説明

液体試料中の微生物株の検出

本発明は、液体培地中の微生物株を、該液体試料と発現された酵素の色素原基質の組み合わせを接触させることにより、または検出される株によらずに、検出、同定および区別するための培地、可視光線の波長において検出可能な混合物の最終呈色に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出される株および/または該試料に混入するであろう別の株によって発現された酵素の少なくとも2つの色素形成基質を含む、液体試料中の微生物株を、試料の最終色により検出、同定および区別するための培地に関し、試料最終色は、検出される株に特異的であり、該試料が光に曝露された場合に可視光線で検出可能である。
【0002】
本発明はまた、液体試料中の微生物株の検出、同定および区別のための方法、ならびに該方法を実行するために必要な手段を含むキットに関する。
【背景技術】
【0003】
特に水の中の病原微生物および多様な指標の検出は、長年の微生物学者の関心事である。
【0004】
実際に研究者は、大腸菌(E. coli)、他の大腸菌群、およびエンテロコッカス(Enterococcus)のような糞便汚染の指標だけでなく、エロモナス属(Aeromonas)のような病原体も検出するための技術を開発することを試みてきた。
【0005】
大腸菌細菌は大腸菌群の一員である。この種はヒトおよび動物の腸内叢において非常に豊富であり、厳密には糞便起原である唯一の公知の種である。大腸菌細菌は糞便汚染の最良の指標であると考えられる;水における大腸菌の存在は、水に糞便起源の汚染が混入しており、他の病原微生物が同様に存在するであろうことを示す。胃腸炎は、糞便の混入した水の摂食に伴う最も一般的な疾病である。この疾病は多くの場合良性であるが、時々非常に深刻な健康状態をもたらすこともある。肝炎または脳膜炎のような、よりまれな疾患も、汚染された水の摂食によって引き起こされる場合がある。
【0006】
色素形成培地の発明以前には、大腸菌および他の大腸菌群は、乳糖発酵、ならびに酸およびガス産生のような多くの特性の複合研究によって検出された。
【0007】
大腸菌群は腸内細菌(Enterobacteriaceae)科(グラム陰性、無胞子性)の一員であり、エンテロバクター属(Enterobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、シトロバクター属(Citrobacter)およびエシェリヒア属(Escherichia)のような多様な属を含む。
【0008】
この群に属する全ての微生物はβ-ガラクトシダーゼ活性を有し、かつ典型的な大腸菌はさらにβ-グルクロニダーゼ活性を有することが実証された。
【0009】
1970年代の終わりは、各々の微生物株が、色素原に作用するであろう1つまたは複数の酵素活性(β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-グルコサミニダーゼ、エステラーゼおよびホスファターゼなど)を有し、その後それらが色を生じる発色団を遊離するという事実に基づいた技術である、色素形成基質を使用した微生物同定検査集が次第に出現した。
【0010】
1990年には、沈殿色素形成基質を使用した微生物単離培地の開発があった。
【0011】
遊泳区域の水質基準が100mlの水に対して与えられていることから、微生物の有無の検出、または微生物の列挙を試みる場合、100mlの水試料を検査することは一般的になっている。しかしながら現在の飲料水の微生物学的な水質基準は、60以上の他の基準の中で、飲料水は100 mlの試料の中に、寄生生物、ウイルス、病原細菌または大腸菌を含んではならないと定めているのは特記すべきことである。
【0012】
それゆえ、動物またはヒト由来の水質汚染を検出し防ぐために、分析は水経路の全体、すなわち収集点、処理場、貯蔵所および配水経路にわたって行なわれなければならない。
【0013】
ある微生物水質汚染検出方法は、水は通過できるが微生物が残存するろ過膜で、100 mlの試料をろ過することに基づいている。これらの膜は、後に固形ゲル培地(アガー-アガーまたは他のもの)、または紙(吸収性フィルター技術)もしくは他の海綿状構成物などの固形バッファーに転写される。
【0014】
これらの技術では、検査する試料中に存在する多様な株は、前述のフィルターの表面上で互いに分離し、かつ細菌コロニーの形で発達し、その後カウントされ、同定される。
【0015】
これらの広く用いられている方法は、特異的な試薬と組み合わせて実行された場合に満足な結果をもたらす。しかしながらこのような方法を実行するには、多くの費用および時間が必要となることが短所である。
【0016】
ゲル培地を使用しない別の方法は、検査される液体試料に培地を直接加えることに基づく(例えば、IDEXX社のColilert(登録商標)検査またはMerck社のReadycult(登録商標)検査)。この方法は、大腸菌群と大腸菌の数を推定するために使用されるMPN(最確数)法(しかしこの方法は、さらなる時間に加えて特別な装置も必要とする)と同様に、質的結果(有無)を得るために単一の容器中で、または量的結果を得るために多数の試験管および区画の中で行なわれる。
【0017】
さらにこの方法は、少なくとも大腸菌および大腸菌群検出の枠組み内に、蛍光発生基質を必要とするという短所を有する。
【0018】
実際は、大腸菌群を検出するβ-ガラクトシダーゼ基質、および大腸菌を検出するグルクロニダーゼ基質を組み合わせる技術は、一般に大腸菌群を検出するために色素形成酵素基質を、大腸菌を検出するために蛍光発生酵素基質を使用する。この場合、この技術が蛍光を紫外線下の暗室で検出することを必要とする限り、大腸菌検出は試料を特異的な条件下で読み取ることが必要となる。
【0019】
さらに、色と蛍光によるこの色素原/蛍光原の組み合わせは、ある微生物の他の微生物からの明瞭な区別を可能にする、それぞれの酵素の能力によって定義された、2つの型の微生物のみの区別を可能にする。
【0020】
ゲル培地のようにはコロニーが単離されない、非ゲル構成物を使用する先行技術の手法では、例えば大腸菌群のように、β-ガラクトシダーゼ陽性の微生物である病原菌のエロモナス属を区別できないことは、さらに特記されるべきである。したがって、エロモナス属をすべて検出することができないリスク、およびある大腸菌を少なくとも部分的に阻害するリスクを冒して、分析する試料へのセフスロジンまたは別の選択的な抗菌物質の添加が、通常提案されている。
【0021】
さらに、先行技術の色素原/蛍光原の組み合わせは、大腸菌の約5%を占める、glc-大腸菌(グルクロニダーゼ陰性非定型大腸菌)の同定はできない。
【発明の開示】
【0022】
本発明は、先行技術の短所を改善するために、これらの酵素の効果の元で発色団を遊離することができる色素形成酵素基質の組み合わせの使用により、液体試料中の微生物株の検出、同定および区別を可能にするように選択されている前記組み合わせを提案する。明らかに、前述の色素原の組み合わせは、検出される多様な微生物株の機能、より詳細には、前述の株のそれぞれの酵素活性として決定されることとなる。
【0023】
実際には、本発明は、以下を含む、液体試料中の微生物株の検出、同定および区別のために培地に関する:
-検出される株のインキュベーションに必要とされる栄養素、
-各々は検出される株および/または該試料に混入するであろう別の株によって発現される酵素の基質であり、各々はこの酵素の効果の元で発色団を遊離する、少なくとも2つの色素原であって、該発色団は該液体試料への該培地の添加に起因する液体混合物の最終色に寄与し、該色は該混合物が光へ曝露された場合に可視光線で検出可能である、色素原。
【0024】
「株」または「微生物株」は、共通の特質を有することが公知であり、一般的な用語によって典型的に同定される、任意の特定の微生物種または群を意味する。
【0025】
したがって本発明の枠組み内では、用語の「株」および「微生物株」は、大腸菌株(大腸菌細菌をすべて包含する)、glc-大腸菌株、典型的な大腸菌株(すなわちglc+大腸菌)、大腸菌以外または典型的な大腸菌以外の大腸菌群、およびエロモナス属の細菌へ特に適用する。これらの用語は、例えば、「典型的な大腸菌+他の大腸菌群」または「大腸菌+他の大腸菌群」のような、上述の微生物株の群にも関する。
【0026】
「検出される株のインキュベーションに必要な栄養素」は、前述の株の増殖に必要な基礎培地の組成を意味する。当業者の間では、そのような培地組成は周知であり、ある株の特異性に従って必要な場合に培地を適合することができる。これらの栄養素は、ペプトンならびに動物および植物の組織抽出物に加えて、炭素、窒素、硫黄、リン、ビタミン、増殖誘導物質、糖質、塩類(例えばカルシウム、マグネシウム、マンガン、ナトリウム、およびカリウム)、栄養的複合物(例えばアミノ酸、血液、血清、およびアルブミン)を含む群より特に選択される。
【0027】
本発明の枠組み内で、微生物株の検出、同定および区別は、非ゲル混合物(液体試料および本発明の培地を含む)中で行なわれ、その中で微生物は、ゲル培地上でコロニーが単離されたようには、互いを分離できないことが強調されなくてはならない。さらに本発明は、1つの微生物株と他を区別するために蛍光発生基質の添加を必要とせず、得られた最終色は(インキュベーション期間後に)、可視光線で見ることができる。
【0028】
実際、インキュベーション後、本発明の培地および液体試料を含む混合物は、光に曝露され、すなわち混合物は可視光線に曝露される場所に配置され、この混合物の最終色も可視光線、すなわち肉眼で検出可能である。可視スペクトルは、約400 nm〜800 nmに及ぶことが理解されている。
【0029】
それゆえ、本検査は直ちに読み取ることが可能で、2つの連続した読み取りを必要としないことにより単純化される。さらに、紫外線源など特別の装置を必要としない。したがって、培地、検出が行なわれる容器の材料、および試料の内容物でさえ、多少なりとも検査の読み取りに妨害することはなく、蛍光を発しても、消光効果によって蛍光を妨害してもよい。
【0030】
本発明の枠組み内では、検出される株の増殖には、使用される色素原が必要とされないことは特記されるべきである。実際にはインキュベーション期間中に、当業者に周知の従来の栄養素において、株は成長する。さらに、本発明の枠組み内で使用される色素原は、沈殿しないか、添加物なしで沈殿するか、または培地の塩と反応後に沈殿してもよい。
【0031】
本発明の培地は、固形または液体の形態で調製するか、検査が行なわれる容器にあらかじめ添加されるか、または検査する液体試料と混合する準備ができている個別の容器に包装することができる。
【0032】
本発明はまた、以下の工程を含む、液体試料中の微生物株の検出、同定および区別のための方法に関する:
a)本発明の培地に接触するように液体試料を配置する工程、
b)工程a)で得られた混合物を、約18〜24時間、約34℃〜40℃の温度で、好ましくは約37℃でインキュベートする工程、
c)インキュベートされた混合物を光に曝露し、可視光線で該混合物の最終色を読み取る工程、および
d)該最終色に従って微生物株を同定する工程。
【0033】
最初に、前述の方法の枠組み内で、液体試料への培地の添加、または検査が行なわれる容器へ既に導入した培地への液体試料の添加のいずれかによって、液体試料を本発明の培地に接触するように配置する。
【0034】
次に、液体試料と本発明の培地が含まれた混合物のインキュベーションが、微生物株検出工程に先行する。インキュベーション工程は、約34℃〜40℃の温度で、好ましくは約37℃で、約18〜24時間、行なうことができる。しかしながら、利用可能な手段に依存して、当業者は、インキュベーションが行なわれる温度に対するインキュベーション工程の継続時間を適合するだろう。
【0035】
したがって、インキュベータが利用可能でなく、室温が37℃未満ならば、当業者は、同様の結果を得るためにインキュベーション工程を延長するだろう。したがってインキュベータがない場合、インキュベーション工程は、室温で48時間または72時間まで延長されてもよい。他の場合では、例えば培地の栄養素が豊富さに応じて、インキュベーション期間を約12〜18時間に減少することが可能である。
【0036】
さらに、耐熱性大腸菌群(大腸菌を含める)と他の微生物株を区別する目的で、検査の選択性を増すために、インキュベーションは、耐熱性大腸菌群(大腸菌を含める)が耐性である44〜45℃の温度で、約24時間行なわれてもよい。
【0037】
本発明の方法の工程c)に関して、例えば昼間の間に室外または直射日光を受ける室内で検査を行なうことができるため、その実行を保証する特定の工程は、通常はないだろう。
【0038】
本発明の方法は完全に手動で行なうことができるが、半自動化または完全自動化もまた可能であることは特記されるべきである。
【0039】
本発明は、さらに本発明の方法を実行するための、以下を含むキットに関する:
-検出される株のインキュベーションに必要な栄養素、
-各々は検出される株および/または該試料に混入するであろう別の株によって発現される酵素の基質である、少なくとも2つの色素原、
-液体試料、該栄養素および該色素原を含む容器、
-一方は液体試料、前述の栄養素および前述の色素原を含んだ混合物の最終色、および他方は検出される株の間の対応を確立している説明書、または検出される株の同定を可能にする他の任意の参照システム。
【0040】
本発明の枠組み内では、微生物株の検出、同定および区別が行なわれる液体または液化された試料は、好ましくは水、より優先的には飲料水である。しかしながら、検出は他の液体、特に牛乳、果汁または任意の他の飲料などの食品でも行なうことができる。
【0041】
本発明はしたがって、ある大腸菌群に対して、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)がglc-大腸菌であると示すような誤りを生じ得る追加のインドール検査へ、glc陰性のすべての試料を供することなく、典型的な大腸菌だけでなくグルクロニダーゼ陰性(glc-)大腸菌も検出および区別することを可能にする。試料を閉じられ密封された区画に配置するQuanti-Tray(登録商標)システム(IDEXX社)の場合のように、インドール検査の実行はしばしば困難であるか、または不可能でさえある。
【0042】
本発明はまた、エロモナス属と大腸菌を混同せずに、かつエロモナス属だけでなく部分的に大腸菌も阻害するセフスロジンまたは別の抗菌物質を加える必要なく、大腸菌以外の大腸菌群と大腸菌の区別を可能にする。
【0043】
実際には本発明は、大腸菌、および大腸菌以外の大腸菌群などのような糞便汚染の指標だけでなく、病原菌エロモナス属も同時に検出および区別することを可能にする。
【0044】
本発明によって提案された検出検査は、本質的には定性的検査、すなわち、液体試料中の微生物株の有無の検出を可能とする検査である。しかしながら本発明の検査が、例えばMPN法に従って、定量的検査へ変更されることは妨げられない。
【0045】
本発明の枠組み内では、所望の株を検出するための色素原の適切な組み合わせを決定したほうがよい。したがって、そのような決定の一例は、大腸菌以外の大腸菌群によって発現された酵素の効果の元で黄色になる発色団を遊離する色素原、および大腸菌によって発現された酵素の効果の下で青くなる発色団を遊離する色素原であるだろう。したがって、検査が行なわれる液体試料の最終色が青色の場合、試料に大腸菌が混入していると推定でき;最終色が黄色の場合、試料に大腸菌以外の大腸菌群が混入していると推定できる。試料に、大腸菌、および大腸菌以外の大腸菌群の両方が混入している場合、最終色が緑色の範囲内であろうこともまた強調されるべきである。
【0046】
したがって、検出される微生物株のどれか1つが混入している場合には、観察しようとする色のに応じて発色団を選択したほうがよい。
【0047】
色素原の組み合わせの選択は最重要であるが、これらの色素原に作用する酵素が微生物株に特異的である必要は決してない。ある場合には、発色団または遊離された発色団に従って最終色が検出される株を表わすように、該株のある酵素に対して陰性である特性が用いられるだろう。
【0048】
しかしながら、検査される液体または液化された試料が、本発明の培地中に存在する基質に対応する酵素を有せず、結果的に発色団が遊離されない微生物株を含む場合、該株の存在は、混入していない液体対照試料と比較して検出してもよい。実際には、混入した試料は微生物増殖を示す白濁した外見を有するだろう。
【0049】
明らかに、本発明に従って、選択された色素原と相互作用する酵素だけでなく、色素原自体の多数の組み合わせを想定することは可能である。
【0050】
例えば、本発明の枠組み内で活性が利用される酵素の中では、以下が特に列記できる:β-D-ガラクトサミニダーゼ、β-D-グルコサミニダーゼ、β-D-セロビオシダーゼ、β-D-フコシダーゼ、α-L-フコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、β-D-ラクトシダーゼ、α-D-マルトシダーゼ、α-D-マンノシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-キシロシダーゼ、エステラーゼ、アセテートエステラーゼ、酪酸エステラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、カプリル酸エステラーゼ、コリンエステラーゼ、ミオイノシトールホスファターゼ、パルミチン酸エステラーゼ、ホスファターゼ、ジホスファターゼ、アミノペプチダーゼ、およびスルファターゼ。
【0051】
1つまたは複数の検出される微生物株の酵素活性によって、遊離されようとする発色団に関しては、以下が列記できる:O-ニトロフェニル、P-ニトロフェニル、クロロニトロフェニル、ヒドロキシフェニル、ニトロアニリド、フェノールフタレインおよびチモフタレイン、ヒドロキシキノリン、シクロヘキサン-エスクレチン、ジヒドロキシフラボン、カテコール、レサズリン、レゾフリン(resofurin)、VBzTM、VLM、VLPr、VQM、インドキシル、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル、6-クロロ-3-インドキシル、6-フルオロ-3-インドキシル、5-ロド(lodo)-3-インドキシル、およびN-メチルインドキシル。
【0052】
上述のように、本発明は、液体試料中の大腸菌株を、別の株もまた該試料の中に存在する場合を含めて、検出、同定、および区別することを可能にする。しかしながら、本発明者は、100万倍以上のエンテロバクター属の大腸菌群と混合された場合でさえ、約24時間のインキュベーション後に大腸菌株の検出が可能であるという、驚くべき観察をした。用いられる色素原の組み合わせは以下のとおりであった:β-グルクロニダーゼに対する基質の5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシルグルクロニド;およびβ-ガラクトシダーゼに対する基質のニトロフェニルβ-ガラクトシド。青緑色は、エンテロバクター属大腸菌群中の大腸菌株の存在を示した(2つの株の間の比率は1:1,000,000)。
【0053】
以下の実施例は本発明を説明するが、その範囲を全く制限しない。
【0054】
実施例:
下記の実施例は、検出される株の酵素の基質として選ばれた少数の色素原の組み合わせのみを表わすが、本記述から直接または間接的に生じる他のすべての組み合わせもまた、本発明の一部を形成する。
【0055】
以下の実施例のすべてについて、検査は100 mlの水で行い、検出される微生物株をインキュベートする工程は、以下の栄養素(g/l)を含む培地で行った:
ペプトン 5、ピルビン酸 1、NaCl 5、KH2PO4 4、KH2PO4 1、SDS 0.1、KNO3 0.005、トリプトファン 1、バンコマイシン 0.002。
【0056】
実施例15の場合には、前記培地はSDSもバンコマイシンも含まない。
【0057】
以下の実施例のすべてについて、インキュベーションは約24時間、35〜37℃で行った。
【0058】
実施例1:
色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0059】
実施例2:
色素原の組み合わせは以下のとおりである:


【0060】
実施例3:
実施例2と同じ酵素を用いたが、2つの発色団を逆にした。色素原の組み合わせは以下のとおりである:


【0061】
実施例4:
色素原の組み合わせは実施例2と同じだが、病原菌エロモナス属の阻害剤である、0.005 g/lのセフスロジンまたは0.001 g/lのナリジキシン酸のいずれかを、本発明の培地に添加した。

【0062】
実施例5:
色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0063】
実施例6:
実施例5と同じ酵素を用いたが、2つの発色団を逆にした。色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0064】
実施例7:
色素原の組み合わせは実施例5と同じだが、病原菌エロモナス属の阻害剤である、0.005 g/lのセフスロジンまたは0.001 g/lのナリジキシン酸のいずれかを、本発明の培地に添加した。

【0065】
実施例8:
色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0066】
実施例9:
酵素は実施例8と同じであるが、1つの発色団は異なる。色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0067】
実施例10:
色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0068】
実施例11:
酵素は実施例10と同じであるが、2つの発色団を逆にした。色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0069】
実施例12:
色素原の組み合わせは実施例10と同じだが、病原菌エロモナス属の阻害剤である、0.005 g/lのセフスロジンまたは0.001 g/lのナリジキシン酸のいずれかを、本発明の培地に添加した。

【0070】
実施例13:
色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0071】
実施例14:
酵素は実施例13と同じであるが、1つの発色団は異なる。色素原の組み合わせは以下のとおりである。


【0072】
実施例15:
色素原の組み合わせは以下のとおりである。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腸菌(E. coli)および/または大腸菌以外の大腸菌群、典型的な大腸菌および/または典型的な大腸菌以外の大腸菌群、glc-大腸菌およびエロモナス属(Aeromonas)を含む群中より選択される微生物株を、前述の株の少なくとも1つを含むであろう液体試料中で、検出、同定および区別するための培地であって、以下を含む培地:
-検出される株のインキュベーションに必要な栄養素、
-各々は検出される株および/または該試料に混入するであろう別の株によって発現される酵素の基質であり、かつ各々はこの酵素の効果の元で発色団を遊離する少なくとも2つの色素原であって、該発色団は該液体試料への該培地の添加に起因する液体混合物の最終色に寄与し、該色は該混合物が光へ曝露された場合に可視光線で検出可能である、少なくとも2つの色素原。
【請求項2】
液体試料が水、好ましくは飲料水である、請求項1記載の培地。
【請求項3】
前記酵素が以下を含む群中より選択される、請求項1または2記載の培地:β-D-ガラクトサミニダーゼ、β-D-グルコサミニダーゼ、β-D-セロビオシダーゼ、β-D-フコシダーゼ、α-L-フコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、β-D-ラクトシダーゼ、α-D-マルトシダーゼ、α-D-マンノシダーゼ、α-D-グルコシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-キシロシダーゼ、エステラーゼ、アセテートエステラーゼ、酪酸エステラーゼ、カルボキシルエステラーゼ、カプリル酸エステラーゼ、コリンエステラーゼ、ミオイノシトールホスファターゼ、パルミチン酸エステラーゼ、ホスファターゼ、ジホスファターゼ、アミノペプチダーゼ、およびスルファターゼ。
【請求項4】
前記発色団が以下を含む群中より選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の培地:O-ニトロフェニル、P-ニトロフェニル、クロロニトロフェニル、ヒドロキシフェニル、ニトロアニリド、フェノールフタレインおよびチモフタレイン、ヒドロキシキノリン、シクロヘキサン-エスクレチン、ジヒドロキシフラボン、カテコール、レサズリン、レゾフリン(resofurin)、VBzTM、VLM、VLPr、VQM、インドキシル、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドキシル、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドキシル、6-クロロ-3-インドキシル、6-フルオロ-3-インドキシル、5-ロド(lodo)-3-インドキシル、およびN-メチルインドキシル。
【請求項5】
大腸菌および/または大腸菌以外の大腸菌群、典型的な大腸菌および/または典型的な大腸菌以外の大腸菌群、glc-大腸菌およびエロモナス属を含む群中より選択される微生物株を、前述の株の少なくとも1つを含むであろう液体試料中で、検出、同定および区別するための方法であって、以下の工程を含む方法:
a)請求項1〜4のいずれか一項記載の培地に接触するように液体試料を配置する工程、
b)工程a)で得られた混合物を、約18〜24時間、約34℃〜40℃の温度で、好ましくは約37℃でインキュベートする工程、
c)インキュベートされた混合物を光に曝露し、可視光線で該混合物の最終色を読み取る工程、および
d)該最終色に従って微生物株を同定する工程。
【請求項6】
液体試料が水、好ましくは飲料水である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
以下を含む、請求項5または6記載の方法を実行するためのキット:
-検出される株のインキュベーションに必要な栄養素、
-各々は検出される株および/または該試料に混入するであろう別の株によって発現される酵素の基質である、少なくとも2つの色素原
-液体試料、該栄養素および該色素原を含む容器、
-一方は液体試料、前述の栄養素および前述の色素原を含んだ混合物の最終色、および他方は検出される株の間の対応を確立している説明書、または検出される株の同定を可能にする他の任意の参照システム。
【請求項8】
液体試料が水、好ましくは飲料水である、請求項7記載のキット。

【公表番号】特表2008−530993(P2008−530993A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555638(P2007−555638)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060143
【国際公開番号】WO2006/089889
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507281823)
【Fターム(参考)】