説明

液体試料吸引装置、及びこの液体試料吸引装置を備える分析装置

【課題】 構造を簡単にすることができ、ピペットの詰まり及び液体試料の汚染を防止することができるとともに、液体試料吸引後は栓体に空いた穴を閉じることが可能となる液体試料吸引装置を提供する。
【解決手段】 容器30の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器30内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置A。その先端が前記容器30の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に当該容器30の内部側に変形可能な変形片を形成するピアサ1と、容器30内の液体試料を吸引し得るピペット2とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体試料吸引装置、及びこの液体試料吸引装置を備える分析装置に関する。さらに詳しくは、血液や尿等の液体試料(以下、単に試料ともいう)を分析する試料分析装置において、試料が収容されている容器から当該試料を吸引するのに用いられる液体試料吸引装置、及びこの液体試料吸引装置を備える分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空採血管等の密封容器に収容された液体試料を吸引し、その液体試料を分析する分析装置が広く知られている。従来のこの種の分析装置は、密封容器から液体試料を吸引するために、先端を鋭利に尖らせた吸引管を備えており、この吸引管が密封容器の栓体を貫通するように構成されている。しかしながら、このような吸引管では、吸引管が栓体を貫通したときに生じた削り屑が吸引管の穴に入り、詰りが生じるという問題があった。
【0003】
そこで、穴開け用の管を栓体に突き刺し、その管の中に吸引管を通して当該吸引管の先端を密封容器の内部に挿入する構成のサンプリング装置が開示されている(特許文献1、2参照)。また、先端が鋭利な穴開け用具を吸引管に並設し、この穴開け用具で栓体に穴を開けた後、吸引管を移動させて穴に位置合わせし、その穴に吸引管を通す構成の装置が開示されている(特許文献3)。これらの装置では、吸引管が栓体の削り屑で詰まることを防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特表平3−501168号公報
【特許文献2】実開平3−23364号公報
【特許文献3】特開昭62−100662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示された構成では、穴開け用の管を栓体に突き刺したときに、この管が削り屑によって詰まるという問題があった。また、削り屑が密封容器中の液体試料に混入し、吸引管の詰りを招いたり、液体試料が汚染されたりするという問題があった。また、穴開け用の管は内部に吸引管を通す必要があるため太くなり、そのため栓体を刺し通したときの穴が大きくなるという問題があった。穴が大きすぎると、穴開け用の管を栓体から引き抜いた後、その穴が閉じなくなることがあり、また穴開け用の管を栓体に刺し通すために大きな力を要していた。
【0006】
また、特許文献3に開示された構成では、穴開け用具で密封容器の栓体を刺し通し、穴開け用具を栓体から引き抜いた後、栓体の穴に位置合わせをしなければならないが、穴開け用具の引き抜きの際に密封容器に位置がずれないように、密封容器をしっかりと保持する必要があった。このためには、密封容器の保持構造が複雑となり、またユーザが密封容器を装置にセットする際に多くの手間が必要になるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、構造が簡単であり、ピペットの詰まり及び液体試料の汚染を防止するとともに、液体試料吸引後は栓体に空いた穴を閉じることが可能な液体試料吸引装置、及びこの液体試料吸引装置を備える分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体試料吸引装置は、容器の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置であって、
その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に当該容器の内部側に変形可能な変形片を形成するピアサと、
容器内の液体試料を吸引し得るピペットと
を備えたことを特徴としている。
【0009】
本発明の液体試料吸引装置では、容器の開口に装着される栓体をピアサで穿刺(切断)して変形片を形成している。この変形片は、前記容器の内部側に変形可能であり、ピペット先端がかかる変形片に当接するように当該ピペットを移動させることで前記変形片が変形するので、小さな力でピペットを容器内の所定位置まで挿入することができる。また、ピペットが容器内に挿入される際に、前記変形片の変形により生じた隙間ないしは通路を介して容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行うことができる。
さらに、ピペットを用いて試料を吸引することができるので、開口が栓体により密封された試料容器であっても、試料のデッドボリュームを最小限にすることができる。前記ピアサ及びピペットは、洗浄スピッツ内に両方同時に入れ、洗浄液を当該洗浄スピッツの下部側方から注入し、上部側方から吸引することで洗浄できるので、洗浄工程を簡略化することができる。
また、ピアサによって栓体に変形片を形成するため、栓体の削り屑が生じず、ピペットの詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後は変形片が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【0010】
前記ピアサの軸方向に垂直な断面が略くの字状又はC字状であり、当該ピアサにより形成される略くの字状又はC字状の変形片をピペットが変形させるように構成されているのが好ましい。この場合、比較的簡単な構成のピアサで変形片を形成することができ、このピアサにより形成される略くの字状又はC字状の変形片をピペットで変形させることで、小さな力でピペットを容器内の所定位置まで挿入することができる。また、ピペットが容器内に挿入される際に、前記くの字状又はC字状の変形片の先端付近に生じる隙間ないしは通路を介して容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行うことができる。
【0011】
前記ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記変形片を変形させてピペットを容器内部に挿入し得るように構成されているのが好ましい。この場合、ピアサによって前記変形片と対向する栓体部分の変形が規制されるので、前記変形片が変形し易くなり、ピペットの容器内部への挿入が容易になる。
【0012】
容器内部への挿入時に前記ピペットがピアサによりガイドされるのが好ましい。ピアサによりガイドされることで、容器挿入時に変形片からの反力でピペットが変形するのを防止することができる。換言すれば、細いピペットの使用が可能になるので、試料吸引時にピペット先端に付着する試料の量を減少させることができる。その結果、試料吸引量の精度を向上させて、試料の分析精度を上げることができる。
【0013】
前記ピペットの先端を先細に形成することができる。この構成によれば、試料吸引時にピペット先端に付着する試料の量を減少させることができる。その結果、試料吸引量の精度を向上させて、試料の分析精度を上げることができる。
【0014】
また、本発明の液体試料吸引装置は、容器の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置であって、
その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、前記栓体にスリットを形成する第1ピアサと、
前記栓体を穿刺可能な針部を先端に備えており、容器内の液体試料を吸引し得る第2ピアサと
を備えたことを特徴としている。
【0015】
かかる液体試料吸引装置では、容器内の試料を吸引するピアサ(第2ピアサ)を栓体に穿刺する前に、他のピアサ(第1ピアサ)で当該栓体にスリットを形成することができる。このため、第2ピアサにより栓体を穿刺する際に、前記スリットが形成された栓体部分が変形して、容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行うことができる。
また、第1ピアサによって栓体にスリットを形成するため、栓体の削り屑が生じず、第2ピアサの詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後はスリットが形成された栓体部分が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【0016】
前記第1ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記第2ピアサで当該栓体を穿刺し得るように構成されているのが好ましい。この場合、第1ピアサによって、当該第1ピアサを挟んで第2ピアサにより穿刺される栓体部分と反対側の栓体部分の変形が規制されるので、前記第2ピアサにより穿刺される栓体部分が変形し易くなり、第2ピアサの容器内部への刺通が容易になる。
【0017】
栓体穿刺時に前記第2ピアサが第1ピアサによりガイドされるのが好ましい。第1ピアサによりガイドされることで、栓体穿刺時に栓体からの反力で第2ピアサが変形するのを防止することができる。換言すれば、細い第2ピアサの使用が可能になるので、試料吸引時に第2ピアサ先端に付着する試料の量を減少させることができる。その結果、試料吸引量の精度を向上させて、試料の分析精度を上げることができる。
【0018】
また、本発明の液体試料吸引装置は、容器の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置であって、
その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に線状の切り込みを形成するピアサと、
前記ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記容器内部に挿入され、当該容器内部の液体試料を吸引し得るピペットと
を備えたことを特徴としている。
【0019】
かかる液体試料吸引装置では、容器の開口に装着される栓体をピアサで穿刺(切断)して線状の切り込みを形成している。このため、栓体にピペットを挿入する際に、前記切り込み部分が変形して、容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行なうことができる。また、ピアサにより栓体を穿刺した状態で、ピペットを容器内部に挿入することにより、ピアサによって前記切り込みが変形しやすくなり、ピペットの容器内部への挿入が容易になる。
また、ピアサによって栓体に線状の切り込みを形成するため、栓体の削り屑が生じず、ピペットの詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後は切り込みが形成された栓体部分が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【0020】
本発明の分析装置は、前述した液体試料吸引装置と、
当該液体試料吸引装置により吸引された液体試料を分析する分析部と、
当該分析部により分析された結果を出力する出力部と
を備えたことを特徴としている。
【0021】
本発明の分析装置は、前述した液体試料吸引装置を備えており、容器の開口に装着される栓体を当該液体試料吸引装置のピアサで穿刺(切断)して変形可能な部分を形成している。この変形可能な部分は、前記容器の内部側に変形可能であり、ピペット先端がかかる変形可能な部分に当接するように当該ピペットを移動させることで前記部分が変形するので、小さな力でピペットを容器内の所定位置まで挿入することができる。また、ピペットが容器内に挿入される際に、前記変形可能な部分の変形により生じた隙間ないしは通路を介して容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行うことができる。
さらに、ピペットを用いて試料を吸引することができるので、開口が栓体により密封された試料容器であっても、試料のデッドボリュームを最小限にすることができる。前記ピアサ及びピペットは、洗浄スピッツ内に両方同時に入れ、洗浄液を当該洗浄スピッツの下部側方から注入し、上部側方から吸引することで洗浄できるので、洗浄工程を簡略化することができる。
また、ピアサによって栓体に変形可能な部分を形成するため、栓体の削り屑が生じず、ピペットの詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後は変形可能な部分が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の液体試料吸引装置、及びこの液体試料吸引装置を備える分析装置によれば、構造を簡単にすることができ、ピペットの詰まり及び液体試料の汚染を防止することができるとともに、液体試料吸引後は栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の液体試料吸引装置(以下、単に吸引装置ともいう)、及びこの液体試料吸引装置を備える分析装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図1〜4において、分かり易くするために、一部の要素について部分的に図示を省略している。
図1は本発明の一実施の形態に係る吸引装置の要部斜視説明図、図2は本発明の吸引装置の一実施の形態の正面説明図であって、ピアサにより密封容器の栓体を穿刺した後に検体アームが旋回してCPアームとドッキングした状態を示す図、図3は図2に示される状態の平面説明図、及び図4は図2に示される状態の右側面説明図である。前記吸引装置Aは、ゴムキャップ等の栓体により密封された試料容器30(以下、単に容器ともいう)から血液や尿等の試料を吸引するのに用いられ、例えば血液の凝固反応の検査に供される血液凝固測定装置や、血液中の赤血球数や白血球数の測定をする血液分析装置等の測定又は分析装置の一部を構成している。かかる分析装置は、図示は省略しているが、前記吸引装置A以外に、当該吸引装置Aにより吸引された液体試料を分析する分析部と、当該分析部により分析された結果を出力する出力部とを備えている。
【0024】
吸引装置Aは、その先端が前記容器30の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に当該容器30の内部側に変形可能な変形片を形成するピアサ1と、容器30内の試料を吸引し得るピペット2と、これらピアサ1及びピペット2を駆動させるモータ等の駆動機構と、前記試料を吸引・吐出するシリンジポンプ等の吸引・吐出機構(図示せず)とで主に構成されている。
【0025】
ピアサ1は、図5に示されるように、ステンレスやチタン等の金属片を長手方向に沿って折り曲げて形成した細長体からなっている。その一端には前記栓体を穿刺し得る鋭利な刃部1aが形成されており、また他端には前記ピアサ1を保持する保持ブロック3に固定される装着部1bが形成されている。ピアサ1の長手方向に垂直な断面は略「く」の字状を呈している(図6参照)。
【0026】
ピペット2は、内部に試料の通路2a(図6参照)を有する細管からなっており、その根元側端部が検体アーム20に把持されている。また、ピペット2は、チューブやバルブを介して前記吸引・吐出機構に接続されている。なお、ピペット2の先端は先細に形成するのが好ましく、そうすることで試料吸引時にピペット先端に付着する試料の量を減少させることができる。その結果、試料吸引量の精度を向上させて、試料の分析精度を上げることができる。
前記ピアサ1及びピペット2は、洗浄スピッツ(図示せず)内に両方同時に入れ、洗浄液を当該洗浄スピッツの下部側方から注入し、上部側方から吸引することで洗浄できる。その結果、従来の2重管からなる試料吸引管に比べて洗浄工程を簡略化することができる。
【0027】
検体アーム20は、ピペット2を把持ないしは保持して当該ピペット2を試料吸引位置と試料吐出位置との間で移動させる部材であり、その一端付近に設けられた軸21の廻りに回転自在であるとともに、昇降自在に構成されている。
【0028】
ピアサ1を保持する保持ブロック3はABS樹脂等の合成樹脂からなる板体で作製されており、その開口部の周壁にピペット1の装着部1bが固定されている。一端側に前記保持ブロック3が設けられたベース40の他端(図2において左側端部)には、片面(図2において紙面裏側の面)に溝部が形成された矩形状の第1ガイド体4が設けられている。この第1ガイド体4の溝部は、吸引装置Aのケーシング5に上下方向に固設された第1細長体6に嵌め込まれており、これによりベース40の上下方向の移動がガイドされるようになっている。
【0029】
ベース40の下方には、当該ベース40を昇降させる駆動源であるモータ7が配設されている。モータ7の出力軸には駆動プーリ8が設けられており、この駆動プーリ8と、前記ケーシング5に回転自在に保持されている第1ねじ9の下端に設けられた従動プーリ10との間にベルト11が架け渡されている。前記第1ねじ9は、ベース40に形成された雌ねじ部(図示せず)と螺合しており、当該第1ねじ9を回転させることでベース40を昇降させることができるようになっている。
【0030】
前記ベース40の上方には、前記検体アーム20とドッキング(係合)して、当該検体アーム20を昇降させるCPアーム12が配設されている。このCPアーム12の一端(図2において左側端部)には、前記ベース40と同様に、その片面(図2において紙面裏側の面)に溝部が形成された矩形状の第2ガイド体13が設けられている。この第2ガイド体13の溝部は、吸引装置Aのケーシング5に上下方向に固設された第2細長体14に嵌め込まれており、これによりCPアーム12の上下方向の移動がガイドされるようになっている。
【0031】
ケーシング5には、CPアーム12を昇降させる駆動源であるモータ15が配設されている。モータ15の出力軸には駆動プーリ16が設けられており、この駆動プーリ16と、前記ケーシング5に回転自在に保持されている第2ねじ17の上端に設けられた従動プーリ18との間にベルト19が架け渡されている。前記第2ねじ17は、CPアーム12に形成された雌ねじ部(図示せず)と螺合しており、当該第2ねじ9を回転させることでCPアーム12を昇降させることができるようになっている。
【0032】
CPアーム12の一端(図2において右側端部)には、前記検体アーム20を昇降させるために当該検体アーム20を把持する係合部23が形成されている。この係合部23は、前記ピペット2の根元側端部付近に設けられた円盤状の係合体24を受け入れるための導入スリット25を有している。この導入スリット25を構成する前記係合部23の側面23aには、前記係合体24の厚さよりも若干幅広の溝26が形成されている。検体アーム20が軸21を中心に時計廻りに回転すると、前記円盤状の係合体24が溝26内に導入されるように構成されている。なお、導入スリット25の入口側には、前記係合体24を溝26内に円滑に導入するための面取り部27が形成されている。
【0033】
つぎに、前述した吸引装置を用いた吸引操作について説明をする。
(1)まず初期状態では、ピアサ1は上昇位置にあり、またピペット2を把持する検体アーム20は、図1に示されるように、CPアーム12と非係合状態にある。
内部に試料が収容された容器が搬送機構(図示せず)によりピアサ1の下方に搬送されると、モータ7が回転をする。この回転は、駆動プーリ8、ベルト11及び従動プーリ10を介して第1ねじ9に伝達され、当該第1ねじ9を回転させる。これにより、前記第1ねじ9と螺合する雌ねじ部を有するベース40が、第1ガイド体4と第1細長体6とによりガイドされつつ下降し、ピアサ1が容器の栓体を穿刺する。その結果、容器の開口に装着される栓体に変形片が形成される。
【0034】
(2)つぎに、検体アーム20が軸21を中心にして時計廻りに回転し、図3に示されるように、円盤状の係合体24が溝26内に導入される(検体アーム20とCPアーム12のドッキング)。
(3)ついで、モータ15が回転をする。この回転は、駆動プーリ16、ベルト19及び従動プーリ18を介して第2ねじ17に伝達され、当該第2ねじ17を回転させる。これにより、前記第2ねじ17と螺合する雌ねじ部を有するCPアーム12が、第2ガイド体13と第2細長体14とによりガイドされつつ下降する。そして、検体アーム20の係合体24が係合部23の溝26内に配設されているので、CPアーム12と連動して検体アーム20も下降し、ピペット2が容器内に挿入される。このとき、ピペット2は、ピアサ1によりガイドされつつ容器内に挿入される。ピアサ1により形成された変形片は、容器の内部側に変形可能であり、ピペット2先端がかかる変形片に当接するように当該ピペット2を移動させることで前記変形片が変形するので、小さな力でピペット2を容器内の所定位置まで挿入することができる。また、ピペット2が容器内に挿入される際に、前記変形片の変形により生じた隙間ないしは通路を介して容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行うことができる。
また、ピアサ1によりガイドされることで、容器挿入時に変形片からの反力でピペット2が変形するのを防止することができる。換言すれば、細いピペットの使用が可能になるので、試料吸引時にピペット先端に付着する試料の量を減少させることができる。その結果、試料吸引量の精度を向上させて、試料の分析精度を上げることができる。
さらに、ピアサ1により栓体を穿刺した状態で、前記変形片を変形させてピペット2を容器内部に挿入し得るように構成されているので、当該ピアサ1によって前記変形片と対向する栓体部分の変形が規制される。その結果、前記変形片が変形し易くなり、ピペット2の容器内部への挿入が容易になる。
また、ピアサ1によって栓体に変形片を形成するため、栓体の削り屑が生じず、ピペット2の詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後は変形片が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【0035】
(4)つぎに、シリンジポンプ等の吸引・吐出機構を駆動させてピペット2を用いて容器内の試料を吸引する。この場合、ピペット2を用いて試料を吸引することができるので、開口が栓体により密封された試料容器であっても、試料のデッドボリュームを最小限にすることができる。
(5)吸引が終了すると、モータ15が前記と逆の方向に回転し、CPアーム12を上昇させる。これにより、ピペット2が容器内から引き上げられる。
【0036】
(6)CPアーム12が所定位置まで上昇すると、検体アーム20が軸21を中心にして反時計廻りに回転をする。これに伴い、係合体24が溝26から離れ、CPアーム12と検体アーム20の係合が解除される。
(7)また、CPアーム12が所定位置まで上昇すると、モータ7が前記と逆の方向に回転し、ピアサ1を上昇させる。
なお、ピペット2内に吸引された試料は、キュベットや混合チャンバ等の容器内に吐出され、希釈液により希釈されたり、所定の試薬と混合される等の工程を経た後に分析、測定が行われる。
【0037】
つぎに本発明の他の実施の形態について説明をする。前述した実施の形態に係る吸引装置では、断面略くの字状のピアサを用いて栓体に変形片を形成したが、かかるピアサに代えて平坦なピアサを用いることもできる。
図7は、このような平坦なピアサの一例を示している。このピアサ101の一端には前記栓体を穿刺し得る鋭利な刃部101aが形成されており、また他端には前記ピアサ101を保持する保持ブロックに固定される装着部101bが形成されている。かかるピアサ101で容器の栓体を穿刺すると、図5に示されるピアサ1とは異なり、栓体に変形片は形成されず、直線状のスリットだけが形成される。したがって、ピペットを容器内に挿入するのは困難であるので、先端に針部が形成されたピアサを用いて試料を吸引する。
【0038】
すなわち、他の実施の形態に係る吸引装置は、その先端が容器の内部に挿入可能であり、栓体にスリットを形成する第1ピアサ(ピアサ101)と、前記栓体を穿刺可能な針部を先端に備えており、容器内の液体試料を吸引し得る第2ピアサ(図示せず)とを備えている。この吸引装置では、容器内の試料を吸引するピアサ(第2ピアサ)を栓体に穿刺する前に、他のピアサ(第1ピアサ)で当該栓体にスリットを形成している。このため、第2ピアサにより栓体を穿刺する際に、前記スリットが形成された栓体部分が変形して、容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行うことができる。かかる吸引装置においても、前記第1ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記第2ピアサで当該栓体を穿刺し得るように構成されているのが好ましい。この場合、第1ピアサによって、当該第1ピアサを挟んで第2ピアサにより穿刺される栓体部分と反対側の栓体部分の変形が規制されるので、前記第2ピアサにより穿刺される栓体部分が変形し易くなり、第2ピアサの容器内部への刺通が容易になる。また、栓体穿刺時に前記第2ピアサが第1ピアサによりガイドされるのが好ましい。第1ピアサによりガイドされることで、栓体穿刺時に栓体からの反力で第2ピアサが変形するのを防止することができる。換言すれば、細い第2ピアサの使用が可能になるので、試料吸引時に第2ピアサ先端に付着する試料の量を減少させることができる。その結果、試料吸引量の精度を向上させて、試料の分析精度を上げることができる。
【0039】
また、本実施の形態においても、第1ピアサによって栓体にスリットを形成するため、栓体の削り屑が生じず、第2ピアサの詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後はスリットが形成された栓体部分が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【0040】
なお、ピアサにより栓体を穿刺した状態で容器内部に挿入する場合は、前記第2ピアサに代えてピペットを用いることもできる。すなわち、本発明の吸引装置は、その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に線状の切り込みを形成するピアサと、前記ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記容器内部に挿入され、当該容器内部の液体試料を吸引し得るピペットとを備えたものとすることもできる。
【0041】
この実施の形態では、栓体にピペットを挿入する際に、前記ピアサにより形成された線状の切り込み部分が変形して、容器内部と外気とが連通するので、容器内部の大気開放を簡単に行なうことができる。また、ピアサにより栓体を穿刺した状態で、ピペットを容器内部に挿入することにより、ピアサによって前記切り込みが変形しやすくなり、ピペットの容器内部への挿入が容易になる。
また、ピアサによって栓体に線状の切り込みを形成するため、栓体の削る屑が生じず、ピペットの詰まり、液体試料の汚染を防止することができる。さらに、液体試料吸引後は切り込みが形成された栓体部分が元の状態に復帰することにより、栓体に空いた穴を閉じることが可能となる。
【0042】
なお、栓体に変形片を形成し得るピアサとしては、図5に示される断面略くの字状のもの以外に、例えば断面略C字状等、他の断面形状のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の吸引装置の一実施の形態の要部斜視説明図である。
【図2】本発明の吸引装置の一実施の形態の正面説明図であって、ピアサにより密封容器の栓体を穿刺した後に検体アームが旋回してCPアームとドッキングした状態を示す図である。
【図3】図2に示される状態の平面説明図である。
【図4】図2に示される状態の右側面説明図である。
【図5】変形片を形成するのに用いられるピアサの一例の説明図である。
【図6】図5に示されるピアサと、このピアサとともに用いられるピペットの断面説明図である。
【図7】栓体を穿刺するのに用いられる第1ピアサの一例の説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1ピアサ
2ピペット
3保持ブロック
4第1ガイド体
5ケーシング
6第1細長体
7、15モータ
8、16駆動プーリ
9第1ねじ
10、18従動プーリ
11、19ベルト
12CPアーム
13第2ガイド体
14第2細長体
17第2ねじ
20検体アーム
24係合体
25導入スリット
30試料容器
40ベース
A吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置であって、
その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に当該容器の内部側に変形可能な変形片を形成するピアサと、
容器内の液体試料を吸引し得るピペットと
を備えたことを特徴とする液体試料吸引装置。
【請求項2】
前記ピアサの長手方向に垂直な断面が略くの字状又はC字状であり、当該ピアサにより形成される略くの字状又はC字状の変形片をピペットが変形させるように構成されている請求項1に記載の液体試料吸引装置。
【請求項3】
前記ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記変形片を変形させてピペットを容器内部に挿入し得るように構成されている請求項1〜2のいずれかに記載の液体試料吸引装置。
【請求項4】
容器内部への挿入時に前記ピペットがピアサによりガイドされる請求項3に記載の液体試料吸引装置。
【請求項5】
前記ピペットの先端が先細に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の液体試料吸引装置。
【請求項6】
容器の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置であって、
その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体にスリットを形成する第1ピアサと、
前記栓体を穿刺可能な針部を先端に備えており、容器内の液体試料を吸引し得る第2ピアサと
を備えたことを特徴とする液体試料吸引装置。
【請求項7】
前記第1ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記第2ピアサで当該栓体を穿刺し得るように構成されている請求項6に記載の液体試料吸引装置。
【請求項8】
栓体穿刺時に前記第2ピアサが第1ピアサによりガイドされる請求項7に記載の液体試料吸引装置。
【請求項9】
容器の開口に装着される栓体を貫通して、当該容器内の液体試料を吸引する液体試料吸引装置であって、
その先端が前記容器の内部に挿入可能であり、且つ前記栓体に線状の切り込みを形成するピアサと、
前記ピアサにより前記栓体を穿刺した状態で、前記容器内部に挿入され、当該容器内の液体試料を吸引し得るピペットと
を備えたことを特徴とする液体試料吸引装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の液体試料吸引装置と、
この液体試料吸引装置により吸引された液体試料を分析する分析部と、
この分析部により分析された結果を出力する出力部と
を備えたことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−71575(P2007−71575A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256353(P2005−256353)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】