54、104 案内軸
56 ハウジング
58 ハウジングの水平取付板部
60 ハウジングの鉛直取付板部
62 軸受
64、80 従動側プーリ
66、74 駆動モータ
68、76 駆動側プーリ
70、82 タイミングベルト
72、102 固定フレーム
84 水平案内レール
86 摺動部材
90 収容プレート
92 浮上り規制板
94 浮上り規制板の長孔
96 支軸
98 取付け板
100 スライド軸受部材
106 横長開孔
108 貫通小孔
112 フィルタ離脱板
116 回収容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を、円盤状ハウジングの内部にフィルタ材が収納され円盤状ハウジングの上面中央部から突出するように管状の液流入口部が一体に形設されるとともに下面中央部から突出するように管状の液流出口部が一体に形設されたディスクフィルタに通して濾過し、サンプル瓶に分注する液体試料の濾過分注装置において、
液体試料を供給する試料供給手段と、
この試料供給手段に流路接続されたフィルタ継手部材と、
このフィルタ継手部材を、その接続口部が下向きとなるように鉛直姿勢に保持する継手部材保持手段と、
複数個のディスクフィルタを収容するフィルタ収容部と、
このフィルタ収容部からディスクフィルタを取り出し、その液流入口部に前記フィルタ継手部材の接続口部を嵌挿して、ディスクフィルタをフィルタ継手部材に取着するフィルタ取出し部と、
複数本のサンプル瓶を収容し、そのサンプル瓶に液体試料が分注される試料分注部と、
前記継手部材保持手段を水平面内で移動させて、それに保持された前記フィルタ継手部材を、前記フィルタ取出し部から前記試料分注部へ移動させ、フィルタ継手部材を、試料分注部に収容されたサンプル瓶の直上に位置させる水平移動手段と、
前記継手部材保持手段を鉛直方向に移動させて、それに保持された前記フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部を、前記試料分注部に収容されたサンプル瓶の直上位置とサンプル瓶の口部内に挿入される分注位置との間で昇降させる上下移動手段と、
を備え、前記フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部から直接に液体試料をサンプル瓶内へ吐出するようにしたことを特徴とする液体試料の濾過分注装置。
【請求項2】
サンプル瓶の上部開口部に、弾性素材で形成されディスクフィルタの液流出口部の挿通を許容する切込みが設けられた蒸発防止用の弾性蓋が取着され、
前記試料分注部に収容されたサンプル瓶と前記継手部材保持手段に保持された前記フィルタ継手部材との間に介在して配設され、フィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部が貫挿される開孔もしくは切欠きが形成されて、継手部材保持手段が下降してフィルタ継手部材に取着されたディスクフィルタの液流出口部がサンプル瓶の弾性蓋を挿通し口部内に挿入されて液体試料が分注された後、継手部材保持手段が上昇するときに、フィルタ継手部材およびディスクフィルタと一緒にサンプル瓶が持ち上がらないようにサンプル瓶の上面部を押さえる浮上り規制板と、
この浮上り規制板を水平姿勢に保持する規制板保持手段と、
をさらに備えた請求項1に記載の液体試料の濾過分注装置。
【請求項3】
前記浮上り規制板は、前記規制板保持手段に上下方向へ微小移動可能に支持され、規制板保持手段に対しばねによって弾発的に保持された請求項2に記載の液体試料の濾過分注装置。
【請求項4】
前記浮上り規制板に形成される開孔は、長手方向の寸法がサンプル瓶の上部開口部の直径寸法より大きい長孔である請求項3に記載の液体試料の濾過分注装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−A】
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【図16−B】
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【図16−C】
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【図17−A】
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【図17−B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−216905(P2010−216905A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62208(P2009−62208)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(591017892)株式会社大日本精機 (3)
【Fターム(参考)】